説明

乱用抵抗性経粘膜薬剤送達デバイス

本発明は、違法な乱用の可能性を減少させる、乱用され得る薬剤送達のための固形薬学的剤形に関する。剤形は、乱用され得る薬剤、および乱用抵抗性マトリックスと会合した、乱用され得る薬剤に対するアンタゴニストを含む、生浸食性経粘膜送達デバイスとして提示される。本発明のデバイスは、層状フィルムまたは錠剤の形態であってもよい。非乱用方式で適用されると、デバイスは粘膜表面に付着し、全身循環内へのアンタゴニストの最小限の吸収を伴って、薬剤の経粘膜薬剤送達を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2005年12月13日に出願された米国仮特許出願第60/750,191号および2006年2月2日に出願された米国仮特許出願第60/764,619号の恩典およびこれらに対する優先権を主張する。これらの出願の内容は、その全体が、参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
オピオイド、またはオピオイドアゴニストは、一般的に、オピウムまたはモルフィン様特性を示す薬剤群を指す。オピオイドは、中程度から強度の鎮痛剤として使用可能であるが、眠気、呼吸抑制、気分の変化、および意識消失を生じない意識混濁を含む、他の薬理学的影響もまた有する。オピウムは、20を超える別個のアルカロイド類を含有する。モルフィン、コデインおよびパパベリンがこの群に含まれる。モルフィン様作用を持つ完全な合成実体(entity)の出現で、用語「オピオイド」は、一般的に、オピオイド受容体のいくつかの亜種のいずれかに立体特異的に結合し、かつアゴニスト作用を生じる、すべての外因性物質に関する一般的名称として保持された。
【0003】
反復オピオイド使用での耐性の発現および身体的依存の可能性は、すべてのオピオイド薬剤に特有の特徴であり、かつ精神的依存(すなわち中毒)が発現する可能性は、オピオイドを用いて痛みを処置する際の大きな懸念の1つである。オピオイド使用に関連する別の大きな懸念は、痛みを持つ患者からこれらの薬剤が、娯楽目的の他者(非患者)に、例えば中毒者に流用されることである。
【0004】
オピオイドは、中程度から重度の痛みを緩和し、かつ防止する際に非常に成功するが、昏睡または陶酔感状態を達成するために乱用されがちである。しかし、乱用者がこうした薬剤を経口摂取すると、こうした薬剤の消化管を通じた組み込みが劣っているため、乱用的に多量に摂取した場合であってさえ、乱用者が望む陶酔感を伴う結果は、通常、生じない。
【0005】
オピオイド鎮痛剤の特定の用量は、典型的には、同じ用量を経口的に投与した場合に比較して、非経口的に投与した際により強力であるため、経口薬物の乱用の1つの様式は、剤形からオピオイドを抽出し、かつ続いて、「ハイ」状態を達成するために、オピオイドを注射する(注射のため、任意の適切なビヒクルを用いる)ことを伴う。こうした抽出は、一般的に、水性液体または適切な溶媒を用いて、剤形を溶解するのと同程度に容易である。しかし、経口オピオイド製剤は、非経口経路によって乱用されるだけではなく、患者または中毒者が、任意の投薬間隔中に、処方された経口用量より多くを自己投与した場合、経口投与を介しても乱用される。別の乱用様式では、乱用者は、対応する剤形を粉末にし、例えばすりつぶし、かつ例えば吸入によって投与する。乱用のさらに別の形式では、剤形を粉末にして(場合によって適切な液体中に溶解して)、かつ(溶解したかまたは粉末にした)オピオイドを吸入することによって、粉末からオピオイドを抽出する。これらの投与形式では、経口投与に比較して、乱用され得る薬剤(abusable drug)のレベルの上昇が加速し、乱用者に望ましい結果を提供する。
【0006】
オピオイド乱用の問題を軽減するかまたは減少させる試みの中で、いくつかの進歩が達成されてきた。例えば、米国特許第5,866,164号(特許文献1)は、2層コアを持つ、経口浸透圧治療システムを提唱し、この中で、システムの開口部に面するコアの第一の層は、オピオイド鎮痛剤を含み、かつ第二の層は、このオピオイド鎮痛剤に対するアンタゴニストを含み、かつ同時に、押出機能、すなわち対応する層からシステムの開口部外に鎮痛剤を追い出す機能を達成する。米国特許第6,228,863号(特許文献2)は、オピオイドアゴニストおよびオピオイドアンタゴニストの組み合わせを含有する経口剤形を記載し、この製剤は、2つの化合物が、各場合で、剤形から一緒にしか抽出できず、かつ次いで、これらを分離するには、少なくとも2段階のプロセスが必要であるように、選択されている。
【0007】
米国特許第4,582,835号(特許文献3)は、ナロキソンとともにブプレノルフィンの舌下有効用量を投与することによって、痛みを処置する方法を記載する。米国特許第6,277,384号(特許文献4)もまた、乱用する人に投与した際、負の効果を達成する特定の比で、オピオイドアゴニストおよびオピオイドアンタゴニストの組み合わせを含有する剤形を開示する。米国特許出願公開第2004/0241218号(特許文献5)は、乱用を防止するため、不活性化剤、例えばオピオイド薬剤を架橋する物質を含む、経皮システムを開示する。こうした経皮製剤にはまた、アンタゴニストが含まれうる。
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,866,164号
【特許文献2】米国特許第6,228,863号
【特許文献3】米国特許第4,582,835号
【特許文献4】米国特許第6,277,384号
【特許文献5】米国特許出願公開第2004/0241218号
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
本発明は、生浸食性(bioerodable)乱用抵抗性(abuse resistant)経粘膜薬剤送達デバイス、およびこうしたデバイスを用いた処置法を提供する。本発明の薬剤送達デバイスは、違法な乱用可能性の減少を提供し、かつ例えばオピオイド経粘膜薬剤送達において特に有用である。一般的に、本発明の経粘膜薬剤送達デバイスには、薬剤、およびその薬剤の乱用を妨げるようにデバイス内に含有されるそのアンタゴニストが含まれる。
【0010】
したがって、例えば、非経口注射のために、本発明の経粘膜デバイスから、乱用され得る薬剤を抽出する違法な使用努力(例えば、水または他の溶媒中に経粘膜デバイスのある程度またはすべてを溶解することによる、薬剤の抽出による)は、アンタゴニストの同時抽出によって阻止される。製品中に含有されるアンタゴニストの量は、薬剤単独の非経口投与から予期されるであろう、いかなる精神薬理学的効果をも遮断するように選択される。アンタゴニストは、一般的に、乱用抵抗性マトリックスに会合し、かつ薬剤の経粘膜送達に干渉しない。
【0011】
本発明のデバイスの利点の1つは、デバイスが、一般的に、デバイスを非乱用方式で用いた際にはアンタゴニストを有効に放出しない、乱用抵抗性マトリックスを含むことである。米国特許第4,582,384号および米国特許第6,227,384号に記載される剤形は、正しく投与された場合であってさえ、オピオイドと一緒に、対応するアンタゴニストを粘膜内に放出する。これは、オピオイド鎮痛剤の活性を損ない、かつしばしば、患者が満足できる処置のために、剤形において必要とされる量を増加させることが必要になる。オピオイドアンタゴニストをまったく含有しない剤形に比較して、望ましくない付随する症状が発生するリスクもまた、増加する。さらに、こうした剤形を正しく投与した際に、オピオイドアンタゴニストの大部分を放出することによる患者にかかるストレスはこれ以上増加させないことが望ましい。
【0012】
本発明のデバイスの利点の1つは、デバイスが生浸食性であるため、使用後にデバイスを取り除く必要がないことである。
【0013】
したがって、1つの局面において、本発明には、生浸食性乱用抵抗性薬剤送達デバイスが含まれる。デバイスには、一般的に、経粘膜薬剤送達組成物および乱用抵抗性マトリックスが含まれる。経粘膜薬剤送達組成物には、乱用され得る薬剤が含まれ、かつ乱用抵抗性マトリックスには、乱用され得る薬剤に対するアンタゴニストが含まれる。送達デバイスは、例えば、粘膜付着性薬剤送達デバイス、頬側送達デバイス、および/または舌下送達デバイスであってもよい。いくつかの態様において、アンタゴニストは、実質的に経粘膜的に利用不可能である。他の態様において、デバイスは、不活性化剤を実質的に含まない。
【0014】
いくつかの態様において、乱用抵抗性マトリックスは、アンタゴニスト周囲に少なくとも部分的に配置された層またはコーティング、例えば水浸食性コーティングまたは層である。いくつかの態様において、乱用抵抗性マトリックスは、水加水分解性、水浸食性または水溶性マトリックス、例えばイオン交換重合体である。いくつかの態様において、送達デバイスは、錠剤、ロゼンジ、フィルム、ディスク、カプセル、または重合体混合物の形態である。
【0015】
いくつかの態様において、デバイスには、粘膜付着性層が含まれる。いくつかの態様において、デバイスには、粘膜付着性層および非付着性裏打ち層(non-adhesive backing layer)が含まれる。他の態様において、デバイスには、粘膜付着性層と裏打ち層の間に配置された第三の層が含まれる。いくつかの態様において、乱用され得る薬剤および乱用抵抗性マトリックスのいずれかまたは両方が、粘膜付着性層内に組み込まれる。いくつかの態様において、乱用抵抗性マトリックスは、裏打ち層内に組み込まれる。いくつかの態様において、乱用され得る薬剤および乱用抵抗性マトリックスのいずれかまたは両方が、第三の層内に組み込まれる。いくつかの態様において、乱用抵抗性マトリックスは第三の層である。いくつかの態様において、乱用され得る薬剤および乱用抵抗性マトリックスのいずれかまたは両方が、本明細書に論じる層の任意の組み合わせ内に組み込まれる。いくつかの態様において、乱用され得る薬剤が粘膜付着性層内に組み込まれ、かつ乱用抵抗性マトリックスが裏打ち層内に組み込まれる。
【0016】
いくつかの態様において、乱用抵抗性マトリックスは、裏打ち層、粘膜付着性層、第三の層、またはそれらの任意の組み合わせよりも、より緩慢な速度で浸食される。
【0017】
