説明

乾式洗浄装置と乾式洗浄方法とこれにより洗浄された洗浄物及び再生装置の製造方法

【課題】洗浄媒体の漏れや滞留を確実に防ぎ、気流のエネルギーを有効に利用して高い洗浄能力を発揮する。
【解決手段】洗浄槽本体10の空気を吸引している状態で洗浄槽本体10の開口部方向に高速気流を噴出して洗浄媒体5を加速して洗浄対象物4を洗浄するとき、洗浄対象物4と洗浄槽外縁部11の間隙29を通り洗浄槽本体10内に流入する気流を、洗浄槽本体11の開口部を通過させずにバイパス流路26を通して洗浄槽本体10内に流入させて洗浄対象物4と洗浄槽外縁部11の間隙29を流入する気流により洗浄媒体5を飛翔させる気流が乱されたり弱められたりすることを防止するとともに洗浄槽本体10の内壁に沿う循環気流Aを強めて洗浄能力の向上と安定化を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば複写機やレーザプリンタ等の電子写真方式の画像形成装置で用いられるトナー等が付着した比較的複雑な形状の部品等の各種洗浄対象物に付着あるいは固着した塵埃や異物を、固体の洗浄媒体を用いて除去する乾式洗浄装置と洗浄方法とこれにより洗浄された洗浄物及び再生装置の製造方法、特に、ほぼ平面形状の洗浄対象物を効率よく洗浄することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機、ファクシミリ、プリンタ等の事務機器メーカでは、資源循環型社会実現のために使用済みの製品や各種ユニットをユーザから回収後に分解・清掃・再組立し、部品として再使用したり、樹脂材料として利用したりするリサイクル活動を積極的に行っている。これらの製品や各種ユニットに使用されている部品を再利用するためには、分解した部品やユニットに付着している微粒子粉体であるトナー等を除去して清浄化する工程が必要であり、清浄化に必要なコストや環境負荷を減らすことが大きな課題となっている。
【0003】
この部品やユニットに付着しているトナー等の汚れを除去するために水や溶剤を使用した湿式の洗浄装置が例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に示された洗浄装置は、開口部が大きい網の洗浄籠の内部に被洗浄体を固定し、洗浄籠を洗浄噴射水等の洗浄剤が噴射される移動経路に沿ってベルトコンベア等の搬送手段で搬送し、移動経路において洗浄籠の上や横から噴射される洗浄剤の流れを洗浄籠の開口部や網目を通り抜けさせて被洗浄体に衝突させ被洗浄体を洗浄している。そして被洗浄体を固定した洗浄籠を連続して搬送手段に投入することにより被洗浄体を連続して洗浄するようにしている。
【0004】
このような湿式の洗浄装置を、トナー等の汚れが付着した部品やユニットの洗浄に使用すると、トナー等を含んだ廃液の処理及び洗浄後の乾燥処理におけるエネルギー消費や環境負荷が大きく、高コストであるという問題がある。
【0005】
また、エアブローによる乾式洗浄方法を使用した場合、付着力の強いトナー等に対しては洗浄能力が十分ではなく、人手によるウェス拭きなどの後工程が必要なため、清浄化は製品リユース・リサイクルにおけるボトルネック工程の1つとなっている。
【0006】
これらの問題を解消するため、特許文献1に示された乾式洗浄装置は、洗浄槽内に高速気流を流動させ、軽量で飛翔しやすい固体からなる洗浄媒体を洗浄槽内で高速に飛翔させて、洗浄媒体を洗浄対象物に連続して接触させて洗浄対象物に付着した塵や粉体を分離している。特に可撓性を有する薄片状の洗浄媒体を用いることにより、洗浄媒体の少量の使用量で超音波洗浄と同等以上の洗浄能力を発揮することができる。
【0007】
しかしながら、洗浄対象物を洗浄槽内に投入して洗浄媒体を衝突させる方式では、洗浄対象物のサイズ以上の洗浄槽容積が必要であり、洗浄対象物が大きくなるとより大きい洗浄槽が必要となる。また、洗浄槽が大型化すると、より多くの洗浄媒体を使用する必要があるとともに洗浄槽内の気流が弱まり洗浄媒体の滞留が生じやすくなるといった問題が生じる。
【0008】
また、固体の洗浄媒体を利用して広い面積を洗浄する装置が特許文献2や特許文献3、特許文献4等に開示されている。特許文献2に示された洗浄装置は、直径が10mm〜30mm程度のスポンジや中空のゴムの球体からなる飛翔体をコーン形状の筐体の中で圧縮空気を用いて飛翔させて洗浄対象物のスポット領域に衝突させて洗浄するようにしている。しかしながらこの洗浄方法では筐体内が陽圧になるため、小さく柔軟な飛翔体の漏れを防ぐことは困難であった。また、除去された付着物も周囲に飛散させるという問題もある。
【0009】
特許文献3や特許文献4に示された洗浄装置は、スポンジや中空のゴムの球体からなる飛翔体を飛翔する環状の回遊路の飛翔体が洗浄対象物に接触する開口部にネットを装着して、飛翔体を循環させながら洗浄対象物を洗浄するようにしている。しかしながら柔軟な飛翔体が小さい場合は漏れを防ぐことは難しく、漏れを防ぐためにネットのメッシュを細かくした場合は十分な清掃能力が得られないという短所がある。
【特許文献1】特開2007−29945号公報
【特許文献2】実用新案登録第2515833号公報
【特許文献3】特開平4−83567号公報
【特許文献4】特開平7−88446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
