説明

乳量計

【課題】 乳質,電極を用いた場合の電極汚れ,乳の断続的な流れなどによる検出値への影響を排除し、検出誤差の低減により高精度で安定性の高い計測を行うとともに、製造容易性,メンテナンス性及び耐久性、更には汎用性の面で有利にする。
【解決手段】 送乳用のミルクチューブTの中途に接続して当該ミルクチューブTを流れる乳の流量を計測する乳量計1であって、乳が流れた際にミルクチューブTの所定部位における前後の流路Ra,Rb間に差圧を発生させる差圧発生手段2と、この差圧発生手段2により発生する差圧の大きさを検出する差圧検出手段3と、この差圧検出手段3から得る差圧値Dpを流量値Dfに変換する差圧流量変換手段4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送乳用のミルクチューブの中途に接続して当該ミルクチューブを流れる乳の流量を計測する乳量計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乳量計としては、特開2003−97987号公報で開示される乳の流量検出装置が知られている。この流量検出装置は、ティートカップユニットとミルクパイプラインを接続するミルクチューブの中途に接続し、乳の流路に配した一対の電極により乳の流量を検出する流量検出装置であって、乳を放出するノズル部と、このノズル部から放出された乳を受ける乳受面部を備え、一方の電極をノズル部又はこのノズル部の手前の流路に配設するとともに、他方の電極を乳受面部に配設したものであり、一方の電極と他方の電極間の電気抵抗を測定し、この測定結果を換算して乳の流量を求めることができる。
【特許文献1】特開2003−97987号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述した従来の流量検出装置(乳量計)は、次のような解決すべき課題が存在した。
【0004】
第一に、電極間における乳の抵抗値を検出するため、乳質や電極の汚れ等により検出値にバラツキを生じるとともに、乳の断続的な流れにより一方の電極に触れない場合には検出されないなど、誤差の発生要因が多い。結局、検出値に10%前後の誤差を生じる場合があるなど、高精度で安定性の高い計測を行うことができない。
【0005】
第二に、ミルクチューブの中途に一対の電極を組付ける必要があるため、製造容易性及びメンテナンス性の面で不利になるとともに、既設のミルクチューブに対しては容易に後付けできないなど、汎用性の面からも不利になる。
【0006】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した乳量計の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するため、送乳用のミルクチューブTの中途に接続して当該ミルクチューブTを流れる乳の流量を計測する乳量計1において、乳が流れた際にミルクチューブTの所定部位における前後の流路Ra,Rb間に差圧を発生させる差圧発生手段2と、この差圧発生手段2により発生する差圧の大きさを検出する差圧検出手段3と、この差圧検出手段3から得る差圧値Dpを流量値Dfに変換する差圧流量変換手段4とを備えることを特徴とする。
【0008】
この場合、発明の好適な態様により、差圧発生手段2は、ミルクチューブTの中途に設けることにより流れる乳を拡散させる拡散ユニット11又はミルクチューブTの中途に設けることにより少なくとも乳が上昇した後に下降する湾曲流路部12を利用することができる。また、差圧検出手段3は、差圧検出器3oと、この差圧検出器3oに有する二つの圧力導入口3a,3bをミルクチューブTの所定部位における前後の流路Ra,Rbにそれぞれ連通接続する二つの圧力導入管7a,7bを備えて構成できるとともに、圧力導入管7a,7bの中途には、差圧検出器3o側への乳の進入を防止する隔離部材8a…を介在させることができる。一方、乳量計1には、ミルクチューブTの中途に配設して乳の流量を検出するための一対の電極13,14と、この電極13と14間の電気抵抗を検出し、かつ得られた電気抵抗値Drを流量値Dfsに変換する抵抗流量変換手段15とを設けることができるとともに、更に、抵抗流量変換手段15から得る流量値Dfsと差圧流量変換手段4から得る流量値Dfを比較処理及び/又は演算処理する処理部16を設けることができる。