いくつかの態様において、乱用され得る薬剤は、限定されるわけではないが、オピエートおよびオピオイド、例えば、アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アポモルフィン、アニレリジン、アポコデイン、ベンジルモルフィン(benzylmorphine)、ベジトラミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデイン、シクロルファン、シプレノルフィン(cyprenorphine)、デソモルフィン、デキストロモラミド、デキストロプロポキシフェン、デゾシン、ジアムプロミド、ジアモルホン(diamorphone)、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルフィン、ジメノキサドール、エプタゾシン、エチルモルフィン、エトニタゼン、エトルフィン、フェンタニル、フェンカムファミン、フェネチリン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ヒドロキシメチルモルフィナン(hydroxymethylmorphinan)、ヒドロキシペチジン、イソメタドン、レボメタドン、レボフェナシルモルファン、レボルファノール、ロフェンタニル、マジンドール、メペリジン、メタゾシン、メタドン、メチルモルフィン、モダフィニル、モルフィン、ナルブフェン(nalbuphene)、ネコモルフィン(necomorphine)、ノルメタドン、ノルモルフィン、オピウム、オキシコドン、オキシモルホン、フォルコジン、プロファドール、レミフェンタニル、スフェンタニル、トラマドール、対応する誘導体、生理学的に許容される化合物、塩および塩基であってもよい。
【0018】
いくつかの態様において、アンタゴニストには、限定されるわけではないが、オピエートアンタゴニストまたはオピオイドアンタゴニスト、例えば、ナロキソン、ナルトレキソン、ナルメフェン、ナリド(nalide)、ナルメキソン、ナロルフィン、ナルフィン(naluphine)、シクラゾシン、レバロルファン、ならびにその生理学的に許容される塩および溶媒和物が含まれる。
【0019】
いくつかの態様において、乱用抵抗性マトリックスには、限定されるわけではないが、部分的架橋ポリアクリル酸、polycarbophil(商標)、providone(商標)、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、ゼラチン、キトサン、Amberlite(商標)IRP69、Duolite(商標)AP143、AMBERLITE(商標)IRP64、AMBERLITE(商標)IRP88、およびそれらの組み合わせが含まれる。他の態様において、乱用抵抗性マトリックスには、限定されるわけではないが、アルギネート、酸化ポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリラクチド、ポリグリコリド、ラクチド-グリコリド共重合体、ポリ-イプシロン-カプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物および誘導体、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸、およびカルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、酸化ポリエチレン、酸化エチレン-酸化プロピレン共重合体、コラーゲンおよび誘導体、ゼラチン、アルブミン、ポリアミノ酸および誘導体、ポリホスファゼン、多糖および誘導体、キチン、またはキトサン生物付着性重合体、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0020】
いくつかの態様において、デバイスは、乱用され得る薬剤単独よりも、乱用の影響を受けにくい。他の態様において、乱用方式で用いた場合に、乱用され得る薬剤の有効性の30%未満が保持される。いくつかの態様においては、乱用的に溶解した場合に、アンタゴニストおよび乱用され得る薬剤が実質的に同じ速度で放出される。いくつかの態様においては、水中に溶解した場合に、アンタゴニストおよび乱用され得る薬剤が実質的に同じ速度で放出される。他の態様において、放出されるアンタゴニストの、放出される乱用され得る薬剤に対する比は、約1:20以上である。
【0021】
いくつかの局面において、本発明は、被験体における痛みを処置するための方法を提供する。方法には、痛みが処置されるように本明細書記載の任意のデバイスを投与する段階が含まれる。いくつかの態様において、被験体によって全身循環内に吸収されるアンタゴニストの度合いは、約15重量%未満である。いくつかの態様において、乱用され得る薬剤の投薬量は、約50μg〜約10mgの間である。
【0022】
いくつかの局面において、生浸食性乱用抵抗性薬剤送達デバイスは、粘膜表面に接触して位置する少なくとも1つの生浸食性粘膜付着性層と、少なくとも1つの生浸食性非付着性裏打ち層とを有する層状フィルムを含み、少なくとも1つの乱用され得る薬剤が少なくとも粘膜付着性層中に組み込まれ、かつ乱用され得る薬剤に対するアンタゴニストを含む乱用抵抗性マトリックスが、いずれかの層中または全層中に組み込まれる。
【0023】
発明の詳細な説明
痛み、例えば癌の痛みがある被験体は、典型的には、こうした痛みを制御するのに必要な常習的麻薬使用のために、オピオイド耐性である。さらに、突出痛(例えば、普段と違う動きに関連する痛み)を処置するのに必要な経粘膜オピオイド薬剤、例えばフェンタニルの用量は、オピオイド耐性のために高くなり得る。事実、オピオイド耐性でない被験体には致死であろう用量である、1mgを超える用量がしばしば用いられる。デバイス中の強力な麻薬のこの量のために、デバイスは、注射または吸入用のフェンタニルの抽出を介してだけでなく、意図される投与経路によっても、流用および乱用に供される可能性がある。
【0024】
注射されたオピオイド薬剤のいかなる精神薬理学的効果をも遮断するであろう、ナロキソンなどのアンタゴニストを、製剤中に含めることによって、注射による乱用を防止するかまたは減少させ得る。
【0025】
したがって、本発明は、乱用の可能性を減少させ、かついくつかの態様では排除しつつ、乱用され得る薬剤の経粘膜送達を提供する、新規薬剤送達デバイスに関する。薬剤送達デバイスには、一般的に、乱用され得る薬剤と、薬剤の乱用を妨げる、デバイス(例えば多層経粘膜送達デバイス)内に組み込まれた薬剤に対する少なくとも1つのアンタゴニストとが含まれる。薬剤の乱用は、多くの限定されない方式で、本発明を用いることによって妨げられ得る。いくつかの態様において、経粘膜送達デバイスから薬剤を抽出しようと試みると、薬剤の予期される効果を遮断するアンタゴニストの同時抽出が生じるため、アンタゴニストは、薬剤の乱用を妨げる。他の態様において、乱用され得る薬剤およびアンタゴニストは、本発明の送達デバイスの同じ層または区別不可能な層内に組み込まれ、したがって、例えばデバイスの1つの層を剥がすことによって、互いに分離させることは不可能である。
【0026】
しかし、意図されるように用いた場合、乱用され得る薬剤は、例えば口の粘膜への適用によって、粘膜を介して、かつしたがって、全身循環内に送達されると考えられる。アンタゴニストは、乱用抵抗性マトリックスと会合し、例えばコーティングされた微小粒子内に分散するか、または粘膜吸収を妨げるもしくは防止する重合体、例えば高分子量重合体もしくはイオン交換重合体に化学的に結合している。いくつかの態様において、アンタゴニストは、非乱用方式で用いた場合、実質的に経粘膜的に利用不可能である。いかなる特定の理論に束縛されることも望まないが、非乱用方式で用いた際、オピオイドアンタゴニストは、例えば粘膜に接触しない層またはマトリックス中の未結合アンタゴニストとして、かつ/または無傷の(intact)マイクロカプセル、重合体結合粒子として、または粘膜投与に不向きな何らかの他の形で嚥下されるであろう。オピオイドアンタゴニストは、消化管からほとんど吸収されないため、全身循環中の量は、薬剤に対する有意な薬理学的効果を生じるレベル以下であり、かつしたがって、これらの条件下では、比較的不活性である。
【0027】
より明らかにかつ正確に、特許請求の範囲の主題を記載するため、以下の定義は、本明細書に用いる用語の意味に関して指針を提供するよう意図される。
【0028】
本明細書において交換可能に用いられるような、用語「乱用され得る薬剤」または「薬剤」は、乱用、拡張された使用を伴う高い耐性、および/または化学的または身体的依存を促進する能力を有する、いかなる薬学的活性物質または薬学的活性剤をも指す。乱用され得る薬剤には、限定されるわけではないが、例えば、オピオイド鎮痛剤、およびオピオイドまたはオピエートなどの、痛みの処置のための薬剤が含まれる。
【0029】
本明細書において用いる場合、用語「アンタゴニスト」は、活性剤が薬理学的効果を生じるようには利用されないようにするか、特定の受容体での、アゴニスト、例えば乱用され得る薬剤の機能を阻害するか、または有害薬理学的作用を生じる部分を指す。例えば、いくつかの態様において、乱用方式で用いた際、アンタゴニストは、前記オピオイドアゴニストの副作用を減弱するか、または抗鎮痛剤、痛覚過敏症、過剰興奮症、身体的依存、耐性、またはそれらの任意の組み合わせなどの有害作用を生じるのに有効な量で放出される。いかなる特定の理論に束縛されることも望まないが、アンタゴニストは、一般的に、乱用され得る薬剤自体の化学構造を改変せず、むしろ、少なくとも部分的に、被験体に対する効果によって、例えば、受容体に結合し、かつアゴニストの効果を妨害することによって、働くと考えられる。アンタゴニストは、特定の結合部位に関してアゴニストと競合してもよいし(競合的アンタゴニスト)、かつ/またはアゴニストと異なる結合部位に結合して、他の結合部位を介してアゴニストの効果を妨害してもよい(非競合的アンタゴニスト)。アンタゴニストの限定されない例には、オピオイド中和抗体;ナロキソン、ナルトレキソンおよびナルメフェンなどの麻薬アンタゴニスト;スコポラミン、ケタミン、アトロピンもしくはからし油などの不快または刺激剤;またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。1つの態様において、アンタゴニストはナロキソンまたはナルトレキソンである。
【0030】