洗浄媒体や除去された汚れの漏れを防ぐために、洗浄槽内を負圧によって吸引することが考えられる。しかしながら洗浄槽内を負圧に維持して洗浄対象物に密着させた場合、洗浄しながら洗浄槽を洗浄対象物に沿って移動しながら洗浄する場合、洗浄槽の移動がしにくく、作業時間がかかり洗浄作業の効率化が図れないといった問題がある。
【0011】
また、洗浄対象物に密着させずに所定量の間隙を保つように構成し、内部の負圧により洗浄媒体を吸い込む(押し戻す)流入気流を発生させ、間隙からの漏れを防止する方式も考えられる。しかしながら押し戻し気流の副作用として、洗浄槽内の循環気流が乱されて洗浄槽内に洗浄媒体の滞留個所が発生したり、あるいは洗浄対象物へ向かう気流が弱められたりする場合がある。また、押し戻し気流のみでは洗浄媒体の漏れを完全に防ぎきれず、洗浄槽内の洗浄媒体の量を維持できない場合があることも明らかになった。
【0012】
乾式の洗浄方法では、洗浄媒体の衝突数および衝突速度が洗浄能力に大きな影響を与えるため、洗浄媒体の滞留や洗浄槽外への漏れを防ぎ、洗浄槽内で飛翔している洗浄媒体の量を保つことと、洗浄対象物へ向かう気流速度をより速くすることが洗浄効率を高めるために必要である。
【0013】
この発明は、このような要望を満たして洗浄媒体の漏れや滞留を確実に防ぎ、気流のエネルギーを有効に利用して高い洗浄能力を発揮することができる乾式洗浄装置と乾式洗浄方法とこれにより洗浄された洗浄物及び再生装置の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明の乾式洗浄装置は、気流により流動する洗浄媒体を洗浄対象物に衝突させて洗浄する乾式洗浄装置であって、一方に開口部を有する洗浄槽本体と、該洗浄槽本体の開口部を有し、前記洗浄対象物に対して所定の間隙を隔てて配置される洗浄槽外縁部と、前記洗浄槽本体の壁面の一部に設けられ、気体や粉塵を通過させるが洗浄媒体が通り抜けられない開口を有する洗浄媒体分離手段とを有する洗浄槽と、前記洗浄槽本体の開口部方向に高速気流を噴出して前記洗浄媒体を加速する洗浄媒体加速手段と、前記洗浄媒体分離手段を通して前記洗浄槽本体内の空気を吸引し、吸引される空気や塵埃を前記洗浄槽の外部に搬送する吸引手段と、前記洗浄槽本体の開口部の前記洗浄槽外縁部近傍に設けられ、前記洗浄対象物と前記洗浄槽外縁部の間隙を通り前記洗浄槽本体内に流入する気流を、前記開口部を通過させずに前記洗浄槽本体内に流入させるバイパス流路を形成する離隔手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
前記離隔手段は、前記バイパス流路から前記洗浄槽本体に流入する気流を、前記洗浄槽本体の内壁に沿って流入させることを特徴とする。
【0016】
また、前記離隔手段は、前記バイパス流路から前記洗浄槽本体に流入する気流を、前記洗浄媒体加速手段から噴出して前記洗浄槽本体内を循環する気流に合流するように流入させることを特徴とする。
【0017】
さらに、前記洗浄媒体加速手段は、前記洗浄槽本体の内壁面よりも突出していることを特徴とする。
【0018】
また、前記離隔手段は、前記洗浄対象物に対して摺接するシール部材を有する。
【0019】
また、前記乾式洗浄装置は、前記洗浄対象物を保持する洗浄対象物保持手段を有し、該洗浄対象物保持手段には前記洗浄槽外縁部に対して摺接する第2のシール部材を有することを特徴とする。
【0020】
さらに、前記洗浄槽外縁部には、前記洗浄対象物に対して摺接するシール部材を有することを特徴とする。
【0021】
また、前記離隔手段を前記洗浄対象物に対して接離し、前記バイパス流路を開閉する駆動手段を備え、該駆動手段は前記離隔手段を前記洗浄対象物から離したときに前記バイパス流路を閉じることを特徴とする。さらに、前記バイパス流路に洗浄媒体検出手段を備えると良い。
【0022】
この発明の乾式洗浄方法は、気流により流動する洗浄媒体を洗浄対象物に衝突させて洗浄する乾式洗浄方法であって、洗浄対象物に対して所定の間隙を隔てて配置される洗浄槽外縁部に開口部を有する洗浄槽本体の壁面の一部に設けられ、洗浄媒体が通り抜けられない開口を有する洗浄媒体分離手段を通して吸引される塵埃を洗浄槽の外部に搬送している状態で洗浄槽本体の開口部方向に高速気流を噴出して洗浄対象物を洗浄するとき、洗浄対象物と洗浄槽外縁部の間隙を通り洗浄槽本体内に流入する気流を、前記開口部を通過させずにバイパス流路を通して洗浄槽本体内に流入させることを特徴とする。
【0023】
前記バイパス流路から洗浄槽本体に流入する気流を、洗浄槽本体の内壁に沿って流入させることを特徴とする。
【0024】
また、前記バイパス流路から洗浄槽本体に流入する気流を、洗浄槽本体に噴出して洗浄槽本体内を循環する気流に合流するように流入させることを特徴とする。
【0025】
この発明の洗浄物は、前記乾式洗浄方法で洗浄したことを特徴とする。
【0026】
この発明の再生装置の製造方法は、前記乾式洗浄方法によって、使用済みで回収して分解した装置の部品を洗浄し、洗浄した部品を再度組み立てて装置を復元することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
この発明は、洗浄槽本体の空気を吸引して洗浄槽本体内の空気や塵埃を外部に搬送している状態で洗浄槽本体の開口部方向に高速気流を噴出して洗浄媒体を加速して洗浄対象物を洗浄するとき、洗浄対象物と洗浄槽外縁部の間隙を通り洗浄槽本体内に流入する気流を、前記開口部を通過させずにバイパス流路を通して洗浄槽本体内に流入させることにより、洗浄対象物と洗浄槽外縁部の間隙を流入する気流により洗浄媒体を飛翔させる気流が乱されたり弱められたりすることを防止でき、洗浄能力の向上と安定化を図ることができる。
