説明

乾燥システム

【課題】省エネルギー化を図りつつ、乾燥むらを低減できる乾燥システムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかる乾燥システム100は、被乾燥物104の乾燥システムであって、被乾燥物が置かれた室内空間102の湿度を検出する温湿度センサ112と、室内空間に対して空気を循環させる循環ファン140と、循環させる空気を加熱するヒートポンプ120と、温湿度センサで検出された湿度に基づいて、循環ファンによる循環風量およびヒートポンプによる熱量を制御する制御部150とを備え、制御部は、室内空間に熱量を投入する第1運転モードを実行し、第1運転モードで室内空間の湿度の上昇が所定時間停止すると、投入する熱量を抑え、かつ、循環風量を高める第2運転モードに移行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被乾燥物の乾燥システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
衣類などの被乾燥物を、浴室などの室内空間で乾燥させる乾燥装置が知られている。一般に多く見られる構成としては、ボイラー等によって温風を生成し、乾燥室(浴室など)を加熱するものである。その際の制御としては、ユーザーが経験に基づいてタイマーを設定し、一定時間温風を送るというものが多い。
【0003】
これに対し、特許文献1には、湿度に基づいて制御を行うことが検討されている。特許文献1には、運転開始時での浴室内の絶対湿度を基準として絶対湿度比を算出し、絶対湿度比の推移に基づいて、被乾燥物が乾燥するまでに要する残りの乾燥時間を推定することが記載されている。そして、特許文献1では、残りの乾燥時間を経過すると乾燥運転を停止し、無駄な乾燥運転を抑えるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−168567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような浴室を利用した乾燥システムは、主として住宅に設置されることを目的としている。したがって、乾燥に必要なエネルギーはより低減させることが好ましく、また浴室としても利用するために乾燥時間はより短いことが好ましい。
【0006】
ここで、上記の特許文献1に記載の技術によれば、乾燥が完了する時間を推定することが可能である。しかしながら特許文献1の技術では、乾燥した後も動作し続けるという無駄を省くことはできるが、省エネルギー化を図ったり、乾燥時間そのものを早めたりすることはできない。
【0007】
本発明は、省エネルギー化を図りつつ、乾燥むらを低減できる乾燥システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、省エネルギー化および乾燥時間の短縮のために、より適切な乾燥工程について検討した。乾燥させるためにはもちろん被乾燥物に含まれる水分が蒸発するための潜熱を与える必要があるが、室内の空気の相対湿度も重要である。簡単な例でいうと、いかに被乾燥物を高温にしても、室内の空気の相対湿度が100%に近ければ水分は蒸発できない。また、乾燥むらも重要な検討事項である。これも簡単な例で説明すれば、濡れた洗濯物をストーブの近くに置いておくと、全体は濡れているのに火に近い部分のみが焦げてしまうというのは多くの人が体験するところである。
【0009】
これらの現象を考慮してさらに検討したところ、乾燥のモードは2段階あると考えた。1つ目の段階として、被乾燥物が十分に水分を含んでいるとき、例えば水滴が滴るほどに濡れているときは、乾燥のためには主として潜熱を補う熱量が必要である。もちろん空気中の相対湿度の上昇を抑えるために換気は必要であるが、換気すれば熱が失われるため、相対湿度が一定に保たれる程度であることが好ましい。
【0010】
2つ目の段階として、乾燥が進んで生乾き状態となったときには、乾燥した部分としていない部分(乾燥むら)が発生する。このような状態でもひたすら熱量を与えればいずれは全体が乾燥するが、蒸発速度が低下するため空気中の絶対湿度も低下する傾向にあり、被乾燥物の内側や下寄りの部位、布が重なった部分などはなかなか乾燥しきらない。
