説明

乳中に安定して産生される改変抗体およびその製造方法

本発明はトランスジェニック哺乳動物の乳中での抗体の製造方法に関するものである。該方法は、体細胞および生殖細胞が、外因性重鎖可変領域またはその抗原結合断片、少なくとも一つの重鎖定常領域またはその機能断片、およびヒンジ領域をコードし、哺乳類上皮細胞で発現を導くプロモーターに作動可能に連結している配列を有するトランスジェニック哺乳動物を提供することを含む。該ヒンジ領域は重鎖定常領域に通常連結しているヒンジ領域から改変されている。また本発明は、トランスジェニック哺乳動物、そのような動物の作製法、およびそのような抗体および抗体をコードする核酸を含む組成物に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトランスジェニック哺乳動物の乳中での抗体の製造方法を提供する。本方法は、体細胞および生殖細胞が少なくとも一つずつの重鎖および軽鎖およびヒンジ領域をコードする配列をもつトランスジェニック哺乳動物を提供することを含み、該ヒンジ領域は、生じた組み換え抗体の安定性と折りたたみ特性を改善するために、重鎖定常領域に通常連結しているヒンジ領域から改変されている。
【背景技術】
【0002】
IgGはヒト成人の血清中に最も多量にあるアイソタイプ抗体で、全血清免疫グロブリンの約80%を占める。IgGは、二つの重鎖と二つの(および)の軽鎖からなる4量体構造の単量体分子である。重鎖および軽鎖は一般にジスルフィド結合により相互連結されている。さらに抗体には、分子に部分的な柔軟性を与えるプロリン残基が多量なヒンジ領域がある。IgGは、抗原の凝集、オプソニン作用、抗体依存性細胞媒介細胞毒性、胎盤の通過、補体の活性、毒の中和、バクテリアの不動化、ウイルスの中和等、さまざまな生物学的機能を示す。
【0003】
IgG4抗体は、エフェクター機能がないため治療用剤として使用することができる。しかし、IgG4抗体は、酸処理または非還元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)上で“不安定”な特性を有し、結果的に80KDaのタンパク質になってしまう(“半分子(half molecule)”としても知られる)。二つの重鎖がジスルフィド結合で連結しなくなると、この半分子が生じる。
【0004】
組織培養でのIgG4の産生は各種成功している。細胞株によって、IgG4の“半分子”の割合は5〜25%とさまざまである。IgG4分子を作る際の問題点の一つは、全IgG4分子からこの半分子型を分離する簡便な方法がないことである。多くの生産現場では、工程で生じる“半分子”がさまざまなレベルで存在することを単純に受け入れている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は一部には、トランスジェニック動物の乳中で抗体を製造すると、結果的に50%以下の抗体が半分子型になり、その抗体のヒンジ領域の改変によって、そのような動物の乳中で、会合抗体(assembled antibody)が増加することの発見に基づく。理論による裏づけは求めていないが、トランスジェニック動物の乳中で見られる半分子の増加は、一部には、乳腺が、十分な分泌をもたらしはているが、抗体の重鎖間の適切な折りたたみおよび/またはジスルフィド結合の形成をもたらすことができないためであろう。そのような抗体のヒンジ領域の改変で、半分子のレベルが低減される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、一実施態様において、本発明はトランスジェニック哺乳動物の乳中での抗体の製造方法に関するものである。該方法は、外因性重鎖可変領域またはその抗原結合断片、少なくとも1つの重鎖定常領域またはその機能断片、およびヒンジ領域をコードし、哺乳類上皮細胞で発現を導くプロモーターに作動可能に連結している配列を有する体細胞および生殖細胞をもつトランスジェニック哺乳動物を提供することを含み、このヒンジ領域は重鎖定常領域に通常連結しているヒンジ領域から改変されている。
【0007】
一実施形態では、少なくとも抗体の70%、75%、80%、90%、95%が、会合型として乳中に存在している。他の実施形態では、トランスジェニック哺乳動物の体細胞および生殖細胞はさらに、哺乳類上皮細胞で発現を導くプロモーターに作動可能に連結している軽鎖可変領域またはその抗体結合断片、および軽鎖定常領域またはその機能断片をコードする配列を含む。
【0008】
他の実施形態では、本方法は、抗体成分を供給するために、トランスジェニック哺乳動物から乳を得る工程を含むことができる。さらに、本方法は、乳中から外因性抗体を精製する工程も含むことができる。
【0009】
使用されるプロモーターは、例えば、カゼインプロモーター、ラクトアルブミンプロモーター、βラクトグロブリンプロモーター、乳清酸性タンパク質プロモーター等、哺乳類上皮細胞で発現を導く任意の既知のプロモーターであってよい。好適な実施形態では、トランスジェニック動物は、ウシ、ヤギ、マウス、ラット、ヒツジ、ブタ、ウサギであってよい。
【0010】
抗体は、例えば、IgA、IgD、IgM、IgE、またはIgG、またはこれらの断片等、どのようなクラスの抗体からでも作製できる。好適な一実施形態では、抗体は、例えばIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体等のIgG抗体である。他の好適な実施形態では、抗体はIgG4抗体である。
【0011】
本発明では、抗体のヒンジ領域でのさまざまな改変が企図されている。例えば、一実施形態では、抗体のヒンジ領域の全部または一部が改変されている。他の実施形態では、抗体のヒンジ領域の全部または一部は、例えば重鎖定常領域および/または可変領域に通常連結しているヒンジ領域とは異なるヒンジ領域またはその一部で置換される。好適な一実施形態では、IgG抗体の重鎖定常領域またはその一部をもつ抗体のヒンジ領域が、IgG抗体以外の抗体のヒンジ領域またはその一部で置換される。例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4等のIgG抗体のヒンジ領域またはその一部が、IgA、IgD、IgM、IgE抗体由来のヒンジ領域またはその一部で置換される。他の実施形態では、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4等のIgG抗体の重鎖定常領域またはその一部をもつ抗体のヒンジ領域またはその一部は、別のIgG抗体由来のヒンジ領域またはその一部で置換することができる。例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体のヒンジ領域は、別のサブクラスのIgG由来のヒンジ領域で置換することができる。さらに他の好適な実施形態では、IgG4抗体の重鎖定常領域をもつ抗体のヒンジ領域は、IgG1、IgG2、またはIgG3由来のヒンジ領域で置換することができる。
【0012】
さらに別の実施形態では、抗体のヒンジ領域をコードする核酸配列の少なくとも一つの核酸残基が、抗体の重鎖定常領域に通常連結しているヒンジ領域で天然の核酸配列とは異なるように、該ヒンジ領域が改変された。他の実施形態では、抗体のヒンジ領域のアミノ酸配列の少なくとも一つのアミノ酸残基が、抗体の重鎖定常領域に伴ったヒンジ領域で天然のアミノ酸配列とは異なる。
【0013】
好適な一実施形態では、重鎖定常領域に自然連結しているヒンジ領域の一つ以上のアミノ酸が、異なるクラスまたはサブクラスの抗体の重鎖定常領域に連結しているヒンジ領域の同じ位置にあるアミノ酸で置換されるように、ヒンジ領域が改変された。好適には、産生される重鎖定常領域はIgG抗体由来で、ヒンジ領域はIgA、IgD、IgM、またはIgE抗体のヒンジ領域の一つ以上のアミノ酸で置換されている。他の好適な実施形態では、産生される抗体の重鎖定常領域はIgG4等のIgG抗体由来で、ヒンジ領域はIgG1、IgG2、およびIgG3抗体等の異なるサブクラスの抗体のヒンジ領域の一つ以上のアミノ酸で置換されている。
【0014】
他の実施形態では、ヒンジ領域のシステイン残基以外の少なくとも一つのアミノ酸をシステイン残基で置換することができる。変更形態は、重鎖または軽鎖、または抗体の重鎖のヒンジ領域等で、抗体の少なくとも一つの糖鎖付加部位の改変を含むことができる。
【0015】
他の実施形態では、産生される抗体の重鎖定常領域はIgG4由来で、ヒンジ領域のセリン残基をプロリン残基で置換することができる。例えば、ヒンジ領域のアミノ酸番号241のセリン残基をプロリン残基で置換することができる。
【0016】
例えば、この抗体は、キメラ、ヒトまたはヒト化抗体、あるいはそれらの断片であってもよい。
【0017】
他の実施形態では、トランスジェニック哺乳動物の乳には実質的に外因性抗体の半分子型が存在しない。好適には、トランスジェニック哺乳動物の乳中に存在する外因性抗体の会合型と半分子型の比は、少なくとも2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1またはそれ以上となる(例えば20:1)。
【0018】
別の実施態様では、本発明は、体細胞および生殖細胞が改変抗体のコード配列を含むトランスジェニック哺乳動物を作製する方法に関するものであり、その改変抗体のコード配列は改変ヒンジ領域をもつ抗体分子またはその一部をコードしている。本方法は、哺乳動物に構成物を導入する工程を含み、該構成物は、哺乳類上皮細胞で発現を導くプロモーターに作動可能に連結している外因性重鎖可変領域またはその抗原結合断片、少なくとも一つの重鎖定常領域またはその機能断片およびヒンジ領域をコードする配列を含む。該ヒンジ領域は、産生される抗体の重鎖定常領域に通常連結しているヒンジ領域から改変されている。一実施形態では、トランスジェニック哺乳動物の乳中に存在する外因性抗体の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%が会合型であるように、ヒンジ領域が改変された。他の実施形態では、構成物は、軽鎖可変領域またはその抗原結合断片、および軽鎖定常領域またはその機能断片をコードする配列を含み、哺乳類上皮細胞で発現を導くプロモーターに作動可能に連結している。
【0019】
使用されるプロモーターは、例えば、カゼインプロモーター、ラクトアルブミンプロモーター、βラクトグロブリンプロモーター、乳清酸性タンパク質プロモーター等、哺乳類上皮細胞で発現を導く任意の既知のプロモーターであってよい。一実施形態では、トランスジェニック動物は、ウシ、ヤギ、マウス、ラット、ヒツジ、ブタ、ウサギであってよい。
【0020】
本抗体は、例えば、IgA、IgD、IgM、IgE、またはIgG、またはこれらの断片等任意のクラスの抗体であってもよい。好適な一実施形態では、抗体は、例えばIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体等のIgG抗体である。他の好適な実施形態では、抗体はIgG4抗体である。
【0021】
本発明では、抗体のヒンジ領域でのさまざまな改変が企図されている。例えば、一実施形態では、抗体のヒンジ領域の全部または一部が改変されている。他の実施形態では、抗体のヒンジ領域の全部または一部は、例えば重鎖定常領域および/または可変領域に通常連結しているヒンジ領域とは異なるヒンジ領域またはその一部で置換される。好適な一実施形態では、重鎖定常領域またはその一部はIgG由来であり、その抗体のヒンジ領域はIgG抗体以外の抗体のヒンジ領域またはその一部で置換することができる。例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4等のIgG抗体のヒンジ領域またはその一部は、IgA、IgD、IgM、IgE抗体由来のヒンジ領域またはその一部で置換することができる。他の実施形態では、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4等のIgG抗体の重鎖定常領域またはその一部をもつ抗体のヒンジ領域またはその一部は別のIgG抗体由来のヒンジ領域またはその一部で置換することができる。例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体のヒンジ領域は、別のサブクラスのIgG由来のヒンジ領域で置換することができる。さらに他の好適な実施形態では、IgG4抗体の重鎖定常領域をもつ抗体のヒンジ領域は、IgG1、IgG2、またはIgG3由来のヒンジ領域で置換することができる。
【0022】
さらに別の実施形態では、抗体のヒンジ領域をコードする核酸配列の少なくとも一つの核酸残基が、抗体の重鎖定常領域に通常連結しているヒンジ領域で天然の核酸配列とは異なるように、該ヒンジ領域が改変されている。他の実施形態では、抗体のヒンジ領域のアミノ酸配列の少なくとも一つのアミノ酸残基が、抗体の重鎖定常領域に伴ったヒンジ領域で天然のアミノ酸配列とは異なる。
【0023】
好適な一実施形態では、重鎖定常領域に自然に連結しているヒンジ領域の一つ以上のアミノ酸が、異なるクラスまたはサブクラスの抗体の重鎖定常領域に自然に連結しているヒンジ領域の同じ位置にあるアミノ酸で置換されるように、ヒンジ領域が改変された。好適には、産生される抗体の重鎖定常領域はIgG抗体由来で、ヒンジ領域はIgA、IgD、IgM、またはIgE抗体の一つのヒンジ領域の一つ以上のアミノ酸で置換されている。他の実施形態では、産生される抗体の重鎖定常領域はIgG4等のIgG抗体由来で、ヒンジ領域はIgG1、IgG2、およびIgG3抗体等の異なるサブクラスの抗体のヒンジ領域の一つ以上のアミノ酸で置換されている。
【0024】
他の実施形態では、ヒンジ領域のシステイン残基以外の少なくとも一つのアミノ酸をシステイン残基で置換することができる。変更形態は、重鎖および軽鎖、または抗体の重鎖のヒンジ領域等で、抗体の少なくとも一つの糖鎖付加部位の改変を含むことができる。
【0025】
他の実施形態では、産生される抗体の重鎖定常領域はIgG4由来で、ヒンジ領域のセリン残基をプロリン残基で置換することができる。例えば、ヒンジ領域のアミノ酸番号241のセリン残基をプロリン残基で置換することができる。
【0026】
例えば、この抗体はキメラ、ヒトまたはヒト化抗体、またはそれらの断片であってもよい。
【0027】
