説明

乗用溝切機

【課題】進行方向の変更修正を容易に行えるとともに、溝をきれいに形成することのできる乗用溝切機を提供する。
【解決手段】駆動車輪(12)、エンジン(15)を含む走行駆動系、及び操舵用ハンドル(22)が設けられた前フレーム(20)と、作業者が跨乗する着座シート(55)及び溝切板(14)が設けられた後フレーム(50)とを備え、前記前フレーム(20)が前記後フレーム(50)に対して水平面内で操向可能とされてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田等の圃場において給排水を迅速円滑に行うための溝を形成するのに好適な乗用溝切機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の乗用溝切機として、下記特許文献1等に見られるように、メインフレームの前部に駆動車輪が設けられるとともに、メインフレームの後部に溝切板が設けられ、また、メインフレームの中央部に固定板を介して作業者が跨乗する着座シートが設けられるとともに、該着座シートの前部にハンドルが設けられ、さらに、前記車輪を駆動するためのエンジンがメインフレームと溝切板との間あたりに配在されているものが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−73540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記した如くの従来の乗用溝切機では、ハンドルが設けられているものの操舵機構は持っていないため、進行方向を変更修正する際(軌道修正する際)には、足を着いて本機を傾け、足を軸として本機全体を旋回移動させる必要があり、進行方向の変更修正が面倒であるとともに、進行方向の変更修正時には溝切板が傾くため、形成される溝が不整形状となる等の問題があった。
【0005】
また、操舵機構をもっている場合でも、直進性を保持して走行することが難しく、運転が難しい等の問題もある。
【0006】
さらに、この種の乗用溝切機では、足場の悪い圃場を不安定な状態で走行することになるので、エンジンのスロットル開度調整(走行速度調整)やクラッチ断接操作(エンジンから駆動車輪への動力伝達断接操作)は、できるだけ簡単容易に行えるようにすることが望まれる。
【0007】
加えて、スロットル開度が大のとき(高速走行時)にクラッチを切る(動力伝達を断つ)と、本機が急停車し、特に重心が前部側にある乗用溝切機では、後部側が浮いて前方側へ転倒してしまう等の不具合が発生するおそれがある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その主目的とするところは、進行方向の変更修正を容易に行えるとともに、溝をきれいに形成することができ、しかも、直進性が向上して、運転を容易に行える乗用溝切機を提供することにある。
【0009】
他の目的とするところは、エンジンのスロットル開度調整(走行速度調整)やクラッチ断接操作(エンジンから駆動車輪への動力伝達断接操作)を、できるだけ簡単容易に行えるとともに、急停車による前方転倒等を防止できる乗用溝切機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成すべく、本発明に係る乗用草刈機は、基本的には、駆動車輪、エンジンを含む走行駆動系、及び操舵用ハンドルが設けられた前フレームと、作業者が跨乗する着座シート及び溝切板が設けられた後フレームとを備え、前記前フレームが前記後フレームに対して水平面内で操向可能とされていることを特徴としている。
【0011】
好ましい態様では、前記前フレームにおける前記ハンドルの操作点が、前記後フレームに対する前フレームの回動中心から所定の距離だけ前方にオフセットされる。
【0012】
前記前フレームと後フレームとは、好ましくは、それらの一方に設けられた回動軸と他方に設けられた軸受とを介して水平面内で回動可能に連結される。
【0013】
より好ましい態様では、前記前フレームと後フレームとは、水平面内で弾性撓曲可能な連結部材を介して連結される。
【0014】
この場合、前記弾性撓曲可能な連結部材は、前記前フレームと後フレームに対して垂直に配在された板ばねで構成される。
【0015】
また、前記板ばねは、好ましくは、複数枚の金属板が重ね合わせられた構造とされる。
【0016】
