説明

乾式結合により弾性波を用いての、積層紙又はカートン容器内に含有される酪農製品中の微生物の無侵襲分析及び検出

本発明は食品特にミルク及びその誘導食品中の微生物の存在を早期検出する方法及び装置に関する。本発明の主要な利点の1つは市販の包装を開封する必要なしに市販の包装内部で前記の検出方法を行い得るという事実に在る。微生物の存在はこれらが生成物の物性の徹底的な変化を生じてしまう前に、生成物を通して弾性波の伝播の変化(速度、減衰量及び調和ひずみ)により検出され、しかも更には種々の型式の微生物を区別し得る。本発明の検出方法は乾式条件下で行ないしかも制御した湿度と温度とを有する雰囲気を必要とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
食品の安全性及び食品の品質管理の問題は、それが消費者の健康に直接的な作用を及ぼす故に、今日の社会では増大しつつある興味の対象である。特にミルク及びその誘導製品は幼少期からヒトの食事の必須部分を成す。その結果として、迅速で信頼し得る品質を提供するのに、これらの食品に対する管理システムは酪農産業に多大の重要性を有する。
【0002】
ミルクは多量の栄養分をその中に有する故に細菌の成長には理想的な基質である。更には、ミルクはきわめて多様な製造方法を受ける動物製品であるので、広範囲の微生物で汚染されてしまう。実際上、酪農製品の製造過程で細菌感染の出現は通常であり、これは酪農製品をヒトへの消費には無価値とさせる。この理由のため、酪農製品生産の品質管理のうちで、微生物の検出は最も重要な役割を演じる。更には、これらの製品中に微生物の存在を早期に且つ有効に検出することは、これら微生物の存在が一旦検出されたからには廃棄するかもしれない食品の製造を止めるように汚染された生産を早期に停止することから得られる重大な経済的有益性を与える。更には、何らかの事変を予見するために保存した製造製品の貯蔵時間を低下することにより流動資本経費は低減する。
【背景技術】
【0003】
酪農製品で微生物を検出するのに種々のシステムがある(R.K.ロビンソンのMicrobiologia Lactologica(酪農微生物学)I巻及びII巻Acribia S.A.編、ザラゴザ、スペイン(1987))。細菌装填は存在する細菌の個数及び細菌種の関数である。適当な細菌管理プログラムは微生物の計数を伴なう直接測定を包含せねばならない。然しながら、この型式の方法は時間と経費の重大な浪費を伴なう。その結果として、酪農産業は存在する種々の微生物の代謝活性に基づいた間接的な品質試験を通常選択する。最も普通に用いた試験の若干を以下に記載する。
【0004】
直接法のうちでは、次のものがある;
培養により全微生物相:ミルク試料を希釈し、寒天又はトリプトンの如き培地を収容するプレートに接種し、次いで培養し、最後にコロニーを計数する。
【0005】
顕微鏡での直接的な計数(飼育法):0.01〜0.05mlのミルクを1〜4cm2の面積でスライド上に拡げ、これを乾燥し、キシロールで脱脂し、アルコールで固定し、0.3%のメチレンブルーで染色した。
【0006】
微生物群を測定する研究:検出すべき微生物群(大腸菌、耐熱性の微生物、胞子形成した嫌気性菌、ガス発生菌・・・)により特定の試験を行なう。
【0007】
間接法のうちでは、次のものがある;
圧力:或る微生物の代謝から得られるガス発生による容器内の圧力増大の検出。
【0008】
酸性度及びpH:微生物の新陳代謝中に変化したこれらのパラメーターの直接測定。
【0009】
凝固;ミルクをアルコールと混合し、沸騰させ又は30〜37℃の温度で12〜24時間培養した時に凝固の存在がミルクに検出される。
【0010】
電気インピーダンスの測定:ミルクを接種した液体基質の伝導度の実在部分及び非実在部分の変化の測定。これらの変化は微生物の成長によって誘導される基質の電気パラメーターの変化を明らかに示している。
【0011】
