説明

乳酸菌含有飲料及びその製造方法

【課題】 乳酸菌を所定量含有するとともに、止渇飲料としての清涼感を有し、さらに乳酸菌飲料の風味が改善され、かつ乳酸菌に由来する異味や異臭が抑制された乳酸菌飲料を提供する。
【解決手段】 乳酸菌と無脂乳固形分とを含有する乳酸菌飲料であって、乳酸菌飲料における無脂乳固形分の含有量B(質量%)に対する乳酸菌の菌体数A(個/100g)の比A/Bが5.0×10〜1.0×1012であり、かつさらにガラクトマンナン類を含有することを特徴とする乳酸菌飲料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸菌と無脂乳固形分とを含有する乳酸菌飲料、乳酸菌飲料の製造方法、及び乳酸菌飲料の風味改善方法飲料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乳酸菌飲料は、乳酸菌を含有する飲料である。乳酸菌は、これを摂取することで免疫活性が高まる等、健康への好影響が知られており、近年における消費者の健康への関心が高まるにつれ、手軽に乳酸菌を摂取することができる乳酸菌飲料が注目されている。
【0003】
しかし、飲料で乳酸菌を十分な量(例えば、ヨーグルト1カップ分の乳酸菌量)摂取するためには多量の飲料摂取が必要であり、手軽に摂取できるとはいえない。これに対し、乳酸菌を含有するはっ酵乳の配合量を高めると、はっ酵乳に含まれる乳成分の分散性が低いため、常温で保管すると沈澱が分離するなどの問題が生じる。
【0004】
これに対し、乳酸菌飲料における沈澱の発生を抑制するために、ペクチン等の増粘多糖類を用いた乳酸菌飲料が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−285640号公報
【特許文献2】特開平11−262379号公報
【特許文献3】特開2005−185132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これらの乳酸菌飲料等は、はっ酵乳を多く含有させているため、飲用したときに無脂乳固形分等によるまったりとした重たい風味があり、のどの渇きを癒す止渇飲料としての清涼感に欠けていた。また、乳酸菌飲料等に乳酸菌を多く含有させた場合、飲用したときに乳酸菌に由来する異味や異臭が感じられることがあった。これに対し、はっ酵乳の配合量を少なくすると、乳酸菌を十分な量摂取することができず、また乳酸菌飲料としての香り立ちやミルク感等の風味に欠けるほか、さらに増粘多糖類によりこれらの風味が低下する等の問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、乳酸菌を所定量含有するとともに、止渇飲料としての清涼感を有し、さらに乳酸菌飲料の風味が改善され、かつ乳酸菌に由来する異味や異臭が抑制された乳酸菌飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、第一に本発明は、乳酸菌と無脂乳固形分とを含有する乳酸菌飲料であって、前記乳酸菌飲料における前記無脂乳固形分の含有量B(質量%)に対する前記乳酸菌の菌体数A(個/100g)の比A/Bが5.0×10〜1.0×1012であり、かつさらにガラクトマンナン類を含有することを特徴とする乳酸菌飲料を提供する(発明1)。
【0009】
上記発明(発明1)の乳酸菌飲料は、乳酸菌を所定量含有するとともに、止渇飲料としての清涼感を有し、さらに乳酸菌飲料の風味が改善され、かつ乳酸菌に由来する異味や異臭が抑制されたものとなる。
【0010】
上記発明(発明1)においては、前記乳酸菌飲料における前記ガラクトマンナン類の含有量C(質量%)に対する乳酸菌の菌体数A(個/100g)の比A/Cが1.0×1011〜1.0×1014であることが好ましい。(発明2)。
【0011】
上記発明(発明1又は2)においては、前記ガラクトマンナン類として、前記ガラクトマンナン類を構成するガラクトースとマンノースとの構成比(マンノース:ガラクトース)が3.5:1以上4.5:1未満であるガラクトマンナンX、及び/又は前記ガラクトースとマンノースとの構成比が1.5:1以上2.5:1未満であるガラクトマンナンYを含有することが好ましい(発明3)。
