説明

乳房検診用放射線撮影装置

【課題】乳房を確実に検出器リングに挿入することにより確実に断層画像を取得することができる乳房検診用放射線撮影装置を提供する。
【解決手段】本発明の構成によれば、ガントリ11の開口部に乳房Bの挿入深さを検出するセンサ5と、乳房深さを通知する距離表示部を備えている。これにより、術者はガントリ11の開口部に乳房Bを挿入する際に、乳房Bの挿入状況を知ることができる。これによって、乳房Bを確実に検出器リング12に挿入することにより確実に断層画像Pを取得することができる乳房検診用放射線撮影装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体から放射される消滅放射線対を検出して、被検体内の放射線薬剤分布のイメージングを行う乳房検診用放射線撮影装置に係り、特に、がん検診用の乳房検診用放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関には、放射線薬剤の分布をイメージングする放射線断層撮影装置が配備されている。この様な放射線断層撮影装置の具体的な構成について説明する。従来の放射線断層撮影装置は、放射線を検出する放射線検出器が円環状に並んで構成される検出器リングが備えられている。この検出器リングは、被検体内の放射性薬剤から照射される互いに反対方向となっている一対の放射線(消滅放射線対)を検出する。
【0003】
この様な放射線断層撮影装置の一種として、乳房検診用の放射線断層撮影装置がある。この乳房検診用放射線撮影装置について具体的に説明する。図13は、従来の乳房検診用放射線撮影装置について説明する図である。従来の乳房検診用放射線撮影装置51では、検査に際し、被検体Mの乳房Bの片側が検出器リング62に挿入される。この状態で、検出器リング62は、被検体Mから照射される消滅放射線対を検出する。
【0004】
検出器リング62は、乳房Bから発せられた消滅放射線対の発生源を特定して、この位置情報を基に放射性薬剤の分布が生成される。放射性薬剤は、正常組織と比べがん組織により多く集積する性質があるので、放射性薬剤の分布図を診断すれば、乳がんの検診が行える(例えば、特許文献1,特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−183448号公報
【特許文献2】特開2009−254787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の構成によれば、次のような問題点がある。
すなわち、従来構成によれば、乳房が検出器リングに適切に挿入されている保証を得ることができないという問題点がある。
【0007】
乳房Bは、可撓性を有し形状が一定に定まらない。乳房Bを検出器リング62に挿入すると、乳房Bはガントリ61に当たって変形してしまう。すると、乳房Bが検出器リング62にうまく収まらない状態で断層画像の撮影が開始されてしまう可能性がある。
【0008】
術者は、検出器リング62に乳房Bを挿入する際に乳房Bの様子を確認することができない。乳房Bを囲むガントリ61が確認の邪魔となるからである。したがって、術者は、撮影開始をする前の段階において乳房Bが確実に挿入されているかを確認することはできない。
【0009】
すると、検出器リング62にうまく乳房Bが挿入されずに撮影が開始されることが起こりうる。この場合、術者は撮影終了後に得られた断層画像を視認して初めて乳房Bが挿入できていなかったことに気がつくことになる。こうなると、診断に使用できる画像を取得するには断層画像の取り直しをするしかなくなる。
【0010】
断層画像を取り直す際には、乳房Bが検出器リング62の奥深くに挿入されるようにしてから再び撮影を開始することになる。しかし、この過程においても検出器リング62に乳房Bが確実に挿入されている保証はない。
【0011】
すなわち、従来構成によれば、診断に好適な断層画像が取得できるまで撮影が繰り返されることになる。このような乳房Bが検出器リング62にうまく収まらない現象は、特に検査する乳房Bが大きい場合特に発生しやすい。
【0012】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は乳房を確実に検出器リングに挿入することにより確実に断層画像を取得することができる乳房検診用放射線撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上述の課題を解決するために次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る乳房検診用放射線撮影装置は、被検体の乳房を挿入する開口部を備えたガントリと、ガントリの開口部に設けられた被検体の乳房の挿入深さを検出して検出信号を出力するセンサと、センサの検出信号を基に乳房の挿入深さを通知する深度通知手段とを備えることを特徴とするものである。