一方、本発明に係る乗用溝切機の他の好ましい態様では、単一の操作レバーが前記エンジンのスロットル開度調整用と前記エンジンから前記駆動車輪への動力伝達断接用とに共用される。
【0017】
この場合、好ましい態様では、前記操作レバーを揺動させることにより、前記スロットル開度調整と前記動力伝達断接の両方を同時に行えるようにされる。
【0018】
また、好ましい態様では、前記操作レバーを一方向に揺動させた際、前記スロットル開度がある程度減少した後、前記動力伝達が切断されるように構成される。
【0019】
他の好ましい態様では、前記操作レバーがT形、門形、もしくはループ状とされていて、左右いずれの手指でも操作できるようにされる。
【0020】
別の好ましい態様では、前記ハンドルがT形、門形、もしくはループ状とされていて、該ハンドルの縦辺部もしくは左右辺部に前記操作レバーの揺動支点が設けられる。
【発明の効果】
【0021】
上記の如くの構成とされた本発明に係る乗用溝切機では、駆動車輪、エンジンを含む走行駆動系、及び操舵用ハンドルが設けられた前フレームが、例えば回動軸と軸受とを介して、作業者が跨乗する着座シート及び溝切板が設けられた後フレームに対して水平面内で旋回可能に連結されているので、ハンドルを操作することで、進行方向の変更修正(軌道修正)を、従来の操舵機構を有していない乗用溝切機に比べて簡単容易に行え、また、進行方向の変更修正時に本機を傾けなくてもよいので、溝をきれいに形成することができる。
【0022】
また、前フレームにおけるハンドルの操作点が後フレームに対する前フレームの回動中心から所定の距離だけ前方にオフセットされ、さらに、前フレームにエンジンを含む走行駆動系等が搭載されて重くされることにより、ハンドル操作(操舵性)が鈍く、かつ、重くなるので、所要の直進性を確保できる。
【0023】
また、前記前フレームと後フレームとを、それらに対して垂直に配在された板ばねを介して連結することにより、ハンドル操作(操舵性)が鈍く、かつ、重くなるので、所要の直進性を確保できることに加えて、それらを回動軸と軸受を介して連結した場合に比して、車輪及び前フレームが極狭い角度範囲でしか旋回しないため、取扱性が向上し、さらに、構造の簡素化、軽量化、低コスト化を図れるとともに、回転摺動部が存在しないため、作動不良等が起こり難くなり、加えて、板ばねの持つ弾性復元力により、中立直進位置復元機能(セルフニュートラル復帰機能)も備えることとなり、利便性が一層向上する。
【0024】
加えて、駆動車輪(前輪)が設けられた前フレームに対して溝切板が設けられた後フレームが板ばね等を介して回動可能に連結されていることから、溝切板の進行方向は、走行時における泥土の抵抗によって、駆動車輪(前輪)の進行方向に自動的に合わせられる。このため、仮に、製造組立時において、駆動車輪(前輪)と溝切板との間に、センター線のずれや角度ブレ(非平行)等があっても、走行時において所要の直進性を確保できる。このことは、製造組立にあたって、寸法精度や平行度の許容範囲が広くなることを意味しており、その結果、コストダウンを図ることができる。
【0025】
一方、単一の操作レバーがスロットル開度調整用と動力伝達断接用とに共用され、この操作レバーを揺動させることにより、スロットル開度調整と動力伝達断接の両方を同時に行えるようにされるので、スロットル開度調整操作と動力伝達断接操作の両方をワンタッチで極めて簡単容易に行うことができる。
【0026】
また、前記操作レバーを一方向に揺動させた際、前記スロットル開度がある程度減少した後、前記動力伝達が切断されるように構成されることにより、急停車による前方転倒等を起こり難くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の乗用溝切機の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0028】
図1、図2は、それぞれ本発明に係る乗用溝切機の第1実施形態を示す左側面図、エンジン等を取り去った状態の平面図である。
【0029】
図示例の乗用溝切機10は、断面溝形状の前フレーム20と梯子状の後フレーム50を備えている。前記前フレーム20には、駆動車輪12、エンジン15を含む走行駆動系、及び操舵用ハンドル22が設けられ、前記後フレーム50には、作業者が跨乗する着座シート55及び溝切板14が設けられており、それら前フレーム20と後フレーム50とは、前フレーム20の下面後部寄りに下向きに垂設された回動軸21と、後フレーム50の前部に連結固定された左右一対の側面視へ字状の連結保持板32、32の先端部に設けられた、前記回動軸21を回動自在に支持する軸受34とを介して水平面内で回動可能に連結されている。