【0012】
上記発明(発明3)においては、前記ガラクトマンナンX及び前記ガラクトマンナンYを含有し、前記乳酸菌飲料における前記ガラクトマンナンYの含有量y(質量%)に対する、前記乳酸菌飲料における前記ガラクトマンナンXの含有量x(質量%)の比x/yが、0.5〜100であることが好ましい(発明4)。
【0013】
上記発明(発明1〜4)においては、前記乳酸菌飲料における前記乳酸菌の菌体数Aが2.0×10〜5.0×1012個/100gであることが好ましい(発明5)。
【0014】
上記発明(発明1〜5)においては、前記乳酸菌飲料における前記ガラクトマンナン類の含有量が0.01〜0.5質量%であることが好ましい(発明6)。
【0015】
第二に本発明は、乳酸菌と無脂乳固形分とを含有する乳酸菌飲料であって、前記乳酸菌飲料における前記無脂乳固形分の含有量B(質量%)に対する前記乳酸菌の菌体数A(個/100g)の比A/Bが5.0×10〜1.0×1012であり、かつさらに糊料を含有することを特徴とする乳酸菌飲料を提供する(発明7)。
【0016】
第三に本発明は、乳酸菌飲料の製造方法であって、乳酸菌と、無脂乳固形分と、ガラクトマンナン類とを含有させるとともに、前記乳酸菌飲料における前記無脂乳固形分の含有量B(質量%)に対する前記乳酸菌の菌体数A(個/100g)の比A/Bが5.0×10〜1.0×1012となるように、前記乳酸菌の菌体数A及び前記無脂乳固形分の含有量Bを調整することを特徴とする乳酸菌飲料の製造方法を提供する(発明8)。
【0017】
第四に本発明は、乳酸菌飲料の製造方法であって、乳酸菌と、無脂乳固形分と、糊料とを含有させるとともに、前記乳酸菌飲料における前記無脂乳固形分の含有量B(質量%)に対する前記乳酸菌の菌体数A(個/100g)の比A/Bが5.0×10〜1.0×1012となるように、前記乳酸菌の菌体数A及び前記無脂乳固形分の含有量Bを調整することを特徴とする乳酸菌飲料の製造方法を提供する(発明9)。
【0018】
第五に本発明は、乳酸菌と無脂乳固形分とを含有する乳酸菌飲料の風味改善方法であって、前記乳酸菌飲料における前記無脂乳固形分の含有量B(質量%)に対する前記乳酸菌の菌体数A(個/100g)の比A/Bが5.0×10〜1.0×1012となるように、前記乳酸菌の菌体数A及び前記無脂乳固形分の含有量Bを調整するとともに、さらにガラクトマンナン類を含有させることを特徴とする乳酸菌飲料の風味改善方法を提供する(発明10)。
【発明の効果】
【0019】
本発明の乳酸菌飲料は、乳酸菌を所定量含有するとともに、止渇飲料としての清涼感を有し、さらに乳酸菌飲料の風味が改善され、かつ乳酸菌に由来する異味や異臭が抑制されたものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係る乳酸菌飲料は、乳酸菌と、無脂乳固形分とを含有する。
【0021】
本実施形態において使用される乳酸菌は、一般的に食品に用いられるものであれば、特に制限されず、例えば、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、ビフィドバクテリウム(Biffidobacterium)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属に属する乳酸菌を例示することができ、複数の乳酸菌を組み合わせて使用しても良い。本実施形態においては、乳又は乳製品を原料としてこれらの乳酸菌により発酵させて得られるはっ酵乳や、乳酸菌乾燥粉末等を適宜配合することで、本実施形態に係る乳酸菌飲料に乳酸菌を含有させる。
【0022】
無脂乳固形分は、乳又は乳製品等の乳原料から水分及び乳脂肪分を除いた固形分をいう。乳原料としては、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ等の哺乳動物の乳のほか、脱脂粉乳、全粉乳、バターミルク粉、無糖練乳、脱脂加糖練乳、全脂加糖練乳等の乳製品が挙げられ、これらを水に還元したものも含まれる。これらの乳若しくは乳製品等の乳原料、又は乳酸菌を含有させるために使用するはっ酵乳等を適宜配合することで、本実施形態に係る乳酸菌飲料に乳酸菌を含有させることができる。
【0023】