【0011】
そして発明者らがさらに検討したところ、2つ目の段階の状態では、単に熱量を与えるよりも、熱い空気を被乾燥物の隅々に行き渡らせること、および室内の空気の湿度を下げた方が早く乾燥することがわかった。端的には、2つ目の段階においては投入熱量よりも風量を増大させて、室内の空気の湿度を低下させ、かつ被乾燥物により多くの空気を当てることにより、乾燥を早めることが可能であることがわかった。
【0012】
そこで、乾燥工程を主に熱を投入する恒湿乾燥工程と、風量を増大する減湿乾燥工程に分けることによって省エネルギー化と乾燥時間の短縮を同時に達成しうることに想到し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明にかかる乾燥システムの代表的な構成は、被乾燥物の乾燥システムであって、被乾燥物が置かれた室内空間の湿度を検出する第1の湿度センサと、室内空間に対して空気を循環させる循環ファンと、循環させる空気を加熱するヒートポンプと、第1の湿度センサで検出された湿度に基づいて、循環ファンによる循環風量およびヒートポンプによる熱量を制御する制御部とを備え、制御部は、室内空間に熱量を投入する第1運転モードを実行し、第1運転モードで室内空間の湿度の上昇が所定時間停止すると、投入する熱量を抑え、かつ、循環風量を高める第2運転モードに移行することを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、まず第1運転モードで熱量を投入することで、被乾燥物の乾燥を促進する。そして被乾燥物の乾燥がある程度進み、湿度の上昇が停滞すると、熱量よりも風量に依存する第2運転モードに移行することで、乾燥を早めつつ、投入する熱量を抑えて省エネルギー化を図ることができる。さらに、第2運転モードでは、風量を高めるので、被乾燥物に対する風の接触流量を大きくして、被乾燥物の乾燥むらを低減できる。
【0015】
室内空間の空気を室外に排気する換気ファンをさらに備え、制御部は、第2運転モードで換気ファンによる換気風量を高める制御を行うとよい。これにより、被乾燥物の乾燥に伴って蒸発した水分を室外に排気でき、被乾燥物の乾燥を促進できる。
【0016】
室内空間に吸引される周囲空気の湿度を検出する第2の湿度センサをさらに備え、周囲空気の湿度が、第1の湿度センサで検出された湿度よりも低いとき、制御部は、第1および第2運転モードで換気風量を高めるとよい。これにより、湿度の低い周囲空気を室内空間に取り入れることで、被乾燥物の乾燥を促進できる。
【0017】
室内空間は、浴室または洗面脱衣所であるとよい。これにより、浴室乾燥だけでなく、洗面脱衣所でも乾燥を行うことができるので、利便性が高まる。
【0018】
第1の湿度センサに代えて、室内空間の温度を検出する温度センサを備え、制御部は、第1運転モードで一定の熱量を投入したとき、温度センサが室内空間の温度の急峻な上昇を検出すると、第1運転モードから第2運転モードに移行するとよい。これにより、一定の熱量を投入し続けた状態で、室内空間の温度が急峻に上昇した場合には、被乾燥物の潜熱が顕熱となり、乾燥の進み具合が停滞したと考えられる。このため、室内空間の温度上昇に伴い、熱量よりも風量に依存した第2運転モードに移行することで、省エネルギー化を図り、また、被乾燥物に対する風の接触流量を大きくして乾燥むらを低減できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、省エネルギー化を図りつつ、乾燥むらを低減できる乾燥システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態における乾燥システムを概略的に説明する図である。
【図2】乾燥装置としての空気調和機の構成を示す図である。
【図3】運転時間に伴う衣類質量の変化を示す図である。
【図4】運転時間と運転モードとの関係を示す図である。
【図5】電力量の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0022】
