説明

乳化水/炭化水素燃料、その調製およびその使用

本発明は、水および液体炭化水素のエマルジョンの大部分を5/95から35/65の水/炭化水素重量比で含有する乳化燃料であって、少なくとも15重量%の、脂肪酸エステルおよびポリオキシアルキル化グリセロールを、脂肪酸とソルビタンとのエステルおよびコハク酸もしくは無水コハク酸とアミン、ポリアミン、脂肪酸、ポリオキシアルキル化脂肪酸、アルコール、ポリオキシアルキル化アルコールおよび上記の混合物のうちの少なくとも1つとの縮合生成物によって形成される群のうちの少なくとも1つの構成要素と共に有する乳化系を含むことを特徴とする乳化燃料に関する。本発明は、さらに、そのような乳化燃料の製造方法、そのような乳化燃料のための乳化添加物の組成物、そのような添加物組成物を用いることによる乳化燃料の熱安定性の改善法法に加えて、そのような乳化燃料のエンジン燃料としての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱機関および熱機器における使用を目的とする、水および液体炭化水素のエマルジョンを含有する燃料に関する。より正確には、本発明は改善された高温安定性を有する乳化水/炭化水素燃料に関する。
【背景技術】
【0002】
長年にわたり、大部分の石油会社は、炭化水素の節約および汚染の制限のため、石油起源の炭化水素の代替物を含有する燃料(特には、モーター燃料)の開発に取り組んでいる。このようにして、炭化水素との安定なエマルジョンの状態で維持されるのであれば、水が特に興味深い部分的代替物として直ちに登場した。
【0003】
こうして、表面活性剤添加物(または乳化系)の特別な組成物を用いることによってエマルジョンとして維持されている、一般に少なくとも5wt.%の水および炭化水素を含有する混合物を含む燃料が市場に登場している。排他的に炭化水素からなる通常のモーター燃料に対して、ディーゼルエンジンにおける燃焼の間、これらの燃料は汚染物質、例えば、特には、酸化窒素、一酸化酸素、粒子および非燃焼炭化水素の放出を減少させることを可能にする。
【0004】
このように、EP630,398特許は炭化水素燃料および水に基づく乳化燃料を記載し、そこでは乳化系は3種類の添加物:オレイン酸ソルビタン(好ましくは、セスキオレイン酸ソルビタン)、ポリアルキレングリコール(好ましくは、ポリエチレングリコール)およびアルキルフェノールエトキシレート(好ましくは、ノニルフェノールエトキシレート)の組み合わせを含む。
【0005】
EP888,421特許は、少なくとも1種類の炭化水素中の水のエマルジョンをベースとし、並びに(好ましくは、ソルビタンのオレエートから選択される)少なくとも1種類のソルビタンのエステル、好ましくはポリエチレングリコールのオレエートおよび/またはステアレートおよび/またはリシノレエートから選択される、少なくとも1種類の脂肪酸エステル、並びに好ましくはポリエトキシル化ノニルフェノールおよび/またはオクチルフェノールから選択される、少なくとも1種類のポリアルコキシル化アルキルフェノールを含む乳化系を含有する燃料を記載する。
【0006】
WO 01/48123出願は、−10℃から70℃の広い温度範囲にわたる燃料の保存および使用が可能になるように前記乳化燃料の熱安定性の改善を提示する。この改善は、少なくとも1種類のソルビタンのエステル(好ましくは、セスキオレイン酸ソルビタン)、(好ましくは、ポリエチレングリコールのオレエート、ステアレートおよびリシノレエートから選択される)少なくとも1種類のポリアルコキシル化脂肪酸エステル、および、イソ−、ジ−およびトリアルキル化アルコールから選択される、少なくとも1種類のポリアルコキシル化分岐鎖炭化水素化合物、好ましくは、3から10のエトキシル化基を含むイソトリデシルアルコールを含む乳化系を用いることによって得られる。
【0007】
US6,371,998特許は、水含有液体ビヒクルが組み込まれている、液体炭化水素燃料を記載する。これらの液体ビヒクルは、例えば、4wt.%のポリオキシエチレン−10−ステアリン酸アルコール、7.2wt.%のジステアリン酸グリセロール、5wt.%のダイズメチルエステル、5wt.%のセスキオレイン酸ソルビタンおよび78.8wt.%の水で構成される。
【0008】
最後に、特許出願WO 01/51593は、水および液体炭化水素のエマルジョンをベースとする燃料の広い温度範囲(−20から+50℃)にわたる熱安定性を改善するため、官能化ポリオレフィンオリゴマーおよびポリオキシアルキレンの反応によって得ることができるポリマー乳化剤の使用を推奨する。その出願は、比較のため、87wt.%のモノオレイン酸ソルビタン、3wt.%のトリオレイン酸ソルビタン、および10wt.%の、10モルのエチレンオキシドでエトキシル化されているヒマシ油を含む乳化系も記載する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来技術において説明される乳化燃料は不十分な高温安定性を有することが立証される。実際、水相および炭化水素相は、その燃料が高温、約60℃に数時間保持されるとき、急速に分離する傾向にある。特に、これは、これらの乳化燃料の使用を新規エンジン技術、例えば、ポンプベースの直接注入システムを備えるディーゼルエンジンに不適合なものとする。これらの注入システムにおいては、燃料は一般に70℃を上回る温度に晒され、エンジンが停止したとき、供給システムに残留するエマルジョンが、特にはインジェクタ・ポンプ内で、相分離を受ける傾向にある。この現象は、その乗り物の再始動が相当困難であることを含めて、多くの問題を引き起こす。
【0010】
この問題を解決するため、本発明は、他の特性を損なうことなしに、従来技術において公知の乳化燃料と比較して改善された高温安定性を有する、炭化水素および水をベースとする乳化燃料を提示する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実際、出願人は、該エマルジョンの高温安定性が、少なくとも2種類の表面活性剤添加物を含む特別な乳化系を用いることによってかなり改善され得ることを発見した。
【0012】
この目的で、本発明は、水/炭化水素重量比が5/95から35/65の範囲である水および液体炭化水素のエマルジョンが大部分(典型的には少なくとも80重量%、有利には少なくとも90重量%、特には少なくとも95重量%)を占める乳化燃料に関する。該燃料は、少なくとも15wt.%の、脂肪酸エステルおよび(ポリ)オキシアルキル化ポリオール、並びに脂肪酸とソルビタンとのエステル、およびコハク酸もしくは無水コハク酸と少なくとも1種類のアミン、ポリアミン、脂肪酸、(ポリ)オキシアルキル化脂肪酸、アルコール、(ポリ)オキシアルキル化アルコールおよび該化合物の混合物との縮合生成物を含む群のうちの少なくとも1つを含有する乳化系を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
公知乳化燃料と比較して本発明による燃料は優れた熱安定性を有し、これは低温または周囲温度および、75℃のオーダーの、高温の両者でのその保存および使用を可能にする。特には、これはその使用を新規エンジン技術、例えば、直接注入に完全に適合させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
高温を含めて本発明による乳化燃料を経時的に安定に保つため(すなわち、水滴を炭化水素相中に微細および均一に分散させたままとし、並びに最終的に水相および有機相の分離を導くそれらの合体を回避するため)、それは少なくとも2つのタイプのエステル、すなわち、脂肪酸および(ポリ)オキシアルキル化ポリオールのエステル、並びにコハク酸もしくは無水コハク酸とアミン、ポリアミン、脂肪酸、(ポリ)オキシアルキル化脂肪酸、アルコール、(ポリ) オキシアルキル化アルコールのうちの1つとの縮合生成物のいずれかの少なくとも2種類の化合物を含有する乳化系を含む。
【0015】
脂肪酸とソルビタンとのエステル(ここではソルビタンエスエルと呼ぶ)は脂肪酸とソルビタンとのエステルまたは該エステルの混合物で構成される。ソルビタンという用語は、当該技術分野における熟練者には馴染みであるが、ソルビトールの無水物であり、後者の脱水によって得ることができる環状テトラオールを示す。テトラオールは4つのヒドロキシル基を含むポリオールを示す。ソルビタンは、一般には、ソルビトールと化学平衡の状態で存在する。
【0016】
該ソルビタンエステルは1種類以上のモノエステル、1種類以上のポリエステル、またはモノエステルおよびポリエステルの混合物を含むことができる。それは、例えば、1種類以上の脂肪酸およびソルビタンのエステル化によって得ることができる。直鎖もしくは分岐鎖、飽和もしくは不飽和であり得る、ソルビタンエステルの組成中に含まれる脂肪酸は、有利には、6から22個の炭素原子、好ましくは、12から18個の炭素原子を含む。例えば、非限定的ではあるが、該脂肪酸はラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸およびそれらの混合物から選択することができる。
