乗用型田植機
【課題】苗植付け装置に対して散布装置支持フレームを介して粉粒体散布装置を安定良く装備させながらも、メンテナンス作業を行い易くする。
【解決手段】散布装置支持フレーム70は、複数の植付け伝動ケース15に亘って左右方向に架設された横向きフレーム71と、その横向きフレーム71の左右方向での中間位置から上方へ向けて立設された棒状の縦向きフレーム72とを備えて構成され、縦向きフレーム72の上端部に粉粒体散布装置13を装備させてある。
【解決手段】散布装置支持フレーム70は、複数の植付け伝動ケース15に亘って左右方向に架設された横向きフレーム71と、その横向きフレーム71の左右方向での中間位置から上方へ向けて立設された棒状の縦向きフレーム72とを備えて構成され、縦向きフレーム72の上端部に粉粒体散布装置13を装備させてある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の後部に苗植付け装置を装備し、その苗植付け装置の後部側に散布装置支持フレームを介して粉粒体散布装置を装備した乗用型田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記乗用型田植機においては、施肥装置や薬剤散布装置などの粉粒体散布装置を苗植付け装置に装備させるに際して、前方側に位置する施肥装置は苗植付け装置の固定部である植付け伝動ケースから立設した支柱フレームに対して上下スライド移動可能に装備させ、後方側に位置する薬剤散布装置は、左右両側の植付け伝動ケースに対して着脱自在に連結されたパイプ状の支持フレームを、植付け伝動ケースから後方側へ延出して、その支持フレームの後端側に支持させた構造のものが従来より知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−255223号公報(段落〔0009〕、〔0010〕、図2、図3、図11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構造のものでは、走行機体の後部に装備されている苗植付け装置に対して、施肥装置と薬剤散布装置とを前後に並べて配設し、前側の施肥装置を上下移動させたり、後側の薬剤散布装置を着脱できるように構成することで、施肥装置や薬剤散布装置、あるいは苗植付け装置のメンテナンス等を支障なく行えるように構成されている。
しかしながら、この従来の構造では、後部側に配備された薬剤散布装置が、左右両側の支持フレームを介して、左右両側の植付け伝動ケースに対して連結されるものであるため、薬剤散布装置を取り外さないままでメンテナンス作業を行なう場合には、左右両側に存在する支持フレームが作業の妨げになることがある。つまり、左右両側の植付け伝動ケースに対して連結される支持フレームが存在していることにより、薬剤散布装置の前方側箇所における植付け爪駆動機構などの各種機器に対して左右側方からは手が届き難く、そのような薬剤散布装置の前方側箇所に対するメンテナンス作業が行い難くなる傾向がある。
【0005】
本発明の目的は、苗植付け装置に対して散布装置支持フレームを介して粉粒体散布装置を安定良く装備させながらも、その散布装置支持フレームが存在することでメンテナンス作業が妨げられることを回避して、メンテナンス作業を行い易くし得た乗用型田植機を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔解決手段1〕
上記課題を解決するために講じた本発明の技術手段は、走行機体の後部に苗植付け装置を装備し、前記苗植付け装置の後部側に散布装置支持フレームを介して粉粒体散布装置を装備した乗用型田植機であって、前記苗植付け装置は、後部側の植付け爪駆動機構に動力を伝える複数の植付け伝動ケースを前後方向に沿わせて配設してあり、前記散布装置支持フレームは、前記複数の植付け伝動ケースに亘って左右方向に架設された横向きフレームと、その横向きフレームの左右方向での中間位置から上方へ向けて立設された棒状の縦向きフレームとを備えて構成され、前記縦向きフレームの上端部に粉粒体散布装置を装備させてあることを特徴とする。
【0007】
〔解決手段1にかかる発明の作用及び効果〕
上記解決手段1で示した特徴構成によると、散布装置支持フレームが、複数の植付け伝動ケースに亘って左右方向に架設された横向きフレームを備えて左右方向で安定良く粉粒体散布装置を支持することができるものでありながら、その横向きフレームの左右方向での中間位置から上方へ向けて立設された棒状の縦向きフレームの上端部に粉粒体散布装置を支持するので、その散布装置支持フレームの存在によって粉粒体散布装置よりも前側の各種機器のメンテナンス作業が妨げられる虞が少ない。
すなわち、粉粒体散布装置を支持する散布装置支持フレームのうち、粉粒体散布装置の下方側には、棒状の縦向きフレームが存在していて横向きフレームとの間に比較的大きな上下方向間隔を有している。また、棒状の縦向きフレームの左右両側にも、比較的大きな空間が確保されていて、粉粒体散布装置よりも前側の植付け爪駆動機構などの機器に対する後方側からのメンテナンス作業用の空間が確保されている。
これにより、粉粒体散布装置よりも前側における植付け爪駆動機構などの機器に対する後方側からのメンテナンス作業が行い易くなる利点がある。
【0008】
〔解決手段2〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記散布装置支持フレームは前記苗植付け装置の後端よりも前方側に設けてあり、その散布装置支持フレームの前記縦向きフレームよりも後方側に後端が位置する粉粒体散布装置を、前記縦向きフレームに対して着脱可能に装着してあることである。
【0009】
〔解決手段2にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段2で示した構成によると、散布装置支持フレームが苗植付け装置の後端よりも前方側に設けてあって、その散布装置支持フレームの縦向きフレームよりも後方側に後端が位置する粉粒体散布装置は着脱可能に装着されているので、この粉粒体散布装置を取り外すと、散布装置支持フレームは苗植付け装置の後端よりも前方側に位置することになる。
したがって、乗用型田植機を運搬車に搭載して移動する場合に、散布装置支持フレームに対して粉粒体散布装置を取り外すだけで、散布装置支持フレームも苗植付け装置の後端よりも前方側に位置する状態となり、粉粒体散布装置が運搬車の荷台から後方側へはみ出した状態となることを回避し易い利点がある。
【0010】
〔解決手段3〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記散布装置支持フレームの後端は、前記苗植付け装置の後端よりも後方側に設けてあり、その散布装置支持フレームを苗植付け装置に対して着脱可能に装着してあることである。
【0011】
〔解決手段3にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段3で示した構成によると、散布装置支持フレームの後端が苗植付け装置の後端よりも後方側に設けてあって、その散布装置支持フレームを苗植付け装置に対して着脱可能に装着してあるので、苗植付け装置に対して着脱可能に装着された散布装置支持フレームごと粉粒体散布装置を取り外すことによって機体全長を短くして、運搬車に搭載し易くできる。
また、散布装置支持フレームの後端部で、苗植付け装置の後端よりも後方側に位置する部分は、複数の植付け伝動ケースに亘って左右方向に架設された横向きフレームが前方側の苗植付け装置に対するプロテクタとしての役割も果たし、植付け爪駆動機構などの保護を行い得る利点がある。
【0012】
〔解決手段4〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記粉粒体散布装置とは別の粉粒体散布装置を、前記散布装置支持フレームの縦向きフレームよりも前方側に位置させて、前記散布装置支持フレームとは別の取付部材を介して前記複数の植付け伝動ケースに対して取り付けてあることである。
【0013】
〔解決手段4にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段4で示した構成によると、苗植え付け装置に対して、散布装置支持フレームに支持された粉粒体散布装置と、その粉粒体散布装置とは別の粉粒体散布装置とを備えることができ、複数種の粉粒体を散布することが可能な乗用型田植機を得ることができる。
そして、このように散布装置支持フレームに支持された粉粒体散布装置と、それとは別の粉粒体散布装置とを備えたものでありながら、前記別の粉粒体散布装置は、前記散布装置支持フレームとは別の取付部材を介して複数の植付け伝動ケースに取り付けてあるので、前記散布装置支持フレームに支持された粉粒体散布装置を着脱する際には、前記別の粉粒体散布装置の着脱作業を伴うことなく着脱することができ、着脱作業の簡素化を図ることができる。
【0014】
〔解決手段5〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記苗植付け装置の植付け爪の作動箇所の上方側で、かつ前記別の粉粒体散布装置の粉粒体貯留部の下方側に、前記別の粉粒体散布装置に対して着脱可能に装着された泥除けカバーを備え、前記泥除けカバーを左右方向で複数個に分割された分割カバー体によって構成するとともに、その分割カバー体を前記散布装置支持フレームの前記縦向きフレームの左右両側に振り分けて配設してあることである。
【0015】
〔解決手段5にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段5で示した構成によると、泥除けカバーが左右方向で複数個に分割されていて、それぞれの分割カバー体が散布装置支持フレームの縦向きフレームの左右両側に振り分けて配設されているので、縦向きフレームの左右両側に存在する空間を利用して後方側から着脱操作を行うことが可能であり、泥除けカバーの着脱操作が必要なメンテナンス作業を行う際の便宜を図り得る利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】乗用型田植機の全体側面図である。
【図2】乗用型田植機の全体平面図である。
【図3】苗植付け装置に対する粉粒体散布装置の取り付け状態を示す側面図である。
【図4】苗植付け装置に対する粉粒体散布装置の取り付け状態を示す背面図である。
【図5】粉粒体散布装置の着脱構造を示す斜視図である。
【図6】繰出し機構の縦断側面図である。
【図7】粉粒体散布装置の底面図である。
【図8】拡散放出機構の横断平面図である。
【図9】繰出し機構の縦断側面図である。
【図10】繰出し機構の横断平面図である。
【図11】繰出し機構の縦断正面図である。
【図12】繰出し機構の分解斜視図である。
【図13】粉粒体散布装置の電気回路図である。
【図14】別実施形態の苗植付け装置に対する粉粒体散布装置の取り付け状態を示す側面図である。
【図15】別実施形態の苗植付け装置に対する粉粒体散布装置の取り付け状態を示す背面図である。
【図16】マーカーの作動状態を示す説明図である。
【図17】マーカーの基部を示す正面図である。
【図18】マーカーの基部を示す平面図である。
【図19】別実施形態の粉粒体駆動系の伝動機構を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用した乗用型田植機の実施形態を図面の記載に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1に示すように、乗用型田植機は、操向操作自在な左右一対の前輪1及び左右一対の後輪2を備えた走行機体3の前部側に、エンジン4及びミッションケース5を備え、走行機体3の中央部にステアリングハンドル6等を装備した操縦部7と運転座席8とを備えて構成され、又、走行機体3の左右両側に予備苗のせ台9が配設されている。
走行機体3の後方には、リフトシリンダ10の操作によりリンク機構11を介して昇降操作自在に苗植付け装置12が連結され、その苗植付け装置12の後方に、粉粒体散布装置の一例であるところの、除草剤等の薬剤を散布する薬剤散布装置13が備えられている。図2に示すように、苗植付け装置12は4条植型式に構成されている。ミッションケース5には、操縦部7に装備した変速レバー16を操作することにより変速操作される静油圧式の無段変速装置(図示せず)が備えられている。
【0018】
図1及び図2に示すように、苗植付け装置12は、1個のフィードケース14に連結された機体左右方向に延びる支持フレーム(図示せず)に、後部側の植付け爪駆動機構17に動力を伝える2個の植付け伝動ケース15が後向きに片持ち状に連結されている。植付け伝動ケース15の後部の左右両側部に植付アーム18が植付け爪駆動機構17により上下に揺動自在に支持され、植付アーム18に植付爪22が備えられており、苗植付け装置12の下部には接地フロート19が支持されている。
又、苗植付け装置12には、苗のせ台20が左右に一定ストロークで往復横送り駆動自在に備えられており、苗のせ台20がストロークエンドに達する毎に、載置された苗を所定量だけ下方に送るベルト式の縦送り装置21が苗のせ台20に備えられている。
【0019】