用語「生浸食性」は、本明細書において用いる場合、デバイスの固体または半固体部分が、嚥下するのに十分に小さいように、表面浸食、生体浸食、および/またはバルク分解によって十分に分解されるのを可能にする、本発明のデバイスの特性を指す。バルク分解は、材料、例えば重合体が、マトリックス全体にわたり、かなり均一な方式で分解されるプロセスである。これは、物理的特性の即時変化を伴わずに、分子量(Mn)の減少を生じ、続いて、デバイスの唾液または水溶性型への変換よりも迅速に、唾液または水がデバイス内に浸透するため、断片化が起こる。生体浸食または表面浸食は、一般的に、唾液または水が材料に浸透する速度が、材料の唾液または水溶性物質への変換の速度よりも、より緩慢である際に起こる。生体浸食は、一般的に、長期に渡る材料の薄化を生じるが、バルク完全性は維持される。「生浸食性」は、全体としてのデバイスを指し、かつ必ずしも個々の構成要素を指さないことが理解されるものとする。例えば、アンタゴニストがマイクロカプセル化されるかまたはコーティングされた場合、マイクロカプセルまたはコーティングは、生浸食性であっても、またはなくてもよいが、デバイスが浸食されるにつれて、無傷のマイクロカプセルまたはコーティングされたアンタゴニストが嚥下されるように、全体としてのデバイスは、生浸食性であってもよい。これは、デバイスが浸食され、かつマイクロカプセルまたはコーティングされたアンタゴニストが、無傷で、すなわち粘膜を横断せずに消化管に送達可能であるために好適であり得る。用語「生浸食性」は、材料除去の多くの様式を含むと意図され、例えば酵素的および非酵素的加水分解、酸化、酵素的に補助された酸化、摩耗、分解および/または溶解がある。
【0031】
生浸食性材料は、一般的に、特定の適用のための十分な機能的寿命を提供するため、分解特性に基づいて選択される。本発明の適用の場合、1分間〜10時間の間の機能的寿命が適切であり得る。いくつかの態様において、機能的寿命は約2分間である。いくつかの態様において、機能的寿命は約5分間である。いくつかの態様において、機能的寿命は約10分間である。いくつかの態様において、機能的寿命は約15分間である。いくつかの態様において、機能的寿命は約20分間である。いくつかの態様において、機能的寿命は約30分間である。いくつかの態様において、機能的寿命は約45分間である。いくつかの態様において、機能的寿命は約60分間である。いくつかの態様において、機能的寿命は約2時間である。いくつかの態様において、機能的寿命は約3時間である。いくつかの態様において、機能的寿命は約4時間である。いくつかの態様において、機能的寿命は約5時間である。いくつかの態様において、機能的寿命は約10時間である。本明細書に列挙する範囲および値の間に属するすべての範囲および値が、本発明に含まれると意図される。例えば、約5分間〜約45分間の間、約6分間〜約53分間の間、約13分間〜約26分間の間の寿命等が、すべて本明細書に含まれる。より短いかまたはより長い期間もまた、適切であり得る。
【0032】
生浸食性材料には、限定されるわけではないが、重合体、共重合体およびポリ無水物のブレンド(例えば融解凝縮、溶液重合を用いて作製されるもの、またはカップリング剤、芳香族酸、脂肪族二塩基酸、アミノ酸、例えばアスパラギン酸およびグルタミン酸、ならびにその共重合体を使用して作製されるもの);エポキシ末端重合体と酸無水物の共重合体;ポリオルトエステル;乳酸、グリコール酸、ε-カプロラクトン、γ-ブチロラクトン、およびδ-バレロラクトンを含むα-ヒドロキシ酸のホモ重合体および共重合体;α-ヒドロキシアルカノエートのホモ重合体および共重合体;ポリホスファゼン;グラフト共重合体を含むホモ重合体および共重合体としてのポリオキシアルキレン、例えばアルケンは、1〜4個の炭素である;シュードポリ(アミノ酸)を含むポリ(アミノ酸);ポリジオキサノン;および上記のいずれかとのポリエチレングリコールの共重合体が含まれる。
【0033】
本明細書において使用される、冠詞「a」および「an」は、別に示さない限り、「1つまたは複数の」または「少なくとも1つの」を意味する。すなわち、不定冠詞「a」または「an」による本発明の任意の要素への言及は、要素の1つより多くが存在する可能性を排除しない。
【0034】
用語「乱用抵抗性マトリックス」は、一般的に、乱用され得る薬剤に対するアンタゴニストが会合するマトリックスを指す。乱用抵抗性マトリックスは、例えばアンタゴニストを同時抽出し、かつ薬剤の効果を改変するかまたは遮断するように、デバイスを乱用方式で(例えば、薬剤を抽出する試みにおいて、水に溶解するか、可溶化するか、開放するか、咀嚼するか、かつ/または切り離して)用いた際に、アンタゴニストを効果的に放出するマトリックスである。しかし、意図されるように用いた場合、例えば非乱用方式では、乱用抵抗性マトリックスは、アンタゴニストを効果的に放出しない。例えば、その代わりに、アンタゴニストは、マトリックス内に保持されて、かつ消化管に送達され、ここで粘膜および/または消化管を通じて全身に送達されるアンタゴニストのいかなる量も、薬剤の効果を有意に遮断するかまたは改変しないように、アンタゴニストは容易には吸収されない。
【0035】
アンタゴニストに言及して用いる場合、句「実質的に経粘膜的に利用不可能である」は、本発明の組成物およびデバイス中のアンタゴニストが、乱用され得る薬剤の非乱用方式で使用される際の有効性を生じさせない量、または無視できる程度にしか生じさせない量で、経粘膜的に利用可能であるという事実を指す。いかなる特定の理論に束縛されることも望まないが、アンタゴニストは、経粘膜的に系に進入することが防止されるかまたは遅延されているものの、なお、他の投与経路(例えば嚥下または溶解)には利用可能であり、したがって、乱用され得る薬剤が経粘膜組成では効率的に作用することを可能にするが、乱用方式での組成物の使用を妨害すると考えられる。すなわち、アンタゴニストは、本発明の組成物が乱用される際に、乱用され得る薬剤の有効性を生じさせないことが理解されるものとする。非乱用状況においては、例えば嚥下された際、アンタゴニストは、まったく影響を提供しないか、または無視できる影響しか提供しない。いくつかの態様において、約25%未満のアンタゴニスト(乱用され得る薬剤に対して重量で)が、非乱用性に、例えば経粘膜的に、送達され得る。他の態様において、約15%未満のアンタゴニストが経粘膜的に送達される。さらに他の態様において、5%未満のアンタゴニストが経粘膜的に送達される。いくつかの態様において、2%未満のアンタゴニストが経粘膜的に送達される。さらに他の態様において、1%未満のアンタゴニストが経粘膜的に送達される。
【0036】
したがって、いくつかの態様において、デバイスが多層ディスクまたはフィルムである場合、乱用抵抗性マトリックスは、粘膜付着性層と裏打ち層の間に配置された層であるか、またはこうした層内に組み込まれる。他の態様において、乱用抵抗性マトリックスは、裏打ち層内に組み込まれる。いかなる特定の理論に束縛されることも望まないが、アンタゴニストは、消化管へと洗い流される、例えば嚥下されるであろうため、いかなる有意な量で、粘膜を介して全身循環に進入することも不可能であろうと考えられる。いくつかの態様において、乱用抵抗性マトリックスは、コーティングまたは水加水分解性マトリックス、例えばイオン交換重合体である。上述のような裏打ち層よりも、より緩慢に溶解するように、コーティングまたは水加水分解性マトリックスを選択してもよい。アンタゴニストをまったく放出しないよう十分に緩慢に溶解するように、コーティングまたは水加水分解性マトリックスを、さらにまたは別に選択してもよい。本発明を限定することなく、アンタゴニストは、未結合アンタゴニスト(free-antagonist)として、または例えばイオン交換重合体によってコーティングされたかもしくは別の方式で捕捉された部分としてのいずれかで、消化管内へと洗い流されると考えられる。層、コーティング、および水加水分解性マトリックスは、例示的であり、かつ、本発明の解説を用いて、さらなる乱用抵抗性マトリックスが想定可能であることが理解されるものとする。
【0037】
本明細書において用いる場合、用語「乱用方式」は、意図されない方式、例えば非経粘膜方式または医師によって処方されていない別の方式での送達デバイスの使用を指す。いくつかの態様において、乱用方式には、経口または非経口投与のための送達デバイスからの薬剤の抽出が含まれる。本明細書において用いる場合、「非乱用方式」は、意図される目的、例えば薬剤の経粘膜投与のための送達デバイスの使用を指す。いくつかの場合、薬剤の一部は、意図的でなく、非経粘膜的に、例えばデバイスの一部の溶解を通じて経口的に、送達されるであろう。こうした不注意なまたは故意ではない送達は、乱用方式での使用を示さない。
【0038】
したがって、いくつかの態様において、本発明のデバイスは、乱用され得る薬剤単独よりも、乱用の影響を受けにくい。例えば、乱用方式で用いた際、乱用され得る薬剤は、例えば鎮痛薬としてのその有効性の、約50%、40%、30%、20%、10%、5%、2%、1%、または0%しか保持しない可能性もある。したがって、乱用方式で用いた際、乱用され得る薬剤の有効性、例えば中毒者において「ハイ」状態を生じる能力は、対応する量で、例えば50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%または100%減少するであろう。
【0039】
本明細書において、被験体の「処置」には、疾患もしくは障害、または疾患もしくは障害の症状を防止するか、治癒させるか、癒すか、軽減するか、緩和するか、改変するか、治すか、向上させるか、改善するか、安定化するかまたは影響を及ぼす(例えば痛みを軽減する)目的で、被験体に薬剤を投与することが含まれる。
【0040】
用語「被験体」は、ヒト、イヌ、ネコ、および他の哺乳動物などの生存生物を指す。被験体の処置に有効な投薬量で、かつ有効な期間、本発明のデバイスに含まれる薬剤の投与を実行してもよい。治療効果を達成するのに必要な薬剤の「有効量」は、被験体の年齢、性別、および体重などの要因にしたがって多様であり得る。投薬措置を調整して、最適治療反応を提供してもよい。例えば、いくつかの分割用量を毎日投与してもよいし、または治療状況の要件によって示されるように、比例的に減少させてもよい。同様に、薬剤に対するアンタゴニストの有効量は、デバイスに含まれる薬剤の量などの要因にしたがって多様であろう。