それ故、微生物学的な品質管理には種々の技術があり、生産過程に応用されるそれらの適性はそれらの迅速性、信頼性及び経費に応じて評価されるものである。然しながら、該技術は全て有害な方法であるという共通の特徴を有する;容器を開封して所与の時点で製品試料を取出すことが必要である。これは、取出した試料の次後の汚染による擬陽性の可能性を増大する厄介な欠点並びにミルクの無菌性を確保するのに時として極めて長時間である試料培養を待つ必要性を増大する欠点を意味する。膨潤する可撓性の容器での圧力の大幅な上昇又は増々余り用いられない透明な容器での分解及び凝固の出現のみが容器を開封することなく微生物の可能な存在を示すにすぎない。然しながら、微生物の頻度及び重大さに因りきわめて重要な、微生物の存在に因る酪農製品の変性の主要な場合はこれらの場合の範囲外である。
【0012】
或る媒質を通しての弾性波(elastic waves)の伝播パラメーターの測定は食品産業の品質管理に益々広く用いられつつある(D.J. McClements、 食品及び飲料の超音波特性;原理、方法及び応用。食品科学及び栄養物の批評考察37(1), 1〜46(1997))。この型式の試験の無害な性状は何れかの型式の変性に対する保存が高度に重要である物質の分析に該試験を適当とさせる。容器から試料を抜出し且つこれを測定セルに導入することにより生産ラインから出て行く食品の組成を測定する或る応用に超音波が用いられている(J.W.Fitzgerald/Chesapeake lnst. Corp. 米国特許3,040,562号)。
【0013】
音が流動するドップラー効果での超音波測定技術を用いて包装した食品の変性を検出するのに超音波の使用を記載する著作がある(Gestrelius, H., Mattila, T., Ahvenainen, R., 食品科学及び技法における傾向5(12)(1991))。然しながら、この技術は管理した且つ反復性の要領で包装した食品中の流動を確保する困難性に因り工業上利用され得るという少数の可能性を有する。これは、形質導入系と脱結合する紙基質積層容器のインピーダンスにより、ドップラー効果を測定するためと流動を確立するためとの両方に必要な音エネルギーの小部分のみを伝達する紙基質積層容器で尚更に複雑化される。微生物の成長が試料中の検出し得る変化を生じるように4日又はそれ以上の日数の培養が必要とされるのであれば、きわめて鋭感な技術であるとは思われない。完全に異なる概念を用いると、アーベナイネン(Ahvenainen)らは微生物を検出するのに超音波検査法を用いた(Ahvenainen, R, Mattila T, Wirtanen, G; Lebensm.-Wiss. Technol. 22, 268〜272頁(1989))。この方法は板紙容器中の無侵襲検出には適当ではないという欠点がある。何故ならば彼ら自身が言及するように、測定を行なうには生成物を別の容器に取替えることが必要であるからである。更には、超音波検査系の複雑さと高価格とが与えられるならば工業的なレベルで容易に応用し得ない方法である。1987年付けの特許においてM.ナガタ等は包装した製品中の微生物を検出する超音波方法を開示している(藤森工業、EP 269,815号)。開示した装置に恒温系は包含されておらずこれは発明者が注意しているとは思われない重大な不確定さを生じ、何故ならば超音波伝播定数が温度に関して高度に鋭敏であるからである。同様に、超音波伝播の測定は液浴で行ない、この測定はこれらの条件下で変性する紙又は板紙部材製の容器には適当でない。
【特許文献1】米国特許第3,040,562号
【特許文献2】EP 269,815号
【特許文献3】スペイン特許2147149号
【非特許文献1】R.K. Robinson, Microbiologia Lactologica I巻及びII巻(1987)
【非特許文献2】D.J. McClements, 食品及び飲料の超音波特性;原理、方法及び応用。食品科学及び食品の重大な考察37(1), 1〜46(1997)
【非特許文献3】Gestrelius, H., Mattila T., Ahvenainen, R., 食品科学及び技法の傾向5 (12), (1991)