【0017】
好ましくは、該ソルビタンエステルは少なくとも1種類のオレイン酸ソルビタンを含む。適切なオレイン酸ソルビタンの例はモノオレイン酸ソルビタン、ジオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、テトラオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタンである。特に好ましくは、該ソルビタンエステルは、モノオレイン酸ソルビタンおよびセスキオレイン酸ソルビタンから選択される少なくとも1種類のエステルを含む。
【0018】
脂肪酸および(ポリ)オキシアルキル化ポリオールのエステル(以下、ポリオールエステルと呼ぶ)は、モノエステル、ポリエステルまたはモノエステルおよびポリエステルの混合物を含むことができる。ポリエステルの場合、エステル分子の各々の組成に含まれる脂肪酸は同一であっても異なっていてもよい。さらに、それらはあるエステル分子と他者とで異なっていてもよく、それはポリエステルの混合物の場合である。
【0019】
ポリオールが意味するところは、2から5のヒドロキシル基を含むアルコール、好ましくは、アルキレングリコール、グリセロール、ペンタエリスリトール、それらのアルキル化誘導体およびそれらの混合物である。
【0020】
該ポリオールエステルの組成中に含まれる脂肪酸は直鎖であっても分岐鎖であっても、飽和であっても不飽和であってもよく、有利には、6から22個の炭素原子、好ましくは12から18個の炭素原子を含む。好ましくは、それらは遊離またはエステル化形体で植物油および/または動物油中に天然に存在する脂肪酸、例えば、非限定的ではあるが、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、およびそれらの混合物から選択される。
【0021】
ポリオールエステル中に存在するポリオキシアルキル基は同一の、または異なるオキシアルキル単位の鎖であり、各々のオキシアルキル単位は、有利には、1から5個の炭素原子、好ましくは、1から4個の炭素原子を含む。好ましくは、これらのポリオキシアルキル基はエトキシ単位を含む。好ましくは、これらのポリオキシアルキル基は少なくとも1つのポリエトキシ基を含む。
【0022】
エステルのモル当たりのオキシアルキル単位の平均モル数(すなわち、オキシアルキル化数)は、特にポリオールがグリセロールであるとき、有利には3から50、好ましくは10から35である。
【0023】
好ましくは、ポリオールエステルは、完全に、または部分的に、脂肪酸(1種類以上)およびポリオキシアルキル化グリセロールのトリエステルまたは該トリエステルの混合物で構成される。より好ましくは、完全に、または部分的に、脂肪酸(1種類以上)およびポリエトキシル化グリセロールのトリエステルまたは該トリエステルの混合物で構成される。
【0024】
該ポリオールエステルは、例えば、脂肪酸およびポリオールのエステルもしくはエステルの混合物のポリオキシアルキル化によって、またはその代わりに、1種類以上の脂肪酸および1種類以上のポリオールのポリオキシアルキル化誘導体のエステル化によって得ることができる。
【0025】
該ポリオールエステルは植物油および/または動物油のオキシアルキル化によって有利に得られる。したがって、好ましい態様によると、ポリオールエステルは完全に、または部分的に、オキシアルキル化植物油および/または動物油で構成される。そのような生成物は、一般には脂肪酸および(ポリ)オキシアルキル化ポリオール(好ましくはグリセロール)のモノエステルおよび/またはジエステルと混合されている、脂肪酸およびポリオキシアルキル化ポリオール(好ましくはグリセロール)のトリエステルを含む。該油は、必要であれば、そのオキシアルキル化の前および/または後に、精製処理を受けていてもよい。適切な植物油として、とりわけ:ナタネ油、ダイズ油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ヤシ油、樹脂含有樹から抽出される油および該油の混合物に言及することができる。適切な動物油として:イエロー・グリース、獣脂、家禽脂に言及することができる。
【0026】
特に好ましい態様によると、ポリオールエステルは完全に、または部分的に、エトキシル化植物油で構成される。
【0027】
別の好ましい態様によると、ポリオールエステルはポリアルコキシル化アルキレングリコールのジエステル、特に、顕著には分子量が200から1000の、ポリエトキシル化エチレングリコールのジオレエートである。
【0028】
該ポリオールエステルは、有利には、本発明による乳化燃料中に、0.5から5wt.%、好ましくは、0.5から2wt.%の範囲の含有量で存在する。
【0029】
本発明の第1の態様において、乳化系は15から100wt.%の、少なくとも1種類のポリオールエステル、並びにソルビタンエステルおよびコハク酸もしくは無水コハク酸とアミン、ポリアミン、脂肪酸、(ポリ)オキシアルキル化脂肪酸、アルコール、(ポリ)オキシアルキル化アルコールおよび該化合物の混合物の少なくとも1つとの縮合生成物を含む群のうちの少なくとも1つを含有する。
【0030】
特には、本発明による乳化系は15から100wt.%の、少なくとも1種類のポリオールエステルと組み合わされている少なくとも1種類のソルビタンエステルを、包括的に20/80から80/20、好ましくは、包括的に40/60から60/40を変化するソルビタンエステルのポリオールエステルに対する重量比に従って含有する。さらにより好ましくは、この2つのタイプのエステルの各々の重量基準の量はおおよそ等しい(45/55から55/45)。
【0031】
ソルビタンエステルは、有利には、本発明による乳化燃料中に0.5から5wt.%、好ましくは、0.5から2wt.%の範囲の含有量で存在する。
【0032】
特に有利な態様によると、本発明による乳化燃料の組成中に含まれる乳化系は、2つのタイプのエステルに加えて、3から22個の炭素原子、好ましくは6から12個の炭素原子を含む少なくとも1種類のアルコールも含有する。該アルコールは、有利には一価アルコールであるが、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。特には、少なくとも1種類の飽和分岐鎖アルコールを含む。特に適するアルコールの例には、エチルヘキサノール(例えば、2−エチルヘキサノール)、イソプロパノール、tert.−ブタノール、イソペンタノール、イソトリデカノール、脂肪アルコール(すなわち、12から22個の炭素原子を含む)が含まれる。
【0033】
そこで、本発明による乳化燃料は、有利には、0.1から5wt.%の該アルコール、好ましくは、0.3から2%、さらにより好ましくは、0.5から1wt.%を含む。
【0034】
本発明による燃料の乳化系における該アルコールの存在は様々な利点を提供する。その一方で、このアルコールは前記第1および第2エステルに関して共表面活性剤の役割を果たし、すなわち、後者の乳化力を促進および強化する。さらに、水滴のサイズの均一性の改善を可能にする:後者はより均一なサイズ(より単分散分布)およびより小さなものである。このようにして大滴の存在が回避され、これは沈降(燃料底部で水滴が堆積する現象であり、大滴の割合が増加するに従ってより急速に生じる)に対する燃料の耐性を改善する即時効果を有する。
【0035】
やはり特に有利である別の態様によると、本発明による乳化燃料の組成中に含まれる乳化系は、0から85wt.%の、コハク酸もしくは無水コハク酸とアミン、ポリアミン、脂肪酸、(ポリ)オキシアルキル化脂肪酸、アルコール、(ポリ)オキシアルキル化アルコールおよび該化合物の混合物のうちの少なくとも1つとの縮合生成物(以下、縮合生成物と呼ぶ)である少なくとも1種類の化合物も含む。好ましくは、少なくとも1種類の無水コハク酸と少なくとも1種類のポリアミンとの縮合生成物が用いられる。
【0036】
コハク酸もしくは無水コハク酸は、有利には、炭化水素遊離基によって置換され、これは好ましくはポリマー遊離基、例えば、ポリイソブチル遊離基である。
【0037】
本発明による燃料の乳化系におけるそのような化合物の存在は様々な利点を提供する。その一方で、それは水滴のサイズの均一性の改善を可能にする。その一方で、それは、全体的に炭化水素で構成される従来の燃料との本発明による乳化燃料の適合性を促進し、それ故にこれら2つのタイプの燃料は相互交換可能となる。したがって、従来の炭化水素燃料で通常稼働する乗り物において、燃料配給システムを清浄化することなしに燃料タンクに本発明による乳化燃料を充填することが可能となり、その逆も同様である。
【0038】