【0041】
いくつかの態様において、アンタゴニストおよび乱用され得る薬剤は、その全体が、参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,800,832号および/または米国特許第6,585,997号に記載されるデバイスなどの送達デバイス内に組み込まれる。他の態様において、アンタゴニストおよび乱用され得る薬剤は、米国特許第5,800,832号および/または米国特許第6,585,997号に記載されるデバイスとは似ていない送達デバイス内に組み込まれる。本発明の解説を用い、任意の経粘膜薬剤送達デバイスを用いて、本発明の乱用抵抗性デバイスを提供してもよいことが理解されるものとする。
【0042】
いくつかの態様において、アンタゴニストおよび乱用され得る薬剤は、麻薬製品内に組み込まれる。他の態様において、アンタゴニストおよび乱用され得る薬剤は、アンタゴニスト薬剤製品内に組み込まれる。1つの態様において、アンタゴニスト薬剤製品は、ナロキソン薬剤製品である。
【0043】
いくつかの態様において、アンタゴニストおよび乱用され得る薬剤は、米国特許第6,200,604号(その全体が、参照により本明細書に組み入れられる)および/または米国特許第6,759,059号(その全体が、参照により本明細書に組み入れられる)に記載されるデバイスなどの送達デバイス内に組み込まれる。他の態様において、アンタゴニストおよび乱用され得る薬剤を、舌下または頬側単層または多層錠剤中で組み合わせてもよい。いくつかの態様において、アンタゴニストおよび乱用され得る薬剤は、粘膜付着性液体および/または粘膜付着性固形製剤内に組み込まれる。本発明の解説を用い、任意の舌下錠剤、頬側錠剤、粘膜付着性液体製剤および/または粘膜付着性固形製剤を用いて、本発明の乱用抵抗性デバイスを提供してもよいことが理解されるものとする。
【0044】
いくつかの態様において、アンタゴニストおよび乱用され得る薬剤は、経皮薬剤デバイス、例えば経皮パッチなどの送達デバイス内に組み込まれる。いくつかの態様において、経皮薬剤デバイスは、経皮鎮痛剤デバイスである。本発明の解説を用い、任意の経皮薬剤デバイスを用いて、本発明の乱用抵抗性デバイスを提供してもよいことが理解されるものとする。
【0045】
いくつかの態様において、乱用抵抗性薬剤送達デバイスは、ディスク、パッチ、錠剤、固体、溶液、ロゼンジ、液体、エアロゾルもしくはスプレーの形態、または経粘膜送達に適した任意の他の形態である。
【0046】
本明細書において用いる場合、本発明のデバイスまたは本発明のデバイスの任意の層内への薬剤および/またはアンタゴニストの組み込みに関して用いる「組み込まれる」という用語は、例えば多層デバイスの1つもしくは複数の層内で、経粘膜デバイス内に配置されるか、こうしたデバイスと会合するか、こうしたデバイスと混合されるか、または別の方式でこうしたデバイスの一部である、例えば多層状デバイスの1つもしくは複数の層内にあるか、またはデバイスの層もしくはコーティングとして存在する、薬剤またはアンタゴニストを指す。混合、会合または組み合わせが、規則的であるかまたは均一である必要はないことが理解されるものとする。
【0047】
いくつかの態様において、本発明の送達デバイスは、不活性化剤を実質的に含まない。本明細書において用いる場合、用語「不活性化剤」は、剤形の乱用可能性を減少させるため、乱用され得る薬剤を不活性化するかまたは架橋する化合物を指す。不活性化剤の例には、重合剤、光開始剤、およびホルマリンが含まれる。重合剤の例には、ジイソシアネート、過酸化物、ジイミド、ジオール、トリオール、エポキシド、シアノアクリレート、およびUV活性化単量体が含まれる。
【0048】
したがって、いくつかの態様において、本発明は、被験体、例えばヒトにおいて、乱用可能性を減少させつつ、乱用され得る薬剤の投薬量で、痛みを処置するためのデバイスおよび方法に関する。この方法は、本明細書の任意の所望の放出プロフィール、例えば粘膜を介した全身循環内へのアンタゴニストの10%未満の吸収を伴う、本明細書に列挙する任意のデバイスを使用してもよい。
【0049】
本発明において、最小限の不快感で、かつ使用が容易な、迅速な開始を提供する、乱用され得る薬剤、例えばオピオイド鎮痛剤の全身循環内への経粘膜送達を提供する、粘膜表面への適用のために、新規デバイスを使用する。したがって、1つの局面において、本発明のデバイスには、乱用され得る薬剤、および乱用抵抗性マトリックスと会合した乱用され得る薬剤に対するアンタゴニストが含まれる。送達デバイスは、粘膜付着性薬剤送達デバイス、頬側送達デバイス、および/または舌下送達デバイスであってもよい。
【0050】
本発明のデバイスには、限定されるわけではないが、粘膜付着性層、非付着性層、裏打ち層、および任意のそれらの組み合わせを含む、任意の数の層が含まれてもよい。いくつかの態様において、デバイスには粘膜付着性層が含まれる。いくつかの態様において、デバイスには、粘膜付着性層および非粘膜付着性裏打ち層が含まれる。他の態様において、デバイスには、粘膜付着性層と裏打ち層の間に配置された第三の層が含まれる。いくつかの態様において、乱用され得る薬剤および乱用抵抗性マトリックスのいずれかまたは両方が、粘膜付着性層内に組み込まれる。いくつかの態様において、乱用抵抗性マトリックスは、裏打ち層内に組み込まれる。いくつかの態様において、乱用され得る薬剤および乱用抵抗性マトリックスのいずれかまたは両方が、第三の層内に組み込まれる。いくつかの態様において、乱用抵抗性マトリックスは第三の層である。さらに、デバイスが、粘膜付着性層と裏打ち層の間に第三の層を含有する場合、この第三の層は、粘膜付着性層と区別不可能であってもよい。こうした態様は、薬剤を抽出する努力において、デバイスから層を除去することを防止するため、有用であり得る。第三の層はまた、乱用され得る薬剤と一緒に抽出可能であってもよい。いくつかの態様において、第三の層は非付着性層である。いくつかの態様において、乱用され得る薬剤および乱用抵抗性マトリックスのいずれかまたは両方が、本明細書に論じる層の任意の組み合わせ内に組み込まれる。経粘膜送達デバイスの層のいずれかまたはすべてが、水溶性であってもよい。
【0051】
いくつかの態様において、アンタゴニストは裏打ち層に組み込まれる。この態様を使用して、ある者が製品を乱用しようと試みる状況において、アンタゴニストが迅速に放出されることを可能にすることができる。この態様において、アンタゴニストの最小限の経粘膜吸着しかないように、アンタゴニストは、裏打ち層の浸食の際、実質的に嚥下されるであろう。別の態様において、アンタゴニストは、付着性薬剤層と裏打ち層の間に配置された層内に組み込まれる。これは、アンタゴニストの遅延または持続放出を可能にする。別個の区別不可能な層において、アンタゴニストおよび薬剤を分離することによって、アンタゴニストは、薬剤の経粘膜送達に干渉しない。さらに別の態様において、粘膜付着性層において、アンタゴニストを薬剤と混合してもよい。この局面は、薬剤およびアンタゴニストが、物理的に同じ層にあり、したがって、乱用方式で用いた際、薬剤およびアンタゴニストが分離不可能であるため、優れた乱用抵抗性を提供するのを可能にする。
【0052】
いくつかの態様において、乱用され得る薬剤は、一般的に処置部位に最も近い、粘膜付着性層中に含まれ、かつ裏打ち層は、粘膜付着性層が唾液または他の液体と接触しないように保護し、粘膜付着性層のより緩慢な溶解、ならびに処置部位と粘膜付着性層および薬剤とのより長い接触を生じる。こうした態様において、乱用され得る薬剤を粘膜付着性層中に配置すると、肝臓による初回通過代謝を回避しつつ、乱用され得る薬学的活性物質が、口の頬側粘膜を介して一方向に、かつ全身循環内に拡散することが可能になる。
【0053】
粘膜付着性層、例えば生浸食性粘膜付着性層は、一般的に、水溶性重合体で構成され、重合体には、限定されるわけではないが、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、部分的に架橋されていてもよいしもしくはされていなくてもよいポリアクリル酸(PAA)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)、およびポリビニルピロリドン(PVP)、またはそれらの組み合わせが含まれる。他の粘膜付着性水溶性重合体もまた、本発明で使用可能である。
【0054】
裏打ち層、例えば生浸食性非付着性裏打ち層は、限定されるわけではないが、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、酸化ポリエチレン、酸化エチレン-酸化プロピレン共重合体、またはそれらの組み合わせを含む、一般的に、水溶性、フィルム形成性の薬学的に許容される重合体で構成される。裏打ち層は、当技術分野に知られるような、他の水溶性のフィルム形成性重合体を含んでもよい。こうした層に適した重合体を含む、例示的な粘膜付着性および非付着性層はまた、例えば、その全体が、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,800,832号および第6,159,498号に記載される。
【0055】
本発明のデバイスは、所望の場合、当技術分野に知られるデバイスよりも、より長い滞留時間を提供し得る。いくつかの態様において、これは、適切な裏打ち層製剤を選択して、裏打ち層のより緩慢な浸食速度を提供した結果である。したがって、非付着性裏打ち層をさらに修飾して、制御された浸食可能性を与えるが、これは、他の薬学的剤形で使用するために認可されている、FDA認可Eudragit(商標)重合体、エチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、およびフタル酸ヒドロキシルプロピルメチルセルロースの群より選択される、より疎水性の重合体で裏打ち層フィルムをコーティングすることによって、達成可能である。これらの重合体または重合体の組み合わせから得られる層が、湿潤環境において浸食される限り、他の疎水性重合体を、単独で、または他の疎水性もしくは親水性重合体と組み合わせて、用いてもよい。溶解特性を調整して、裏打ち層に含まれた際の薬剤の滞留時間および放出プロフィールを修飾してもよい。
【0056】
