説明

乳化型毛髪化粧料

【課題】乳化安定性に優れ、塗布時のべたつきが少なく、伸びがよく、髪全体の塗布しやすく、かつ、仕上がりの髪のまとまり、つや向上効果に優れた乳化型毛髪化粧料を提供すること。
【解決手段】(A)アクリロイルジメチルタウリン塩とアクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体、及び(B)アクリル酸・メタクリル酸長鎖アルキル共重合体を含有する洗い流さないタイプの乳化型毛髪化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗い流さないタイプの乳化型毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年流行にあるヘアカラー等による化学処理や、ブロー等による物理処理は、毛髪表面のキューティクルの剥離や、毛髪内部脂質の流出による毛髪内部の空洞化などを引き起こし、その結果、毛髪がパサつく、指通りが悪い、髪がまとまらない、ツヤがなくなるなどの問題が起こることが知られ、解決が強く求められる。
【0003】
毛髪にまとまりを付与し、パサつきを防止するものとして、現在、洗い流さないタイプの毛髪化粧料が主に使用されており、これらには、ワックス、高級アルコール、界面活性剤等を含有させたヘアクリームタイプなどの乳化系の商品や、皮膜形成ポリマー(セットポリマー)を含有させたジェルなどが知られている。しかし、これらの洗い流さないタイプの毛髪化粧料は、毛髪表面に油脂やポリマー類を付着させ、まとまり性の悪さや、パサつきなどの問題を一時的に解決するものであり、毛髪のツヤやまとまり性を本質的に改善するものではなかった。また、乳化系のものには、乳化粒子同士の相互作用による構造粘着のため、毛髪塗布時に全体に伸ばし難いという問題がある一方、塗布時の伸ばしやすさを向上させるべく化粧料の粘度を下げると、乳化系の安定性が維持できないとの問題がある。
【0004】
そこで、毛髪を本質的に改質し、ツヤ、まとまり性を向上させ、感触にすぐれたものとする技術として、特定の有機酸、有機溶剤、ビタミン類を含有する洗い流さないタイプの毛髪化粧料が提案されている(特許文献1)。また、乳化安定性に優れ、かつ、伸び良く塗布でき、毛髪にツヤ、まとまりを付与する技術として、アクリル酸アミド/2-アクリル酸アミド‐2-メチルプロパンスルホン酸共重合体、非イオン界面活性剤、カルボン酸及び油剤を含有する乳化型毛髪化粧料が提案されている(特許文献2)。しかしこの乳化型毛髪化粧料は、塗布時にべたつきがあるという問題を有する。
【0005】
一方、アクリロイルジメチルタウリン塩とアクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体を含み、良好な使用感を有する水中油型組成物が提案されている(特許文献3)。しかしながら、この共重合体を洗い流さないタイプの毛髪化粧料に用いた場合に、べたつきがあるとともに、良好なツヤが得られないという問題がある。また、優れた乳化安定性を示す乳化組成物として、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体を含むものが提案され、これをヘアクリームに用いる例も示されている(特許文献4)。しかしながら、このヘアクリームは、毛髪に伸ばしにくく、また、ツヤを与えることができないという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開2005-239568号公報
【特許文献2】特開2004-67651号公報
【特許文献3】特開2006-8796号公報
【特許文献4】特開平8-126831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は、乳化安定性に優れ、塗布時のべたつきが少なく、伸びがよく、毛髪全体に塗布しやすく、かつ、仕上がりの毛髪のまとまり、つや向上効果に優れた乳化型毛髪化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、アクリロイルジメチルタウリン塩とアクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体と、アクリル酸・メタクリル酸長鎖アルキル共重合体を併用することにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、(A)アクリロイルジメチルタウリン塩とアクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体、及び(B)アクリル酸・メタクリル酸長鎖アルキル共重合体を含有する洗い流さないタイプの乳化型毛髪化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の乳化型毛髪化粧料は、乳化安定性に優れ、塗布時のべたつきが少なく、伸びがよく、毛髪全体に塗布しやすく、かつ、仕上がりの毛髪のまとまり、つや向上効果に優れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の成分(A)は、アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリン塩共重合体である。成分(A)としては、下記式(1)で示されるものが挙げられる。