【非特許文献4】Ahvenainen, R, Mattila T., Wirtanen, G; Lebensm.-Wiss. Technol. 22, 268〜272頁(1989)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的はミルク又は乳製品誘導体を通して弾性波の伝播に基づいた広範囲の微生物の検出及び分析の新規な無侵襲方法に関する。
【0015】
市場の展開は、増々広がりつつある紙及び板紙積層容器を含めて任意型式の容器中で食品の微生物学的な評価を行ない得る非破壊検査方法が発展することを要求している。これは食品中の微生物発現の早期段階で生起するごくわずかな変化でさえ検出し得る乾式結合(dry coupling)検出系の発展を伴なう。
【0016】
弾性波の伝播で検出される変化は幾つかの因子によることができ、次いで該因子は存在する1種又は複数の微生物に応じて変化するものである。この検査によって酪農製品を汚染してしまう微生物の種々の型式間を識別し得る。弾性波の伝播パラメーターで見出される変化を説明する最も関連する事例には、媒質中のガス発生、脂肪球又はタンパク質ミセルの大きさの変化に因る懸濁物構造の変化、凝固又はゲル化過程、最初から懸濁している物質の沈澱、あるいはそれ自体媒質の構造変化を成すかなりの個数の微生物の出現でさえある。
【0017】
本発明の目的は市販容器の内部から酪農製品試料を抜出すことなく微生物の存在を示すものである。この特徴は微生物の特性制御過程中に製品の汚染を防止する。本発明は例えばコンビブロック及びテトラブリック(登録商標)の如き多層容器を含めて酪農産業で現在用いられている容器の何れか中で微生物の有無を検出できる。更には本法により微生物の成長をそれが出現しているのと同時に監視でき、何故ならば測定は製品の連続監視に基づくからである。この特徴は、伝統的な微生物の制御方法について予備確立された慣用の培養時間前に生起してしまう汚染を早期検出できる。これらの方法を用いると、製品は48時間を超えさえし得る前記の培養期間後に点検する。
【0018】
本法(図1及び図2参照)は、容器RL内に収容した酪農製品−DP−を通して機械波の伝播を特徴付けるパラメーター(振幅、速度及び調和ひずみ)を自動測定することからなる。そしてまた、この方法は伝播速度の測定により生物流体及び臨床試料中の微生物を検出するための臨床方法の従来の特許に基づく(スペイン特許のES 2 147 149号)。分析すべき製品をその中に定置した測定包囲体MEは、想定される微生物の成長に因る機械波の伝播の変動と培地の温度変化に因る機械波の伝播の変動との間の干渉を防止する目的のため、0.1℃未満の誤差で、酪農産業で標準的であると考えられる培養温度で適度に恒温とされねばならない。
【0019】
スペイン特許のES 2 147 149号の文献とは異なって、恒温(thermostatting)は容器の変性を防止するのに乾燥条件下で行なわねばならない。この詳細はきわめて重要である。何故ならば恒温系の特徴はガス状媒質に適当でなければならないからであり;更にはこの場合の温度は容器を通しての弾性波の伝達に影響し得る別のパラメーターを成すからである。温度及び湿度制御系はTHCとして図1及び図2に示される。スペイン特許のES 2147149号とは異なって、本法は容器の型式及び分析すべき製品に因り超音波の範囲内で作動周波数の選択及び発生を包含する。この湿度及び温度制御で到達した精度によって製品を徹底的に変性しない汚染を検出でき、一位数以上の等級で、例えば前記の特許(藤森工業株式会社のEP 269,815号)の如き別の超音波方法と比較すると伝播パラメーターの測定精度を増大するものである。
【0020】
水中で測定する超音波系とは異なって、本法における別の重要な論点は、弾性波発射系及び受理系と酪農製品を収容する容器との間で適当な弾性結合(coupling)Cを提供する部材を組合せることである。この結合の形状は容器の型式に応じて決まるが、この結合は良好な弾性伝達特性を有するポリマー(RTVシリコン)よりなる。
【0021】