いくつかの態様において、本発明のデバイス中の任意の層はまた、口中のこの層の「柔軟性」を改善し、かつデバイスの浸食速度を調整するため、可塑剤、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、またはグリセリンも、少量、重量にして0〜15%、含有してもよい。さらに、ヒアルロン酸、グリコール酸、および他のアルファヒドロキシル酸などの保湿剤もまた添加して、デバイスの「柔らかさ」および「感触」を改善してもよい。最後に、着色剤および乳白剤を添加して、生じた非付着性裏打ち層を粘膜付着性層と区別するのを補助してもよい。いくつかの乳白剤には、二酸化チタン、酸化亜鉛、ケイ酸ジルコニウム等が含まれる。
【0057】
本発明記載のデバイスは、乱用の可能性がある1つまたは複数のオピオイド鎮痛剤、および1つまたは複数のアンタゴニストを含んでもよい。しかし、いくつかの態様において、本発明記載のデバイスは、1つの活性オピオイド鎮痛剤のみ、およびこの活性オピオイド鎮痛剤に対する1つのアンタゴニストのみを含む。
【0058】
本発明記載の乱用され得る薬剤、例えばオピオイド鎮痛剤、アゴニスト、または部分アゴニストには、限定されるわけではないが、アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アポモルフィン、アニレリジン、アポコデイン、ベンジルモルフィン、ベジトラミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデイン、シクロルファン、シプレノルフィン、デソモルフィン、デキストロモラミド、デキストロプロポキシフェン、デゾシン、ジアムプロミド、ジアモルホン、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルフィン、ジメノキサドール、エプタゾシン、エチルモルフィン、エトニタゼン、エトルフィン、フェンタニル、フェンカムファミン、フェネチリン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ヒドロキシメチルモルフィナン、ヒドロキシペチジン、イソメタドン、レボメタドン、レボフェナシルモルファン、レボルファノール、ロフェンタニル、マジンドール、メペリジン、メタゾシン、メタドン、メチルモルフィン、モダフィニル、モルフィン、ナルブフェン、ネコモルフィン、ノルメタドン、ノルモルフィン、オピウム、オキシコドン、オキシモルホン、フォルコジン、プロファドール、レミフェンタニル、スフェンタニル、トラマドール、および対応する誘導体、および/または生理学的に許容される化合物、特に、その塩および塩基、立体異性体、そのエーテルおよびエステル、ならびにその混合物が含まれる。
【0059】
薬理学的に許容される塩には、無機塩および有機塩、例えば臭化水素酸塩、塩酸塩、ムケート(mucate)、コハク酸塩、n-オキシド、硫酸塩、マロン酸塩、酢酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、酢酸三水和物、二(ヘプラフルオロブチレート)、マレイン酸塩、二(メチルカルバメート)、二(ペンタフルオロプロピオネート)、メシル酸塩、二(ピリジン-3-カルボキシレート)、二(トリフルオロアセテート)、ヘミ酒石酸塩、(二)酒石酸塩、クロル水和物、フマル酸塩および/または硫酸五水和物が含まれる。
【0060】
いくつかの態様において、本発明には、約1μg〜約50mgの投薬量範囲の少なくとも1つのオピオイド鎮痛剤を有するデバイスが含まれる。いくつかの態様において、本発明には、約10μg〜約25mgの投薬量範囲の少なくとも1つのオピオイド鎮痛剤を有するデバイスが含まれる。さらに他の態様において、本発明のデバイスは、約50μg〜約10mgの投薬量範囲の少なくとも1つのオピオイド鎮痛剤を有する。これらの値および範囲の間のすべての値および範囲が本発明に含まれると意図されることが理解されるものとする。
【0061】
用いるべき乱用され得る薬剤の量は、所望の処置強度に応じるが、好ましくは、乱用され得る薬剤は、デバイスの約0.001〜約30重量%の間を構成する。列挙する値および範囲の間のすべての値および範囲が本発明に含まれると意図されることが理解されるものとする。
【0062】
乱用され得る薬剤に対するアンタゴニストは、オピオイドアンタゴニストであってもよい。オピオイドアンタゴニストは、当業者に知られ、かつ多様な形で、例えば塩、塩基、誘導体、または他の対応する生理学的に許容される形として、存在することが知られる。オピオイドアンタゴニストは、限定されるわけではないが、ナロキソン、ナルトレキソン、ナルメフェン、ナリド、ナルメキソン、ナロルフィン、ナルフィン、シクラゾシン、レバロルファン、および/またはその生理学的に許容される塩、塩基、立体異性体、そのエーテルおよびエステル、ならびにその混合物からなる群より選択されるアンタゴニストであってもよい。
【0063】
いくつかの態様において、本発明のデバイスには、約1μg〜約20mgの投薬量範囲のオピオイドアンタゴニストが含まれる。いくつかの態様において、本発明のデバイスには、約1.0μg〜約20mgの投薬量範囲のオピオイドアンタゴニストが含まれる。さらに他の態様において、本発明のデバイスには、約10μg〜約10mgの投薬量範囲のオピオイドアンタゴニストが含まれる。これらの値および範囲の間のすべての値および範囲が本発明に含まれると意図されることが理解されるものとする。いくつかの態様において、用いるアンタゴニストの量は、乱用され得る薬剤の医薬品としての有効性を減少させることなく、乱用され得る薬剤の乱用の可能性が小さくなり、かつ/または減少するような量である。
【0064】
いくつかの態様において、アンタゴニストは、特定の所望の度合いまでしか、粘膜を介して全身循環内に吸収されない。例えばいくつかの態様において、アンタゴニストの吸収の度合いは、約15%未満である。いくつかの態様において、アンタゴニストの吸収の度合いは、約10%未満である。いくつかの態様において、アンタゴニストの吸収の度合いは、約5%、4%、3%、2%または1%未満である。
【0065】
少なくとも部分的に、例えば、VASスケール(被験体が剤形の効果の自身の知覚を等級付けする場合)などの「サロゲート」試験の使用を介して、かつ/または瞳孔サイズ(瞳孔測定によって測定)などの測定値を介して、所望の結果を達成するのに有用なアンタゴニストの量を決定してもよい。こうした測定は、アゴニストのオピエート効果の減少を引き起こす、アゴニスト用量に比較したアンタゴニスト用量を、当業者が決定することを可能にする。続いて、当業者は、身体的に依存している被験体において嫌悪効果を引き起こすオピオイドアンタゴニストのレベル、ならびに身体的に依存していない中毒者において、「嗜好スコア」またはオピオイド強化特性を最小限にするオピオイドアンタゴニストのレベルを決定してもよい。アンタゴニストのこれらのレベルを決定したら、次いで、所望の結果を達成する際に有用であろう、このレベルでの、またはこのレベル未満での、アンタゴニスト投薬量範囲を決定することが可能である。
【0066】
アンタゴニストは、乱用抵抗性マトリックスと会合する。乱用抵抗性マトリックスは、限定されるわけではないが、層またはコーティング、例えば水浸食性コーティングもしくは水加水分解性マトリックス、例えばイオン交換重合体、またはそれらの任意の組み合わせであってもよい。したがって、本発明の1つの態様において、アンタゴニストは、口中に放出されないような方式で、マトリックスと会合する。本発明の別の態様において、アンタゴニストの味は、適切にマスキングされる。マイクロカプセル化などの方法による物理的捕捉によって、または例えばアンタゴニストの粘膜吸収を防止するかまたは阻害する重合体、たとえばイオン交換重合体の使用による化学的結合法によって、捕捉および/または味のマスキングを達成してもよい。いかなる特定の理論に束縛されることも望まないが、乱用を防止するのに必要な比を理解し、ありうる結合機構を評価し、かつアンタゴニストの物理化学的特性を評価することによって、特定のアンタゴニストに関する最適な配合を決定してもよいと考えられる。
【0067】
いくつかの態様において、アンタゴニストを、溶腸性重合体、多糖、デンプンまたはポリアクリレート中にマイクロカプセル化する。特定の理論に束縛されることは望まないが、マイクロカプセル化は、アンタゴニストの経粘膜吸収を実質的に防止し、かつ被験体がマイクロカプセル化したアンタゴニストを嚥下することを可能にするであろうと考えられる。遅延放出特性を提供するように、マイクロカプセルのコーティングを設計してもよいが、コーティングは、物品または組成物が水性環境に置かれた場合、例えば剤形が咀嚼されるかまたは抽出に供された場合には、放出するであろう。例えば、マイクロカプセル化アンタゴニスト用のコーティング材料として、デンプンまたはpH依存性加水分解重合体の使用によって、遅延放出を達成してもよい。デンプンは、例えば、唾液アミラーゼなどの、唾液中に存在する酵素いずれかに感受性であろう。
【0068】
いくつかの態様において、アンタゴニストは、マイクロカプセルまたはマイクロスフェア中にマイクロカプセル化され、かつ次いで、乱用抵抗性マトリックス中に組み込まれる。アンタゴニストを含有するこうしたマイクロカプセルまたはマイクロスフェアは、ポリアクリレート、多糖、デンプンビーズ、ポリアセテートビーズ、またはリポソームなどの重合体で構成されてもよい。さらなる態様において、マイクロスフェアおよびマイクロカプセルは、小腸の特定の部分で放出するように設計される。
【0069】
別の態様において、本発明のデバイスには、マイクロマトリックスが乱用抵抗性マトリックス中に組み込まれるように、複合体形成性重合体を伴うマイクロマトリックス中のアンタゴニストが含まれる。さらに別の態様において、アンタゴニストは、緩慢に加水分解可能な、または緩慢に浸食される重合体中に組み込まれ、こうした重合体は次いで、乱用抵抗性マトリックス中に組み込まれる。
【0070】
いくつかの態様において、オピオイドは、粘膜と接触する粘膜付着性層に存在し、一方、アンタゴニストは、非接着性であり、かつ長期に渡って浸食される裏打ち層中に存在する。存在する場合、粘膜付着性層と裏打ち層の間に配置された層もまた、アンタゴニストを含んでもよい。これは、放出に際してなお嚥下されながら、経粘膜空間中へのアンタゴニスト吸収に関して、より低い駆動力を提供し得る。アンタゴニストはまた、粘膜付着性層と裏打ち層の間に配置された層から即座に放出され、こうして乱用を妨げるであろう。