そして、フィードケース14に伝達される動力が植付け伝動ケース15に伝達されて、植付アーム18が駆動される一方、フィードケース14に伝達される動力により苗のせ台20が往復横送り駆動されて、苗のせ台20の下部から上下に揺動運動する植付アーム18が、その先端部に備えられた植付爪22により1株ずつ苗を取り出して田面に植え付けるのであり、苗のせ台20が往復横送りのストロークエンドに達すると、フィードケース14に伝達される動力により縦送り装置21が駆動されて、苗のせ台20に載置された苗が下方に送られる構成となっている。
【0020】
〔粉粒体散布装置の取付構造〕
前記粉粒体散布装置の一例である薬剤散布装置13は前記苗植付け装置12に対して次のようにして装備されている。
図1乃至図5に示すように、薬剤散布装置13は、苗植付け装置12が苗植付け作業位置にある状態で、田面から設定距離上方に位置するように、散布装置支持フレーム70を介して支持されている。
前記散布装置支持フレーム70は、図2乃至図4に示されるように、左右の植付け伝動ケース15同士を連結するように、左右の各植付け伝動ケース15に下端側を連結された背面視門形の横向きフレーム71と、その横向きフレーム71の左右方向での中間位置から上方へ向けて立設されたパイプ材からなる棒状の縦向きフレーム72とを備えて構成されている。
前記横向きフレーム71は、図4に示すように、左右の各植付け伝動ケース15側から上方へ立ち上がる脚部71Aと、左右の脚部71A,71Aの上端部同士を連結するように水平方向で横向きに延設された横杆部71Bとを備えて背面視で門形に形成してある。
この横向きフレーム71は、前記横杆部71Bが握り部として用いることができるようになっているので、例えば機体を前進又は後進させながらの畦越え作業時において、苗植付け装置12を上昇させた状態で苗植付け装置12を押し下げ操作して機体後部の浮き上がりを防止したり、苗植付け装置12の左右傾動を安定させたりするための握り操作具として機能する。
また、前記縦向きフレーム72を取り付けない場合でも、横向きフレーム71を残しておけば握り操作具として使用できる。
【0021】
前記横向きフレーム71は、図3及び図4に示されるように、下端部に三角形状の取付板71aが溶接してあり、この取付板71aが左右の各植付け伝動ケース15の上部に溶接固定された前後2カ所のボス部材15aに対して、取付ボルト71bを介して連結固定されることにより、左右の各植付け伝動ケース15に対して着脱可能に取り付けてある。
前記横向きフレーム71から上方へ向けて立設された棒状の縦向きフレーム72は、図4及び図5に示すように、横向きフレーム71の左右方向での中間位置に溶接固定された固定用ブラケット71cに対して、連結ボルト72bを介して連結される下部ブラケット72aを下端部に溶接してあり、その下部ブラケット72aを横向きフレーム71の前記固定用ブラケット71cに連結することで、横向きフレーム71の中間位置から上方側へ立設された状態に取り付けてある。
【0022】
前記散布装置支持フレーム70の縦向きフレーム72の上端部には、図3乃至図6に示すように、側面視でL字状の取付台73が溶接して固定してあり、この取付台73に、薬剤散布装置13側の連結台74を載置して連結するように構成してある。
すなわち、散布装置支持フレーム70側の取付台73には、薬剤散布装置13側の連結台74の左右両側に形成された下向き舌片74aの下端を受け止め支持するように、左右両側で下端側をU字状に折り返して形成した受け溝部分73aを形成してあるとともに、前記連結台74の前面側に形成された係合孔74bに係入して連結台74の上部側を支持する係止片73bを形成してある。したがって、図6に示すように、連結台74の左右両側に形成された下向き舌片74aの下端を取付台73の受け溝部分73aに支持させた状態で、取付台73の係止片73bが連結台74の係止孔74bに係合して、薬剤散布装置13側の連結台74が散布装置支持フレーム70側の取付台73に載置支持された状態となる。この状態から薬剤散布装置13側の連結台74を少し浮かして前記係止片73bと係合孔74bとの係合を解除し、後方側へ移動させることにより、図5に示すように散布装置支持フレーム70側の取付台73に対する薬剤散布装置13側の連結台74の載置支持状態を解除することができる。
【0023】
また、散布装置支持フレーム70側の取付台73には、左右両側にバックル式の連結金具75が備えてあり、薬剤散布装置13側の連結台74の左右両側に形成されているフック部76に対して前記連結金具75の止め金75aを引っ掛けて、薬剤散布装置13側の連結台74を散布装置支持フレーム70側の取付台73側に引き寄せた状態で連結できるようにしてある。したがって、この連結金具75で、前記薬剤散布装置13側の連結台74を散布装置支持フレーム70側の取付台73側に引き寄せて連結した状態では、前記薬剤散布装置13側の連結台74が散布装置支持フレーム70側の取付台73に載置支持された状態を維持し、連結台74の浮き上がりや後方移動が抑止された状態に保たれている。この連結金具75を緩み側に操作して前記止め金75aをフック部76から外すことで簡単に連結を解除できる。
【0024】
前記散布装置支持フレーム70側の取付台73に薬剤散布装置13側の連結台74を連結して薬剤散布装置13が搭載され、苗植付け作業が行われる状態では、図3に示すように、散布装置支持フレーム70の横向きフレーム71及び縦向きフレーム27は、前記苗植付け装置12の後端e1に相当する植付け爪駆動機構17の後端位置よりも前方側に位置しており、前記薬剤散布装置13の後端e2は、苗植付け装置12の後端e1に相当する植付け爪駆動機構17の後端位置から前記縦向きフレーム72の軸芯に平行な後端位置指示ラインyよりも少し後方側に位置している。
上記縦向きフレーム72の軸芯に平行な後端位置指示ラインyは、この苗植付け作業が行われている状態では、鉛直線に対して少し前傾しているが、これは、苗植付け装置12がリンク機構11を介して、最下限位置よりも少し上昇揺動した位置で苗植付け作業が行われているためであり、苗植え付け作業が行われていない、乗用型田植機の運搬車両への積載時や格納時には、苗植付け装置12が最下限位置に達しているので、その状態では、前記縦向きフレーム72の軸芯、及びその軸芯に平行な後端位置指示ラインyは、鉛直線と合致又はほぼ合致するようになる。
この場合でも、前記薬剤散布装置13の後端e2は、苗植付け装置12の後端e1に相当する植付け爪駆動機構17の後端位置から前記縦向きフレーム72の軸芯に平行な後端位置指示ラインyよりも少し後方側に位置している。
この状態で、前記薬剤散布装置13を散布装置支持フレーム70から取り外せば、散布装置支持フレーム70の縦向きフレーム72及び前記取付台73は、後端位置指示ラインyよりも機体前方側に寄った箇所に位置している。したがって乗用型田植機を運搬車両に積載した場合などに、前記薬剤散布装置13を取り外しておくことで、薬剤散布装置13が後端位置指示ラインyよりも後方に位置して他物と接触して損傷したり、運搬車両の荷台からはみ出して積載することができないなどの不具合を回避することができる。
【0025】
〔粉粒体散布装置〕
次に、粉粒体散布装置の一例としての薬剤散布装置13について説明する。
図4乃至図6に示すように、薬剤散布装置13は、薬剤を貯留する貯留部としての貯留ホッパー24と、その貯留ホッパー24の下部に位置して貯留される薬剤を繰り出す繰出し手段としての繰出し機構25と、繰り出されて供給経路としての案内通路26を通して落下供給される薬剤を拡散させる回転式の拡散手段としての拡散放出機構27と、繰出し機構25の作動を制御するための電気制御ユニット28とを備えて構成されている。
【0026】
繰出し機構25及び拡散放出機構27は、ケーシング29に収納される構成となっており、このケーシング29は、合成樹脂材からなり、拡散放出機構27に薬剤を落下供給する案内通路26を構成する筒部30が一体形成されている。図4及び図7に示すように、ケーシング29は、左右両側の分割ケーシング部分29a,29bを合わせ面同士で接続する左右2つ割り構造となっている。
【0027】
図6〜図12に示すように、繰出し機構25は、薬剤通過用の開口31が形成された金属製の開口形成板32と、薬剤通過用の開口31を閉塞する閉状態と薬剤通過用の開口31を開放する開状態とにわたりスライド移動自在な金属製のシャッター部材33と、そのシャッター部材33を閉状態と開状態とに切り換えるアクチュエータとしてのソレノイド34とを備えて構成されている。
【0028】
開口形成板32とシャッター部材33とが上下に重なる状態で設けられ、シャッター部材33が開口形成板32に形成された薬剤通過用の開口31を閉じると閉状態となり、薬剤の落下供給が停止され、シャッター部材33が薬剤通過用の開口31を開放する位置までスライドすると、薬剤通過用の開口31が開放されて開状態となり、この開状態では、薬剤通過用の開口31を通して薬剤が下方に落下供給される構成となっている。
この構成では、薬剤通過用の開口31の下方側では、シャッター部材33だけが存在しており、シャッター部材33の下方には他の部材が存在しないので、薬剤が詰まり難い構成となっている。
【0029】
薬剤通過用の開口31は、図12に示すように、ソレノイド34によるシャッター部材33の移動方向に沿う方向での開口幅L1が移動方向と直交する方向での開口幅L2よりも小になるように横長の長方形状に形成され、開口面積を充分大きくしながらも、ソレノイド34によるシャッター部材33の移動操作量を短くすることができるようにしている。
【0030】
開口形成板32には、薬剤通過用の開口31が形成される水平面部分32aの開口側端部に下方に向けて屈曲する下向き屈曲片32bが形成され、それと反対のソレノイド34側端部には上方に向けて屈曲する上向き屈曲片32cが形成されている。又、水平面部分32aの開口側端部とソレノイド34側端部との中間部における幅方向両側部夫々に、シャッター部材33が下方に離間するのを防止するために、シャッター部材33を上下から囲うように略コ字状に屈曲する保持部32dが形成されている。
【0031】
この開口形成板32は、下向き屈曲片32bがケーシング29の筒部30の内側に形成された係止凹部35に係合して、シャッター部材33がソレノイド34に近接する方向にスライド移動することによって連なって移動することが規制され、且つ、上向き屈曲片32cがケーシング29の筒部30の外側の端縁部36に係合して、シャッター部材33がソレノイド34から離間する方向にスライド移動することによって連なって移動することが規制される構成となっている。
【0032】
シャッター部材33は、帯板状に形成されて、ソレノイド34の操作ロッド37に対して連結ピン38で枢支連結される構成となっており、開口形成板32の下側に接する状態で備えられ、保持部32dによって開口形成板32から上下に離間することを阻止する構成となっている。又、図9、図10、及び図12に示すように、シャッター部材33の開口遮蔽箇所33Aよりもソレノイド34側に寄った箇所に、開口形成板32とシャッター部材33との間に嵌まり込む薬剤を下方に落下させるために上下方向に貫通する掻き出し孔39が形成されている。
【0033】
図6に示すように、ケーシング29における筒部30の横一側箇所には、ソレノイド34を収納するためのソレノイド収納室40が形成されており、反対側箇所には、拡散放出機構27における電動モータ41を収納するためのモータ収納室42が形成されている。
ソレノイド収納室40側の筒部30の側壁には、シャッター部材33と開口形成板32とを挿通するためのスリット孔43が形成されている。このスリット孔43の上側には、開口形成板32とシャッター部材33とを水平姿勢で保持するための幅広案内部44が形成されており、この幅広案内部44の上面には、薬剤通過用の開口31に向かうほど下方に傾斜する傾斜面45が全幅にわたって形成されている。又、スリット孔43の上側における幅方向両側部には、開口形成板32の浮き上がりを防止する両側ガイド部46が形成されている。
【0034】
スリット孔43の下部側には、幅方向両側部にシャッター部材33を受止め支持する下側ガイド部47が形成されるとともに、シャッター部材33を開状態に切り換えたときに、掻き出し孔39の下方から排出される薬剤を拡散放出機構27に案内できるように幅広の排出用空間48が形成されている(図9参照)。
【0035】
シャッター部材33は、ソレノイド34に内装されるコイルバネ49が座金50を介して連結ピン38に作用することにより閉位置(薬剤通過用の開口31を閉じる位置)に移動付勢され、ソレノイド34に通電することによりコイルバネ49の付勢力に抗して引き操作することにより開位置(薬剤通過用の開口31を開放する位置)に移動操作することができるように構成されている。
【0036】
図6及び図8に示すように、拡散放出機構27は、横向き姿勢の受止め面51Aを備えて縦向きの回転軸芯Y周りで駆動回転される受止め体51と、その受止め体51の受止め面51Aに立設された拡散用羽根体52と、受止め体51を縦向きの回転軸芯Y周りで回転駆動する電動モータ41とを備えて構成されている。
【0037】
受止め体51は縦向きの回転軸芯Y周りで回転する状態で板面が上向きとなるように設けられた円板形状になっており、拡散用羽根体52が、周方向に沿って分散配置される状態で且つ受止め体51における回転軸芯Yから径方向外方側に寄った状態で放射状に複数個備えられている。従って、受止め体51における回転軸芯Yを含むその周囲の領域は、周方向全域にわたって拡散用羽根体52が存在しない羽根無し領域Qとして形成されている。