弾性波の測定技術は、図1において対向する2個のトランスジューサー(振動子)E及びRを有する伝達−受理形状を用いるかあるいは弾性波を発射し且つ酪農製品を横断し、容器の反対側で反射された後に弾性波を受理する図2の単一のトランスジューサーE−Rを有するパルス反射形状の何れかを用い得る。発射体のトランスジューサー、図1のE及び図2のE−Rは、電気信号を発生する電子発生系EEで励起され、受理トランスジューサー、図1のR及び図2のE−Rは受理した信号の処理用電子段階ERを有する。両者の場合、弾性波は容器及び酪農製品を横断した後に処理される。この目的のため、伝播速度の変化のみを検出するES 2147149号とは異なって、生起する信号とパルスの到着との間の時間差、媒質を横断した後の弾性波の振幅及び波形の変化を測定する。これらのパラメーターの1つ又は若干のあり得る変化は酪農媒質が微生物により繁殖された時に酪農媒質で生起する変化に関する情報を提供する。
【0022】
この測定技術は酪農製品で生起する微生物と同様な微生物の成長用基質となり得る別型式の非酪農液体食品の微生物特性の制御に用いることができ、適当な方法論的な変更を特に該問題に適合させるものである。
【0023】
この測定を行なう工業用装置は構造部材を備えた小室から構成され、該小室には容器、温度及び湿度を制御するセンサー及び作動器及び弾性手段の発射及び受理用の超音波振動子(ultrasonic transducer)が個々に収容されている。検出装置はまた温度及び湿度センサー及び作動器の制御に必要な電子系並びに発射トランスジューサーを供給し且つ受理トランスジューサーの信号を受理するに必要な電子系を備えている。最後に、電子系の制御は、該制御のオートメーション並びに微生物検出試験に対応するデータの解釈及び貯蔵を可能にするコンピューター系によって行なうのが適当である。これらの系(システム)を以下に記載する。
【0024】
a)測定室
測定室の主要本体は、測定に必要な、適当な且つ安定な熱条件及び吸湿条件を提供する構造体から成る。測定室の寸法は測定のため内部に収容される容器の個数に応じて設計される。外部から絶縁する機能に加えて、この測定室は内部の温度及び湿度制御系を収容する。
【0025】
各々の容器用の個々の包囲体は測定室の主要本体内部に設けられる。これらの包囲体は容器と熱測定及び作動系と超音波振動子とのための支持機能を行ない;各々の容器の個々の微生物検出を可能とする。
【0026】
b)湿度及び温度の制御
測定室は湿度センサー及び作動器よりなる湿度制御系を有する。この制御系は1%未満の変動で測定室の相対湿度を維持する。
【0027】
温度調節は二重系により行なうのが好ましい。一方では空所全般の温度は温度センサー及び感熱作動器によって調節する。測定室の温度は培養温度よりもわずかに低く維持され、±0.1℃の精度が十分である。他方、各々の容器についての個々の温度制御は、容器それ自体と接触しているセンサー及び作動器を用いて±0.01℃の精度で培養温度で行なう。これらの制御系は個々の容器の外被構造に取付けられている。熱制御系は測定室外に配置した電子制御器によって提供され、これによって容器を変性することなく又は培養温度を超えることなく容器の内容物が室温から培養温度に進行するのに要する時間を最小とするように加熱曲線をプログラムできる。
【0028】
c)超音波振動子
各々の外被即ち包囲体は100kHz〜2MHzの範囲の超音波を発射及び受理するため1個のトランスジューサー(パルス反射形状)又は一対の圧電トランスジューサー(発射−受理形状)を備えている。多重トランスジューサー系を用い得る。トランスジューサーのエミッター表面又は受理表面は容器への良好な機械的結合を得るのに弾性ポリマー製の1層を備えている。
【0029】
容器をその包囲体に導入する度ごとに且つ微生物の検出過程が開始される度ごとに、弾性結合層を介して容器にわずかな圧力を及ぼして超音波振動子は容器と接触している。超音波振動子は互いに直面して平行に配置されしかも1μm未満の許容度で全体の測定過程中は固定される。
【0030】
d)発生、受理、多重化(multiplexing)及び温度と湿度との制御エレクトロニクス