本実施形態に係る乳酸菌飲料は、乳酸菌飲料における無脂乳固形分の含有量B(質量%)に対する乳酸菌の菌体数A(個/100g)の比A/Bが5.0×10〜1.0×1012となるものである。
【0024】
本実施形態に係る乳酸菌飲料は、上記A/Bが上述した範囲にあることで、乳酸菌を所定量含有するとともに、止渇飲料としての清涼感を有するものとなる。A/Bは、1.0×1010〜1.0×1011であることがさらに好ましく、1.5×1010〜7.0×1010であることが特に好ましい。
【0025】
なお、乳酸菌の菌体数Aは、生菌及び死滅菌の菌対数の合計であり、常法に従って検鏡計数法、濁度法、コールカウンター法、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA法)等により測定することが可能である。本実施形態に係る乳酸菌飲料における乳酸菌の菌体数Aは、上述したはっ酵乳や乳酸菌乾燥粉末等を適当量配合することで、所望の数値範囲に設定することができる。
【0026】
また、無脂乳固形分の含有量Bは、一般に「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(昭和26年12月27日厚生省令第52号)に記載された方法により測定される。本実施形態に係る乳酸菌飲料における無脂乳固形分の含有量Bは、上述した乳又は乳製品等の乳原料やはっ酵乳等を適当量配合することで、所望の数値範囲に設定することができる。
【0027】
本実施形態に係る乳酸菌飲料においては、乳酸菌の菌体数Aが2.0×10〜5.0×1012個/100gであることが好ましく、2.0×1010〜5.0×1011個/100gであることがさらに好ましい。乳酸菌の菌体数Aがこの範囲にあることで、本実施形態に係る乳酸菌飲料が乳酸菌を通常よりも高濃度で含有するものとなり、飲用したときに乳酸菌を十分に摂取することができるとともに、乳酸菌飲料の液色を見た目にも好ましい色に保つことができる。
【0028】
また、本実施形態に係る乳酸菌飲料においては、無脂乳固形分の含有量Bが0.4〜5.0質量%であることが好ましく、1.0〜3.0質量%であることがさらに好ましい。無脂乳固形分の含有量Bがこの範囲にあることで、本実施形態に係る乳酸菌飲料が止渇飲料としての清涼感を有するものとなる。
【0029】
本実施形態に係る乳酸菌飲料は、乳酸菌及び無脂乳固形分以外に、さらにガラクトマンナン類を含有することが好ましい。ここで、ガラクトマンナン類とは、主にマンノースとガラクトースとで構成される多糖類であり、マメ科植物等の植物や一部の菌類に含まれる。ガラクトマンナン類におけるガラクトースとマンノースとの構成比(マンノース:ガラクトース)は、原料によって異なることが知られている。一般に利用可能なガラクトマンナン類としては、フェヌグリークの種子から得られるフェヌグリークガム(マンノース:ガラクトース=約1:1,以下同様に表記)、グァーの種子から得られるグァーガム(約2:1)、タラの種子から得られるタラガム(約3:1)、イナゴマメの種子から得られるローカストビーンガム(約4:1)、カシアの種子から得られるカシアガム(約5:1)などが挙げられる。
【0030】
本実施形態に係る乳酸菌飲料は、ガラクトマンナン類を含有することで、ボディ感、トップの香り立ち、後味のミルク感等の乳酸菌飲料の風味が改善されたものになるとともに、A/Bが上述した範囲にあっても、乳酸菌に由来する異味や異臭が感じられないものとなる。
【0031】
ここで、本明細書において、乳酸菌飲料のボディ感とは、味の厚みとして一体感と濃さを感じ、喉越し感のある質感を意味する。また、トップの香り立ちとは、口に含んで直ぐに感じる部分であって、乳酸菌飲料においては、ヨーグルトの甘酸っぱさを伴った爽やかな香気を意味する。さらに、後味のミルク感とは、乳酸菌飲料を飲み込んだ余韻として感じる部分であって、牛乳由来の風味で、コクとなめらかな喉越しのことである。
【0032】
また、本明細書において、乳酸菌に由来する異味とは、ざらつき感のある苦さであって、後味において苦味が強調され、清涼感とミルク感とを低下させる不快な味を意味する。さらに、乳酸菌に由来する異臭とは、埃臭く、ヨーグルトの軽い香気を抑制し、清涼感を失わせる不快な臭気のことである。