【0038】
具体的には、図8に示すように、拡散用羽根体52は、周方向に沿って約60度ずつ等間隔をあけて分散配置される状態で6個備えられており、各拡散用羽根体52は、受止め体51の半径の約半分の距離に相当する横幅を有し、且つ、横幅の略半分の距離に相当する高さを有する状態で、受止め体51の径方向外方側に寄った位置に立設される構成となっている。
【0039】
拡散用羽根体52の径方向での内端縁は径方向外方側ほど高くなる傾斜縁52Aに形成されている。拡散用羽根体52の上端縁は水平に形成され、拡散用羽根体52の下端側を受け止め支持する受止め体51の受止め面51Aは、径方向内方側が低く径方向外方側が高くなる傾斜面に形成されている(図6参照)。
【0040】
尚、受止め体51及び拡散用羽根体52は合成樹脂材にて一体形成される構成となっており、受止め体51には、電動モータ41の駆動軸53に外嵌する筒軸部80も一体形成されており、筒軸部80は、電動モータ41の駆動軸53に外嵌装着されてそれに横向きに装着されたビスbiを駆動軸53に圧接して受止め体51が駆動軸53と一体回転するように連結されている。
【0041】
図6に示すように、ケーシング29により一体形成された筒部30により構成される案内通路26が、受止め体51における羽根無し領域Qに薬剤を案内するように形成されている。
説明を加えると、上述したように、受止め体51における回転軸芯Yを含むその周囲の領域は周方向全域にわたって拡散用羽根体52が存在しない羽根無し領域Qとして形成されるが、図6に示すように、案内通路26の下端の出口54が平面視で羽根無し領域Qに対応する位置に設けられている。さらに説明すると、案内通路26の下端の出口54は、羽根無し領域Qにおける最も径方向外方側に位置する箇所に対応する位置に設けられている。
【0042】
羽根無し領域Qにおける最も径方向外方側箇所に薬剤を落下供給することで、落下した薬剤を周方向に均すようにしながら、極力迅速に拡散用羽根体52による拡散放出作用を行えるようにしている。ちなみに、回転軸芯Yに近い位置に落下することもできるが、そうすると、薬剤を周方向に均す機能は発揮し易いが、滞留時間が長くなって拡散用羽根体52による拡散放出作用が遅れて薬剤の拡散放出タイミングが遅れるおそれがある。
【0043】
図6に示すように、円板形状の受止め体51は中央部が下向きに突出する形状となっており、受止め体51の上部側の位置する受止め面51Aが回転軸芯Y側ほど下方に位置する中凹み状の傾斜面に形成されている。このように構成することで薬剤を周方向に均す機能をより発揮させ易いようにしている。
【0044】
案内通路26が、繰出し機構25側の開口面積を出口54側の開口面積より大にする形態で形成されている。説明を加えると、この案内通路26は、平面視で横断面形状が略四角形状に形成されており、この案内通路26を形成する4つの内面のうち径方向外方側に位置する内面55(図6、図9参照)の上下途中箇所に、出口54側に向かうほど径方向に沿う方向での案内通路26の幅が順次幅狭になるように傾斜面56が形成されている。但し、受止め体51の径方向内方側に位置する内面57は上下方向に沿って平坦面に形成されている。
【0045】
このような構成により、繰出し機構25から繰り出されて下方に案内される薬剤は、傾斜面56により径方向内方側に向けて流下案内されるので、拡散用羽根体52の通過箇所に向けて案内されることを回避して、羽根無し領域Qに落下供給させ易いものとなる。
【0046】
受止め体51を縦向きの回転軸芯Y周りで回転駆動する電動モータ41が、受止め体51の上方に位置する状態で備えられ、繰出し機構25に備えられたソレノイド34が、電動モータ41の横側箇所に位置する状態で備えられている。このように電動モータ41とソレノイド34とを横方向に並ぶ状態で配備することで、薬剤散布装置13の上下方向の外形寸法をコンパクト化することができる。
【0047】
そして、図6及び図7に示すように、受止め体51における上方側には上部側を仕切る天井壁部58Aが設けられ、又、受止め体51の外周側には、周方向の一部の領域から薬剤が外方に拡散放出されるのを規制する規制用縦壁58Bが備えられ、且つ、この規制用縦壁58Bの両側部の夫々に、受止め体51における周方向の他の領域から外方に拡散放出される薬剤の拡散放出方向を調整する拡散方向調整板59,60が備えられている。
【0048】
拡散方向調整板59,60は、ボルトBoにより天井壁部58Aに取り付けられており、ボルトBoを緩めて、左右回動位置を変更させて再度締め付けることで薬剤の拡散放出方向(開き角度)を変更調整することが可能なように構成されている。
薬剤の拡散放出方向(開き角度)を変更調整するにあたって、ボルトBoの緩み操作により位置調整する構成に代えて、拡散方向調整板59,60を、天井壁部58Aに対して縦軸芯周りで回動自在に且つ摩擦により位置保持する状態で取り付け、手動操作にて摩擦保持力に抗して位置変更可能に構成するものでもよい。
【0049】
規制用縦壁58Bは、ケーシング29に一体成形される状態で設けられ、受止め体51の外周縁の近傍に、周方向に沿って約半周にわたり受止め体51の外周部を覆うように、所定の上下幅を有する状態で且つ外周縁に沿うように平面視で半円弧状に形成されている。
【0050】
又、規制用縦壁58Bの両側端部に、規制用縦壁58Bの上下幅と略同じ上下幅を有し、且つ、前後方向に延びる状態で拡散方向調整板59,60が取り付けられている。この調整板59,60は、規制用縦壁58Bの内面に連なる状態で設けられ、受止め体51の回転に伴って遠心力が作用する薬剤を案内して拡散放出方向を調整することができるように構成されている。ちなみに、図7及び図8に示すものでは、左右の拡散方向調整板59,60の長さは略同じ長さに設定されている。
【0051】
〔電気制御ユニット〕
この乗用型田植機の走行機体3には充電式のバッテリーが搭載されておらず、エンジン4によって駆動される発電機61(例えば、前照灯等を点灯させるために設けられる発電機等)にて発電された電力が薬剤散布装置13における電気制御ユニット28に供給されるように構成されている。ちなみに、バッテリーが搭載されていないので、エンジン4はリコイル式の始動装置(図示せず)により始動される構成となっている。
【0052】
図13に示すように、電気制御ユニット28は、電源入切スイッチ62を介して供給される発電機61からの交流電力を整流回路63により整流したのち第1レギュレータ回路64により直流12Vに電圧調整して、その直流12Vの電力を電動モータ41及びソレノイド34の駆動用の電力として利用するように構成され、さらに、第1レギュレータ回路64の出力を第2レギュレータ回路65により直流5Vに電圧調整して制御手段としての制御装置66の駆動用電力として利用するように回路が構成されている。尚、直流12Vの電力は、制御装置66によりオンオフ制御されるスイッチングトランジスタ67を介してソレノイド34に供給されるように構成されている。
【0053】
又、圃場における単位面積当たりの薬剤の散布量をおおまかに大側の調整範囲と小側の調整範囲との2段に切り換える散布量切換スイッチ68と、各段において散布量を微調節可能なポテンショメータ式の散布量調整器69とが備えられ、これらの出力が制御装置66に入力され、制御装置66が、散布量切換スイッチ68及び散布量調整器69の出力に基づいてシャッター部材33を開状態に切り換える開作動用の設定時間を設定するように構成されている。ちなみに、開作動用の設定時間は、予め設定されている最大時間を越えない範囲で散布量切換スイッチ68と散布量調整器69とにより設定される散布量に相当する時間が設定される。
【0054】
第1レギュレータ回路64により出力される直流12Vの端子とソレノイド34の入力端子とを、スイッチングトランジスタ67を迂回して直接接続する状態に切り換えて強制的にソレノイド34を開作動させるための強制排出スイッチ81が備えられている。この強制排出スイッチ81は押し操作によりオン状態となり、手を離すとオフ状態に戻るように復帰付勢される構成となっている。
【0055】
図7に示すように、電源入切スイッチ62、散布量切換スイッチ68、散布量調整器69、及び、強制排出スイッチ81は夫々、ケーシング29の外部から手動操作可能に設けられている。
【0056】
そして、苗植付け装置12における縦送り装置21が送り作動したことを検出する縦送り検出センサ82が備えられ、この縦送り検出センサ82の出力が制御装置66に入力されており、制御装置66は、縦送り検出センサ82にて検出される縦送り装置21の送り作動が設定回数行われたことを検出する毎に、散布量切換スイッチ68と散布量調整器69とにより設定される散布量に相当する設定時間が経過する間だけ、シャッター部材33を開状態に切り換え、その後閉状態に戻すようにソレノイド34の作動を制御するように構成されている。尚、電動モータ41は所定の回転速度で受止め体51を回転駆動する。
【0057】
縦送り装置21の送り作動が設定回数行われると、走行機体3が設定距離走行することになるので、上述したような散布動作を実行することで、乗用型田植機が苗植付け作動を実行しながら走行を行っているときに、走行機体3が設定距離走行する毎に、4条分の既植苗が存在する領域(薬剤供給対象領域)に薬剤を散布供給することができ、圃場の単位面積当たりに目標値(設定量)の薬剤を供給することができるのである。
【0058】
〔その他〕
図16乃至図18は、線引きマーカ83の取付構造を示す。
この線引きマーカ83は、苗植付け装置12の左右両側に装備させてあり、車体前後方向に沿う前後向き軸芯p1周りで上下揺動可能に構成されている。
この線引きマーカ83は、基端側から遊端側に亘る一連の長い棒状のバネ鋼からなるマーカアーム84と、そのマーカアーム84の遊端側に装着された回転マーカ85と、前記マーカアーム84の基端側部分に装着された補強アーム86とを備えている。
【0059】
前記のマーカアーム84の基端側は前後方向に屈曲させてあって、その屈曲部分を苗植付け装置12側の固定ブラケット12Aに枢支させることによって、前記前後向き軸芯p1周りで上下揺動自在に構成されている。
また、前記マーカアーム84の前後方向に屈曲されて前記固定ブラケット12Aに枢支される部分は、図17及び図18に示されているように平面視U字状の起伏操作部材87を貫通し、その起伏揺動部材87に、操作ワイヤ88および復帰バネ89が、前記前後向き軸芯p1を挟んで両側に振り分けられた連結点p2,p3に連結されている。
したがって、前記操作ワイヤ88が緩められたマーカ作用姿勢では、図16に実線で示されているように回転マーカ85が水田に接して回転しながらマーキングを行い、前記操作ワイヤ88が復帰バネ89を伸長させながら引っ張られると、図16に仮想線で示されているように線引きマーカ83が持ち上げられて非作用姿勢となる。
【0060】
前記起伏揺動部材87には、図17及び図18に示されているように、マーカアーム84の基端側部分とマーカアーム84の中間部とにわたって設けられた前記補強アーム86の基端側が、ボルト86aを介して起伏揺動部材87に連結固定されている。
この補強アーム86は、バネ鋼で構成されたマーカアーム84の基端側近くでの撓み変形を少なくするために設けられたものであり、上下方向に幅広の板材からなる補強アーム86が上下方向で変形し難い構造であることを利用して、マーカアーム84の上下方向での撓みすぎを抑制するように構成してある。
【0061】
〔別実施形態の1〕
図14及び図15は、本発明における別の実施形態を示すものであり、この実施形態では、粉粒体散布装置として、前述した薬剤散布装置13とは別に施肥装置23を備えている。
前記施肥装置23は、上部に粉粒体貯留部としての施肥タンク90を備え、その下部に繰出し機構91を備え、さらに下方側に作溝器92、及び植付け爪駆動機構17の上部側に位置させた泥除けカバー93を備えて構成された周知の構造のものである。
上記施肥装置23に対しては、図15に示すように、右側の植付け爪駆動機構17から取り出した駆動力を施肥装置23の右側の繰出し機構25に対して伝達する連動ロッド23a、及び左側の植付け爪駆動機構17から取り出した駆動力を施肥装置23の左側の繰出し機構25に対して伝達する連動ロッド23aを介して、苗植付け装置12側の駆動力が伝達されるように構成してある。
【0062】
この構造のものでは、前記散布装置支持フレーム70の横向きフレーム71が、図15に示すように左右の植付け伝動ケース15にわたって左右方向に向けられた部分だけではなく、図14に示すように前後方向にも長く延設された部分を備えている。そして、その前後方向に長く延設された部分は前記施肥装置23の泥除けカバー93の下方側を通って前方側へ延出され、左右の植付け伝動ケース15の上部側に連結され、この横向きフレーム71の後端側の前記左右方向に向けられた部分は前記植付け爪駆動機構17を含む苗植付け装置12の後端e1よりも後方側に位置している。
この構造における前記横向きフレーム71は、図14及び図15に示すように、左右の各植付け伝動ケース15側から立ち上がる脚部71Aが、施肥装置23の下部よりも前方側へ延出された前端部から斜め後方上方へ向けて延設してあり、その脚部71Aの後方上端部同士を連結するように横向きに延設された横杆部71Bが設けられている。