【0014】
[作用・効果]本発明の構成によれば、ガントリの開口部に乳房の挿入深さを検出するセンサと、乳房深さを通知する通知手段を備えている。これにより、術者はガントリの開口部に乳房を挿入する際に、乳房の挿入状況を知ることができる。これによって、乳房を確実に検出器リングに挿入することにより確実に断層画像を取得することができる乳房検診用放射線撮影装置を提供することができる。
【0015】
また、上述の乳房検診用放射線撮影装置において、センサはリアルタイムに深度通知手段に検出信号を送出し、深度通知手段は、乳房の挿入深さをリルタイムに更新して通知すればより望ましい。
【0016】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の撮影装置のより具体的な構成を示すものとなっている。乳房挿入深さをリアルタイムで更新して通知するようにすれば、乳房の挿入深さの現在の状況が分かるので、乳房を確実に検出器リングに挿入することができる。
【0017】
また、上述の乳房検診用放射線撮影装置において、乳房を開口部に挿入する際に、センサの検出信号を基に乳房の挿入深さが浅くなったことを通知する更新通知手段を備えればより望ましい。
【0018】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の撮影装置のより具体的な構成を示すものとなっている。乳房の挿入深さが乳房の挿入深さが浅くなったことを通知するようにすれば、術者は乳房を挿入した後、被検体が動いて乳房が位置ズレを起こしたことを迅速に知ることができる。また、術者は乳房の挿入深さを深くする目的でガントリと乳房との位置関係を調整するときに、乳房の挿入深さが最大となっているかどうかを簡単に認識することができる。
【0019】
また、上述の乳房検診用放射線撮影装置において、センサは、ガントリの開口部における乳房が挿入される側と反対側の一端部に設けられていればより望ましい。
【0020】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の撮影装置のより具体的な構成を示すものとなっている。センサがガントリの開口部における乳房が挿入される側と反対側の一端部に設けられていれば乳房の挿入深さをより確実に検出することができる。
【0021】
また、上述の乳房検診用放射線撮影装置において、被検体に対してガントリを乳房の挿入方向と直交する方向に移動させるガントリ移動手段と、ガントリ移動手段を制御するガントリ移動制御手段とを備えればより望ましい。
【0022】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の撮影装置のより具体的な構成を示すものとなっている。被検体に対してガントリを乳房の挿入方向と直交する方向に移動させて乳房とガントリとの位置関係を調整する機構を備えるようにすれば、乳房の位置調整をより簡便にすることができる。
【0023】
また、上述の乳房検診用放射線撮影装置において、ガントリの内部に放射線を検出する放射線検出器が弧状に配列された検出器リングを備え、乳房に分布する放射性薬剤のイメージングを行えばより望ましい。
【0024】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の撮影装置のより具体的な構成を示すものとなっている。陽電子放出断層撮影装置は、撮影に時間を要する。したがって、この様な装置における撮影のやり直しは被検体の負担が大きいので、撮影前に乳房の挿入を確実に行う必要がある。本発明を陽電子放出断層撮影装置に適用すれば、乳房を検出器リングに確実に導入できるので、撮影は確実なものとなる。
【0025】
また、上述の乳房検診用放射線撮影装置において、ガントリの内部に放射線を照射する放射線源と、放射線を検出する放射線検出器とを備え、放射線源から発した放射線を乳房に透過させてイメージングを行えばより望ましい。