他の実施形態では、トランスジェニック哺乳動物の乳には実質的に外因性抗体の半分子型が存在しない。好適には、トランスジェニック哺乳動物の乳中に存在する外因性抗体の会合型と半分子型の比は、少なくとも2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1またはそれ以上となる(例えば20:1)。好適な一実施形態では、トランスジェニック哺乳動物の乳中に存在する外因性抗体の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%が会合型であるように、ヒンジ領域が改変されている。
【0028】
本発明は、抗体のコード配列をトランスジェニック動物に導入するための、当業者にとって既知である全ての方法を企図している。例えば、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、重鎖定常領域、軽鎖定常領域等、抗体の一部をコードしているコード配列は、哺乳類上皮細胞で発現を導くプロモーター等の別個のプロモーターの支配下で、それぞれの構成物として導入することができる。各プロモーターは、同種の哺乳類上皮細胞プロモーター(二つともカゼインプロモーターを含んだ構成物等)であっても、または異なる種類の哺乳類上皮細胞プロモーター(カゼインプロモーターとβラクトグロブリンプロモーターをそれぞれ含んだ構成物等)であってもよい。従って、関連する一実施形態では、本発明は、会合外因性抗体またはその一部を乳中に発現するトランスジェニック哺乳動物の作製法を提供し、該方法は、哺乳類上皮細胞で発現を導くプロモーターに連結した外因性抗体の軽鎖をコードした配列を含む構成物、または哺乳類上皮細胞で発現を導くプロモーターに連結した外因性抗体の変異した重鎖をコードする配列を含む構成物を哺乳動物に導入する工程も含んでいる。他の実施形態では、構成物には、変異した重鎖、軽鎖可変領域またはその抗原結合断片、および軽鎖定常領域またはその機能断片をコードする配列も含まれる。変異重鎖および軽鎖またはその一部をコードした配列は哺乳類上皮細胞で発現を導く各種プロモーターに連結され、その支配下におかれる。例えば、改変抗体のコード配列はポリシストロニックが可能で、例えば、重鎖コード配列と軽鎖コード配列等は、その間に内部リボソーム侵入部位(IRES)を有することができる。各プロモーターの支配下にある場合、プロモーターは哺乳類上皮細胞の同種プロモーターの支配下にあってもよく(二つの配列がβカゼインプロモーターの支配下にある等)、またはそれぞれが異なる哺乳類上皮細胞プロモーターの支配化にある(一つの配列はβカゼインプロモーターで、もう一つはβラクトグロブリンプロモーター等)。
【0029】
他の実施形態では、本発明は、会合外因性抗体を乳中に発現するトランスジェニック哺乳動物の作製法を提供し、該方法は、生殖細胞および体細胞が、哺乳類上皮細胞で発現を導くプロモーターに作動可能に連結している外因性抗体の軽鎖をコードした配列を含むトランスジェニック哺乳動物からの細胞を提供する工程と、その細胞に、哺乳類上皮細胞で発現を導くプロモーターに作動可能に連結している外因性抗体の変異した重鎖またはその一部をコードする配列からなる構成物を導入する工程とを含む。さらにこの重鎖またはその一部には、重鎖定常領域と通常連結しているヒンジ領域を改変したヒンジ領域も含まれる。また他の実施形態では、本発明は、会合外因性抗体を乳中に発現するトランスジェニック哺乳動物の作製法を提供し、該方法は、生殖細胞および体細胞が、哺乳類上皮細胞で発現を導くプロモーターに作動可能に連結している外因性抗体の変異した重鎖またはその一部をコードする配列を含むトランスジェニック哺乳動物からの細胞を提供する工程と、その細胞に、哺乳類上皮細胞で発現を導くプロモーターに作動可能に連結している外因性抗体の軽鎖をコードする配列からなる構成物を導入する工程とを含む。
【0030】
さらに別の実施形態では、本発明では、外因性抗体を乳中に発現するトランスジェニック哺乳動物が特徴であり、その体細胞および生殖細胞は、哺乳類上皮細胞で発現を導くプロモーターに作動可能に連結している外因性重鎖可変領域またはその抗原結合断片、少なくとも一つの重鎖定常領域またはその断片、およびヒンジ領域をコードする改変抗体のコード配列を含む。このヒンジ領域は、産生される抗体の重鎖定常領域に通常連結しているヒンジ領域を改変した。
【0031】
使用されるプロモーターは、例えば、カゼインプロモーター、ラクトアルブミンプロモーター、βラクトグロブリンプロモーター、乳清酸性タンパク質プロモーター等、哺乳類上皮細胞で発現を導く任意の既知のプロモーターであってよい。好適な一実施形態では、トランスジェニック動物は、ウシ、ヤギ、マウス、ラット、ヒツジ、ブタ、ウサギであってよい。
【0032】
本抗体は、例えば、IgA、IgD、IgM、IgE、またはIgG、またはこれらの断片等任意のクラスの抗体であってもよい。好適な一実施形態では、抗体は、例えばIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体等のIgG抗体である。他の好適な実施形態では、抗体はIgG4抗体である。
【0033】
本発明では、抗体のヒンジ領域でのさまざまな改変が企図されている。例えば、一実施形態では、抗体のヒンジ領域の全部または一部が改変されている。他の実施形態では、抗体のヒンジ領域の全部または一部は、例えば重鎖定常領域および/または可変領域に通常連結しているヒンジ領域とは異なるヒンジ領域またはその一部で置換される。好適な一実施形態では、IgG抗体の重鎖定常領域またはその一部をもつ抗体のヒンジ領域が、IgG抗体以外の抗体のヒンジ領域またはその一部で置換される。例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4等のIgG抗体のヒンジ領域またはその一部が、IgA、IgD、IgM、IgE抗体由来のヒンジ領域またはその一部で置換される。他の実施形態では、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4等のIgG抗体の重鎖定常領域またはその一部をもつ抗体のヒンジ領域またはその一部は、別のIgG抗体由来のヒンジ領域またはその一部で置換することができる。例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体のヒンジ領域が、別のサブクラスのIgG由来のヒンジ領域で置換される。さらに他の好適な実施形態では、IgG4抗体の重鎖定常領域をもつ抗体のヒンジ領域は、IgG1、IgG2、またはIgG3由来のヒンジ領域で置換することができる。
【0034】
さらに別の実施形態では、抗体のヒンジ領域をコードする核酸配列の少なくとも一つの核酸残基が、抗体の重鎖定常領域に通常連結しているヒンジ領域で天然の核酸配列とは異なるように、該ヒンジ領域が改変された。他の実施形態では、抗体のヒンジ領域のアミノ酸配列の少なくとも一つのアミノ酸残基が、抗体の重鎖定常領域に伴ったヒンジ領域で天然のアミノ酸配列とは異なる。
【0035】
好適な一実施形態では、重鎖定常領域に自然に連結しているヒンジ領域の一つ以上のアミノ酸が、異なるクラスまたはサブクラスの抗体の重鎖定常領域に自然に連結しているヒンジ領域の同じ位置にあるアミノ酸で置換されるように、ヒンジ領域が改変された。好適には、産生される抗体の重鎖定常領域はIgG抗体由来で、ヒンジ領域はIgA、IgD、IgM、IgE抗体の一つのヒンジ領域の一つ以上のアミノ酸で置換されている。より好適には、産生される抗体の重鎖定常領域はIgG4等のIgG抗体由来で、ヒンジ領域はIgG1、IgG2、およびIgG3抗体等の異なるサブクラスの抗体のヒンジ領域の一つ以上のアミノ酸で置換されている。
【0036】
他の実施形態では、ヒンジ領域のシステイン残基以外の少なくとも一つのアミノ酸をシステイン残基で置換することができる。変更形態には、重鎖および軽鎖、または抗体の重鎖のヒンジ領域等で、抗体の少なくとも一つの糖鎖付加部位の改変が含まれる。
【0037】
他の実施形態では、産生される抗体の重鎖定常領域はIgG4由来で、ヒンジ領域のセリン残基をプロリン残基で置換することができる。例えば、ヒンジ領域のアミノ酸番号241のセリン残基をプロリン残基で置換することができる。
【0038】
例えば、この抗体はキメラ、ヒトまたはヒト化抗体、またはそれらの断片であってもよい。
【0039】
他の実施形態では、トランスジェニック哺乳動物の乳には実質的に外因性抗体の半分子型が存在しない。好適には、トランスジェニック哺乳動物の乳中に存在する外因性抗体の会合型と半分子型の比は、少なくとも2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1またはそれ以上となる(例えば20:1)。
【0040】
好適な一実施形態では、トランスジェニック哺乳動物の乳中に存在する外因性抗体の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%が会合型であるように、ヒンジ領域は改変されている。他の実施形態では、改変抗体のコード配列には、さらに軽鎖可変領域またはその抗原結合断片、および軽鎖定常領域またはその機能断片をコードする配列を含む。軽鎖可変領域またはその抗原結合断片、および軽鎖定常領域またはその機能断片は、哺乳類上皮細胞で発現を導くプロモーターに作動可能に連結して、外因性重鎖可変領域、重鎖定常領域(またはその一部)、およびヒンジ領域をコードする配列と同じプロモーターの支配下にできる。例えば、改変抗体のコード配列はポリシストロニックが可能で、重鎖コード配列と軽鎖コード配列等は、その間に内部リボソーム侵入部位(IRES)を有することができる。
【0041】
さらに別の実施形態では、本発明は乳成分と本明細書中に記載する抗体成分を含む組成物を提供する。好適には、少なくとも70%、75%、80%、90%、95%の外因性抗体が会合型として存在する。他の実施形態では、組成物中の外因性抗体の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%が会合型であるようにヒンジ領域が改変された。
【0042】
本抗体は、例えば、IgA、IgD、IgM、IgE、またはIgG、またはこれらの断片等任意のクラスの抗体であってもよい。好適な一実施形態では、抗体は、例えばIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体等のIgG抗体である。他の好適な実施形態では、抗体はIgG4抗体である。
【0043】
本発明では、抗体のヒンジ領域でのさまざまな改変が企図されている。例えば、一実施形態では、抗体のヒンジ領域の全部または一部が改変されている。他の実施形態では、抗体のヒンジ領域の全部または一部は、例えば重鎖定常領域および/または可変領域に通常連結しているヒンジ領域とは異なるヒンジ領域またはその一部で置換される。好適な一実施形態では、IgG抗体の重鎖定常領域またはその一部をもつ抗体のヒンジ領域は、IgG抗体以外の抗体のヒンジ領域またはその一部で置換することができる。例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4等のIgG抗体のヒンジ領域またはその一部は、IgA、IgD、IgM、IgE抗体由来のヒンジ領域またはその一部で置換することができる。他の実施形態では、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4等のIgG抗体の重鎖定常領域またはその一部をもつ抗体のヒンジ領域またはその一部は、別のIgG抗体由来のヒンジ領域またはその一部で置換することができる。例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体のヒンジ領域は、別のサブクラスのIgG由来のヒンジ領域で置換することができる。さらに他の好適な実施形態では、IgG4抗体の重鎖定常領域をもつ抗体のヒンジ領域は、IgG1、IgG2、またはIgG3由来のヒンジ領域で置換することができる。
【0044】
さらに別の実施形態では、抗体のヒンジ領域をコードする核酸配列の少なくとも一つの核酸残基が、抗体の重鎖定常領域に通常連結しているヒンジ領域で天然の核酸配列とは異なるように、該ヒンジ領域が改変された。他の実施形態では、抗体のヒンジ領域のアミノ酸配列の少なくとも一つのアミノ酸残基が、抗体の重鎖定常領域に伴ったヒンジ領域で天然のアミノ酸配列とは異なる。
【0045】
好適な一実施形態では、重鎖定常領域に自然に連結しているヒンジ領域の一つ以上のアミノ酸が、異なるクラスまたはサブクラスの抗体の重鎖定常領域に自然に連結しているヒンジ領域の同じ位置にあるアミノ酸で置換されるように、ヒンジ領域が改変された。好適には、産生される抗体の重鎖定常領域はIgG抗体由来で、ヒンジ領域はIgA、IgD、IgM、IgE抗体の一つのヒンジ領域の一つ以上のアミノ酸で置換されている。さらに好適には、産生される抗体の重鎖定常領域はIgG4等のIgG抗体由来で、ヒンジ領域はIgG1、IgG2、およびIgG3抗体等の異なるサブクラスの抗体のヒンジ領域の一つ以上のアミノ酸で置換されている。
【0046】
他の実施形態では、ヒンジ領域のシステイン残基以外の少なくとも一つのアミノ酸をシステイン残基で置換することができる。変更形態には、重鎖および軽鎖、または抗体の重鎖のヒンジ領域等で、抗体の少なくとも一つの糖鎖付加部位の改変が含まれる。
【0047】
他の実施形態では、産生される抗体の重鎖定常領域はIgG4由来で、ヒンジ領域のセリン残基をプロリン残基で置換することができる。例えば、ヒンジ領域のアミノ酸番号241のセリン残基をプロリン残基で置換することができる。
【0048】
例えば、この抗体はキメラ、ヒトまたはヒト化抗体、またはそれらの断片であってもよい。
【0049】
他の実施形態では、トランスジェニック哺乳動物の乳には実質的に外因性抗体の半分子型が存在しない。好適には、トランスジェニック哺乳動物の乳中に存在する外因性抗体の会合型と半分子型の比は、少なくとも2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1またはそれ以上となる(例えば20:1)。
【0050】
別の好適な実施形態では、組成物は実質的に乳成分が無く、例えば、乳成分は、重量パーセントで10%、5%、3%、2%、1%、0.5%、0.2%未満となっている。乳成分には、カゼイン、脂質(可溶性脂質およびリン脂質等)、ラクトース、他の低分子(ガラクトース、グルコース等)、小ペプチド(微生物ペプチド、抗菌ペプチド等)、および他の乳タンパク質(βラクトグルブリンおよびαラクトアルブミン、ラクトフェリン、および血清アルブミン等の乳清タンパク質)が含まれる。
【0051】
さらに別の実施態様では、本発明は、哺乳類上皮細胞で発現を導くプロモーターと作動可能に連結している重鎖可変領域またはその抗原結合部位、重鎖定常領域またはその機能断片、およびヒンジ領域をコードする配列を含む核酸を提供する。このヒンジ領域は、重鎖定常領域と通常連結しているものから改変されている。