この横杆部71Bは、図14に示すように、側面視で脚部71Aの後方上端部から、脚部71Aの延長線よりもさらに急角度での後上がり傾斜で、かつ図15に示すように背面視で左右方向での中央側ほど高くなるように傾斜した杆部分71eと、その左右の傾斜した杆部分71e,71eの中央側を接続する水平方向の横向きの杆部分71dとで形成され、背面視では、ほぼ逆U字状に形成されている。
この横向きフレーム71は、前記横杆部71Bの左右の傾斜した杆部分71e、及び中央の横向きの杆部分71dが握り部として用いることができるようになっているので、苗植付け装置12を押し下げ操作して機体後部の浮き上がりを防止したり、苗植付け装置12の左右傾動を安定させたりするための握り操作具として機能する。この場合、前記横杆部71Bが左右の傾斜した杆部分71e,71eを備えているので、機体の前進又は後進方向の直前ではなく少し横方向に外れた位置で把持して、前述したような機体後部の浮き上がりを防止したり、苗植付け装置12の左右傾動を安定させたりする等の操作を行い易い。
また、前記縦向きフレーム72を取り付けない場合でも、横向きフレーム71を残しておけば握り操作具として使用できる。
【0063】
この構造では、前記横向きフレーム71の後端側に位置する水平方向の横向きの杆部分71dが、前記苗植付け装置12の後端e1に相当する植付け爪駆動機構17の後端位置よりも後方側に位置する散布装置支持フレーム70の後端e3となる。この場合、前記薬剤散布装置13の後端e2は前記散布装置支持フレーム70の後端e3よりも後方側に位置することになるが、前記薬剤散布装置13を取り外せば散布装置支持フレーム70の後端e3が最も後端側に位置するので、この散布支持フレーム70が後方側のプロテクタやリヤバンパとして機能する。
また、前記施肥装置23の後端e4(連動ロッド23aが接続される繰出し機構91の入力アーム91aの後端位置)は、苗植付け装置12の後端e1に相当する植付け爪駆動機構17の後端位置とほぼ同等の位置であるので、前記散布装置支持フレーム70を取り外せば前記薬剤散布装置13も取り外され、機体全長を短くした状態で運搬車両に積載する際の便を図ることができる。
【0064】
前記縦向きフレーム72は、前記横向きフレーム71の後端側の前記左右方向に向けられた部分の左右方向での中間部に位置して、前述した実施形態に示したものと同様に、固定用ブラケット71cに対して下部ブラケット72aに連結して立設され、上端部に取り付けられた取付台73、及び薬剤散布装置13側の連結台74を介して薬剤散布装置13を取り付けてある。
【0065】
前記施肥装置23は、施肥支持枠94から下方側へ延出された左右一対の支柱94aの下部に第1取付板95を溶接して固定し、この第1取付板95を、前記左右の植付け伝動ケース15の上部に溶接固定された前後2カ所のボス部材15aに対して、第1取付ボルト95aを介して連結固定されることにより、左右の各植付け伝動ケース15に対して施肥装置23を着脱可能に取り付けてある。
そして、前記薬剤散布装置13を支持する散布装置支持フレーム70の横向きフレーム71は、その左右両側の下端部に第2取付板96を溶接して固定してあり、この第2取付板96を前記第1取付板95に対して第2取付ボルト96aを介して連結固定してあり、この第2取付ボルト96aを着脱操作することで、施肥装置23側の取付部材であるところの前記第1取付板95、及び第1取付ボルト95aを操作することなく、散布装置支持フレーム70ごと薬剤散布装置13を着脱操作することができる。
【0066】
前記泥除けカバー93は、左右方向で2個の分割された分割カバー体93a,93bによって構成してあり、その分割箇所は、前記散布装置支持フレーム70の縦向きフレーム72が存在する箇所と同じ左右方向での中央位置であり、前記縦向きフレーム72の存在箇所を中心にして左右両側に振り分けられている。
これらの分割カバー体93a,93bは、それぞれ施肥装置23の左右の繰出し機構91に対して個々に着脱自在に取り付けてある。このように泥除けカバー93が分割されていることにより、前方側の植付け爪駆動機構17部分などを点検したい場合に、繰出し機構91から取り外した泥除けカバー93を、下方側の横向きフレーム71と上方側の繰出し機構91や施肥タンク90との間から、後方側へ抜き出すとき、前記散布装置支持フレーム70の横向きフレーム71や縦向きフレーム72が邪魔にならずに比較的簡単に抜き出し易いので、メンテナンス作業等を行う際に便利である。その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成されている。
【0067】
〔別実施形態の2〕
前記苗植付け装置12の後端よりも後方側に位置するように、散布装置支持フレーム70の横向きフレーム71を後方側へ延出した構造のものでは、その横向きフレーム71部分をリヤバンパーとして利用したり、機体を後進させながら畦越え作業を行う際に機体の後端側が浮き上がらないように押さえ込みながら操作するための部材である畦越えアームとして利用することも可能である。
また、その横向きフレーム71部分に、図示しないが、エンジン停止スイッチや、クラッチ操作具、あるいはブレーキ操作具やアクセル操作具など、適宜に備えさせることによって畦越え操作をより一層楽に行わせ易く構成することができる。その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成されている。
【0068】
〔別実施形態の3〕
実施の形態では、散布装置支持フレーム70の縦向きフレーム72を一本のパイプ材からなる棒状のもので構成したが、これに限らず、板状部材や角材などによって構成してもよく、また、左右方向幅を広く取らないように接合あるいは近接させた複数の棒状部材で構成してもよい。その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成されている。
【0069】
〔別実施形態の4〕
実施の形態では、散布装置支持フレーム70の横向きフレーム71及び縦向きフレーム72を、前記苗植付け装置12の後端e1に相当する植付け爪駆動機構17の後端位置よりも前方側に位置させたものにおいて、薬剤散布装置13の後端e2を、苗植付け装置12の後端e1に相当する植付け爪駆動機構17の後端位置から後端位置指示ラインyよりも少し後方側に位置させたものであるが、これに限らず、薬剤散布装置13の後端e2を、苗植付け装置12の後端e1に相当する植付け爪駆動機構17の後端位置から前記後端位置指示ラインyと一致する、又は後端位置指示ラインyよりも少し前方側に位置するように配設したものであってもよい。この場合には、前記薬剤散布装置13を散布装置支持フレーム70から取り外すことなく運搬車両に積載することも可能になる。その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成されている。
【0070】
〔別実施形態の5〕
実施の形態では、薬剤散布装置13の繰出し機構25として、薬剤通過用の開口31を開閉操作するシャッター部材をソレノイド34で操作するようにした構造を示したが、これに限らず、例えば、植付け爪駆動機構17の植付アーム18の作動と機械的に連係させてシャッター部材34を開閉操作するなど、適宜の駆動構造を採用することができる。
その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成されている。
【0071】
〔別実施形態の6〕
図19は、植付け爪駆動機構17の作動とシャッター部材34の開閉作動とを機械的に連係させる構造の一例であり、次のように構成されている。
この植付け爪駆動機構17は、4条植えに構成してあり、右2条を植付ける植付けアーム18R、及び左2条を植付ける植付けアーム18Lを備えており、それぞれの植付けアーム18R及び植付けアーム18Lの作動が、連係ロッド17aを介して操作部材17bに伝えられ、シャッター部材34の開閉作動を行うように構成してある。
すなわち、一つのシャッター部材34を、左右の植付け爪駆動機構17に対して機械的に連係させるのであるが、この構造では、前記操作部材17bに形成された円弧状の長孔17cに前記連係ロッド17aの上端側を係入させてあり、左右の各植付けアーム18R,18Lが共に作動している全条植え状態では、各植付けアーム18R,18Lの作動に連動して連係ロッド17aが押し引きされ、シャッター部材34が開閉作動されるように構成してある。
尚、この図19では、便宜上、操作部材17bのシャッター部材34に接続される部分である操作部17dを左右2箇所に記載しているが、操作部材17bには、左右の連係ロッド17aが係入される円弧状の長孔17cは左右2箇所に形成してあり、前記操作部17dは操作部材17bの一箇所に設けてあってシャッター部材34に接続されている。
【0072】
そして、前記左右の各植付けアーム18R,18Lのうちの一方、例えば、植付け爪駆動機構17の右側の植付アーム18Rの少数条クラッチ(図外)が切られて停止すると、右側の連係ロッド17aを介して戻しバネ34aに抗して操作部材17bがシャッター部材34を引き出して薬剤通過用の開口31を閉塞する。
このとき、植付け爪駆動機構17の左側の植付アーム18Lの少数条クラッチ(図外)は入り状態のままで苗植付け作動を継続するが、前記連係ロッド17aの上端部は操作部材17bに形成されている長孔17c内で往復移動するだけで、前記シャッター部材34による薬剤通過用の開口31の閉塞状態は維持されるように構成してある。したがって、一方の少数条クラッチが切り操作されると、薬剤散布装置13からの薬剤散布は停止された状態で、のこりの少数条クラッチが入り状態の植付アーム18Lでの苗植付け作動が行われる。その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成されている。
【0073】
〔別実施形態の7〕
実施の形態では、散布装置支持フレーム70として横向きフレーム71と縦向きフレーム72とを用いて粉粒体散布装置を取り付けるようにしたものを示したが、粉粒体散布装置を取り付けずに、散布装置支持フレーム70のうちの、左右の各植付け伝動ケース15,15等の機体固定部に亘って左右向きに架設された横向きフレーム71のみを取り付けて用いることもできる。
この場合にも、前記横向きフレーム71は、その横杆部71Bが握り部として用いることができるようになっているので、例えば機体を前進又は後進させながらの畦越え作業時において、苗植付け装置12を上昇させた状態で苗植付け装置12を押し下げ操作して機体後部の浮き上がりを防止したり、苗植付け装置12の左右傾動を安定させたりするための握り操作具として機能する。その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成されている。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、粉粒体散布装置として薬剤の散布のみを行うもの、薬剤と肥料との散布を行うもので、あるいは、肥料のみを散布するものなど、乗用型田植機で用いられる粉粒体として適宜の散布対象を選択して用いることができる。
【符号の説明】
【0075】
12 苗植付け装置
13 粉粒体散布装置(薬剤散布装置)
15 植付け伝動ケース
17 植付け爪駆動機構
23 粉粒体散布装置(施肥装置)
70 散布装置支持フレーム
71 横向きフレーム
72 縦向きフレーム
90 粉粒体貯留部
93 泥除けカバー
93a,93b 分割カバー体
e1 苗植付け装置の後端
e2 粉粒体散布装置の後端
e3 散布装置支持フレームの後端
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の後部に苗植付け装置を装備し、その苗植付け装置の後部側に散布装置支持フレームを介して粉粒体散布装置を装備した乗用型田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記乗用型田植機においては、施肥装置や薬剤散布装置などの粉粒体散布装置を苗植付け装置に装備させるに際して、前方側に位置する施肥装置は苗植付け装置の固定部である植付け伝動ケースから立設した支柱フレームに対して上下スライド移動可能に装備させ、後方側に位置する薬剤散布装置は、左右両側の植付け伝動ケースに対して着脱自在に連結されたパイプ状の支持フレームを、植付け伝動ケースから後方側へ延出して、その支持フレームの後端側に支持させた構造のものが従来より知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−255223号公報(段落〔0009〕、〔0010〕、図2、図3、図11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構造のものでは、走行機体の後部に装備されている苗植付け装置に対して、施肥装置と薬剤散布装置とを前後に並べて配設し、前側の施肥装置を上下移動させたり、後側の薬剤散布装置を着脱できるように構成することで、施肥装置や薬剤散布装置、あるいは苗植付け装置のメンテナンス等を支障なく行えるように構成されている。
