説明

乾式打錠用結合剤及び錠剤

【課題】 脂肪酸エステル類等の化学品やそれ自体薬効がない澱粉類や蛋白類を用いずに、或いはこれらの使用割合を低減させて、植物質粉末を乾式打錠法で圧縮成形する技術を提供する。
【解決手段】 主原料が植物質である粉末を乾式打錠法で成形する場合の補助材料殊に結合剤として、荷葉粉末を用いて錠剤とする。主原料はモロヘイヤの葉や茎、茶葉、レンコン等の野菜、マカ、寒天、ビール酵母等の単独或いは混合した植物質粉末であり、植物質粉末95〜40重量%に対し荷葉粉末5〜60重量%の割合で使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷葉粉末を主成分とする植物質粉末乾式打錠用結合剤、及び荷葉粉末を結合剤に用いて乾式打錠法により打錠した、新規な植物質粉末の錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、様々な植物体の粉末や抽出物を主原料(主成分、有効成分)とする健康食品や医薬品が数多く提供されている。これらの多くは、摂取量の目安がつきやすいように、また服用その他の取り扱いが容易なように錠剤化されている。
【0003】
この中で、抽出物やエキス類は賦形剤(増量剤)として使用する澱粉類などが結合剤としても作用するし、元々1錠中の有効成分量が少ないためデキストリンや結晶セルロース等の結合剤と混合しても差し支えはなく、従って錠剤化は容易である。これに対し、健康食品等で主原料が植物質粉末(植物体粉末)の場合、従来これのみを用いて乾式打錠法により錠剤化することは極めて困難で、実用的な錠剤強度や生産性向上を得るためには、結合剤や滑沢剤、流動化剤などの補助材料がほぼ必須であるとされてきた。
【0004】
乾式打錠法は、直接打錠法(直接粉末圧縮法)と乾式顆粒圧縮法に大きく分けることができる。直接打錠法は、薬物或いは食品用機能成分に必要な賦形剤や粉末状の結合剤や崩壊剤などを加えて、直接圧縮成形する方法である。乾式顆粒圧縮法は、薬物或いは食品用機能成分に必要な賦形剤や粉末状の結合剤などの補助材料を加え、これらを圧縮粉砕した後加圧成形するものである。これらの方法は、湿式顆粒圧縮法と異なり、水などの溶媒を使用しないため主成分が水分や乾燥時の熱で劣化されることがなく、長期の物理的、化学的な安定性を保持する利点がある。
【0005】
尚、直接打錠法は乾式顆粒圧縮法のように二度手間がかからず、安価に製造できる利点がある。しかし、組成物の流動性が悪かったり嵩高いとか、少量のエキスを均一に混合する等の理由で直接打錠法では成形できにくい場合には、組成物全体或いはその一部を乾式顆粒圧縮法で圧縮粉砕してから直接打錠することがある。
【0006】
補助材料とは、圧縮成形する目的で主原料粉末に添加するもので、1錠中の主成分の含有量を調節するための賦形剤、錠剤の強度を調整するための結合剤、服用時の錠剤の水中での崩壊を促すための崩壊剤、打錠機のウス・キネ表面との付着力、摩擦の低減のための滑沢剤、混合粉末の流動性を上げるための流動化剤などがある。但し、実際にはこれらの各剤は他の複数の役割を果たすものも多く、各物質の代表的な作用ごとに区分け命名していることが多い。
【0007】
この内、植物質粉末を主原料とする場合の補助材料としては、結晶セルロースやデキストリン、ポリビニールアルコール、アルギン酸ナトリウム、澱粉、トレハロース、ソルビトールなどの結合剤、蔗糖脂肪酸エステル、油脂、タルク、ステアリン酸マグネシウムやステアリン酸カルシウムなどの滑沢剤、無水珪酸(アエロジル)、メタ珪酸アルミン酸マグネシウムなどの流動化剤などが用いられる。結合剤は、錠剤の硬度を高めるもので、無水珪酸は結合剤としても作用し、油脂は結合剤や安定剤(固めたあとの形状安定)としても作用する。尚、本発明では油脂としてなたね油が原料の粉末油脂を使用している。粉末油脂は、特殊な方法で乳化させ噴霧乾燥することにより得られるもので、流動性や混合性に優れ、打錠における滑沢剤や硬度の安定剤として使用されている。
【0008】