本発明の別の好ましい形体において、乳化系は15から85wt.%の少なくとも1種類のポリオールエステルおよび85から15%の少なくとも1種類の縮合生成物を含有する。この組み合わせは、エステルを含有するエマルジョンの、低温および周囲温度の両者並びに、最終的には、75℃のオーダーの高温でのその保存および使用の間の、優れた熱安定の増加をもたらす。本発明のこの形体における好ましい乳化系は20から50wt.%の少なくとも1種類のポリオールエステルおよび50から80%の少なくとも1種類の縮合生成物を含有する。
【0039】
この乳化系に少なくとも1種類の前述のタイプのアルコール、すなわち、直鎖であっても分岐鎖であっても、飽和であっても不飽和であってもよく、3から22個の炭素原子、好ましくは、6から12個の炭素原子を含む一価アルコールがさらに添加されている場合も依然として本発明の範囲内にある。
【0040】
前述の乳化剤に加えて、本発明による乳化燃料は多くの他の乳化剤を含有することができる。当該技術分野における熟練者は、イオン性または非イオン性、合成または天然起源の他の公知乳化剤、例えば、非限定的ではあるが、脂肪酸、脂肪酸の誘導体、脂肪アルコール、エトキシル化脂肪族アミン、ポリオールのエステル、官能化ポリマーおよびそれらの混合物から選択される化合物を添加することにより、本発明による乳化系の配合物を仕上げることが完全に可能である。
【0041】
本発明による乳化燃料の炭化水素相は炭化水素のいずれの混合物で構成されていてもよい。この目的のため、炭化水素画分および非常に多様な起源および性質を有する画分の混合物を用いることができる。選択は、本質的には、その燃料が目的とする使用、様々な炭化水素画分の利用可能性、および経済的な考慮(その燃料の経費)によって決定される。
【0042】
燃料が熱機関用の燃料としての使用を目的とする場合、炭化水素相は、有利には、通常のモーター燃料の組成中に存在し、特にはガソリン画分(一般に25から200℃の範囲内にある蒸留範囲)、中間蒸留物、例えば、ケロシン画分(一般に160から240℃の範囲内にある蒸留範囲)および軽油画分(一般に160から400℃の範囲内にある蒸留範囲)、生物燃料、並びに該画分の混合物から選択することができる、1種類以上の炭化水素画分を含有する。これらの画分は農作物(生物燃料の場合)からの精油で得ることができ、または(例えば、軽オレフィンのオリゴマー化、または軽炭化水素からのフィッシャー・トロプシュ合成によって得られる)合成炭化水素であってもよい。
【0043】
生物燃料は軽アルコール(例えば、エタノール)、植物および/または動物起源の油並びに該油のエステルを示す。したがって、本発明による燃料の炭化水素相は、有利には、0.1から60wt.%、好ましくは、0.5から50wt.%の生物燃料を含有することができる。好ましい生物燃料は1から4個の炭素原子を含むアルコールおよび16から22個の炭素原子を含む脂肪酸または脂肪酸の混合物のエステルである。特に好ましい生物燃料は植物油、例えば、非限定的ではあるが、ダイズ油、ナタネ油、ヒマワリ油、オリーブ油、およびヤシ油のメチルエステルである。
【0044】
燃料が他の使用を目的とする場合、炭化水素相は1種類以上の前記燃料用画分、および/または、必要であれば、中間真空蒸留物(一般に350から450℃の範囲内にある蒸留範囲)、重真空蒸留物(一般に400から550℃の範囲内にある蒸留範囲)、または蒸留残滓からさえも選択され、一般には、燃料において通常用いられるすべての画分、例えば、家庭用燃料油、燃料油、石油残滓、暖房油およびこれらの画分の混合物から選択される他の画分を含有することができる。
【0045】
本説明において、すべての蒸留範囲は規格ASTM D 86(石油製品の蒸留)を参照して引用される。
【0046】
本発明による燃料は、炭化水素相中に均一に分散する水相の微小液滴のエマルジョンの形体にある。有利には、水相の液滴の平均経は5μm以下、好ましくは3μm以下、さらにより好ましくは1μm以下である。好ましくは、液滴のサイズの粒子測定上のプロフィールは約0.5μmの値周辺の単分散型のものである。前述の平均液滴サイズの値は、レーザー粒子測定によって行われる測定に対応する。
【0047】
本発明による乳化燃料は、有利には、1種類以上の殺生剤を、好ましくは、その水相に含むことができる。該殺生剤は、好ましくは、殺菌剤および/または殺真菌剤である。殺生剤の非限定的な例として、イソチアゾロンおよびそれらの塩素化誘導体、塩化ベンザルコニウム、有機過酸化物、イソチオシアネート、チオシアネート、アンモニウム塩、アミンの塩、およびオキゾリジンに言及することができる。
【0048】
乳化燃料は少なくとも1種類の抗ゲル化剤を含むこともできる。例えば、以下のものを抗ゲル化剤として用いることができる:アルコール、グリコール、グリコールまたはアルコールの誘導体、塩類溶液。
【0049】
少なくとも1種類の煤防止剤を含むこともできる。該薬剤の例として、煤の後燃焼の反応を促進する1種類以上の金属またはアルカリ土類触媒で構成される添加物に言及することができる。好ましい触媒は、マグネシウム、カルシウム、バリウム、セリウム、銅、鉄またはそれらの混合物をベースとする。これらの煤破壊の触媒性促進剤は、一般にその塩が水に、したがって、本発明によるエマルジョンの水相に可溶性の化合物であるものよりもエマルジョンに導入することが容易である。
【0050】
燃料が熱機関用の燃料としての使用を目的とする場合、規格NF M 07−100に従って決定されるそのイオウ含有量は、好ましくは350ppm以下、好ましくは50ppm以下、さらにより好ましくは10ppm以下である。
【0051】
燃料が熱機器用の燃料としての使用を目的とする場合、規格NF M 07−100に従って決定されるそのイオウ含有量は、好ましくは1wt.%、好ましくは0.2wt.%以下、さらにより好ましくは0.1wt.%以下である。
【0052】
その目的とする使用に関わらず、規格IP 391に従って決定される本発明による燃料の多環式芳香族炭化水素の含有量は、好ましくは11wt.%以下、より好ましくは6wt.%以下である。
【0053】
さらに、モーター燃料として使用するには、本発明による乳化燃料は、好ましくは、1種類以上の他の添加物を含有し、これらはモーター燃料において通常用いられるいかなる添加物であってもよく、例えば、非限定的ではあるが、以下のものが含まれる:
−1種類以上のセタン数改善剤、例えば、無機もしくは有機硝酸塩、例えば、硝酸アンモニウム、硝酸アルキル(ここで、アルキル遊離基、直鎖もしくは分岐鎖、飽和もしくは不飽和(好ましくは、分岐鎖および飽和)は3から20、好ましくは、5から15個の炭素原子を含む(特には、硝酸2−エチルヘキシル)、有機過酸化物、特には、過酸化アリール(ここで、アリール基はベンジル基もしくは置換ベンジル基(例えば、過酸化ベンゾイル)、または過酸化アルキル(ここで、アルキル遊離基、直鎖もしくは分岐鎖、飽和もしくは不飽和(好ましくは、分岐鎖および飽和)は2から20、好ましくは、2から15個の炭素原子を含む(例えば、過酸化tert.−ブチル);
−1種類以上の濾過性添加物、例えば、共重合体エチレン/酢酸ビニル(EVA)、エチレン/プロピオン酸ビニル(EVP)、エチレン/エタン酸ビニル(EVE)、エチレン/メタクリル酸メチル(EMMA)、エチレン/フマル酸アルキル;
−1種類以上の消泡剤、例えば、ポリシロキサン、オキシアルキル化ポリシロキサン、脂肪酸のアミド;
−1種類以上の洗浄剤および/または防食剤添加物、例えば、アミン、スクシンイミド、アルケニルスクシンイミド、ポリアルキルアミン、ポリアルキルポリアミンおよびポリエーテルアミン;
−1種類以上の潤滑剤または摩擦防止剤添加物、例えば、脂肪酸およびそれらのエステルまたはアミド誘導体、単環式および多環式カルボン酸並びにそれらのエステルまたはアミド誘導体;
−1種類以上の曇点添加物、例えば、長鎖オレフィン/(メタ)アクリル酸エステル/マレイミド・ターポリマー、フマル酸またはマレイン酸のエステルの誘導体;
−1種類以上の沈殿防止添加物、例えば、共重合体(メタ)アクリル酸/ポリアミンによってアミド化されているアルキル(メタ)アクリレート、ポリアミンアルキレンスクシンイミド、フタラム酸の誘導体および二重鎖脂肪族アミン;
−寒冷作業用の1種類以上の多官能性添加物、例えば、オレフィンおよび硝酸アルケニルをベースとするポリマー。
【0054】
本発明は、炭化水素および水のエマルジョンを乳化系および他の可能な添加物の幾らか、またはすべての存在下で調製することによる、前述の乳化燃料の調製方法にも関する。エマルジョンを調製する従来の方法のすべてをこの目的で用いることができる。
【0055】
エマルジョンを形成する前に、添加物の幾らか、またはすべてを相の一方および/または他方と混合することによって進めることが有利である。例えば、特許出願WO 00/34419に記載される方法で、乳化系を炭化水素相と混合した後、生じる混合物を、エマルジョンの形成に必要な水を供給したエマルサー(emulsor)システムに1回以上通過させることによって進行させることができる。