しかしながら、この従来の構造では、後部側に配備された薬剤散布装置が、左右両側の支持フレームを介して、左右両側の植付け伝動ケースに対して連結されるものであるため、薬剤散布装置を取り外さないままでメンテナンス作業を行なう場合には、左右両側に存在する支持フレームが作業の妨げになることがある。つまり、左右両側の植付け伝動ケースに対して連結される支持フレームが存在していることにより、薬剤散布装置の前方側箇所における植付け爪駆動機構などの各種機器に対して左右側方からは手が届き難く、そのような薬剤散布装置の前方側箇所に対するメンテナンス作業が行い難くなる傾向がある。
【0005】
本発明の目的は、苗植付け装置に対して散布装置支持フレームを介して粉粒体散布装置を安定良く装備させながらも、その散布装置支持フレームが存在することでメンテナンス作業が妨げられることを回避して、メンテナンス作業を行い易くし得た乗用型田植機を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔解決手段1〕
上記課題を解決するために講じた本発明の技術手段は、走行機体の後部に苗植付け装置を装備し、前記苗植付け装置の後部側に散布装置支持フレームを介して粉粒体散布装置を装備した乗用型田植機であって、前記苗植付け装置は、後部側の植付け爪駆動機構に動力を伝える複数の植付け伝動ケースを前後方向に沿わせて配設してあり、前記散布装置支持フレームは、前記複数の植付け伝動ケースに亘って左右方向に架設された横向きフレームと、その横向きフレームの左右方向での中間位置から上方へ向けて立設された棒状の縦向きフレームとを備えて構成され、前記縦向きフレームの上端部に粉粒体散布装置を装備させてあることを特徴とする。
【0007】
〔解決手段1にかかる発明の作用及び効果〕
上記解決手段1で示した特徴構成によると、散布装置支持フレームが、複数の植付け伝動ケースに亘って左右方向に架設された横向きフレームを備えて左右方向で安定良く粉粒体散布装置を支持することができるものでありながら、その横向きフレームの左右方向での中間位置から上方へ向けて立設された棒状の縦向きフレームの上端部に粉粒体散布装置を支持するので、その散布装置支持フレームの存在によって粉粒体散布装置よりも前側の各種機器のメンテナンス作業が妨げられる虞が少ない。
すなわち、粉粒体散布装置を支持する散布装置支持フレームのうち、粉粒体散布装置の下方側には、棒状の縦向きフレームが存在していて横向きフレームとの間に比較的大きな上下方向間隔を有している。また、棒状の縦向きフレームの左右両側にも、比較的大きな空間が確保されていて、粉粒体散布装置よりも前側の植付け爪駆動機構などの機器に対する後方側からのメンテナンス作業用の空間が確保されている。
これにより、粉粒体散布装置よりも前側における植付け爪駆動機構などの機器に対する後方側からのメンテナンス作業が行い易くなる利点がある。
【0008】
〔解決手段2〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記散布装置支持フレームは前記苗植付け装置の後端よりも前方側に設けてあり、その散布装置支持フレームの前記縦向きフレームよりも後方側に後端が位置する粉粒体散布装置を、前記縦向きフレームに対して着脱可能に装着してあることである。
【0009】
〔解決手段2にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段2で示した構成によると、散布装置支持フレームが苗植付け装置の後端よりも前方側に設けてあって、その散布装置支持フレームの縦向きフレームよりも後方側に後端が位置する粉粒体散布装置は着脱可能に装着されているので、この粉粒体散布装置を取り外すと、散布装置支持フレームは苗植付け装置の後端よりも前方側に位置することになる。
したがって、乗用型田植機を運搬車に搭載して移動する場合に、散布装置支持フレームに対して粉粒体散布装置を取り外すだけで、散布装置支持フレームも苗植付け装置の後端よりも前方側に位置する状態となり、粉粒体散布装置が運搬車の荷台から後方側へはみ出した状態となることを回避し易い利点がある。
【0010】
〔解決手段3〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記散布装置支持フレームの後端は、前記苗植付け装置の後端よりも後方側に設けてあり、その散布装置支持フレームを苗植付け装置に対して着脱可能に装着してあることである。
【0011】
〔解決手段3にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段3で示した構成によると、散布装置支持フレームの後端が苗植付け装置の後端よりも後方側に設けてあって、その散布装置支持フレームを苗植付け装置に対して着脱可能に装着してあるので、苗植付け装置に対して着脱可能に装着された散布装置支持フレームごと粉粒体散布装置を取り外すことによって機体全長を短くして、運搬車に搭載し易くできる。
また、散布装置支持フレームの後端部で、苗植付け装置の後端よりも後方側に位置する部分は、複数の植付け伝動ケースに亘って左右方向に架設された横向きフレームが前方側の苗植付け装置に対するプロテクタとしての役割も果たし、植付け爪駆動機構などの保護を行い得る利点がある。
【0012】
〔解決手段4〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記粉粒体散布装置とは別の粉粒体散布装置を、前記散布装置支持フレームの縦向きフレームよりも前方側に位置させて、前記散布装置支持フレームとは別の取付部材を介して前記複数の植付け伝動ケースに対して取り付けてあることである。
【0013】
〔解決手段4にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段4で示した構成によると、苗植え付け装置に対して、散布装置支持フレームに支持された粉粒体散布装置と、その粉粒体散布装置とは別の粉粒体散布装置とを備えることができ、複数種の粉粒体を散布することが可能な乗用型田植機を得ることができる。
そして、このように散布装置支持フレームに支持された粉粒体散布装置と、それとは別の粉粒体散布装置とを備えたものでありながら、前記別の粉粒体散布装置は、前記散布装置支持フレームとは別の取付部材を介して複数の植付け伝動ケースに取り付けてあるので、前記散布装置支持フレームに支持された粉粒体散布装置を着脱する際には、前記別の粉粒体散布装置の着脱作業を伴うことなく着脱することができ、着脱作業の簡素化を図ることができる。
【0014】
〔解決手段5〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記苗植付け装置の植付け爪の作動箇所の上方側で、かつ前記別の粉粒体散布装置の粉粒体貯留部の下方側に、前記別の粉粒体散布装置に対して着脱可能に装着された泥除けカバーを備え、前記泥除けカバーを左右方向で複数個に分割された分割カバー体によって構成するとともに、その分割カバー体を前記散布装置支持フレームの前記縦向きフレームの左右両側に振り分けて配設してあることである。
【0015】
〔解決手段5にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段5で示した構成によると、泥除けカバーが左右方向で複数個に分割されていて、それぞれの分割カバー体が散布装置支持フレームの縦向きフレームの左右両側に振り分けて配設されているので、縦向きフレームの左右両側に存在する空間を利用して後方側から着脱操作を行うことが可能であり、泥除けカバーの着脱操作が必要なメンテナンス作業を行う際の便宜を図り得る利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】乗用型田植機の全体側面図である。
【図2】乗用型田植機の全体平面図である。
【図3】苗植付け装置に対する粉粒体散布装置の取り付け状態を示す側面図である。
【図4】苗植付け装置に対する粉粒体散布装置の取り付け状態を示す背面図である。
【図5】粉粒体散布装置の着脱構造を示す斜視図である。
【図6】繰出し機構の縦断側面図である。
【図7】粉粒体散布装置の底面図である。
【図8】拡散放出機構の横断平面図である。
【図9】繰出し機構の縦断側面図である。
【図10】繰出し機構の横断平面図である。
【図11】繰出し機構の縦断正面図である。
【図12】繰出し機構の分解斜視図である。
【図13】粉粒体散布装置の電気回路図である。
【図14】別実施形態の苗植付け装置に対する粉粒体散布装置の取り付け状態を示す側面図である。
【図15】別実施形態の苗植付け装置に対する粉粒体散布装置の取り付け状態を示す背面図である。
【図16】マーカーの作動状態を示す説明図である。
【図17】マーカーの基部を示す正面図である。
【図18】マーカーの基部を示す平面図である。
【図19】別実施形態の粉粒体駆動系の伝動機構を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用した乗用型田植機の実施形態を図面の記載に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1に示すように、乗用型田植機は、操向操作自在な左右一対の前輪1及び左右一対の後輪2を備えた走行機体3の前部側に、エンジン4及びミッションケース5を備え、走行機体3の中央部にステアリングハンドル6等を装備した操縦部7と運転座席8とを備えて構成され、又、走行機体3の左右両側に予備苗のせ台9が配設されている。
走行機体3の後方には、リフトシリンダ10の操作によりリンク機構11を介して昇降操作自在に苗植付け装置12が連結され、その苗植付け装置12の後方に、粉粒体散布装置の一例であるところの、除草剤等の薬剤を散布する薬剤散布装置13が備えられている。図2に示すように、苗植付け装置12は4条植型式に構成されている。ミッションケース5には、操縦部7に装備した変速レバー16を操作することにより変速操作される静油圧式の無段変速装置(図示せず)が備えられている。
【0018】
図1及び図2に示すように、苗植付け装置12は、1個のフィードケース14に連結された機体左右方向に延びる支持フレーム(図示せず)に、後部側の植付け爪駆動機構17に動力を伝える2個の植付け伝動ケース15が後向きに片持ち状に連結されている。植付け伝動ケース15の後部の左右両側部に植付アーム18が植付け爪駆動機構17により上下に揺動自在に支持され、植付アーム18に植付爪22が備えられており、苗植付け装置12の下部には接地フロート19が支持されている。
又、苗植付け装置12には、苗のせ台20が左右に一定ストロークで往復横送り駆動自在に備えられており、苗のせ台20がストロークエンドに達する毎に、載置された苗を所定量だけ下方に送るベルト式の縦送り装置21が苗のせ台20に備えられている。
【0019】
そして、フィードケース14に伝達される動力が植付け伝動ケース15に伝達されて、植付アーム18が駆動される一方、フィードケース14に伝達される動力により苗のせ台20が往復横送り駆動されて、苗のせ台20の下部から上下に揺動運動する植付アーム18が、その先端部に備えられた植付爪22により1株ずつ苗を取り出して田面に植え付けるのであり、苗のせ台20が往復横送りのストロークエンドに達すると、フィードケース14に伝達される動力により縦送り装置21が駆動されて、苗のせ台20に載置された苗が下方に送られる構成となっている。
【0020】
〔粉粒体散布装置の取付構造〕
前記粉粒体散布装置の一例である薬剤散布装置13は前記苗植付け装置12に対して次のようにして装備されている。
図1乃至図5に示すように、薬剤散布装置13は、苗植付け装置12が苗植付け作業位置にある状態で、田面から設定距離上方に位置するように、散布装置支持フレーム70を介して支持されている。
前記散布装置支持フレーム70は、図2乃至図4に示されるように、左右の植付け伝動ケース15同士を連結するように、左右の各植付け伝動ケース15に下端側を連結された背面視門形の横向きフレーム71と、その横向きフレーム71の左右方向での中間位置から上方へ向けて立設されたパイプ材からなる棒状の縦向きフレーム72とを備えて構成されている。
前記横向きフレーム71は、図4に示すように、左右の各植付け伝動ケース15側から上方へ立ち上がる脚部71Aと、左右の脚部71A,71Aの上端部同士を連結するように水平方向で横向きに延設された横杆部71Bとを備えて背面視で門形に形成してある。
この横向きフレーム71は、前記横杆部71Bが握り部として用いることができるようになっているので、例えば機体を前進又は後進させながらの畦越え作業時において、苗植付け装置12を上昇させた状態で苗植付け装置12を押し下げ操作して機体後部の浮き上がりを防止したり、苗植付け装置12の左右傾動を安定させたりするための握り操作具として機能する。
また、前記縦向きフレーム72を取り付けない場合でも、横向きフレーム71を残しておけば握り操作具として使用できる。
【0021】
前記横向きフレーム71は、図3及び図4に示されるように、下端部に三角形状の取付板71aが溶接してあり、この取付板71aが左右の各植付け伝動ケース15の上部に溶接固定された前後2カ所のボス部材15aに対して、取付ボルト71bを介して連結固定されることにより、左右の各植付け伝動ケース15に対して着脱可能に取り付けてある。
前記横向きフレーム71から上方へ向けて立設された棒状の縦向きフレーム72は、図4及び図5に示すように、横向きフレーム71の左右方向での中間位置に溶接固定された固定用ブラケット71cに対して、連結ボルト72bを介して連結される下部ブラケット72aを下端部に溶接してあり、その下部ブラケット72aを横向きフレーム71の前記固定用ブラケット71cに連結することで、横向きフレーム71の中間位置から上方側へ立設された状態に取り付けてある。