【0026】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の撮影装置のより具体的な構成を示すものとなっている。上述のような装置では被検体に放射される放射線量を極力少なくしなければならない。したがって、この様な装置では被検体の安全性を考えれば、撮影をやり直すのは望ましいことではない。したがって、撮影時には乳房の挿入を確実に行う必要がある。本発明を上述の構成に適用すれば、乳房をガントリに確実に導入できるので、撮影は安全なものとなる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の構成によれば、ガントリの開口部に乳房の挿入深さを検出するセンサと、乳房深さを通知する通知手段を備えている。これにより、術者はガントリの開口部に乳房を挿入する際に、乳房の挿入状況を知ることができる。これによって、乳房を確実に検出器リングに挿入することにより確実に断層画像を取得することができる乳房検診用放射線撮影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例1に係る放射線断層撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】実施例1に係る操作卓の構成を説明する平面図である。
【図3】実施例1に係る乳房挿入深さの検出について説明する模式図である。
【図4】実施例1に係る乳房挿入深さの検出について説明する模式図である。
【図5】実施例1に係る乳房挿入深さの検出について説明する模式図である。
【図6】実施例1に係る乳房挿入深さの検出について説明する模式図である。
【図7】実施例1に係る放射線検出器の構成を説明する斜視図である。
【図8】実施例1に係る放射線断層撮影装置の動作を説明する機能ブロック図である。
【図9】実施例2に係るX線断層撮影装置の全体構成を説明する機能ブロック図である。
【図10】実施例2に係るX線断層撮影装置の動作を説明する模式図である。
【図11】本発明の1変形例の構成を説明する断面図である。
【図12】本発明の1変形例の構成を説明する断面図である。
【図13】従来構成の放射線撮影装置の構成を説明する断面図である。
【実施例1】
【0029】
以下、本発明に係る放射線断層撮影装置の実施例について図面を参照しながら説明する。実施例1におけるγ線は本発明の放射線の一例である。なお、実施例1の構成は、乳房検診用のマンモグラフィー装置となっている。すなわち、実施例1の放射線断層撮影装置は、乳房Bに分布する放射性薬剤のイメージングを行って断層画像を生成する。
【0030】
<放射線断層撮影装置の全体構成>
図1は、実施例1に係る放射線断層撮影装置の具体的構成を説明する機能ブロック図である。実施例1に係る放射線断層撮影装置9は、被検体Mの乳房Bをz方向から挿入させる開口部を備えたガントリ11と、ガントリ11の内部に設けられた被検体Mの乳房Bをz方向から挿入させるリング状の検出器リング12とを備えている。検出器リング12に設けられた開口部は、z方向に伸びた円筒形(正確には、正8角柱)となっている。したがって、検出器リング12自身もz方向に伸びている。なお、検出器リング12の開口部の領域が、放射線断層撮影装置9の断層画像Pが生成できる撮影視野となっている。z方向は、検出器リング12の中心軸の伸びる方向に沿っている。
【0031】
天板10は、腹ばいの状態となった被検体Mを載置する目的で設けられている。天板10には、被検体Mの乳房Bを挿通する穴がz方向に貫通するように設けられており、乳房Bは、この穴を通じて乳房Bを検出器リング12の内部に挿入される。ガントリ11の開口部は、鉛直上向きに設けられており、乳房Bは、この開口部に鉛直下向きの方向から挿入されることになる。
【0032】
ガントリ11は、支持台25に載置されている。この支持台25は、被検体Mから見てガントリ11の裏側に位置している。支持台25は図1の矢印に示すように天板10の長手方向に往復移動することができる。この天板10の長手方向は、ガントリ11に挿入される乳房Bの挿入方向と直交している。すると、ガントリ11および後述のセンサ5も支持台25に追従して移動することになる。一方、天板10は支持台25の移動に追従せずに移動しないので、支持台25を移動させるとガントリ11と乳房Bとの相対位置を調整することができる。この支持台25の移動は支持台移動機構23が実現する。支持台移動制御部24は支持台移動機構23を制御するものである。支持台移動機構23は、本発明のガントリ移動手段に相当し、支持台移動制御部24は、本発明のガントリ移動制御手段に相当する。
【0033】