【0030】
詳細には、前フレーム20の上面には、減速機17付きのエンジン(小型空冷ガソリンエンジン)15が搭載され、前記エンジン15の動力は、図3、図4に示される如くに、減速機17の出力軸18から、前フレーム20の右側面下側に配設されたケース24内のベルトプーリ式動力伝達機構26、及び、固定連結板23に保持固定された車輪支持フレーム25内の多段歯車式減速機構27を介して駆動車輪12(の車軸13)に伝達される。
【0031】
また、後フレーム50には、その下面後部寄りに下向きに垂設された支柱52を介して平面視概略二等辺三角形状の溝切板14が取り付けられている。また、後フレーム50の前端部と前記支柱52の下端部とは補強ステー56により連結されている。
【0032】
前記前フレーム20の前端部には水平保持板36が取り付けられ、この水平保持板36の両端には、門形で若干後方に傾けられた操舵用ハンドル22の両下端部が固着されている。ここでは、ハンドル22の両下端部が前フレーム20におけるハンドル操作点Pとされ、このハンドル操作点Pは、後フレーム50に対する前フレーム20の回動中心(回動軸21の中心)Oから所定の距離Laだけ前方にオフセットされている。
【0033】
なお、前フレーム20の前方及び左右下側には、駆動車輪12の前部側上半分程度を覆うように前方突出板37や稲の巻き込み防止板38等が配設されている。
【0034】
上記の如くの構成とされた本実施形態の乗用溝切機10では、駆動車輪12、エンジン15を含む走行駆動系、及び操舵用ハンドル22が設けられた前フレーム20が、回動軸21と軸受34とを介して、作業者が跨乗する着座シート55及び溝切板14が設けられた後フレーム50に対して水平面内で回動可能に連結されているので、ハンドル22を操作することで、進行方向の変更修正(軌道修正)を、従来の乗用溝切機に比べて簡単容易に行え、また、進行方向の変更修正時に本機を傾けなくてもよいので、溝をきれいに形成することができる。
【0035】
また、前フレーム20におけるハンドル22の操作点Pが後フレームに対する前フレームの旋回中心Oから所定の距離Laだけ前方にオフセットされ、さらに、前フレーム20にエンジン15を含む走行駆動系等が搭載されて重くされていることから、ハンドル操作(操舵性)が鈍く、かつ、重くなるので、所要の直進性を確保できる。
【0036】
さらに、駆動車輪(前輪)12が設けられた前フレーム20に対して溝切板14が設けられた後フレーム50が回動軸21及び軸受け34を介して回動可能に連結されていることから、溝切板14の進行方向は、走行時における泥土の抵抗によって、駆動車輪(前輪)12の進行方向に自動的に合わせられる。このため、仮に、製造組立時において、駆動車輪(前輪)12と溝切板14との間に、センター線のずれや角度ブレ(非平行)等があっても、走行時において所要の直進性を確保できる。このことは、製造組立にあたって、寸法精度や平行度の許容範囲が広くなることを意味しており、その結果、コストダウンを図ることができる。
【0037】
以上の構成に加え、本実施形態では、前記ハンドル22の前面側上半分に寄り添うように、前記エンジン15のスロットル開度調整用と前記エンジン15から前記駆動車輪12への動力伝達断接用とを兼ねる門形の操作レバー40が揺動可能に設けられている。
【0038】
この操作レバー40の左右両辺部40A、40Bの下端は、前記ハンドル22の高さ方向中央部付近にピン40a、40aで揺動可能に結合されるとともに、左右両辺部40A、40Bの下端部には引張アーム41、43が前方に向けて垂直に突設されており、左側引張アーム41(図1、図4)には、スロットル開度調整用のボーデンケーブル42(のインナーケーブル)の一端部が、また、右側引張アーム43(図3、図4)には、引張コイルばね44を介して動力伝達断接用のボーデンケーブル45(のインナーケーブル)の一端部が、それぞれ連結されている。
【0039】
前記左側のボーデンケーブル42(のインナーケーブル)の他端部は、前記エンジン15の気化器スロットル弁に連結されており、このスロットル弁に付設されている、スロットル弁を常時最小開度(アイドル開度)方向に付勢する付勢ばねにより、該左側のボーデンケーブル42(のインナーケーブル)は、前記操作レバー40を、図1、図3において実線で示される初期位置(上辺部40Cがハンドル22の上辺部から離れた位置)に戻す方向に引っ張るようになっている。