【0022】
前記散布装置支持フレーム70の縦向きフレーム72の上端部には、図3乃至図6に示すように、側面視でL字状の取付台73が溶接して固定してあり、この取付台73に、薬剤散布装置13側の連結台74を載置して連結するように構成してある。
すなわち、散布装置支持フレーム70側の取付台73には、薬剤散布装置13側の連結台74の左右両側に形成された下向き舌片74aの下端を受け止め支持するように、左右両側で下端側をU字状に折り返して形成した受け溝部分73aを形成してあるとともに、前記連結台74の前面側に形成された係合孔74bに係入して連結台74の上部側を支持する係止片73bを形成してある。したがって、図6に示すように、連結台74の左右両側に形成された下向き舌片74aの下端を取付台73の受け溝部分73aに支持させた状態で、取付台73の係止片73bが連結台74の係止孔74bに係合して、薬剤散布装置13側の連結台74が散布装置支持フレーム70側の取付台73に載置支持された状態となる。この状態から薬剤散布装置13側の連結台74を少し浮かして前記係止片73bと係合孔74bとの係合を解除し、後方側へ移動させることにより、図5に示すように散布装置支持フレーム70側の取付台73に対する薬剤散布装置13側の連結台74の載置支持状態を解除することができる。
【0023】
また、散布装置支持フレーム70側の取付台73には、左右両側にバックル式の連結金具75が備えてあり、薬剤散布装置13側の連結台74の左右両側に形成されているフック部76に対して前記連結金具75の止め金75aを引っ掛けて、薬剤散布装置13側の連結台74を散布装置支持フレーム70側の取付台73側に引き寄せた状態で連結できるようにしてある。したがって、この連結金具75で、前記薬剤散布装置13側の連結台74を散布装置支持フレーム70側の取付台73側に引き寄せて連結した状態では、前記薬剤散布装置13側の連結台74が散布装置支持フレーム70側の取付台73に載置支持された状態を維持し、連結台74の浮き上がりや後方移動が抑止された状態に保たれている。この連結金具75を緩み側に操作して前記止め金75aをフック部76から外すことで簡単に連結を解除できる。
【0024】
前記散布装置支持フレーム70側の取付台73に薬剤散布装置13側の連結台74を連結して薬剤散布装置13が搭載され、苗植付け作業が行われる状態では、図3に示すように、散布装置支持フレーム70の横向きフレーム71及び縦向きフレーム27は、前記苗植付け装置12の後端e1に相当する植付け爪駆動機構17の後端位置よりも前方側に位置しており、前記薬剤散布装置13の後端e2は、苗植付け装置12の後端e1に相当する植付け爪駆動機構17の後端位置から前記縦向きフレーム72の軸芯に平行な後端位置指示ラインyよりも少し後方側に位置している。
上記縦向きフレーム72の軸芯に平行な後端位置指示ラインyは、この苗植付け作業が行われている状態では、鉛直線に対して少し前傾しているが、これは、苗植付け装置12がリンク機構11を介して、最下限位置よりも少し上昇揺動した位置で苗植付け作業が行われているためであり、苗植え付け作業が行われていない、乗用型田植機の運搬車両への積載時や格納時には、苗植付け装置12が最下限位置に達しているので、その状態では、前記縦向きフレーム72の軸芯、及びその軸芯に平行な後端位置指示ラインyは、鉛直線と合致又はほぼ合致するようになる。
この場合でも、前記薬剤散布装置13の後端e2は、苗植付け装置12の後端e1に相当する植付け爪駆動機構17の後端位置から前記縦向きフレーム72の軸芯に平行な後端位置指示ラインyよりも少し後方側に位置している。
この状態で、前記薬剤散布装置13を散布装置支持フレーム70から取り外せば、散布装置支持フレーム70の縦向きフレーム72及び前記取付台73は、後端位置指示ラインyよりも機体前方側に寄った箇所に位置している。したがって乗用型田植機を運搬車両に積載した場合などに、前記薬剤散布装置13を取り外しておくことで、薬剤散布装置13が後端位置指示ラインyよりも後方に位置して他物と接触して損傷したり、運搬車両の荷台からはみ出して積載することができないなどの不具合を回避することができる。
【0025】
〔粉粒体散布装置〕
次に、粉粒体散布装置の一例としての薬剤散布装置13について説明する。
図4乃至図6に示すように、薬剤散布装置13は、薬剤を貯留する貯留部としての貯留ホッパー24と、その貯留ホッパー24の下部に位置して貯留される薬剤を繰り出す繰出し手段としての繰出し機構25と、繰り出されて供給経路としての案内通路26を通して落下供給される薬剤を拡散させる回転式の拡散手段としての拡散放出機構27と、繰出し機構25の作動を制御するための電気制御ユニット28とを備えて構成されている。
【0026】
繰出し機構25及び拡散放出機構27は、ケーシング29に収納される構成となっており、このケーシング29は、合成樹脂材からなり、拡散放出機構27に薬剤を落下供給する案内通路26を構成する筒部30が一体形成されている。図4及び図7に示すように、ケーシング29は、左右両側の分割ケーシング部分29a,29bを合わせ面同士で接続する左右2つ割り構造となっている。
【0027】
図6〜図12に示すように、繰出し機構25は、薬剤通過用の開口31が形成された金属製の開口形成板32と、薬剤通過用の開口31を閉塞する閉状態と薬剤通過用の開口31を開放する開状態とにわたりスライド移動自在な金属製のシャッター部材33と、そのシャッター部材33を閉状態と開状態とに切り換えるアクチュエータとしてのソレノイド34とを備えて構成されている。
【0028】
開口形成板32とシャッター部材33とが上下に重なる状態で設けられ、シャッター部材33が開口形成板32に形成された薬剤通過用の開口31を閉じると閉状態となり、薬剤の落下供給が停止され、シャッター部材33が薬剤通過用の開口31を開放する位置までスライドすると、薬剤通過用の開口31が開放されて開状態となり、この開状態では、薬剤通過用の開口31を通して薬剤が下方に落下供給される構成となっている。
この構成では、薬剤通過用の開口31の下方側では、シャッター部材33だけが存在しており、シャッター部材33の下方には他の部材が存在しないので、薬剤が詰まり難い構成となっている。
【0029】
薬剤通過用の開口31は、図12に示すように、ソレノイド34によるシャッター部材33の移動方向に沿う方向での開口幅L1が移動方向と直交する方向での開口幅L2よりも小になるように横長の長方形状に形成され、開口面積を充分大きくしながらも、ソレノイド34によるシャッター部材33の移動操作量を短くすることができるようにしている。
【0030】
開口形成板32には、薬剤通過用の開口31が形成される水平面部分32aの開口側端部に下方に向けて屈曲する下向き屈曲片32bが形成され、それと反対のソレノイド34側端部には上方に向けて屈曲する上向き屈曲片32cが形成されている。又、水平面部分32aの開口側端部とソレノイド34側端部との中間部における幅方向両側部夫々に、シャッター部材33が下方に離間するのを防止するために、シャッター部材33を上下から囲うように略コ字状に屈曲する保持部32dが形成されている。
【0031】
この開口形成板32は、下向き屈曲片32bがケーシング29の筒部30の内側に形成された係止凹部35に係合して、シャッター部材33がソレノイド34に近接する方向にスライド移動することによって連なって移動することが規制され、且つ、上向き屈曲片32cがケーシング29の筒部30の外側の端縁部36に係合して、シャッター部材33がソレノイド34から離間する方向にスライド移動することによって連なって移動することが規制される構成となっている。
【0032】
シャッター部材33は、帯板状に形成されて、ソレノイド34の操作ロッド37に対して連結ピン38で枢支連結される構成となっており、開口形成板32の下側に接する状態で備えられ、保持部32dによって開口形成板32から上下に離間することを阻止する構成となっている。又、図9、図10、及び図12に示すように、シャッター部材33の開口遮蔽箇所33Aよりもソレノイド34側に寄った箇所に、開口形成板32とシャッター部材33との間に嵌まり込む薬剤を下方に落下させるために上下方向に貫通する掻き出し孔39が形成されている。
【0033】
図6に示すように、ケーシング29における筒部30の横一側箇所には、ソレノイド34を収納するためのソレノイド収納室40が形成されており、反対側箇所には、拡散放出機構27における電動モータ41を収納するためのモータ収納室42が形成されている。
ソレノイド収納室40側の筒部30の側壁には、シャッター部材33と開口形成板32とを挿通するためのスリット孔43が形成されている。このスリット孔43の上側には、開口形成板32とシャッター部材33とを水平姿勢で保持するための幅広案内部44が形成されており、この幅広案内部44の上面には、薬剤通過用の開口31に向かうほど下方に傾斜する傾斜面45が全幅にわたって形成されている。又、スリット孔43の上側における幅方向両側部には、開口形成板32の浮き上がりを防止する両側ガイド部46が形成されている。
【0034】
スリット孔43の下部側には、幅方向両側部にシャッター部材33を受止め支持する下側ガイド部47が形成されるとともに、シャッター部材33を開状態に切り換えたときに、掻き出し孔39の下方から排出される薬剤を拡散放出機構27に案内できるように幅広の排出用空間48が形成されている(図9参照)。
【0035】
シャッター部材33は、ソレノイド34に内装されるコイルバネ49が座金50を介して連結ピン38に作用することにより閉位置(薬剤通過用の開口31を閉じる位置)に移動付勢され、ソレノイド34に通電することによりコイルバネ49の付勢力に抗して引き操作することにより開位置(薬剤通過用の開口31を開放する位置)に移動操作することができるように構成されている。
【0036】
図6及び図8に示すように、拡散放出機構27は、横向き姿勢の受止め面51Aを備えて縦向きの回転軸芯Y周りで駆動回転される受止め体51と、その受止め体51の受止め面51Aに立設された拡散用羽根体52と、受止め体51を縦向きの回転軸芯Y周りで回転駆動する電動モータ41とを備えて構成されている。
【0037】
受止め体51は縦向きの回転軸芯Y周りで回転する状態で板面が上向きとなるように設けられた円板形状になっており、拡散用羽根体52が、周方向に沿って分散配置される状態で且つ受止め体51における回転軸芯Yから径方向外方側に寄った状態で放射状に複数個備えられている。従って、受止め体51における回転軸芯Yを含むその周囲の領域は、周方向全域にわたって拡散用羽根体52が存在しない羽根無し領域Qとして形成されている。
【0038】
具体的には、図8に示すように、拡散用羽根体52は、周方向に沿って約60度ずつ等間隔をあけて分散配置される状態で6個備えられており、各拡散用羽根体52は、受止め体51の半径の約半分の距離に相当する横幅を有し、且つ、横幅の略半分の距離に相当する高さを有する状態で、受止め体51の径方向外方側に寄った位置に立設される構成となっている。
【0039】
拡散用羽根体52の径方向での内端縁は径方向外方側ほど高くなる傾斜縁52Aに形成されている。拡散用羽根体52の上端縁は水平に形成され、拡散用羽根体52の下端側を受け止め支持する受止め体51の受止め面51Aは、径方向内方側が低く径方向外方側が高くなる傾斜面に形成されている(図6参照)。
【0040】
尚、受止め体51及び拡散用羽根体52は合成樹脂材にて一体形成される構成となっており、受止め体51には、電動モータ41の駆動軸53に外嵌する筒軸部80も一体形成されており、筒軸部80は、電動モータ41の駆動軸53に外嵌装着されてそれに横向きに装着されたビスbiを駆動軸53に圧接して受止め体51が駆動軸53と一体回転するように連結されている。
【0041】
図6に示すように、ケーシング29により一体形成された筒部30により構成される案内通路26が、受止め体51における羽根無し領域Qに薬剤を案内するように形成されている。
説明を加えると、上述したように、受止め体51における回転軸芯Yを含むその周囲の領域は周方向全域にわたって拡散用羽根体52が存在しない羽根無し領域Qとして形成されるが、図6に示すように、案内通路26の下端の出口54が平面視で羽根無し領域Qに対応する位置に設けられている。さらに説明すると、案内通路26の下端の出口54は、羽根無し領域Qにおける最も径方向外方側に位置する箇所に対応する位置に設けられている。
【0042】
羽根無し領域Qにおける最も径方向外方側箇所に薬剤を落下供給することで、落下した薬剤を周方向に均すようにしながら、極力迅速に拡散用羽根体52による拡散放出作用を行えるようにしている。ちなみに、回転軸芯Yに近い位置に落下することもできるが、そうすると、薬剤を周方向に均す機能は発揮し易いが、滞留時間が長くなって拡散用羽根体52による拡散放出作用が遅れて薬剤の拡散放出タイミングが遅れるおそれがある。
【0043】
図6に示すように、円板形状の受止め体51は中央部が下向きに突出する形状となっており、受止め体51の上部側の位置する受止め面51Aが回転軸芯Y側ほど下方に位置する中凹み状の傾斜面に形成されている。このように構成することで薬剤を周方向に均す機能をより発揮させ易いようにしている。