【発明の効果】
【0009】
このような構成を有する本発明に係る乳量計1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0010】
(1) 乳が流れた際にミルクチューブTの所定部位における前後の流路Ra,Rb間に発生する差圧を検出するため、乳質,電極を用いた場合の電極汚れ,乳の断続的な流れなどによる検出値への影響を排除でき、検出誤差の低減により高精度で安定性の高い計測を行うことができる。
【0011】
(2) ミルクチューブTの中途に内圧(真空圧)を検出する導入管を分岐接続すれば足りるため、電極を用いた場合の煩雑な組付構造が不要になり、製造容易性,メンテナンス性及び耐久性の面で有利になるとともに、既設のミルクチューブTに対しても容易に後付けできるなど、汎用性の面からも有利になる。
【0012】
(3) 好適な態様により、差圧発生手段2として、拡散ユニット11又は湾曲流路部12を利用すれば、既存の拡散ユニット11又は湾曲流路部12を差圧発生手段2に兼用することができ、別途の差圧発生手段2を設ける必要がないなど、コストダウンに寄与できる。
【0013】
(4) 好適な態様により、差圧検出手段3を、差圧検出器3oと二つの圧力導入管7a,7bにより構成するとともに、圧力導入管7a,7bの中途に、差圧検出器3o側への乳の進入を防止する隔離部材8a…を介在させれば、ミルクチューブTを流れる乳が差圧検出器3o側に進入するのを有効に防止できる。
【0014】
(5) 好適な態様により、乳量計1に、一対の電極13,14と抵抗流量変換手段15を設けるとともに、抵抗流量変換手段15から得る流量値Dfsと差圧流量変換手段4から得る流量値Dfを比較処理及び/又は演算処理する処理部16を設ければ、例えば、流量値DfsとDf同士の比較処理により一方の計測系の故障検出や牛体の健康状態の判別、或いは流量値DfsとDfの演算処理により両者の平均を求めることができるなど、多機能性及び有益性を高めることができるとともに、更なる高精度で安定性の高い計測実現に寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明に係る最良の実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0016】
まず、本実施形態に係る乳量計1を備える搾乳システムの概略構成について図2を参照して説明する。
【0017】
図2中、21はミルクパイプライン、22は真空パイプラインである。各パイプライン21及び22の所定位置には斜め上方に傾いて設けられたミルクタップ23を備え、このミルクタップ23に対してディストリビュータ24が着脱する。ディストリビュータ24はパルセータ25を備え、このパルセータ25を介してエアチューブ26と真空パイプライン22が連通するとともに、ディストリビュータ24内の流路を介して送乳用のミルクチューブTとミルクパイプライン21が連通する。また、ミルクチューブTの先端は、ティートカップユニット27のミルククロー28に接続し、このミルククロー28には複数のティートカップライナ29…を接続する。なお、エアチューブ26は各ティートカップライナ29…へそれぞれ分岐接続する。さらに、ミルクチューブTの中途には、流れる乳を拡散させる拡散ユニット11を接続するとともに、この拡散ユニット11に対して本実施形態に係る乳量計1を付設する。
【0018】
次に、本実施形態(基本実施形態)に係る乳量計1及び拡散ユニット11の構成について、図1〜図3を参照して説明する。
【0019】
拡散ユニット11は、図1に示すように、上ハウジンジ部41と下ハウジング部42の組合わせにより構成し、内部には拡散室11rを設ける。この場合、上ハウジンジ部41における天面部41uの内面には、逆円錐形の拡散面部43を設け、受けた乳を360°の方向に分散させる機能を持たせるとともに、拡散面部43の外側は分散した乳が円滑に落下するように曲面形成する。また、下ハウジング部42は、下側が漸次細くなる逆錐形に形成し、下端に流出口部44を設ける。この場合、流出口部44は、水平方向における一方側に偏寄形成するとともに、これにより形成される下ハウジング部42の傾斜面に、ノズル管部45の中間部を貫通させて設ける。これにより、ノズル管部45は、下端が下ハウジング部42の外部に突出した流入口部46となり、上端が拡散面部43の中央に対向したノズル口47となる。このノズル口47は口径を絞った形状に形成する。