【0028】
また、バイパス流路から洗浄槽に流入する気流を、洗浄槽本体の内壁に沿って流入させることにより、洗浄槽本体の内壁に沿う循環気流を強めることができ、洗浄槽本体の内壁への洗浄媒体の滞留を防ぎ、洗浄媒体を有効に利用して洗浄能力を高めることができる。
【0029】
さらに、バイパス流路から洗浄槽本体に流入する気流を、洗浄槽本体に噴出して洗浄槽本体内を循環する気流に合流するように流入させることにより、洗浄媒体を加速飛翔させる気流を強めることができ、より多くの洗浄媒体をより高速に加速して飛翔させることができ、洗浄能力を高めることができる。
【0030】
また、洗浄槽本体に高速気流を噴出する洗浄媒体加速手段を洗浄槽本体の内壁面よりも突出させることにより、洗浄槽本体内に発生したループ状の循環気流を洗浄媒体加速手段から噴出する高速気流に合流させることができ、噴出する高速気流をさらに強めて、より高い洗浄能力を得ることができる。
【0031】
また、バイパス流路を形成する離隔手段に洗浄対象物に対して摺接するシール部材を有することにより、洗浄槽本体の開口部と洗浄対象物の隙間から漏出する洗浄媒体を堰き止めることができる。また、シール部材で堰き止め切れずに漏出した洗浄媒体はバイパス流路を流れる気流によって運ばれて洗浄槽本体内に戻すことができ、洗浄媒体を有効に利用することができる。
【0032】
また、乾式洗浄装置の洗浄対象物を保持する洗浄対象物保持手段に洗浄槽外縁部に対して摺接する第2のシール部材を設けたり、洗浄槽外縁部に洗浄対象物に対して摺接するシール部材を設けることにより、洗浄対象物と洗浄槽外縁部の間隙に漏出した洗浄媒体が外部に漏れることを防ぐとともにバイパス流路を通して洗浄槽本体内に戻すことができ、洗浄に利用できる洗浄媒体の量を安定にたもつことができ、高い洗浄能力を維持することができる。
【0033】
また、離隔手段を洗浄対象物に対して接離し、バイパス流路を開閉する駆動手段を備えることにより、離隔手段を洗浄対象物から離したときにバイパス流路を閉じることにより、離隔手段を洗浄対象物から離して形成された流路から流出した洗浄媒体をバイパス流路内に溜め込むことができ、洗浄槽本体内を飛翔循環する洗浄媒体の量を減らして洗浄対象物に付着した洗浄媒体を効率良く除去することができる。
【0034】
このバイパス流路が閉じているときにバイパス流路に溜まった洗浄媒体の量を検知することにより、洗浄媒体が消耗により排出されて所定量よりも少なくなったことを検出でき、洗浄媒体の不足による洗浄能力低下を防止し、高い洗浄能力を維持することができる。
【0035】
また、この発明の洗浄方法で洗浄した洗浄物は確実に洗浄され、安定して再利用することができる。
【0036】
さらに、この発明の洗浄方法により使用済みで回収して分解した装置の部品を洗浄し、洗浄した部品を再度組み立てて装置を復元することにより、安定した再生装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
図1と図2は、この発明の乾式洗浄装置の構成を示し、図1は斜視図、図2(a)は
正面断面図、(b)は側面図である。乾式洗浄装置1は洗浄槽ユニット2と洗浄対象物保持手段3を有し、図3の部分拡大断面図に示すように、洗浄対象物保持手段3で保持した洗浄対象物4に付着した粉塵や汚れ等を水や溶剤等の液体を使用せずに高速気流により飛翔する洗浄媒体5により除去するものである。
【0038】
この乾式洗浄装置1で使用する洗浄媒体5は、金属やセラミクス、合成樹脂、スポンジ、布等の材質で、粒状、棒状、筒状、繊維状または薄片状の固体から形成されている。薄片状の固体としては、例えば面積が1〜1000mm2、厚みが1〜500μm程度の樹脂フィルム片や布片、紙片、金属薄片からなり、矩形や円形、楕円形、三角形、多角形、その他不定形状で可撓性を有する。この洗浄媒体5の材質や大きさ、厚みは、洗浄対象物4の形状や材質などの特性や洗浄対象物4へ付着している付着物の付着強度に応じて適宜選択すれば良い。例えば、洗浄対象物4が傷つきやすい場合は、樹脂フィルム等の柔軟素材で、かつ厚みの薄いものを使用すれば、薄片が柔軟に撓むので洗浄対象物4を傷つけないですむ。また、洗浄対象物4へ付着している付着物が塗膜等のように強い除去力が必要な場合は金属薄片などを使用すれば強い除去作用を得ることができる。また、洗浄対象物4の洗浄対象面に凹凸部を有する場合でも、洗浄媒体5のサイズを適宜選択することにより洗浄することができる。
【0039】
このように薄片状の洗浄媒体5を使用した場合、端部から洗浄対象物4に衝突すると、接触力が洗浄媒体5のエッジに集中するため、質量が小さいにもかかわらず付着物の除去に必要な力が得られる。また、洗浄対象物4に対する接触力が大きくなると撓んで力を逃がすため、一般的なブラストショット材やバレル加工用の研磨材等とは異なり、必要以上の力を洗浄対象物4に加えることがなく、洗浄対象物4を傷つけないですむ。さらに、薄片状の洗浄媒体5が洗浄対象物4に衝突したときに撓んで空気から受ける粘性抵抗が大きく作用して非弾性衝突となり、跳ね返りが起こりにくい。特に、斜め衝突の場合は滑り接触して一度の衝突で洗浄対象物5の広い面積に接触しながら移動するので、より優れた洗浄効果を発揮することができる。