支持台25におけるガントリ11を載置する支持面には、乳房Bの挿入深さを検出するセンサ5が設けられている。センサ5は、ガントリ11の開口部の内部に設けられている。したがって、センサ5はガントリ11の開口部における乳房Bが挿入される側と反対側の一端部に設けられていることになる。センサ5は、リアルタイムに検出信号を出力することができる。センサ5の具体例としては、赤外線センサが採用できる。
【0034】
操作卓35は、術者が放射線断層撮影装置9に対して行う諸操作を入力させるものである。この操作卓35には、図2に示すように、被検体Mの乳房Bの挿入深さをミリメートル単位で通知する距離表示部35aと、挿入深さの更新を通知するランプ35bと、距離表示部35aに表示される値をリセットするリセットボタン35cとを備えている。距離表示部35aとランプ35bとにはセンサ5より検出信号がリアルタイムに送られている。距離表示部35a,ランプ35bはこの検出信号を基に表示を変更する構成となっている。術者は、距離表示部35aとランプ35bとの表示を確認しながらガントリ11を乳房Bに挿入することになる。距離表示部35aは、本発明の深度通知手段に相当し、ランプ35bは、本発明の更新通知手段に相当する。
【0035】
<乳房挿入時における距離表示部35a,ランプ36bの動作>
図3〜図6は、距離表示部35a,ランプ35bの動作について説明する図である。この動作説明において、ガントリ11の開口部に検査対象の乳房Bが挿入されつつあるものとする。
【0036】
図3は、乳房Bが開口部に挿入される前の初期状態を表している。このとき、距離表示部35aの表示は初期値の100mmとなっている。距離表示部35aの初期値は開口部のz方向の長さよりも長く設定されることが望ましい。一方、ランプ35bは非点灯の状態である。
【0037】
図4は、乳房Bが開口部に挿入され始めた状態を示している。術者が操作卓35を通じて乳房挿入開始の旨を入力すると、センサ5は鉛直上向き方向の赤外線照射を開始する。この状態で乳房Bは開口部に鉛直下向き方向から挿入される。センサ5は、乳房Bで反射して戻ってくる赤外線を検出してセンサ自身と赤外線を反射させる乳房Bとの距離dを示す検出信号を出力する。この距離dが乳房Bの挿入深さを表していることになる。センサ5は、検出信号を距離表示部35aおよびランプ35bに送出する。距離表示部35aは、距離dをリアルタイムで表示する。一方、ランプ35bは点灯を開始する。
【0038】
図5は、乳房Bが開口部に挿入され終わった状態を表している。距離表示部35aは、乳房Bが挿入され始めて以来最低の距離を表示している。また、ランプ35bは、点灯を続けている。このランプ35bの点灯は、距離dがより短くなっている期間中続けられる。つまり、ランプ35bは乳房Bの挿入深さがより深くなるように変化していることを術者に通知していることになる。
【0039】
また、ランプ35bは、乳房Bが挿入され尽くしてガントリ11に対して移動しない状態においても、点灯を続けている。これにより、ランプ35bは、乳房Bが深く挿入された状態が維持されていることを術者に通知する。
【0040】
図6は、乳房Bが開口部に挿入され終わった図5の状態の後に被検体Mが動いてしまった場合を表している。これにより、乳房Bがガントリ11の開口部から部分的に抜け出してしまったものとする。距離表示部35aは、先程よりも長い距離を表示して乳房Bの位置ズレが起こったことを術者に通知する。同様にランプ35bは、距離dが長くなることにより点灯を中止し、乳房Bの位置ズレが起こったことに起因して乳房の挿入深さが浅くなったことを術者に通知する。
【0041】
一方、リセットボタン35cは、距離表示をリセットする目的で設けられている(図2参照)。このリセットボタン35cを押下すると、距離表示部35aおよびランプ35bは図3で説明した初期状態に戻る。
【0042】
遮蔽プレート13は、タングステンや鉛等で構成される(図1参照)。放射性薬剤は、被検体Mの乳房B以外の部分にも存在するので、そこからも消滅γ線対が発生している。この様な関心部位以外から発生する消滅γ線対が検出器リング12に入射すると、断層画像撮影の邪魔となる。そこで、検出器リング12のz方向における被検体Mに近い側の一端を覆うようにリング状の遮蔽プレート13が設けられているのである。
【0043】
クロック19は、検出器リング12にシリアルナンバーとなっている時刻情報を送出する。検出器リング12から出力される検出信号には、γ線をどの時点で検出したかという時刻情報が付与され、後述のフィルタ部20に入力される。
【0044】