【0020】
一方、拡散ユニット11における上ハウジンジ部41と下ハウジング部42は、組合わせた際に固定部材48により固定できるとともに、固定部材48を離脱することにより分離させることができる。これにより、内部の洗浄やメンテナンス等を容易に行うことができる。また、拡散ユニット11は、リング状の支持部材52及びこの支持部材52をミルクパイプライン21に吊下げるフック状の吊下部材53からなる取付ユニット51を用いてミルクタップ23の近傍に配設する(図2参照)。そして、ミルクチューブTは、中途位置を分割して上流側チューブTaと下流側チューブTbとし、上流側チューブTaを流入口部46に接続するとともに、下流側チューブTbを流出口部44に接続する。なお、このような拡散ユニット11は、別途の採取ユニットを取付けることによりミルクチューブTを流れる乳の一部を採取する採取機能を有するとともに、さらに、乳の逆流を防止する逆流防止機能を有している。
【0021】
他方、この拡散ユニット11を利用して乳量計1を付設する。乳量計1は、大別して、乳が流れた際にミルクチューブTの所定部位における前後の流路Ra,Rb間に差圧を発生させる差圧発生手段2と、この差圧発生手段2により発生する差圧の大きさを検出する差圧検出手段3と、この差圧検出手段3から得る差圧値Dpを流量値Dfに変換する差圧流量変換手段4とを備えて構成する。
【0022】
この場合、差圧発生手段2は拡散ユニット11をそのまま利用する。したがって、拡散ユニット11は差圧発生手段2を兼用する。拡散ユニット11は、流入口部46と流出口部44間に、乳が下方から進入して載り越えるノズル管部45を有するとともに、口径を絞った形状のノズル口47を有するため、乳が拡散ユニット11を流れた際には、拡散ユニット11に対する前後の流路RaとRb間、即ち、流入口部46の内圧(真空圧)と流出口部44の内圧(真空圧)間に差圧が発生する。このように、既存の拡散ユニット11を差圧発生手段2として兼用できるため、別途の差圧発生手段2を設ける必要がないなど、コストダウンに寄与できる。
【0023】
また、差圧検出手段3は、差圧検出器(差圧計)3oを用いる。この差圧検出器3oは、例えば、上ハウジンジ部41の天面41uの上面に設置することができる。そして、差圧検出器3oの第一圧力導入口3aと上流側チューブTaを、第一圧力導入管7aを介して連通接続するとともに、差圧検出器3oの第二圧力導入口3bと下流側チューブTbを、第二圧力導入管7bを介して連通接続する。この場合、各圧力導入管7a,7bと各チューブTa,Tbの接続は、例えば、図1に示すように、各チューブTa,Tbの周面に貫通孔63a,63bを開け、この貫通孔63a…に各チューブTa…の先端を差込み、接着剤等により固定及びシーリングを行うことができる。勿論、各チューブTa,Tbは、各圧力導入管7a,7bを接続可能な接続口を有する専用のチューブとして構成してもよい。
【0024】
さらに、差圧検出器3oの検出信号出力部はコントローラ71に接続する。差圧検出器3oは差圧の大きさを検出し、差圧値Dpを正面に配した表示部61に、ディジタル表示する機能を有するとともに、検出信号出力部からは差圧値Dpに対応した電圧を出力し、この電圧(検出信号)がコントローラ71に付与される。コントローラ71は、差圧流量変換手段4を構成し、図3に示すように、少なくとも差圧検出器3oから付与される差圧値Dpを乳の流量値Dfに変換する差圧流量変換部Csを有する。この差圧流量変換部Csは、換算処理部72,データテーブル(換算式)73,補正処理部74等を備えている。なお、コントローラ71は、差圧流量変換部Csにより得られた流量値Dfを積算して全体の乳量を求めるなどの必要な各種処理機能を備えている。
【0025】
次に、本実施形態に係る乳量計1の使用方法及び機能について、図1〜図4を参照して説明する。
【0026】