【0012】
【化1】

【0013】
(式(1)中、X+はアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、又は有機アンモニウムイオンを示し、nは3〜90を、mは10〜97を示す。)
【0014】
式(1)中、X+のアルカリ金属イオンとしては、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン等が;アルカリ土類金属イオンとしては、例えばカルシウムイオン、マグネシウムイオン等が;有機アンモニウムイオンとしては、例えばモノエタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン等が挙げられる。これらのうち、アルカリ金属イオンが好ましく、特にナトリウムイオンが好ましい。
【0015】
成分(A)の市販品としては、セピノブEMT10、シマルゲルNS(セピック社)等を用いることができ、特にシマルゲルNSが好ましい。シマルゲルNSは、アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリン塩共重合体と、スクワランを含むものであり、該共重合体の含有量は、35〜40質量%である。
【0016】
成分(A)の含有量は、本発明の乳化型毛髪化粧料全量に対して、塗布時の伸ばしやすさの点で、0.2〜2質量%であるのが好ましく、0.3〜1.2質量%であるのがより好ましい。
【0017】
本発明に用いられる成分(B)は、アクリル酸・メタクリル酸長鎖アルキル共重合体又はその塩である。本発明でアクリル酸・メタクリル酸長鎖アルキル共重合体とはショ糖のアリルエーテル又はペンタエリトリトールのアリルエーテルで架橋した、(メタ)アクリル酸長鎖アルキルと、アクリル酸、メタクリル酸、又はこれらの単純エステルの1又は2以上のモノマーとの共重合体のことをいう。長鎖アルキル基の炭素数は10〜30であるのが好ましい。アクリル酸・メタクリル酸長鎖アルキル共重合体は化粧料の分野においては、乳化作用を有する増粘剤として広く使用されており、数種のグレードのものが既に市販されている。この様な市販品としては、例えば、ペムレンTR-1、ペムレンTR-2、カーボポール1382、カーボポールETD2020、カーボポールultrez20(いずれもノベオン社)等が好ましく例示でき、特に、カーボポールETD2020が好ましい。
塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;トリエタノールアミン塩、トリエチルアミン塩等の有機アミン塩類;リジン塩、アルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩等が好ましく例示できる。
これらアクリル酸・メタクリル酸長鎖アルキル共重合体又はその塩は単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0018】
成分(B)の含有量は、乳化安定性の点から、遊離のアクリル酸・メタクリル酸長鎖アルキル共重合体に換算して、乳化型毛髪化粧料中、0.1〜1質量%、特に0.2〜0.5質量%であるのが好ましい。
【0019】
本発明の乳化型毛髪化粧料は、仕上がりの髪のまとまり、つや向上効果をより優れたものとする点で、成分(C)として有機カルボン酸又はその塩、及び成分(D)として芳香族アルコール、N-アルキルピロリドン、アルキレンカーボネート、ポリプロピレングリコール、ラクトン及び環状ケトンからなる群より選ばれる、ClogPが−2〜3である有機溶剤を含有するのが好ましい。
成分(C)の有機カルボン酸としては、炭素数2〜8、特に3〜8であるものが好ましい。有機カルボン酸としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、ポリカルボン酸が挙げられ、このうち、特に、ジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸(特にα−ヒドロキシカルボン酸)が好ましい。ジカルボン酸としては、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等が挙げられ、特にリンゴ酸が好ましい。ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等が挙げられ、特にリンゴ酸、乳酸が好ましい。これらのうち、リンゴ酸、乳酸を組み合わせて使用するのがより好ましい。
有機カルボン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0020】