【0040】
一方、前記右側のボーデンケーブル45(のインナーケーブル)の他端部は、前記ベルトプーリ式動力伝達機構26に添設されているベルトテンションクラッチ45に連結されている。詳細には、図3、図4に示される如くに、ベルトテンションクラッチ45は、既知の構成のもので、前記ベルトプーリ式動力伝達機構26のベルト26aに圧接するテンション付与用プーリ48、アーム47、揺動支軸46、引張用係止ピン49の他、前記テンション付与用プーリ48を前記ベルト26aから離間させる方向(動力伝達を切断する方向)に付勢する付勢ばねを備えており、この付勢ばねにより、該右側のボーデンケーブル45(のインナーケーブル)は、前記操作レバー40を、図1、図3において実線で示される初期位置(上辺部40Cがハンドル22の上辺部から離れた位置)に戻す方向に引っ張るようになっている。
【0041】
ここで、前記操作レバー40を前記初期位置からハンドル22側に引き寄せると、前記左側のボーデンケーブル42(のインナーケーブル)によりスロットル弁が引っ張られてスロットル開度が最小(アイドル開度)から開かれ、そのときの操作レバー40の揺動角度に応じたスロットル開度となり、揺動角度が最大角度γ(=α+β)になったとき、スロットル開度が最大となる。
【0042】
これと同時に、前記右側のボーデンケーブル45(のインナーケーブル)によりベルトテンションクラッチ45が引っ張られてテンション付与用プーリ48が前記ベルト26aから離間した位置(動力伝達切断位置)から接近圧接する方向に揺動せしめられる。この場合、操作レバー40が前記初期位置から角度α分だけ揺動せしめられたとき、テンション付与用プーリ48が前記ベルト26aに圧接して、該ベルト26aに所要のテンションが付与され、これによって、エンジン15から駆動車輪12への動力伝達が可能となる。この揺動角度αの状態からさらに前記操作レバー40をハンドル22側に引き寄せると、前記コイルばね44が引き伸ばされて、前記テンション付与用プーリ48が前記ベルト26aに一層強く圧接することになる。
【0043】
このように、操作レバー40がスロットル開度調整用と動力伝達断接用とに共用され、この操作レバー40を揺動させることにより、スロットル開度調整と動力伝達断接の両方を同時に行えるようにされるので、スロットル開度調整操作と動力伝達断接操作の両方をワンタッチで極めて簡単容易に行うことができる。また、操作レバー40が門形とされていることにより、左右いずれの手指でも操作できるので、利便性が向上する。
【0044】
一方、前記操作レバー40を初期位置から大きく揺動させた状態、すなわち、揺動角度が最大角度γ(=α+β)では、スロットル開度が最大、すなわち、エンジントルクが最大の状態で動力伝達が行われるので、乗用溝切機10は高速で走行することになる。この高速走行状態で、前記操作レバー40から手指を離すと、操作レバー40は前記スロットル弁やベルトテンションクラッチ45に付設された付勢ばねの付勢力により前記初期位置に戻され、乗用溝切機10が停車する。
【0045】
この場合、本実施形態では、前記のような構成とされていることにより、前記スロットル開度がある程度減少した(最大開度から揺動角度β分戻された)後、すなわち、走行速度が低速になってから、前記動力伝達が切断されるので、急停車による前方転倒等が起こり難くなる。
【0046】
図5、図6は、第2実施形態の乗用溝切機10’を示す左側面図、エンジン等を取り去った状態の平面図である。図5、図6において、前述した図1、図2に示される乗用溝切機10における各部と同じ構成機能を有する部分には同一の符号を付して重複説明を省略し、以下においては第1実施形態との相違点を重点的に説明する。
【0047】
図示実施形態の乗用溝切機10’では、前記前フレーム20と後フレーム50とは、水平面内で弾性撓曲可能な連結部材としての、前記前フレーム20と後フレーム50に対して垂直に配在された板ばね60で連結されている。
【0048】
詳細には、前記板ばね60は、複数枚の金属板(例えば板厚が2mmの金属板を5枚)重ね合わせた構造となっており、この板ばね60の前端部は、前フレーム20に固定された左右の支持板62、63で挟まれてボルトナット類66、66により共締め固定されており、また、板ばね60の後端部は、後フレーム50の前部に連結固定された左右一対の連結保持板72、72及びスペーサ74、74で挟まれてボルトナット類76、76により共締め固定されている。