【0033】
本実施形態に係る乳酸菌飲料は、乳酸菌飲料におけるガラクトマンナン類の含有量C(質量%)に対する乳酸菌の菌体数A(個/100g)の比A/Cが1.0×1011〜1.0×1014であることが好ましく、3.7×1011〜7.0×1013であることがより好ましく、3.7×1011〜2.3×1013であることがさらに好ましい。A/Cがこの範囲にあることで、本実施形態に係る乳酸菌飲料の風味がより改善されるとともに、乳酸菌に由来する異味・異臭がより抑制されたものとなる。
【0034】
また、本実施形態に係る乳酸菌飲料は、ガラクトマンナン類の含有量Cが0.01〜0.5質量%であることが好ましく、0.04〜0.2質量%であることがさらに好ましい。ガラクトマンナン類の含有量がこの範囲にあることで、本実施形態に係る乳酸菌飲料の風味がより改善されたものとなる。
【0035】
本実施形態に係る乳酸菌飲料は、上記ガラクトマンナン類として、ガラクトースとマンノースとの構成比(マンノース:ガラクトース)が3.5:1以上4.5:1未満であるガラクトマンナンX、及び/又はガラクトースとマンノースとの構成比が1.5:1以上2.5:1未満であるガラクトマンナンYを含有することが好ましい。ガラクトマンナンXを含有させることで、本実施形態に係る乳酸菌飲料において、ボディ感とトップの香り立ち(特にヨーグルトの爽やかな香気)とをより良好なものにすることができる。一方、ガラクトマンナンYを含有させることで、ボディ感及び後味のミルク感がより良好なものとなる。
【0036】
ここで、上記ガラクトマンナンXとしては、例えば上述したローカストビーンガム等が挙げられる。また、上記ガラクトマンナンYとしては、例えば上述したグァーガム等が挙げられるほか、コーヒー焙煎豆から可溶性固形分を抽出した後の残渣から得られるガラクトマンナン(特開2007−217466号公報に記載、マンノース:ガラクトース=2.4:1)等が挙げられる。
【0037】
本実施形態に係る乳酸菌飲料においてガラクトマンナンXとガラクトマンナンYとを併用する場合は、ガラクトマンナンYの含有量y(質量%)に対するガラクトマンナンXの含有量x(質量%)の比x/yが0.5〜100であることが好ましく、1〜50であることがさらに好ましい。x/yがこの範囲にあることで、本実施形態に係る乳酸菌飲料において、ボディ感、トップの香り立ち、後味のミルク感がいずれも良好なものとなり、特にトップの香り立ちと後味のミルク感とのバランスが良好なものとなる。また、x/yが上述した範囲にあることで、本実施形態に係る乳酸菌飲料において、乳酸菌に由来する異味・異臭がより抑制される。そのため、x/yが上述した範囲にあることで、本実施形態に係る乳酸菌飲料が嗜好的に極めて好ましいものとなる。
【0038】
また、本実施形態に係る乳酸菌飲料は、水や、公知の飲料に含まれる材料(成分)、例えば、糊料、ビタミン類、甘味付与剤、酸味料、香料、ミネラル分、機能性成分等を、本実施形態による効果を損なわない範囲で配合してもよい。
【0039】
水は、飲用に適した水であればよく、例えば、純水、硬水、軟水、イオン交換水等のほか、これらの水を脱気処理した脱気水等が挙げられる。
【0040】
本実施形態における乳酸菌飲料は、乳酸菌や無脂乳固形分等の成分の分散性又は安定性を向上させるために、糊料(安定剤及び増粘剤を包含する)を含有することが好ましい。乳酸菌飲料では、時間の経過とともに上記の成分が沈澱し上清と分離する傾向にあるが、糊料を含有することにより、時間が経過しても上記成分が沈澱し難く、乳酸菌飲料を均質な状態に維持することができる。
【0041】
糊料としては、上述したガラクトマンナン類のほか、例えば、ペクチン、セルロース、ゼラチン、コラーゲン、寒天、アルギン酸ナトリウム、大豆多糖類、アラビアガム、タマリンドシードガム等が挙げられるが、pHと粘度の観点から、ペクチン及び大豆多糖類が好ましい。なお、糊料としては、この他にカラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム等が知られているが、後述する実施例にて示すように、乳酸菌飲料の分離を抑制できないため、かかる観点においては、これらの糊料を使用しないことが好ましい。
【0042】
