説明

乳癌発現プロファイリング

【課題】本発明は、癌、例えば、乳癌を解析するための方法に関する。
【解決手段】本発明の方法は、表1に記載されるセリン/スレオニンキナーゼをコードする16個の遺伝子のうちの少なくとも1個、あるいは前記16個の遺伝子の異なる発現の検出を含む。また、本発明は、前記16個の遺伝子のうちの少なくとも1個を含むポリヌクレオチドライブラリーに関する。これにより、新規の用途の開発、特に乳癌の予後または診断の開発における使用、乳癌を有する患者の処置を管理するための使用が見出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表1に記載されるセリン/スレオニンキナーゼをコードする16個の遺伝子のうちの少なくとも1個、または少なくとも2個、または少なくとも3個、または少なくとも4個、または少なくとも5個、または少なくとも6個、または少なくとも7個、または少なくとも8個、または少なくとも9個、または少なくとも10個、または少なくとも11個、または少なくとも12個、または少なくとも13個、または少なくとも14個、または少なくとも15個、あるいは前記16個の遺伝子の発現差異の検出を含む、癌を解析するための方法に関する。
【0002】
本発明により、特に、癌の予後または診断の発展における多くの用途、あるいは癌を罹患している患者の処置を管理するための多くの用途が見出される。
【0003】
以下の詳細において、括弧[ ]の中の参考文献は添付の参考文献リストを指す。
【0004】
参考文献リスト中の本明細書に引用される全ての文献は、以下の文書の参照として援用される。
【背景技術】
【0005】
乳癌(BC)はその臨床転帰を予測することが難しく、処置を適切に合わせられない異種性の疾患である。BCは、臨床時に、組織学的レベル、細胞レベルおよび分子レベルを規定され得る。全てのそれらの規定を一体化しようとする試みにより、疾患およびその管理に対する我々の理解が向上する(非特許文献1[1])。DNAマイクロアレイを用いる初期の研究により、5つの主要なBC分子サブタイプ(luminal AおよびB、basal、ERBB2−過剰発現およびnormal−like)が同定されている(非特許文献2[2];非特許文献3[3];非特許文献4[4];非特許文献5[5])。約500個の遺伝子の内因性セットの特異的発現によって規定されるこれらのサブタイプは、異なる組織学的タイプおよび異なる予後に可変的に関連する。ホルモン受容体を発現するluminal AのBCは、全体的に良好な予後を有し、ホルモン療法によって処置できる。ERBB2チロシンキナーゼ受容体を過剰発現する、ERBB2過剰発現のBCは不良な予後を有し、トラスツズマブまたはラパチニブを用いる標的療法によって処置できる(非特許文献6[6];非特許文献7[7])。basalおよびluminal Bの腫瘍の予後は不良であるが、他のサブタイプに対する特異的療法が利用できない。臨床転帰が各サブタイプ内で変化する場合があるので、この生物学的に関連する分類は不完全なままであり、認識されていないサブグループの存在が示唆される。
【0006】
開発がいくつかの方向でなされ得る。まず、luminalAのBCなどの良好な予後の腫瘍の中で、再発し、転移するものを同定する必要がある。第2に、不良な予後のBCおよび関連する標的遺伝子の十分な定義付けにより、新規の薬物の開発が可能となり、次いで、それらの癌の十分な管理が可能となる。
【0007】
ヒトキノームは、全てのヒトの遺伝子のうちの約1.7%を構成し(非特許文献8[8])、遺伝子の重要な部分(その変形が腫瘍形成の原因となる)を示す(非特許文献9[9])。プロテインキナーゼは、ヒトの細胞における大部分のシグナル伝達経路を媒介し、大部分の主要な細胞プロセスにおいて役割を果たす。一部のキナーゼは、癌において活性化されるか、または過剰発現され、成功治療についての標的となる(非特許文献10[10])。継続中の体系的なシークエンシングプロジェクト(非特許文献11[11])と並行して、癌におけるキナーゼの発現差異の解析により、新規の発癌活性化経路を同定できる。このように、キナーゼは、BCの2つの重要なサブタイプの発現プロファイリングについての魅力的な点を示す。
【0008】
従って、luminalAのBCなどのいくつかのサブタイプ内で進行を予測することが難しいままであり、処置を適切に合わせられない。新規の治療標的の予後の分類および同定の改善が必要とされる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Charafe−Jauffret E,Ginestier C,Monville Fら,How to best classify breast cancer:conventional and novel classifications(review).Int J Oncol 2005,27,1307−13
【非特許文献2】Perou CM,Sorlie T,Eisen MBら,Molecular portraits of human breast tumours.Nature 2000,406,747−52
【非特許文献3】Sorlie T,Perou CM,Tibshirani Rら,Gene expression patterns of breast carcinomas distinguish tumor subclasses with clinical implications.Proc Natl Acad Sci USA 2001,98,10869−74
【非特許文献4】Sorlie T,Tibshirani R,Parker Jら,Repeated observation of breast tumor subtypes in independent gene expression data sets.Proc Natl Acad Sci USA 2003,100,8418−23
【非特許文献5】Bertucci F,Finetti P,Rougemont Jら,Gene expression profiling identifies molecular subtypes of inflammatory breast cancer.Cancer Res 2005,65,2170−8
【非特許文献6】Geyer CE,Forster J,Lindquist Dら,Lapatinib plus capecitabine for HER2−positive advanced breast cancer.N Engl J Med 2006,355,2733−43
【非特許文献7】Hudis CA.Trastuzumab−mechanism of action and use in clinical practice.N Engl J Med,2007,357,39−51
【非特許文献8】Manning G,Whyte DB,Martinez R,Hunter T,Sudarsanam S.The protein kinase complement of the human genome.Science 2002,298,1912−34
【非特許文献9】Futreal PA,Coin L,Marshall Mら,A census of human cancer genes.Nat Rev Cancer 2004,4,177−83
【非特許文献10】Krause DS,Van Etten RA.Tyrosine kinases as targets for cancer therapy.N Engl J Med 2005,353,172−87
【非特許文献11】Stephens P,Edkins S,Davies Hら,A screen of the complete protein kinase gene family identifies diverse patterns of somatic mutations in human breast cancer.Nat Genet 2005,37,590−2
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発明者らは、ここで、予想外にも、癌のサブグループ、例えば乳癌の2つのサブグループ、より具体的には、luminal Aの乳癌:良好な予後のluminal Aa、および不良な予後のluminal Abを識別することを可能にする、有糸分裂に関与する特定のセリン/スレオニンキナーゼをコードする遺伝子の発現を完全に発見した。
【0011】
驚くべきことに、本発明者らはまた、この遺伝子セットが、luminal Aの腫瘍、例えば癌と、basalを識別するのにも十分であることを見出した。
【0012】
従って、第1の態様において、本発明は、癌、有利には乳癌を解析する方法に関し、表1に記載されるセリン/スレオニンキナーゼをコードする16個の遺伝子のうちの少なくとも1個の発現差異を検出することを含む。
【0013】
言い換えれば、本発明は、癌、有利には乳癌を解析するための方法に関し、表1に記載されるセリン/スレオニンキナーゼをコードする16個の遺伝子のうちの少なくとも1個、または少なくとも2個、または少なくとも3個、または少なくとも4個、または少なくとも5個、または少なくとも6個、または少なくとも7個、または少なくとも8個、または少なくとも9個、または少なくとも10個、または少なくとも11個、または少なくとも12個、または少なくとも13個、または少なくとも14個、または少なくとも15個、あるいは前記16個の遺伝子の発現差異の検出を含む。
【0014】
表1は、その遺伝子シンボルとともに各遺伝子の名前、キナーゼ活性、および各遺伝子について、その遺伝子を規定する関連配列(識別番号:SEQ ID NO(配列番号))を示す。本発明は、異なる遺伝子によるヌクレオチド配列を規定するが、遺伝子またはそのフラグメントの名前によってポリヌクレオチド配列の規定も含み得る。
【0015】
【表1−1】