例えば、特許文献1には、茶葉粉末にソルビトールと無水珪酸及び植物硬化油を混合して打錠した茶製剤が記載されている。また、市販の健康食品の外箱や容器には、使用されている補助材料として結晶セルロースと蔗糖エステル、結晶セルロースと蔗糖脂肪酸エステル、デキストリン、トレハロースと澱粉及び植物油脂末、粉末セルロースと乳糖及びグリセリン脂肪酸エステルなどの組み合わせが記載されている。その他補助材料については、非特許文献1に種々記載されている(433頁〜434頁)。
【0009】
尚、荷葉(蓮の葉)については、特許文献2〜特許文献6に記載されているが、後述するように全て本発明とは無関係のものである。
【特許文献1】特開2005−065629号公報
【特許文献2】特開2006−241141号公報
【特許文献3】特開2001−204427公報
【特許文献4】特開2006−514041号公報
【特許文献5】特開2004−224789号公報
【特許文献6】特開2005−097159号公報
【非特許文献1】日本粉体工業協会編「造粒便覧」オーム社 昭和50年5月30日発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、この補助材料の使用は、2つの点で問題がある。まず、補助材料を使用することにより主原料の使用割合が低下し、所定量の主原料を摂取しようとすると全体として摂取量が増えることにある。次に、補助材料は一応食品衛生法上使用は認められているが、安全性が十分であることが立証されているものは少なく、使用にあたっては十分な検討が必要であるとされている(非特許文献1、433頁右欄)。
【0011】
前者(使用割合)については例えば、茶葉7割に対して補助材料が3割使用されている(特許文献1)。尚、食品衛生法上は植物質粉末を除く補助材料全体で5%未満の場合には主原料100%の表示が許されているが、この範囲(5%未満)の配合では実用的な錠剤の硬度がなかなか確保できず、このような例は少ない。各社配合は秘密であるが概ね10〜25%使用されている。ちなみに、錠剤の硬度は直径方向に圧縮して破壊するときの値で表されるが、凡そ4Kg以上の硬度が必要と言われている(特許文献1)。しかし、胃中での崩壊性と容器内での摩擦や衝撃に耐える力との兼ね合いで、5.3〜5.8Kg程度が最も好ましいとされている。
【0012】
後者(安全性)については、澱粉類や蛋白類、油脂類等を除いて化学合成品等の異物であり、光沢や崩壊性向上のために汎用されている脂肪酸エステル類などは本来的には好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような観点から、特に健康食品業界では主原料に対する補助材料の使用割合を低減させる努力・研究がなされている。更に同業界では、薬効がありながらそれ自体が補助材料として使用できる天然植物質物質の出現を希求している。
【0014】
本発明者らは、荷葉粉末の外観(嵩高さ等)や手触りが無水珪酸(アエロジル)に似ていることに着目し、荷葉粉末とモロヘイヤ葉茎粉末の混合物を打錠してみたところ、実用上差し支えない程度の硬度(4Kg前後)が得られたことから更に研究を続け、発明を完成させたものである。
【0015】
荷葉とは、睡蓮科植物であるハスの葉のことであり、中国では古く揚貴妃の時代から体脂肪を溶かし美形をつくる健康飲料として使用され、「本草綱目」にも肥満防止の効果があると記載されている。そして、荷葉エキスや荷葉の煎液には血行をよくしたり脂肪を分解する物質が含まれているとされ、実際に、その粉末が多くの健康食品に混合使用されたり、荷葉の乾燥物が単独或いは他の植物の乾燥葉とともにハスの葉茶として多数市販されている。民間薬では夜尿症にも用いられている。
【0016】
また、ある研究によれば、2型糖尿病モデルのマウスに蓮の葉(荷葉)エキス10mg/mL)を6週間摂取させたところ、血糖値が有意に低下して高血糖が改善され、脂肪重量も低下傾向が見られたという。その作用機序として、脂肪細胞の脂肪分解作用と糖吸収抑制作用が考えられ、蓮の葉エキスの中の主成分としてフラボノイドであるケルセチンとその配合体が同定された。
【0017】