【0056】
特許出願WO 00/034419およびWO 01/36569に記載される方法で:
(a1)水および乳化系の予備混合、次いで炭化水素相中への分散、または
(a2)炭化水素相の水および乳化剤との同時混合、次に
(b)例えば、ローター・ステータ、エマルサー、スタティック・ミキサー、インライン・タービン・システム、超音波浸透機から選択される、適切な装置による適正なエマルジョン形成、
によって進行させることも有利である。
【0057】
本発明による乳化燃料は様々な用途で用いることができる。特には、熱機関(特には、ガソリンもしくはディーゼルエンジン)用、または燃料電池用燃料として用いることができる。ディーゼルエンジン燃料としてのその使用は、特には直接注入システムを備える新規ディーゼルエンジンに、特に有利である。
【0058】
本発明による燃料は熱機器、例えば、工業用もしくは家庭用ボイラー、加熱炉、タービン、発電機用の燃料として用いることもできる。特に有利な使用は、家庭用燃料油、すなわち、家庭用ボイラーのための燃料としてである。
【0059】
本発明は、例えば、乳化水/炭化水素燃料においてそれらの高温安定性を改善するために用いることができる、乳化添加物の組成物にも関する。この添加物組成物は、15wt.%の、少なくとも1種類の(ポリ)オキシアルキル化ポリオールの脂肪酸エステル、並びに脂肪酸とソルビタンとのエステルおよびコハク酸もしくは無水コハク酸とアミン、ポリアミン、脂肪酸、(ポリ)オキシアルキル化脂肪酸、アルコール、(ポリ)オキシアルキル化アルコールのうちの少なくとも1つとの縮合生成物を含む群のうちの少なくとも1つを含有する。
【0060】
この添加物組成物は、好ましくは、15から100wt.%の少なくとも1種類のグリセロールエステル、並びにソルビタンエステルおよびコハク酸もしくは無水コハク酸とアミン、ポリアミン、脂肪酸、(ポリ)オキシアルキル化脂肪酸、アルコール、(ポリ)オキシアルキル化アルコールおよびこれらの化合物の混合物のうちの少なくとも1つとの縮合生成物を含む群のうちの少なくとも1つを含有する。
【0061】
好ましくは、それは15から100wt.%の、前述の少なくとも1種類のポリオールエステルと組み合わされている少なくとも1種類のソルビタンエステルを、20/80から80/20の範囲のソルビタンエステル/ポリオールエステルの重量比で含有する。
【0062】
好ましくは、ソルビタンエステル/ポリオールエステルの重量比は包括的に40/60から60/40を変化する。さらにより好ましくは、これら2つのタイプのエステルの各々の重量基準の量はおおよそ等しい(45/55から55/45)。
【0063】
さらに、有利には、本発明による乳化添加物の組成物は少なくとも1種類の、3から22個、好ましくは6から12個の炭素原子を含むアルコールも含有する。該アルコールは、好ましくは一価アルコールであるが、直鎖であっても分岐鎖であっても、飽和であっても不飽和であってもよい。それは、好ましくは、少なくとも1種類の飽和分岐鎖アルコールを含む。
【0064】
アルコール/ポリオールエステルおよびアルコール/ソルビタンエステルの重量比は同一であるか、または異なっており、有利には、両者とも1以下である。好ましくは、これらの比の各々は0.2から1である。
【0065】
本発明による乳化添加物の組成物は、さらに、0から85wt.%の、コハク酸もしくは無水コハク酸とアミン、ポリアミン、脂肪酸、(ポリ)オキシアルキル化脂肪酸、アルコール、(ポリ)オキシアルキル化アルコールおよびこれらの化合物の混合物のうちの少なくとも1つとの縮合生成物である、少なくとも1種類の化合物を含有することができる。好ましくは、少なくとも1種類の無水コハク酸と少なくとも1種類のポリアミンとの縮合生成物が用いられる。コハク酸もしくは無水コハク酸は、有利には、炭化水素遊離基によって置換され、この炭化水素遊離基は、好ましくは、ポリマー遊離基、例えば、ポリイソブチル遊離基である。
【0066】
好ましくは、該添加物組成物は15から85wt.%の少なくとも1種類のポリオールエステルおよび85から15%の少なくとも1種類の縮合生成物を含有する。より好ましくは、20から50wt.%の少なくとも1種類のポリオールエステルおよび50から80%の少なくとも1種類の縮合生成物を含有する。該添加物組成物は前述のアルコールを含有することもできる。
【0067】
本発明による添加物組成物は、本発明による乳化燃料に組み込むのに適するものとして前述される1種類以上の添加物または薬剤、例えば、非限定的ではあるが、1種類以上の他の乳化剤、1種類以上の殺生剤、1種類以上の抗ゲル化剤、1種類以上の煤防止剤、1種類以上のセタン数改善剤、1種類以上の濾過性添加物、1種類以上の消泡剤、1種類以上の洗浄剤および/または防食添加物、1種類以上の潤滑剤または摩擦防止添加物、1種類以上の曇点添加物、1種類以上の沈殿防止添加物、1種類以上の、寒冷作業用の多官能性添加物も含有することができる。好ましくは、添加物組成物は、無機もしくは有機硝酸塩(例えば、硝酸アルキル)、有機過酸化物およびこれら2つのタイプの化合物の混合物から選択される少なくとも1種類のセタン数改善剤を含有する。
【0068】
したがって、特に好ましい添加物組成物は少なくとも4つのタイプの添加物:少なくとも1種類の第1エステル、少なくとも1種類の第2エステル、少なくとも1種類のアルコールおよび/または少なくとも1種類の縮合生成物並びに少なくとも1種類のセタン数改善剤を含有し、これらの添加物の各々は前述の通りである。
【0069】
第1の態様によると、添加物組成物は前記添加物の混合物の形体にある。
【0070】
第2の態様によると、添加物組成物は「母液」、すなわち、適切な溶媒中の該添加物の濃縮溶液の形体にある。該溶液は、乳化添加物および他のあらゆる添加物および/または薬剤を溶媒に溶解することによって調製する。該溶媒は、芳香族溶媒(特には、芳香族もしくはナフテノ−芳香族炭化水素をベースとする溶媒、例えば、非限定的ではあるが、トルエン、キシレン、ジイソプロピルベンゼン、またはその代わりに、芳香族炭化水素に富む石油画分)、石油画分(特には、ナフサ、ガソリン、ケロシン、蒸留物)、鉱物および/または合成油から選択することができる。「母液」は、例えば、20から80wt.%、好ましくは40から70wt.%の添加物および薬剤を含有することができる。
【0071】
最後に、本発明は、前記乳化添加物の組成物を用いることによる、水/液体炭化水素乳化燃料の熱安定性を改善する方法に関する。
【0072】
他に宣言されない限り、ppm値は重量基準である。
【0073】
以下に示される例は、本発明を、その範囲を限定することなく説明しようとするものである。
【実施例1】
【0074】
実施例1:
本実施例およびそれに続くものにおいては、規格EN 590に従い、通常の軽油Gが用いられる。この軽油は以下の特徴を有する:
蒸留範囲(規格ASTM D86):
初期沸点:177.5℃
10vol.%点:209.5℃
50vol.%点:270.5℃
90vol.%点:330.5℃
最終沸点:351.7℃
イオウ含有量(規格ASTM D5453):335ppm
15℃での密度(規格NF EN ISO 12185):0.8444kg/m3
アニリン点(規格NF M 07−021):63.4℃
曇点(規格NF EN 23015):−8℃
濾過性温度限界(規格NF EN 116):−8℃
流動点(規格NF T 60105):−15℃
軽油Gから出発し、乳化燃料E1およびE2を、それぞれ、87.64wt.%の該軽油を10wt.%の水で、1.86wt.%の乳化系Sおよび0.5wt.%のセタン数改善剤(硝酸2−エチルヘキシル)の存在下で乳化することによって調整した。
【0075】
乳化燃料E1は従来技術に準拠し、その乳化系S1は:
3重量部のモノオレイン酸ソルビタン;
2重量部の、酸のモル当たり6モルのエチレンオキシドでエトキシル化されている脂肪酸;
1重量部の、アルコールのモル当たり7.5モルのエチレンオキシドでエトキシル化されているイソトリデカノール、
で構成される。
【0076】
燃料E2は本発明に準拠し、その乳化系S2は:
1重量部の、モノオレイン酸ソルビタンである第1エステル;
1重量部の、トリグリセリドのモル当たり30モルのエチレンオキシドでエトキシル化されているナタネ油で構成される第2エステル、
で構成される。
試験1:
乳化燃料E1およびE2の安定性を、室温で、規格NF M 07−101に記載される遠心による安定性試験に従って決定した。下記図1に示される図は、得られた結果を、遠心時間の関数としての燃料の沈殿の程度(すなわち、エマルジョンの相への分離)として示す。沈殿の程度が大きいほどエマルジョンの安定性は低い。
【0077】