【0016】
【表1−2】

【0017】
特定の実施形態において、本発明は乳癌を解析するための方法に関し、表1に記載されるセリン/スレオニンキナーゼをコードする16個の遺伝子の発現差異の検出を含む。
【0018】
言い換えれば、本発明の方法は、乳癌の組織試料における遺伝子の過剰発現または過少発現の解析に基づいた乳癌を解析するための方法であり、前記解析は、上記の16個の遺伝子のうちの少なくとも1つの検出を含む。
【0019】
本発明の意味において、「遺伝子」とは、例えばデオキシリボ核酸(DNA)、および適切な場合、リボ核酸(RNA)などの単離されたポリヌクレオチド配列を意味する。遺伝子の配列は、配列番号17−32の配列、または任意の相補的配列であってもよい。この配列は、本発明による解析の方法を実施するのに適切である遺伝子の完全な配列、または遺伝子のサブ配列であってもよい。当業者は、慣例の実験を適用することにより、遺伝子の位置および長さを選択することができる。この用語はまた、等価物として、ヌクレオチド類似体から作製されるRNAまたはDNAの類似体、ならびに記載される実施形態に適用される場合、一本鎖(センスまたはアンチセンス)および二本鎖ポリヌクレオチドも含むと理解されるべきである。EST、染色体、cDNA、mRNA、およびrRNAが、核酸と称され得る分子の代表的な例である。DNAは前記核酸試料から得ることができ、RNAは前記DNAの転写によって得ることができる。さらに、mRNAは前記核酸試料から単離でき、cDNAは前記mRNAの逆転写によって得ることができる。
【0020】
本発明の意味において、「発現差異」とは、正常な組織、すなわち癌を含まない乳房組織における遺伝子の発現レベルと、解析される試料における同じ遺伝子の発現レベルとのの差異を意味する。
【0021】
従って、遺伝子の発現差異の検出は、生物学的試料でのポリヌクレオチド配列の過剰発現または過少発現の解析である。有利には、この解析は、上記の少なくとも1つ以上の遺伝子の過剰発現および過少発現の検出を含む。
【0022】
本発明の意味において、「過剰発現」とは、基準試料、例えば乳癌を含まない乳房組織の試料のレベルより高い発現レベルを意味する。
【0023】
本発明の意味において、「過少発現」とは、基準試料、例えば乳癌を含まない乳房組織の試料のレベルより低い発現レベルを意味する。
【0024】
過剰発現または過少発現は、従来技術の任意の公知の方法によって測定できる。これは、少なくとも1つの基準に関連する、本発明によるポリヌクレオチド配列の発現レベルの差異の検出を含んでもよい。前記基準は、例えば、同じ患者の試料由来またはluminalの乳癌を罹患している患者のプール由来またはFinettiら(Finetti P.,Cervera N,Charafe−Jauffret E.,Chabannon C.,Charpin C,Chaffanet M.,Jacquemier J.,Viens P.,Birnbaum D.,Bertucci F.Sixteen kinase gene expression identifies luminal breast cancers with poor prognosis.Cancer Res.2008,68,(3),1−10[27])に記載される試料のプール由来のポリヌクレオチド配列を含むか、あるいは過剰発現または過少発現であることがすでに知られ得る基準配列の中から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。前記基準の発現レベルは、基準ポリヌクレオチド配列の平均値であっても、絶対値であってもよい。これらの値は、本発明のポリヌクレオチドの発現に対する差異を強調させるために処理されてもよい。
【0025】
ポリヌクレオチド配列の過剰発現または過少発現の解析は、細胞株、異種移植片、ヒト組織、好ましくは乳房組織などを含む、任意の哺乳動物細胞由来の生物学的物質などの試料で実施されてもよい。本発明による方法は、患者または動物由来の試料で実施されてもよい。
【0026】
有利には、少なくとも1つの配列の過剰発現は、他の配列の過少発現と同時に検出される。「同時に」とは、生物学的または機能的に関連した期間で、あるいはその期間内で同時に起こることを意味し、その期間の間、配列の過剰発現に続いて、別の配列の過少発現が起こってもよく、またはその逆でもよい。なぜなら、例えば、両方の発現が直接または間接的に関連しているからである。
【0027】
本発明の種々の実施形態による配列の数は、1個から本明細書に記載される配列の総数の範囲で変化してもよく、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16個の配列である。
【0028】
本発明の特定の実施形態において、遺伝子の発現差異は、basalとluminal Aの乳癌とを識別する。
【0029】
本発明の意味において、「basalの乳癌」とは、Basal表現型またはbasal様乳癌を意味し、参照として本明細書に援用されるSorlieら、[3]に規定される遺伝子リストに基づいた特異的分子プロファイルによって特徴付けられる。この特異的分子プロファイルは、ケラチン5および17、ならびに脂肪酸結合タンパク質7の高発現であってもよい。
【0030】
本発明の意味において、「luminal Aの乳癌」とは、参照として本明細書に援用されるSorlieら、[3]に規定される特定の遺伝子リスト上の分子プロファイルによって特徴付けられる乳癌を意味する。この特異的分子プロファイルは、ERα遺伝子GATA結合タンパク質3、X−box結合タンパク質1、トレフォイル因子3、肝細胞核因子3およびエストロゲン調節LIV−1の高発現であってもよい。
【0031】
有利には、遺伝子の発現差異は、良好または不良な予後のluminal A腫瘍のサブグループを識別する。
【0032】
本発明の意味において、「サブグループ」とは、良好な予後のluminal Aの乳癌を罹患している患者のグループおよび不良な予後のluminal Aの乳癌を罹患している患者のグループを意味する。
【0033】
本発明の意味において、「良好な予後」とは、他のluminal Aの腫瘍(Abの症例)と比較して、低い有糸分裂活性によって特徴付けられるluminal Aの腫瘍(Aaの症例)を意味する。良好な予後はまた、以下に定義され、Finettiら([27])に従うスコア付け、すなわち、ネガティブキナーゼスコアを指す場合もある。良好な予後はまた、luminal Aの乳癌を罹患している患者が、癌の初期診断の5年以内に遠位の転移を有さない(すなわち、無再発生存率(RFS)が5年よりも優れている)と予想されることを示す場合もある。
【0034】
本発明の意味において、「低い有糸分裂活性」とは、0以下のキナーゼスコア値([27])、すなわちネガティブキナーゼスコアを意味する。
【0035】
本発明の意味において、「不良な予後」とは、他のluminal Aの腫瘍(Aaの症例)と比較して、高い有糸分裂活性によって特徴付けられるluminal Aの腫瘍(Abの症例)を意味する。不良な予後はまた、以下に定義され、Finettiら([27])に従うスコア付け、すなわちポジティブキナーゼスコアを指す場合もある。不良な予後はまた、luminal Aの乳癌を罹患している患者が、癌の初期診断の5年以内にいくらかの遠位の転移を有する(すなわち、無再発生存率(RFS)が5年よりも劣っている)と予想されることを示す場合もある。
【0036】
本発明の意味において、「高い有糸分裂活性」とは、0より高いキナーゼスコア値([27])、すなわちポジティブキナーゼスコアを意味する。
【0037】
本発明のこの実施形態において、不良な予後のluminal Aの腫瘍のサブグループは、他のluminal Aの腫瘍と比較して、より高い有糸分裂活性を示す。
【0038】
有利には、この方法は、AURKAおよび/またはAURKBおよび/またはPLK遺伝子の発現レベルまたは過剰発現レベルの測定を含んでもよい。これらの遺伝子の過剰発現は、不良な臨床転帰と関連する場合がある。
【0039】
この方法は、AURKA遺伝子またはAURKB遺伝子あるいはPLK遺伝子の発現レベルの測定を含んでもよい。
【0040】
本発明の方法は、AURKAおよびPLK遺伝子の測定、あるいはAURKBおよびPLK遺伝子の発現レベルの測定、あるいはAURKAおよびAURKB遺伝子の発現レベルの測定、あるいはAURKAおよびAURKBおよびPLK遺伝子の発現レベルの測定を含んでもよい。
【0041】
本発明の特定の実施形態において、検出は、組織試料由来の核酸で実施される。
【0042】
本発明の意味において、「組織試料」とは、組織の試料、好ましくは乳房組織または細胞を意味する。その組織試料が乳房組織である場合、それは侵襲性腺癌由来であってもよい。
【0043】
本発明の別の実施形態において、検出は腫瘍細胞株由来の核酸で実施される。
【0044】
本発明の意味において、「腫瘍細胞株」とは、患者から得られた癌細胞由来の細胞株を意味する。
【0045】
本発明の特定の実施形態において、本明細書に開示される遺伝子の発現レベルの測定は、当業者に周知の種々の方法、例えば、5’ヌクレアーゼTaqMan(登録商標)(Roche)、Scorpions(登録商標)(DxS Genotyping)(Whitcombe,D.,Theaker J.,Guy,S.P.,Brown,T.,Little,S.(1999)−Detection of PCR products using self−probing amplicons and flourescence.Nature Biotech 17,804−807[35])またはMolecular Beacons(商標)(Abravaya K,Huff J,Marshall R,Merchant B,Mullen C,Schneider GおよびRobinson J(2003)Molecular beacons as diagnostic tools:technology and applications.Clin Chem Lab Med 41,468−474[36])を含む、リアルタイムPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)により実施されてもよい。
【0046】
本発明の別の実施形態において、検出はDNAマイクロアレイで実施される。
【0047】
本発明の意味において、「DNAマイクロアレイ」とは、DNAオリゴヌクレオチドの配列された連続した数千の微細なスポットを意味し、各々は本発明の遺伝子の中から選択されるピコモルの特定のDNA配列を含む。このDNAオリゴヌクレオチドは、高ストリンジェンシー条件下でcDNAまたはcRNA試料(標的と呼ばれる)をハイブリダイズするためのプローブとして使用される。プローブ−標的ハイブリダイゼーションは通常、フルオロフォア標識された標的の蛍光ベースの検出により、検出および定量されて、標的における核酸配列の相対存在度を測定する。
【0048】
標準的なマイクロアレイにおいて、プローブは、共有結合によって固体表面、(エポキシシラン、アミノシラン、リジン、ポリアクリルアミドまたはその他を介して)化学マトリクスに結合される。
【0049】
上記のセリン/スレオニンキナーゼをコードする16個の遺伝子のうちの1つ以上に対応するDNAまたはRNA試料をハイブリダイズするために使用され得るcDNAオリゴヌクレオチドプローブ(「プローブセット」とも呼ばれる)は、表2に記載される。
【0050】
【表2−1】

【0051】
【表2−2】

【0052】
セリン/スレオニンキナーゼをコードする16個の遺伝子のうちの1つ以上に対応するDNAまたはRNA試料をハイブリダイズするために使用され得るcDNAオリゴヌクレオチドプローブセットは、関係する遺伝子の完全な検出を可能にする、表2に規定される対応するセットのポリヌクレオチド配列の3’末端と5’末端との間の任意の配列であってもよい。
【0053】
上記の決定した遺伝子の発現を検出するために、対応するセットの少なくとも1つのプローブセットの配列が使用されてもよい。
【0054】
本発明の意味において、「遺伝子のcDNAサブ配列」とは、ストリンジェントな条件下で特定のハイブリダイゼーションを可能にする遺伝子のcDNA全配列の核酸の配列を意味し、例としては、10個より多いヌクレオチド、好ましくは15個より多いヌクレオチド、最も好ましくは25個より多いヌクレオチド、例としては、50個より多いヌクレオチドまたは100個より多いヌクレオチドである。
【0055】
言い換えれば、本発明の方法は、表2に規定されるセットにおいて選択される少なくとも1つ、または少なくとも2つもしくは3つのポリヌクレオチド配列あるいはそれらの相補体の検出を含んでもよい。
【0056】
本発明の別の態様は、表1に記載されるセリン/スレオニンキナーゼをコードする16個の遺伝子のうちの少なくとも1つを含むか、またはそれらに対応する癌を分子的に特徴付けるポリヌクレオチドライブラリーを提供することである。
【0057】
本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、表1に記載されるセリン/スレオニンキナーゼをコードする16個の遺伝子の対応する少なくとも1個の遺伝子の検出を可能にする少なくとも1個のポリヌクレオチド配列を含んでもよいか、またはそれらからなってもよい。
【0058】
言い換えれば、本発明の態様は、表1に記載されるセリン/スレオニンキナーゼをコードする16個の遺伝子のうちの少なくとも1個、または少なくとも2個、または少なくとも3個、または少なくとも4個、または少なくとも5個、または少なくとも6個、または少なくとも7個、または少なくとも8個、または少なくとも9個、または少なくとも10個、または少なくとも11個、または少なくとも12個、または少なくとも13個、または少なくとも14個、または少なくとも15個、あるいは前記16個の遺伝子の検出を可能にするポリヌクレオチド配列を含むか、またはそれらに対応する癌を分子的に特徴付けるポリヌクレオチドライブラリーに関する。
【0059】
本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、表1に記載されるセリン/スレオニンキナーゼをコードする16個の遺伝子のうちの対応する少なくとも1個の遺伝子の検出を可能にする表2の少なくとも1つのセットにおいて選択される少なくとも1つ、または少なくとも2つもしくは3つのポリヌクレオチド配列あるいはそれらの相補体を含んでもよいか、またはそれらからなってもよい。本発明の特定の態様において、本発明は、表1に記載されるセリン/スレオニンキナーゼをコードする16個の遺伝子を含むか、またはそれらに対応する癌を分子的に特徴付けるポリヌクレオチドライブラリーに関する。この実施形態において、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、表1に記載されるセリン/スレオニンキナーゼをコードする16個の遺伝子の検出を可能にするポリヌクレオチド配列を含んでもよいか、またはそれらからなってもよい。
【0060】
例えば、この場合において、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、表2の各々のセットにおいて選択される少なくとも1つ、または少なくとも2つもしくは3つのポリヌクレオチド配列、あるいはそれらの相補体を含んでもよいか、またはそれらからなってもよい。
【0061】
本発明の意味において、「対応する」とは、表1に記載されるセリン/スレオニンキナーゼをコードする16個の遺伝子のうちの少なくとも1個、または少なくとも2個、または少なくとも3個、または少なくとも4個、または少なくとも5個、または少なくとも6個、または少なくとも7個、または少なくとも8個、または少なくとも9個、または少なくとも10個、または少なくとも11個、または少なくとも12個、または少なくとも13個、または少なくとも14個、または少なくとも15個、あるいは前記16個の遺伝子からなるポリヌクレオチドライブラリーを意味する。
【0062】
本発明の特定の実施形態において、ライブラリーは固体支持体上に固定される。
【0063】
そのような固体支持体は、ナイロン膜、ニトロセルロース膜、スライドガラス、ガラスビーズ、ガラス支持体またはシリコンチップ上の膜、プラスチック支持体のうちの少なくとも1つからなる群より選択されてもよい。
【0064】
本発明の別の態様は、乳癌の予後または診断の方法あるいは乳癌を有する患者の処置を管理するための方法を提供することであり、その方法は、患者由来の核酸で上記の乳癌を解析する方法を実施することを含む。
【0065】
このような方法は、乳癌を予後または診断するために、あるいは乳癌を有する患者の処置を管理するために、上記の乳癌を解析するための方法を使用することであり、患者由来の核酸で上記の乳癌を解析する方法を実施することを含む。
【0066】
本発明の別の態様は、乳癌の疾患に関連する遺伝子の発現差異を解析するための方法を提供することであり、
a)患者からポリヌクレオチド試料を得る工程と、
b)工程(a)において得た前記ポリヌクレオチド試料と、上記のポリヌクレオチドライブラリーとを反応させる工程と、
c)工程(b)の反応産物を検出する工程と、を含む。
【0067】
言い換えれば、本発明は、乳癌の疾患に関連する遺伝子の発現差異を解析するための方法を提供し、
a)患者由来のポリヌクレオチド試料と、上記のポリヌクレオチドライブラリーとを反応させる工程と、
b)工程(b)の反応産物を検出する工程と、を含む。
【0068】
乳癌と「関連する」遺伝子の発現差異とは、乳癌によって引き起こされるか、または乳癌の一因となるか、または乳癌の原因となる核酸の過少発現または過剰発現を指す。
【0069】
本発明の意味において、「ポリヌクレオチド試料とポリヌクレオチドライブラリーとを反応させる」とは、遺伝子のcDNAまたはmRNAの全配列、あるいはcDNAまたはmRNAのサブ配列、あるいはライブラリーのポリヌクレオチド配列を含む遺伝子のプライマーのハイブリダイゼーションを可能にする条件において試料の核酸とポリヌクレオチド配列とを接触させることを意味する。
【0070】
本発明の意味において、「反応産物」とは、患者由来のポリヌクレオチド試料と上記のポリヌクレオチドライブラリーとのハイブリダイゼーションの結果として生じる産物を意味する。
【0071】
工程(b)の反応産物の検出は定量的であってもよく、転写発現レベルに関する。
【0072】
本発明の特定の実施形態において、乳癌の疾患に関連する遺伝子の発現差異を解析するための方法はさらに、
a)基準ポリヌクレオチド試料を得る工程と、
b)例えば、ポリヌクレオチド試料と、上記のポリヌクレオチドライブラリーとをハイブリダイズすることによって、前記基準試料と、前記ポリヌクレオチドライブラリーとを反応させる工程と、
c)コントロール試料の反応産物を検出する工程と、
d)前記ポリヌクレオチド試料の反応産物の量と、前記コントロール試料の反応産物の量とを比較する工程を含む。
【0073】
本発明の意味において、「基準ポリヌクレオチド試料」とは、乳房由来の細胞、組織試料または生検由来の1つ以上の生物学的試料を意味する。前記基準は、試験されるもの以外の同じ雌の哺乳動物から得てもよいか、または好ましくは同じ種由来の別の雌の哺乳動物から、または好ましくは同じ種由来の雌の哺乳動物の集団から得てもよく、それらは試験する雌の哺乳動物もしくは被検体と同じであっても、異なってもよい。前記コントロールは、乳房由来の細胞、細胞株、組織試料または生検由来の生物学的試料に対応してもよい。
【0074】
前記ポリヌクレオチド試料の反応産物の量と、前記基準試料の反応産物の量とを比較する工程d)は、当該分野において周知の任意の方法によって実施されてもよい。
【0075】
例えば、その方法は、以下の工程
a)例えばManningら[8]による全てのキナーゼファミリーを含むと規定される遺伝子リストに従うキノームに関連するポリヌクレオチドライブラリーに基づいた乳癌試料(例えば、50個、100個またはそれ以上、例えば138個の乳癌試料)から分子プロファイルを比較する工程と、
b)遺伝子発現が、luminal Aの乳癌の間で異なって観測された場合、Finettiら[27]に記載される教師なしQuality Thresholdクラスター解析によって特定のポリヌクレオチドクラスター(例えば、5、10または16個のキナーゼ遺伝子を含む)を同定する工程と、
c)luminal Aの乳癌の分類を評価するために、正規化パラメータと組み合わせてキナーゼ遺伝子の平均を用いてスコアを計算する工程と、を含んでもよい。
【0076】
「キノーム」とは、特定の細胞または組織において発現されるか、あるいは生物のゲノムに存在するキナーゼタンパク質の集合体を意味する。
【0077】
本発明の別の態様は、乳癌を罹患している患者、例えば雌の患者を、無再発生存率(RFS)が5年より優れているluminal Aの乳癌(luminal Aaの乳癌)を有するか、または無再発生存率が5年より劣っているluminal Aの乳癌(luminal Abの乳癌)を有すると分類するための方法であって、以下の工程
a)前記患者の試料の、表1に記載される16個のキナーゼのうちの少なくとも1個、または少なくとも2個、または少なくとも3個、または少なくとも4個、または少なくとも5個、または少なくとも6個、または少なくとも7個、または少なくとも8個、または少なくとも9個、または少なくとも10個、または少なくとも11個、または少なくとも12個、または少なくとも13個、または少なくとも14個、または少なくとも15個、あるいは前記16個のキナーゼあるいはそれらの発現産物の発現に基づいてキナーゼスコア(KS)を計算して、サブグループのluminal Aaとluminal Abとを識別する工程と、
b)キナーゼスコアがネガティブな場合、前記患者がluminal Aaの乳癌を有すると分類するか、あるいはキナーゼスコアがポジティブな場合、前記患者がluminal Abを有すると分類する工程と、を含む。
【0078】
本発明の意味において、「キナーゼスコア(KS)」とは、16個のキナーゼ遺伝子の発現レベルに基づくスコアを意味する。それは、以下
【数1】