ところで、荷葉(蓮の葉)については、特許文献2〜特許文献6に記載されているが、これらは本発明とは全く無関係のものである。即ち、特許文献2はハス植物又はハス植物から抽出した成分を含有する血管新生阻害用組成物に関するものである(請求項1)。そして、ハス植物の葉、茎、芽その他全ての部位が使用可能であり、これらをそのまま、抽出物、抽出物の加水分解物、又は植物の加水分解物として使用可能であるとしている(段落0021〜0022)。しかし、実施例では蓮花の抽出物についてのみ述べられており、葉(荷葉)については解熱、下痢止めに使用されるとの記載がある(段落0019)のみで、荷葉粉末を他の植物質粉末の結合剤として使用することは全く記載されていない。ただ、引用文献2の発明の組成物は錠剤その他の形態で投与できるとしている。しかし、錠剤化は常套手段により各種の安定化剤や結合剤等を適宜添加して行う(段落0026)と言う記載から、荷葉粉末を結合剤として使用することは全く予想していないものと言うことができる。また実施例の錠剤は、蓮花の抽出物を定法で製造したものである(段落0037)。
【0018】
次に、特許文献3はカナバリア属の植物にテンペ菌を接種した醗酵食品であるが(請求項1)、栄養効果及びダイエット効果を更に高めるために、荷葉その他数十種類の植物の内いずれか単独或いは二種以上を併用してもよい、併用量は特に限定されないと記載されている(段落0007)。しかし、実施例3では蓮の葉が1%使用されているが、これはお茶として飲用するもので、荷葉粉末を錠剤に使用するものではない。また、実施例5の打錠製品には荷葉粉末は含まれていないし、しかも水を造粒溶媒としていることから湿式顆粒圧縮法によるものであり、本発明とは無関係のものである。
【0019】
特許文献4には、麻黄、黄ごん、蒲黄とともに荷葉を含む肥満抑制用組成物が記載されている(請求項2)。しかし、この発明は粉末ではなく、これら組成物の混合抽出物を肥満抑制剤として使用するものであり、本発明のように粉末を打錠するものではなく、本発明とは全く無関係でをある。また、特許文献5及び特許文献6の発明の詳細な説明にはハス属のハス葉(荷葉)は下痢止め、止血の効果があり、ロエメリン、ヌシフェリン等のアルカロイドが含まれていると言う記載がある(それぞれ段落0006、段落0010)。しかし、特許文献5はハス胚芽の抽出物を含有する脂肪分解促進剤、特許文献6はハス胚芽の抽出物とL−カルニチンを含有する体脂肪の減少促進剤であり、荷葉(蓮の葉)については上記以外何も記載されていない。これらの従来例(特許文献2〜6)は、荷葉粉末の乾式打錠とは全く無関係なものである。
【0020】
上記のように種々な薬効が知られている荷葉粉末を、他の薬効が知られている植物質粉末と混合して錠剤化できれば、全く素晴らしいことである。しかし、荷葉粉末が他の植物質粉末の補助材料特に結合剤となりうることは勿論、荷葉粉末を含む錠剤自体についても、本発明者らが知るかぎり、従来例には見いだせられない。
【0021】
荷葉粉末は、主原料粉末の粒度や種類に応じて53μ〜355μのものが使用できる。また使用割合は、植物質粉末が95〜40%(重量%)に対して荷葉粉末5〜60重量%である。実用上の硬度である4Kg以上となるのは、植物質粉末の種類や粒度、植物質粉末の組み合わせ等にもよるが、概ね荷葉粉末の割合がが10〜60%である。荷葉粉末は、結合性のほか、幾分かの流動性や滑沢性も付与する。
【0022】
主原料としては、アシタバ、イチジク葉、銀杏葉、オオバコ、柿の葉、サツマイモの葉、青麦若葉、アロエ、モロヘイヤの葉や茎、桑葉、茶葉などの植物の葉や茎、クコの実や桑の実などの実や種、レンコンや人参、マカなどの植物根、寒天やコンブなどの海藻の粉末など、従来から単独或いは混合して粉末や錠剤の形で提供されている各種の植物質粉末が用いられる。
【0023】
そのうち、モロヘイヤの葉や茎、茶葉、桑葉、青麦若葉、レンコン、マカ、ビール酵母、寒天等の単独或いは混合した植物質粉末が好ましく用いられる。特に、モロヘイヤはカロチンが多く含まれており、各社からモロヘイヤを含む錠剤や粉末の各種製品が提供されている。
【0024】
主原料の種類や配合割合によっては、成形時の粉末流動性や成型物の硬度増強の目的で、従来使用されている補助材料、特に無水珪酸(天然鉱物精製品)や植物油脂、その他乳糖、澱粉類などの出来得れば天然物を荷葉粉末と併用してもよい。無水珪酸の添加量は食品衛生法上2%以下(全体に対して)と規定されており、植物油脂は通常10%程度以下が使用される。
【0025】