図1に示される結果は、室温でのエマルジョン安定性の観点での、本発明による乳化系S2の有益な効果を明白に示す:燃料E2は参照燃料E1よりも著しく良好な安定性を示す。
試験2:
燃料E1およびE2は高温(75℃)での保存における安定性の試験も行った。この試験は以下のように行った:450mlのエマルジョンを密封500ml瓶に入れる。この瓶を75℃のストーブに入れる。その後、24時間の間隔で相の高さを測定することにより、進行性の相分離を調べる。相の高さがもはや時間に伴って変化しないとき(定常状態)に相分離時間に到達する。
【0078】
以下に示される表1は、得られた結果を相分離時間(すなわち、乳化燃料の水相および有機相が完全に分離する時間)として示す。
【0079】
【表1】

上記結果は、乳化燃料の高温安定性の観点で、本発明によってもたらされる多大な利益を示す:本発明による乳化系S2の使用は、75℃で相分離時間の50%増加をもたらす。
【0080】
このように、本発明による乳化燃料は、優れた室温安定性を維持しながら、従来技術において公知の乳化燃料よりも良好な、高温における安定性の著しい増加を示す。
【実施例2】
【0081】
実施例2:
S2と同じ2種類のエステル(エステルA=モノオレイン酸ソルビタン;エステルB=トリグリセリドのモル当たり30モルのエチレンオキシドでエトキシル化されているナタネ油)を用いるが、それら2種類のエステルのそれぞれの割合を変化させて、実施例1の試験2(75℃での熱安定性)を反復した。
【0082】
87.64wt.%の実施例1の軽油を10wt.%の水で、1.86wt.%の乳化系Sおよび0.5wt.%のセタン数改善剤(硝酸2−エチルヘキシル)の存在下において乳化することによって乳化燃料を調製した。
【0083】
以下に示される表2は得られた結果を示す。
【0084】
【表2】

上記結果は、本発明による乳化燃料および乳化添加物の組成における2種類のエステルのそれぞれの割合の重要性を示す。第1エステル/第2エステルの重量比が20/80から80/20である乳化系S2およびS3では、75℃での熱安定性は系S4で得られるものよりも非常に高い。
【0085】
最良の結果は、2種類のエステルの重量基準の含有量が等しい系S2で得られる。
【実施例3】
【0086】
実施例3:
以下の2種類のエステル:
エステルA’:セスキオレイン酸ソルビタン;
エステルB’:トリグリセリドのモル当たり10モルのエチレンオキシドでエトキシル化されているナタネ油、
を含有する本発明による乳化系を用いて、実施例1の試験2(75℃での熱安定性)を反復した。
【0087】
86wt.%の実施例1の軽油Gを11.70wt.%の浸透圧処理された水で、2wt.%の乳化系Sおよび0.3wt.%のセタン数改善剤(硝酸2−エチルヘキシル)の存在下において乳化することによって乳化燃料を調製した。
【0088】
以下に示される表3は得られた結果を示す。
【0089】
【表3】

前の例と比較して、この例は、本発明の範囲内で、2種類のエステルの化学的性質およびそれぞれの含有量の両者を、獲得することを望み、並びに利用可能な生成物、それらの経費および乳化燃料に組み込まれると思われる他の添加物とのそれらの適合性を考慮した結果の関数として、変化させることが可能であることを示す。
【実施例4】
【0090】
実施例4:
単独の、または飽和分岐鎖アルコール、すなわち、2−エチルヘキサノールと混合されている、実施例1の乳化系S2(エステルA=モノオレイン酸ソルビタン、エステルB=トリグリセリドのモル当たり30モルのエチレンオキシドでエトキシル化されているナタネ油、50/50)を用いて、本発明による乳化添加物の組成物を調製した。
【0091】
これらの添加物組成物から出発して、85.4から86wt.%(試験による)の実施例1の軽油Gを11.7wt.%の水、2から2.6wt.%(試験による)の乳化系Sおよび0.3wt.% のセタン数改善剤(硝酸2−エチルヘキシル)で乳化することによって本発明による乳化燃料を調製した。乳化燃料中の軽油Gの正確な含有量は、各々の試験について、乳化系Sの量を考慮して調製する。
【0092】
乳化系Sの組成を変化させてこれらの試験を行った。
【0093】
これらの燃料の安定性を、室温(25℃)で、以下のように行われる試験を用いて決定した:100mlのエマルジョンを精密目盛り三角フラスコに入れた。エマルジョンを25℃で24時間保存した後、エマルジョン中の沈殿相(沈殿相は、エマルジョンから分離し、容器の底部で合体した水相の大液滴で構成されていた)の容積基準の含有量を(目盛りフラスコで直接読み取ることにより)決定した。
【0094】
得られた結果が表4にまとめられている。
【0095】
【表4】

上記結果は、飽和分岐鎖アルコールを本発明による乳化添加物の組成中に組み込むことによってもたらされる安定性のさらなる向上を説明する。
【0096】
この場合、前記第1および第2エステルに加えて2−エチルヘキサノールを含有する、それぞれの燃料E8およびE9において用いられる乳化添加物の組成物は、沈殿に対するより良好な耐性を示す:0.4wt.%のアルコールの添加で、乳化燃料の沈殿は25℃で25%低下し、0.6wt.%のアルコールの添加で、この沈殿の現象は完全に消失する。
【実施例5】
【0097】
実施例5:
以下の2種類の表面活性剤:
エステルB:トリグリセリドのモル当たり30モルのエチレンオキシドでエトキシル化されているナタネ油、
表面活性剤C:ポリイソブテン無水コハク酸とテトラエチレンペンタミンとの1.2のアミンの無水物/アミンに対する質量比での縮合生成物、
を含有する本発明による乳化系を用いて、実施例1の試験2(75℃での熱安定性)を反復した。
【0098】
86.75wt.%の実施例1の軽油Gを11.70wt.%の浸透圧処理された水で、1.25wt.%の乳化系Sおよび0.3wt.%のセタン数改善剤(硝酸2−エチルヘキシル)の存在下において乳化することによって乳化燃料を調製した。
【0099】
得られた結果が下記表5に示される。
【0100】
【表5】

前の例と比較して、この例は、本発明の範囲内で、2種類の表面活性剤の化学的性質およびそれぞれの含有量の両者を、獲得することを望み、並びに利用可能な生成物、それらの経費および乳化燃料に組み込まれると思われる他の添加物とのそれらの適合性を考慮した結果の関数として、変化させることが可能であることを示す。
【実施例6】
【0101】
実施例6:
以下の3種類の表面活性剤:
エステルA:モノオレイン酸ソルビタン;
エステルB:トリグリセリドのモル当たり30モルのエチレンオキシドでエトキシル化されているナタネ油、
表面活性剤C:ポリイソブテン無水コハク酸とテトラエチレンペンタミンとの1.2のアミンの無水物/アミンに対する質量比での縮合生成物、
を含有する本発明による乳化系を用いて、実施例1の試験2(75℃での熱安定性)を反復した。
【0102】
86.75wt.%の実施例1の軽油Gを11.70wt.%の浸透圧処理された水で、1.25wt.%の乳化系Sおよび0.3wt.%のセタン数改善剤(硝酸2−エチルヘキシル)の存在下において乳化することによって乳化燃料を調製した。
【0103】
得られた結果が下記表6に示される。
【0104】
【表6】

前の例と比較して、この例は、本発明の範囲内で、2種類のエステルの化学的性質およびそれぞれの含有量の両者を、獲得することを望み、並びに利用可能な生成物、それらの経費および乳化燃料に組み込まれると思われる他の添加物とのそれらの適合性を考慮した結果の関数として、変化させることが可能であることを示す。
【実施例7】
【0105】
実施例7:
飽和分岐鎖アルコール、すなわち、2−エチルヘキサノールと混合されている、実施例5の乳化系S8(エステルA=モノオレイン酸ソルビタン、エステルB=トリグリセリドのモル当たり30モルのエチレンオキシドでエトキシル化されているナタネ油);または、飽和分岐鎖アルコール、すなわち、2−エチルヘキサノールと混合されている、実施例6の乳化系S10(エステルA=モノオレイン酸ソルビタン、エステルB=トリグリセリドのモル当たり30モルのエチレンオキシドでエトキシル化されているナタネ油、表面活性剤C=ポリイソブテン無水コハク酸とテトラエチレンペンタミンとの1.2のアミンの無水物に対する質量比での縮合生成物)のいずれかを用いて本発明による乳化添加物の組成物を調製した。
【0106】
これらの添加物組成物から出発して、85.4から86wt.%(試験による)の実施例1の軽油Gを11.7wt.%の水、2.5wt.%(試験による)の乳化系Sおよび0.3wt.%のセタン数改善剤(硝酸2−エチルヘキシル)で乳化することによって本発明による乳化燃料を調製した。乳化燃料中の軽油Gの正確な含有量は、各々の試験について、乳化系Sの量を考慮して調整した。
【0107】
乳化系Sの組成を変化させて4つの試験を行った。
【0108】