のように定義した。式中、AおよびBは正規化パラメータを表し、これはKSを異なるデータセット間で比較できるようにし、nは利用可能なキナーゼ遺伝子(7個〜16個)の数であり、xiは腫瘍iの対数遺伝子発現レベルである。カットオフ値0を用いて、各腫瘍を、低スコア(KS<0、すなわち、16個のキナーゼ遺伝子の全体の低い発現)または高スコア(KS>0、すなわち、16個のキナーゼ遺伝子の全体の強い発現)に割り当てた。本発明において、利用可能なキナーゼ遺伝子の数、すなわちnは1個〜16個である。
【0079】
本発明の方法は、luminal Aを罹患している患者の臨床転帰の予測を、それらの患者をluminal Aaまたはluminal Abの患者に分類することによって可能にする。
【0080】
本発明の別の態様は、不良な予後のluminal Aの症例を処置するための分子をスクリーニングするための方法を提供することであり、表1に記載される16個のキナーゼまたはそれらの発現物のうちの少なくとも1つに対する前記分子の作用の解析を含む。
【0081】
言い換えれば、本発明は、不良な予後のluminal Aの症例を処置するための分子をスクリーニングするための方法に関し、表1に記載される16個のキナーゼのうちの少なくとも1個、または少なくとも2個、または少なくとも3個、または少なくとも4個、または少なくとも5個、または少なくとも6個、または少なくとも7個、または少なくとも8個、または少なくとも9個、または少なくとも10個、または少なくとも11個、または少なくとも12個、または少なくとも13個、または少なくとも14個、または少なくとも15個、あるいは前記16個のキナーゼあるいはそれらの発現産物に対する前記分子の作用の解析を含む。
【0082】
本発明の特定の態様において、本発明は、不良な予後のluminal Aの症例を処置するための分子をスクリーニングするための方法に関し、表1に記載される16個のキナーゼまたはそれらの発現産物のうちの少なくとも1個、または少なくとも2個、または少なくとも3個、またはそれ以上、例えば16個全てに対する前記分子の作用の解析を含む。
【0083】
本発明の意味において、「前記分子の作用」とは、患者の生存、または患者のRFS、腫瘍のサイズの減少、またはキナーゼの発現の減少に対する分子の陽性の効果を意味する。
【0084】
本発明の別の態様は、本発明の方法、すなわち乳癌を解析するための方法、乳癌に関連する遺伝子の発現差異を解析するための方法、または不良な予後のluminal Aの症例を処置するための分子をスクリーニングするための方法を実施するための上記のポリヌクレオチドライブラリーを含むキットを提供することである。
【0085】
本発明のキットは、ポリヌクレオチド配列のライブラリーおよびコントロール試料のセットを含んでもよい。そのキットはまた、プレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーション、洗浄工程およびハイブリダイゼーション検出を実施するのに必要な試験試薬を含んでもよい。
【0086】
本発明の別の態様は、乳癌を有する患者を処置するための方法である。この方法は、i)前記患者由来の試料で本発明による遺伝子の発現差異プロファイルを解析する方法を実施する工程と、ii)前記方法で得た遺伝子の発現差異プロファイルの解析に基づいてこの患者のための処置を決定する工程とを含む。「処置すること」とは、状態または疾患の少なくとも1つの症状を処置すること、および改善することを含む。
【0087】
本発明の別の態様は、癌と診断された患者についての臨床転帰を予測するための方法であり、患者から得た癌組織において、表1に記載される16個の遺伝子のうちの少なくとも1個、または少なくとも2個、または少なくとも3個、または少なくとも4個、または少なくとも5個、または少なくとも6個、または少なくとも7個、または少なくとも8個、または少なくとも9個、または少なくとも10個、または少なくとも11個、または少なくとも12個、または少なくとも13個、または少なくとも14個、または少なくとも15個、あるいは表1の16個の遺伝子の全て、あるいはそれらの発現産物の発現レベルを測定して、基準遺伝子に対して正規化し、基準の癌組織セットに見出される量と比較することを含み、ここで、遺伝子群の過剰発現が不良な臨床転帰を予測する。
【0088】
本発明の意味において、「臨床転帰」とは、生存、部分的な寛解、完全寛解、疾患の進行する時間、または疾患の再発を意味する。「臨床転帰」とはまた、luminal Aの乳癌のluminal Aaまたはluminal Abの乳癌への進行を意味する場合もある。
【0089】
不良な臨床転帰は、無再発生存率(RFS)の観点から測定されてもよい。不良な臨床転帰は、luminal Aの乳癌に罹患している患者が、癌の初期診断の5年以内に一部の遠位の転移を有すると予想されることを示してもよい。
【0090】
この方法は、乳癌、または結腸癌、または肺癌、または前立腺癌、または肝細胞癌、または胃癌、または膵癌、または子宮頸癌、または卵巣癌、または肝臓癌、または膀胱癌、または尿路の癌、または甲状腺癌、または腎臓癌、または癌腫、または黒色腫、または脳腫瘍と診断された患者の臨床転帰を予想するのに使用されてもよい。
【0091】
好ましくは、本発明の全ての方法は、上記の癌に適用されてもよい。
【0092】
特定の実施形態において、その方法は、乳癌と診断された患者の臨床転帰を予測するのに使用されてもよい。
【0093】
有利には、その方法は、AURKAおよび/またはAURKBおよび/またはPLK遺伝子の発現レベルまたは過剰発現レベルの測定を含んでもよい。これらの遺伝子の過剰発現は、不良な臨床転帰と関連してもよい。
【0094】
その方法は、AURKA遺伝子、またはAURKB遺伝子、またはPLK遺伝子の発現レベルの測定を含んでもよい。
【0095】
本発明の方法は、AURKAおよびPLK遺伝子の測定、またはAURKBおよびPLK遺伝子の発現レベルの測定、またはAURKAおよびAURKB遺伝子の発現レベルの測定、またはAURKAおよびAURKBおよびPLK遺伝子の発現レベルの測定を含んでもよい。
【0096】
有利には、遺伝子の発現レベルは、凍結または新鮮な組織試料から得たRNAを用いて測定されてもよい。
【0097】
発現レベルは、逆相ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)により測定されてもよい。
【0098】
本発明の別の目的は、癌患者における処置後の癌の再発の可能性を予測する方法であり、患者から得た癌組織において、表1に記載される16個の遺伝子のうちの少なくとも1個、または少なくとも2個、または少なくとも3個、または少なくとも4個、または少なくとも5個、または少なくとも6個、または少なくとも7個、または少なくとも8個、または少なくとも9個、または少なくとも10個、または少なくとも11個、または少なくとも12個、または少なくとも13個、または少なくとも14個、または少なくとも15個、あるいは表1の16個の遺伝子の全て、あるいはそれらの発現産物の発現レベルを測定し、コントロール遺伝子に対して正規化し、基準の癌組織セットに見出される量と比較することを含み、ここで、遺伝子群の過剰発現は処置後の再発の危険性の増加を示す。
【0099】
本発明の方法によって解析される癌は、乳癌、または結腸癌、または肺癌、または前立腺癌、または肝細胞癌、または胃癌、または膵癌、または子宮頸癌、または卵巣癌、または肝臓癌、または膀胱癌、または尿路の癌、または甲状腺癌、または腎臓癌、または癌腫、または黒色腫、または脳腫瘍であってもよい。
【0100】
有利には、癌は乳癌であり得る。
【0101】
発現レベルは、腫瘍の任意の外科的切除前に測定されてもよいか、または腫瘍の外科的切除後、すなわち癌の除去後に測定されてもよい。
【0102】
発現レベルは、新鮮な試料または凍結試料から得たRNAを用いて測定されてもよい。
【0103】
発現レベルは、逆相ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によって測定されてもよい。
【0104】
癌の再発の可能性を予測する方法は、1つ以上のキナーゼ阻害薬物、例えばセリンおよび/またはスレオニンキナーゼ阻害薬物、例えば、Carvajal D.,Tse Archie,Schwartz G.Aueora kinase:new targets for cancer therapy.Clin.Cancer Res 2006;12(23)([33])およびStrebhardt K.,Ullrich A.Targeting polo−like kinase 1 for cancer therapy.Nature 2006,Vol.6,321−330([34])(この内容は本明細書に参照として援用される)に記載される以下の薬物:MK0457、PHA−739358、MLN8054、AZD1152、ON01910、BI2536、フラボピリドール、USN−01、ZM447439(AstraZeneca)、MK0457(Merck)、AZD1152(AstraZeneca)、PHA−680632、MLN8054(Millenium Pharmaceutical)、PHA739358(Nerviano Sciences)、スキトネミン、BI2536、ON01910での癌の処置後であってもよい。
【0105】
本発明の別の目的は、本発明の方法を実施するのに適切な(1)抽出緩衝液/試薬およびプロトコル、(2)逆転写緩衝液/試薬およびプロトコル、ならびに(3)定量的PCR緩衝液/試薬およびプロトコルのうちの1つ以上を含むキットである。
【0106】
有利には、そのキットはデータ検索および解析ソフトウェアを含んでもよい。
【0107】
有利には、そのキットは予め設計されたプライマーを含んでもよい。
【0108】
有利には、そのキットは予め設計されたPCRプローブおよびプライマーを含んでもよい。
【0109】
本発明の別の目的は、例えば、インビトロにおいて、癌を有する被験体における所定の処置様式の治療的成功を予測するための方法であり、
(i)表1に記載されるセリン/スレオニンキナーゼをコードする16個の遺伝子のうちの少なくとも1個、または少なくとも2個、または少なくとも3個、または少なくとも4個、または少なくとも5個、または少なくとも6個、または少なくとも7個、または少なくとも8個、または少なくとも9個、または少なくとも10個、または少なくとも11個、または少なくとも12個、または少なくとも13個、または少なくとも14個、または少なくとも15個、あるいは前記16個の遺伝子の発現レベルのパターンを測定する工程と、
(ii)(i)において測定される発現レベルのパターンと、1つまたはいくつかの発現レベルの基準パターンとを比較する工程と、
(iii)工程(ii)の比較の結果から、前記被検体における前記所定の処置様式の治療的成功を予測する工程と、を含む。
【0110】
有利には、癌は、乳癌、結腸癌、肺癌、前立腺癌、肝細胞癌、胃癌、膵癌、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路の癌、甲状腺癌、腎臓癌、癌腫、黒色腫、および脳腫瘍からなる群より選択され得る。
【0111】
有利には、癌は乳癌であり得る。
【0112】
所定の処置様式は、(i)細胞増殖に作用することができ、および/または(ii)細胞生存に作用することができ、および/または(iii)細胞運動性に作用することができ、および/または(iv)化学療法剤の投与を含んでもよい。
【0113】
所定の処置様式は、E7070、PHA−533533、ヒメニアルジシン、NU2058 & NU6027、AZ703、BMS−387032、CYC202(R−ロスコビチン)、CDKi277、NU6140、PNU−252808、RO−3306、CVT−313、SU9516、オロモウシン、ZK−CDK(ZK304709)、JNJ−7706621、PD0332991、PD0183812、ファスカプリシン、CA224、CINK4、カフェイン、ペントキシフィリン、ワートマニン、LY294002、UCN−01、デブロモヒメニアルジシン、Go6976、SB−218078、ICP−1、CEP−3891、TAT−S216A、CEP−6367、XL844、PD0166285、BI2536、ON01910、スキトネミン、ワートマニン、HMN−214、シクラポリン−1、ヘスペラジン、JNJ−7706621、PHA−680632、VX−680(MK−0457)、ZM447439、MLN8054、R763、AZD1152、CYC116、SNS−314、MKC−1693、AT9283、キナゾリン誘導体、MP235、MP529、シンクレアジン(cincreasin)、SP600125(de Carcerら,Targeting cell cycle kinases for cancer therapy,Current Medicinal Chemistry,2007,Vol.14,No.1;1−17[29],Malumbresら,Current Opinion in genetics & Development 2007,17:60−65[30],Malumbresら,Therapeutic opportunities to control tumor cell cycles,Clin.Transl.Oncol.2006;8(6):1−000[31])、イレッサ(ゲフィチニブ、ZD1839、抗EGFR、PDGFR、c−キット、Astra−Zaneca);ABX−EGFR(抗EGFR、Abgenix/Amgen);ザメスツラ(FTI、J&J/Ortho−Biotech);ハーセプチン(抗HER2/neu、Genentech);アバスチン(ベバシズマブ(bevancizumab)、抗VEGF抗体、Genentech);タルセバ(エルロチニブ、OSI−774、RTK阻害剤、Genentech−Roche)、ZD66474(抗VEGFR、Astra−Zeneca);アービタックス(IMC−225、セツキシマブ、抗EGFR、Imclone/BMS);オンコラー(Oncolar)(抗GRH、Novartis);PD−183805(RTK阻害剤、Pfizer);EMD72000(抗EGFR/VEGF ab、MerckKgaA);CI−1033(HER2/neu & EGF−R二重阻害剤、Pfizer);EGF10004;ハーザイム(抗HER2 ab、Medizyme Pharmaceuticals);コリクサ(HER2/neuワクチンのミクロスフェア送達、Medarex)、およびAwadaら,The Pipeline of new anticancer agents for breast cancer treatment in 2003,Critical Reviews in Oncology/Hematology 48(2003),45−63([32])に記載される薬物、ZM447439(AstraZeneca)、MK0457(Merck)、AZD1152(AstraZeneca)、PHA−680632、MLN8054(Millenium Pharmaceutical)、PHA739358(Nerviano Sciences)、スキトネミン、BI2536、ON01910([33]および[34])であってもよい。
【0114】
本発明の方法は予測アルゴリズムを使用してもよい。
【0115】
本発明の別の目的は、被検体における腫瘍性疾患を処置する方法であって、以下の工程:
a)本発明のいずれかの方法によって、癌、例えば乳癌を有する被検体において、所定の処置様式についての治療的成功を予測する工程と、
b)前記処置様式が成功すると予測される場合、前記処置様式によって前記患者における前記腫瘍性疾患を処置する工程と、を含む。
【0116】
本発明の別の目的は、腫瘍性疾患を罹患している被検体のための治療法を選択する方法であって、
(i)前記被検体から生物学的試料を得る工程と、
(ii)複数の個別の処置様式について、癌、例えば乳癌を有する被検体における治療的成功を、本発明のいずれかの方法によって前記試料から予測する工程と、
(iii)工程(ii)において成功すると予測される処置様式を選択する工程と、を含む。
【0117】
有利には、発現レベルは、以下
ハイブリダイゼーションに基づいた方法を用いて、または
アレイプローブを利用するハイブリダイゼーションに基づいた方法を用いて、または
個々に標識したプローブを利用するハイブリダイゼーションに基づいた方法を用いて測定されてもよいか、あるいは、
(iv)リアルタイムPCRによって、または
(v)ポリペプチド、タンパク質もしくはそれらの誘導体の発現を評価することによって、または
(vi)ポリペプチド、タンパク質もしくはそれらの誘導体の量を評価することによって、測定されてもよい。
【0118】
他の利点もまた、以下に示し、そして添付の図面によっても示す非限定的な実施例から当業者には明らかであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】図1は、luminal Aおよびbasalの乳癌におけるキナーゼ遺伝子発現プロファイリングを示す。A/138個のBC試料(80個のluminal Aおよび58個のbasal;左のパネル)、8個の細胞株(3個のluminal上皮乳腺細胞株、3個のbasal上皮乳腺細胞株および2個のリンパ球細胞株;右のパネル)ならびに435個の固有のキナーゼプローブセットの階層的クラスタリング。各行は遺伝子を表し、各列は試料を表す。単一の試料における各遺伝子の発現レベルを、138個のBC試料にわたる、その中央値の量と比較し、下部に示すカラースケールに従って描写している。右のパネルにおいて、遺伝子は左のパネルと同じ順序である。黄色および青色は、それぞれ、中央値より上および下の発現レベルを示す。中央値からの偏差の大きさは、彩度によって表す。右のパネルにおいて、遺伝子は左のパネルと同じ順序である。試料の系統樹(上部のマトリクス)は、遺伝子発現プロファイルの全体的な類似性を表し、Bに拡大する。右側の色のついたバーは、Cで拡大する目的の4個の遺伝子クラスターの位置を示す。B/試料の系統樹。上部、BC試料(左)および細胞株(右)の系統樹:BC試料の2つの大きなグループを、クラスタリングにより証明し、破線の橙色の垂線によって区切る。下部、試料の分子サブタイプ(赤、basal;青、luminal A;緑、リンパ球細胞株)。basalおよびluminal AのBCのほぼ完全な分離を参照のこと(p=1.13 10−36;フィッシャーの正確確率検定)。C/4個の選択した遺伝子クラスターの拡大図。第1のクラスターは、QT−クラスタリングによって同定された16個のキナーゼ遺伝子クラスターである。basalの試料においてその発現は均一であるが、むしろluminal Aの試料において不均一であることを参照のこと。