制御エレクトロニクスは測定室に包含し得るか又はこれから分離したモジュールとして取付け得る。
【0031】
温度及び湿度センサーはそれらの対応の電子制御器回路に個々に接続される。そしてまた、これらの回路は検出過程全体を制御するコンピューターに接続される。
【0032】
発射体の超音波振動子に供給する信号発生系は弾性波の破裂(bursts)を生成し、その中心周波数は振動子の中央帯に対応する。前記信号の振幅は作動周波数及び容器の特徴、用いた振動子の容量及び型式に応じて調節され、この様にして受理トランスジューサーによって拾い上げられる弾性波は測定に必要な精度で分析するのに十分な程に高い信号/ノイズ比を有する。それ故一般に低い振幅とざわざわした信号である受理信号を調整するための濾過段階及び増幅段階を提供するのが適当である。信号の分析及び解釈を行なうには、信号を前もってデジタル化する。
【0033】
発射体−受理体トランスジューサーの各対は、別法として、制御コンピューターに接続されている多重化段階に通して作動し得る。かくして信号分析及びデータ判定系に到達する情報と特定の容器を終日関連させることができる。
【0034】
最後に且つ反復して述べる通り、コンピューターは検出過程全体の制御を行ない;温度、湿度、超音波振動子の多重化、信号の発射及び取得を制御する。コンピューターはまた必要ならば全ての得られたデータの処理、判定及び貯蔵を行なう。全てこれは次の部分に記載した特定のソフトウェアによって行なう。
【0035】
e)データの制御及び判定
ソフトウェアのパッケージは、検出過程を各々の容易について個々に行なうようにコンピューターと前記した電子装置との連通を取扱う。
【0036】
ソフトウェアは各々の容器の内容物の状態に関する情報を得るのに拾い上げた信号の数学的な処理を包含する。そのためにソフトウェアは、受理したデータを判定できしかも或る容器での超音波伝播測定によって変性の徴候が検出された時に警告の発生を生じ得る算法を組入れてある。
【0037】
ソフトウェアはデータを貯蔵できしかも新たな容器を測定室の外被中に配置した時に各々の測定チャンネルを再始動できる。
【0038】
本発明を具体的な実施例によって説明する。
【0039】
実施例1:微生物間の差異
図3は、2種の異なる微生物、バシラス セレウス(Bacillus Cereus)(四角形)及びシュードモナ エルギノーサ(Pseudomona Aeruginosa)即ち緑膿菌(円形)を約100cfu/mlの初期濃度で接種したミルクを横断した後の超音波信号の進行時間の遅れを示す。両者の場合共遅れが如何に減少するかが見られ、これは伝播速度の増大に対応する。然しながら、微生物の存在は異なる時間で検出され、バシラス セレウスの場合には3時間に、シュードモナ エルギノーサの場合には23時間後に検出され、しかもまたこれらの汚染物の各々の性状を特徴付ける異なった勾配で検出される。
【0040】
実施例2:微生物の検出に対して別の調和ひずみの大きさの測定の応用
本発明の方法は超音波信号の進行時間の測定に因るのみならず超音波信号の大きさ及び調和ひずみの測定に因ってもまた微生物の存在を検出できる。特に図4において、別の調和ひずみの測定でバシラス セレウスの存在を検出することが示されている。ミルク中にバシラス セレウスが存在すること(円形)又は存在しないこと(四角形)に対応して歪みの振幅の変化が4時間後に観察される。別の調和ひずみの程度は弾性波が媒質を通って伝播するにつれて弾性波が受ける変形を表わす。
【0041】
実施例3:別の食品(オレンジジュース)中の微生物の検出
図5は別の液体食品、オレンジジュースへの本法の応用を示す。天然の冷凍したオレンジジュースで生起する迅速な変性はその解凍後に(円形)観察される。この変性は無菌のUHT濃縮ジュース(四角形)の安定性と対照的に3時間後に開始される。この検出は信号進行時間の測定によって行なう。
【0042】
実施例4:コンビブロックに装填したミルク中の微生物を検出するための8−チャンネル超音波装置
図6に示されているこの装置は前記した部材よりなり、これを以下に詳細に示す。
【0043】
測定室