【0040】
洗浄槽ユニット2は、洗浄槽6と洗浄媒体加速手段7と吸引手段8及び離隔手段9を有する。洗浄槽6は、洗浄槽本体10と洗浄槽外縁部11と洗浄媒体分離手段12を有する。洗浄槽本体10は上部に開口を有する角錐形状や半円筒形に形成され、上部開口を挟む両壁面に開口部13を有し、底部にはノズル固定部14を有する。ノズル固定部14は中央部が突出した角錐形状に形成され、中央部から両壁面の開口部13までの両面は滑らかな曲面で形成されている。洗浄槽外縁部11は洗浄槽本体10の上部開口を中心部に有し、両側壁に洗浄対象物保持手段3との間隙を保持して洗浄対象物保持手段3の移動を案内するガイド部材15を有する。洗浄媒体分離手段12は、例えば金網、プラスチック網、メッシュ、パンチメタル又はスリット板等の多孔性部材からなり、内面が洗浄槽本体10の両壁面に設けた開口部13に洗浄槽本体10の内面と一致するように設けられ、洗浄媒体5と洗浄対象物4から除去した付着物を分離する。
【0041】
洗浄媒体加速手段7は複数の噴出し口を有する洗浄媒体加速ノズル16と例えばコンプレッサからなる圧縮空気供給装置17を有する。洗浄媒体加速ノズル16は複数の噴出し口を洗浄槽本体10の底部中心に沿って一直線に配置してノズル固定部14に固定されている。この洗浄媒体加速ノズル16に圧縮空気供給装置17から制御弁18を有する送気管19を通して圧縮空気を供給して洗浄槽本体10内に噴射させて洗浄媒体5を高速飛翔させる。この洗浄媒体加速ノズル16に供給する圧縮空気の代わりに窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを供給しても良い。
【0042】
吸引手段8は吸引フード20と吸引装置21を有する。吸引フード20は例えば半円筒状に形成され洗浄槽本体10の両壁面の開口部13を覆い、洗浄媒体分離手段12との間に吸引ダクト22を形成する。吸引装置21は吸引フード20に連結された吸引管23を通して洗浄槽本体10内の空気を吸引して洗浄媒体分離手段12を通って吸引ダクト22に吸引される空気や塵埃などを洗浄槽6の外部に搬送する。
【0043】
離隔手段9は2組の隔壁部材24と第1のシール部材25とを有する。隔壁部材24は例えば下部に頂点を有する三角柱形に形成され、洗浄槽本体10の上部開口の両端部から所定間隔を隔てて、洗浄槽本体10内に突出して設けられている。第1のシール部材25は、例えば多数の毛を密にしたブラシシールからなり、先端部を洗浄対象物保持手段3で保持した洗浄対象物4の洗浄面に押し付けるように隔壁部材24の上部に設けられている。この2組の隔壁部材24と第1のシール部材25で洗浄対象物保持手段3に保持された洗浄対象物4に沿って流れる気流及び洗浄媒体5を堰き止め、洗浄媒体5を洗浄槽本体10内に閉じ込める。また、洗浄対象物4に沿って洗浄槽本体10に流入する気流を堰き止め、洗浄槽本体10の側壁との間にバイパス流路26を形成する。
【0044】
洗浄対象物保持手段3は、ほぼ平面形状の洗浄対象物4を保持する洗浄対象物保持部27をほぼ中央部に有し、この洗浄対象物保持部27で洗浄対象物4の下面である洗浄対象面が洗浄対象物保持手段3の下面とほぼ同一平面になるように洗浄対象物4を保持して洗浄槽外縁部11に沿って移動する。この洗浄対象物保持手段3の洗浄対象物保持部27から所定距離だけ隔てた移動方向の両側には第2のシール部材28を有する。第2のシール部材28は洗浄槽外縁部11に摺接しながら移動するため、通気性の確保と洗浄槽外縁部11との摩擦低減などの面から、ブラシ状のシールを使用することが望ましいが、スポンジ、ゴム、または樹脂フィルム製のシール部材を用いても良い。この洗浄対象物保持手段3を移動する相対移動手段は、例えば直動モータやエアシリンダ、ワイヤー駆動手段等の不図示の平行移動アクチュエータ等の駆動手段に着脱自在となっており、制御装置からの制御信号により洗浄槽ユニット2の動作と並行して洗浄槽外縁部11に沿って移動する。
【0045】
この乾式洗浄装置1で洗浄対象物4に付着している粉体や塵埃等を除去する動作を説明する。
【0046】
まず、洗浄槽本体10に適量の洗浄媒体5を投入し、洗浄対象物4を洗浄対象物保持手段3で保持し、洗浄対象物4の洗浄対象面を洗浄槽ユニット2側にして洗浄対象物保持手段3を洗浄槽ユニット2に載置し、不図示の駆動手段に連結し、図2(a)に示すように、洗浄対象物4を洗浄槽本体10の上に移動する。この状態で図示していない制御装置を稼働させると、制御装置は、まず吸引装置21を駆動させて洗浄槽本体10内の空気を吸引して負圧にする。この洗浄槽本体10内の空気の吸引により外気との差圧が生じ、洗浄槽外縁部11と洗浄対象物保持手段3の間の間隙29が流路となり、洗浄槽本体10内に向かう気流が発生する。この気流は第2のシール部材28とバイパス流路26を通って外気を洗浄槽本体10内に流入させる。
【0047】