図1は、本実施形態における乾燥システムを概略的に説明する図である。乾燥システム100は、例えば室内空間としての浴室102の天井裏に設置された乾燥装置(以下、空気調和機110)を有していて、乾燥室としての浴室102に置かれた衣類などの被乾燥物104の乾燥を行う。
【0023】
空気調和機110は、図中点線の矢印102aに示すように、浴室102の空気を吸引し、ダクト106aから外に排気して換気を行う。なお、空気調和機110は、ダクト106bから周囲空気(例えば、洗面脱衣所の空気)を浴室102に取り込むことも可能である。また、空気調和機110は、図中白抜きの矢印102b、102cに示すように、浴室102に対して空気の循環を行う。
【0024】
さらに、空気調和機110には、被乾燥物104が置かれた浴室102内の絶対湿度や温度を検出する温湿度センサ112(第1の湿度センサ)が設置されている。また、ダクト106bには、周囲空気の絶対湿度や温度を検出する温湿度センサ114(第2の湿度センサ)が設置されている。
【0025】
図2は、乾燥装置としての空気調和機110の構成を示す図である。空気調和機110は、ヒートポンプ120と、換気経路130Aに配置される換気ファン130と、循環経路140Aに配置される循環ファン140と、制御部150を備える。ヒートポンプ120は、冷媒を循環させ、冷媒の気化熱および凝縮熱を用いて浴室102および洗面脱衣所から吸引された空気と熱交換を行う装置である。ヒートポンプ120は、冷媒を圧縮するコンプレッサ122と、換気経路130Aに配置された熱交換器124と、循環経路140Aに配置された熱交換器126と、冷媒を膨張させる膨張弁128とを有していて、これらの各部材が冷媒配管により接続されている。
【0026】
換気経路130Aでは、換気ファン130により、洗面脱衣所の空気がダクト106bから吸引され(矢印118a参照)、熱交換器124を通過し、また、浴室102の空気が換気孔132から吸引される(矢印102a参照)。そして、吸引された空気は、換気ファン130により、ダクト106aから外に排気される。
【0027】
循環経路140Aには、空気の経路を切換えるダンパー142a、142bが配置されている。ダンパー142a、142bが図示のような状態であるとき、循環経路140Aでは、循環ファン140により、浴室102の空気が吸引され(矢印102b参照)、熱交換器126を通過し、浴室102に吹出される(矢印102c参照)。また、ダンパー142a、142bを切換えると、循環経路140Aでは、循環ファン140により、洗面脱衣所の空気が吸引され(矢印118b参照)、熱交換器126を通過し、洗面脱衣所に吹出される(矢印118c参照)。
【0028】
制御部150は、図示のように、温湿度センサ112、114、ヒートポンプ120のコンプレッサ122、換気ファン130および循環ファン140と、図中点線で示す信号線を介して接続されている。制御部150は、例えば、温湿度センサ112、114で検出された湿度あるいは温度に基づいて、コンプレッサ122、換気ファン130および循環ファン140の出力のうち、少なくとも1つを制御する。
【0029】
コンプレッサ122の出力を制御することで、ヒートポンプ120を循環する冷媒の流量が変化し、熱量(投入熱量)を制御できる。また、換気ファン130および循環ファン140の出力を制御することで、換気風量や循環風量を制御できる。なお、これらの各制御は、例えば駆動源に印加されるパルス波のDUTY比を変化させればよい。
【0030】
以下、図3〜図5を参照して、被乾燥物104を乾燥させる際に実行される制御部150による投入熱量、換気風量および循環風量の制御について説明する。図3は、運転時間に伴う衣類質量の変化を示す図である。図4は、運転時間と運転モードとの関係を示す図である。図4(a)は、運転時間に伴う絶対湿度の変化を示す図である。図4(b)は、運転時間に伴う投入熱量、換気風量および循環風量の変化を示す図である。図5は、電力量の変化を示す図である。図5(a)は、運転時間に伴う電力量の変化を説明する図である。図5(b)は、乾燥率と電力量との関係を示す図である。