【0052】
使用されるプロモーターは、例えば、カゼインプロモーター、ラクトアルブミンプロモーター、βラクトグロブリンプロモーター、乳清酸性タンパク質プロモーター等、哺乳類上皮細胞で発現を導く任意の既知のプロモーターであってよい。重鎖可変領域またはその抗原結合部位、重鎖定常領域またはその機能断片、およびヒンジ領域は、IgA、IgD、IgM、IgE、またはIgG、またはこれらの断片等、任意の抗体クラスの任意の抗体から作成することができる。好適な一実施形態では、抗体は、例えばIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体等のIgG抗体である。他の好適な実施形態では、抗体はIgG4抗体である。
【0053】
本発明では、ヒンジ領域でのさまざまな改変が企図されている。例えば、一実施形態で、ヒンジ領域の全部または一部が改変されている。他の実施形態では、ヒンジ領域の全部または一部が、例えば重鎖定常領域および/または可変領域に通常連結しているヒンジ領域とは異なるヒンジ領域またはその一部で置換される。好適な一実施形態では、IgG抗体の重鎖定常領域またはその一部をもつ抗体のヒンジ領域は、IgG抗体以外の抗体のヒンジ領域またはその一部で置換することができる。例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4等のIgG抗体のヒンジ領域またはその一部は、IgA、IgD、IgM、IgE抗体由来のヒンジ領域またはその一部で置換することができる。他の実施形態では、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4等のIgG抗体の重鎖定常領域またはその一部をもつ抗体のヒンジ領域またはその一部は、別のIgG抗体由来のヒンジ領域またはその一部で置換することができる。例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体のヒンジ領域は、別のサブクラスのIgG由来のヒンジ領域で置換することができる。さらに他の好適な実施形態では、IgG4抗体の重鎖定常領域をもつ抗体のヒンジ領域は、IgG1、IgG2、またはIgG3由来のヒンジ領域で置換することができる。
【0054】
さらに別の実施形態では、抗体のヒンジ領域をコードする核酸配列の少なくとも一つの核酸残基が、重鎖定常領域に通常連結しているヒンジ領域で天然の核酸配列とは異なるように、該ヒンジ領域が改変された。他の実施形態では、ヒンジ領域のアミノ酸配列の少なくとも一つのアミノ酸残基が、抗体の重鎖定常領域に伴ったヒンジ領域で天然のアミノ酸配列とは異なる。
【0055】
好適な一実施形態では、重鎖定常領域に自然に連結しているヒンジ領域の一つ以上のアミノ酸が、異なるクラスまたはサブクラスの抗体の重鎖定常領域に自然に連結しているヒンジ領域の同じ位置にあるアミノ酸で置換されるように、ヒンジ領域が改変された。好適には、産生される抗体の重鎖定常領域はIgG抗体由来で、ヒンジ領域はIgA、IgD、IgM、IgE抗体の一つのヒンジ領域の一つ以上のアミノ酸で置換されている。他の好適な実施形態では、産生される抗体の重鎖定常領域はIgG4等のIgG抗体由来で、ヒンジ領域はIgG1、IgG2、およびIgG3抗体等の異なるサブクラスの抗体のヒンジ領域の一つ以上のアミノ酸で置換されている。
【0056】
他の実施形態では、ヒンジ領域のシステイン残基以外の少なくとも一つのアミノ酸をシステイン残基で置換することができる。変更形態には、重鎖および軽鎖、または抗体の重鎖のヒンジ領域等で、抗体の少なくとも一つの糖鎖付加部位の改変が含まれる。
【0057】
他の実施形態では、産生される抗体の重鎖定常領域はIgG4由来で、ヒンジ領域のセリン残基をプロリン残基で置換することができる。例えば、ヒンジ領域のアミノ酸番号241のセリン残基をプロリン残基で置換することができる。
【0058】
例えば、この抗体はキメラ、ヒトまたはヒト化抗体、またはそれらの断片であってもよい。
【0059】
いくつかの実施形態で、核酸はポリシストロニックが可能である。例えば、重鎖コード配列と軽鎖コード配列は、その間に内部リボソーム挿入部位(IRES)を入れること等によって同じプロモーターの支配下における。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
本明細書において、以下の略語は指定の意味を有する:
主な略語

体細胞核移植 (SCNT)
培養内部細胞塊細胞 (CICM)
核移植 (NT)
合成卵管液 (SOF)
ウシ胎児血清 (FBS)
ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR)
ウシ血清アルブミン (BSA)
高圧液体クロマトグラフィー (HPLC)

用語解説

ウシの(Bovine)―雌ウシのおよび各種雌ウシに関すること
ヤギの(Caprine)―ヤギのおよび各種ヤギに関すること
細胞カプレット―融合および/または活性化前の除核卵母細胞および体細胞または胎児の核体
サイトカラシンB―ある種の真菌の代謝産物で、核分裂に影響が無く細胞分裂を選択的かつ可逆的に阻害する
細胞質体―真核細胞の細胞質の物質
融合スライド―離れて固定された平行電極用のスライドグラス。細胞カプレットが電極間に置かれ、融合および活性化のための電流を受ける
核体―細胞から除核処理で得られ、細胞質と細胞膜の狭い縁によって囲まれている細胞の核
核移植―ドナー細胞からの核を除核された卵母細胞へ移植しクローニングする方法
ヒツジの(Ovine)―ヒツジおよび各種ヒツジに関すること
単為生殖の―精子の侵入が無い卵からの胚発生
ブタの(Porchine)―ブタおよび各種ブタに関すること
再構成胚―再構成胚とは、除核処理で遺伝物質を除いた卵母細胞。成体または胎児の体細胞の遺伝物質をこの卵母細胞に入れ、融合させることで“再構成”される
選択試薬―適した抵抗性遺伝子を持たない微生物または細胞を死滅および/またはその成長を阻害するように働く選択マーカーとして機能する化合物、混合物、または分子。本発明によるとこのような試薬は現在たくさん有り、ネオマイシン、ピューロマイシン、ゼオシン、ハイグロマイシン、G418、ガンシクロビル、FIAU等がある。好適には、本発明では選択試薬量を増加させて、一つのインテグレーション部位だけをもつ全細胞株(異型接合動物および/または細胞等)を死滅させる
体細胞―生殖細胞以外の生物の体の全ての細胞
体細胞核移植―治療用クローニングとも呼ばれ、体細胞を除核した卵母細胞に融合させる過程。体細胞の核はその遺伝情報を提供し、卵母細胞は胚発生に必要な栄養素とエネルギー生産物質を提供する。融合が起こると細胞は全能性を示し、最終的に胞胚になる。その時点で内部細胞塊を単離する
トランスジェニック生物―別の生物由来の遺伝物質を実験的に移植した生物で、宿主は自分の遺伝情報に加えて、その染色体に移植された遺伝子の遺伝情報を獲得する
有蹄類―蹄をもつ典型的な草食四足獣の哺乳類、およびこれに関すること。ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシおよびウマ等多種存在する
異種移植―一つの動物由来の生きた細胞、組織、器官を使用し、別種の動物(一般的にはヒト)に移植または挿入する手技、または、臨床体外環流で使用される。
【0061】
本発明はトランスジェニック哺乳動物の乳中での抗体産生に関する。本発明のさまざまな態様は、抗体とその断片、抗体とその断片のトランスジェニック哺乳動物の乳中での産生法、および体細胞および生殖細胞が改変抗体のコード配列を含むトランスジェニック哺乳動物の作製法に関する。哺乳類上皮細胞で改変抗体のコード配列を発現させる核酸配列も提供される。
【0062】
本発明をより容易に理解するために、ある種の用語が定義される。定義は“詳細な説明”中の全般にわたって使用されている。
【0063】
抗体とその断片
本明細書中で使用する抗体の“クラス”とは、抗体の5つの主要なアイソタイプを示し、それにはIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがある。抗体の“サブクラス”とは、各クラスの中のアミノ酸の差異に基づく抗体の下位分類を示す。例えば、IgGと指定される抗体のクラスは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4等のサブクラスへと分けることができ、IgAと指定される抗体のクラスは、IgA1およびIgA2のサブクラスへと分けることができる。
【0064】
“抗体”とは、少なくとも一つおよび好適には二つの重鎖(H鎖)可変領域(VH)と、少なくとも一つおよび好適には二つの軽鎖(L鎖)可変領域(VL)と、少なくとも一つおよび好適には二つの重鎖定常領域から成るタンパク質を示す。VHおよびVL領域はさらに、“フレームワーク領域”(FR)と呼ばれる比較的安定した領域と、そこに散在する“相補性決定領域”(CDR)と呼ばれる超可変領域に分類できる。FRとCDRの大きさは正確に決定されている(参照によって本明細書に組み込まれるKabat,E.A.,et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Intrest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services,NIH Publicaition No.91-3242; Chothia, C. et al., (1987) J. Mol. Biol. 196: 901-917を参照)。各VHおよびVLは3つのCDRと4つのFRから成り、アミノ末端からカルボキシル末端までFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に並んでいる。
【0065】
抗体はさらに軽鎖定常領域を含むことができ、それによって重鎖および軽鎖の免疫グロブリン鎖が形成される。一実施形態では、抗体が二つの重鎖と二つの軽鎖の4量体で、重鎖および軽鎖はジスルフィド結合で内部連結している。重鎖定常領域はCH1、CH2、CH3の3つのドメインからなる。軽鎖定常領域は一つのドメインCLからなる。重鎖および軽鎖の可変領域には、抗原と相互作用する結合ドメインがある。抗体の定常領域は一般に宿主組織または因子への結合を媒介する。これには免疫系の各種細胞(エフェクター細胞等)および古典的補体系の第一成分(Clq)が含まれる。
【0066】
抗体はさらに以下に詳しく記述するヒンジ領域を含むことができる。本明細書中で使用する“会合(assembled)”抗体とは、ジスルフィド結合の内部結合によって重鎖が互いに連結している抗体を示す。各重鎖のヒンジ領域は、少なくとも一つ、またはしばしばいくつかのシステイン残基を含む。会合抗体では重鎖のシステイン残基は整列しているので、二つの重鎖および軽鎖の4量体全体に共有結合するヒンジ領域内のシステイン残基の間にジスルフィド結合は形成される。従って、完全に会合抗体が二つの抗原結合部位を有し二価となる。本明細書中で使用する“抗体”(または“免疫グロブリン”)とは、完全長抗体の断片も指す。例えば、F(ab’)2断片は、ヒンジ領域のジスルフィド架橋によって連結した二つのFab断片から成り、二価である。これらの抗体断片は従来の手法を用いて得られ、元の抗体と同様の有効性があることが検証されている。
【0067】
抗体の“抗原結合断片”(または“機能断片”)とは、抗原と特異的に結合できる抗体の一つ以上の部分を示す。“抗原結合断片”という用語には、一つ以上の相補性決定領域(CDR)も含まれる。
【0068】
本明細書中で使用する“キメラ抗体重鎖”とは、ある抗体重鎖の一部を有す抗体重鎖を示す。例えば、可変領域が少なくとも85%、好適には90%、95%、99%、またはこれ以上、特定の生物種の抗体重鎖の対応するアミノ酸配列と一致する場合、または特定の抗体のクラスまたは型に属しながら、残りの抗体重鎖の一部(定常領域等)が別の抗体分子の対応するアミノ酸配列に実質的に一致する場合である。例えば、重鎖可変領域はある生物種の抗体の重鎖可変領域に実質的に一致する配列をもつが(“供与”抗体、げっ歯類抗体等)、定常領域は別の生物種の抗体の定常領域に実質的に一致する(“受容”抗体、ヒト抗体等)。供与抗体が試験管内で生成、またはファージ提示法によって作られる。
【0069】
“ヒト化”または“CDR移植”軽鎖可変領域とは、一つ以上のCDRから成る抗体の軽鎖、またはわずか一つまたは二つのアミノ酸残基が異なるアミノ酸配列がある生物種または抗体クラスまたは型からの一つ以上の対応するCDRに一致する軽鎖を示す。例えば“供与”抗体(非ヒト(一般的にはマウスまたはラット)免疫グロブリン、または試験管内生成免疫グロブリン)、および天然の免疫グロブリンフレームワーク(ヒトフレームワーク等)または共通フレームワーク等、アミノ酸配列の約85%以上および好適には90%、95%、99%またはそれ以上が、別の生物種または抗体のクラスまたは型からの対応する受容抗体の一部に一致するフレームワーク領域である。一実施形態では、フレームワーク領域には少なくとも約60、より好適には約70の天然の抗体のフレームワーク(ヒトフレームワーク)または共通フレームワーク等の受容抗体軽鎖可変領域のフレームワークと一致するアミノ酸残基が含まれる。
【0070】
“非相同抗体”または“外因性抗体”とは、その哺乳動物で通常作られない抗体、乳腺で通常作られない抗体(抗体が血清のみに存在等)、または乳腺で作られるがその生産過程で発現レベルが増加する抗体を示す。
【0071】
キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体等本明細書中に記載されたどの抗体も、さらにその配列が改変されることもある。例えば配列は付加、欠失、保存性置換等の置換によって変更できる。
【0072】
抗体のヒンジ領域