【図2】図2は、16個のキナーゼ遺伝子セットに基づくluminal AのBC試料の2つの予後サブグループの識別および検証を示す。A/16個のキナーゼ遺伝子を用いた本発明者らの80個のluminal AのBCの分類。遺伝子は図1Cのクラスターと同じ順序である。腫瘍試料は、キナーゼスコア(KS)の減少に従って左から右に順序付けされている。橙色の破線は、試料の2つの分類、ポジティブKSを有するluminal Ab(線の左、黒の水平なクラス)とネガティブKSを有するluminal Aa(線の右、青の水平なクラス)とを識別する閾値0を示す。凡例は図1のものと同じである。B/本発明者らのluminal Aa(L.Aa)、luminal Ab(L.Ab)およびbasal(B.)の乳癌の系列におけるKaplan−Meier無再発生存率。basal medullary乳癌は生存解析から除いた。p値をlog−rank検定を用いて計算する。C/16個のキナーゼ遺伝子を用いた3つの公開データセット:Wangら[15]、Loiら[16]、van de Vijverら[14]からのluminal AのBCの分類。凡例は図2Aと同じである。D/3つのプールしたluminal Aa(L.Aa)、luminal Ab(L.Ab)およびbasal(B.)の乳癌の系列におけるKaplan−Meier無再発生存率。凡例は図2Bと同じである。
【図3】図3は、乳癌のキナーゼスコアを示す。A/1222個の腫瘍全てにわたる各分子サブタイプ(左)および各luminal Aサブグループ(右)におけるキナーゼスコア(KS)のボックスプロット。中央値および範囲を示す。NAは指定されたサブタイプを1つも有さない試料を意味する。ボックスプロットの下は、各サブタイプについての5年RFSおよび各サブタイプにおける各KSに基づいたサブタイプについての5年RFSである。髄様乳癌(meduallary breast cancer)−全てのbasalおよび1つのnormal−likeは生存解析から除いた。p値はlog−rank検定を用いて計算する。B/キナーゼスコア(KS)に基づいた1222個の腫瘍の分類。試料の分子サブタイプは、以下:luminal Aaについてダークブルー、luminal Abについて黒、luminal Bについてライトブルー、ERBB2過剰発現についてピンク、basalについて赤、normal−likeについて緑、および指定されていないものについて白として示す。試料は、それらのKSの増加に従って左から右に順序付けられる。
【図4】図4は、乳癌の系列の遺伝子発現プロファイリングおよびそれらの分子サブタイプの分類を示す。A/227個のBC試料(91個のluminal A、および67個のbasal、ならびに他のサブタイプ;左のパネル)、および435個の固有のキナーゼプローブセットの階層的クラスタリング。各行は遺伝子を表し、各列は試料を表す。単一の試料における各遺伝子の発現レベルを、227個のBC試料にわたる、その中央値の量と比較し、下部に示すカラースケールに従って描写する。右のパネルにおいて、遺伝子は左のパネルと同じ順序である。赤および緑は、それぞれ、平均より上および下の発現レベルを示す。中央値からの偏差の大きさは彩度によって表す。右のパネルにおいて、遺伝子は左のパネルと同じ順序である。試料の系統樹(上のマトリクス)は、遺伝子発現プロファイルにおける全体の類似性を表し、Bで拡大する。右側の色付けしたバーは、Cで拡大した目的の11個の遺伝子クラスターの位置を示す。B/試料の系統樹。上部、BC試料の系統樹(左)および細胞株(右):BC試料の2つの大きなグループを、クラスタリングにより証明し、破線の橙色の垂線によって区切る。下部、試料の分子サブタイプ(赤、basal;青、luminal A;緑、リンパ球細胞株)。
【図5】図5は、平衡化した増殖および分化の連続性におけるbasalおよびluminalサブタイプの概略図である。大部分の増殖性乳癌はbasalのものであるが、ほとんどの分化はluminal Aaの腫瘍である。上部は、luminalの分化および生物学に重要な記載した転写因子である。水平線は適切な処置を提案している。
【発明を実施するための形態】
【0120】
乳癌(BC)は、異なる予後を有する様々な分子サブタイプからなる異種性疾患である。しかしながら、luminal Aなどの一部のサブタイプ内で進行を予測することが困難なままであり、処置が適切になされていない。予後の分類および新規治療標的の同定の改善が必要とされる。オリゴヌクレオチドマイクロアレイを用いて、本発明者らは227個のBCをプロファイルした。本発明者らは、反対の予後を有する2つの主要なBCサブタイプ、luminal A(n=80)およびbasal(n=58)、ならびにプロテインキナーゼをコードする遺伝子に対する本発明者らの解析に焦点を当てている。完全なキノーム発現はlumina Aとbasalの腫瘍とを識別した。セリン/スレオニンキナーゼをコードする16個の遺伝子の発現(キナーゼスコアKSによって測定した)は、luminal Aの腫瘍:良好な予後のAa、および不良な予後のAbの2つのサブグループを識別する有糸分裂に関与した。この分類およびその予後の効果を、異なるマイクロアレイプラットフォームにわたってプロファイルした3つの独立した系列からの276個のluminal Aの症例において検証した。分類は、試行セットおよび検証セットの両方で、単変量および多変量解析において現在の予後要因より優れていた。luminal Aaの腫瘍と比較して高い有糸分裂活性によって特徴付けられるluminal Abのサブグループは、luminal Aaのサブグループとluminal Bのサブグループとの間の臨床的特徴およびKSの中間値を示し、これは、luminalの腫瘍における連続性を示唆する。一部の有糸分裂キナーゼの特徴は、研究下での治療標的を示す。不良な予後のluminal Aの症例の同定は、適切な処置を選択するのに役立たなければならず、関連するキナーゼセットの同定は潜在的な標的を提供する。
【0121】
本発明者らの研究は、luminal Aおよびbcの癌のキノームに焦点を当てており、その癌の生物学と治療に対する関連性は十分に確立されている(Manning G,Whyte DB,Martinez R,Hunter T,Sudarsanam S.The protein kinase complement of the human genome.Science 2002;298;1912−34[8])。本発明者らの見解によれば、これは、プロファイリングの最初の研究であり、bcにおけるキナーゼ遺伝子の独占的かつ包括的な解析である。
【0122】
(乳癌のキノームはluminal Aとbasalのサブタイプとの間で相違する)
予備的な段階として、本発明者らは、435個のキナーゼ遺伝子に対して階層的クラスタリングを適用した。本発明者らは、luminal Aとbasalの腫瘍が、異なる全体的なキノーム発現パターンを有し、luminal Aの腫瘍内である程度の転写が不均一となることを見出した。この観測は、多くのキナーゼの異なる発現を示唆し、その結果として、2つのサブタイプ間の異なるリン酸化反応プログラムを示唆している。全体的なクラスタリングにより、basalの試料における増殖クラスターおよびluminal Aの試料における分化クラスターの過剰発現をする、細胞プロセス(増殖、分化)または細胞タイプ(免疫反応)に対応する広範な一貫したキナーゼクラスターが明らかにされた。
【0123】
(有糸分裂キナーゼはluminal Aの乳癌の2つのサブグループを同定する)
興味深いことに、それらの発現に基づいたキナーゼスコア(KS)は、異なる生存率を有するluminalAの腫瘍(AaおよびAb)の2つのサブグループを識別した。本発明者らの腫瘍系列において同定されたので、この分類およびその予後の効果を、異なるマイクロアレイプラットフォームにわたってプロファイルされた3つの独立した系列からの276個のluminal Aの症例において検証した。重要なことに、KSは、試行および検証セットの両方で、単変量および多変量において現在の予後要因より優れていた。
【0124】
分子機能および生物学的プロセスの解析により、このキナーゼの特徴の予後的重要性が主に増殖に関連することが明らかにされた。実際に、16個の遺伝子は、細胞周期のG2期およびM期に関連するキナーゼをコードする。オーロラ(Aurora)−Aおよび−Bは、それぞれ有糸分裂および細胞質分裂を調節する2つの主要なキナーゼである。BUB1(ベンズイミダゾールによって阻害される出芽)、BUB1B、CHEK1(チェックポイントキナーゼ1)、PLK1(polo−likeキナーゼ1)、NEK2(never in mitosis kinase2)およびTTK/MPS1は、種々の細胞分裂チェックポイントにおいて主要な役割を果たす。PLK4(polo−likeキナーゼ4)は中心小体複製に関与する。CDC2/CDK1は、有糸分裂サイクリンに関連する細胞周期機構の主要な成分である。CDC7、MELK(母系胚性ロイシンジッパーキナーゼ)およびVRK1(ワクシニア関連キナーゼ1)は、S/G2およびG2/M遷移の調節因子である。SRPK1はスプライシングを調節する。MASTLおよびPBKキナーゼについてはほとんど知られていない。
【0125】
悪性度(Sotiriou C,Wirapati P,Loi Sら,Gene expression profiling in breast cancer:understanding the molecular basis of histologic grade to improve prognosis.J Natl Cancer Inst 2006;98:262−72;Ivshina AV,George J,Senko Oら,Genetic reclassification of histologic grade delineates new clinical subtypes of breast cancer.Cancer Res 2006;66:10292−301[18,19])または増殖(Dai H,van’t Veer L,Lamb Jら,A cell proliferation signature is a marker of extremely poor outcome in a subpopulation of breast cancer patients.Cancer Res 2005;65:4059−66[20])に関連する予後的遺伝子発現の特徴は、報告されている。本発明者らは、遺伝子リストにおける本発明者らの16個のキナーゼ遺伝子のうちの8個および10個が、それぞれ、Sotiriouら(97個の遺伝子)およびIvshinaら(264個の遺伝子)によって報告されている悪性度I対悪性度IIIのBCにおいて異なって発現されることを見出した。これらのキナーゼ遺伝子である、AURKA、AURKBおよびBUB1は、50個の細胞周期関連遺伝子[20]の予後的セットに含まれ、AURKBは、Paikら(Paik S,Shak S,Tang Gら,A multigene assay to predict recurrence of tamoxifen−treated,node−negative breast cancer.N Engl J Med 2004;351:2817−26[21])によって規定される再発スコアに含まれる5個の増殖遺伝子のうちの1つである。さらに、増殖は、多くの他の公開された予後的遺伝子発現の特徴の結果の最も顕著な予測因子のようである(Desmedt C,Sotiriou C.Proliferation:the most prominent predictor of clinical outcome in breast cancer.Cell Cycle 2006;5:2198−202[22])。増殖と本発明者らの特徴とのこの関連性はまた、有糸分裂の指標に部分的に基づいた組織学的悪性度でサブグループ化する、本発明者らのluminal Aとの関係性を説明する。しかし、興味深いことに、Ki67と悪性度との比較により、本発明者らの有糸分裂キナーゼの特徴が、これらの腫瘍を同定し、患者の生存を予測する際によりよく役立つことが示された。
【0126】
(治療標的としての有糸分裂キナーゼ)
細胞増殖の標的化は、抗癌治療戦略の主な目的である。キナーゼは、治療に成功的な標的であることが証明されている。有糸分裂キナーゼは、新規の抗有糸分裂薬を同定するのに焦点を当てられている強力な作用を誘発している。本発明者らの特徴に含まれるそれらのうちの一部は研究下での標的を示す(Miglarese MR,Carlson RO.Development of new cancer therapeutic agents targeting mitosis.Expert Opin Investig Drugs 2006;15:1411−25[23])。例えば、オーロラキナーゼの標的化は、腫瘍を標的化するのに有望な方法である(Carvajal RD,Tse A,Schwartz GK.Aurora kinase:new targets for cancer therapy.Clin Cancer Res 2006;12:6869−75[24])。4つのオーロラキナーゼ阻害剤の臨床試験は米国および欧州において継続されており、MK0457およびPHA−739358はオーロラ−Aおよびオーロラ−Bを阻害し、MLN8054はオーロラ−Aを選択的に阻害し、AZD1152はオーロラ−Bを選択的に阻害する。同様に、ON01910およびBI2536などのPLK1の低分子阻害剤が試験されている(Strebhardt K,Ullrich A.Targeting polo−like kinase1 for cancer therapy.Nat Rev Cancer 2006;6:321−30[25])、ならびにフラボピリドール(サイクリン依存性キナーゼCDC2の阻害剤)、およびUCN−01(CHEK1の阻害剤)。他はほとんど研究されていないが、潜在的な治療標的には、TTK、BUBおよびNEKタンパク質が含まれる(de Carcer G,de Castro IP,Malumbres M.Targeting cell cycle kinases for cancer therapy.Curr Med Chem 2007;14:969−85[26])。
【0127】
(luminal Aの乳癌の新規の関連サブグループ)
luminal Bの腫瘍と比較した場合のそれらの相対的に良好な予後にもかかわらず、lumianl Aの腫瘍は、一般にホルモン療法を含む処置後に不均一な臨床転帰を示す。異なる種類のホルモン療法、化学療法、および標的化分子療法が利用可能であるので、不都合に進行し得る症例を定義することはなおさら重要である。luminal Aの腫瘍の本発明者らの不良な予後のサブグループ(Abの症例)は、他のluminal Aの腫瘍(Aaの症例)と比較して高い有糸分裂活性によって特徴付けられる。これらのキナーゼによって調節される分裂における主要な段階−中心体の複製、紡錘体チェックポイント、微小管−動原体結合、染色体濃縮および分離、細胞質分裂におけるいずれかの誤りは、異数性および進行的な染色体の不安定性を生じる場合がある。このことは、これらの腫瘍の高い悪性度および不良な予後を部分的に説明し得る。
【0128】
実際に、luminal Abのサブグループは、luminal Aaのサブグループとluminal Bのサブタイプとの間の臨床的特徴およびKSの中間値を示した。これらのサブグループは、Sorlieの内因性の遺伝子セットによって以前に認識されていなかった。本発明者らはこの発見を以下のように解釈した。内因性セットの使用は、大部分のluminal Bの癌を識別するが、全ての増殖性の症例を選択できない。小数の症例は、luminal Aの症例を有するクラスターに存在しており、従って標識されたluminal Aである。全ての増殖性のluminalの症例を定義するSorlieのセットの不良な効果についての説明は、非常に少数のキナーゼを含む、増殖に関与する少数の遺伝子であり得る。本発明者らの有糸分裂キナーゼの特徴により、全ての増殖性のluminalの症例を同定することが可能となり、高い増殖性(luminal B)から低い増殖性(luminal Aa)までのluminalの症例の連続性が明らかとなる。相互に、低い分化から高い分化のluminal B、AbおよびAaを含む、luminal BCの連続性を生じるluminalの分化の勾配が存在し得る(図3B)。ホルモン療法に対する最適な反応はluminal AaのBCで得られ、一方、luminal BおよびAbは、上記の細胞周期および種々のキナーゼを標的化する化学療法剤および/または新規の薬物からの利点を有する。
【実施例】
【0129】
(材料および方法)
(患者および試料)
合計で227個の予め処置した初期の乳癌の試料を、AffymetrixマイクロアレイでのRNAプロファイリングのために入手した。それらは、1992年〜2004年の間にInstitut Paoli−CalmettesおよびHopital Nord(Marseille)において初期に外科手術を受けた侵襲性腺癌を有する226人の患者から回収した。試料を病理学者によってマクロ解剖し、液体窒素中に取り除いて30分以内に凍結させた。全てのプロファイルした生検は、60%以上の腫瘍細胞を含んだ。試料および処置の特徴を、補足的な表1に記載する。
【0130】
【表3】