検出器リング12の構成について説明する。検出器リング12は、8個の放射線検出器1がz方向(中心軸方向)に垂直な平面上の仮想円に配列されることで、1つの単位リングが形成される。この単位リングがz方向に3個配列されて検出器リング12が構成される。
【0045】
放射線検出器1の構成について簡単に説明する。図7は、実施例1に係る放射線検出器の構成を説明する斜視図である。放射線検出器1は、図7に示すように放射線を光に変換するシンチレータ2と、光を検出する光電子増倍管から構成される光検出器3とを備えている。そして、シンチレータ2と光検出器3との介在する位置には、光を授受するライトガイド4が備えられている。
【0046】
シンチレータ2は、シンチレータ結晶が3次元的に配列されて構成されている。シンチレータ結晶は、Ceが拡散したLu2(1−X)2XSiO(以下、LYSOとよぶ)によって構成されている。そして、光検出器3は、どのシンチレータ結晶が光を発したかという光の発生位置を特定することができるようになっているとともに、光の強度や、光の発生した時刻をも特定することができる。また、実施例1の構成のシンチレータ2は、採用しうる態様の例示にすぎない。したがって、本発明の構成は、これに限られるものではない。
【0047】
同時計数部21(図1参照)には、後述のフィルタ部20を経由して検出器リング12から出力された検出信号が送られてきている。検出器リング12に同時に入射した2つのγ線は、被検体内の放射性薬剤に起因する消滅γ線対である。同時計数部21は、検出器リング12を構成するシンチレータ結晶のうちの2つの組み合わせ毎に消滅γ線対が検出された回数をカウントし、この結果を断層画像生成部22に送出する。同時計数部21による検出信号の同時性の判断は、クロック19によって検出信号に付与された時刻情報が用いられる。
【0048】
フィルタ部20は、検出器リング12における無用なデータを同時計数部21に送出させない目的で設けられている。フィルタ部20は、同時計数部21の負荷を軽減するように検出信号を間引くことができる。
【0049】
断層画像生成部22は、同時計数部21より出力される同時計数データを基に、検出器リング12の開口部をある平面で裁断したときの断層画像Pを生成する。
【0050】
表示部36は、断層画像生成部22が生成した断層画像Pを表示させるものである。記憶部37は、検出器リング12が出力する検出信号、同時計数部21が生成する同時計数データ、断層画像P等、各部の動作によって生じるデータ、および各部の動作に際して参照されるパラメータの一切を記憶するものである。
【0051】
なお、放射線断層撮影装置9は、各部を統括的に制御する主制御部41を備えている。この主制御部41は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより、各部19,20,21,22,24を実現している。なお、上述の各部はそれらを担当する制御装置に分割されて実現されてもよい。
【0052】
<放射線断層撮影装置の動作>
次に、図8を参照して放射線断層撮影装置の動作を説明する。実施例1の放射線断層撮影装置で乳房Bの検診を行うには、まず放射性薬剤が投与された被検体Mを腹ばいになるように天板10に載置する(被検体載置ステップS1)。この際、術者が操作卓35を通じて乳房挿入開始の旨を入力しているので、距離表示部35a,ランプ35bは表示動作・点灯動作を開始していることになる(図4参照)。
【0053】
乳房Bの挿入が終了すると、術者は操作卓35を通じて支持台25の移動を指示する。これによりガントリ11は被検体Mに対して天板10の長手方向に移動し、被検体Mに対するガントリ11の位置が調整される(被検体位置調整ステップS2)。術者は距離表示部35a,ランプ35bを確認しながらこの位置の調整を行う。術者が乳房Bをより深く開口部に挿入しようとして、支持台25を被検体Mに一方向に移動させ過ぎてしまうと、距離表示部35a,ランプ35bが乳房Bの挿入深さが浅くなっている旨を術者に通知する。術者は、この通知に従って、支持台25を逆方向に移動させることにより乳房Bの挿入深さを元の状態に戻すことができる。
【0054】
被検体Mの位置調整が終了した時点で、術者が操作卓35を通じて断層画像撮影の開始を指示すると、検出器リング12は消滅γ線対の検出を開始する(撮影開始ステップS3)。断層画像生成部22は、検出された消滅γ線対をイメージングして断層画像Pを生成する。断層画像Pが表示部36に表示されて実施例1における放射線断層撮影装置の動作は終了となる。
【0055】