この他、ビタミン類としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンD、ビタミンK及びビタミンB群等が挙げられる。
【0043】
甘味付与剤としては、糖類又は甘味料を使用することができ、糖類としては、例えば、ショ糖、果糖、ブドウ糖、果糖ブドウ糖液糖、還元麦芽糖等が挙げられる。甘味料としては、例えば、砂糖、グラニュー糖、異性化糖、キシリトール、パラチノース、エリスリトール等のほか、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ネオテーム、ステビア抽出物、サッカリン、スクラロース等の高甘味度甘味料が挙げられる。また、ソルビトール等の糖アルコールを含んでいてもよいし、シュガーレスバルク甘味料、バルク砂糖甘味料等を含んでいてもよい。
【0044】
酸味料としては、例えば、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、又はそれらの塩類が挙げられ、中でも、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸等が好ましく、クエン酸が特に好ましい。
【0045】
香料としては、例えば、乳又は乳製品から得られる香料、柑橘その他果実から抽出した香料、植物の種実、根茎、木皮、葉等又はこれらの抽出物、合成香料等が挙げられる。
【0046】
ミネラル分としては、例えば、カルシウム、カリウム、クロム、銅、フッ素、ヨウ素、鉄、マグネシウム、マンガン、リン、セレン、ケイ素、モリブデン及び亜鉛等が挙げられる。
【0047】
機能性成分としては、例えば、コラーゲン、コンドロイチン硫酸、グルコサミン、ヒアルロン酸、プラセンタ、牡蠣エキス、キトサン、プロポリス、ローヤルゼリー、トコフェロール、ポリフェノール、梅エキス、アロエ、霊芝、アガリクス等が挙げられる。
【0048】
また、本実施形態に係る乳酸菌飲料は、その他、各種エステル類、乳化剤、保存料、調味料、着色料(色素)、油、pH調整剤、品質安定剤等を含有してもよい。
【0049】
本実施形態に係る乳酸菌飲料は、pHが3.0〜4.5であることが好ましく、3.5〜4.0であることがより好ましい。乳酸菌飲料におけるpHがこの範囲にあることで、はっ酵乳に由来するヨーグルト様の爽やかな風味と、乳酸菌飲料のボディ感との両立が可能となる。なお、乳酸菌飲料のpHは、常法に従ってpHメーターにて測定することができる。また、本実施形態に係る乳酸菌飲料のpHは、使用するはっ酵乳やpH調整剤の配合量、またはっ酵乳の発酵度合い等を調整することにより、上記範囲に設定することが可能である。
【0050】
また、本実施形態に係る乳酸菌飲料は、Brix(Bx)が2.0〜20であることが好ましく、4〜17であることがより好ましい。ここで、Bxは一般に糖度を表す指標であるが、本実施形態においては、乳酸菌飲料における溶存固形分濃度の指標としてBxを用いることができる。本実施形態に係る乳酸菌飲料は、Bxが上記範囲にあることで、十分なはっ酵乳の風味を活かした乳酸菌飲料を製造することができ、また甘味調整においても飲用に適した甘味が付与されたものとなる。なお、乳酸菌飲料のBxは、常法に従って屈折計にて測定することができる。また、本実施形態に係る乳酸菌飲料のBxは、使用するはっ酵乳、糖類、脱脂粉乳等の配合量を調整することにより、上記範囲に設定することが可能である。
【0051】
本実施形態に係る乳酸菌飲料は、容器に充填された形で提供されることが好ましい。この場合において、使用される容器は特に限定されず、金属缶、PETボトル、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶等の通常用いられる飲料用容器であればよい。また、本実施形態に係る乳酸菌飲料は、常温においても性状が安定し分離しにくいため、透明の飲料用容器(例えば、PETボトル等)を用いても良い。なお、本実施形態に係る乳酸菌飲料が容器に充填された容器詰飲料として提供される場合、通常は希釈せずにそのまま飲用できるものであるが、これに限定されるものではない。
【0052】