【0071】
1つの態様において、乱用抵抗性マトリックスは、水溶性重合体、例えば粘膜付着性層および/または裏打ち層に関して記載したものと類似の重合体を含むが、アンタゴニストが有意な度合いには粘膜から吸収されないように、デバイスと会合している。例えば、マトリックスは、粘膜付着性層と裏打ち層の間に配置された第三の層であってもよい。
【0072】
例示的な層状デバイスの1つの態様において、重合体、例えば薬学的に許容されるイオン交換重合体に化学的に結合し、かつ/または水溶性重合体コーティング内のマイクロカプセル中に物理的に捕捉されたアンタゴニストと一緒に、粘膜付着性層中に薬剤が位置していてもよい。水中での抽出に際して、薬剤およびアンタゴニストが同時に抽出され、抽出された薬剤の乱用可能性を排除する。いくつかの態様において、重合体、例えばイオン交換重合体、およびアンタゴニスト間の化学結合もまた、加水分解性である。
【0073】
例示的な三層状デバイス立体配置において、薬剤を粘膜付着性層中に位置させてもよく、一方、アンタゴニストは、本明細書に記載するような物理的または化学的結合状態いずれかにある、区別不可能な挟まれた第三の層中に位置させる。ここでも、水中での抽出に際して、薬剤およびアンタゴニストの両方が抽出され、抽出された薬剤の乱用可能性を減少させるかまたは排除する。
【0074】
いくつかの態様において、乱用抵抗性マトリックスは、水加水分解性マトリックスである。用語「水加水分解性マトリックス」は、本明細書において用いる場合、所望の速度でのマトリックスの水加水分解を可能にし、したがってまた、所望の速度でのマトリックス内の材料の放出を達成する、制御された放出マトリックスを指す。いくつかの態様において、水加水分解性マトリックスは、イオン交換重合体である。いくつかの態様において、水加水分解性マトリックス、例えばイオン交換重合体は、粘膜付着性層の浸食速度よりも、より緩慢な速度で浸食されるように選択される。他の態様において、水加水分解性マトリックスは、粘膜付着性層の浸食速度よりは緩慢であるが、非付着性裏打ち層の浸食速度よりは迅速な速度で浸食されるように、選択される。いくつかの態様において、イオン交換重合体からのアンタゴニストの解離速度は、アンタゴニストが組み込まれた層の浸食速度よりも、より緩慢である。
【0075】
いくつかの態様において、イオン交換重合体によるアンタゴニストの化学結合はまた、味のマスキングを促進し、かつアンタゴニストの放出を遅延させて、アンタゴニストが嚥下されるのを可能にするであろう。イオン性分子(例えばHofmeisterシリーズによって定義されるもの)またはpHのシフトによって誘導される、誘発されたイオン変化下で、イオン性重合体から薬剤を加水分解してもよい。
【0076】
いくつかの態様において、乱用抵抗性マトリックスには、例えばイオン交換重合体における化学結合に用いられる材料が含まれる。こうした材料には、限定されるわけではないが、ポリ無水物、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリアクリル酸、アクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリ(酸化エチレン)、酸化エチレン-酸化プロピレン共重合体、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレン-コ-酢酸ビニル)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(メタクリル酸)、ゼラチン、キトサン、コラーゲンおよび誘導体、アルブミン、ポリアミノ酸および誘導体、ポリホスファゼン、多糖および誘導体、ならびに限定されるわけではないが、noveon AA1 POLYCARBOPHIL(商標)、PROVIDONE(商標)、AMBERLITE(商標)IRP69、DUOLITE(商標)AP143、AMBERLITE(商標)IRP64、およびAMBERLITE(商標)IRP88、ならびにそれらの任意の組み合わせが含まれる。薬剤のpKaに応じて、AMBERLITE(商標)IR-122などの陽イオン性重合体またはAMBERLITE(商標)IRA-900などの陰イオン交換樹脂もまた使用可能である。官能基には、限定されるわけではないが、R-CH2N+(CH3)3、R-CH2N+(CH3)2C2H4OH、R-SO3-、R-CH2N+H(CH3)2、R-CH2COO-、 R-COO-、およびR-CH2N(CH2COO)2が含まれてもよい。
【0077】
イオン交換重合体の選択は、アンタゴニストのpKa、およびイオン交換重合体に結合するのに使用可能な、主鎖上の-COOH、-OHまたはアミン官能性などの、薬剤部分に付着した官能基に応じる。イオン交換重合体に装填する薬剤の量は、オピオイドアンタゴニストの分子量、用いるイオン交換重合体の種類、およびそのイオン性化学量論的比に応じる。いくつかの態様において、アンタゴニスト対イオン交換重合体の比は、約1:99〜約99:1の範囲である。他の態様において、アンタゴニスト対イオン交換重合体の比は、約1:9〜約9:1の範囲である。他の態様において、アンタゴニスト対イオン交換重合体の比は、約1:3〜約3:1の範囲である。
【0078】
いくつかの態様において、乱用抵抗性マトリックスは、層コーティング、例えば水浸食性コーティングである。すなわち、緩慢に浸食される水溶性重合体でコーティングされたバリア層によって、デバイス、例えば粘膜付着性層中のアンタゴニストの物理的捕捉を促進してもよい。すなわち、アンタゴニストは、水浸食可能コーティングで部分的にコーティングされても、またはこうしたコーティング内に配置されてもよい。マイクロカプセル化および粒子コーティングの方法が、文献中に定義されている。
【0079】
いくつかの態様において、乱用抵抗性マトリックスには、物理的捕捉に用いられる材料が含まれる。こうした材料には、限定されるわけではないが、アルギネート、酸化ポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリラクチド、ポリグリコリド、ラクチド-グリコリド共重合体、ポリ-イプシロン-カプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物および誘導体、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸、およびカルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、酸化ポリエチレン、酸化エチレン-酸化プロピレン共重合体、コラーゲンおよび誘導体、ゼラチン、アルブミン、ポリアミノ酸および誘導体、ポリホスファゼン、多糖および誘導体、キチン、キトサン生物付着性重合体、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0080】
他の例示的な水浸食性コーティングおよび水加水分解性マトリックスが、当技術分野において、例えば米国特許第6,228,863号および第5,324,351号において知られている。
【0081】
いくつかの態様において、デバイスは、水性溶液または唾液などの体液中での可溶性の制御、ならびに送達と同時のフィルムの緩慢で自然な溶解を前提として、処置部位での有効なオピオイド鎮痛剤送達に適した滞留時間を提供する。滞留時間はまた、用いるオピオイドの種類および治療的適応症に応じて、数分間から数時間の範囲を提供するように調整してもよい。いくつかの態様において、本発明のデバイスを用いて、約20〜30分間および約3〜4時間の間の滞留時間が達成される。他の態様において、約1時間〜約2時間の間の滞留時間が達成される。本発明のデバイスの滞留時間は、用いる水溶性重合体の溶解速度に応じる。化学的に異なる親水性および疎水性重合体を一緒に混合することによって、または同じ重合体の異なる分子量等級を用いることによって、溶解速度を調整してもよい。こうした調整は、徐放の技術分野によく記載される。
【0082】
本発明のデバイス中で用いる材料は、水溶性であるため、非経口注射のために付着性層からオピオイドを抽出する違法な使用努力は、オピオイドアンタゴニストの同時抽出によって阻止される。産物中に含有されるオピオイドアンタゴニストの量は、オピオイド単独の非経口投与から予期される、いかなる精神薬理学的効果をも遮断するように設計される。
【0083】
いくつかの態様において、乱用方式でのデバイスの使用に際して、アンタゴニストは、一般的に、乱用され得る薬剤と実質的に同じ速度で放出される(例えば、水または何らかの他の適切な溶媒中に溶解される)。例えば、いくつかの態様において、乱用され得る薬剤に対するアンタゴニストは、乱用的に溶解された際、オピオイドと実質的に同じ時間で放出される。本明細書において用いる場合、用語「乱用的に溶解された」は、唾液以外の溶媒、例えば水、エタノール等の中での溶解を指す。他の態様において、アンタゴニストは、乱用的に溶解された場合、乱用され得る薬剤よりも、より緩慢な速度で放出される。こうした場合、放出されるアンタゴニストの量は、例えば望ましくない副作用を生じることによって、乱用され得る薬剤の使用を妨害するのに十分であろう。いくつかの態様において、放出されるアンタゴニスト対オピオイドの比は、1:20以上である。他の態様において、放出されるアンタゴニスト対オピオイドの比は、1:10以上である。さらに他の態様において、放出されるアンタゴニスト対オピオイドの比は、1:5以上である。さらに他の態様において、放出されるアンタゴニスト対オピオイドの比は、少なくとも約1:10である。さらに他の態様において、放出されるアンタゴニスト対オピオイドの比は、少なくとも約1:20である。さらに他の態様において、放出されるアンタゴニスト対オピオイドの比は、少なくとも約1:50である。列挙する値の間のいかなる値および範囲も、本発明によって含まれると意図される。
【0084】
所望の場合、当技術分野に知られるフレーバー剤を添加して、活性化合物の味をマスキングしてもよい。また、付着性層に浸透増進剤も含めて、薬剤輸送に対する粘膜の抵抗性を減少させるのを補助してもよい。当技術分野に知られる典型的な増進剤には、エチレンジアミン四酢酸、キトサン等が含まれる。薬剤可溶性および/または薬剤安定性を増進する成分もまた、乱用され得る薬剤を含有する単数または複数の層に添加してもよい。安定化剤および可溶化剤の例は、シクロデキストリンである。