以上のように、本発明の構成によれば、ガントリ11の開口部に乳房Bの挿入深さを検出するセンサ5と、乳房深さを通知する距離表示部35aを備えている。これにより、術者はガントリ11の開口部に乳房Bを挿入する際に、乳房Bの挿入状況を知ることができる。これによって、乳房Bを確実に検出器リング12に挿入することにより確実に断層画像を取得することができる乳房検診用放射線撮影装置を提供することができる。
【0056】
また、上述のように乳房挿入深さをリアルタイムで更新して通知するようにすれば、乳房Bの挿入深さの現在の状況が分かるので、乳房Bを確実に検出器リング12に挿入することができる。
【0057】
また、上述のランプ35bのように、乳房Bの挿入深さがより深くなっていることを通知する構成を備えれば、術者は乳房Bを挿入した後、被検体Mが動いて乳房Bが位置ズレを起こしたことを迅速に知ることができる。また、術者は乳房Bの挿入深さを深くする目的でガントリ11と乳房Bとの位置関係を調整するときに、乳房Bの挿入深さが最大となっているかどうかを簡単に認識することができる。
【0058】
上述のようにセンサ5がガントリ11の開口部における乳房Bが挿入される側と反対側の一端部に設けられていれば乳房Bの挿入深さをより確実に検出することができる。
【0059】
そして、被検体Mに対してガントリ11を乳房Bの挿入方向と直交する方向に移動させて乳房Bとガントリ11との位置関係を調整する機構を備えるようにすれば、乳房Bの位置調整をより簡便にすることができる。
【0060】
電子放出断層撮影装置は、撮影に時間を要する。したがって、この様な装置における撮影のやり直しは被検体Mの負担が大きいので、撮影前に乳房Bの挿入を確実に行う必要がある。本発明を陽電子放出断層撮影装置に適用すれば、乳房Bを検出器リング12に確実に導入できるので、撮影は確実なものとなる。
【実施例2】
【0061】
続いて、本発明における別の態様について説明する。実施例におけるX線は、本発明の放射線に相当する。またFPDはフラット・パネル・ディテクタの略である。また、本発明のX線断層撮影装置は乳房検診用となっている。実施例2のX線断層撮影装置は、X線管から発したX線を乳房Bに透過させてイメージングする構成であり、座位の被検体Mを撮影するものである。
【0062】
<X線断層撮影装置の全体構成>
まず、実施例2に係るX線断層撮影装置29の全体構成について説明する。実施例2に係る放射線断層撮影装置は、図9に示すように被検体Mの乳房Bをz方向から挿入させる開口部を備えたガントリ11を有している。乳房Bがガントリ11の開口部に挿入される様子は実施例1の構成と同様である(図2〜図6参照)。ただし、X線断層撮影装置29は、座位の被検体Mを診断する装置であるので、乳房Bの挿入方向および赤外線の照射方向は、水平方向となる。
【0063】
ガントリ11の内部には、X線を照射するX線管33と、X線を検出するFPD34とが設けられている。X線管33から照射されたX線は、ガントリ11の開口部を横切るように通過して、FPD34に到達する。X線管33は、本発明の放射線源に相当し、FPD34は、本発明の放射線検出器に相当する。
【0064】
ガントリ11の開口部における乳房Bが挿入される側と反対側の一端部には、センサ5を支持する支持板5aが設けられている。センサ5は、この支持板5aに支持されている。センサ5は、リアルタイムに検出信号を出力することができる。センサ5の具体例としては、赤外線センサが採用できる。
【0065】
支柱25aは、鉛直方向に伸びており、ガントリ11を支持している。ガントリ移動機構23aは、ガントリ11を支柱25aに対し鉛直方向に移動させるものである。この鉛直方向は、ガントリ11に挿入される乳房Bの挿入方向と直交している。ガントリ移動制御部24aはガントリ移動機構23aを制御する目的で設けられている。ガントリ11を支柱25aに対して移動させると、支持板5aおよびセンサ5はガントリ11に追従して移動する。ガントリ移動機構23aは、本発明のガントリ移動手段に相当し、ガントリ移動制御部24aは、本発明のガントリ移動制御手段に相当する。
【0066】
X線管制御部6は、所定の管電流、管電圧、パルス幅でX線管33を制御する目的で設けられている。FPD34は、X線管33から発せられ、被検体Mを透過したX線を検出して検出信号を生成する。この検出信号は、画像生成部31に送出され、そこで被検体Mの投影像が写り込んだ透視画像P0が生成される。断層画像生成部32は、画像生成部31で生成された透視画像P0を基に、被検体Mを任意の断層面で裁断したときの断層画像P1を生成する。