これらの燃料の安定性を、室温(25℃)で、以下のように行われる試験によって決定した:100mlのエマルジョンを精密目盛り三角フラスコに入れた。エマルジョンを25℃で24時間保存した後、エマルジョン中の沈殿相(沈殿相は、エマルジョンから分離し、容器の底部で合体した水相の大液滴で構成される)の容積基準の含有量を(目盛りフラスコで直接読み取ることにより)決定した。
【0109】
得られた結果が下記表7にまとめられている。
【0110】
【表7】

上記結果は、本発明による乳化添加物の組成に飽和分岐鎖アルコールを組み込むことによってもたらされる安定性のさらなる増加を説明する。
【0111】
この場合、それぞれの乳化系S12およびS13は、最初に述べられたものに加えて;第2エステルおよび第3表面活性剤、2−エチルヘキサノールを含有し、沈殿に対するより良好な耐性を示す:28.5wt.%のアルコールの添加で沈殿現象は完全に消失する。
【実施例8】
【0112】
実施例8:
以下の2種類の表面活性剤:
エステルB”:ポリエチレングリコール400のジオレエートまたはポリアルコキシル化エチレングリコール400、
表面活性剤C コハク酸もしくは無水コハク酸とポリアミンとの縮合生成物、
を含有する本発明による乳化系を用いて、実施例1の試験2(75℃での熱安定性)を反復した。
【0113】
86.75wt.%の実施例1の軽油Gを11.70wt.%の浸透圧処理された水で、1.25wt.%の乳化系Sおよび0.3wt.%のセタン数改善剤(硝酸2−エチルヘキシル)の存在下において乳化することによって乳化燃料を調製した。
【0114】
得られた結果が下記表8に示される。
【0115】
【表8】

前の例と比較して、この例は、本発明の範囲内で、2種類の表面活性剤の化学的性質およびそれぞれの含有量の両者を、獲得することを望み、並びに利用可能な生成物、それらの経費および乳化燃料に組み込まれると思われる他の添加物とのそれらの適合性を考慮した結果の関数として、変化させることが可能であることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】遠心分離時間と沈殿の関係を表すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水および液体炭化水素のエマルジョンの大部分を5/95から35/65の範囲の水/炭化水素重量比で含有する乳化燃料であって、少なくとも15wt.%の、脂肪酸とポリオキシアルキル化ポリオールとのエステル、並びに脂肪酸とソルビタンとのエステルおよびコハク酸もしくは無水コハク酸とアミン、ポリアミン、脂肪酸、(ポリ)オキシアルキル化脂肪酸、アルコール、(ポリ)オキシアルキル化アルコールおよびこれらの化合物の混合物のうちの少なくとも1つとの縮合生成物によって形成される群のうちの少なくとも1つを含有する乳化系を含むことを特徴とする乳化燃料。
【請求項2】
ソルビタンエステルの組成中に含まれる脂肪酸が直鎖もしくは分岐鎖、飽和もしくは不飽和であり、および6から22個の炭素原子を含むことを特徴とする、請求項1記載の燃料。
【請求項3】
前記脂肪酸がラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸およびそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項2記載の燃料。
【請求項4】
前記ソルビタンエステルが少なくとも1種類のオレイン酸ソルビタンを含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項記載の燃料。
【請求項5】
前記エステルがモノオレイン酸ソルビタンおよびセスキオレイン酸ソルビタンから選択される少なくとも1種類のエステルを含むことを特徴とする、請求項4記載の燃料。
【請求項6】
ポリオールエステルのポリオールが2から5のヒドロキシル基を含むアルコール、好ましくは、アルキレングリコール、グリセロール、ペンタエリスリトール、それらのアルキル化誘導体およびそれらの混合物を含む群の化合物に相当する、請求項1から5のいずれか1項記載の燃料。
【請求項7】
ポリオールエステルの組成中に含まれる脂肪酸が直鎖もしくは分岐鎖、飽和もしくは不飽和であり、および6から22個の炭素原子を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項記載の燃料。
【請求項8】
ポリオールエステルの組成中に含まれる脂肪酸が植物油および/または動物油中に、遊離もしくはエステル化形体で、天然に生じる脂肪酸から選択されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項記載の燃料。
【請求項9】
ポリオールエステル中に存在するポリオキシアルキル基が同一もしくは異なるオキシアルキル単位の鎖であり、各々のオキシアルキル単位が1から5個の炭素原子を含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項記載の燃料。
【請求項10】
ポリオールエステル中に存在するポリオキシアルキル基が少なくとも1つのポリエトキシ基を含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項記載の燃料。
【請求項11】
ポリオールエステルについて、エステルのモル当たりのオキシアルキル単位の平均モル数が3から50であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項記載の燃料。
【請求項12】
ポリオールエステルの組成中に含まれる脂肪酸がグリセロールであるとき、エステルのモル当たりのオキシアルキル単位の平均モル数が10から35であることを特徴とする、請求項1から11記載の燃料。
【請求項13】
ポリオールエステルが完全に、または部分的に、脂肪酸(1種類以上)およびポリオキシルアルキル化グリセロールのトリエステルまたは該トリエステルの混合物で構成されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか1項記載の燃料。
【請求項14】
ポリオールエステルが完全に、または部分的に、オキシアルキル化植物油および/または動物油で構成されることを特徴とする、請求項1から13のいずれか1項記載の燃料。
【請求項15】
ポリオールエステルが完全に、または部分的に、エトキシル化植物油で構成されることを特徴とする、請求項1から14記載の燃料。
【請求項16】
植物油がナタネ油、ダイズ油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ヤシ油、樹脂含有樹から抽出される油および該油の混合物から選択されることを特徴とする、請求項1から15記載の燃料。
【請求項17】
ポリオールエステルが、200から1000の分子量を有する、ポリアルコキシル化アルキレン グリコールのジエステル、特には、ポリエトキシル化エチレングリコールのジオレエートであることを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項記載の燃料。
【請求項18】
ポリオールエステルが0.5から5wt.%、好ましくは、0.5から2wt.%を変化する含有量で存在することを特徴とする、請求項1から17のいずれか1項記載の燃料。
【請求項19】
乳化系が15から100wt.%の、少なくとも1種類のポリオールエステル、並びにソルビタンエステルおよびコハク酸もしくは無水コハク酸とアミン、ポリアミン、脂肪酸、(ポリ)オキシアルキル化脂肪酸、アルコール、(ポリ)オキシアルキル化アルコールおよびこれらの化合物の混合物のうちの1つとの縮合生成物を含む群のうちの少なくとも1つを含有することを特徴とする、請求項1から18のいずれか1項記載の燃料。
【請求項20】
乳化系が15から100wt.%の少なくとも1種類のソルビタンエステルを、少なくとも1種類のポリオールエステルと20/80から80/20を変化するソルビタンエステル/ポリオールエステル重量比で組み合わせて含有することを特徴とする、請求項1から19のいずれか1項記載の燃料。
【請求項21】
乳化系において、ソルビタンエステル/ポリオールエステル重量比が40/60から60/40を変化することを特徴する、請求項20記載の燃料。
【請求項22】
前記脂肪酸とソルビタンとのエステルおよび縮合生成物を含む群のうちの少なくとも1つが0.5から5wt.%、好ましくは、0.5から2wt.%を変化する含有量で存在することを特徴とする、請求項1から21のいずれか1項記載の燃料。
【請求項23】
乳化系が0から85wt.%の、コハク酸もしくは無水コハク酸とアミン、ポリアミン、脂肪酸、(ポリ)オキシアルキル化脂肪酸、アルコール、(ポリ)オキシアルキル化アルコールおよびこれらの化合物の混合物のうちの1つとの縮合生成物の少なくとも1種類を含有することを特徴とする、請求項1から22のいずれか1項記載の燃料。