植物質粉末(主原料)以外に、プロポリスやローヤルゼリー、キトサン、イリコ、コラーゲンなどの動物質粉末や乳酸菌などの菌体、動植物由来のエキスや抽出物を乳糖などの賦形剤で希釈したものを用いることもできる。混合割合は、全体量に対して0.5〜40重量%程度、より好ましくは1〜10%程度である。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、主原料が植物質である粉末を乾式打錠法で造粒する場合の結合剤として、荷葉粉末を用いたことを最大の特徴とする。従って、本発明は以下に述べるような効果を有する。
(1)荷葉粉末は、脂肪酸エステル類その他化学物質とは異なり天然物であり、中国では古くから荷葉茶が飲用されてきており、毒性はかなり低く(エキス末のLD50は7g/kg以上と推定)安全なものである。
(2)荷葉粉末自体が前述のような薬理作用を有しており、他の薬理作用のある植物質粉末と組み合わすことにより、補完や相乗効果が期待できる。
(3)特に、食物繊維や各種ビタミン、カルシウム等に富んだモロヘイヤ粉末と組み合わすと、補完作用が大きい。
(4)荷葉粉末は、植物質粉末に対して良好な圧縮成形性や粉体流動性を賦与するところから、乾式打錠法(直接打錠法(直接粉末圧縮法)或いは乾式顆粒圧縮法)により成形する場合の補助材料殊に結合剤及び更には流動化剤や滑沢剤として理想的なものである。
(5)モロヘイヤや茶葉など多くの植物質粉末錠剤を、植物質粉末以外のものを使用ぜずに乾式打錠法で実用上十分な硬度に打錠できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
モロヘイヤ等の植物質主原料95〜40%に対して、53〜355μの荷葉粉末を5〜60重量%の割合で混合し、乾式打錠法で成形した錠剤。
【実施例】
【0028】
(実施例1)
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。モロヘイヤ粉末(粒度約150μ、水分約5%、嵩比重約70.25g/100mL、いづも屋製)と荷葉(はすの葉)粉末(粒度約355μ、水分約6%、嵩比重約41.57g/100mL、岩国産をいづも屋で製粉)を、表1に示す様々な重量割合で混合し(各実施例とも、全量は何れも200g)、試験用打錠機(菊水製作所、N−08−f−3)を用い、1tonの圧力で打錠した。また、硬度は、硬度計(富士産業(株)の型式JH203)を用い、錠剤5個或いは10個を測定してその平均値で示した。
【0029】
また、表1中、(H)は荷葉粉末を示し、重量は錠剤10個の重さの合計値で表した。流動性は、何もしなくても流れたものを「良い」、手で振動をあたえないと流れないものを「悪い」とし、その中間を「やや良い」、「やや悪い」とした。また、備考中の分量は送りの目盛りの数値であり、大きいものほど粉末の嵩が高いことを示す。厚みの設定値は4mmで、10個を測定した値である。
【表1】

【0030】
驚くべきことに、(H)が0%即ちモロヘイヤ粉末単独では硬度が非常に低く(表中、番号1)、また(H)が100%即ち荷葉粉末単独では粒状にならなかった(表中、番号11)のに対し、この両者を混合すると何らの補助材料を使用せずに(H)が9〜50%では4Kg以上の値となった(番号3〜9)。特に、20〜40%(番号5〜7)では5.3Kg以上となった。その結果、100%植物質の錠剤が直接打錠法で製造できることになった。測定した範囲では、荷葉粉末40%で硬度がピークとなった。尚、各表中において、測定時の温度・湿度がバラついているのは、異なる日時に測定したことによる。
【0031】
但し、荷葉粉末の嵩比重が小さいので、荷葉粉末の割合が高い(60%以上)と本発明で使用した試験用打錠機では打錠しにくくなった。そこで、荷葉粉末の割合を高めるため、荷葉粉末(或いはモロヘイヤ粉末)に粉末油脂や無水珪酸を混ぜて一度打錠し、これを粉砕篩分けしたものを再度直接打錠してするとよい(乾式顆粒圧縮法)。こうすると混合粉体の嵩が低くなって、打錠が容易になる。打錠せずに植物質粉末や荷葉粉末単体或いはこれに粉末油脂や無水珪酸を混ぜてスラッグマシンやローラコンパクターなどで圧縮しこれらを粉砕篩分けして打錠に供するようにしてもよい。