測定室の主要本体は不銹鋼で製造した剛質構造よりなる。測定すべき容器を内部に配置したアルミニウム製の8個の包囲体即ち外被(図7参照)をこの構造体に取付ける。
【0044】
測定室での湿度及び温度の制御
測定室は±1%の相対湿度の精度で湿度制御系を有する。測定室は二重の温度制御系を有する。空所全体の温度制御系は温度センサーとペルチエ効果(Peltier effect)の温度作動器とよりなる。温度は±0.1℃の精度でわずかに35℃以下に維持する。各々の外被の温度制御は容器の加熱時間を最適とするのに個々の調節系を有する。この調節の精度は±0.01℃である。
【0045】
超音波振動子(変換器)
圧電の受理及び発射トランスジューサーは800kHzの共振周波数で作動する。これらのトランスジューサーは図8で見られる通り容器への良好な機械的適合を得るのに弾性ポリマーで製造した外方層を備えている。トランスジューサーの一方は外被のドアに定置されており、別のもう一方は反対側の壁面に定置してある。かくして容器を快適に導入でき、対応の外被のドアを閉鎖したからにはトランスジューサーは互いに平行のままで且つ固定されたままである。
【0046】
発生及び受理エレクトロニクス
各々の外被は発射トランスジューサーと受理トランスジューサーと対応の接続部とからなる測定チャンネルを有する。別法として該チャンネルを作動させるには、電子多重化段階を用いる。信号発生系は5Vの信号振幅とトランスジューサーの周波数帯に対応する中心周波数とを有する正弦波バースト(bursts)を発生する。オシロスコープを用いて受理信号をデジタル化する。最後に、コンピューターを用いて多重化の制御、信号の取得、その処理及びデータの取得及び評価を行なう。これらのシステムの相互接続は装置の全般図に示す(図6)。
【0047】
制御及びデータの判定ソフトウェア
ソフトウェアは各々の外被に対して個々に測定過程を制御するのに、コンピューターを、RS−485プロトコルを有する直列ポートにより温度制御器及び湿度制御と連通し、RS−232プロトコルを有する別の直列ポートによりマルチプレクサ(伝送制御装置)と連通し、GP1Bカードによりオシロスコープと連通するように取扱う。ソフトウェアは各々の容器でミルクの状態についての情報を得るのに拾い上げた信号の数学的処理を包含する。ソフトウェアはまた、データを判定できしかも変性の徴候のある試料を検出した時に警告を発生させ得る図形処理ウィンドー及び算法を包含する。
【0048】
添附図面を参照して本法を例示する。
【0049】
図1は弾性波の発射−受理形状での測定方法の図解図を示す。該方法は酪農製品DPを収容する容器RLの両側に面して発射トランスジューサーEと受理トランスジューサーRとよりなる。
【0050】
容器へのトランスジューサーの結合はポリマーAにより行なう。測定は温度及び湿度制御THC系を備えた包囲体ME中で行なう。
【0051】
発射トランスジューサーは電子発生系EEからの信号を受理し、受理トランスジューサーにより受理された信号は受理エレクトロニクスREにより貯蔵し且つ処理する。
【0052】
図2はパルス反射形状での測定方法の図解図を示す。該方法はポリマーAによって、酪農製品DPを収容する容器RLに結合した発射体−受理体ERよりなる。測定は温度及び湿度制御TCM系を備えた包囲体ME中で行なう。トランスジューサーは電子発生系EEからの信号を受理し並びに容器の反対側に反射した後に達する超音波信号を受理し、該信号を受理エレクトロニクスREにより貯蔵し且つ処理する。
【0053】
図3はバシラス セレウス(四角形)及び緑膿菌(円形)で汚染されたミルクを横断した後の超音波信号の遅れを示すグラフである。H軸は測定時間(時)に対応し、R軸は初期信号の経過時間に関連して信号経過時間の遅れ(秒数)に対応する。
【0054】
図4は無菌ミルク(四角形)を横断した後及びバシラス セレウスで汚染したミルク(円形)を横断した後の別の調和ひずみ信号の振幅を示すグラフである。H軸は測定時間(時)に相当し、A軸は信号の別の調和ひずみの常態化振幅に相当する。
【0055】