【請求項24】
乳化系が15から85wt.%の少なくとも1種類のポリオールエステルおよび85から15%の少なくとも1種類の縮合生成物を含有することを特徴とする、請求項1から23のいずれか1項記載の燃料。
【請求項25】
縮合生成物のコハク酸もしくは無水コハク酸が、好ましくはポリマー遊離基、特にはポリイソブチル遊離基である、炭化水素遊離基によって置換されることを特徴とする、請求項1から24のいずれか1項記載の燃料。
【請求項26】
乳化系が20から50wt.%の少なくとも1種類のポリオールエステルおよび50から80%の少なくとも1種類の縮合生成物を含有することを特徴とする、請求項1から25のいずれか1項記載の燃料。
【請求項27】
乳化系が少なくとも1種類の、3から22個の炭素原子を含むアルコールをも含有することを特徴とする、請求項1から26のいずれか1項記載の燃料。
【請求項28】
アルコールが少なくとも1種類の飽和分岐鎖アルコールを含むことを特徴とする、請求項1から27記載の燃料。
【請求項29】
重量比アルコール/ポリオールエステルおよびアルコール/ソルビタンエステルが同一であるか、もしくは異なり、両者とも1以下であることを特徴とする、請求項27または28記載の燃料。
【請求項30】
0.1から5wt.%の前記アルコールを含有することを特徴とする、請求項27から29のいずれか1項記載の燃料。
【請求項31】
炭化水素相が、ガソリン画分、中間蒸留物、例えば、ケロシン画分および軽油画分から選択される1種類以上の炭化水素画分を含むことを特徴とする、請求項1から30のいずれか1項記載の燃料。
【請求項32】
炭化水素相が、中間真空蒸留物、重真空蒸留物、蒸留残滓および該画分の混合物から選択される1種類以上の画分を含むことを特徴とする、請求項1から30のいずれか1項記載の燃料。
【請求項33】
規格NF M 07−100に従って決定されるそのイオウ含有量が1wt.%以下、好ましくは0.2wt.%以下、さらにより好ましくは0.1wt.%以下、非常に有利には10ppm以下であることを特徴とする、請求項1から32のいずれか1項記載の燃料。
【請求項34】
少なくとも1種類のセタン数改善剤、特には、有機もしくは無機硝酸塩、有機過酸化物およびこれら2つのタイプの化合物の混合物から選択されるものをさらに含むことを特徴とする、請求項1から33のいずれか1項記載の燃料。
【請求項35】
請求項1から34のいずれか1項記載の乳化燃料の調製方法であって、炭化水素および水のエマルジョンを、乳化系および他の可能な添加物の幾らか、またはすべての存在下において形成することによる方法。
【請求項36】
乳化系を炭化水素相と混合した後、生じる混合物を、エマルジョンの形成に必要な水が供給されるエマルサーシステムに1回以上通過させることによる、請求項35記載の方法。
【請求項37】
以下の段階を含む、請求項35記載の方法:
(a1)水および乳化系の予備混合、次いで炭化水素相中への分散、または
(a2)炭化水素相の水および乳化剤との同時混合、次に
(b)例えば、ローター・ステータ、エマルサー、スタティック・ミキサー、インライン・タービン・システム、超音波浸透機から選択される、適切な装置による適正なエマルジョン形成。
【請求項38】
請求項1から17、19から21および23から26のいずれか1項において定義される、15wt.%の、少なくとも1種類の(ポリ)オキシアルキル化ポリオールの脂肪酸エステル、並びに脂肪酸とソルビタンとのエステルおよびコハク酸もしくは無水コハク酸とアミン、ポリアミン、脂肪酸、(ポリ)オキシアルキル化脂肪酸、アルコール、(ポリ)オキシアルキル化アルコールのうちの少なくとも1つとの縮合生成物を含む群のうちの少なくとも1つを含有する乳化添加物の組成物。
【請求項39】
少なくとも1種類の、3から22個の炭素原子を含むアルコールをも含有することを特徴とする、請求項1から38記載の添加物組成物。
【請求項40】
アルコールが少なくとも1種類の飽和分岐鎖アルコールを含むことを特徴とする、請求項1から39記載の添加物組成物。
【請求項41】
重量比アルコール/ポリオールエステルおよびアルコール/ソルビタンエステルが同一であるか、もしくは異なり、両者とも1以下であることを特徴とする、請求項39または40記載の添加物組成物。
【請求項42】
有機もしくは無機硝酸塩、有機過酸化物およびこれら2つのタイプの化合物の混合物から選択される少なくとも1種類のセタン数改善剤を含有する、請求項38から41のいずれか1項記載の添加物組成物。
【請求項43】
添加物の混合物の形体、または適切な溶媒中の前記添加物の濃縮溶液の形体にある、請求項38から42のいずれか1項記載の添加物組成物。
【請求項44】
乳化水/液体炭化水素燃料の熱安定性を改善する方法であって、請求項38から43のいずれか1項記載の乳化添加物の組成物を用いることによる方法。
【請求項45】
熱機関もしくは燃料電池用の燃料としての、または熱機器、例えば、工業用もしくは家庭用ボイラー、加熱炉、タービン、発電機用の燃料としての、請求項1から34のいずれか1項記載の乳化燃料の使用。
【請求項46】
ディーゼルエンジン燃料または家庭用ボイラーのための燃料としての請求項1から34のいずれか1項記載の乳化燃料の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5/95から35/65の範囲の水/炭化水素重量比の水および液体炭化水素のエマルジョンを主成分として含有する乳化燃料であって、少なくとも15wt.%の、脂肪酸とポリオキシアルキル化ポリオールとのエステル、並びに脂肪酸とソルビタンとのエステルおよびコハク酸もしくは無水コハク酸とアミン、ポリアミン、脂肪酸、(ポリ)オキシアルキル化脂肪酸、アルコール、(ポリ)オキシアルキル化アルコールおよびこれらの化合物の混合物の少なくとも1種との縮合生成物によって形成される群の少なくとも1種を含有する乳化系を含み、前記ポリオキシアルキル化ポリオールにおけるポリオールはアルキレングリコール、グリセロール、ペンタエリスリトール、これらのアルキル化誘導体およびこれらの混合物から選択されるアルコールであることを特徴とする乳化燃料。
【請求項2】
ソルビタンエステルの組成中に含まれる脂肪酸が直鎖もしくは分岐鎖の、飽和もしくは不飽和であり、6から22個の炭素原子を含むことを特徴とする請求項1記載の燃料。
【請求項3】
前記脂肪酸がラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項2記載の燃料。
【請求項4】
前記ソルビタンエステルが少なくとも1種のオレイン酸ソルビタンを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の燃料。
【請求項5】
前記エステルがモノオレイン酸ソルビタンおよびセスキオレイン酸ソルビタンから選択される少なくとも1種のエステルを含むことを特徴とする請求項4記載の燃料。
【請求項6】
ポリオールエステルの組成中に含まれる脂肪酸が直鎖もしくは分岐鎖の、飽和もしくは不飽和であり、6から22個の炭素原子を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の燃料。
【請求項7】
ポリオールエステルの組成中に含まれる脂肪酸が植物油および/または動物油中に、遊離もしくはエステル化された形で、天然に生じる脂肪酸から選択されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の燃料。
【請求項8】
ポリオールエステル中に存在するポリオキシアルキル基が同一もしくは異なるオキシアルキル単位からなる鎖であり、各々のオキシアルキル単位が1から5個の炭素原子を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の燃料。
【請求項9】
ポリオールエステル中に存在するポリオキシアルキル基が少なくとも1つのポリエトキシ基を含むことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の燃料。
【請求項10】
ポリオールエステルについて、エステル1モル当たりのオキシアルキル単位の平均モル数が3から50であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載の燃料。
【請求項11】
ポリオールエステルの組成中に含まれる脂肪酸がグリセロールであるとき、エステル1モル当たりのオキシアルキル単位の平均モル数が10から35であることを特徴とする請求項1から10記載の燃料。
【請求項12】
ポリオールエステルが完全に、または部分的に、1種以上の脂肪酸およびポリオキシルアルキル化グリセロールのトリエステルまたは該トリエステルの混合物で構成されることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項記載の燃料。