この状態で圧縮空気供給装置17を駆動して制御弁18を開いて洗浄媒体加速ノズル16に圧縮空気を供給して洗浄媒体加速ノズル16から洗浄槽本体10内に垂直上方向の高速気流を発生させる。この高速気流は、図3に示すように、洗浄対象物4に衝突した後、洗浄対象物4と洗浄対象物保持手段3に沿って流れ、さらに第1のシール部材25と隔壁部材24によって方向を曲げられ、洗浄槽本体10の内壁に沿って流れて再び洗浄媒体加速ノズル16に戻って洗浄槽本体10内にはループ状の循環気流Aが発生する。このループの循環気流Aを発生するとき、ノズル固定部14が洗浄槽本体10の底部より突出して側面が滑らかな曲面で形成され、このノズル固定部14の先端部に洗浄媒体加速ノズル16の噴出し口を設けているから、洗浄槽本体10内に発生したループ状の循環気流Aはノズル固定部14の滑らかな曲面に沿って流れ、洗浄媒体加速ノズル16の噴出方向と循環気流Aの流れの方向を一致させることができる。したがって洗浄槽本体10内に発生したループ状の循環気流Aによって洗浄媒体加速ノズル16から噴出する気流が乱されたり弱められたりすることがなく、逆に洗浄媒体加速ノズル16から噴出する気流をさらに強めることができ、洗浄媒体5を効率よく飛翔させることができる。
【0048】
この高速気流により洗浄媒体5が高速で飛翔して洗浄対象物4に衝突して洗浄対象物4表面に付着している汚れや粉塵等を効率良く除去する。洗浄対象物4に衝突した洗浄媒体5はループ状の循環気流Aの流れと重力によって落下し、洗浄媒体分離手段12上を吸引されながら洗浄媒体加速ノズル16の近傍に滑り落ちる。このとき、同時に、洗浄媒体5に付着した汚れ等が分離・吸引される。洗浄媒体分離手段12で分離した汚れ粉塵等は吸気ダクト22と吸引管23を通って吸引装置21により回収される。また、落下した洗浄媒体5は再びループ状の循環気流Aにより洗浄媒体加速ノズル16の噴出し口の近傍に送られ、洗浄媒体加速ノズル16により噴射する高速気流によって垂直上方向に飛翔する。この動作を繰り返すことにより、洗浄対象物4の表面の汚れや粉塵等が除去される。
【0049】
この飛翔する洗浄媒体5により洗浄対象物4を洗浄しているとき、洗浄槽外縁部11と洗浄対象物保持手段3の間の間隙29が流路となり、洗浄槽本体10内に向かう気流が発生する。この気流は第2のシール部材28とバイパス流路26を通って外気を洗浄槽本体10内に流入させる。この流入する気流Bはバイパス流路26を通って洗浄槽本体10内を循環するループ状の循環気流Aの洗浄媒体分離手段12に沿って流れる気流に合流する。したがって間隙29から入り込む気流Bが洗浄媒体加速ノズル16から噴出する高速気流を弱めたり洗浄槽本体10内を循環するループ状の循環気流Aを乱して洗浄槽本体10内に洗浄媒体5が滞留することを防止することができるとともに間隙29に入り込もうとする洗浄媒体5は押し戻されて洗浄槽6外には排出されないで済む。また、洗浄媒体5がわずかに間隙29に入り込んでも間隙29に流入する気流Bにより洗浄媒体5の飛翔速度を減衰させるから、洗浄媒体5は装置外に漏れずに減速されて最終的には第2のシール部材28で阻止されて洗浄槽外縁部11上に落下する。さらに、バイパス流路26を通って洗浄槽本体10内に流入した気流Bは洗浄槽本体10内を循環するループ状の循環気流Aの洗浄媒体分離手段12に沿って流れる気流に合流してループ状の循環気流Aをさらに強めることができ、洗浄能力を高めることができる。
【0050】
この洗浄媒体5を洗浄媒体加速ノズル16により飛翔させて洗浄対象物4を洗浄するとき、制御弁18を間欠駆動して洗浄媒体加速ノズル16から高速気流の噴出と停止を繰り返しながら洗浄対象物保持手段3を洗浄槽ユニット2の洗浄槽外縁部11に沿って洗浄槽本体10の前後に往復移動して洗浄対象物4の全面を洗浄する。この洗浄対象物保持手段3を往復移動するとき、洗浄対象物保持手段3と洗浄槽外縁部11間の間隙29に入りこんだ洗浄媒体5や洗浄槽外縁部11上に落下した洗浄媒体5は第2のシール部材28により洗浄槽本体10内に回収することができる。したがって洗浄媒体5を有効に利用することができ、少量の洗浄媒体5を使用して効率よく洗浄することができる。この洗浄対象物保持手段3を少なくとも1往復、必要ならば数回往復させたあとに、制御装置は圧縮空気供給装置17と吸引装置21の駆動を停止して一連の洗浄動作を完了させる。なお、洗浄対象物保持手段3を往復移動する代わりに、洗浄対象物保持手段3を固定し、洗浄槽ユニット2を往復移動しても良い。
【0051】
前記説明では隔壁部材24と第1のシール部材25を有する離隔手段9を第1のシール部材25の先端部が洗浄対象物保持手段3や洗浄対象物4に当接するように固定した場合について説明したが、図4(a)の部分断面図に示すように、隔壁部材24と第1のシール部材25の間に例えばベローズ等の伸縮自在なシール部材移動手段30を設け、バイパス流路26にはバイパス流路開閉弁31を設けても良い。
【0052】
この場合、洗浄対象物4を洗浄中は第1のシール部材25の先端部を洗浄対象物保持手段3や洗浄対象物4に当接させ、バイパス流路開閉弁31を開にして、洗浄槽本体10内にループ状の循環気流Aを発生させ、洗浄対象物4の洗浄動作が終了して洗浄対象物4を取り出す前に、図4(b)に示すように、シール部材移動手段30を駆動して第1のシール部材25を洗浄対象物保持手段3や洗浄対象物4から離して流路32を形成し、バイパス流路開閉弁31でバイパス流路26を閉じる。このようにバイパス流路26を閉じて洗浄対象物保持手段3や洗浄対象物4と第1のシール部材25の間に流路32を形成すると、洗浄槽本体10内を循環している循環気流の一部は流路32に流れ込み、この流れ込む気流により洗浄媒体5の一部は洗浄対象物保持手段3や洗浄対象物4と洗浄槽外縁部11の間の間隙29に流出して外部から流入する気流Bにより減速して停止する。