【0031】
被乾燥物104を乾燥する工程は、乾燥初期での恒湿乾燥工程と、恒湿乾燥工程に後続して行われる減湿乾燥工程とを含んでいる。恒湿乾燥工程では、被乾燥物104の絶対湿度は、被乾燥物104の温度の飽和絶対湿度となる。このため、被乾燥物104の周囲の空気(ここでは、浴室102内の空気)との絶対湿度差を推進力として、乾燥が一定の割合で進行する。一例として、図3に示すように水分を含んだ衣類重量を縦軸とすると、運転時間の経過に伴い、衣類重量(図中、実線)は、図中点線で示す直線に沿ってほぼ直線的に減少する。なお、恒湿乾燥工程では、主に、被乾燥物104の温度を高めるための投入熱量をエネルギーとして利用している。
【0032】
これに対して、減湿乾燥工程では、被乾燥物104の絶対湿度は、飽和絶対湿度ではない。このため、減湿乾燥工程では、恒湿乾燥工程と同程度の投入熱量を与えたとしても、図3に示すように、衣類重量は直線的に減少することはなく、また、乾燥終了までの運転時間も大幅に短縮されることはない。
【0033】
そこで、制御部150は、恒湿乾燥工程での主に投入熱量に依存する運転モード(第1運転モード)から、減湿乾燥工程での主に循環風量あるいは循環風量に依存する運転モード(第2運転モード)に移行する制御を行う。また、制御部150は、温湿度センサ112で検出した絶対湿度の変化に基づいて、第1運転モードから第2運転モードに移行する移行タイミングA(図4(a)参照)を決定する。移行タイミングAは、恒湿乾燥工程で絶対湿度が上昇し、ピークPを過ぎて、絶対湿度の上昇が所定時間(例えば1分間)停滞した時点とする。
【0034】
第1運転モードでは、図4(b)に示すように、被乾燥物104の温度を上げるために制御部150がコンプレッサ122を制御して、投入熱量を強くする(図中、実線)。この場合、空気調和機110では、ヒートポンプ120を用いて暖房運転を行う。暖房運転では、図2に示す膨張弁128により膨張され減圧した冷媒が、熱交換器124を通過する際に蒸発して、空気から吸熱を行う。このとき、換気ファン130を運転することで、洗面脱衣所から吸引された空気(矢印118a参照)が熱交換器124を通過し、排気される。
【0035】
熱交換器124を通過した空気から吸熱した冷媒は、コンプレッサ122により圧縮され高温、高圧気体になり、熱交換器126を通過する際に凝縮して、空気に対して放熱を行う。このとき、循環ファン140を運転することで、浴室102から吸引された空気(矢印102b参照)が熱交換器126を通過する。よって、熱交換器126の放熱により空気が加熱されて、浴室102に吹出し(矢印102c参照)、暖房が行われる。
【0036】
また、第1運転モードでは、被乾燥物104の周囲の絶対湿度を下げて乾燥を促進させるために、制御部150が換気ファン130を制御して、温湿度センサ112で検出された温度が所定温度に達した時点Bで、換気風量を強くする(図中、一点鎖線)。一方、循環風量は、弱い状態を維持している(図中、点線)。
【0037】
続いて、制御部150は、上記移行タイミングAで第2運転モードを実行する。第2運転モードでは、図4(b)に示すように、制御部150がコンプレッサ122を制御して冷媒の流量を下げて投入熱量を弱くする。また、制御部150は、循環ファン140を制御して循環風量を強くする。なお、換気風量は、強い状態を維持する。このように、第2運転モードでは、第1運転モードと比べて、投入熱量を弱くすると共に、循環風量を強くしている。また、循環風量を高めた状態としていることから、第2運転モードでは、被乾燥物104に対する風の接触流量が大きくなる。
【0038】
次に、図5を参照して、第1運転モードから第2運転モードへの移行に伴う電力量の変化について説明する。図5(a)に示すグラフCは、移行タイミングAを過ぎても第2運転モードに移行しない比較例を示している。グラフD、Eは、第1運転モードから第2運転モードに移行した例を示している。なお、図中、C1、D1、E1は、乾燥が終了し運転を停止した時点を示している。乾燥を終了する時点は、例えば温湿度センサ112で検出された浴室102内の絶対湿度と、温湿度センサ114で検出された周囲空気の絶対湿度との差に基づいて、制御部150が適宜判定すればよい。