【0131】
さらに、本発明者らは、乳房組織に見られた細胞タイプについてのモデルを与える8個の細胞株:3個のluminal上皮細胞株(HCC1500、MDA−MB−134、ZR−75−30)、3個のbasal上皮細胞株(HME−1、HMEC由来184B5、MDA−MB−231)、および2個のB細胞およびT細胞リンパ球(それぞれ、DaudiおよびJurkatt)から抽出したRNAをプロファイルした。全ての細胞株はATCC(Rockville,MD−http://www.atcc.org/)から得て、推奨されるように増殖させた。
【0132】
(DNAマイクロアレイを用いる遺伝子発現プロファイリング)
遺伝子発現解析を、38,500の十分に特徴付けられたヒト遺伝子を含む、47,000以上の転写産物および変異体を含む、Affymetrix U133 Plus 2.0ヒトオリゴヌクレオチドマイクロアレイを用いて実施した。合計3μgのRNAからのcRNAの調製、ハイブリダイゼーション、洗浄および検出を、供給者(Affymetrix)に推奨されるように実施した。走査を、Affymetrix GeneArrayスキャナーで実施し、Affymetrix GCOSソフトウェアで定量化した。ハイブリダイゼーション画像を、人工産物について検査した。
【0133】
(遺伝子発現データ解析)
発現データを、Bioconductorおよび関連パッケージ(Irizarry RA,Hobbs B,Collin Fら,Exploration,normalization,and summaries of high density oligonucleotide array probe level data.Biostatistics 2003;4:249−64[12])を用いて、RソフトウェアにおいてRMA(Robust Multichip Average)法(Brian D.Ripley.The R project in statistical computing.MSOR Connections.The newsletter of the LTSN Maths,Stats & OR Network.,1(1):23−25,2001年2月[28]およびhttp://www.r−project.org/doc/bib/R−other_bib.html#R:Ripley:2001)によって解析した。解析の前に、フィルター処理により、227個の全ての乳癌組織試料において100ユニットより低い発現値によって規定される低く不十分な測定された発現の遺伝子をデータセットから除き、31189個の遺伝子/ESTが残った。
【0134】
教師なし階層的クラスタリングの前に、第2のフィルターにより、0.5 log2ユニット(この低範囲における発現変化の差異は信頼できないため、SDの計算についてのみ、値は100に落とした(floored)より低い標準偏差(SD)によって規定される227個の試料にわたる低発現の変化量を示す遺伝子を除き、14486個の遺伝子/ESTが残った。次いで、データをlog2変換し、遺伝子の中央値中心データ、距離および重心の相関クラスタリングの類似性としてピアソン(Pearson)の相関係数を用いて、クラスタープログラム(Eisen MB,Spellman PT,Brown PO,Botstein D.Cluster analysis and display of genome−wide expression patterns.Proc Natl Acad Sci USA 1998;95:14863−8[13])にかけた。結果を、TreeViewプログラム[13]を用いて表示した。Quality Threshold(QT)クラスタリングにより、階層的クラスタリングの中で高い相互関連した発現パターンを有する遺伝子セットを同定する。これを、TreeViewプログラム[13]を用いてキナーゼプローブセットならびにbasalおよびluminal Aの腫瘍に適用した。最小のクラスターサイズおよび最小の相関関係についてのカットオフはそれぞれ、15および0.7であった。遺伝子クラスターは、生物学的経路および機能の重要な表現を評価するためにIngenuityソフトウェア(Redwood City,CA,USA)を用いて検索した。
【0135】
(キナーゼコードプローブセットの定義)
Manningら[8]によって確立されたキノームデータベースを、Affymetrix Genechip U133 Plus 2.0からキナーゼコード遺伝子を抽出するための基準として使用した。まず、HUGO(Human Genome Organisation)シンボルの注釈は、Affymetrixチップおよびキノームで示された遺伝子間で必ずしも対応しなかったので、本発明者らは、相互参照としてmRNA受託番号を使用した。キノームのcDNA配列を、BLASTnを用いてUnigeneデータベースの代表的なmRNA配列と比較し、それらの配列の間のアラインメントを得た。正確に適合した全てのmRNAを保有し、それらの受託番号を31のものと比較し、Affymetrixによって189個の選択されたプローブセットが与えられた。第2に、一部のキナーゼ遺伝子を、Affymetrixチップ上でいくつかのプローブセットにより表した。これは、QT−クラスタリングによって解析するための遺伝子グループの重量のバイアスを導入できる。これらの場合において、拡張<<_at>>、次に<<s_at>>を有するプローブセット、続いて、全ての他の拡張を優先的に維持した。最適な拡張を有するいくつかのプローブセットが利用可能である場合、最も高い中央値を有するものを保有した。518個のキナーゼの初期のリストから、本発明者らは、最終的に、435個のキナーゼ遺伝子を表す435個のプローブセットを保有した。
【0136】
(公開データセットの収集)
他のBC試料における本発明者らの多重遺伝子の特徴の機能を試験するために、本発明者らは、3つの主要な公的に利用可能なデータセット:van de Vijverら(van de Vijver MJ,He YD,van’t Veer LJら,A gene−expression signature as a predictor of survival in breast cancer.N Engl J Med 2002;347:1999−2009[14])、NCBI/Genbank GEOデータベース(series entry GSE2034)から収集したWangら、Wang Y.Klijn JG,Zhang Yら,Gene−expression profiles to predict distant metastasis of lymph−node−negative primary breast cancer.Lancet 2005;365:671−9(Wang Y,Klijn JG,Zhang Yら,Gene−expression profiles to predict distant metastasis of lymph−node−negative primary breast cancer.Lancet 2005;365:671−9[15])、ならびにNCBI/Genbank GEOデータベース(series entry GSE6532)から収集したLoiら(Loi S,Haibe−Kains B,Desmedt Cら,Definition of clinically distinct molecular subtypes in estrogen receptor−positive breast carcinomas through genomic grade.J Clin Oncol 2007;25:1239−46[16])を解析した。各データセットの解析を、いくつかの連続工程:共有の内因性遺伝子セットに基づいた分子サブタイプの同定、本発明者らと共通のキナーゼ遺伝子セットの同定、続いて、luminal Aの試料についてのキナーゼスコア(以下参照)の計算において行った。解析のために使用した本発明者らの系列および公開されている系列からのluminal Aの試料の臨床データを、補足的な表3に示す。
【0137】
【表4−1】