【0032】
例えば、表1の番号12は、(H)7%に油脂2%を混ぜたもの(モロヘイヤ粉末91%)の打錠データで、硬度は5.2Kgある。この錠剤を粉砕し篩分けした粉末(約355μ)100gに荷葉粉末100gを混合すると、荷葉粉末50%以上の混合粉末が簡単に得られる(荷葉粉末53.5%と粉末油脂1%)。この粉末を再度直接打錠すると容易に打錠できた(番号10:乾式顆粒圧縮法)。
【0033】
前述の番号12以外にも、(H)30%と寒天30%に無水珪酸2%、油脂8%を混ぜたもの(番号14)は、6.75と言う大きな硬度となった。これは、無水珪酸(各表中では珪酸とする)や粉末油脂(各表中では植物油とする)が結合剤や安定剤として働いた結果である。
【0034】
表1の番号15は、荷葉粉末30%、モロヘイヤ粉末68%に珪酸1%、粉末油脂1%を混合して直接打錠法で打錠したものである。これで得られた錠剤を前記同様粉砕篩分けし(約355μ)、その粉末とイリコの粉末(約355μ)を60対40の重量割合で混合し、再度直接打錠してみた(乾式顆粒圧縮法)。表1の番号16に示すように、イリコ粉末(動物質粉末)を副資材に使用した場合も、高い硬度のものが得られた。
【0035】
本発明では、植物質粉末について、荷葉粉末との適宜な混合割合を選べば、従来多く用いられてきた脂肪酸エステルなどの望ましくない添加剤を用いずとも実用上十分な硬度が得られ、健康食品業界において安全性に大きく貢献するものである。また、わずか数%の無水珪酸や粉末油脂を加えることで硬度を更に向上させることができる。これらの添加物の合計割合を5%未満にすれば、現行法上、植物質100%の表示が許されることになる。
【0036】
尚、実施例1で使用した粉末油脂(植物油)は日本油脂(株)製で嵩比重が約49.08g/100mL、無水珪酸は日本アエロジル(株)製で嵩比重が約4.50g/100mL、寒天は伊那寒天製で嵩比重は約60.59g/100mLのものである。また、以下の各例でも、同じものを使用した。
【0037】
但し、寒天を加えた錠剤の硬度は同じ荷葉粉末(H)割合のものに比べて、硬度は低下した(番号6と番号13)。同じことが、表5の茶葉の場合にも言える。これは、寒天が崩壊剤としての作用を有することに起因するものと思われる。
【0038】
ところが、不思議なことに、寒天と荷葉粉末だけの混合物を打錠したものの硬度は、表6に示すように、荷葉粉末の割合(0〜12重量%)にかかわらず、ほぼ一定である。同様なことが、等重量のもちとり粉と太田胃酸(登録商標)の混合物に0〜12重量%の荷葉粉末を加えた場合(全て約6Kg)や、等重量のもちとり粉とイノシトールの混合物に0〜12重量%の荷葉粉末を加えた場合(5.0→7.0Kg)にも言える。
【0039】
これらのことから、ビール酵母のような例外はあるが、荷葉粉末は繊維質である植物質粉末に対して、特異な硬度増強作用をもたらすものと思われる。植物質粉末の種類や粒度、荷葉粉末の粒度などとの関係で硬度増加が少ない場合いは、混合割合や粒度を調整したり他の植物質粉末と組み合わしたり、又は無水珪酸や粉末油脂その他の補助材料を添加して増強するとよい。
【0040】
モロヘイヤ粉末に荷葉粉末を加えて得られた錠剤は光沢がなく、また流動性(打錠機の杵部分への供給)は悪かった。無水珪酸や植物油を加えたものは、光沢や流動性が増した。桑葉粉末や青麦若葉も、モロヘイヤ葉茎粉末と同様の結果(硬度や外観)が得られた。
【0041】
(実施例2)
表2は、荷葉粉末とビール酵母を混合物打錠したものの硬度を示す。表2で明らかなように、ビール酵母は荷葉粉末が割合を増すごとに硬度が上がり、(H)20〜60%で実用上十分な硬度が得られる。測定した範囲では、硬度のピークは(H)50%である。尚、ビール酵母(メイワ薬粧(株)製)の粒度は約150μ、水分3.5%であり、打錠方法は実施例1と同じである。得られた錠剤には光沢はないが、粉末の流動性は良好であった。
【表2】

【0042】
(実施例3)
荷葉粉末とレンコン粉末