【請求項13】
ポリオールエステルが完全に、または部分的に、オキシアルキル化植物油および/または動物油で構成されることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項記載の燃料。
【請求項14】
ポリオールエステルが完全に、または部分的に、エトキシル化植物油で構成されることを特徴とする請求項1から13記載の燃料。
【請求項15】
植物油がナタネ油、ダイズ油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ヤシ油、樹脂含有樹から抽出される油およびこれらの油の混合物から選択されることを特徴とする請求項1から14記載の燃料。
【請求項16】
ポリオールエステルが、200から1000の分子量を有する、ポリアルコキシル化アルキレングリコールのジエステル、特には、ポリエトキシル化エチレングリコールのジオレエートであることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項記載の燃料。
【請求項17】
ポリオールエステルが0.5から5wt.%、好ましくは、0.5から2wt.%の含有率で存在することを特徴とする請求項1から16のいずれか1項記載の燃料。
【請求項18】
乳化系が15から100wt.%の、少なくとも1種のポリオールエステル、並びにソルビタンエステルおよびコハク酸もしくは無水コハク酸とアミン、ポリアミン、脂肪酸、(ポリ)オキシアルキル化脂肪酸、アルコール、(ポリ)オキシアルキル化アルコールおよびこれらの化合物の混合物の1種以上との縮合生成物を含む群の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1から17のいずれか1項記載の燃料。
【請求項19】
乳化系が15から100wt.%の少なくとも1種のソルビタンエステルと、少なくとも1種のポリオールエステルとを20/80から80/20のソルビタンエステル/ポリオールエステル重量比で含有することを特徴とする請求項1から18のいずれか1項記載の燃料。
【請求項20】
乳化系において、ソルビタンエステル/ポリオールエステル重量比が40/60から60/40であることを特徴する請求項20記載の燃料。
【請求項21】
前記脂肪酸とソルビタンとのエステルおよび縮合生成物を含む群の前記少なくとも1種が0.5から5wt.%、好ましくは、0.5から2wt.%の含有率で存在することを特徴とする請求項1から20のいずれか1項記載の燃料。
【請求項22】
乳化系が0から85wt.%の、コハク酸もしくは無水コハク酸とアミン、ポリアミン、脂肪酸、(ポリ)オキシアルキル化脂肪酸、アルコール、(ポリ)オキシアルキル化アルコールおよびこれらの化合物の混合物のうちの1種との縮合生成物の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1から21のいずれか1項記載の燃料。
【請求項23】
乳化系が15から85wt.%の少なくとも1種のポリオールエステルおよび85から15%の少なくとも1種の縮合生成物を含有することを特徴とする請求項1から22のいずれか1項記載の燃料。
【請求項24】
縮合生成物のコハク酸もしくは無水コハク酸が、好ましくはポリマーラジカル、特にはポリイソブチルラジカルである、炭化水素ラジカルによって置換されることを特徴とする請求項1から23のいずれか1項記載の燃料。
【請求項25】
乳化系が20から50wt.%の少なくとも1種のポリオールエステルおよび50から80%の少なくとも1種の縮合生成物を含有することを特徴とする請求項1から24のいずれか1項記載の燃料。
【請求項26】
乳化系が少なくとも1種の、3から22個の炭素原子を含むアルコールをも含有することを特徴とする請求項1から25のいずれか1項記載の燃料。
【請求項27】
アルコールが少なくとも1種の飽和分岐鎖アルコールを含むことを特徴とする請求項26記載の燃料。
【請求項28】
アルコール/ポリオールエステル重量比およびアルコール/ソルビタンエステル重量比が同一であるか、もしくは異なり、両者とも1以下であることを特徴とする請求項27または28記載の燃料。
【請求項29】
0.1から5wt.%の前記アルコールを含有することを特徴とする請求項27から29のいずれか1項記載の燃料。
【請求項30】
炭化水素相が、ガソリン留分、中間蒸留物、例えば、ケロシン留分および軽油留分、生物燃料、ならびに前記留分の混合物から選択される1種以上の炭化水素留分を含むことを特徴とする請求項1から29のいずれか1項記載の燃料。
【請求項31】
炭化水素相が、中間真空蒸留物、重真空蒸留物、蒸留残差および該留分の混合物から選択される1種以上の留分を含むことを特徴とする請求項1から30のいずれか1項記載の燃料。
【請求項32】
NF規格M 07−100に従って決定されるそのイオウ含有率が1wt.%以下、好ましくは0.2wt.%以下、より好ましくは0.1wt.%以下、非常に好ましくは10ppm以下であることを特徴とする請求項1から31のいずれか1項記載の燃料。
【請求項33】
少なくとも1種のセタン数改良剤、特には、有機もしくは無機硝酸塩、有機過酸化物およびこれら2種の化合物の混合物から選択されるものをさらに含むことを特徴とする請求項1から32のいずれか1項記載の燃料。
【請求項34】
請求項1から33のいずれか1項記載の乳化燃料の調製方法であって、炭化水素および水のエマルジョンを、乳化系および他の可能な添加物の幾らか、またはすべての存在下において形成して前記乳化燃料を調整する方法。
【請求項35】
乳化系を炭化水素相と混合した後、得られた混合物を、エマルジョンの形成に必要な水が供給されるエマルサーシステムに1回以上通過させる請求項35記載の方法。
【請求項36】
(a1)水および乳化系を予備混合し、次いで炭化水素相中に分散するか、
(a2)炭化水素相を水および乳化剤と同時に混合し、次に
(b)例えば、ローター・ステータ、エマルサー、スタティック・ミキサー、インライン・タービン・システム、及び超音波振とう機から選択される適切な装置によって適正にエマルジョンを形成する
段階を含む請求項35記載の方法。
【請求項37】
請求項1から17、19から21および23から26のいずれか1項において定義される、15wt.%の、少なくとも1種の、(ポリ)オキシアルキル化ポリオールの脂肪酸エステル、並びに脂肪酸とソルビタンとのエステルおよびコハク酸もしくは無水コハク酸とアミン、ポリアミン、脂肪酸、(ポリ)オキシアルキル化脂肪酸、アルコール、(ポリ)オキシアルキル化アルコールの少なくとも1種との縮合生成物を含む群の少なくとも1種を含有する乳化添加物の組成物。
【請求項38】
少なくとも1種の、3から22個の炭素原子を含むアルコールをも含有することを特徴とする請求項37記載の添加物組成物。
【請求項39】
アルコールが少なくとも1種の飽和分岐鎖アルコールを含むことを特徴とする請求項38記載の添加物組成物。
【請求項40】
アルコール/ポリオールエステル重量比およびアルコール/ソルビタンエステル重量比が同一であるか、もしくは異なり、両者とも1以下であることを特徴とする、請求項38または39記載の添加物組成物。
【請求項41】
有機もしくは無機硝酸塩、有機過酸化物およびこれら2種の化合物の混合物から選択される少なくとも1種のセタン数改良剤を含有する請求項37から40のいずれか1項記載の添加物組成物。
【請求項42】
添加物の混合物、または適切な溶媒中の前記添加物の濃縮溶液である請求項37から40のいずれか1項記載の添加物組成物。
【請求項43】
水/液体炭化水素の乳化燃料の熱安定性を改善する方法であって、請求項37から42のいずれか1項記載の乳化添加物の組成物を用いて前記熱安定性を改善する方法。
【請求項44】
熱機関もしくは燃料電池用の燃料としての、または熱機器、例えば、工業用もしくは家庭用ボイラー、加熱炉、タービン、発電機用の燃料としての、請求項1から34のいずれか1項記載の乳化燃料の使用。
【請求項45】
ディーゼルエンジン燃料または家庭用ボイラーのための燃料としての請求項1から33のいずれか1項記載の乳化燃料の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2006−526680(P2006−526680A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508347(P2006−508347)
【出願日】平成16年6月1日(2004.6.1)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001343
【国際公開番号】WO2004/108864
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(503438322)トタル・フランス (8)
【Fターム(参考)】