本発明に記載の方法は、トランスジェニック動物の乳中での抗体を産生することにかかわり、その抗体のヒンジ領域は、重鎖定常領域に通常連結しているヒンジ領域から改変された。このような定常領域は、本明細書中では“変異重鎖定常領域”と呼ばれる。“通常連結”とは、天然の抗体のヒンジ領域と重鎖定常領域の間の連結を示す。本明細書中で言う“天然の”とは、天然の微生物中等、天然に検出される抗体を示す。例えば、天然微生物中に存在し、人工的に改変されていない抗体またはその断片が、自然に生じたものである。この用語はヒンジ領域と抗体の重鎖定常領域(CH1領域等)の少なくとも一部分の間の連結についても示す。本明細書中で、この重鎖定常領域の一部とヒンジ領域は一つの抗体中にともに“自然に生じて”検出される。この用語は天然に発見される重鎖定常領域だけに限るのではない。定常領域は、一つ以上のアミノ酸の置換、挿入、欠失等の改変したものも含むことができる。互いに“通常連結”しているIgGヒンジ領域と重鎖定常領域(またはその一部)の例には、IgG1抗体のヒンジ領域と同じIgG1抗体の重鎖定常領域(またはその一部)、IgG2抗体のヒンジ領域と同じIgG2抗体の重鎖定常領域(またはその一部)、IgG3抗体のヒンジ領域と同じIgG3抗体の重鎖定常領域(またはその一部)、IgG4抗体のヒンジ領域と同じIgG4抗体の重鎖定常領域(またはその一部)である。これらの例に限りは無く、この用語はまた他のクラスの抗体にも適用できる。
【0073】
本明細書中で使用する抗体の“ヒンジ領域”とは、抗体のCH1とCH2ドメイン間にある伸縮性ペプチドを示す。ヒンジ領域は抗体のFabとFc部分の間に生じる。ヒンジ領域は一般的に単一のエクソンでコードされ、抗体の二つの重鎖断片をジスルフィド結合でつなぐ(Paul et al.,Fundamental Imunology,3rd Ed. (1993)を参照のこと)。ヒンジ領域のアミノ酸配列は一般的にプロリン、セリンおよびスレオニン残基が多い。例えば、IgG、IgD、IgAのCH1とCH2ドメイン間の延長ペプチド配列はプロリンに富んでいる。IgMとIgE抗体が、ヒンジ様特徴をもつ約110のアミノ酸ドメインを含んでおり(Ruby,J.,Immunology(1992))、本明細書中で使用する“ヒンジ領域”という用語に含まれる。
【0074】
ヒンジ領域のアミノ酸配列にはシステイン残基を含むこともできる。システイン残基は分子間鎖のジスルフィド結合の形成に関与する。抗体のクラスによるが、抗体のヒンジ領域の2と11の位置の重鎖内ジスルフィド結合の間に存在できる。このジスルフィド結合は完全な抗体分子の二つの部分を一つに合わせるのに必要である。抗体のさまざまなクラスおよびサブクラスのヒンジ領域が当業においてすでに既知である。
【0075】
標準的分子生物学の技術が、ヒンジ領域を改変した抗体を提供するために使用することができる。これらの技術は、抗体のヒンジ領域(または抗体の配列の別の部分)の既知のアミノ酸配列の欠失、挿入、置換等の改変に使用することができる。“改変”とは、抗体のヒンジ領域内、またはその一部におこす変化を示す。このような改変は限りなく、ヒンジ領域の一つ以上のアミノ酸の欠失、挿入および置換がある。直接またはランダムな突然変異技術のような優れた技術が、ヒンジ領域に特定の配列または変異を与えるために使用することができることを当業者は認識している。このような技術はまた、抗体の他の領域の改変にも使用することができる。例えば、重鎖および/または軽鎖の定常領域および/または可変領域である。
【0076】
例えば、オリゴヌクレオチド媒介変異法は、置換、欠失、挿入した変異型DNAを作製するのに適している(Adelman,et al., DNA2: 183, 1983を参照のこと)。端的には、変異をコードしているオリゴヌクレオチドをDNA鋳型にハイブリダイズして目的のDNAを改変する。本明細書中でこの鋳型は、目的のタンパク質の改変無しの天然のDNA配列を含むプラスミドあるいはバクテリオファージの一本鎖である。ハイブリダイゼーション後、DNAポリメラーゼは鋳型の完全な2本目の相補鎖を合成しようと、オリゴヌクレオチドプライマーを取り込む。そして、目的のタンパク質のDNAに必要な改変が加わる。一般に、少なくとも全長25ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドが使用される。最適なオリゴヌクレオチドは、変異ヌクレオチドの両側で鋳型と完全に相補的になる12〜15個のオリゴヌクレオチドである。これによって、オリゴヌクレオチドが適切に一本鎖DNAの鋳型分子とハイブリダイズする。オリゴヌクレオチドはクレアらによる方法(Crea et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75:5765 (1978))等で、簡単に合成できる。
【0077】
例えば一実施形態では、抗体のヒンジ領域またはその断片は、抗体の異なるクラスまたはサブクラス等の別の抗体のヒンジ領域またはその断片で置換される。好適な実施形態では、IgG4ヒンジ領域はIgG2ヒンジ領域等の違うクラスのヒンジ領域で置換される。このような置換は、例えばIgG2ヒンジ領域を含むエクソンをコードするオリゴを用いたオリゴヌクレオチド媒介変異法を使って行うことができる。別の実施形態では、IgG4のヒンジ領域等のヒンジ領域内の一つのアミノ酸は、異なるアミノ酸、例えばIgG2等の別のサブクラスのヒンジ領域の対応する位置で発見されるアミノ酸等で置換する。例えば、アミノ酸241のセリンは(IgG2ヒンジ領域で対応する)プロリンで置換することができる。オリゴヌクレオチド媒介変異法は、アミノ酸変化(オリゴS241P)を起こすオリゴを使用して置換することができる。さらに別の実施形態では、IgG4等の抗体の糖鎖付加部位を糖鎖付加部位として機能しないように改変された。例えば、N‐結合型糖鎖付加部位はアスパラギンをグルタミンに変えることで改変できる。オリゴヌクレオチド媒介変異法は、例えばアミノ酸変化を起こすオリゴを使っても、このような改変に使用することができる。
【0078】
タンパク質を改変するカセット変異法の他の例は、Wells et al.,Gene,34:315(1985)による技術に基づく。最初の物質は、変異させるタンパク質サブユニットのDNAを含むプラスミド(または他のベクター)である。変異されるタンパク質サブユニットのDNAにあるコドンは同定される。同定される変異部位の両側には、特定の制限酵素切断部位が必ずある。もしその部位がない場合は、目的のタンパク質サブユニットのDNAの適当な位置にその部位を挿入するため、上記のオリゴヌクレオチド媒介変異法でその部位を作製する。制限部位がプラスミドに導入されると、プラスミドはこの部位で切断され直鎖になる。制限部位の間に目的の変異をはさんだDNA配列をコードする二本鎖オリゴヌクレオチドが標準的な方法で合成される。二本の鎖は標準的な方法でそれぞれ合成され、その後ハイブリダイズされる。この二本鎖オリゴヌクレオチドはカセットと呼ばれる。このカセットは、直鎖プラスミドの両端に一致する3’と5’末端をもつように設計するので、プラスミドに直接連結できる。従って、このプラスミドには、目的のタンパク質サブユニットの変異したDNA配列が含まれる。
【0079】
さらに本発明では、抗体またはその断片をコードするDNAにランダム変異法で改変したヒンジ領域をもつ抗体の作製が企図されている。簡便な方法には、PCR変異法、飽和変異法、および変性オリゴヌクレオチド配列セットを用いた作製法があるが、これに制限されない。これらの方法は既に知られている。
【0080】
トランスジェニック哺乳動物
本明細書中で使用する“トランスジェニック哺乳動物”とは、その動物の細胞の一つ以上、または好適には実質的に全てに、既知のトランスジェニック技術等の人工的な方法で導入された異種核酸を含んでいる非ヒト動物を示す。前駆細胞への導入、マイクロインジェクションや組換えウイルスの感染等の緻密な遺伝子操作によって、トランスジーンを細胞に直接または間接的に導入することができる。
【0081】
“トランスジーン”とは(一つ以上の抗体ポリペプチドかその一部をコードする)核酸配列を意味し、この核酸は、導入されるトランスジェニック動物や細胞に対して、部分的または全体が非相同すなわち異種となる。または、この核酸は、導入されるトランスジェニック動物や細胞に内在する遺伝子に対して同種であるが、その動物のゲノムを改変するように挿入されるか、挿入が設計されている(自然な遺伝子とは異なる位置にこれを挿入する等)。トランスジーンは、一つ以上の転写制御配列と、イントロン等の目的の抗体をコードする核酸の最適な発現や分泌に必要だと思われる他の核酸も含むことができる。例えば乳腺では、選択した抗体の核酸に実際関係する全ての核酸、またエンハンサー配列および/またはインスレーター配列を含むこともある。抗体の配列は組織特異的プロモーターと作動可能に連結させることができる。例えば、乳腺特異的プロモーター配列はトランスジェニック動物の乳中にタンパク質を分泌させる。
【0082】
本明細書中で使用する“トランスジェニック細胞”とはトランスジーンを含む細胞を示す。哺乳動物とは乳腺を持ち乳を産生するヒト以外の全ての動物を示す。全ての非ヒト哺乳動物が本発明に利用できる。好適な非ヒト哺乳類は反芻動物で、雌ウシ、ヒツジ、ラクダ、ヤギ等である。好適な非ヒト哺乳類は反芻動物の追加的な例は、雄ウシ、ウマ、ラマ、ブタである。例えば、トランスジェニックヤギの作製法は当業において既知である。トランスジーンは、例えば参照によって本明細書に含められたEbert et al.,(1994) Bio/Technology12:699に記載されるように、マイクロインジェクションによってヤギの生殖細胞系に導入することができる。本発明を実践するために使用される全ての特定の細胞系は、健康で、良い胚を産出し、胚の前核期が観察しやすく、生殖に適応しやすいという条件で選択される。さらに、ハプロタイプが重要な選択因子である。
【0083】
非ヒトトランスジェニック哺乳動物の作製法は当業において既知である。このような方法には、トランスジェニック哺乳動物を作るために哺乳動物の生殖細胞系へのDNA構成物を導入することを含むことができる。例えば、構成物の一個または数個のコピーが標準的なトランスジェニック技術によって哺乳動物の胚のゲノムに挿入されてもよい。さらに、非ヒトトランスジェニック哺乳動物は体細胞をドナー細胞として作製できる。体細胞のゲノムは卵母細胞に挿入され、その卵母細胞は融合および活性化され、再構成された胚を形成することができる。例えば、体細胞を使ったトランスジェニック動物の作製法は、国際公開第97/07669号パンフレット;Baguisi et al.,Nature Biotech., vol.17 [1999]456-461; Campbell et al.,Nature,vol.380[1996]64-66;Cibelli et al., Science, vol.280[1998]; Kato et al.,Science,vol.282[1998]2095-2098;Schnieke et al., Science, vol.278 [1997]2130-2133; Wakayama et al.,Nature、vol.394[1998]369-374; Well et al., Biol. Reprod.,vol.57[1997]385-393に記載されている。
【0084】
トランスフェクト細胞株
遺伝子操作を受けた細胞株がトランスジェニック動物の作製に使用することができる。遺伝子操作された構成物は従来の形質転換あるいはトランスフェクション技術によって細胞に導入することができる。本明細書中で使用する“トランスフェクション”および“形質転換”には、宿主細胞にトランスジェニック配列を導入する各種の技術が含まれ、それにはリン酸カルシウムまたは塩化カルシウムによる共沈法、DEAEデキストラン媒介トランスフェクション法、リポフェクション法、または電気穿孔法等がある。さらに、ウイルスベクター等の生物学的ベクターが以下のように使用することができる。宿主細胞への適切な形質転換または質移入については、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nded.,Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989および他の適当な実験室マニュアルに記載されている。
【0085】
有用な二つのアプローチは、電気穿孔法とリポフェクション法である。以下にそれぞれを簡単に説明する。
【0086】
DNA構成物は次の手順に従い、電気穿孔法によってドナー細胞株に安定して導入することができる。まず繊維芽細胞、特に胚性繊維芽細胞等の体細胞を約4×10個/mlの細胞密度でPBSに再浮遊させる。直鎖DNA50μgを0.5mlのこの細胞浮遊液に加え、0.4cmの電極ギャップキュベット(バイオラッド社)に入れる。バイオラッド・ジーンパルサーエレクトロポレーターを用い、25mAで330ボルトパルス、1000μFarad、および電気抵抗無限で電気穿孔する。DNA構成物が選別のためにネオマイシン抵抗性遺伝子をもつ場合、350μg/mlでG418(ギブコBRL社)を添加し15日間培養すると、ネオマイシン抵抗クローンが選別される。
【0087】
DNA構成物は次の手順に従い、リポフェクション法によってドナー体細胞株に安定して導入することができる。約2×10個/mlで細胞を直径3.5cmのシャーレに撒き、2μgの直鎖DNAを、LipfectAMINE(商標)(ギブコBRL社)を用いてトランスフェクトする。48時間後、細胞は1:1000と1:5000に分け、DNA構成物が選別のためにネオマイシン抵抗性遺伝子をもつ場合、G418を終濃度0.35mg/mlで加えると、ネオマイシン抵抗性クローンが単離され、凍結保存および核移植のために使用することができる。
【0088】
DNA構成物
異種タンパク質をコードするカセットは、哺乳類上皮細胞用に、カゼインプロモーター、ヤギβカゼインプロモーター、乳特異的シグナル配列、カゼインシグナル配列、βカゼインシグナル配列、および異種タンパク質をコードするDNA等の特定の組織用のプロモーターを合わせて含んだ構成物として会合することができる。
【0089】
構成物は、非分泌タンパク質のDNA配列の下流にある3’非翻訳領域も含むことができる。このような領域は発現系のRNA転写産物を安定化し、発現系からの目的のタンパク質の生産量を増加できる。本発明で使用される構成物で有用な3’非翻訳領域には、ポリAシグナルを提供する配列がある。このような配列はSV40スモールt抗原、カゼイン3’非翻訳領域または他の既知の3’非翻訳配列等に由来している可能性がある。一実施形態では、3’非翻訳領域は乳特異的タンパク質に由来している。3’非翻訳領域の長さは重要ではないが、ポリA転写物の効果を安定化することが配列の発現によるRNAの安定化に重要であると思われる。
【0090】
状況に応じて、構成物はプロモーターとシグナル配列をコードしたDNA配列の間に5’非翻訳領域を含むことができる。このような非翻訳領域はプロモーターが得られた部分と同じ制御領域から成るか、または他の合成、半合成、または天然由来の異なる遺伝子から成る。本明細書中でもその特定の長さは問題ではないが、発現レベルの改善には有効と思われる。
【0091】