【0049】
このように、前フレーム20と後フレーム50とを、それらに対して垂直に配在された板ばね60を介して連結することにより、第1実施形態と同様に、ハンドル22を操作することで、進行方向の変更修正(軌道修正)を、従来の乗用溝切機に比べて簡単容易に行え、また、進行方向の変更修正時に本機を傾けなくてもよいので、溝をきれいに形成することができ、さらに、前フレーム20と後フレーム50とが板ばね60で連結されていることにより、溝切板14の進行方向は、走行時における泥土の抵抗によって、駆動車輪(前輪)12の進行方向に自動的に合わせられるので、仮に、製造組立時において、駆動車輪(前輪)12と溝切板14との間に、センター線のずれや角度ブレ(非平行)等があっても、走行時において所要の直進性を確保できる。
【0050】
これに加え、回動軸と軸受けではなく板ばね60で連結されているので、ハンドル操作(操舵性)が鈍く、かつ、重くなるので、所要の直進性を確保できることは勿論、それらを回動軸と軸受を介して連結した場合に比して、車輪12及び前フレーム20が極狭い角度範囲でしか旋回しないため、取扱性が向上し、さらに、構造の簡素化、軽量化、低コスト化を図れるとともに、回転摺動部が存在しないため、作動不良等が起こり難くなり、加えて、板ばねの持つ弾性復元力により、中立直進位置復元機能(セルフニュートラル復帰機能)も備えることとなり、利便性が一層向上する。
また、板ばね60は、複数枚の金属板重ね合わせた構造であるので、その重ね合わせる金属板の枚数を増減することよって、板ばね60のばね特性を簡単容易に変更することができる。
【0051】
なお、上記実施形態においては、門形の操舵用ハンドル22及び操作レバー40が用いられているが、これに限られる訳ではなく、操舵用ハンドル及び操作レバーとして、例えば、図7に示される如くのT形の操舵用ハンドル80及び操作レバー90も用いることができる。図示例のT形の操舵用ハンドル80は、水平に配在された上辺部80Aとこの上辺部下面中央に連結固定された縦辺部80Bとからなっており、該縦辺部80Bの下端部80bは、L形状を呈するように後向きに折り曲げられて前フレーム20の前端部に固定されたコ字状保持板88の上面中央部に溶接等により接合固定されており、縦辺部80B(下端部80bを除く)は若干後方に傾斜せしめられている。
【0052】
一方、T形の操作レバー90は、前記T形のハンドル80の約半分程度の大きさとされ、ハンドル80の上辺部80A側から操作できるように該上辺部80Aの中央部の前方斜め下にこれと平行に配在された上辺部90Aと、この上辺部90Aの下面中央に連結固定された、前記ハンドル80の縦辺部80Bの両側に配在された左右一対の縦辺部90B、90Bとからなっており、この操作レバー80の左右一対の縦辺部90B、90Bの下端部は、前記ハンドル80の縦辺部80Bの側方(ないし後方)に位置せしめられている(従って、操作レバー90の縦辺部90Bは、ハンドル80の縦辺部80Bとで側面視V字を呈するように前方に傾斜せしめられている)。
【0053】
そして、前記縦辺部90B、90Bの下端部には、それぞれ側面視概略V字状の左側引張アーム91及び該左側引張アーム91よりアーム長が長い右側引張アーム92の一(上側)辺部91a、92aがそれぞれ溶接等により固定されている。これら左側引張アーム91及び右側引張アーム92の角丸底部は、前記ハンドル22の高さ方向中央部付近に溶接等により接合固定された平面視コ字状の支持板93に架設されたピン80aに揺動可能に支持されている。左側引張アーム91の他(下側)辺部91bには、図示はされていないが、前記実施形態の左側引張アーム41(図1、図4)と同様に、スロットル開度調整用のボーデンケーブル42(のインナーケーブル)の一端部が、また、右側引張アーム92の他(下側)辺部92bには、図示はされていないが、前記実施形態の右側引張アーム43(図3、図4)と同様に、引張コイルばね44を介して動力伝達断接用のボーデンケーブル45(のインナーケーブル)の一端部が、それぞれ連結されている。
【0054】
このように、操舵用ハンドル及び操作レバーとして、T形の操舵用ハンドル80及び操作レバー90を用いた場合でも、前記実施形態と略同様な作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る乗用溝切機の第1実施形態を示す左側面図。