本実施形態に係る乳酸菌飲料は、上記A/Bが所定の範囲内となるように乳酸菌及び/又は無脂乳固形分を含有する組成物等とガラクトマンナン類とを配合する以外、従来公知の方法により製造することができる。例えば、水に、乳酸菌及び/又は無脂乳固形分を含有する組成物並びにガラクトマンナン類等を添加し、さらに所望により上述した他の成分を添加して攪拌し、必要に応じてpHの調整を行い、飲料原液を調製する。そして、その後均質化して殺菌処理を行い、容器に充填する工程により製造することができる。
【0053】
ここで、本実施形態に係る乳酸菌飲料が、さらにペクチン等のガラクトマンナン類以外の糊料を含有する場合、ペクチン等の糊料とガラクトマンナン類とを同時に溶解させても良く、また分けて溶解させても良い。ペクチン等の糊料とガラクトマンナン類とを分けて溶解させることで、乳酸菌又は無脂乳固形分による凝集の発生を防ぐことができ、製造工程全般において飲料原液を安定な状態に維持することができる。
【0054】
以上説明した本実施形態に係る乳酸菌飲料は、乳酸菌を通常よりも高濃度で含有するとともに、止渇飲料としての清涼感を有し、さらに乳酸菌飲料の風味が改善され、かつ乳酸菌に由来する異味や異臭が抑制されたものとなる。本実施形態に係る乳酸菌飲料は、常温流通が可能なものである。
【0055】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0056】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0057】
〔乳酸菌飲料の製造(1)〕
水に、乳酸菌飲料における最終濃度が表1に示す濃度になるように、はっ酵乳(乳酸菌菌体数:3.55×10個/g,無脂乳固形分:22質量%)、脱脂粉乳、乳酸菌乾燥粉末(乳酸菌菌体数:5×1012個/g)、甘味付与剤、乳酸カルシウム、クエン酸、香料、大豆多糖類及びペクチンを添加して完全に溶解させた後、表1に示す増粘多糖類を添加し、乳酸菌飲料を得た(試料1〜12)。
【0058】
<試験例1>Brix及びpHの測定
試料1〜12の各乳酸菌飲料(サンプル)について、屈折計(アタゴ社製,RX5000 α−Bev)を用い、各サンプルを屈折計のプリズム上に薄く塗布し、Bxを測定した。また、pHメーターを用いてpHを測定した。結果を表1に示す。
【0059】
<試験例2>性状評価
試料1〜12の各乳酸菌飲料(サンプル)を25℃にて2日間保管した後、乳酸菌飲料の上清と沈澱とが分離しているか否かを、5人のパネラーにより目視にて評価した。結果を表1に示す。
【0060】
<試験例3>官能評価
試料1〜12の各乳酸菌飲料(サンプル)について、官能評価試験を行った。かかる官能評価試験は、飲料の開発を担当する訓練された5人のパネラーにより、5℃に冷却保管されたサンプル20mLを試飲することにより行った。次に示す基準で、ボディ感、トップの香り立ち、後味のミルク感、及び清涼感の4項目に関し、5段階にて評価した。最も多かった評価を表1に示す。
【0061】
=ボディ感の評価=
5:強く感じられる
4:やや強い
3:やや弱い
2:弱い
1:かなり弱い
【0062】
=トップの香り立ちの評価=
5:強く感じられる
4:やや強い
3:やや弱い
2:弱い
1:かなり弱い
【0063】
=後味のミルク感の評価=
5:強く感じられる
4:やや強い
3:やや弱い
2:弱い
1:かなり弱い
【0064】
=清涼感の評価=
5:強く感じられる
4:やや強い
3:やや弱い
2:弱い
1:かなり弱い
【0065】
【表1】

【0066】
表1に示すように、乳酸菌を所定量含みかつ清涼感をもたせるために、乳酸菌飲料におけるA/Bを所定の範囲内にすると、ガラクトマンナン類、タマリンドガム及びアラビアガムを添加した試料は、25℃にて2日間保管した後も分離が見られなかったが、その他の増粘多糖類を添加した試料では、上清と沈澱との分離が見られた。また、試料1では明らかな分離ではないものの底部に沈殿が認められた。沈澱が見られなかった試料のうち、ガラクトマンナン類を添加した試料では乳酸菌飲料の風味が改善されていたのに対し、タマリンドガム又はアラビアガムを添加した試料では、風味の改善が見られなかった。
【0067】
〔乳酸菌飲料の製造(2)〕
乳酸菌飲料における最終濃度が表2に示す濃度になるように各成分を添加した以外は上述と同様に乳酸菌飲料を製造した(試料13〜27)。