図5はUHT濃縮オレンジジュース(四角形)を横断した後及び解凍後の天然の冷凍したオレンジジュース(円形)を横断した後の超音波信号の遅れを示すグラフである。H軸は初期信号の経過時間に関連して信号経過時間の遅れ(秒数)に対応する。
【0056】
図6のコンビブロックに装填したミルク中の微生物を検出する8−チャンネルの超音波装置の全体図を示す。主要な本体においては、ミルク容器が導入されている8個の外被が見られる。各々の外被に結合して、発射トランスジューサーUEと受理トランスジューサーURと加熱抵抗器Rと温度センサーTとがある。温度センサーTに加えて、全体の室温センサーTCとペルチアポンプPPと、湿度センサーHと電子弁Vにより制御した温度拡散器HDとがある。全てのこれらの湿度及び温度系は制御盤CPに接続されており、次いで制御盤CPはRS−485を介して制御コンピューターCと連通している。超音波振動子は、各々の測定チャンネルを交互に供給する伝送制御装置(マルチプレクサ)Mに接続されている。信号発生器Gから入来する電気的な発射信号はこのマルチプレクサに達し、これは受理信号をオシロスコープOに送り、次いでオシロスコープOはGPIBを介してデータを補足するコンピューターCと連通している。マルチプレクサの操作はまたRS−232を介してコンピューターCにより制御される。
【0057】
図7は分析すべき容器を挿入したアルミニウム外被を示す。図7において試料を加熱する抵抗器Rが示され並びにこの加熱を監視する温度センサーTが示される。発射トランスジューサー(transducer)及び受理トランスジューサーを挿入した対向孔Aも見られる。
【0058】
図8は超音波の発射及び受理に用いた型式のトランスジューサーの図解図を示す。圧電セラミックPC、ディレー ラインD、ポリマーの機械結合層P及びトランスジューサーのソケットBもこの図8に見られる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】発射−受理形状での本発明の微生物検出方法で用いた装置の図解図
【図2】パルス反射形状での本発明の微生物検出方法で用いた装置の図解図
【図3】微生物で汚染したミルクを横断した後の超音波信号の遅れを示すグラフ
【図4】無菌ミルクと微生物で汚染したミルクとを横断した後の別の調和ひずみ信号の振幅を示すグラフ
【図5】オレンジジュースを横断した後の超音波信号の遅れを示すグラフ
【図6】ミルク中の微生物検出用の8−チャンネル超音波装置の図解図
【図7】容器を挿入すべきアルミニウム外被の図解図
【図8】超音波の発生及び受理に用いた型式のトランスジューサーの図解図
【符号の説明】
【0060】
E:発射トランスジューサー、R:受理トランスジューサー、A:ポリマー、
ME:包囲体、DP:酪農製品、EE:電子発生システム、
RE:受理エレクトロニクス、THC:温度湿度制御系、
E−R:発射−受理トランスジューサー、T:温度センサー、TC:温度センサー、
H:湿度センサー、M:マルチプレクサ、G:信号発生器、O:オシロスコープ、
C:コンピューター、R:抵抗器、PC:圧電セラミック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
市販の容器を開封する必要なしに又は食品の中身又は該容器を改変する必要なしに食品中、特にミルク及びその誘導製品中の微生物の存在を検出する方法において、乾式条件下に食品の中身を通して弾性波の伝播の変化を検出することにより行なうものとし、検出系は、弾性波発射系と弾性波受理系とからなり両者とも弾性材料製の乾式結合用の適応層を備えており、しかも更に測定を行なう雰囲気の湿度及び温度制御系即ち乾式恒温系からなることを特徴とする、食品中の微生物の検出方法。
【請求項2】
容器に収容した食品であって、湿分の存在下では又は液体に浸漬している状態では食品特性の変化を受ける食品に応用することができ、弾性波の伝播の特徴が改変されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