構成物はまた、哺乳類上皮細胞で選択的に発現する遺伝子のN末端コード領域を約10%、20%、30%、またはそれ以上含むことができる。例えば、N末端コード領域は、ヤギβカゼインN末端コード領域等の使用したプロモーターと同じにできる。
【0092】
構成物は既知の方法を使用して作成できる。構成物は大きなプラスミドの一部として作製することができる。このような作成によって、正しく構成物のクローニングおよび選別が可能になる。構成物はプラスミドの便利な制限部位の間に位置するので、プラスミド配列から簡単に単離し、所望の哺乳動物へ導入することができる。
【0093】
インスレーター配列
トランスジェニック動物作製に使用されるDNA構成物は、少なくとも一つのインスレーター配列を含むことができる。“インスレーター”、“インスレーター配列”、および“インスレーター要素”を本明細書中では同義で使用する。インスレーター要素は、正負いずれにも遺伝子発現を乱さず、その範囲内にある遺伝子の転写を遮断する制御要素である。好適には、インスレーター配列は転写されるDNA配列の両側に挿入される。例えば、インスレーターは約200kbから1kbで、少なくともプロモーターから約1kb〜5kbの5’側と、目的となる遺伝子の3’末端に挿入する。プロモーターからのと、目的の遺伝子の3’末端でのインスレーター配列の長さは、既知の技術で決定でき、その目的の遺伝子と構成物で用いるプロモーターとエンハンサーの相対的な大きさに依存する。さらに、一つ以上のインスレーター配列がプロモーターからの5’側、またはトランスジーンの3’末端に挿入される。例えば、二つ以上のインスレーター配列をプロモーターからの5’側に挿入できる。トランスジーンの3’末端のインスレーターまたは複数のインスレーターは、目的の遺伝子の3’末端、または3’非翻訳領域(UTR)または3’フランキング配列等の3’制御配列の3’末端に挿入できる。
【0094】
好適なインスレーターは、国際公開第94/23046号パンフレット(内容が参照により本明細書中に含められる)の記載のように、ニワトリβグロビン遺伝子座の5’末端を含み、ニワトリ5’構造性高感受性部位に一致するDNA区分である。
【0095】
乳腺でのタンパク質の発現
トランジェニック動物の特定の組織または乳などの体液中での抗体等の異種タンパク質の発現が望まれている。異種タンパク質はそれが発現している組織または体液から回収できる。例えば、本発明の異種タンパク質(抗体等)はトランスジェニック動物の乳中に発現することができる。乳腺特異的プロモーターを使った異種タンパク質の作製法を以下に示す。
【0096】
乳腺特異的プロモーターとシグナル配列
有用な転写プロモーターは哺乳類上皮細胞で選択的に活性化できるプロモーターで、これには、カゼイン、βラクトグロブリン(Clark et al.,[1989]Bio/Technology,7:487-492)、乳清酸性タンパク質(Gordon et al.,[1987]Bio/Technology,5:1183-1187)、ラクトアルブミン(Soulier et al.,[1992]GEBS letts.,297:13)等の乳タンパク質をコードする遺伝子を制御するプロモーターが含まれる。カゼインプロモーターは全哺乳類でα、β、γ、κのカゼイン遺伝子から成り、好適なプロモーターはヤギβカゼイン遺伝子(DiTullio[1992]Bio/Technology,10:74-77)由来である。プロモーターはラクトフェリンまたはブチロフィン由来もある。乳腺特異的タンパク質プロモーター、または哺乳類組織で特異的に活性化されるプロモーターはcDNAまたはゲノム配列から入手できる。好適には、それは元のゲノムにある。
【0097】
DNA配列の情報が、少なくとも一つあるいは数種の生物で、上に挙げた乳腺特異的遺伝子に利用できる。例えば、Richards et al.,J.Biol.Chem.,256,526-532[1981](αラクトアルブミン ラット);Campbell et al.,Nucleic Acids Res.,12,8685-8697[1984](ラットWAP));Jones et al.,J.Biol.Chem.,260,7042-7050[1985](ラットβカゼイン));Yu-Lee&Rosen,J.Biol.Chem.,258,10794-10804[1983](ラットγカゼイン));Hall,Biochem.J.,242,735-742[1987](αラクトアルブミン ヒト);Stewart,Nucleic Acids Res.,12,389[1984](ウシαS1とκカゼインcDNAs);Gorodetsky et al.,Gene,66,87-96[1988](ウシβカゼイン);Alexander et al.,Eur.J.Biochem.,178,395-401[1988](ウシκカゼイン);Brignon et al.,FEBS Lett.,188,48-55[1977](ウシαS2カゼイン);Jamieson et al.,Gene,61,85-90[1987], Ivanov et al., Biol. Chem. Hoppe-Seyler, 369,425-429[1988], Alexander et al.,Nucleic Acids Res.,17,6739[1989](ウシβラクトグロブリン);Vilotte et al.,Biochemie,69,609-620[1987](ウシαラクトアルブミン)を参照のこと。さまざまな乳タンパク質遺伝子の構造と機能はMercier&Vilotte,J.Dairy Sci.,76,3079-3098[1993](全目的のため参照により全文が本明細書に含まれる)にまとめられている。追加的なフランキング配列が異種タンパク質の発現を最適化するために有用な場合、この配列はプローブとして存在する配列を使ってクローン化できる。異なる生物からの乳腺特異的制御配列は、既知の同種のヌクレオチド配列、または同種タンパク質へのプローブとしての抗体を使って、そのような生物のライブラリーをスクリーニングすることで得られる。
【0098】
有用なシグナル配列は、乳特異的シグナル配列か、真核性または原核性タンパク質を分泌させる他のシグナル配列である。好適には、シグナル配列は乳特異的シグナル配列から選択される。すなわち、それは乳中に分泌される産物をコードする遺伝子由来である。好適には、乳特異的シグナル配列は構成物で使用する乳腺特異的プロモーターに関連しており、以下に詳細を示す。シグナル配列の大きさは重要ではない。必要なのは哺乳類組織等で、所望の組換えタンパク質を効果的に分泌させるのに十分な大きさである。例えば、α、β、γまたはκカゼイン、βラクトグロブリン、乳清酸性タンパク質、ラクトアルブミンの遺伝子からのシグナル配列が使用することができる。
【0099】
改変IgG4抗体等の非相同抗体をコードするカセットは、複数を合わせた構成物にする。例えば構成物は、哺乳類上皮細胞用に、カゼインプロモーター、乳特異的シグナル配列、カゼインシグナル配列、および改変IgG4抗体等の非相同抗体をコードするDNA等を含んでいてもよい。構成物は当業において既知の方法で作成できる。構成物は大きなプラスミドの一部として作製することができる。このような作成によって正しい構成物を効率的にクローニングおよび選別することができる。構成物はプラスミドの便利な制限部位の間に位置するので、プラスミド配列から簡単に単離し、所望の哺乳動物へ導入することができる。
【0100】
卵母細胞
卵母細胞は動物の生殖周期に従い、さまざまな回数で採取できる。細胞周期の各段階の卵母細胞が採取され、減数分裂の特定の段階に進むように試験管内で誘導される。例えば、無血清培地で培養した卵母細胞は分裂中期で停止する。さらに分裂停止卵母細胞は、血清添加によって終期への進行を誘導することができる。
【0101】
卵母細胞は再構成胚の形成に使用される前に試験管内で成熟させることができる。この工程には通常、ヤギの卵巣等の哺乳類の卵巣からの未成熟な卵母細胞を採取し、除核前に卵母細胞が中期または終期等の所望の減数分裂段階に達するまで培地中で成熟させることが必要である。また、体内で成熟させた卵母細胞も再構成胚の形成用に使用することができる。
【0102】
卵母細胞は過剰排卵する雌から入手できる。端的には、ヤギ卵母細胞等の卵母細胞は雌のドナー動物の卵管から卵母細胞を追い出すことで外科的に採取できる。ヤギに過剰排卵を誘導する方法とヤギ卵母細胞の採取法も本明細書中に記述する。
【0103】
再構成胚の移植
再構成胚はレシピエント動物に移植され、クローン化されるかトランスジェニック哺乳動物まで成長する。例えば、再構成胚は各レシピエント動物のフィンブリアを通して卵管内腔に移植される。さらに、レシピエント動物への胚の移植法は当業において既に知られており、例えば参照文献8に記載されている。
【0104】
乳からのタンパク質の精製
本明細書中で使用した精製物は二つ以上の抗体分子を含んでいる。精製物はトランスジェニック動物1個体またはそれ以上によって産生される。これは、糖鎖付加の異なる分子または同じ分子を含んでもよい。
【0105】
本明細書中で使用する“精製された物質”、“実質上純粋な抗体物質”、または“単離された抗体”とは、トランスジェニック哺乳動物の乳中に生じた他の物質が実質的に無い抗体を示す。また抗体が精製に使用されたアクリルアミド等のゲル基質等の物質からも好適に分離される。一実施形態では、“実質的に無い”とは、約30%(乾重)未満の非抗体物質(本明細書中ではまた“乳不純物”“乳成分”とも言う。)を含む抗体精製物が得られたことを示し、より好適には非抗体物質は20%未満となり、さらに好適には非抗体物質は10%未満となり、最も好適には非抗体物質は5%未満である。非抗体物質には、カゼイン、脂質(可溶性脂質およびリン脂質等)、ラクトース、他の低分子(ガラクトース、グルコース等)、小ペプチド(微生物ペプチド、抗菌ペプチド等)、および他の乳タンパク質(βラクトグルブリンおよびαラクトアルブミン、ラクトフェリン、および血清アルブミン等の乳清タンパク質)が含まれる。好適には、抗体が少なくとも乾重量で10、20、50、70、80、95%の精製物質として得られる。また、精製物には少なくとも1、10、100μgの抗体、または1、10、100mgの抗体が含まれる。さらに、精製物には70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%の会合抗体が含まれる。
【0106】
抗体(およびその断片)は当業において既知の標準タンパク質精製法によって乳から単離できる。例えば、Kutzko et al.,米国特許第6,268,487号の方法によって、本発明の抗体および/または断片を精製できる。
【0107】
乳タンパク質は工程を組み合わせることによって多くの場合単離される。例えば、上澄みの除去、遠心分離、沈降(H.E.Swaisgood, Developments in Dairy Chemistry,in:Chemistry of Milk Protein, Applied Science Publishers,NY,[1982])、酸による沈降(米国特許第4,644,056号)、またはレンニンまたはキモトリプシンによる酵素的凝固(上記Swaisgood)によって、最初に生乳から脂質を除去することができる。次に、主要な乳タンパク質は、上清または沈殿に分画され、ある種のタンパク質は簡単に精製できることもある。他の例では、仏国特許第2,487,642号には、ウルトラフィルトレーションをサイズ排除クロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーと併用し、脱脂乳または乳清からの乳タンパク質を単離することを記載している。乳清は最初、レンニンまたは乳酸での凝固によりカゼインを除去することで得られる。米国特許第4,485,040号では、2つの連続するウルトラフィルトレーション工程によって、乳清から保持物質内に多量のαラクトグロブリン精製物を単離する方法を記載している。米国特許第4,644,056号では、pH4.0〜5.5の酸による沈降、続く精製物の透明度を上げるための孔経0.1〜1.2μmの膜によるクロスフローのウルトラフィルトレーション、さらに濃縮のための5〜80kDの分子で分ける膜を使用し、乳または初乳から免疫グロブリンを精製する方法を提供している。米国特許第4,897,465号では、血清、卵黄、または乳清からの免疫グロブリン等のタンパク質を、pHシフトによる金属酸化物膜での連続ウルトラフィルトレーションによって濃縮することを教示している。最初にタンパク質保持物質から多量な不純物を除くために、目的のタンパク質の等電点(pI)より低いpHでウルトラフィルトレーションを行う。次に、その等電点よりも高いpHで行い、不純物を保持し、目的のタンパク質を透過させる。EP467 482 B1では、異なるウルトラフィルトレーションによる濃縮法が教示され、カゼインと乳清タンパク質の両方を可溶化するために、乳タンパク質の等電点よりも低いpH3〜4に下げて行う。3連続のウルトラフィルトレーションまたはダイアフィルトレーションでタンパク質を濃縮することで、タンパク質90%の固体を15〜20%含む保持物質が得られる。
【0108】
他の実施例では、乳は最初に透明化することができる。一般的な透明化法は以下の工程を含むことができる:
(a)乳を2:1の割合で、2.0Mアルギニン塩酸(pH5.5)で希釈する;
(b)希釈試料を約20分間4〜8℃で遠心分離する;
(c)約5分間氷上で試料を冷却し、脂質を上層で固める;
(d)ピペット先端で固形脂質を“はじいて”上層から取り除く;
(e)上清を新しい試験管に移す。
【0109】
例えば上述の方法など、当業において既知の任意のタンパク質精製法を用いて、さらなるタンパク質の精製を達成することができる。
【実施例】
【0110】
実施例1:抗体の改変
抗体重鎖はオリゴヌクレオチド変異法で改変できる。端的には、変異をコードしているオリゴヌクレオチドをDNA鋳型にハイブリダイズし、所望のDNAを改変する。ここでこの鋳型は、所望のタンパク質の改変の無い天然のDNA配列を含むプラスミドあるいはバクテリオファージの一本鎖である。ハイブリダイゼーション後、DNAポリメラーゼは鋳型の完全な2本目の相補鎖を合成しようと、オリゴヌクレオチドプライマーを取り込む。そして、所望のタンパク質のDNAに必要な改変が加わる。一般に、少なくとも全長25ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドが使用される。最適なオリゴヌクレオチドは、変異ヌクレオチドの両側で鋳型と完全に相補的になる12〜15個のオリゴヌクレオチドである。これによって、オリゴヌクレオチドが適切に一本鎖DNAの鋳型分子とハイブリダイズする。オリゴヌクレオチドは、Crea et al.(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75: 5765[1978])に記載の方法のような、当業界で公知の技術を用いて簡単に合成できる。