まず、搾乳時には、搾乳された乳はミルククロー28から上流側チューブTaを介して拡散ユニット11に送られる。この際、乳は、矢印Fi方向(図1)から流入口部46に進入し、ノズル口47から拡散室11rの内部に放出される。放出時には、拡散面部43に乳が当たり、360°の方向に拡散されるとともに、拡散された乳は流出口部44から矢印Fo方向に流出する。そして、下流側チューブTbを通ってディストリビュータ24に送られる。
【0027】
一方、乳が拡散ユニット11を流れることにより、流入口部46の内圧(真空圧)と流出口部44の内圧(真空圧)間に差圧が発生するため、この差圧は第一圧力導入管7a及び第二圧力導入管7bを介して差圧検出器3oにより検出される。検出された差圧、即ち、差圧値Dpは、表示部61により表示されるとともに、検出信号として出力し、コントローラ71に付与される。そして、コントローラ71に備える差圧流量変換部Csによる変換処理により、差圧値Dpが流量値Dfに変換される。
【0028】
ところで、本実施形態における乳量計1の基本的な計測原理は、流体がオリフィスを通過する際に流路の断面積が縮小して流速が増大するとともに、下流での静圧が低下し、この静圧の低下が流量に比例する原理を用いたものである。したがって、予め、得られる差圧(差圧値Dp)に対する実際の流量値Dfを実験等により正確に求め、データテーブル73に記憶させておく。図4は、データテーブル73の換算データ(相関データ)Qを示す。なお、データテーブル73の代わりに換算データQを換算式(関数式)として設定し、得られた差圧値Dpを換算式を用いた演算処理により流量値Dfに変換してもよい。
【0029】
また、変換処理は、次のように行われる。まず、差圧検出器3oにより得られた差圧(差圧値Dp)は、換算処理部72に付与される。換算処理部72では、データテーブル73を用いて差圧値Dpを流量データに変換処理する。さらに、得られた流量データは、補正処理部74に付与され、温度等に対応した補正処理が行われる。これにより、補正処理部74からは、補正された正確な流量値Dfが得られる。一方、得られた流量値Dfは、積算されることにより全体の乳量として求められ、この乳量は、例えば、コントローラ71の表示部に表示される。
【0030】
よって、このような本実施形態に係る乳量計1は、乳が流れた際にミルクチューブTの所定部位における前後の流路Ra,Rb間に発生する差圧を検出するため、乳質,電極を用いた場合の電極汚れ,乳の断続的な流れなどによる検出値への影響を排除でき、検出誤差の低減により高精度で安定性の高い計測を行うことができる。また、ミルクチューブTの中途に内圧(真空圧)を検出する導入管を分岐接続すれば足りるため、電極を用いた場合の煩雑な組付構造が不要になり、製造容易性,メンテナンス性及び耐久性の面で有利になるとともに、既設のミルクチューブTに対しても容易に後付けできるなど、汎用性の面からも有利となる。
【0031】
次に、本発明の変更実施形態に係る乳量計1について、図5〜図7を参照として説明する。
【0032】
図5に示す乳量計1は、拡散ユニット11を利用する点は図1に示した基本実施形態と同じであるが、拡散ユニット11の形態、特に、全体の形状が異なるとともに、別途の採取ユニット81を取付けてある点が異なる。なお、図5に示す拡散ユニット11は、既に本出願人が特開2003−97987号公報により提案した流量検出装置に使用したものである。この場合、採取ユニット81は、拡散室11rで拡散された乳の一部を取込口82から取込み、採取管83を通して不図示のフラスコに採取する機能を有する。なお、84は、取込口82の前後の圧力を均圧化するための均圧管を示す。また、拡散ユニット11には、乳が下方から流入する流入口部46と、この流入口部46から流入した乳を拡散室11rに放出するノズル部85と、このノズル部85から放出された乳を拡散させる拡散面部43と、拡散室11r内の乳を下方に流出させる流出口部44を有する。そして、流入口部46には上流側チューブTaを接続するとともに、流出口部44には下流側チューブTbを接続し、図1に示した基本実施形態と同様に、各チューブTa,Tbに各圧力導入管7a,7bを介して差圧検出器3oを接続するとともに、この差圧検出器3oには差圧流量変換部Csを接続する。
【0033】