例えばコンビブロック、テトラブリック又はピュアパックの如き紙又は板紙を積層した容器に応用できることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
受理系の電気−機械トランスジューサーは、発射系の同じトランスジューサーであり、食品媒質を横断し且つ容器の反対側で反射した後に信号を受理するものとすることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
弾性波の伝播速度、減衰量及びひずみの相対的な変化により食品中身の汚染に基因する微生物の種類を識別できることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかの方法により、市販の容器を開封する必要なしに又は中身の食品又は該容器を改変する必要なしに該容器内部の食品中特にミルク及びその誘導製品中の微生物の存在を検出する超音波装置において、測定室と、温度及び湿度制御系即ち乾式恒温系と、両者共弾性材料製の乾式結合用適応層を備えた弾性波発射系及び弾性波受理系と、弾性波装置用の発生及び受理電子系と、微生物検出過程の制御コンピュータ系とから成ることを特徴とする超音波装置。
【請求項7】
測定室は不活発な吸湿及び断熱部材並びに評価すべき各々の容器用の個々の箱体を備えていることを特徴とする請求項6記載の超音波装置。
【請求項8】
測定室内部の湿度制御装置は少なくとも1個の湿度測定センサーと、相対湿度の1度の精度で湿度を調節し得る少なくとも1個の作動器と、これらの処理系を伴なう電子装置と、制御コンピューターとの連通手段とを有することを特徴とする請求項6又は7記載の装置。
【請求項9】
測定室内部の温度制御装置は、測定室の全般温度及び各々の容器の個々の温度の測定センサーと、0.01℃の精度で測定室の全般温度及び各々の容器の個々の温度を調節する作動器と、これらの処理系を伴なう電子装置と、制御コンピューターとの連通手段とを有することを特徴とする請求項6〜8の何れかに記載の超音波装置。
【請求項10】
超音波発射及び受理系は、各々の箱体に対して発射−受理形状で100kHz〜2MHzの範囲で少なくとも1個の単一又は多重発射トランスジューサーと別の受理トランスジューサーとを有し、その際該トランスジューサーは容器への良好な機械的適応を得るのに弾性ポリマー製の1層を備えており、更に前記のトランスジューサーの信号を供給且つ受理する電子装置と、制御コンピュータとの連通手段とを有することを特徴とする請求項6〜9の何れかに記載の超音波装置。
【請求項11】
超音波発射及び受理系は、各々の容器に対してパルス反射の形状で100kHz〜2MHzの範囲で少なくとも1個の単一又は多重発射及び受理トランスジューサーを有し、その際該トランスジューサーは容器への良好な機械的適応を得るのに弾性ポリマー製の1層を備えており、更に前記トランスジューサーの信号を供給且つ受理する電子装置と、制御コンピュータとの連通手段とを有することを特徴とする請求項6〜10の何れかに記載の超音波装置。
【請求項12】
コンピューターシステムは請求項8、9、10及び11の何れかに記載の装置と連通し得る少なくとも1個のコンピューターと、測定した過程を管理でき且つ測定した容器内部の微生物の存在又は不在を決定するのに受理した情報を分析できる制御ソフトウェアとを有することを特徴とする請求項6〜11の何れかに記載の超音波装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−514534(P2006−514534A)
【公表日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−513513(P2004−513513)
【出願日】平成15年6月11日(2003.6.11)
【国際出願番号】PCT/ES2003/000287
【国際公開番号】WO2003/106701
【国際公開日】平成15年12月24日(2003.12.24)
【出願人】(504460452)
【出願人】(504458954)コルポラシオン アリメンタリア ペナサンタ ソシエダ アノニマ (1)
【Fターム(参考)】