【0039】
グラフCでは、第1運転モードを維持し続けることで、運転時間の経過に伴い電力量が直線的に増加している。グラフDは、図4(b)に示した第2運転モードに対応している。グラフDは、投入熱量を弱くすることで、グラフCと比べて、乾燥を終了するまでの運転時間が多少延びているものの、電力量が小さくなり省エネルギー化が図られている。
【0040】
グラフEは、図4(b)に示した第2運転モードと異なり、例えば投入熱量は維持したまま、循環風量を強くした例を示している。この例では、消費電力が一時的に上昇するものの、グラフCと比べて乾燥を終了するまでの運転時間が大幅に短縮されている。よって、グラフEに示す例で乾燥が完了するまでに必要な電力量は、グラフCでの電力量よりも小さくなり、結果的に、省エネルギー化を図ることができる。
【0041】
また、図5(b)に示すように、制御部150が、移行タイミングAで第2運転モードに移行する制御を行った場合には(図中、一点鎖線)、第2運転モードに移行しない例(図中、実線)と比べて、乾燥の度合いが進み乾燥率が大きくなる程、電力量に差があり、省エネルギー化が図られている。なお、乾燥率とは、例えば温度20℃、湿度60%の基準衣類の衣類重量の変化から算出したものである。
【0042】
以上説明したように、本実施形態における乾燥システム100では、被乾燥物を乾燥させる際に、空気調和機110の制御部150が、第1運転モードで熱量を投入して、被乾燥物104の乾燥を促進させ、被乾燥物104の乾燥がある程度進み、湿度の上昇が停滞すると、熱量よりも風量に依存する第2運転モードに移行する制御を行う。したがって、乾燥を早めつつ、投入する熱量を抑えて省エネルギー化を図ることができる。また、第2運転モードでは、循環風量を高めるので、被乾燥物104に対する風の接触流量を大きくして、被乾燥物104の乾燥状態がほぼ均一となり、いわゆる乾燥むらを低減できる。
【0043】
また、乾燥システム100では、第2運転モードで換気風量も高めるので、被乾燥物104の乾燥に伴って蒸発した水分を室外に排気でき、被乾燥物104の乾燥を促進できる。
【0044】
上記実施形態では、温湿度センサ112で検出した室内空間の絶対湿度をトリガーとして、制御部150が、第1運転モードから第2運転モードへの移行を実行したが、これに限られず、温湿度センサ112で検出した室内空間の温度をトリガーとしてもよい。この場合には、制御部150は、第1運転モードで一定の熱量を投入したとき、温湿度センサ112が室内空間の温度の急峻な上昇を検出すると、第1運転モードから第2運転モードに移行するとよい。
【0045】
ここで、一定の熱量を投入し続けた状態において、水が活発に蒸発している間は潜熱に熱量を奪われるため、温度が上昇しにくい。そして乾燥が進行し、熱量が潜熱よりも顕熱に多く消費されるようになると、温度の上昇する速度が速くなる。すなわち、温度変化が急峻になったことにより、乾燥状態の境界を知ることができる。このように、室内空間の温度上昇に基づいて、熱量よりも風量に依存した第2運転モードに移行した場合であっても、上記同様に、省エネルギー化を図りつつ、乾燥むらを低減できる。
【0046】
また、上記実施形態では、被乾燥物104を浴室102で乾燥する場合を説明したが、乾燥装置としての空気調和機110は、浴室102に限らず、図2に示したように洗面脱衣所でも空気の換気および循環を行うことができる。このため、洗面脱衣所を乾燥室として用いてもよい。この場合には、ダンパー142a、142bを切換えて、温湿度センサ112で洗面脱衣所の絶対湿度を検出し、さらに、制御部150が、換気ファン130、循環ファン140、およびコンプレッサ122を制御して、洗面脱衣所に対する投入熱量、換気風量および循環風量を制御すればよい。このようにすれば、浴室102だけでなく、洗面脱衣所でも乾燥を行うことができ、利便性が高まる。
【0047】