【0111】
ヒンジ領域のアミノ酸241のセリンをプロリンで置換を有効にするために、セリンをプロリンで置換するオリゴS241Pによるオリゴヌクレオチド変異法を用いる。得られた変異体はトランスジェニックマウス作製に使用することができる。トランスジェニックマウスは搾乳され、乳中の抗体の存在と“半分子”の相対量が検証される。IgG4抗体のヒンジ領域の配列と、変異に使用することができるオリゴヌクレオチドS241Pは以下の通りである。
【0112】
IgG4ヒンジ領域
1668 TCTGCA GAG TCC AAA TAT GGT CCC CCA TGC CCA TCA TGC CCA
GGTAAGCCAACCCAGGCCT
残基1 Glu Ser Lys Tyr Gly Pro Pro Cys Pro Ser Cys Pro
S241Pオリゴ
GGT CCC CCA TGT CCT CCC TGC CCA GGT AAG CCA
Gly Pro Pro Cys Pro Pro Cys Pro Gly Lys Pro
さらに、IgG抗体のヒンジ領域全体を、別の抗体のヒンジ領域で置換することができる。この変化を達成するために、置換するヒンジ領域を含むエクソンをコードするオリゴヌクレオチドが使用することができる。IgG4抗体のヒンジ領域の配列、およびIgG2置換ヒンジ領域を含むオリゴヌクレオチドを以下に示す。
【0113】
IgG4ヒンジ領域
1662 CTTCTCTCTGCA GAG TCC AAA TAT GGT CCC CCA TGC CCA TCA TGC CCA
GGTCCGCCAACCCAGGC
残基1 Glu Ser Lys Tyr Gly Pro Pro Cys Pro Ser Cys Pro
IgG2ヒンジ領域
1729 CTTCTCTCTGCA GAG CGC AAA TGT TGT GTC GAG TGC CCA CCG TGC CCA
GGTCCGCCAACCCAGGC
残基1 Glu Arg Lys Cys Cys Val Glu Cys Pro Pro Cys Pro
共通部位でアスパラギンからグルタミンへ置換させるオリゴによるオリゴヌクレオチド変異法を用いて、IgG重鎖のCH2にあるN−結合型糖鎖付加部位が除去できる。このような改変を達成するオリゴヌクレオチド配列は以下の通りである。
【0114】
2014 GAG GAG CAG TTC CAG TCT ACT TAC CGA GTG GTC
残基1 Glu Glu Gln Phe Gln Ser Thr Tyr Arg Val Val
抗体変異型の検証
軽鎖と変異した重鎖をカゼインプロモーターに結合し、トランスジェニックマウスの作製に使用する。その後、そのマウスの抗体の発現と半分子を検証する。
【0115】
トランスジェニック動物
構成物をマイクロインジェクションしたヤギ受精卵の移植によって、初代(F)トランスジェニックヤギを作製できる。トランスジェニックヤギの作製には、以下本節に記載の方法を使用することができる。この改変法によって他の動物にも使用することができることを当業者は理解するであろう。
【0116】
ヤギの種類と繁殖
アルパイン種、ザーネン種、トッゲンブルグ種等のスイス原産のヤギが、トランスジェニックヤギの作製には有用である。
【0117】
本節は、トランスジェニックヤギの作製に必要な工程を端的に記述する。これらの工程には、雌ヤギの過剰排卵、受胎のための雄との交尾、および受精した胚の採取が含まれる。採取後、受精した1細胞期の胚の前核にDNA構成物をマイクロインジェクションする。1頭のドナー雌ヤギから得られた全ての胚は一緒にされ、可能であれば単独のレシピエント雌ヤギに移植する。
【0118】
ヤギの過剰排卵
ドナー動物の発情期は、実験初日にノルジェストメット剤(シンクロメートB、CEVA Laboratories,Inc.,Overland Park,KS)6mgを耳の皮下に埋め込むことで同調させる。7日から9日後、プロゲステロンの体内合成を遮断するために、プロスタグランジンを投与する。13日目から卵胞刺激ホルモン(FSH、Schering Corp.,Kenilworth,NJ)を全量で18mgとなるように1日2回3日間筋肉注射する。14日目に埋め込み剤を除去する。除去24時間後、ドナー動物を2日間にわたって雄と交尾させる(Selgrath, et al., Theriogenology, [1990] 1195-1205)。
【0119】
胚の採取
交尾2日目(または埋め込み剤除去から72時間後)に胚を外科的に採取する。過剰排卵させたヤギは手術前36時間断食断水させる。ジアゼパム(登録商標バリウム)を体重1kg当たり0.8mg静脈注射し、続いてすぐにケタミン(ケタセット)を体重1kg当たり5.0mg静脈注射する。術中、毎分2Lの酸素とハロタン(2.5%)を気管内チューブで投与する。生殖管を中線開腹手術によって摘出する。過剰排卵を評価するために、黄体、直径6mm以上の非破裂卵胞、および卵巣嚢腫の個数を数え、卵管から採取できる胚の数を予測する。卵管小孔にカニューレを挿入し、3.0プロレンで1箇所を一時的に結紮する。20ゲージの針を卵管接合部から約0.5cmの子宮内に挿入する。滅菌リン酸緩衝塩類溶液(PBS)10〜20mlでカニューレを装着した卵管内を洗い出し、洗浄液をシャーレに回収する。この操作をもう一方の生殖管で行った後、これらを腹部に戻す。閉腹前に、癒着防止のため腹腔に滅菌グリセロール塩類溶液10〜20mlを注入する。白線を2.0ポリジオキサノンまたはスプラミッドで単純結節縫合し、皮膚は滅菌傷クリップで閉じる。
【0120】
ヤギ受精卵は実体顕微鏡下でPBS卵管洗浄液から回収し、10%ウシ胎児血清(FBS:シグマ社、Sigma,St Louis,MO)添加のHam'sF12倍地(シグマ社)で洗浄する。前核が見えれば、胚に直ちにマイクロインジェクションを行う。前核が見えない場合は、見えるようになるまで、10%FBS添加Ham’sF12倍地を用い、37℃、5%CO2の加湿培養器で短期間培養する(Selgrath, et al., Theriogenology, [1990] 1195-1205)。
【0121】
マイクロインジェクション
1細胞期のヤギ胚を窪み付きスライドグラス上に培地とともに滴下し、上にオイルをのせる。二つの可視化前核をもつ受精卵を、ツァイス社製ノマルスキー固定ステージ付き正立顕微鏡でフレームポリッシュ保持マイクロピペットに固定する。ヤギβカゼイン遺伝子制御配列に作動可能に連結している目的のコード配列を含むBC355ベクター等、目的のDNA構成物を、インジェクション用緩衝液(Tris−EDTA)で細いガラスマイクロ針を用いて、前核にマイクロインジェクションする(Selgrath, et al., Theriogenology, [1990] 1195-1205)。
【0122】
胚発生
マイクロインジェクション後、生残胚は、胚移植用のレシピエント動物が準備されるまで、10%FBS添加Ham’sF12倍地を用い、37℃、5%CO2の加湿培養器で培養する(Selgrath, et al., Theriogenology, [1990] 1195-1205)。
【0123】
レシピエント動物の準備
レシピエント動物の耳にノルジェストメット剤6mgを埋め込み(シンクロメートB)、発情が同調される。13日目に埋め込み剤を除去し、妊娠雌馬血清ゴナドトロピン(PMSG、シグマ社)による非過剰排卵注射(400I.U.)を1回行う。レシピエント動物は発情同調を補強するために去勢雄と交尾させる(Selgrath, et al., Theriogenology, [1990] 1195-1205)。
【0124】
胚移植
1頭のドナー動物からの全ての胚は一緒にされ、できるだけ1頭のレシピエント動物に移植する。手術手順は卵管へのカニューレ挿入以外、上記の胚採取で述べた方法と同じである。胚はガラスマイクロピペットでフィンブリアを通して卵管内腔に、最小量の10%FBS添加Ham’sF12倍地とともに移植する。卵巣に6〜8以上の排卵点をもつ動物はレシピエント動物として不適当である。閉腹および術後処置はドナー動物の場合と同じである(Selgrath, et al., Theriogenology, [1990] 1195-1205)。
【0125】
妊娠分娩の監視
発情を停止した日から45日目に、超音波検査によって妊娠を確認する。110日目に、妊娠の確定と胎児ストレス検査のために2回目の超音波検査を行う。130日目、妊娠したレシピエント動物に破傷風トキソイドとクロストリジウムC&Dで予防接種する。セレンとビタミンE(Bo−Se)を筋肉注射で、イベルメクチンを皮下注射で投与する。145日目、妊娠ヤギを滅菌室に移し、約147日目の陣痛の誘発を前に環境に順応させる。147日目に、PGF2a(登録商標ルタライズ、アップジョン社(Upjohn Company,Kalamazoo Michigan))40mgで分娩を誘発する。この投与は筋肉注射で2回に分けて行う。1回目20mg投与の4時間後に2回目20mgを投与する。初回投与時から昼夜を通して定期的に観察する。翌朝には観察は30分毎にまで増やす。初回投与から30〜40時間後に分娩がおきる。出産後、初乳を回収するため搾乳し、胎盤の排泄を確認する。
【0126】
動物のトランスジェニック性質の検証
トランスジェニックF動物を調べるために二つの異なる細胞株からゲノムDNAを単離する。これはモザイクトランスジェニックを見逃さないためである。モザイク動物とは、少なくとも1コピーのトランスジーンもない細胞をもつヤギとして定義される。従って、耳組織試料(中胚葉)と血液試料を生後2日目のF動物から採取し、ゲノムDNAを単離する(Lacy et al.,A laboratory Manual[1986]Cold Springs Harbor,NY;Methods Enzymology[1987]152,180-183)。DNA試料は、ヒトデコリン遺伝子に特異的なプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(Gould et al.,Pro.Natl.Acad.Sci.[1989]86,1934-1938)と、ランダムプライマー法によるヒトデコリンcDNAプローブ(Feinberg and Vogelstein,Anal.Bioc.[1983]132,6-13)を用いたサザンブロット法(Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. [1980] 77:5201-5205)によって分析される。分析感度を10%の体細胞におけるトランスジーン1コピーの検出によって推定する。
【0127】
作製ヤギの継代と選別
上記手順は、トランスジェニック初代(F)ヤギだけでなく他のトランスジェニックヤギの作製にも使用することができる。例えば、トランスジェニックF初代ヤギは、雌の場合、乳を産生するようになる。また雄の場合、トランスジェニックの雌の子孫を産出できる。このトランスジェニック初代雄を非トランスジェニックの雌と交配させて、トランスジェニックの雌の仔を作れる。
【0128】
トランスジーンの伝播と関連特性
ヤギ系統における目的のトランスジーンの伝播を、耳組織と血液のPCR法およびサザンブロット法によって分析する。例えば、初代雌と3頭のトランスジェニックの仔のサザンブロット分析では、世代間での再改変またはコピー数の変化は全く見られない。サザンブロット分析はヒトデコリンcDNAプローブを用いる。ブロットはベータスコープ603(Betascope603)上で分析し、対照にヤギβカゼイン内因性遺伝子を用いて、トランスジーンのコピー数を決定する。
【0129】
発現レベルの評価
トランスジェニック動物の乳中にあるトランスジェニックタンパク質の発現レベルは、酵素法かウェスタンブロット法で決定する。
【0130】
実施例2:抗体ヒンジ領域を改変したマウスモデル
トランスジェニック動物での治療用組換え抗体の生産の可能性を検証するために、KMK917抗体のcDNAをトランスジェニックマウスの乳腺で発現させた。そして、KMK917をマウス乳から精製し、KMK917をトランスフェクトしたSp2/0細胞のフェッドバッチ培養液由来のKMK917と比較した。KMK917トランスジェニックマウスはGTCバイオセラピューティック社(GTC Biotherapeutics,Inc.,Framingham,MA,USA)で作製した。続く精製と評価分析は下請会社で行われた。
【0131】
KMK917トランスジェニックマウスの継代
3種類のKMK917をコードする構成物が作製された。
【0132】
1.1099/2010 KMK917野生型
2.2012/2014 KMK917ヒンジ変異型(229Ser→Pro)
3.2012/2017 KMK917ヒンジ+Ch2変異型(229Ser→P
ro、236Leu→Glu)
変異型構成物は、野生型構成物由来のKMK917物質で見られる半分子抗体の割合を減少させる目的で作製された。これらの構成物をもとに、全15系統のトランスジェニックマウスが作製された(系統名と概要は表1a〜cを参照)。表1にはウェスタンブロット法によるマウス系統でのKMK917の発現レベルの推定値が示されている。
【表1a】

【表1b】

【表1c】

トランスジェニックマウスの乳由来KMK917の精製と評価
全15系統のトランスジェニックマウスの乳試料を採取(F0、F1、F2世代)し、PBSで希釈した(詳細は表1を参照)。そして、試料からKMK917抗体が精製され分析評価した。分析の概要は図2を参照のこと。
【0133】
コロイド状乳成分の除去のため、希釈乳試料はソーバル社製高速遠心分離機で30分間遠沈させた(SS−34ローター、20,000rpm)。次に、上清を沈殿物から吸い上げ、上層の脂肪分をシリンジで除去した。かすかに乳白色の上清を0.22μmマイレックスGV膜(Millex−GV)で濾過し、プロテインAカラム(マブセレクト、APB社(MabSelect,APB))1mlにのせる。結合した抗体をpH3.2の20mMクエン酸ナトリウム溶液で溶出する。抗体分画はpH5.5に調整し、フィルター滅菌後4℃で保存した。
【0134】
トランスジェニックマウスの乳中KMK917含有量の決定
ヒトIgG4の検出には市販のELISAキットを使用し、希釈乳試料のKMK917の濃度を測定した。未希釈のマウス乳におけるKMK917の濃度を表2に示す。
【表2】

【0135】