成分(C)は、単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。成分(C)の含有量は、本発明の乳化型毛髪化粧料中、0.0001〜2.5質量%、特に0.01〜1質量%であるのが、仕上がりの髪のまとまり、つや向上効果の点で好ましい。
【0021】
成分(D)の有機溶剤は、芳香族アルコール、N-アルキルピロリドン、アルキレンカーボネート、ポリプロピレングリコール、ラクトン及び環状ケトンからなる群より選ばれる、ClogPが−2〜3である有機溶剤であり、これらとしては、次の(d1)〜(d5)から選ばれるものが挙げられる。
【0022】
(d1) 一般式(2)で表される芳香族アルコール
【0023】
【化2】

【0024】
〔式中、R1は基R2−Ph−R3−(R2;水素原子、メチル基又はメトキシ基,R3;結合手又は炭素数1〜3の飽和若しくは不飽和の二価の炭化水素基,Ph;パラフェニレン基)を示し、Y及びZは水素原子又は水酸基を示し、p、q及びrは0〜5の整数を示す。ただし、p=q=0であるときは、Zは水素原子ではなく、またR1は基R2−Ph−ではない。〕
【0025】
(d2) 窒素原子に炭素数1〜18のアルキル基が結合したN-アルキルピロリドン
【0026】
(d3) 炭素数2〜4のアルキレンカーボネート
【0027】
(d4) 数平均分子量100〜1000のポリプロピレングリコール
【0028】
(d5) 一般式(3)、(4)又は(5)で表されるラクトン又は環状ケトン
【0029】
【化3】

【0030】
〔式中、Wはメチレン基又は酸素原子を示し、R4及びR5は相異なる置換基を示し、a及びbは0又は1を示す。〕
【0031】
成分(D)である有機溶剤のうち、(d1)としては、ベンジルアルコール、シンナミルアルコール、フェネチルアルコール、p-アニシルアルコール、p-メチルベンジルアルコール、フェノキシエタノール、2-ベンジルオキシエタノール等が挙げられる。
(d2)としては、N-メチルピロリドン、N-オクチルピロリドン、N-ラウリルピロリドン等が挙げられる。
(d3)としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
(d4)の数平均分子量100〜1000のポリプロピレングリコールとしては、数平均分子量100〜500のもの、特に重合度2〜5のものが好ましい。
(d5)において、一般式(3)〜(5)中のR4及びR5としては、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、水酸基、スルホン酸基、リン酸基、カルボキシ基、フェニル基、スルホアルキル基、リン酸アルキル基、カルボキシアルキル基等が好ましく、なかでもγ-ラクトンの場合にはγ位、δ-ラクトンの場合にはδ位(すなわちヘテロ酸素原子の隣接メチレン)に置換した、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が好ましい。また、化合物(3)〜(5)の水溶性を増大させたい場合には、R4又はR5としてスルホン酸基、リン酸基、カルボキシ基等の酸性基やこれらが置換したアルキル基を有するのが好ましい。(d5)のうち、ラクトンとしては、γ-ブチロラクトン、γ-カプロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、δ-カプロラクトン、δ-ヘプタノラクトン等が挙げられるが、ラクトンの安定性の点から、γ-ラクトン、特にγ-ブチロラクトン、γ-カプロラクトンが好ましい。(d5)のうち、環状ケトンとしては、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、4-メチルシクロヘプタノン等が挙げられる。
【0032】
特に好ましい成分(D)として、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、プロピレンカーボネート及びプロピレングリコール(数平均分子量300〜500、特に400)が挙げられる。
【0033】
また、本発明で用いる成分(D)は、25℃で液体であることが好ましい。また成分(D)のClogPは−2〜3であるが、浸透促進の点から、−1〜2であることが好ましい。ここで、ClogPとは、オクタノール相と水相の間での物質の分配を表す尺度である、下式で定義されるオクタノール-水-分配係数(logP)の計算値をいい、ケミカルレビューズ,71巻,6号(1971)にその例が記載されている。
logP=log([物質]Octanol/[物質]Water
〔式中、[物質]Octanolは1-オクタノール相中の物質のモル濃度を、[物質]Waterは水相中の物質のモル濃度を示す。〕
【0034】
主な成分(D)のClogPを具体的に示すと、ベンジルアルコール(1.1)、2-ベンジルオキシエタノール(1.2)、2-フェニルエタノール(1.2)、1-フェノキシ-2-プロパノール(1.1)、ポリプロピレングリコール400(0.9)、炭酸プロピレン(-0.41)、γ-ブチロラクトン(-0.64)である。
【0035】