【図2】図1に示される乗用溝切機の、エンジン等を取り去った状態の平面図。
【図3】図1に示される乗用溝切機の主要部を示す拡大右側面図。
【図4】図1に示される乗用溝切機の主要部を示す拡大正面図。
【図5】本発明に係る乗用溝切機の第2実施形態を示す左側面図。
【図6】図5に示される乗用溝切機の、エンジン等を取り去った状態の平面図。
【図7】図1、図5に示される乗用溝切機に用いられる操舵用ハンドル及び操作レバーの他の例を示し、(A)は正面図、(B)は左側面図。
【符号の説明】
【0056】
10 乗用溝切機
12 駆動車輪
14 溝切板
15 エンジン
20 前フレーム
21 回動軸
22、80 操舵用ハンドル
34 軸受
40、90 操作レバー
50 後フレーム
55 着座シート
60 板ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動車輪(12)、エンジン(15)を含む走行駆動系、及び操舵用ハンドル(22)が設けられた前フレーム(20)と、作業者が跨乗する着座シート(55)及び溝切板(14)が設けられた後フレーム(50)とを備え、前記前フレーム(20)が前記後フレーム(50)に対して水平面内で操向可能とされていることを特徴とする乗用溝切機。
【請求項2】
前記前フレーム(20)における前記ハンドル(22)の操作点(P)が、前記後フレーム(50)に対する前フレーム(20)の旋回中心(O)から所定の距離(La)だけ前方にオフセットされていることを特徴とする請求項1に記載の乗用溝切機。
【請求項3】
前記前フレーム(20)と後フレーム(50)とは、それらの一方に設けられた回動軸(21)と他方に設けられた軸受(34)とを介して水平面内で回動可能に連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗用溝切機。
【請求項4】
前記前フレーム(20)と後フレーム(50)とは、水平面内で弾性撓曲可能な連結部材(60)を介して連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗用溝切機。
【請求項5】
前記弾性撓曲可能な連結部材は、前記前フレーム(20)と後フレーム(50)に対して垂直に配在された板ばね(60)で構成されていることを特徴とする請求項4に記載の乗用溝切機。
【請求項6】
前記板ばね(60)は、複数枚の金属板が重ね合わせられた構造となっていることを特徴とする請求項5に記載の乗用溝切機。
【請求項7】
単一の操作レバー(40)が前記エンジン(15)のスロットル開度調整用と前記エンジン(15)から前記駆動車輪(12)への動力伝達断接用とに共用されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の乗用溝切機。
【請求項8】
前記操作レバー(40)を揺動させることにより、前記スロットル開度調整と前記動力伝達断接の両方を同時に行えるようにされていることを特徴とする請求項7に記載の乗用溝切機。
【請求項9】
前記操作レバー(40)を一方向に揺動させた際、前記スロットル開度がある程度減少した後、前記動力伝達が切断されるように構成されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の乗用溝切機。
【請求項10】
前記操作レバー(40)がT形、門形、もしくはループ状とされていて、左右いずれの手指でも操作できるようになっていることを特徴とする請求項7から9のいずれかに記載の乗用溝切機。
【請求項11】
前記ハンドル(22)がT形、門形、もしくはループ状とされていて、該ハンドル(22)の縦辺部もしくは左右辺部に前記操作レバー(40)の揺動支点が設けられていることを特徴とする請求項10に記載の乗用溝切機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−104425(P2008−104425A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−291930(P2006−291930)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000141990)株式会社共立 (110)
【Fターム(参考)】