【0068】
得られた試料13〜27の各乳酸菌飲料(サンプル)について、以下に示す以外は試験例1〜3と同様に、Bx及びpHを測定し、かつ性状評価及び官能評価を行った。なお、性状評価においては、分離ではなく沈澱の有無を25℃4週間にて評価したほか、サンプルの外観(液色)に問題がないかについても合わせて評価した。また官能評価においては、さらに乳酸菌に由来する異味及び異臭について、次に示す基準で5段階にて評価した。結果を表2に示す。
【0069】
=異味(後味の苦味)の評価=
5:ほとんど感じられず、好ましい
4:わずかに感じられる
3:弱く感じられるが許容範囲である
2:やや強い
1:強く感じられ、不快である
【0070】
=異臭(埃臭さ)の評価=
5:ほとんど感じられず、好ましい
4:わずかに感じられる
3:弱く感じられるが許容範囲である
2:やや強い
1:強く感じられ、不快である
【0071】
【表2】

【0072】
表2に示すように、ガラクトマンナン類を添加していない試料13〜15では沈澱が見られ、かつ清涼感も失われていた。これに対し、ガラクトマンナン類を添加した試料は、4週間後でも沈澱が顕著に見られず、また乳酸菌飲料の風味が改善されるとともに、乳酸菌に由来する異味・異臭が抑制された、嗜好的に好ましいものであった。ただし、A/Bが本発明の範囲より大きい試料16及び17は、乳酸菌飲料の外観(液色)が灰色みを帯びており、飲料としては不適切なものであった。
【0073】
一方、タマリンドガム又はアラビアガムを添加した試料は、同じ条件にてガラクトマンナン類を添加した試料と比較すると、4週間後の沈澱発生を抑制できない傾向にあった。また、タマリンドガムを添加した試料24及び25は、乳酸菌に由来する異味や異臭が改善されておらず、一方アラビアガムを添加した試料26及び27は、異味や異臭は改善されるものの、後味のミルク感が弱くなる傾向にあった。さらに、A/Bが大きい試料24及び26は、乳酸菌飲料が灰色みを帯びていた。
【0074】
〔乳酸菌飲料の製造(3)〕
乳酸菌飲料における最終濃度が表3に示す濃度になるように各成分を添加した以外は上述と同様に乳酸菌飲料を製造した(試料28〜30)。
【0075】
得られた試料28〜30の各乳酸菌飲料(サンプル)について、以下に示す以外は試験例1〜3と同様に、Bx及びpHを測定し、かつ性状評価及び官能評価を行った。なお、性状評価においては、分離ではなく沈澱の有無を25℃4週間にて評価した。結果を表3に示す。
【0076】
【表3】

【0077】
表3に示すように、増粘多糖類としてガラクトマンナン類を添加した乳酸菌飲料であっても、A/Bの値が本発明の範囲に比べて小さい値に維持した場合、試料28は乳酸菌を十分な量摂取するための菌数Aを確保することができず、一方菌数Aを確保するためにはっ酵乳の配合量を増やすと、4週間後の性状が不安定になり、かつ乳酸菌飲料の清涼感に欠けるものとなった。このため、ガラクトマンナン類を含有させるとともに、A/Bを所定の範囲内とすることが、本発明の効果を発揮するうえで重要であることが確認された。
【0078】
〔乳酸菌飲料の製造(4)〕
乳酸菌飲料における最終濃度が表4に示す濃度になるように各成分を添加した以外は上述と同様に乳酸菌飲料を製造した(試料31〜46)。
【0079】
得られた試料31〜46の各乳酸菌飲料(サンプル)について、以下に示す以外は試験例1〜3と同様に、Bx及びpHを測定し、かつ性状評価及び官能評価を行った。なお、性状評価においては、分離ではなく沈澱の有無を25℃4週間にて評価した。結果を表4に示す。
【0080】
【表4】

【0081】
表4に示すように、ガラクトマンナンXであるローカストビーンガムを添加することで、乳酸菌飲料におけるトップの香り立ちが特に強まり、一方ガラクトマンナンYであるグァーガムを添加することで、後味のミルク感が特に強調されたものとなった。さらに、ガラクトマンナンX及びYを同時に添加した乳酸菌飲料は、トップの香り立ち及び後味のミルク感がいずれも強まってバランスが良好なものとなり、嗜好的に極めて好ましいものであった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、乳酸菌を所定量含有するとともに、止渇飲料としての清涼感を有し、かつ乳酸菌飲料の風味が改善された乳酸菌飲料として有用であり、特に無脂乳固形分が低濃度であっても風味が良好な乳酸菌飲料として特に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸菌と無脂乳固形分とを含有する乳酸菌飲料であって、