この状態で洗浄対象物保持手段3を往復移動すると、間隙29に流れ込んだ洗浄媒体5は第2のシール部材28により掃き戻されてバイパス流路26に入り込みバイパス流路開閉弁31によりバイパス流路26内に溜められる。この動作を所定時間繰り返すことにより洗浄槽本体10ないに飛翔する洗浄媒体5を減らすとともに洗浄対象物4に付着した洗浄媒体5を吹き飛ばして除去することができる。この動作を所定時間繰り返した後、圧縮空気供給装置17と吸引装置21の駆動を停止して一連の洗浄動作を完了させる。その後、洗浄槽ユニット2から洗浄対象物保持手段3を取り外して次の洗浄対象物4の洗浄動作に入る。次の洗浄対象物4を保持した洗浄媒体保持手段2を洗浄槽ユニット2にセットすると、図4(a)に示すように、第1のシール部材25の先端部を洗浄対象物保持手段3や洗浄対象物4に当接させ、バイパス流路開閉弁31を開にして洗浄対象物4の洗浄を開始する。
【0053】
このバイパス流路26には堆積した洗浄媒体5の量を検出する洗浄媒体検出手段を設けても良い。この洗浄媒体検出手段は洗浄媒体5の素材に合わせて、機械式、光学式、静電容量式等の公知の検出手段が利用可能である。この場合、バイパス流路開閉弁31を閉じているときにバイパス流路26に溜まった洗浄媒体5の量を検知することにより、洗浄媒体5が消耗により排出され、所定量よりも少なくなったことを検出できるため、洗浄媒体5の量の不足による洗浄能力低下を防止することができ、高い洗浄能力を維持することができる。
【0054】
また、シール部材移動手段30とバイパス流路開閉弁31を設ける代わりに、図5(a)と(b)の部分断面図に示すように、隔壁部材24と第1のシール部材25を有する離隔手段9を回転又は移動する駆動機構を設け、駆動機構により離隔手段9を回転又は移動して洗浄対象物保持手段3や洗浄対象物4と第1のシール部材25の間に流路32を設けるとともにバイパス流路26を閉じるようにしても良い。
【0055】
前記乾式洗浄装置1は、ほぼ平面形状の洗浄対象物4を水平に保持して、その下面の洗浄対象面を洗浄する場合について説明したが、次に洗浄対象物4の鉛直な洗浄対象面を洗浄する第2の乾式洗浄装置1aについて説明する。
【0056】
第2の乾式洗浄装置1aの洗浄槽6aは、図6(a)の断面図と(b)の斜視図に示すように、洗浄槽本体10aと洗浄槽外縁部11を有する。洗浄槽本体10aは横方向に開口部を有する半円筒形に形成され、開口部と対向する部分と下部との間に例えば金網、プラスチック網、メッシュ、パンチメタル又はスリット板等の多孔性部材からなる洗浄媒体分離手段12を有し、下部には洗浄媒体加速手段7の洗浄媒体加速ノズル16が噴出口を洗浄槽本体10aの開口部を向くように斜めに取り付けられている。洗浄槽外縁部11は洗浄槽本体10aの開口部を挟んだ上下に設けられ、外縁端部にコロやローラ等のギャップ維持手段40が設けられ、下部の洗浄槽外縁部11の洗浄槽本体10aの開口部側の端部には洗浄対象物4の洗浄対象面41と摺接するシール部材42を有する。この洗浄槽外縁部11の両側端部には、図6(b)に示すようなサイドシール43を有し、洗浄媒体5の漏出を防いでいる。
【0057】
吸引手段8の吸引フード20は例えば半円筒状に形成され洗浄槽本体10aの洗浄媒体分離手段12を覆い、洗浄媒体分離手段12との間に吸引ダクト22を形成する。吸引装置21は吸引フード20に連結された吸引管23を通して洗浄槽本体10a内の空気を吸引して洗浄媒体分離手段12を通って吸引ダクト22に吸引される空気や塵埃などを洗浄槽6aの外部に搬送する。
【0058】
離隔手段9aは、隔壁部材24aと第1のシール部材25とを有する。隔壁部材24aは円弧状に形成され、洗浄槽本体10aの上部から開口部と対向する部分に到る壁面から所定間隔を隔てて、洗浄槽本体10a内に設けられている。第1のシール部材25は、例えば多数の毛を密にしたブラシシールからなり、先端部が洗浄対象物4の洗浄対象面41と摺動するように隔壁部材24aに取付けられている。この離隔手段9aと洗浄槽本体10aの壁面との間にバイパス流路26を形成している。
【0059】
この乾式洗浄装置1aの洗浄槽本体10a内に適量の洗浄媒体5を投入し、洗浄槽本体10aの開口部を洗浄対象物4の鉛直な洗浄対象面41に向け、洗浄槽外縁部11のギャップ維持手段40を洗浄対象面41に押し付けて乾式洗浄装置1aをセットした状態で、吸引手段8により洗浄槽本体10a内の空気を吸引して負圧にする。この洗浄槽本体10a内の空気の吸引により外気との差圧が生じ、洗浄槽外縁部11と洗浄対象面41の間の間隙29が流路となり、洗浄槽本体10a内に向かう気流Bが発生する。洗浄槽外縁部11の上部と洗浄対象面41の間隙29を流入する気流Bは洗浄槽本体10aの上部壁面と離隔手段9aで形成するバイパス流路26を通って洗浄槽本体10aの下部方向に流れる。また、洗浄槽外縁部11の下部と洗浄対象面41の間隙29を流入する気流Bはシール部材42を通って洗浄対象面41に沿って離隔手段9の方向である上方向に流れる。
【0060】