さらに、図5に示す乳量計1は、ミルクチューブTの中途に配設して乳の流量を検出するための一対の電極13,14と、この電極13と14間の電気抵抗を検出し、かつ得られた電気抵抗値Drを流量値Dfsに変換する抵抗流量変換手段15を有する。この場合、一方の電極13は、ノズル部85に対向する拡散面部43の位置から拡散室11r内に露出させて設けるとともに、他方の電極14は、導電性を有するパイプ部材により形成し、ノズル部85の手前に配設する。なお、電極14は流入口部46を兼用する。
【0034】
また、抵抗流量変換手段15は、電極13と14間の電気抵抗値Drを検出する電気抵抗検出部86と、電気抵抗値Drを流量値Dfsに変換する抵抗流量変換部Cssを備えるとともに、抵抗流量変換部Cssから得る流量値Dfsと差圧流量変換部Csから得る流量値Dfを比較処理及び/又は演算処理する処理部16を備える。この場合、処理部16は、例えば、流量値DfsとDf同士の比較処理により一方の計測系の故障検出や牛体の健康状態の判別、或いは流量値DfsとDfの演算処理により両者の平均を求めることができる。即ち、流量値Dfs,Dfの一方が他方に対して異常に小さく又は大きくなった場合、一方の計測系の故障等が考えられるとともに、差圧に基づく流量値Dfが検出状態にあるにも拘わらず電極13…に基づく流量値Dfsが非検出状態にあることが頻繁に発生した場合、乳は断続的に流れており、牛体の健康状態がよくないことが考えられる。このように、処理部16の比較処理及び/又は演算処理により、多機能性及び有益性を高めることができるとともに、更なる高精度で安定性の高い計測実現に寄与できる。なお、図5において、図1〜図3と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
【0035】
他方、図6に示す乳量計1は、差圧発生手段2として、ミルクチューブTの中途に設けることにより少なくとも乳が上昇した後に下降する湾曲流路部12を用いたものであり、基本実施形態のような拡散ユニット11は利用しない。なお、図6に示す湾曲流路部12は、既に本出願人が特開平8−51880号公報により提案した流量検出装置に使用したものである。湾曲流路部12は、流入側の接続口12iと流出側の接続口12oを有し、かつ反対方向に向いた一対の湾曲路91,92を中間に配した連結管部材93により連結したものであり、全体はS字形状となる。このような湾曲流路部12は、乳が下方(接続口12i)から進入し、湾曲路91を載り越えることになるため、湾曲路91における前後の流路Ra,Rb間に差圧が発生する差圧発生手段2を兼用する。なお、必要により湾曲路91の断面積を小径に形成し、差圧の発生度合を調整してもよい。また、湾曲流路部12は、乳の逆流を防止する逆流防止機能も有している。
【0036】
そして、この湾曲路91における前後の流路Ra,Rbに対して、差圧を検出するための第一圧力導入管7aと第二圧力導入管7bをそれぞれ連通接続する。さらに、連結管部材93は、乳の流量を検出する一対の電極13,14を有する。この場合、一方の電極13は、導電性を有するパイプ部材により形成して連結管部材93の一部を構成するとともに、他方の電極14は、電極13に対して下流側となる流路Rb内に露出させて設ける。その他の構成は、図5と同じである。このため、図6において、図5と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
【0037】
一方、図6に示すように、各圧力導入管7a,7bの中途であって、各流路Ra,Rb寄りには、差圧検出器3o側への乳の進入を防止する隔離部材8a…を介在させることができる。この場合、隔離部材8a(8b側も同じ)は、図7に示すように、ケーシング8acを備えるとともに、このケーシング8acの内部空間にゴム等の柔軟素材により形成した隔膜状のダイヤフラム8afを備える。このような隔離部材8aを介在させることにより、ダイヤフラム8afにより仕切られた両側の内部空間には、前後に分割した各圧力導入管7ai,7ajがそれぞれ連通接続されるため、圧力導入管7aの中途部位が、隔離部材8a(ダイヤフラム8af)により仕切られ、この結果、圧力(真空圧)は、隔離部材8aを介して差圧検出器3o側に伝達されるも、ミルクチューブTを流れる乳に対しては、差圧検出器3o側に進入するのが有効に防止される。なお、この隔離部材8a…は、図1及び図5に示した他の実施形態においても同様に用いることができる。また、隔膜状のダイヤフラム8afを例示したが、トラップ状であってもよく、要は圧力の伝達は許容するも乳の通過を防止できるものであればよい。