次に、選択したマウス系統(各構成物の2または3系統)のKMK917を、3.2に記載のプロテインAクロマトグラフィーで精製した。その後、サイズ排除HPLC(SEC)で、抗体分画中のKMK917含有量が決定された(表2)。他の分析に利用できるKMK917の全量も表2に示す。
【0136】
SEC分析により、全抗体試料は95%以上の単量体抗体を含むことがわかった。測定された抗体分画中のKMK917量とプロテインA精製での使用量をもとに、マウス乳試料中のKMK917の含有量が逆算された。逆算されたKMK917のマウス乳中濃度は3.2〜22.1mg/mLで、IgG4ELISA法による直接測定による値と非常に近似していた(表2)。
【0137】
精製KMK917物質中のマウス抗体の存在
プロテインAによる精製では、ヒトIgGアイソタイプだけでなく、乳中に含まれる可能性があるマウス抗体の類似型も濃縮してしまう。そこで、精製KMK917中のマウス免疫グロブリンの存在が調べられた。SPR法(バイアコア3000)と“捕獲分子”として固定した抗マウスIgGの有無を用いて、非常に少量のマウスIgGサブクラスが精製KMK917物質で検出された(≦0.1%)。また、SEC法とヒトIgG4ELISA法による精製物の濃度測定からも同様な結果が得られた(表2)。SEC法ではKMK917だけでなくマウス抗体も測定できるので、著しい量のマウス免疫グロブリンは、SEC法での高濃度によって示されるだろう。対照的に、ELISA法はヒトIgGのみを対象としているのでKMK917のみを検出できる。
【0138】
“半分子抗体”の存在とその量
トランスジェニックマウス系統の精製KMK917物質にある半分子抗体の量を、SDS−PAGEとSDS−DSCE法を用いて決定した。SDS−PAGE法によって、野生型構成物をトランスフェクトしたマウス試料が、変異型をトランスフェクトしたマウス試料よりも半分子抗体の割合が高いことを明らかにした。
【0139】
この結果をSDS−DSCE法によって確認した結果、野生型の構成物によるトランスジェニック系統由来のKMK917物質の半分子抗体は24と34%であった。変異型の構成物からのKMK917物質では、半分子抗体の割合は5%未満であった。特に、単一変異型構成物由来において低かった(表3のまとめを参照)。
【0140】
異なる構成物由来のKMK917の生物学的活性を検証するために、蛍光法を使った細胞分析法を用いた。細胞のある受容体がその対象物と結合する際に、KMK917と競合させる。細胞培養(Sp2/0)由来のKMK917と比較した結果、野生型と変異型をトランスフェクトしたマウス由来のKMK917は、どちらも十分な生物学的活性を示した(表3を参照)。
【0141】
他の特性として、KMK917のリガンドターゲットとの結合および解離の速度定数を、SPR法(バイアコア3000)によって決定した。全試料で、トランスジェニックマウス由来物質の定数はSp2/0由来のKMK917で得られた値と一致した。これは、KMK917の結合親和性と生物学的活性が、(1)発現される場合、トランスジェニックマウスまたは細胞株Sp2/0で類似しており、さらに(2)cDNAに導入した変異による影響を受けないことを示唆する。
【表3】

【0142】
糖鎖付加の様式
陽イオン交換HPLCによって精製KMK917物質を分析した。特殊法を用いて、C末端デスモシン―リシン(des−Lys)変異抗体(変異型K0、変異型K1、変異型k2)の分離、抗体の異なる糖鎖型の解析を成し遂げた。例えば、シアル酸非付加型糖鎖とシアル酸付加型糖鎖、複合型糖鎖とマンノース型糖鎖の分離である。
【0143】
図3a〜3gは、細胞培養から得られたKMK標準試料と、乳試料から得られた抗体のクロマトグラムである。基準試料の3つの主要ピークはK0、K1、およびK2変異型と一致した。
【0144】
トランスジェニック乳から得られた試料はより不均質である。二つの野生型試料では、基準試料よりも早く溶出されるピークが見られる。これはシアル酸付加型のためだと思われる。変異型系統由来の抗体試料は非常に不均質であり、基準試料よりも遅く溶出される異なるピークがある。
【0145】
異なる糖鎖型がどの程度観察された不均質性の原因となっているかを解明するために、野生型と変異型の試料の糖鎖をN−グリコシダーゼ処理によって除去した。図4a〜4dは、グリコシダーゼ処理前後の野生型試料のCEx−HPLCクロマトグラムを示す。野生型試料は糖鎖除去後、非常に高い均質性を示した。4:1の割合で得られた二つのピークは、抗体のK0およびK1型に非常によく一致している。これらの結果から、野生型抗体で見られた不均質性は主に糖鎖型の違いによるものであると結論付けられる。
【0146】
系統1〜36由来の変異抗体もまた、同様な割合で二つのピークを示す。しかし、二つのピークは非常に離れて溶出されており、それぞれサイドピークも伴っている(図3b)。このようなピークは、変異型の中に異なる抗体の型が存在することを示唆し、部分的な折りたたみのゆるみによる可能性が考えられる。従って、変異抗体のCEx−HPLC分析で見られる広範な不均質性は、糖鎖型の多様性だけでなく、他の原因によるようにも思われる。
【0147】
さらに、精製KMK917の糖側鎖の構造が解析された。糖側鎖をペプチド・N−グリカナーゼF(PNGase F)で酵素切断した後単離し、2−アミノベンズアミドで標識した。個々の糖鎖構造はGlyco Sep N-カラムを用いてHPLCで分離し、蛍光検出によって定量した。図5a〜cは、下記由来のKMK917の分析クロマトグラムである:
a)野生型トランスジェニックマウス
b)変異型トランスジェニックマウス
c)培養細胞
クロマトグラムでは、トランスジェニックマウス由来KMK917の糖鎖パターンが、培養細胞由来の抗体とは有意に異なることを示している。変異型の様式は野生型と質的には一致するが、量的には幾分異なっている。他のよく知られている糖鎖構造と比較すると、いくつかのピークはHPLCクロマトグラムによって同定することができる。分子構造は表4に示す。
【表4】

【0148】
HPLCから得られた分子構造を確認し、溶出の遅いピークについてさらに解析するために、糖鎖混合液をマススペクトロメトリーMALDI−MS陰イオンモードで分析し、シアル酸含有糖鎖BiG2S1が得られた。
【0149】
トランスジェニックマウスの乳腺でのKMK917の発現量は、3.2〜22.1mg/mLと測定された。3種の構成物由来のKMK917の性質をさらに解析すると、“半分子抗体”の量は野生型構成物1099/2010由来物質で高かった(各24と34%)。229のセリンをプロリンに変異したことで(構成物2012/2014ヒンジ変異型と2012/2017ヒンジ+Ch2変異型)、“半分子抗体”量は有意に減少し、2012/2014では2%未満、2012/2017では5%未満となった。3種の構成物由来物質の生物学的活性は、培養細胞由来KMK917と比較した場合差異は見られなかった。
【0150】
本発明は、本発明の詳細な説明と関連して説明してきたが、上記説明は添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を解説することを意図しており、その範囲を制限するものでないことが理解されるべきである。他の実施態様、利点、および改変は続く請求項の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】核移植によるクローン動物作製工程の略図
【図2】ヒンジ領域改変に関するKMK917による分析の概要
【図3A】CEx−HPLCによる単離KMK抗体試料のクロマトグラム
【図3B】CEx−HPLCによる単離KMK抗体試料のクロマトグラム
【図3C】CEx−HPLCによる単離KMK抗体試料のクロマトグラム
【図3D】CEx−HPLCによる単離KMK抗体試料のクロマトグラム
【図3E】CEx−HPLCによる単離KMK抗体試料のクロマトグラム
【図3F】CEx−HPLCによる単離KMK抗体試料のクロマトグラム
【図3G】CEx−HPLCによる単離KMK抗体試料のクロマトグラム
【図4A】CEx−HPLCによるKMK野生型試料±野生型エンドグリコシダーゼF処理
【図4B】CEx−HPLCによるKMK野生型試料±野生型エンドグリコシダーゼF処理
【図4C】CEx−HPLCによるKMK野生型試料±ヒンジおよびCH2変異体エンドグリコシダーゼF処理
【図4D】CEx−HPLCによるKMK野生型試料±ヒンジおよびCH2変異体エンドグリコシダーゼF処理
【図5A】CEx−HPLCによるKMK917 1099/2010 野生型の糖鎖パターン
【図5B】CEx−HPLCによるKMK917 2012/2014 ヒンジ+Ch2変異体の糖鎖パターン
【図5C】CEx−HPLCによるKMK917のフルスケールの糖鎖パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスジェニック哺乳動物の乳中で抗体を製造する方法であって、
体細胞および生殖細胞が、哺乳類上皮細胞で発現を導くプロモーターに作動可能に連結している外因性重鎖可変領域またはその抗原結合断片、少なくとも一つの重鎖定常領域またはその断片およびヒンジ領域をコードする配列を含む、トランスジェニック哺乳動物を提供する工程を含み、前記ヒンジ領域が、重鎖定常領域に通常連結しているヒンジ領域から改変されていることを特徴とする方法。
【請求項2】
乳中に存在する抗体の少なくとも70%が会合型(assembled form)であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記トランスジェニック哺乳動物が、哺乳類上皮細胞で発現を導くプロモーターに作動可能に連結している軽鎖可変領域またはその抗原結合断片、および軽鎖定常領域またはその機能断片をコードする配列をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記トランスジェニック哺乳動物から乳を入手して、抗体組成物を提供する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記トランスジェニック動物によって産生された乳から外因性抗体を精製する工程をさらに含むことを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記プロモーターが、カゼインプロモーター、ラクトアルブミンプロモーター、βラクトグロブリンプロモーターおよび乳清タンパク質プロモーターより成る群から選択されるプロモーターであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記トランスジェニック哺乳動物が、ウシ、ヤギ、マウス、ラット、ヒツジ、ブタおよびウサギより成る群から選択される哺乳動物であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記抗体が、IgA、IgD、IgM、IgEおよびIgGより成る群から選択される抗体であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記抗体がIgG抗体であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記抗体がIgG4抗体であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記抗体のヒンジ領域の全部または一部が改変されていることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記抗体のヒンジ領域の全部または一部が、前記重鎖定常領域に通常連結しているヒンジ領域とは異なるヒンジ領域またはその一部で置換されていることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記抗体のヒンジ領域のアミノ酸配列が、前記重鎖定常領域に自然に連結しているヒンジ領域のアミノ酸配列と、少なくとも一つのアミノ酸残基において異なることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記抗体のヒンジ領域をコードする核酸配列の少なくとも一つの核酸残基が、前記重鎖定常領域に自然に連結しているヒンジ領域の天然の核酸配列とは異なることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記抗体のヒンジ領域またはその一部が、IgG4抗体以外の抗体のヒンジ領域またはその一部で置換されていることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記抗体のヒンジ領域またはその一部が、IgG1、IgG2およびIgG3より成る群から選択される抗体由来のヒンジ領域またはその一部で置換されていることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項17】
前記抗体のヒンジ領域またはその一部が、IgA、IgD、IgMおよびIgEより成る群から選択される抗体由来のヒンジ領域またはその一部で置換されていることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項18】
ヒンジ領域の一つ以上のアミノ酸が、IgG4抗体以外の抗体の対応する位置のアミノ酸で置換されていることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項19】
IgG4抗体以外の抗体が、IgA、IgD、IgMおよびIgEより成る群から選択される抗体であることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項20】
IgG4抗体以外の抗体が、IgG1、IgG2およびIgG3より成る群から選択される抗体であることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項21】
ヒンジ領域のセリン残基がプロリン残基で置換されていることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項22】
ヒンジ領域のアミノ酸番号241のセリン残基が、プロリン残基で置換されていることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項23】
ヒンジ領域のシステイン残基以外の少なくとも一つのアミノ酸が、システイン残基で置換されていることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項24】