【0044】
案内通路26が、繰出し機構25側の開口面積を出口54側の開口面積より大にする形態で形成されている。説明を加えると、この案内通路26は、平面視で横断面形状が略四角形状に形成されており、この案内通路26を形成する4つの内面のうち径方向外方側に位置する内面55(図6、図9参照)の上下途中箇所に、出口54側に向かうほど径方向に沿う方向での案内通路26の幅が順次幅狭になるように傾斜面56が形成されている。但し、受止め体51の径方向内方側に位置する内面57は上下方向に沿って平坦面に形成されている。
【0045】
このような構成により、繰出し機構25から繰り出されて下方に案内される薬剤は、傾斜面56により径方向内方側に向けて流下案内されるので、拡散用羽根体52の通過箇所に向けて案内されることを回避して、羽根無し領域Qに落下供給させ易いものとなる。
【0046】
受止め体51を縦向きの回転軸芯Y周りで回転駆動する電動モータ41が、受止め体51の上方に位置する状態で備えられ、繰出し機構25に備えられたソレノイド34が、電動モータ41の横側箇所に位置する状態で備えられている。このように電動モータ41とソレノイド34とを横方向に並ぶ状態で配備することで、薬剤散布装置13の上下方向の外形寸法をコンパクト化することができる。
【0047】
そして、図6及び図7に示すように、受止め体51における上方側には上部側を仕切る天井壁部58Aが設けられ、又、受止め体51の外周側には、周方向の一部の領域から薬剤が外方に拡散放出されるのを規制する規制用縦壁58Bが備えられ、且つ、この規制用縦壁58Bの両側部の夫々に、受止め体51における周方向の他の領域から外方に拡散放出される薬剤の拡散放出方向を調整する拡散方向調整板59,60が備えられている。
【0048】
拡散方向調整板59,60は、ボルトBoにより天井壁部58Aに取り付けられており、ボルトBoを緩めて、左右回動位置を変更させて再度締め付けることで薬剤の拡散放出方向(開き角度)を変更調整することが可能なように構成されている。
薬剤の拡散放出方向(開き角度)を変更調整するにあたって、ボルトBoの緩み操作により位置調整する構成に代えて、拡散方向調整板59,60を、天井壁部58Aに対して縦軸芯周りで回動自在に且つ摩擦により位置保持する状態で取り付け、手動操作にて摩擦保持力に抗して位置変更可能に構成するものでもよい。
【0049】
規制用縦壁58Bは、ケーシング29に一体成形される状態で設けられ、受止め体51の外周縁の近傍に、周方向に沿って約半周にわたり受止め体51の外周部を覆うように、所定の上下幅を有する状態で且つ外周縁に沿うように平面視で半円弧状に形成されている。
【0050】
又、規制用縦壁58Bの両側端部に、規制用縦壁58Bの上下幅と略同じ上下幅を有し、且つ、前後方向に延びる状態で拡散方向調整板59,60が取り付けられている。この調整板59,60は、規制用縦壁58Bの内面に連なる状態で設けられ、受止め体51の回転に伴って遠心力が作用する薬剤を案内して拡散放出方向を調整することができるように構成されている。ちなみに、図7及び図8に示すものでは、左右の拡散方向調整板59,60の長さは略同じ長さに設定されている。
【0051】
〔電気制御ユニット〕
この乗用型田植機の走行機体3には充電式のバッテリーが搭載されておらず、エンジン4によって駆動される発電機61(例えば、前照灯等を点灯させるために設けられる発電機等)にて発電された電力が薬剤散布装置13における電気制御ユニット28に供給されるように構成されている。ちなみに、バッテリーが搭載されていないので、エンジン4はリコイル式の始動装置(図示せず)により始動される構成となっている。
【0052】
図13に示すように、電気制御ユニット28は、電源入切スイッチ62を介して供給される発電機61からの交流電力を整流回路63により整流したのち第1レギュレータ回路64により直流12Vに電圧調整して、その直流12Vの電力を電動モータ41及びソレノイド34の駆動用の電力として利用するように構成され、さらに、第1レギュレータ回路64の出力を第2レギュレータ回路65により直流5Vに電圧調整して制御手段としての制御装置66の駆動用電力として利用するように回路が構成されている。尚、直流12Vの電力は、制御装置66によりオンオフ制御されるスイッチングトランジスタ67を介してソレノイド34に供給されるように構成されている。
【0053】
又、圃場における単位面積当たりの薬剤の散布量をおおまかに大側の調整範囲と小側の調整範囲との2段に切り換える散布量切換スイッチ68と、各段において散布量を微調節可能なポテンショメータ式の散布量調整器69とが備えられ、これらの出力が制御装置66に入力され、制御装置66が、散布量切換スイッチ68及び散布量調整器69の出力に基づいてシャッター部材33を開状態に切り換える開作動用の設定時間を設定するように構成されている。ちなみに、開作動用の設定時間は、予め設定されている最大時間を越えない範囲で散布量切換スイッチ68と散布量調整器69とにより設定される散布量に相当する時間が設定される。
【0054】
第1レギュレータ回路64により出力される直流12Vの端子とソレノイド34の入力端子とを、スイッチングトランジスタ67を迂回して直接接続する状態に切り換えて強制的にソレノイド34を開作動させるための強制排出スイッチ81が備えられている。この強制排出スイッチ81は押し操作によりオン状態となり、手を離すとオフ状態に戻るように復帰付勢される構成となっている。
【0055】
図7に示すように、電源入切スイッチ62、散布量切換スイッチ68、散布量調整器69、及び、強制排出スイッチ81は夫々、ケーシング29の外部から手動操作可能に設けられている。
【0056】
そして、苗植付け装置12における縦送り装置21が送り作動したことを検出する縦送り検出センサ82が備えられ、この縦送り検出センサ82の出力が制御装置66に入力されており、制御装置66は、縦送り検出センサ82にて検出される縦送り装置21の送り作動が設定回数行われたことを検出する毎に、散布量切換スイッチ68と散布量調整器69とにより設定される散布量に相当する設定時間が経過する間だけ、シャッター部材33を開状態に切り換え、その後閉状態に戻すようにソレノイド34の作動を制御するように構成されている。尚、電動モータ41は所定の回転速度で受止め体51を回転駆動する。
【0057】
縦送り装置21の送り作動が設定回数行われると、走行機体3が設定距離走行することになるので、上述したような散布動作を実行することで、乗用型田植機が苗植付け作動を実行しながら走行を行っているときに、走行機体3が設定距離走行する毎に、4条分の既植苗が存在する領域(薬剤供給対象領域)に薬剤を散布供給することができ、圃場の単位面積当たりに目標値(設定量)の薬剤を供給することができるのである。
【0058】
〔その他〕
図16乃至図18は、線引きマーカ83の取付構造を示す。
この線引きマーカ83は、苗植付け装置12の左右両側に装備させてあり、車体前後方向に沿う前後向き軸芯p1周りで上下揺動可能に構成されている。
この線引きマーカ83は、基端側から遊端側に亘る一連の長い棒状のバネ鋼からなるマーカアーム84と、そのマーカアーム84の遊端側に装着された回転マーカ85と、前記マーカアーム84の基端側部分に装着された補強アーム86とを備えている。
【0059】
前記のマーカアーム84の基端側は前後方向に屈曲させてあって、その屈曲部分を苗植付け装置12側の固定ブラケット12Aに枢支させることによって、前記前後向き軸芯p1周りで上下揺動自在に構成されている。
また、前記マーカアーム84の前後方向に屈曲されて前記固定ブラケット12Aに枢支される部分は、図17及び図18に示されているように平面視U字状の起伏操作部材87を貫通し、その起伏揺動部材87に、操作ワイヤ88および復帰バネ89が、前記前後向き軸芯p1を挟んで両側に振り分けられた連結点p2,p3に連結されている。
したがって、前記操作ワイヤ88が緩められたマーカ作用姿勢では、図16に実線で示されているように回転マーカ85が水田に接して回転しながらマーキングを行い、前記操作ワイヤ88が復帰バネ89を伸長させながら引っ張られると、図16に仮想線で示されているように線引きマーカ83が持ち上げられて非作用姿勢となる。
【0060】
前記起伏揺動部材87には、図17及び図18に示されているように、マーカアーム84の基端側部分とマーカアーム84の中間部とにわたって設けられた前記補強アーム86の基端側が、ボルト86aを介して起伏揺動部材87に連結固定されている。
この補強アーム86は、バネ鋼で構成されたマーカアーム84の基端側近くでの撓み変形を少なくするために設けられたものであり、上下方向に幅広の板材からなる補強アーム86が上下方向で変形し難い構造であることを利用して、マーカアーム84の上下方向での撓みすぎを抑制するように構成してある。
【0061】
〔別実施形態の1〕
図14及び図15は、本発明における別の実施形態を示すものであり、この実施形態では、粉粒体散布装置として、前述した薬剤散布装置13とは別に施肥装置23を備えている。
前記施肥装置23は、上部に粉粒体貯留部としての施肥タンク90を備え、その下部に繰出し機構91を備え、さらに下方側に作溝器92、及び植付け爪駆動機構17の上部側に位置させた泥除けカバー93を備えて構成された周知の構造のものである。
上記施肥装置23に対しては、図15に示すように、右側の植付け爪駆動機構17から取り出した駆動力を施肥装置23の右側の繰出し機構25に対して伝達する連動ロッド23a、及び左側の植付け爪駆動機構17から取り出した駆動力を施肥装置23の左側の繰出し機構25に対して伝達する連動ロッド23aを介して、苗植付け装置12側の駆動力が伝達されるように構成してある。
【0062】
この構造のものでは、前記散布装置支持フレーム70の横向きフレーム71が、図15に示すように左右の植付け伝動ケース15にわたって左右方向に向けられた部分だけではなく、図14に示すように前後方向にも長く延設された部分を備えている。そして、その前後方向に長く延設された部分は前記施肥装置23の泥除けカバー93の下方側を通って前方側へ延出され、左右の植付け伝動ケース15の上部側に連結され、この横向きフレーム71の後端側の前記左右方向に向けられた部分は前記植付け爪駆動機構17を含む苗植付け装置12の後端e1よりも後方側に位置している。
この構造における前記横向きフレーム71は、図14及び図15に示すように、左右の各植付け伝動ケース15側から立ち上がる脚部71Aが、施肥装置23の下部よりも前方側へ延出された前端部から斜め後方上方へ向けて延設してあり、その脚部71Aの後方上端部同士を連結するように横向きに延設された横杆部71Bが設けられている。
この横杆部71Bは、図14に示すように、側面視で脚部71Aの後方上端部から、脚部71Aの延長線よりもさらに急角度での後上がり傾斜で、かつ図15に示すように背面視で左右方向での中央側ほど高くなるように傾斜した杆部分71eと、その左右の傾斜した杆部分71e,71eの中央側を接続する水平方向の横向きの杆部分71dとで形成され、背面視では、ほぼ逆U字状に形成されている。
この横向きフレーム71は、前記横杆部71Bの左右の傾斜した杆部分71e、及び中央の横向きの杆部分71dが握り部として用いることができるようになっているので、苗植付け装置12を押し下げ操作して機体後部の浮き上がりを防止したり、苗植付け装置12の左右傾動を安定させたりするための握り操作具として機能する。この場合、前記横杆部71Bが左右の傾斜した杆部分71e,71eを備えているので、機体の前進又は後進方向の直前ではなく少し横方向に外れた位置で把持して、前述したような機体後部の浮き上がりを防止したり、苗植付け装置12の左右傾動を安定させたりする等の操作を行い易い。
また、前記縦向きフレーム72を取り付けない場合でも、横向きフレーム71を残しておけば握り操作具として使用できる。
【0063】
この構造では、前記横向きフレーム71の後端側に位置する水平方向の横向きの杆部分71dが、前記苗植付け装置12の後端e1に相当する植付け爪駆動機構17の後端位置よりも後方側に位置する散布装置支持フレーム70の後端e3となる。この場合、前記薬剤散布装置13の後端e2は前記散布装置支持フレーム70の後端e3よりも後方側に位置することになるが、前記薬剤散布装置13を取り外せば散布装置支持フレーム70の後端e3が最も後端側に位置するので、この散布支持フレーム70が後方側のプロテクタやリヤバンパとして機能する。
また、前記施肥装置23の後端e4(連動ロッド23aが接続される繰出し機構91の入力アーム91aの後端位置)は、苗植付け装置12の後端e1に相当する植付け爪駆動機構17の後端位置とほぼ同等の位置であるので、前記散布装置支持フレーム70を取り外せば前記薬剤散布装置13も取り外され、機体全長を短くした状態で運搬車両に積載する際の便を図ることができる。
【0064】
前記縦向きフレーム72は、前記横向きフレーム71の後端側の前記左右方向に向けられた部分の左右方向での中間部に位置して、前述した実施形態に示したものと同様に、固定用ブラケット71cに対して下部ブラケット72aに連結して立設され、上端部に取り付けられた取付台73、及び薬剤散布装置13側の連結台74を介して薬剤散布装置13を取り付けてある。
【0065】