【0067】
X線管33およびFPD34の回転について説明する。X線管33およびFPD34は、回転機構7により、乳房Bを挿入するガントリ11の開口部の伸びる方向に伸びた中心軸を中心に一体的に回転される。より具体的には、X線管33およびFPD34は、図10に示す様に互いの相対的な位置関係を保った状態で回転移動される。このとき、X線管33は、回転機構7によりX線管33とFPD34とを結ぶ線分上にある中心点を中心とする仮想円VCの軌跡を描きながら回転することになる。この仮想円VCと直交する方向(図10における紙面貫通方向:z方向)が、ガントリ11の開口部の延伸方向と一致する。回転制御部8は、回転機構7を制御する目的で設けられている。
【0068】
表示部36は、X線撮影により取得された断層画像P1を表示する目的で設けられている。操作卓35は、術者によるX線照射開始などの指示を入力させる目的で設けられている。また、主制御部41は、各制御部を統括的に制御する目的で設けられている。この主制御部41は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより各制御部6,8および各部31,32を実現している。また、上述の各部は、それらを担当する演算装置に分割されて実行されてもよい。記憶部37は、撮影に用いられるパラメータ、画像処理に伴って生成される中間画像等のX線断層撮影装置29の制御に関するパラメータの一切を記憶する。
【0069】
次に、図8を参照してX線断層撮影装置29の動作を説明する。実施例2のX線断層撮影装置29で乳房Bの検診を行うには、まず放射性薬剤が投与された被検体Mの乳房Bをガントリ11の開口部に挿入する(被検体載置ステップS1)。この際、術者が操作卓35を通じて乳房挿入開始の旨を入力しているので、距離表示部35a,ランプ35bは表示動作・点灯動作を開始していることになる(図4参照)。
【0070】
乳房Bの挿入が終了すると、術者は操作卓35を通じてガントリ11の移動を指示する。これによりガントリ11は被検体Mに対して鉛直方向に移動し、被検体Mに対するガントリ11の位置が調整される(被検体位置調整ステップS2)。術者は距離表示部35a,ランプ35bを確認しながらこの位置の調整を行う。術者が乳房Bをより深く開口部に挿入しようとして、ガントリ11を被検体Mに一方向に移動させ過ぎてしまうと、距離表示部35a,ランプ35bが乳房Bの挿入深さが浅くなっている旨を術者に通知する。術者は、この通知に従って、ガントリ11を逆方向に移動させることにより乳房Bの挿入深さを元の状態に戻すことができる。
【0071】
術者が操作卓35を通じて断層画像撮影の開始を指示すると、X線管制御部6は、記憶部37に記憶されている照射時間・管電流・管電圧に従い、X線を間欠的に照射する(撮影開始ステップS3)。その間に回転機構7は、X線管33およびFPD34を回転させる。FPD34は、X線管33が照射したX線のうち被検体Mを通過してきたX線を検出し、このときの検出信号を画像生成部31に送出する。
【0072】
画像生成部31は、FPD34から送出された検出信号を画像化して、X線の強さがマッピングされた透視画像P0を生成する。FPD34は、X線管33がX線を照射する度に検出信号を画像生成部31に送出するので、画像生成部31は、複数枚の透視画像P0を生成することになる。透視画像P0のそれぞれには、撮影方向の異なる被検体Mの乳房Bの像が写り込んでいる。
【0073】
透視画像P0は、断層画像生成部32に送出される。断層画像生成部32では、方向を変えながら撮影されることにより被検体Mの立体的な構造に関する情報を有している一連の透視画像P0を再構成してz方向を体軸とする被検体Mの乳房Bを輪切りにするような断層画像P1を生成する。断層画像P1が表示部36に表示されて実施例2におけるX線断層撮影装置29の動作は終了となる。
【0074】
上述のような装置では被検体Mに放射される放射線量を極力少なくしなければならない。したがって、この様な装置では被検体Mの安全性を考えれば、撮影をやり直すのは望ましいことではない。したがって、撮影時には乳房Bの挿入を確実に行う必要がある。本発明を上述の構成に適用すれば、乳房Bをガントリ11に確実に導入できるので、撮影は安全なものとなる。
【0075】
本発明は上述の構成に限られず、下記のような変形実施が可能である。
【0076】