前記抗体の少なくとも一つの糖鎖付加部位が改変されていることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項25】
重鎖または軽鎖の少なくとも一つの糖鎖付加部位が改変されていることを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項26】
重鎖ヒンジ領域の少なくとも一つの糖鎖付加部位が改変されていることを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項27】
前記抗体がヒト化されていることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項28】
前記抗体がキメラ化されていることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項29】
前記抗体がヒト抗体であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項30】
トランスジェニック哺乳動物の乳が、実質的に外因性抗体の半分子型を含有しないことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項31】
トランスジェニック哺乳動物の乳中に存在する外因性抗体の会合型と半分子型の比率が、少なくとも2:1、3:1、4:1、または5:1であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項32】
体細胞および生殖細胞が、乳中で発現可能である改変ヒンジ領域を含む抗体またはその一部をコードする改変抗体のコード配列を含む、トランスジェニック哺乳動物を作製する方法であって、
哺乳動物上皮細胞で発現を導くプロモーターに作動可能に連結している外因性重鎖可変領域またはその抗原結合断片、少なくとも一つの重鎖定常領域またはその断片、およびヒンジ領域をコードする配列を含む構成物を、哺乳動物に導入する工程を含み、前記ヒンジ領域が重鎖定常領域に通常連結しているヒンジ領域から改変されていることを特徴とする方法。
【請求項33】
前記トランスジェニック哺乳動物の乳中に存在する外因性抗体の少なくとも70%が会合型になるように前記ヒンジ領域が改変されていることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記改変抗体のコード配列が、哺乳類上皮細胞で発現を導くプロモーターに作動可能に連結している軽鎖可変領域またはその抗原結合断片および軽鎖定常領域またはその機能断片をコードする配列をさらに含むことを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項35】
前記プロモーターが、カゼインプロモーター、ラクトアルブミンプロモーター、βラクトグロブリンプロモーターおよび乳清タンパク質プロモーターより成る群から選択されるプロモーターであることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項36】
前記トランスジェニック哺乳動物が、ウシ、ヤギ、マウス、ラット、ヒツジ、ブタ、およびウサギより成る群から選択される哺乳動物であることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項37】
前記抗体が、IgA、IgD、IgM、IgEおよびIgGより成る群から選択される抗体であることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項38】
前記抗体がIgG抗体であることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項39】
前記抗体がIgG4抗体であることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項40】
前記抗体のヒンジ領域の全部または一部が改変されていることを特徴とする請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記抗体のヒンジ領域の全部または一部が、前記重鎖可変領域または前記定常領域に通常連結しているヒンジ領域とは異なるヒンジ領域またはその一部で置換されていることを特徴とする請求項39記載の方法。
【請求項42】
前記抗体のヒンジ領域のアミノ酸配列が、前記重鎖定常領域に自然に連結しているヒンジ領域のアミノ酸配列と、少なくとも一つのアミノ酸残基において異なることを特徴とする請求項39記載の方法。
【請求項43】
前記抗体のヒンジ領域をコードする核酸配列の少なくとも一つの核酸残基が、前記重鎖定常領域に自然に連結しているヒンジ領域の核酸配列とは異なることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項44】
前記抗体のヒンジ領域またはその一部が、IgG4抗体以外の抗体のヒンジ領域またはその一部で置換されていることを特徴とする請求項41記載の方法。
【請求項45】
前記抗体のヒンジ領域またはその一部が、IgG1、IgG2およびIgG3より成る群から選択される抗体由来のヒンジ領域またはその一部で置換されていることを特徴とする請求項41記載の方法。
【請求項46】
前記抗体のヒンジ領域またはその一部が、IgA、IgD、IgMおよびIgEより成る群から選択される抗体由来のヒンジ領域またはその一部で置換されていることを特徴とする請求項41記載の方法。
【請求項47】
ヒンジ領域の一つ以上のアミノ酸が、IgG4抗体以外の抗体の対応する位置のアミノ酸で置換されていることを特徴とする請求項41記載の方法。
【請求項48】
IgG4抗体以外の抗体が、IgA、IgD、IgMおよびIgEより成る群から選択される抗体であることを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項49】
IgG4抗体以外の抗体が、IgG1、IgG2およびIgG3より成る群から選択される抗体であることを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項50】
ヒンジ領域のセリン残基がプロリン残基で置換されていることを特徴とする請求項39記載の方法。
【請求項51】
ヒンジ領域のアミノ酸番号241のセリン残基がプロリン残基で置換されていることを特徴とする請求項39記載の方法。
【請求項52】
ヒンジ領域のシステイン残基以外の少なくとも一つのアミノ酸がシステイン残基で置換されていることを特徴とする請求項39記載の方法。
【請求項53】
前記抗体の少なくとも一つの糖鎖付加部位が改変されていることを特徴とする請求項39記載の方法。
【請求項54】
重鎖または軽鎖の少なくとも一つの糖鎖付加部位が改変されていることを特徴とする請求項53記載の方法。
【請求項55】
重鎖ヒンジ領域の少なくとも一つの糖鎖付加部位が改変されていることを特徴とする請求項53記載の方法。
【請求項56】
前記抗体がヒト化されていることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項57】
前記抗体がヒト抗体であることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項58】
前記抗体がキメラ化されていることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項59】
トランスジェニック哺乳動物の乳が実質的に外因性抗体の半分子型を含有しないように前記ヒンジ領域が改変されていることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項60】
トランスジェニック哺乳動物の乳中に存在する外因性抗体の会合型と半分子型の比率が、少なくとも2:1、3:1、4:1、または5:1であることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項61】
前記抗体が、IgA、IgD、IgM、IgEおよびIgGより成る群から選択される抗体であることを特徴とする請求項60記載の方法。
【請求項62】
乳中に会合型の外因性抗体またはその一部を発現可能であるトランスジェニック哺乳動物を作製する方法であって、
哺乳動物に、哺乳類上皮細胞で発現を導くプロモーターに作動可能に連結している外因性抗体の軽鎖をコードする配列を含む構成物を導入し、さらに
前記哺乳動物に、哺乳類上皮細胞で発現を導くプロモーターに作動可能に連結している外因性抗体の変異した重鎖またはその一部をコードする配列を含む構成物を導入する工程を含み、前記重鎖またはその一部が、乳中に存在する外因性抗体の少なくとも70%が会合型になるように改変されているヒンジ領域を含むことを特徴とする方法。
【請求項63】
乳中に会合型の外因性抗体を発現可能であるトランスジェニック哺乳動物を作製する方法であって、
生殖細胞および体細胞が哺乳類上皮細胞で発現を導くプロモーターに作動可能に連結している外因性抗体の軽鎖をコードする配列を含むトランスジェニック哺乳動物から、細胞を提供し、さらに
前記細胞に、哺乳動物上皮細胞で発現を導くプロモーターに作動可能に連結している外因性抗体またはその一部の変異した重鎖をコードする配列を含む構成物を導入する工程を含み、前記重鎖またはその一部が外因性抗体の少なくとも70%が会合型になるように改変されているヒンジ領域を含むことを特徴とする方法。
【請求項64】
ヒンジ領域を有する外因性抗体またはその断片を含む抗体成分、および乳成分を含有し、前記ヒンジ領域が抗体に通常連結しているヒンジ領域から改変されていることを特徴とする組成物。
【請求項65】
組成物中に存在する前記外因性抗体の少なくとも70%が会合型であることを特徴とする請求項64記載の組成物。
【請求項66】
組成物中に存在する前記外因性抗体の少なくとも70%が会合型であるように前記ヒンジ領域が改変されていることを特徴とする請求項64記載の組成物。
【請求項67】
前記抗体が、IgA、IgD、IgM、IgEおよびIgGより成る群から選択される抗体であることを特徴とする請求項64記載の組成物。
【請求項68】
前記抗体がIgG抗体であることを特徴とする請求項64記載の組成物。
【請求項69】
前記抗体がIgG4抗体であることを特徴とする請求項68の組成物。
【請求項70】
前記抗体のヒンジ領域の全部または一部が改変されていることを特徴とする請求項64記載の組成物。
【請求項71】
前記抗体のヒンジ領域の全部または一部が、抗体に通常連結している天然のヒンジ領域とは異なるヒンジ領域またはその一部で置換されていることを特徴とする請求項64記載の組成物。
【請求項72】
前記抗体のヒンジ領域のアミノ酸配列が、天然の抗体のヒンジ領域のアミノ酸配列と少なくとも一つのアミノ酸残基において異なることを特徴とする請求項64記載の組成物。
【請求項73】
前記抗体のヒンジ領域またはその一部が、IgG4抗体以外の抗体のヒンジ領域またはその一部で置換されていることを特徴とする請求項64記載の組成物。
【請求項74】
前記抗体のヒンジ領域またはその一部が、IgG1、IgG2およびIgG3より成る群から選択される抗体由来のヒンジ領域またはその一部で置換されていることを特徴とする請求項73記載の組成物。
【請求項75】
前記抗体のヒンジ領域またはその一部が、IgA、IgD、IgMおよびIgEより成る群から選択される抗体由来のヒンジ領域またはその一部で置換されていることを特徴とする請求項73記載の組成物。
【請求項76】
前記ヒンジ領域の一つ以上のアミノ酸が、IgG4抗体以外の抗体の対応する位置のアミノ酸で置換されていることを特徴とする請求項64記載の組成物。
【請求項77】
IgG4抗体以外の抗体が、IgA、IgD、IgMおよびIgEより成る群から選択される抗体であることを特徴とする請求項76の組成物。
【請求項78】
IgG4抗体以外の抗体が、IgG1、IgG2およびIgG3より成る群から選択される抗体であることを特徴とする請求項76の組成物。
【請求項79】
ヒンジ領域のセリン残基がプロリン残基で置換されていることを特徴とする請求項64記載の組成物。
【請求項80】
ヒンジ領域のアミノ酸番号241のセリン残基がプロリン残基で置換されていることを特徴とする請求項64記載の組成物。
【請求項81】
ヒンジ領域のシステイン残基以外の少なくとも一つのアミノ酸がシステイン残基で置換されていることを特徴とする請求項64記載の組成物。
【請求項82】
前記抗体の少なくとも一つの糖鎖付加部位が改変されていることを特徴とする請求項64記載の組成物。
【請求項83】
前記抗体の重鎖または軽鎖の少なくとも一つの糖鎖付加部位が改変されていることを特徴とする請求項64記載の組成物。
【請求項84】
前記抗体の重鎖ヒンジ領域の少なくとも一つの糖鎖付加部位が改変されていることを特徴とする請求項83記載の組成物。
【請求項85】
前期抗体がヒト化されていることを特徴とする請求項64記載の組成物。
【請求項86】
前期抗体がヒト抗体であることを特徴とする請求項64記載の組成物。
【請求項87】
組成物が実質的に外因性抗体の半分子型を含有しないように前記ヒンジ領域が改変されていることを特徴とする請求項64記載の組成物。
【請求項88】
組成物中に存在する外因性抗体の会合型と半分子型の比率が少なくとも2:1、3:1、4:1、または5:1であることを特徴とする請求項64記載の組成物。
【請求項89】
哺乳類上皮細胞で発現を導くプロモーターに作動可能に連結している重鎖可変領域および重鎖定常領域をコードする配列を含み、重鎖またはその一部が、乳中に存在する外因性抗体の少なくとも70%が会合型になるように改変されているヒンジ領域を含むことを特徴とする核酸。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【公表番号】特表2006−507839(P2006−507839A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−557456(P2004−557456)
【出願日】平成15年11月26日(2003.11.26)
【国際出願番号】PCT/US2003/038198
【国際公開番号】WO2004/050847
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(504267622)ジーティーシー バイオセラピューティックス インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】GTC BIOTHERAPEUTICS, INC.
【Fターム(参考)】