この状態で圧縮空気供給装置17を駆動して制御弁18を開いて洗浄媒体加速ノズル16に圧縮空気を供給して洗浄媒体加速ノズル16から洗浄槽本体10aの開口部に向けて斜め上方に高速気流を噴出する。この噴出した高速気流と飛翔した洗浄媒体5は洗浄対象面41に斜めに衝突し、洗浄対象面41に沿って上向きに流れ、第1のシール部材25と隔壁部材24aに沿って洗浄槽本体10a内にループ状の循環気流Aを発生する。このループ状の循環気流に洗浄槽外縁部11の上部と洗浄対象面41の間隙29からバイパス流路26を通って洗浄槽本体10aに流入する気流Bと洗浄槽外縁部11の下部と洗浄対象面41の間隙29を流入する気流Bが合流してループ状の循環気流Aを強める。したがって洗浄槽本体10a内の洗浄媒体5は滞留することなく循環気流に乗って飛翔し、洗浄対象面41に衝突を繰り返すとともに洗浄媒体加速ノズル16へと運ばれる。また、洗浄槽外縁部11の上部と洗浄対象面41の間隙29に漏れ出した洗浄媒体5はバイパス流路26を通る気流Bによって洗浄槽本体10a内へ戻すことができる。したがって洗浄に利用する洗浄媒体5の量を安定して保つため高い洗浄能力を維持することができる。
【0061】
この状態で乾式洗浄装置1aを洗浄対象面41に沿って移動して洗浄対象面41の全面を洗浄する。この乾式洗浄装置1aを移動するとき洗浄対象面41に付着した洗浄媒体5をシール部材42と第1のシール部材25で洗浄槽本体10aに回収することができ、洗浄媒体5を有効に利用することができる。
【0062】
次に、洗浄対象物4の上面を洗浄する第3の乾式洗浄装置1bについて説明する。第3の乾式洗浄装置1bの洗浄槽6bは、図7の断面図に示すように、洗浄槽本体10bと洗浄槽外縁部11を有する。洗浄槽本体10bは下方向に開口部を有する半円筒形で上部中央部が窪んで形成されている。この上部中央部には洗浄媒体加速手段7の洗浄媒体加速ノズル16が噴出し口を洗浄槽本体10bの開口部を向くように下向きに取り付けられている。洗浄槽外縁部11は洗浄槽本体10bの開口部を挟んだ上下に設けられ、外縁端部にコロやローラ等のギャップ維持手段40が設けられ、洗浄槽本体10aの開口部側の端部には洗浄対象物4の洗浄対象面41と摺接する例えば回転ブラシで構成したシール部材42を有する。この洗浄槽外縁部11の両側端部にはサイドシール43を有し、洗浄媒体5の漏出を防いでいる。
【0063】
離隔手段9bは、隔壁部材24bと第1のシール部材25とを有する。隔壁部材24bは洗浄槽本体10bの開口部を形成する上下の壁面のそれぞれから所定間隔を隔てて、洗浄槽本体10b内に設けられ、第1のシール部材25は、例えば多数の毛を密にしたブラシシールからなり、先端部が洗浄対象物4の洗浄対象面41と摺動するように隔壁部材24bの下面に取付けられている。
【0064】
多孔性部材からなる洗浄媒体分離手段12と吸引手段8の吸引フード20は円弧状に形成され、一方の端部がそれぞれ連結され、他方の端部が隔壁部材24の上面に固定されて、洗浄媒体分離手段12と吸引フード20の間で吸引ダクト22を構成し、吸引フード20と洗浄槽本体10bの壁面との間にバイパス流路26を形成している。吸引フード20は側面が吸引管23に連結され洗浄槽本体10b内の空気を吸引して洗浄媒体分離手段12を通って吸引ダクト22に吸引される空気や塵埃などを洗浄槽6bの外部に搬送する。
【0065】
この乾式洗浄装置1bで洗浄対象物4の上面である洗浄対象面41を洗浄するとき、洗浄対象面41に適量の洗浄媒体5を載置し、載置した洗浄媒体5の位置に洗浄槽本体10aの開口部を配置して洗浄槽外縁部11のギャップ維持手段40を洗浄対象面41に押し付けて乾式洗浄装置1bをセットした状態で、吸引手段8により洗浄槽本体10b内の空気を吸引して負圧にする。この状態で圧縮空気供給装置17を駆動して制御弁18を開いて洗浄媒体加速ノズル16に圧縮空気を供給して洗浄媒体加速ノズル16から洗浄槽本体10aの開口部に向けて下向きの高速気流を噴出する。この噴出した高速気流は洗浄対象面41に衝突し、洗浄対象面41に沿って離隔手段9b側に向かい離隔手段9bと洗浄媒体分離手段12に沿って上向きに流動して洗浄媒体加速ノズル16を中心とした両側にループ状の循環気流Aを発生して洗浄媒体5を飛翔させ、洗浄対象物41に衝突させる。一方、洗浄槽外縁部11と洗浄対象面41との隙間29から流入した気流Bはバイパス流路26を通ってループ状の循環気流Aと合流して洗浄媒体加速ノズル16側へ導かれる。この気流Bは洗浄媒体加速ノズル16の加速方向に沿って洗浄槽本体10b内に流入するため、洗浄媒体加速ノズル16が噴出する高速気流をさらに強める作用が得られる。したがって洗浄対象物41に衝突する洗浄媒体5の速度と衝突頻度を増すことができ、より高い洗浄能力を得ることができる。この洗浄動作を洗浄対象面41に沿って乾式洗浄装置1bを往復移動しながら行う。
【0066】
この乾式洗浄装置1bを往復移動するとき、薄片状の洗浄媒体5が洗浄対象面41に付着している場合、洗浄槽外縁部11と洗浄対象面41との隙間29から流入する気流の作用だけでは洗浄槽本体10aに戻せない場合があるが、シール部材42として回転ブラシを使用することにより、洗浄対象面41に付着した洗浄媒体5を捲り起こして隙間29から流入する気流に乗せて洗浄槽本体10bへ戻すことができ、洗浄媒体5を有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】この発明の乾式洗浄装置を示す斜視図である。
【図2】乾式洗浄装置の構成図である。
【図3】乾式洗浄装置の構成を示す部分拡大断面図である。
【図4】乾式洗浄装置の第2の構成を示す部分拡大断面図である。
【図5】乾式洗浄装置の第3の構成を示す部分拡大断面図である。
【図6】第2の乾式洗浄装置の構成図である。