【0085】
いくつかの態様において、本発明のデバイスおよび方法には、乱用され得る薬剤およびアンタゴニストに加えて、1つまたは複数の薬剤がさらに含まれる。いくつかの態様において、2つの乱用され得る薬剤の組み合わせが製剤中に含まれてもよい。2つのこうした薬剤は、例えば、半減期、可溶性、有効性等の異なる特性を有してもよい。さらなる薬剤が、さらなる鎮痛作用を提供してもよく、かつこれには、限定されるわけではないが、アスピリン;アセトアミノフェン;非ステロイド性抗炎症薬剤(「NSAIDS」)、N-メチル-D-アスパラギン酸受容体アンタゴニスト、シクロオキシゲナーゼ-II阻害剤および/またはグリシン受容体アンタゴニストが含まれる。こうしたさらなる薬剤は、オピオイド鎮痛剤と相乗的に作用してもまたは相乗的に作用しなくてもよい。さらなる薬剤には、抗アレルギー性化合物、抗狭心症剤、抗炎症性鎮痛剤、ステロイド性抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤、殺細菌剤および消毒剤、血管収縮剤、止血剤、化学療法薬剤、抗生物質、角質溶解剤、焼灼剤、ホルモン、成長ホルモン、成長ホルモン阻害剤、鎮痛麻薬および抗ウイルス薬剤が含まれる。
【0086】
1つの局面において、本発明には、被験体における痛みを処置するための方法が含まれる。この方法には、痛みが処置されるように本明細書記載の任意のデバイスを投与する段階が含まれてもよい。
【0087】
当技術分野に知られる多様な方法によって、本発明の薬学的送達デバイスを調製してもよい。例えば、1つの態様においては、構成要素を適切な溶媒または溶媒の組み合わせ中に溶解して、溶液を調製する。本発明で使用するための溶媒は、水、メタノール、エタノール、または低級アルキルアルコール、例えばイソプロピルアルコール、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、もしくはジクロロメタン、または任意のそれらの組み合わせを含んでもよい。乾燥した多層状フィルム中の残った溶媒内容物は、可塑剤、浸食もしくは溶解速度修飾剤として作用してもよいし、または何らかの薬学的利点を提供してもよい。所望の残渣溶媒が、層のいずれかまたは両方に存在してもよい。
【0088】
次いで、各溶液を支持体上にコーティングする。各溶液は、適切な支持体を用いて、フィルムコーティング、フィルムキャスティング、スピンコーティング、またはスプレーなどの、当技術分野に知られる技術によって、薄いフィルムにキャスティングされ、かつ加工される。次いで、この薄いフィルムを乾燥させる。乾燥工程は、任意の種類のオーブンで達成可能である。しかし、溶媒残渣は、乾燥法に依存する。フィルム層を独立してフィルムにし、かつ次いで一緒にラミネート加工してもよいし、または一方を他方の上でフィルムにしてもよい。層を一緒にラミネート加工するか、または互いの上でコーティングした後に得たフィルムを、粘膜組織に適用するため、任意の種類の形状にカットしてもよい。いくつかの形状には、円板、楕円、正方形、長方形、および平行六面体が含まれる。
【0089】
実施例
実施例1:フェンタニルの有効性に対するナロキソンの効果
この研究の目的は、IVフェンタニルと組み合わせて投与したIVナロキソンが、オピオイド退薬徴候および症状を引き起こし、かつ中程度のレベルのオピオイド依存の被験体において、静脈内注射からのいかなる愉快な効果も減弱させるであろう用量範囲を決定することである。この比のナロキソン対フェンタニルの経粘膜製剤の添加は、乱用を妨害するかまたは防止すると考えられる。
【0090】
試験は、オピオイド依存志願者における、無作為化二重盲検プラセボ対照被験体内クロスオーバー研究であった。被験体に、入院前および9日間の研究期間を通じて、メタドンを維持投与した。被験体に5つの研究用量各々を投与し、かつ各々の精神薬理学的効果を評価した。
【0091】
被験体には、18〜55歳であり;病歴および身体検査、ECG、ならびにスクリーニング臨床検査に基づいて、いかなる有意な臨床的異常も含まず;体重少なくとも50kg(110 lbs)であり;オピオイド陽性尿試料(>300ng/ml)およびアルコール不含呼気試料(<.002%)の男性または非妊娠かつ非授乳女性が含まれた。
【0092】
被験体は、特定の適応症または疾病を示した場合、研究に適格ではなかった。例えば、特定の精神病、神経学的疾患、心臓血管疾患、肺疾患、全身性疾患を持つ被験体は、不適格であった。さらに、アルコールまたは鎮痛剤乱用および/または依存症の被験体、認知障害がある被験体、メタドン、ブプレノルフィン、LAAM、またはナルトレキソンでオピオイド依存に関して同時に処置されている被験体、経口またはデポー避妊薬以外の何らかの薬物を投与されている被験体、および注射恐怖症の被験体は、研究から排除された。さらに、妊娠、授乳中、または医学的に認可された避妊手段を用いずに異性と性的関係を持つ女性候補は、適格でなかった。
【0093】
18〜55歳のオピオイド依存男性および女性を採用した。志願者は、同時に薬剤使用のための処置を求めておらず、かつメタドン維持投与および解毒を伴う短期研究、ならびに静脈内薬剤投与を伴う実験セッションを含む連続8泊(9日間)の入院に進んで参加した。研究に参加適格である各被験体に、研究番号を割り当てた。
【0094】
完全な病歴および薬歴を取り、かつ身長および体重測定を含めて、各被験体に、完全な身体検査を行った。Welch Allyn非侵襲性患者モニターを用いて、すべての試験セッション中、呼吸速度、酸素飽和、心拍数、および血圧を測定した。各用量の前に、かつ各用量の5、10、15、30、45および60分後に、呼吸速度、心拍、収縮期および拡張期血圧、ならびに酸素飽和を含む、バイタルサインを測定した。各被験体の酸素ヘモグロビン飽和を緊密に監視した。被験体の酸素ヘモグロビン飽和が1分間を超えて、90%未満で維持された場合、鼻カニューレを介して、被験体に酸素を投与し、有害事象を記録し、かつ被験体を監視した。酸素投与を必要とする被験体をさらなる研究参加から排除した。スクリーニング時、各被験体に関して、12誘導心電図を得た。妊娠の可能性がある女性には、研究スケジュールにしたがって、尿妊娠検査を行った。研究中のいかなる時点でも結果が陽性であれば、被験体が試験に参加するのを排除した。すべての有害事象を記録した。
【0095】
各被験体に関して、研究スケジュールにしたがって、以下の表に列挙する臨床検査を入手した。すべての臨床的に有意な異常検査値を特に記録した。

【0096】
Mantoux/PPD結核皮膚試験を被験体の前腕内側の表皮内に投与し、かつ注射部位に印をつけた。試験を投与した48〜72時間後、試験結果を読み取って、試験部位が盛り上がり、かつ触ると固く感じるかどうかを決定した。PPD試験が陽性であった被験体を、地域健康促進プログラム(CHP)に照会して、胸部X線を撮影した。X線が陽性であれば(結核症を有する定義)、被験体に知らせ、かつ処置のため、照会した。
【0097】
被験体は、特定のアンケート、例えば、注射恐怖症アンケート、Shipley Institute of Living Scaleに関する質問(IQを得るために用いる)、オピオイド症状アンケート、主観的薬剤効果を評価する視覚的アナログスケール(VAS)、薬剤強化値に関する質問(例えば薬剤とお金との間の独立の選択を行う)、および観察者が評価する退薬評価を完了するよう求められた。
【0098】
処置
すべての実験用量を、二重盲検方式で、静脈内注射によって投与した。出発IVフェンタニル用量は、0.15、0.3および0.6mgナロキソンと組み合わせた、0.6mg(600μg)であった。このフェンタニル用量は、フェンタニルの中程度の大きさの経粘膜製剤に相当し、それによって、潜在的に乱用され得る用量の合理的な試験を提供する。最初の結果に応じて、フェンタニルを上方に(最高0.8mgまで)または下方に(最低0.2mgまで)調整した。用量調整を行った場合、ナロキソン用量を以下の比にしたがって調整した:(1)プラセボ、(2)フェンタニル≦0.8mg + ナロキソンプラセボ、(3)フェンタニル≦0.8mg + フェンタニルの用量の25%のナロキソン、(4)フェンタニル≦0.8mg + フェンタニルの用量の50%のナロキソン、および(5)フェンタニル≦0.8mg + フェンタニルの用量の100%のナロキソン。
【0099】
最初の実験セッション前の10日間、被験体にメタドンのターゲット用量を維持投与した。被験体にはまた、実験措置がない日も、メタドン維持量(毎日50mg)を投与した。
【0100】
研究期間の初日に始まり、かつ続く各日に、被験体に、各日同じ時間に、静脈内注射によって5つの研究処置の1つを投与した。以下の時間系列は、薬剤を投与し、かつ評価を行った時間を示す。

【0101】
最後の日の被験体の退院前に、有害事象の評価、完全な身体検査、臨床検査および最初のメタドン解毒用量の投与をすべて行う。
【0102】
最初の被験体由来の結果を図1に示す。図1からわかるように、プラセボからは正または負の効果はまったくなく、フェンタニル単独では正の効果しかなく、フェンタニルに25%ナロキソンを加えると、正の効果がなく、かつある程度の有意な負の効果があり、かつフェンタニルに50%ナロキソンを加えると、大きな負の効果があった。
【0103】
実施例2:水およびエタノール中でのフェンタニルおよびナロキソンの抽出
3.11cm2二層状経粘膜ディスクを、100mLの0.1N HClおよび0.1N NaOH中に入れた。30分間の期間に渡って、ディスクを溶解させ、かつ高性能液体クロマトグラフィーを用いて、ナロキソン量を測定した。酸性条件下では、30分間で、100%ナロキソンおよび100%フェンタニルが抽出され、一方、pH 12では15%ナロキソンおよび2%フェンタニルが測定された。残りの量は、他の不溶性賦形剤とともに、フラスコの底に定着していると予期された。本明細書に記載するような3.11cm2二層状経粘膜ディスクを、100mLのエタノール中に入れた。HPLC結果は、ナロキソンおよびフェンタニルの両方が存在することを示す。
【0104】
実施例3:水性溶媒中のブプレノルフィンおよびナロキソンの抽出