【0038】
以上、各種実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。例えば、差圧検出手段3は、拡散ユニット11や湾曲流路部12を利用(兼用)した場合を示したが、ミルクチューブTの中途に別途の絞り弁やペンチェリ管等を接続して差圧を発生させてもよい。また、差圧流量変換手段4として差圧検出器3oを利用した場合を示したが、所定部位における前後の流路RaとRbの内圧(真空圧)をそれぞれ個別に検出し、検出結果を演算処理して差圧を求めてもよく、差圧の検出手法は問わない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の基本実施形態に係る乳量計の全体構成図、
【図2】同乳量計を付設した搾乳システムの外観図、
【図3】同乳量計における信号処理系のブロック系統図、
【図4】同乳量計のデータテーブルにおける換算データの相関データ図、
【図5】本発明の変更実施形態に係る乳量計の全体構成図、
【図6】本発明の他の変更実施形態に係る乳量計の全体構成図、
【図7】同乳量計における圧力導入管に介在させる隔離部材の断面構成図、
【符号の説明】
【0040】
1 乳量計
2 差圧発生手段
3 差圧検出手段
3o 差圧検出器
3a 圧力導入口
3b 圧力導入口
4 差圧流量変換手段
7a 圧力導入管
7b 圧力導入管
7af… 隔離部材
11 拡散ユニット
12 湾曲流路部
13 電極
14 電極
15 抵抗流量変換手段
16 処理部
T ミルクチューブ
Ra 流路
Rb 流路
Dp 差圧値
Dr 電気抵抗値
Df 流量値
Dfs 流量値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送乳用のミルクチューブの中途に接続して当該ミルクチューブを流れる乳の流量を計測する乳量計において、乳が流れた際に前記ミルクチューブの所定部位における前後の流路間に差圧を発生させる差圧発生手段と、この差圧発生手段により発生する差圧の大きさを検出する差圧検出手段と、この差圧検出手段から得る差圧値を流量値に変換する差圧流量変換手段とを備えることを特徴とする乳量計。
【請求項2】
前記差圧発生手段は、前記ミルクチューブの中途に設けることにより流れる乳を拡散させる拡散ユニットを利用することを特徴とする請求項1記載の乳量計。
【請求項3】
前記差圧発生手段は、前記ミルクチューブの中途に設けることにより少なくとも乳が上昇した後に下降する湾曲流路部を利用することを特徴とする請求項1記載の乳量計。
【請求項4】
前記差圧検出手段は、差圧検出器と、この差圧検出器に有する二つの圧力導入口を前記ミルクチューブの所定部位における前後の流路にそれぞれ連通接続する二つの圧力導入管を備えることを特徴とする請求項1記載の乳量計。
【請求項5】
前記圧力導入管の中途には、前記差圧検出器側への乳の進入を防止する隔離部材を介在させてなることを特徴とする請求項4記載の乳量計。
【請求項6】
前記ミルクチューブの中途に配設して乳の流量を検出するための一対の電極と、この電極間の電気抵抗を検出し、かつ得られた電気抵抗値を流量値に変換する抵抗流量変換手段とを備えることを特徴とする請求項1記載の乳量計。
【請求項7】
前記抵抗流量変換手段から得る流量値と前記差圧流量変換手段から得る流量値を比較処理及び/又は演算処理する処理部を備えることを特徴とする請求項6記載の乳量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−3316(P2006−3316A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182853(P2004−182853)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【Fターム(参考)】