【0138】
【表4−2】

【0139】
【表4−3】

【0140】
【表4−4】

【0141】
【表4−5】

【0142】
【表4−6】

【0143】
【表4−7】

【0144】
【表4−8】

【0145】
【表4−9】

【0146】
【表4−10】

【0147】
【表4−11】

【0148】
【表4−12】

【0149】
【表4−13】

【0150】
【表4−14】

【0151】
【表4−15】

【0152】
【表4−16】

【0153】
【表4−17】

【0154】
【表4−18】

【0155】
【表4−19】

【0156】
補足的な表3において、Loiらは、Loi S,Haibe−Kains B,Desmedt Cら,Definition of clinically distinct molecular subtypes in estrogen receptor−positive breast carcinomas through genomic grade.J Clin Oncol 2007;25:1239−46[16]を指し、vdVらは、Van de Vijver MJ,He YD,van’t Veer LJら,A gene−expression signature as a predictor of survival in breast cancer.N Engl J Med 2002;347:1999−2009[14]を指し、そしてWangらは、Wang Y,Klijn JG,Zhang Yら,Gene−expression profiles to predict distant metastasis of lymph−node−negative primary breast cancer.Lancet 2005;365:671−9[15]を指す。
【0157】
(統計的解析)
本発明者らは、16個のキナーゼ遺伝子の発現レベルに基づいたキナーゼスコア(KS)と呼ばれるスコアを定義した。それは、以下
【数2】

のように定義した。式中、AおよびBは正規化パラメータを表し、これは異なるデータセット間で比較できるようにし、nは利用可能なキナーゼ遺伝子(7個〜16個)の数であり、xiは腫瘍iにおける対数遺伝子発現レベルである。カットオフ値0を用いて、各腫瘍を、低スコア(KS<0、すなわち、16個のキナーゼ遺伝子の全体の低い発現)または高スコア(KS>0、すなわち、16個のキナーゼ遺伝子の全体の強い発現)に割り当てた。本発明において、利用可能なキナーゼ遺伝子の数、すなわちnは1個〜16個である。
【0158】
統計的解析に含まれる試料(luminal Aのサブタイプ)は、免疫組織化学(IHC)を用いて規定した場合、ERおよび/またはPR陽性であった。本発明者らは、ERおよびPRのmRNA発現レベルに基づいた2つの質的変数を導入した(ESR1エストロゲン受容体1プローブセット205225_atおよびPGRプロゲステロン受容体プローブセット208305_at):ESR1またはPGR−高または低を規定するためのカットオフは、対応するプローブセットの中央値の発現レベルであった。2つのプローブセットを、同じ上記の基準を用いることによって選択した。
【0159】
試料グループと組織臨床的因子との間の相関関係を、別個のカテゴリーで質的変数についてフィッシャーの正確確率検定、および連続的な可変物についてウィルコクソン検定を用いて計算した。追跡を、再発しない患者についての最後の知らせの日までの診断のデータから測定した。無再発生存率(RFS)を、Kaplan−Meier法を用いて、その位置(部位、局部または遠位置)にかかわらず、最初の再発の日まで、診断のデータから計算し、log−rank検定を用いてグループ間を比較した。単変量および多変量解析を、Cox回帰分析を用いて実施した。p値はlog−rank検定に基づき、1つ以上の失ったデータを有する患者を除いた。全ての統計的検定を、5%レベルの有意性にて両側で行った。統計的解析を、Rソフトウェア(バージョン2.4.1−www.cran.r−project.org)において生存パッケージ(バージョン2.30)を用いて行った。
【0160】
(結果)
(乳癌および分子サブタイプの遺伝子発現プロファイリング)
合計で227個の試料を、全ゲノムDNAマイクロアレイを用いてプロファイルした。階層的クラスタリングを、全ての試料にわたって発現レベルにおいて有意なバリエーションを有する14,486個の遺伝子/ESTに適用した(補足的な表1)。試料のクラスターおよび遺伝子のクラスターを同定し、事前に認識されるグループに表した(Bertucci F,Finetti P,Cervera Nら,Gene expression profiling shows medullary breast cancer is a subgroup of basal breast cancers.Cancer Res 2006;66:4636−44[17])。本発明者らは、その他[2−4]で報告されている5つの分子サブタイプもまた、内因性の500個の遺伝子セットに共通している476個の遺伝子を用いることによって、本発明者らの試料の系列に存在しているかどうかを調べた。本発明者らは以前に、同じ5つの分子サブタイプ[17]を識別するSorlieらからの122個の試料におけるそれらの476個の遺伝子についての利用可能なRNA発現データのクラスタリングを示し、全ての内因性遺伝子セットに規定されたものを含む96%の一致を有する本発明者らの遺伝子セット(以下に設計した重心)についての各サブタイプの典型的な発現プロファイルの定義を可能にした。本発明者らは、各重心を有する本発明者らの227個の組織試料の各々のピアソンの相関係数を測定した。最も高い係数は、0.15の最小閾値を有するサブタイプを規定した。サブタイプを補足的な表1においてカラーコードした。それらは91個のluminal Aの試料、および67個のbasalの試料、ならびに他のサブタイプを含んだ。
【0161】
(全キノーム発現プロファイリングは、basalとluminal Aの乳癌とを識別する)
本発明者らは、発現差異が臨床転帰に関連するキナーゼ遺伝子を同定することを望んだ。本発明者らは、反対の予後を有するBCの2つの主要なサブタイプ、basalとluminal Aのサブタイプの解析に焦点を当てた。本発明者らの細分類から、本発明者らは、80個のluminal Aおよび58個のbasalのBCを含む、利用可能な全ての組織臨床的注釈を有する138個のBC試料の系列を選択した。本発明者らは、質および信頼性を同時に満たすように、435個のキナーゼについて合計で435個の固有のAffymetrixプローブセットを同定した(補足的な表4)。
【0162】
【表5】