【図7】第3の乾式洗浄装置の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1;乾式洗浄装置、2;洗浄槽ユニット、3;洗浄対象物保持手段、
4;洗浄対象物、5;洗浄媒体、6;洗浄槽、7;洗浄媒体加速手段、
8;吸引手段、9;離隔手段、10;洗浄槽本体、11;洗浄槽外縁部、
12;洗浄媒体分離手段、13;開口部、14;ノズル固定部、15;ガイド部材、
16;洗浄媒体加速ノズル、17;圧縮空気供給装置、18;制御弁、
20;吸引フード、21;吸引装置、22;吸引ダクト、24;隔壁部材、
25;第1のシール部材、26;バイパス流路、28;第2のシール部材、
30;シール部材移動手段、31;バイパス流路開閉弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気流により流動する洗浄媒体を洗浄対象物に衝突させて洗浄する乾式洗浄装置であって、
一方に開口部を有する洗浄槽本体と、該洗浄槽本体の開口部を有し、前記洗浄対象物に対して所定の間隙を隔てて配置される洗浄槽外縁部と、前記洗浄槽本体の壁面の一部に設けられ、気体や粉塵を通過させるが洗浄媒体が通り抜けられない開口を有する洗浄媒体分離手段とを有する洗浄槽と、
前記洗浄槽本体の開口部方向に高速気流を噴出して前記洗浄媒体を加速する洗浄媒体加速手段と、
前記洗浄媒体分離手段を通して前記洗浄槽本体内の空気を吸引し、吸引される空気や塵埃を前記洗浄槽の外部に搬送する吸引手段と、
前記洗浄槽本体の開口部の前記洗浄槽外縁部近傍に設けられ、前記洗浄対象物と前記洗浄槽外縁部の間隙を通り前記洗浄槽本体内に流入する気流を、前記開口部を通過させずに前記洗浄槽本体内に流入させるバイパス流路を形成する離隔手段とを備えたことを特徴とする乾式洗浄装置。
【請求項2】
前記離隔手段は、前記バイパス流路から前記洗浄槽本体に流入する気流を、前記洗浄槽本体の内壁に沿って流入させることを特徴とする請求項1記載の乾式洗浄装置。
【請求項3】
前記離隔手段は、前記バイパス流路から前記洗浄槽本体に流入する気流を、前記洗浄媒体加速手段から噴出して前記洗浄槽本体内を循環する気流に合流するように流入させることを特徴とする請求項1又は2記載の乾式洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄媒体加速手段は、前記洗浄槽本体の内壁面よりも突出していることを特徴とする請求項3記載の乾式洗浄装置。
【請求項5】
前記離隔手段は、前記洗浄対象物に対して摺接するシール部材を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の乾式洗浄装置。
【請求項6】
前記洗浄対象物を保持する洗浄対象物保持手段を有し、該洗浄対象物保持手段には前記洗浄槽外縁部に対して摺接する第2のシール部材を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の乾式洗浄装置。
【請求項7】
前記洗浄槽外縁部には、前記洗浄対象物に対して摺接するシール部材を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の乾式洗浄装置。
【請求項8】
前記離隔手段を前記洗浄対象物に対して接離し、前記バイパス流路を開閉する駆動手段を備え、該駆動手段は前記離隔手段を前記洗浄対象物から離したときに前記バイパス流路を閉じることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の乾式洗浄装置。
【請求項9】
前記バイパス流路に洗浄媒体検出手段を備えたことを特徴とする請求項8記載の乾式洗浄装置。
【請求項10】
気流により流動する洗浄媒体を洗浄対象物に衝突させて洗浄する乾式洗浄方法であって、
洗浄対象物に対して所定の間隙を隔てて配置される洗浄槽外縁部に開口部を有する洗浄槽本体の壁面の一部に設けられ、洗浄媒体が通り抜けられない開口を有する洗浄媒体分離手段を通して吸引される塵埃を洗浄槽の外部に搬送している状態で洗浄槽本体の開口部方向に高速気流を噴出して洗浄対象物を洗浄するとき、洗浄対象物と洗浄槽外縁部の間隙を通り洗浄槽本体内に流入する気流を、前記開口部を通過させずにバイパス流路を通して洗浄槽本体内に流入させることを特徴とする乾式洗浄方法。
【請求項11】
前記バイパス流路から洗浄槽本体に流入する気流を、洗浄槽本体の内壁に沿って流入させることを特徴とする請求項10記載の乾式洗浄方法。
【請求項12】
前記バイパス流路から洗浄槽本体に流入する気流を、洗浄槽本体に噴出して洗浄槽本体内を循環する気流に合流するように流入させることを特徴とする請求項10又は11記載の乾式洗浄方法。
【請求項13】
請求項10乃至12のいずれかに記載の乾式洗浄方法で洗浄したことを特徴とする洗浄物。
【請求項14】
請求項10乃至12のいずれかに記載の乾式洗浄方法によって、使用済みで回収して分解した装置の部品を洗浄し、洗浄した部品を再度組み立てて装置を復元することを特徴とする再生装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−22898(P2010−22898A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184371(P2008−184371)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】