(1)上述の実施例1は、支持台25を被検体Mに対して移動させる機構を備えていたが、本発明はこの構成に限られない。支持台25およびガントリ11を天板10に対して固定して、被検体Mの乳房Bの位置合わせは、被検体Mを天板10上で移動させることで実現するようにしてもよい。
【0077】
(2)上述の実施例においては、センサ5をガントリ11の開口の中央に設ける構成としていたが、本発明はこの構成限られない。図11に示すように、ガントリ11の開口部に複数のセンサ5を設け、距離表示部35aおよびランプ35bが複数のセンサ5が出力する検出信号のうち最低の距離を示す検出信号に基づいて動作するようにしてもよい。
【0078】
(3)上述の実施例1は、天板10に被検体Mを腹ばいにさせる放射線断層撮影装置であったが、本発明はこの構成に限られない。すなわち、図12に示すように座位の被検体Mを撮影するような構成としてもよい。
【0079】
(4)上述の構成においては、陽電子放出断層撮影装置について本発明を適用するようにしていたが、本発明はこの構成に限らない。陽電子放出断層撮影装置の代わりに、シングルフォトンECT装置であってもよい。また、本発明は平面検出器を有する陽電子放出断層撮影装置・シングルフォトンECT装置に適用してもよいし、核磁気共鳴CT装置に適用してもよい。
【0080】
(5)上述した実施例1において、検出器リング12は、O型のリング状であったがこれに代えてC型の円弧状としてもよい。
【符号の説明】
【0081】
5 センサ
11 ガントリ
12 検出器リング
23 支持台移動機構(ガントリ移動手段)
24 支持台移動制御部(ガントリ移動制御手段)
33 X線管(放射線源)
34 FPD(放射線検出器)
35a 距離表示部(深度通知手段)
35b ランプ(更新通知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の乳房を挿入する開口部を備えたガントリと、
前記ガントリの前記開口部に設けられた被検体の乳房の挿入深さを検出して検出信号を出力するセンサと、
前記センサの検出信号を基に乳房の挿入深さを通知する深度通知手段とを備えることを特徴とする乳房検診用放射線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の乳房検診用放射線撮影装置において、
前記センサはリアルタイムに前記深度通知手段に検出信号を送出し、
前記深度通知手段は、乳房の挿入深さをリルタイムに更新して通知することを特徴とする乳房検診用放射線撮影装置。
【請求項3】
請求項2に記載の乳房検診用放射線撮影装置において、
乳房を前記開口部に挿入する際に、前記センサの検出信号を基に乳房の挿入深さが浅くなったことを通知する更新通知手段を備えることを特徴とする乳房検診用放射線撮影装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の乳房検診用放射線撮影装置において、
前記センサは、前記ガントリの前記開口部における乳房が挿入される側と反対側の一端部に設けられていることを特徴とする乳房検診用放射線撮影装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の乳房検診用放射線撮影装置において、
被検体に対して前記ガントリを乳房の挿入方向と直交する方向に移動させるガントリ移動手段と、
前記ガントリ移動手段を制御するガントリ移動制御手段とを備えることを特徴とする乳房検診用放射線撮影装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の乳房検診用放射線撮影装置において、
前記ガントリの内部に放射線を検出する放射線検出器が弧状に配列された検出器リングを備え、
乳房に分布する放射性薬剤のイメージングを行うことを特徴とする乳房検診用放射線撮影装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の乳房検診用放射線撮影装置において、
前記ガントリの内部に放射線を照射する放射線源と、放射線を検出する放射線検出器とを備え、
前記放射線源から発した放射線を乳房に透過させてイメージングを行うことを特徴とする乳房検診用放射線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−22041(P2013−22041A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156331(P2011−156331)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】