【0163】
階層的クラスタリング解析を、これらのプローブセットならびに138個のBCおよび8個の細胞株に適用した(図1A)。腫瘍は異種発現プロファイルを示した。それらを2つの大きなクラスターに分類し、その2つの大きなクラスターは、左のクラスターにおいてbasalのBCのものを除いて、および右のクラスターにおいてluminal AのBCのものを除いて、ほぼ完全に分子サブタイプと相関した(図1B)。視覚的検査により、2つの主なグループ内の試料のほとんどの細分に関与する関連遺伝子の少なくとも4つのクラスターが明らかになった。それらを図1Cに拡大する。第1のクラスターは、細胞周期および有糸分裂に関与する遺伝子において高かった。それは、luminal Aの腫瘍と比較してbasal全体において、および癌組織試料と比較して細胞株において過剰発現した。第2の遺伝子クラスターは、免疫反応に関与する多くの遺伝子を含んだ。それは、luminal Aおよびbasalの腫瘍の両方において不均一のレベルで発現し、上皮細胞株と比較してリンパ球細胞株において過剰発現した。第3および第4のクラスターは、basal BCの試料と比較してluminal A全体において非常に過剰発現した。第3のクラスターは、TGFβシグナル伝達および膜貫通チロシンキナーゼ受容体に関与する遺伝子を含んだ。Ingenuityソフトウェア(Ingenuity Pathway Analysis v5,www.ingenuity.com)を用いる遺伝子オントロジー解析により、第1のクラスターにおいて「細胞周期」(p=4.6E−07)ならびに「DNA複製、組み換え、および修復」(p=6.1E−05)、第2のクラスターにおいて「免疫反応」(p=8.1E−10)ならびに「細胞成長および増殖」(p=8.1E−10)、第3のクラスターにおいて「腫瘍形態学」(p=2.2E−04)ならびに「神経系進行および機能」の機能の有意な過剰出現(右側フィッシャーの正確検定)を有するこれらのデータを確認した。標準経路の解析により、第1、第2および第3のクラスターにおいて、それぞれ、「細胞周期のG2/M遷移」(p=6.8E−08)「NFKB(核内因子κ−B)シグナル伝達経路」(p=1.3E−04)および「TGFβ(腫瘍増殖因子β)シグナル伝達経路」(p=4E−03)の過剰出現が示された。相関関係は、それらの遺伝子クラスターと、9個のキナーゼファミリー(AGC(環状ヌクレオチド調節プロテインキナーゼおよび近い関連ファミリー)、CAMK(Ca2+/CaMおよび近い関連ファミリーによって調節されるキナーゼ)、CK1(サイクリンキナーゼ)、CMGC(サイクリン依存性キナーゼ(CDK)および近い関連ファミリー)、RGC(受容体グアニル酸シクラーゼ)、STE(MAPキナーゼカスケードに関与するプロテインキナーゼ)、TK(チロシンキナーゼおよび近い関連ファミリー)、TKL(lck−リンパ球特異的プロテインチロシンキナーゼに関連するチロシンキナーゼ)およびAtypical)または遺伝子の染色体位置との間に見出された。
【0164】
これらの結果により、キナーゼ遺伝子発現は、basalとluminal AのBCとの間で非常に異なることが示唆される。
【0165】
(キナーゼ遺伝子発現はluminal Aの乳癌の2つのサブグループを識別する)
図1に示すように、basalのBCはむしろ均一なクラスターを構成するが、luminal AのBCはより不均一であった。basalおよびluminalのBCは、遺伝子のクラスターの発現差異によって識別された。QTクラスタリングを用いることによって、本発明者らは、上記の第1のクラスターに対応する識別(図1B)に主に関与する有意な単一のクラスターを同定した。それは、16個のキナーゼ遺伝子(表1)を含み、全てのbasalのBCおよび一部のluminal Aの試料において過剰発現し、ほとんどのluminal Aの試料において過少発現した(図1B)。
【0166】
luminal Aの腫瘍のこの下位区分は、本発明者らが、それらの各々について、それらの16個の遺伝子の発現レベルに基づくキナーゼスコア(KS)を規定することを可能とする。カットオフ0の同定した2つの腫瘍グループ:ネガティブスコアを有するluminal AのBCを含むグループ(以後Aaと指定した)およびポジティブスコアを有するluminal AのBCを含むグループ(以後Abと指定した;図2A)。luminal Aaは、luminal Aの症例の3分の2を構成し、luminal AbのBCは残りの3分の1を構成する。
【0167】
luminal AbのBCにおいて過剰発現した16個の遺伝子によってコードされたタンパク質(表1)は、細胞周期の後期の調節に関与する全てのセリン/スレオニンキナーゼ(セリン/アルギニンキナーゼであるSRPK1を除いて)であり、有糸分裂に関連するlumina Abの腫瘍が転写プログラムを示すことが示唆される。
【0168】
(luminal Aの乳癌の2つのサブグループの特徴および予後)
2つのluminal Aのサブグループの組織臨床的特徴を表3に示す。顕著に、それらはほとんどの特徴を共有しているが、Abのサブグループにおいて悪性度IIIおよびAaのサブグループにおいて悪性度I−IIを有するSBR悪性度に従って異なった。Ki67発現は、AbとAaの症例を識別しなかったが、luminal Abの4分の3はKi67陽性であった。結論として、悪性度以外にAaとAbのBCを識別できる因子はない。
【0169】
【表6−1】

【0170】
【表6−2】

【0171】
本発明者らは、患者、すなわちbasal、luminal Aaおよびluminal AbのBCを有する患者の3つのグループの生存を比較した。本発明者らは、良好な予後を与えることが公知であるbasal medullaryの乳癌を解析から除外した。診断後の55ヶ月の追跡の中央値を用いて、5年無再発生存率(RFS;図2B)は、luminal Aaの腫瘍(53個の試料、83%RFS)を有する患者で最適であり、luminal Abの腫瘍(27個の試料、65%RFS)を有する患者およびbasalのBC(43個の試料、62%RFS;p=0.031、log−rank検定)を有する患者で悪かった。従って、16個のキナーゼ遺伝子(KGセット)の発現は、basalの症例と同様の予後を示した明らかに良好な予後のサブグループのluminal Aの腫瘍内で同定した。
【0172】
次いで、本発明者らは、本発明者らの80個のluminal Aの試料において本発明者らのKSに基づいた分類の予後の能力と他の組織臨床的要因(年齢、病理学的腫瘍サイズ、SBR悪性度、ならびに腋窩リンパ節状態、IHC P53(1%)およびKi67(20%)状態、ESR1およびPGR mRNAレベル)とを比較した(表4A)。単変量および多変量Cox解析において、RFSと関連する唯一の要因がKSに基づいた分類であった。再発について危険率(HR)は、luminal Aaの腫瘍と比較してluminal Abの腫瘍について7.77であった([95%Cl 1.97−30.66]、p=0.003)。
【0173】
(公開された系列におけるluminal Aの乳癌の2つの予後的サブグループの検証)
検証段階として、本発明者らは、KSによって同定されたluminal AのBCの2つのサブグループを同定および比較するために公開された遺伝子発現データの3つの段階を解析した。本発明者らは、まず、腫瘍の分子サブタイプを上記のように定義した。サブタイプを割り当てる前に、各重心を、Sorlieら[4]によって定義されたものとのその一致により評価すると、3つのデータセットにおいて90%以下のものはなかった。サブタイプの分布を補足的な表5に示す。
【0174】
【表7−1】

【0175】
【表7−2】

【0176】
【表7−3】

【0177】
合計276個の試料をluminal Aと同定した。KGセットの遺伝子の数を7〜16個の範囲で各データセットにおいて表した(補足的な表5)。本発明者らは、各腫瘍についてのKSを計算した。本発明者らの系列と同じカットオフにより、各セットにおいて、本発明者ら独自の系列と同じ割合で、Aa(190個の試料)およびAb(86個の試料)のサブグループの識別が導き出された(図2C)。
【0178】
予後的解析の前に、3つの研究からの試料をプールした。2つのサブグループの組織臨床的相関関係は、本発明者らの系列に見出されるものと同様であった(補足的な表6)。
【0179】
【表8】

【0180】
本発明者らは、次いで、276個の試料において2つのluminal AのサブグループのRFSを比較した。診断後、104ヶ月の追跡の中央値により、luminal Abの腫瘍は、luminal Aaの腫瘍より悪い予後と関連し、それぞれの5年RFSは90%および73%であった(p=6.3E−6,log−rank検定;図2D)。比較のために、5年RFSは、3つのプールした系列のbasal試料において64%であった。
【0181】
本発明者らはまた、単変量および多変量生存解析を実施した(表4B)。Wangらの系列(79個のLuminal Aの試料)を、利用可能な組織臨床的データの欠如に起因して別々に解析した。単変量解析において、再発についてのHRは、luminal Aaの腫瘍と比較してluminal Abの腫瘍に関して4.84であった([95% Cl 2.13−11.00],p=1.7E−04)。2つの他の系列を解析のために融合させた(197個のLuminal Aの試料)。病理学的腫瘍サイズ、PGR mRNA発現レベルおよびKSに基づいたサブグループ化を含む3つの可変物は、単変量解析においてRFSと有意に関連した。多変量解析において、KSに基づいた分類のみが有意な予後値を保持し、SBR悪性度および他の可変物にわたるKSの顕著性を確認した。再発についてのHRは、luminal Aaの腫瘍と比較してluminal Abの腫瘍に関して2.48であった([95%Cl 1.37−4.50],p=0.002)。
【0182】
表4.luminal Aの腫瘍のCox回帰による単変量および多変量RFS解析。A:本発明者らの系列において。B:公開された系列において。
A.80個のluminal Aの腫瘍のCox回帰による単変量および多変量RFS解析
【0183】
【表9−1】