成分(D)は、単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。成分(D)の含有量は、使用感、毛髪のツヤと改質効果の促進(弾性の向上、耐湿性の向上等)の点から、本発明の乳化型毛髪化粧料中0.01〜40質量%、特に0.1〜10質量%、更に0.2〜5質量%であるのが好ましい。
【0036】
本発明の乳化型毛髪化粧料に用いる界面活性剤は、皮膚への温和性等から非イオン界面活性剤が好ましい。
非イオン界面活性剤としては、高級脂肪酸グリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、高級脂肪酸ショ糖エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、高級脂肪酸モノ又はジエタノールアミド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド、アルキルアミンオキサイド、アルキルアミドアミンオキサイドが挙げられる。これらのうち、高級脂肪酸グリセリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが特に好ましい。
【0037】
非イオン界面活性剤は、単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。含有量は、乳化安定性、塗布時および乾燥後に感触の点から、本発明の乳化型毛髪化粧料中、0.01〜10質量%、特に0.1〜5質量%であるのが好ましい。
【0038】
本発明の乳化型毛髪化粧料に用いる油剤としては、スクワレン、スクワラン、流動イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、α−オレフィンオリゴマー、流動パラフィン、シクロパラフィン等の炭化水素類;ヒマシ油、カカオ油、ミンク油、アボガド油、オゾーブ油等のグリセリド類;ミツロウ、鯨ロウ、ラノリン、カルナウバロウ等のロウ類;セチルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール類;ミリスチン酸オクチルドデシル、ラウリン酸ヘキシル、乳酸セチル、モノステアリン酸プロピレングリコール、オレイン酸オレイル、2−エチルヘキサン酸ヘキサデシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸トリデシル等のエステル類;カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ヤシ油脂肪酸、イソステアリル酸、イソパルミチン酸等の高級脂肪酸類;その他イソステアリルグリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテルなどが挙げられる。これらの中で、スクワレン、スクワラン、流動イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、α−オレフィンオリゴマー等の分岐又は環状の炭化水素類が好ましい。
【0039】
これらの油剤は、単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。油剤の含有量は、感触向上の点から、本発明の乳化型毛髪化粧料中0.01〜50質量%、特に0.5〜20質量%であるのが好ましい。
【0040】
本発明の乳化型毛髪化粧料には、シリコーン類を含有してもよい。これを含有した場合、より高いコンディショニング効果が得られる。
シリコーン類としては、ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、メチルフェニルポリシロキサン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。なかでも、ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーンが好ましい。ジメチルポリシロキサンは、毛髪に良好な潤滑性を付与することができ、ポリエーテル変性シリコーンは、毛髪に滑らかさを付与することができ、アミノ変性シリコーンは、毛髪にしっとり感を付与することができる。
ジメチルポリシロキサンとしては、求める感触に応じて5mm2/s程度の粘度のものから、エマルションとして供給される場合が多い1000万mm2/s程度の粘度のものまで使用できるが、5000〜1000万mm2/s、特に5万〜600万mm2/sのものが好ましい。市販品としては、東レ・ダウコーニング社のSH200 Fluid、BY22-060、信越化学工業社のKF-96A、KM9716等が挙げられる。
ポリエーテル変性シリコーンは、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体の総称であり、種々のHLBを有するものが知られているが、市販品としては、信越化学工業社のシリコーンKF351A、同KF353A、同KF6008、同KF6016、同KF6011、同KF6012、東レ・ダウコーニング社のSH3771C、同3773C、同3775C等が挙げられる。環状シリコーンとしては、信越化学工業社のシリコーンKF994、同KF995、同KF9973、東レ・ダウコーニング社のSH224、同SH344、同SH245、同DC345、同DC246等が挙げられる。アルキル変性シリコーンとしては、信越化学工業社のシリコーンKF-412、同KF-413、同KF-414、東レ・ダウコーニング社のSF8416、同SH203、同SH230、同BY16-846、同BY16-835等が挙げられる。