前記施肥装置23は、施肥支持枠94から下方側へ延出された左右一対の支柱94aの下部に第1取付板95を溶接して固定し、この第1取付板95を、前記左右の植付け伝動ケース15の上部に溶接固定された前後2カ所のボス部材15aに対して、第1取付ボルト95aを介して連結固定されることにより、左右の各植付け伝動ケース15に対して施肥装置23を着脱可能に取り付けてある。
そして、前記薬剤散布装置13を支持する散布装置支持フレーム70の横向きフレーム71は、その左右両側の下端部に第2取付板96を溶接して固定してあり、この第2取付板96を前記第1取付板95に対して第2取付ボルト96aを介して連結固定してあり、この第2取付ボルト96aを着脱操作することで、施肥装置23側の取付部材であるところの前記第1取付板95、及び第1取付ボルト95aを操作することなく、散布装置支持フレーム70ごと薬剤散布装置13を着脱操作することができる。
【0066】
前記泥除けカバー93は、左右方向で2個の分割された分割カバー体93a,93bによって構成してあり、その分割箇所は、前記散布装置支持フレーム70の縦向きフレーム72が存在する箇所と同じ左右方向での中央位置であり、前記縦向きフレーム72の存在箇所を中心にして左右両側に振り分けられている。
これらの分割カバー体93a,93bは、それぞれ施肥装置23の左右の繰出し機構91に対して個々に着脱自在に取り付けてある。このように泥除けカバー93が分割されていることにより、前方側の植付け爪駆動機構17部分などを点検したい場合に、繰出し機構91から取り外した泥除けカバー93を、下方側の横向きフレーム71と上方側の繰出し機構91や施肥タンク90との間から、後方側へ抜き出すとき、前記散布装置支持フレーム70の横向きフレーム71や縦向きフレーム72が邪魔にならずに比較的簡単に抜き出し易いので、メンテナンス作業等を行う際に便利である。その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成されている。
【0067】
〔別実施形態の2〕
前記苗植付け装置12の後端よりも後方側に位置するように、散布装置支持フレーム70の横向きフレーム71を後方側へ延出した構造のものでは、その横向きフレーム71部分をリヤバンパーとして利用したり、機体を後進させながら畦越え作業を行う際に機体の後端側が浮き上がらないように押さえ込みながら操作するための部材である畦越えアームとして利用することも可能である。
また、その横向きフレーム71部分に、図示しないが、エンジン停止スイッチや、クラッチ操作具、あるいはブレーキ操作具やアクセル操作具など、適宜に備えさせることによって畦越え操作をより一層楽に行わせ易く構成することができる。その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成されている。
【0068】
〔別実施形態の3〕
実施の形態では、散布装置支持フレーム70の縦向きフレーム72を一本のパイプ材からなる棒状のもので構成したが、これに限らず、板状部材や角材などによって構成してもよく、また、左右方向幅を広く取らないように接合あるいは近接させた複数の棒状部材で構成してもよい。その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成されている。
【0069】
〔別実施形態の4〕
実施の形態では、散布装置支持フレーム70の横向きフレーム71及び縦向きフレーム72を、前記苗植付け装置12の後端e1に相当する植付け爪駆動機構17の後端位置よりも前方側に位置させたものにおいて、薬剤散布装置13の後端e2を、苗植付け装置12の後端e1に相当する植付け爪駆動機構17の後端位置から後端位置指示ラインyよりも少し後方側に位置させたものであるが、これに限らず、薬剤散布装置13の後端e2を、苗植付け装置12の後端e1に相当する植付け爪駆動機構17の後端位置から前記後端位置指示ラインyと一致する、又は後端位置指示ラインyよりも少し前方側に位置するように配設したものであってもよい。この場合には、前記薬剤散布装置13を散布装置支持フレーム70から取り外すことなく運搬車両に積載することも可能になる。その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成されている。
【0070】
〔別実施形態の5〕
実施の形態では、薬剤散布装置13の繰出し機構25として、薬剤通過用の開口31を開閉操作するシャッター部材をソレノイド34で操作するようにした構造を示したが、これに限らず、例えば、植付け爪駆動機構17の植付アーム18の作動と機械的に連係させてシャッター部材34を開閉操作するなど、適宜の駆動構造を採用することができる。
その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成されている。
【0071】
〔別実施形態の6〕
図19は、植付け爪駆動機構17の作動とシャッター部材34の開閉作動とを機械的に連係させる構造の一例であり、次のように構成されている。
この植付け爪駆動機構17は、4条植えに構成してあり、右2条を植付ける植付けアーム18R、及び左2条を植付ける植付けアーム18Lを備えており、それぞれの植付けアーム18R及び植付けアーム18Lの作動が、連係ロッド17aを介して操作部材17bに伝えられ、シャッター部材34の開閉作動を行うように構成してある。
すなわち、一つのシャッター部材34を、左右の植付け爪駆動機構17に対して機械的に連係させるのであるが、この構造では、前記操作部材17bに形成された円弧状の長孔17cに前記連係ロッド17aの上端側を係入させてあり、左右の各植付けアーム18R,18Lが共に作動している全条植え状態では、各植付けアーム18R,18Lの作動に連動して連係ロッド17aが押し引きされ、シャッター部材34が開閉作動されるように構成してある。
尚、この図19では、便宜上、操作部材17bのシャッター部材34に接続される部分である操作部17dを左右2箇所に記載しているが、操作部材17bには、左右の連係ロッド17aが係入される円弧状の長孔17cは左右2箇所に形成してあり、前記操作部17dは操作部材17bの一箇所に設けてあってシャッター部材34に接続されている。
【0072】
そして、前記左右の各植付けアーム18R,18Lのうちの一方、例えば、植付け爪駆動機構17の右側の植付アーム18Rの少数条クラッチ(図外)が切られて停止すると、右側の連係ロッド17aを介して戻しバネ34aに抗して操作部材17bがシャッター部材34を引き出して薬剤通過用の開口31を閉塞する。
このとき、植付け爪駆動機構17の左側の植付アーム18Lの少数条クラッチ(図外)は入り状態のままで苗植付け作動を継続するが、前記連係ロッド17aの上端部は操作部材17bに形成されている長孔17c内で往復移動するだけで、前記シャッター部材34による薬剤通過用の開口31の閉塞状態は維持されるように構成してある。したがって、一方の少数条クラッチが切り操作されると、薬剤散布装置13からの薬剤散布は停止された状態で、のこりの少数条クラッチが入り状態の植付アーム18Lでの苗植付け作動が行われる。その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成されている。
【0073】
〔別実施形態の7〕
実施の形態では、散布装置支持フレーム70として横向きフレーム71と縦向きフレーム72とを用いて粉粒体散布装置を取り付けるようにしたものを示したが、粉粒体散布装置を取り付けずに、散布装置支持フレーム70のうちの、左右の各植付け伝動ケース15,15等の機体固定部に亘って左右向きに架設された横向きフレーム71のみを取り付けて用いることもできる。
この場合にも、前記横向きフレーム71は、その横杆部71Bが握り部として用いることができるようになっているので、例えば機体を前進又は後進させながらの畦越え作業時において、苗植付け装置12を上昇させた状態で苗植付け装置12を押し下げ操作して機体後部の浮き上がりを防止したり、苗植付け装置12の左右傾動を安定させたりするための握り操作具として機能する。その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成されている。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、粉粒体散布装置として薬剤の散布のみを行うもの、薬剤と肥料との散布を行うもので、あるいは、肥料のみを散布するものなど、乗用型田植機で用いられる粉粒体として適宜の散布対象を選択して用いることができる。
【符号の説明】
【0075】
12 苗植付け装置
13 粉粒体散布装置(薬剤散布装置)
15 植付け伝動ケース
17 植付け爪駆動機構
23 粉粒体散布装置(施肥装置)
70 散布装置支持フレーム
71 横向きフレーム
72 縦向きフレーム
90 粉粒体貯留部
93 泥除けカバー
93a,93b 分割カバー体
e1 苗植付け装置の後端
e2 粉粒体散布装置の後端
e3 散布装置支持フレームの後端
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の後部に苗植付け装置を装備し、前記苗植付け装置の後部側に散布装置支持フレームを介して粉粒体散布装置を装備した乗用型田植機であって、
前記苗植付け装置は、後部側の植付け爪駆動機構に動力を伝える複数の植付け伝動ケースを前後方向に沿わせて配設してあり、
前記散布装置支持フレームは、前記複数の植付け伝動ケースに亘って左右方向に架設された横向きフレームと、その横向きフレームの左右方向での中間位置から上方へ向けて立設された棒状の縦向きフレームとを備えて構成され、
前記縦向きフレームの上端部に粉粒体散布装置を装備させてあることを特徴とする乗用型田植機。
【請求項2】
前記散布装置支持フレームは前記苗植付け装置の後端よりも前方側に設けてあり、その散布装置支持フレームの前記縦向きフレームよりも後方側に後端が位置する粉粒体散布装置を、前記縦向きフレームに対して着脱可能に装着してある請求項1記載の乗用型田植機。
【請求項3】
前記散布装置支持フレームの後端は、前記苗植付け装置の後端よりも後方側に設けてあり、その散布装置支持フレームを苗植付け装置に対して着脱可能に装着してある請求項1記載の乗用型田植機。
【請求項4】
前記粉粒体散布装置とは別の粉粒体散布装置を、前記散布装置支持フレームの縦向きフレームよりも前方側に位置させて、前記散布装置支持フレームとは別の取付部材を介して前記複数の植付け伝動ケースに対して取り付けてある請求項3記載の乗用型田植機。
【請求項5】
前記苗植付け装置の植付け爪の作動箇所の上方側で、かつ前記別の粉粒体散布装置の粉粒体貯留部の下方側に、前記別の粉粒体散布装置に対して着脱可能に装着された泥除けカバーを備え、前記泥除けカバーを左右方向で複数個に分割された分割カバー体によって構成するとともに、その分割カバー体を前記散布装置支持フレームの前記縦向きフレームの左右両側に振り分けて配設してある請求項4記載の乗用型田植機。
【請求項1】
走行機体の後部に苗植付け装置を装備し、前記苗植付け装置の後部側に散布装置支持フレームを介して粉粒体散布装置を装備した乗用型田植機であって、
前記苗植付け装置は、後部側の植付け爪駆動機構に動力を伝える複数の植付け伝動ケースを前後方向に沿わせて配設してあり、
前記散布装置支持フレームは、前記複数の植付け伝動ケースに亘って左右方向に架設された横向きフレームと、その横向きフレームの左右方向での中間位置から上方へ向けて立設された棒状の縦向きフレームとを備えて構成され、
前記縦向きフレームの上端部に粉粒体散布装置を装備させてあることを特徴とする乗用型田植機。
【請求項2】
前記散布装置支持フレームは前記苗植付け装置の後端よりも前方側に設けてあり、その散布装置支持フレームの前記縦向きフレームよりも後方側に後端が位置する粉粒体散布装置を、前記縦向きフレームに対して着脱可能に装着してある請求項1記載の乗用型田植機。
【請求項3】
前記散布装置支持フレームの後端は、前記苗植付け装置の後端よりも後方側に設けてあり、その散布装置支持フレームを苗植付け装置に対して着脱可能に装着してある請求項1記載の乗用型田植機。
【請求項4】
前記粉粒体散布装置とは別の粉粒体散布装置を、前記散布装置支持フレームの縦向きフレームよりも前方側に位置させて、前記散布装置支持フレームとは別の取付部材を介して前記複数の植付け伝動ケースに対して取り付けてある請求項3記載の乗用型田植機。
【請求項5】
前記苗植付け装置の植付け爪の作動箇所の上方側で、かつ前記別の粉粒体散布装置の粉粒体貯留部の下方側に、前記別の粉粒体散布装置に対して着脱可能に装着された泥除けカバーを備え、前記泥除けカバーを左右方向で複数個に分割された分割カバー体によって構成するとともに、その分割カバー体を前記散布装置支持フレームの前記縦向きフレームの左右両側に振り分けて配設してある請求項4記載の乗用型田植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−161248(P2012−161248A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21977(P2011−21977)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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