【0184】
【表9−2】

【0185】
表4B.公開されたデータセットからのluminal Aの腫瘍のCox回帰による単変量および多変量解析
【0186】
【表10−1】

【0187】
【表10−2】

【0188】
(キナーゼスコアおよび分子サブタイプ)
次に、本発明者らは、KSと内因性分子サブタイプとの関連を調べた。本発明者らは、合計で1222個の腫瘍を生じる、本発明者らの227個の腫瘍、295個のvan de Vijverらの腫瘍、414個のLoiらの腫瘍、および286個のWangらの腫瘍を含む、全てのデータセットを融合した。KSおよび分子サブタイプを全ての腫瘍について決定した:367個の腫瘍がluminal Aであり、99個がluminal Bであり、172個がERBB2過剰発現であり、214個がbasalであり、161個がnormal−likeであり、209が指定されていない。本発明者らは、各サブタイプにおいてKSの分布を計算し、比較した。図3Aに示すように、ほとんどのluminal Aおよびnormal−likeの腫瘍はネガティブKSであったが、ほとんどのbasalおよびluminal Bの腫瘍はポジティブKSであった。5つのサブタイプ間のKSの全ての一対比較は有意であった(p<0.05;t検定;データは示さず)。ERBB2過剰発現および指定されていない試料は、それらのKSに対して等しく分布した。luminal Abの腫瘍は、スコアがより近いluminal Bの腫瘍のものと、luminal Aaの腫瘍のものとの間である中央のKSを示した。
【0189】
5つの分子サブタイプは異なるKSを示した。しかしながら、KSの範囲は各サブタイプにおいてむしろ大きかったので、本発明者らは、KSネガティブとKSポジティブの腫瘍との間の生存(log−rank検定)を比較することによって、KSが、luminal Aより他のサブタイプにおいていずれの予後値を有するか否かを調べた(図3A)。予想したように、差異はluminal Aの症例において大きかった(p=1.1E−07)。ERBB2過剰発現の腫瘍に関して、差異は見られなかった(p=0.86)。KSネガティブ対KSポジティブの試料において、より良いRFSに対して、luminal Bの腫瘍に有意な傾向はなかった(p=0.18)。反対の傾向が、KSポジティブ試料において、より良いRFSを有するbasal(p=0.23)において観測された。差異は、KSネガティブ腫瘍において89%、およびKSポジティブ腫瘍において50%の5年RFSを有するnormal−likeの腫瘍において非常に顕著だった(p=3.1E−05)。興味深いことに、KSはまた、内因性遺伝子セットによって、分子サブタイプが割り当てられていない209個の試料にも適用できる。KSは、それらを、低いKS(82%)を有する腫瘍と、高いKS(60%、p=0.001)を有する腫瘍との間の5年RFSの差異に関して2つの予後のサブグループに分類した。
【0190】
(luminalの乳癌における連続性)
luminal Abの腫瘍は、luminal Aaの腫瘍と、luminal Bの腫瘍との間の中間のKSパターンを示した(図3B)。3つの公開データセットにおけるluminal Aa、lumina Abおよびluminal Bの試料の間の組織臨床的特徴の比較により、病理学的腫瘍のサイズおよび再発率に関して、luminal Aa〜luminal Ab〜luminalBまで顕著に増加し、悪性度、ESR1およびPGRのmRNA発現レベル、および5年RFSに関して、顕著に減少する、この発見(補足的な表6)が確認された。これらの結果により、luminal AaおよびAbが、今まで認識されていなかったBCの新規の臨床的に関連するサブグループを示すことが確認され、これらの3つのサブグループの間の連続性が示唆される。
【0191】
(参考文献リスト)
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌、好ましくは、乳癌を解析するための方法であって、表1に記載されるセリン/スレオニンキナーゼをコードする16個の遺伝子のうちの少なくとも1個、または少なくとも2個、または少なくとも3個、または少なくとも4個、または少なくとも5個、または少なくとも6個、または少なくとも7個、または少なくとも8個、または少なくとも9個、または少なくとも10個、または少なくとも11個、または少なくとも12個、または少なくとも13個、または少なくとも14個、または少なくとも15個、あるいは前記16個の遺伝子の発現差異の検出を含む、方法。
【請求項2】
前記遺伝子の発現差異は、basalとluminal Aの乳癌とを識別する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記遺伝子の発現差異は、良好な予後または不良な予後のluminal Aの腫瘍のサブグループを識別する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記不良な予後のluminal Aの腫瘍のサブグループは、他のluminal Aの腫瘍と比較して高い有糸分裂活性を示す、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記検出は、組織試料由来の核酸で実施される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記検出は、腫瘍細胞株由来の核酸で実施される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記検出は、DNAマイクロアレイで実施される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
表1に記載されるセリン/スレオニンキナーゼをコードする16個の遺伝子のうちの少なくとも1個、または少なくとも2個、または少なくとも3個、または少なくとも4個、または少なくとも5個、または少なくとも6個、または少なくとも7個、または少なくとも8個、または少なくとも9個、または少なくとも10個、または少なくとも11個、または少なくとも12個、または少なくとも13個、または少なくとも14個、または少なくとも15個、あるいは前記16個の遺伝子を含むか、またはそれらに対応する癌を分子的に特徴付けるポリヌクレオチドライブラリー。
【請求項9】
固体支持体に固定化される、請求項8に記載のポリヌクレオチドライブラリー。
【請求項10】
前記支持体は、ナイロン膜、ニトロセルロース膜、スライドガラス、ガラスビーズ、ガラス支持体またはシリコンチップ上の膜、プラスチック支持体のうちの少なくとも1つからなる群より選択される、請求項9に記載のポリヌクレオチドライブラリー。
【請求項11】
請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載の方法の使用であって、前記方法は、乳癌の検出、予後または診断のため、あるいは乳癌を罹患している患者の処置を管理するために使用され、患者由来の核酸で請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載の方法を実施することを含む、使用。
【請求項12】
癌疾患、好ましくは、乳癌に関連する遺伝子の発現差異を解析するための方法であって、
a)患者由来のポリヌクレオチド試料と、請求項8〜10のいずれかに記載されるポリヌクレオチドライブラリーとを反応させる工程と、
b)工程(b)の反応産物を検出する工程と、
を含む方法。
【請求項13】
a)基準ポリヌクレオチド試料を得る工程と、
b)例えば、前記ポリヌクレオチド試料と、前記ポリヌクレオチドライブラリーとをハイブリダイズすることによって、前記基準試料と、前記ポリヌクレオチドライブラリーとを反応させる工程と、
c)基準試料の反応産物を検出する工程と、
d)前記ポリヌクレオチド試料の反応産物の量と、前記基準試料の反応産物の量とを比較する工程と、
をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
不良な予後のluminal Aの症例を処置するための分子をスクリーニングするための方法であって、表1に記載される16個のキナーゼのうちの少なくとも1個、または少なくとも2個、または少なくとも3個、または少なくとも4個、または少なくとも5個、または少なくとも6個、または少なくとも7個、または少なくとも8個、または少なくとも9個、または少なくとも10個、または少なくとも11個、または少なくとも12個、または少なくとも13個、または少なくとも14個、または少なくとも15個、あるいはそれらの発現、あるいは前記16個のキナーゼに対する前記分子の作用の解析を含む、方法。
【請求項15】
請求項1〜7および12〜14のうちのいずれか1項に記載の方法を実施するための、請求項8〜10のうちのいずれか1項に記載のポリヌクレオチドライブラリーを含むキット。
【請求項16】
癌と診断された患者についての臨床転帰を予測するための方法であって、前記患者から得て、コントロール遺伝子に対して正規化し、基準の癌組織セットに見出される量と比較した癌組織または細胞において、表1に記載される16個の遺伝子のうちの少なくとも1個、または少なくとも2個、または少なくとも3個、または少なくとも4個、または少なくとも5個、または少なくとも6個、または少なくとも7個、または少なくとも8個、または少なくとも9個、または少なくとも10個、または少なくとも11個、または少なくとも12個、または少なくとも13個、または少なくとも14個、または少なくとも15個、あるいは表1の16個の遺伝子の全て、あるいはそれらの発現産物の発現レベルを決定することを含み、前記遺伝子のグループの過剰発現が不良な臨床転帰を予測する、方法。
【請求項17】
不良な臨床転帰が、無再発生存率(RFS)の観点から測定される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記癌は、乳癌、結腸癌、肺癌、前立腺癌、肝細胞癌、胃癌、膵癌、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路の癌、甲状腺癌、腎臓癌、癌腫、黒色腫、および脳腫瘍からなる群より選択される、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記癌は乳癌である、請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
AURKA(配列番号17に相当する)および/またはAURKB(配列番号18に相当する)および/またはPLK1(配列番号26に相当する)の遺伝子の過剰発現レベルが測定される、請求項16〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記発現レベルが、凍結組織試料または新鮮な組織試料から得たRNAを用いて測定される、請求項16〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記発現レベルが、逆相ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によって測定される、請求項16〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
癌の患者における処置後の癌の再発の可能性を予測する方法であって、前記患者から得て、コントロール遺伝子に対して正規化し、基準の癌組織セットに見出される量と比較した癌組織において、表1に記載される16個の遺伝子のうちの少なくとも1個、または少なくとも2個、または少なくとも3個、または少なくとも4個、または少なくとも5個、または少なくとも6個、または少なくとも7個、または少なくとも8個、または少なくとも9個、または少なくとも10個、または少なくとも11個、または少なくとも12個、または少なくとも13個、または少なくとも14個、または少なくとも15個、あるいは表1の16個の遺伝子の全て、あるいはそれらの発現産物の発現レベルを測定することを含み、前記遺伝子のグループの過剰発現が、処置後の再発の危険性の増加を示す、方法。
【請求項24】
前記癌は、乳癌、結腸癌、肺癌、前立腺癌、肝細胞癌、胃癌、膵癌、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路の癌、甲状腺癌、腎臓癌、癌腫、黒色腫、および脳腫瘍からなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記癌は乳癌である、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記発現レベルが、癌の外科的切除後に測定される、請求項23〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記発現レベルが、新鮮な試料または凍結試料から得たRNAを用いて測定される、請求項23〜26のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記発現レベルが、逆相ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によって測定される、請求項23〜27のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記処置が、MK0457、PHA−739358、MLN8054、AZD1152、ON01910、BI2536、フラボピリドール、USN−01からなる群より選択される薬物を使用する、請求項23〜28のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
請求項1〜7および11〜14および16〜28のうちのいずれか1項に記載の方法を実施するのに適切な(1)抽出緩衝液/試薬およびプロトコル、(2)逆転写緩衝液/試薬およびプロトコル、ならびに(3)定量的PCR緩衝液/試薬およびプロトコルのうちの1つ以上を含むキット。
【請求項31】
データ検索および解析ソフトウェアをさらに含む、請求項30に記載のキット。
【請求項32】
前記構成要素(2)が、予め設計されたプライマーを含む、請求項30に記載のキット。
【請求項33】
前記構成要素(3)が、予め設計されたPCRプローブおよびプライマーを含む、請求項30に記載のキット。
【請求項34】
癌を有する被検体における所定の処置様式の治療的成功を予測するための方法であって、
(i)表1に記載されるセリン/スレオニンキナーゼをコードする16個の遺伝子のうちの少なくとも1個、または少なくとも2個、または少なくとも3個、または少なくとも4個、または少なくとも5個、または少なくとも6個、または少なくとも7個、または少なくとも8個、または少なくとも9個、または少なくとも10個、または少なくとも11個、または少なくとも12個、または少なくとも13個、または少なくとも14個、または少なくとも15個、あるいは前記16個の遺伝子の発現レベルのパターンを決定する工程と、
(ii)(i)で決定された発現レベルのパターンと、発現レベルの1つまたは複数の基準パターンとを比較する工程と、
(iii)工程(ii)における比較の結果から前記被検体における前記所定の処置様式についての治療的成功を予測する工程と、
を含む方法。
【請求項35】
前記癌は、乳癌、結腸癌、肺癌、前立腺癌、肝細胞癌、胃癌、膵癌、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路の癌、甲状腺癌、腎臓癌、癌腫、黒色腫、および脳腫瘍からなる群より選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記癌は乳癌である、請求項34または35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記所定の処置様式が、(i)細胞増殖に作用し、および/または(ii)細胞生存に作用し、および/または(iii)細胞運動性に作用し、および/または(iv)化学療法剤の投与を含む、請求項34〜36のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記所定の処置様式が、E7070、PHA−533533、ヒメニアルジシン、NU2058 & NU6027、AZ703、BMS−387032、CYC202(R−ロスコビチン)、CDKi277、NU6140、PNU−252808、RO−3306、CVT−313、SU9516、オロモウシン、ZK−CDK(ZK304709)、JNJ−7706621、PD0332991、PD0183812、ファスカプリシン、CA224、CINK4、カフェイン、ペントキシフィリン、ワートマニン、LY294002、UCN−01、デブロモヒメニアルジシン、Go6976、SB−218078、ICP−1、CEP−3891、TAT−S216A、CEP−6367、XL844、PD0166285、BI2536、ON01910、スキトネミン、ワートマニン、HMN−214、シクラポリン−1、ヘスペラジン、JNJ−7706621、PHA−680632、VX−680(MK−0457)、ZM447439、MLN8054、R763、AZD1152、CYC116、SNS−314、MKC−1693、AT9283、キナゾリン誘導体、MP235、MP529、シンクレアジン(cincreasin)、SP600125、イレッサ(ゲフィチニブ、ZD1839、抗EGFR、PDGFR、c−キット、Astra−Zaneca);ABX−EGFR(抗EGFR、Abgenix/Amgen);ザメスツラ(FTI、J&J/Ortho−Biotech);ハーセプチン(抗HER2/neu、Genentech);アバスチン(ベバシズマブ(bevancizumab)、抗VEGF抗体、Genentech);タルセバ(エルロチニブ、OSI−774、RTK阻害剤、Genentech−Roche)、ZD66474(抗VEGFR、Astra−Zeneca);アービタックス(IMC−225、セツキシマブ、抗EGFR、Imclone/BMS);オンコラー(Oncolar)(抗GRH、Novartis);PD−183805(RTK阻害剤、Pfizer);EMD72000(抗EGFR/VEGF ab、MerckKgaA);CI−1033(HER2/neu & EGF−R二重阻害剤、Pfizer);EGF10004;ハーザイム(抗HER2 ab、Medizyme Pharmaceuticals);コリクサ(HER2/neuワクチンのミクロスフェア送達、Medarex)、ZM447439(AstraZeneca)、MK0457(Merck)、AZD1152(AstraZeneca)、PHA−680632、MLN8054(Millenium Pharmaceutical)、PHA739358(Nerviano Sciences)、スキトネミン、BI2536、ON01910である、請求項34〜37のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
予測アルゴリズムが使用される、請求項34〜38のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
被検体における腫瘍性疾患の処置方法であって、
a)請求項34〜39のうちのいずれかの方法によって、癌、例えば乳癌を有する被検体における所定の処置様式についての治療的成功を予測する工程と、
b)前記処置様式が成功すると予測される場合、前記処置様式によって、前記患者における前記腫瘍性疾患を処置する工程と、
を含む方法。
【請求項41】
腫瘍性疾患を罹患している被検体のための治療法を選択する方法であって、
(i)前記被検体から生物学的試料を得る工程と、
(ii)複数の個々の処置様式について、癌、例えば乳癌を有する被検体における治療的成功を、請求項1〜7のうちのいずれかの方法によって前記試料から予測する工程と、
(iii)工程(ii)において成功すると予測される治療様式を選択する工程と、
を含む方法。
【請求項42】
前記発現レベルが、
ハイブリダイゼーションに基づいた方法を用いて、または
アレイプローブを利用するハイブリダイゼーションに基づいた方法を用いて、または
個々に標識したプローブを利用するハイブリダイゼーションに基づいた方法を用いて測定されるか、あるいは
リアルタイムPCRによって、または(v)ポリペプチド、タンパク質もしくはそれらの誘導体の発現を評価することによって、または(vi)ポリペプチド、タンパク質もしくはそれらの誘導体の量を評価することによって測定される、請求項34〜41のうちのいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−509078(P2011−509078A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540185(P2010−540185)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【国際出願番号】PCT/IB2008/003622
【国際公開番号】WO2009/083780
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(510179179)
【出願人】(507042442)インサーム (インスティテュート ナショナル デ ラ サンテ エ デ ラ ルシェルシェ メディカル) (4)
【出願人】(510178493)インスティテュート パオリ−カルメテス (3)
【Fターム(参考)】