前記乳酸菌飲料における前記無脂乳固形分の含有量B(質量%)に対する前記乳酸菌の菌体数A(個/100g)の比A/Bが5.0×10〜1.0×1012であり、かつ
さらにガラクトマンナン類を含有する
ことを特徴とする乳酸菌飲料。
【請求項2】
前記乳酸菌飲料における前記ガラクトマンナン類の含有量C(質量%)に対する乳酸菌の菌体数A(個/100g)の比A/Cが1.0×1011〜1.0×1014であることを特徴とする請求項1に記載の乳酸菌飲料。
【請求項3】
前記ガラクトマンナン類として、前記ガラクトマンナン類を構成するガラクトースとマンノースとの構成比(マンノース:ガラクトース)が3.5:1以上4.5:1未満であるガラクトマンナンX、及び/又は前記ガラクトースとマンノースとの構成比が1.5:1以上2.5:1未満であるガラクトマンナンYを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の乳酸菌飲料。
【請求項4】
前記ガラクトマンナンX及び前記ガラクトマンナンYを含有し、
前記乳酸菌飲料における前記ガラクトマンナンYの含有量y(質量%)に対する、前記乳酸菌飲料における前記ガラクトマンナンXの含有量x(質量%)の比x/yが、0.5〜100であることを特徴とする請求項3に記載の乳酸菌飲料。
【請求項5】
前記乳酸菌飲料における前記乳酸菌の菌体数Aが2.0×10〜5.0×1012個/100gであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の乳酸菌飲料。
【請求項6】
前記乳酸菌飲料における前記ガラクトマンナン類の含有量が0.01〜0.5質量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の乳酸菌飲料。
【請求項7】
乳酸菌と無脂乳固形分とを含有する乳酸菌飲料であって、
前記乳酸菌飲料における前記無脂乳固形分の含有量B(質量%)に対する前記乳酸菌の菌体数A(個/100g)の比A/Bが5.0×10〜1.0×1012であり、かつ
さらに糊料を含有する
ことを特徴とする乳酸菌飲料。
【請求項8】
乳酸菌飲料の製造方法であって、
乳酸菌と、無脂乳固形分と、ガラクトマンナン類とを含有させるとともに、
前記乳酸菌飲料における前記無脂乳固形分の含有量B(質量%)に対する前記乳酸菌の菌体数A(個/100g)の比A/Bが5.0×10〜1.0×1012となるように、前記乳酸菌の菌体数A及び前記無脂乳固形分の含有量Bを調整する
ことを特徴とする乳酸菌飲料の製造方法。
【請求項9】
乳酸菌飲料の製造方法であって、
乳酸菌と、無脂乳固形分と、糊料とを含有させるとともに、
前記乳酸菌飲料における前記無脂乳固形分の含有量B(質量%)に対する前記乳酸菌の菌体数A(個/100g)の比A/Bが5.0×10〜1.0×1012となるように、前記乳酸菌の菌体数A及び前記無脂乳固形分の含有量Bを調整する
ことを特徴とする乳酸菌飲料の製造方法。
【請求項10】
乳酸菌と無脂乳固形分とを含有する乳酸菌飲料の風味改善方法であって、
前記乳酸菌飲料における前記無脂乳固形分の含有量B(質量%)に対する前記乳酸菌の菌体数A(個/100g)の比A/Bが5.0×10〜1.0×1012となるように、前記乳酸菌の菌体数A及び前記無脂乳固形分の含有量Bを調整するとともに、
さらにガラクトマンナン類を含有させる
ことを特徴とする乳酸菌飲料の風味改善方法。

【公開番号】特開2013−94154(P2013−94154A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242866(P2011−242866)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(591014972)株式会社 伊藤園 (213)
【Fターム(参考)】