粘膜付着性層中にブプレノルフィンを、かつ裏打ち層中にナロキソンを含有する2.3cm2ディスクを調製し、かつ50RPMで、Van Henkel USP溶解装置中のpH7.4のリン酸緩衝溶液中に入れた。溶解実験の結果を以下の表に示す。

【0105】
表から分かるように、ナロキソンおよびブプレノルフィンは、同時に180分まで抽出された。したがって、これらは、溶解によっては、別個には抽出不可能である。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】プラセボ、フェンタニルのみ、および多様な比のフェンタニルおよびナロキソンを投与された被験体による、正および負の効果の測定値をグラフで示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乱用され得る薬剤(abusable drug)を含む経粘膜送達組成物;および
乱用され得る薬剤に対するアンタゴニストを含む乱用抵抗性(abuse-resistant)マトリックス
を含む、生浸食性(bioerodable)乱用抵抗性薬剤送達デバイス。
【請求項2】
アンタゴニストが実質的に経粘膜的に利用不可能である、請求項1記載の送達デバイス。
【請求項3】
不活性化剤を実質的に含まない、請求項1記載の送達デバイス。
【請求項4】
粘膜付着性薬剤送達デバイスである、請求項1記載の送達デバイス。
【請求項5】
頬側送達デバイスである、請求項1記載の送達デバイス。
【請求項6】
舌下送達デバイスである、請求項1記載の送達デバイス。
【請求項7】
乱用抵抗性マトリックスが、アンタゴニスト周囲に少なくとも部分的に配置されたコーティングまたは層である、前記請求項のいずれか一項記載の送達デバイス。
【請求項8】
錠剤、ロゼンジ、フィルム、ディスク、カプセル、または重合体混合物からなる群より選択される形態である、前記請求項のいずれか一項記載の送達デバイス。
【請求項9】
コーティングまたは層が水浸食性コーティングまたは層である、請求項7記載の送達デバイス。
【請求項10】
乱用抵抗性マトリックスが、水加水分解性、水浸食性または水溶性マトリックスである、前記請求項のいずれか一項記載の送達デバイス。
【請求項11】
マトリックスがイオン交換重合体である、請求項10記載の送達デバイス。
【請求項12】
粘膜付着性層を含む、前記請求項のいずれか一項記載の送達デバイス。
【請求項13】
乱用され得る薬剤および乱用抵抗性マトリックスのいずれかまたは両方が、粘膜付着性層内に組み込まれている、請求項12記載の送達デバイス。
【請求項14】
粘膜付着性層および非付着性裏打ち層(non-adhesive backing layer)を含む、前記請求項のいずれか一項記載の薬剤送達デバイス。
【請求項15】
乱用され得る薬剤が、粘膜付着性層と裏打ち層の間に配置された第三の層内に組み込まれている、請求項14記載の送達デバイス。
【請求項16】
乱用抵抗性マトリックスが、粘膜付着性層と裏打ち層の間に配置された第三の層内に組み込まれている、請求項14記載の送達デバイス。
【請求項17】
乱用抵抗性マトリックスが、粘膜付着性層と裏打ち層の間に配置された第三の層である、請求項14記載の送達デバイス。
【請求項18】
乱用抵抗性マトリックスが、粘膜付着性層内および/または裏打ち層内に組み込まれている、請求項14記載の送達デバイス。
【請求項19】
乱用され得る薬剤が粘膜付着性層内に組み込まれ、かつ乱用抵抗性マトリックスが裏打ち層内に組み込まれている、請求項14記載の送達デバイス。
【請求項20】
乱用抵抗性マトリックスが、裏打ち層、粘膜付着性層、第三の層、またはそれらの任意の組み合わせよりも、より緩慢な速度で浸食される、請求項13〜19のいずれか一項記載の送達デバイス。
【請求項21】
乱用され得る薬剤が、オピエートおよびオピオイドからなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項記載の送達デバイス。
【請求項22】
アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アポモルフィン、アニレリジン、アポコデイン、ベンジルモルフィン(benzylmorphine)、ベジトラミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデイン、シクロルファン、シプレノルフィン(cyprenorphine)、デソモルフィン、デキストロモラミド、デキストロプロポキシフェン、デゾシン、ジアムプロミド、ジアモルホン(diamorphone)、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルフィン、ジメノキサドール、エプタゾシン、エチルモルフィン、エトニタゼン、エトルフィン、フェンタニル、フェンカムファミン、フェネチリン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ヒドロキシメチルモルフィナン(hydroxymethylmorphinan)、ヒドロキシペチジン、イソメタドン、レボメタドン、レボフェナシルモルファン、レボルファノール、ロフェンタニル、マジンドール、メペリジン、メタゾシン、メタドン、メチルモルフィン、モダフィニル、モルフィン、ナルブフェン(nalbuphene)、ネコモルフィン(necomorphine)、ノルメタドン、ノルモルフィン、オピウム、オキシコドン、オキシモルホン、フォルコジン、プロファドール、レミフェンタニル、スフェンタニル、トラマドール、対応する誘導体、生理学的に許容される化合物、塩および塩基からなる群より選択される少なくとも1つの乱用され得る薬剤を含む、前記請求項のいずれか一項記載の送達デバイス。
【請求項23】
アンタゴニストが、ナロキソン、ナルトレキソン、ナルメフェン、ナリド(nalide)、ナルメキソン、ナロルフィン、ナルフィン(naluphine)、シクラゾシン、レバロルファン、ならびにその生理学的に許容される塩および溶媒和物からなる群より選択される少なくとも1つのオピエートアンタゴニストまたはオピオイドアンタゴニストを含む、前記請求項のいずれか一項記載の送達デバイス。
【請求項24】
乱用抵抗性マトリックスが、部分的架橋ポリアクリル酸、polycarbophil(商標)、providone(商標)、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、ゼラチン、キトサン、Amberlite(商標)IRP69、Duolite(商標)AP143、AMBERLITE(商標)IRP64、AMBERLITE(商標)IRP88、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの材料を含む、前記請求項のいずれか一項記載の送達デバイス。
【請求項25】
乱用抵抗性マトリックスが、アルギネート、酸化ポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリラクチド、ポリグリコリド、ラクチド-グリコリド共重合体、ポリ-イプシロン-カプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物および誘導体、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸、およびカルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、酸化ポリエチレン、酸化エチレン-酸化プロピレン共重合体、コラーゲンおよび誘導体、ゼラチン、アルブミン、ポリアミノ酸および誘導体、ポリホスファゼン、多糖および誘導体、キチン、またはキトサン生物付着性重合体、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの材料を含む、前記請求項のいずれか一項記載の送達デバイス。
【請求項26】
乱用方式で使用した場合に、乱用され得る薬剤の有効性の30%未満が保持される、前記請求項のいずれか一項記載の送達デバイス。
【請求項27】
乱用的に溶解した場合に、アンタゴニストおよび乱用され得る薬剤が、実質的に同じ速度で放出される、請求項1記載の乱用抵抗性薬剤送達デバイス。
【請求項28】
水中に溶解した場合に、アンタゴニストおよび乱用され得る薬剤が、実質的に同じ速度で放出される、請求項1記載の乱用抵抗性薬剤送達デバイス。
【請求項29】
放出されるアンタゴニストの、放出される乱用され得る薬剤に対する比が、約1:20以上である、請求項27および28記載の乱用抵抗性薬剤送達デバイス。
【請求項30】
痛みが処置されるように前記請求項のいずれか一項記載のデバイスを投与する段階を含む、被験体における痛みを処置するための方法。
【請求項31】
被験体によって全身循環内に吸収されるアンタゴニストの度合いが、約15重量%未満である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
乱用され得る薬剤の投薬量が、約50μg〜約10mgの間である、請求項30または31記載の方法。
【請求項33】
粘膜表面に接触して位置する少なくとも1つの生浸食性粘膜付着性層、および
少なくとも1つの生浸食性非付着性裏打ち層
を有する層状フィルムを含む、生浸食性乱用抵抗性薬剤送達デバイスであって、
少なくとも1つの乱用され得る薬剤が少なくとも粘膜付着性層中に組み込まれ、かつ乱用され得る薬剤に対するアンタゴニストを含む乱用抵抗性マトリックスが、いずれかの層中または全層中に組み込まれている、
生浸食性乱用抵抗性薬剤送達デバイス。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2009−519347(P2009−519347A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545803(P2008−545803)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/047686
【国際公開番号】WO2007/070632
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(508175972)バイオデリバリー サイエンシーズ インターナショナル インコーポレイティッド (1)
【Fターム(参考)】