荷葉粉末を0から40%(重量比)まで変えて、レンコン粉末(粒度約150μ、水分約5.6%、嵩比重約62.21g/100mL、茨城産)と混合して、実施例1と同じ条件で直接打錠した(測定条件も同じ)。表4から、荷葉0%即ちレンコン粉末100%では極めて低い硬度しか得られなかったが、荷葉の割合が増すほど硬度が上がり、荷葉40%で最高の硬度が得られた。尚、番号1〜7は、荷葉粉末とレンコン粉末のみを混合したものである。番号8は荷葉粉末とレンコン粉末に粉末油脂を添加したもの、番号9は更に乳酸菌を1%添加したものである。参考例として、番号10レンコン粉末のみ(荷葉粉末は0)に無水珪酸を添加したもの、番号11はレンコン粉末のみに粉末油脂と無水珪駿を添加したものを示す。粉末油脂や無水珪酸を添加したものの粉末の流動性は非常に良かった。
【表3】

【0043】
(実施例4)
荷葉粉末とマカ粉末
マカ粉末は100%(荷葉粉末0)でもかなりな硬度があるが、荷葉粉末を10〜50%加えると十分な実用硬度となった(表4)。マカ粉末は粒度約150μ、水分約8.5%、嵩密度約61.88、沖縄の(有)たいら園製のものを用いた。打錠及び測定条件は、実施例1と同じである。
【0044】
マカ粉末の場合、もともと100%でも十分な硬度があるが、表4から明らかなように荷葉粉末と非常に相性がよく、荷葉粉末10%添加で7.0と言う高い硬度が得られた。少し高すぎるぐらいである。硬度のピークは、測定した範囲ではマカ粉末30%(硬度8.34)であるが、40〜50%で適度な崩壊性のものが得られた。
【表4】

【0045】
(実施例5)
荷葉粉末と茶葉粉末
茶葉粉末は粒度約150μ、水分約8.5%、嵩比重約54.79、広島の(株)寿老園のものを用いた。打錠及び測定条件は、実施例1と同じである。打錠条件及び測定結果を、表5に示す。茶葉粉末100%(番号1)の硬度は2.1と非常に低く、さわると崩れてしまった。しかし、荷葉粉末を10%以上(測定は50%まで、番号2〜6)混ぜてそのまま直接打錠すると、4Kg以上の硬度が得られた。最高硬度は50%(番号6)のときに得られた。得られた錠剤は、艶が無くザラつくが、流動性はよい。
【表5】

【0046】
特許文献1では、茶粉末は一般に圧縮成形性が劣るため錠剤にし難いと記載されている。確かに、本発明者らの測定でも、茶粉末単独では打錠してもまったく硬度が得られない。しかし、特許文献1で茶粉末70%(7重量部)にソルビトール28%(約3重量部)と無水ケイ酸2.0%添加して(1ton圧)打錠したものの硬度は50N(5Kg)とされている。
【0047】
これに対し、本発明では茶葉粉末90%に荷葉粉末を10%加えるだけで4.6Kgの硬度となり、茶葉粉末の含有割合の高い錠剤が簡単に得られる。測定した範囲では硬度のピークは荷葉粉末50%である。
【0048】
(実施例6)
次に、荷葉粉末と寒天粉末(いずれも、実施例1と同じものを使用)を、表6に示す様々な重量割合で混合し(全量は何れも200g)、実施例1と同様にして打錠し、硬度を測定した。本例では、前述したように荷葉粉末の硬度に対する影響は殆ど無かった。
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、健康食品の分野で使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷葉粉末を主成分とすることを特徴とする、植物質粉末乾式打錠用結合剤。
【請求項2】
荷葉粉末とともに、無水珪酸或いは油脂を用いるものである、請求項1記載の乾式打錠用結合剤。
【請求項3】
主原料が植物質である粉末を乾式打錠法で成形する場合の結合剤として、荷葉粉末を用いたことを特徴とする錠剤。
【請求項4】
植物質粉末が、モロヘイヤの葉や茎、茶葉、桑葉、青麦若葉、レンコン、マカ、寒天、ビール酵母の内のいずれか単独或いは混合したものである、請求項3記載の錠剤。
【請求項5】
植物質粉末95〜40:荷葉粉末5〜60重量%の割合で使用するものである、請求項3又は請求項4記載の錠剤。

【公開番号】特開2008−179591(P2008−179591A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24839(P2007−24839)
【出願日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(501006550)株式会社いづも屋 (1)
【Fターム(参考)】