【0041】
これらシリコーン類は、求める性能に応じて、単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。シリコーン類を含有する場合、その含有量は、乳化型毛髪化粧料中の0.01〜20質量%、更には0.1〜10質量%、特に0.5〜8質量%であるのが好ましい。
【0042】
本発明の乳化型毛髪化粧料には、上記成分のほか、通常の毛髪化粧料に用いられる成分を目的に応じて配合できる。このような成分としては、例えば、水、抗フケ剤、ビタミン剤、殺菌剤、抗炎症剤、キレート剤、保湿剤(パンテノール等)、エチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の多価アルコール、pH調整剤、染料、顔料等の着色剤、植物エキス、パール化剤、香料、紫外線吸収剤、酸化防止剤などが挙げられる。キレート剤を用いる場合、その含有量は、本発明の乳化型毛髪化粧料中、0.1質量%以下であるのが好ましい。水の含有量は、本発明の乳化型毛髪化粧料中、50〜80質量%であるのが好ましい。
【0043】
本発明の乳化型毛髪化粧料の好ましい粘度は、15000〜80000mPa・s、特に30000〜50000mPa・sである。ここで粘度は、B型粘度計TVB-10形(東機産業社)で、30℃、5rpm、ローター32(T-B)、60秒間回転後の条件により測定される。
【0044】
本発明の乳化型毛髪化粧料は、水で20質量倍希釈したときの25℃におけるpHが、2〜6、特に4〜5.5であるのが好ましい。pHの調整には、有機酸;無機酸;水酸化ナトリウム等の塩基性化合物が使用される。
【0045】
本発明の乳化型毛髪化粧料は、洗い流さないタイプであり、ヘアスタイリング剤、ヘアコンディショニング剤等として用いるのが好ましい。なお、感触や洗い落としの容易性の面から本発明の乳化型毛髪化粧料は、水中油型(O/W)乳化物とするのが好ましい。
【実施例】
【0046】
実施例1及び比較例1〜4
表1に示す乳化型毛髪化粧料を常法に従い調製した。得られたものの「粘度」、「乳化安定性」、「塗布時の伸ばしやすさ」、「塗布時のべたつきのなさ」、「塗布後の毛髪のつや」及び「塗布後の毛髪のまとまり」を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0047】
・粘度
調製直後の粘度を、B型粘度計TVB-10形(東機産業社)で、30℃、5rpm、ローター32(T-B)、60秒間回転後の条件で測定した。
【0048】
・乳化安定性
調製後50℃で30日間保存したものを以下の基準で判定した。
変化有り 調製直後の粘度の2倍以上
変化無し 調製直後の粘度の2倍未満
【0049】
・塗布時の伸ばしやすさ、べたつきのなさ、塗布後の毛髪のつや及びまとまり
30cm、20gの毛束に、各試料2gずつを十分手で塗布した。それぞれの特性を、1〜5点の5段階で評価した。評価は、10人の専門パネラーにより行った。表1には、得られた点数の平均値から以下の基準で判定した結果を示す。
◎(4点以上) 非常に良い
○(3点以上4点未満) 良い
△(2点以上3点未満) あまり良くない
×(2点未満) 良くない
【0050】
【表1】

【0051】
表1に示すとおり、本発明の乳化型毛髪化粧料は、乳化安定性に優れ、塗布時のべたつきが少なく、伸びがよく、髪全体の塗布しやすく、かつ、仕上がりの髪のまとまり、つや向上効果に優れるものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アクリロイルジメチルタウリン塩とアクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体、及び(B)アクリル酸・メタクリル酸長鎖アルキル共重合体を含有する洗い流さないタイプの乳化型毛髪化粧料。
【請求項2】
さらに、(C)有機カルボン酸又はその塩、及び(D)芳香族アルコール、N-アルキルピロリドン、アルキレンカーボネート、ポリプロピレングリコール、ラクトン及び環状ケトンからなる群より選ばれる、ClogPが−2〜3である有機溶剤を含有する請求項1記載の乳化型毛髪化粧料。
【請求項3】
水で20質量倍希釈したときの25℃におけるpHが、2〜6である請求項1又は2記載の乳化型毛髪化粧料。

【公開番号】特開2008−24610(P2008−24610A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196524(P2006−196524)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】