さらに、上記実施形態では、制御部150が、図4(b)で代表的に例示したように、換気風量、循環風量、投入熱量の強弱を制御したが、これに限られず、季節(ここでは、梅雨〜夏期、冬期)を考慮して、よりきめ細かい制御を行ってもよい。以下、具体的に説明する。
【0048】
まず、梅雨〜夏期での制御について説明する。梅雨〜夏期は、絶対湿度が高めとなるので、周囲空気を乾燥空間に取り入れると、空間内の絶対湿度が増加し、空気調和機110のエネルギー負荷が増大してしまう。そこで、梅雨〜夏期での第1運転モードでは、除湿運転(暖気味の再熱除湿)を行ってもよい。これにより、被乾燥物104の周囲の絶対湿度を下げ、かつ、被乾燥物104の温度を上げることになり、乾燥時間を短縮できる。さらに、周囲空気を乾燥空間に取り入れないように制御することで、乾燥時間の短縮および省エネルギー化を図ることができる。続いて、梅雨〜夏期での第2運転モードでも、周囲空気を乾燥空間に取り入れないように制御することで、乾燥時間の短縮および省エネルギー化を図ることができる。
【0049】
次に、冬期での制御について説明する。冬期は、周囲空気を乾燥空間に取り入れると、空間内の温度が低下し、空気調和機110のエネルギー負荷が増大してしまう。そこで、冬期での第1運転モードでは、暖房運転を行い、被乾燥物104の温度を上げることで、乾燥時間を短縮できる。さらに、周囲空気を乾燥空間に取り入れないように制御することで、乾燥時間の短縮および省エネルギー化を図ることができる。続いて、冬期での第2運転モードでは、周囲空気を乾燥空間に取り入れる、すなわち換気風量を高めるように制御する。このため、空間内の温度が低下するものの、空間内より絶対湿度が低い場合には、被乾燥物104が乾燥する推進力となることから、乾燥時間の短縮および省エネルギー化を図ることができる。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、被乾燥物の乾燥システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
100…乾燥システム、102…浴室、104…被乾燥物、106a、106b…ダクト、110…空気調和機、112、114…温湿度センサ、120…ヒートポンプ、122…コンプレッサ、124、126…熱交換器、128…膨張弁、130…換気ファン、130A…換気経路、132…換気孔、140…循環ファン、140A…循環経路、142a、142b…ダンパー、150…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被乾燥物の乾燥システムであって、
被乾燥物が置かれた室内空間の湿度を検出する第1の湿度センサと、
前記室内空間に対して空気を循環させる循環ファンと、
循環させる空気を加熱するヒートポンプと、
前記第1の湿度センサで検出された湿度に基づいて、前記循環ファンによる循環風量および前記ヒートポンプによる熱量を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記室内空間に熱量を投入する第1運転モードを実行し、該第1運転モードで前記室内空間の湿度の上昇が所定時間停止すると、投入する熱量を抑え、かつ、前記循環風量を高める第2運転モードに移行することを特徴とする乾燥システム。
【請求項2】
前記室内空間の空気を室外に排気する換気ファンをさらに備え、
前記制御部は、第2運転モードで前記換気ファンによる換気風量を高める制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の乾燥システム。
【請求項3】
前記室内空間に吸引される周囲空気の湿度を検出する第2の湿度センサをさらに備え、
前記周囲空気の湿度が、前記第1の湿度センサで検出された湿度よりも低いとき、前記制御部は、前記第1および第2運転モードで前記換気風量を高めることを特徴とする請求項1または2に記載の乾燥システム。
【請求項4】
前記室内空間は、浴室または洗面脱衣所であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の乾燥システム。
【請求項5】
前記第1の湿度センサに代えて、前記室内空間の温度を検出する温度センサを備え、
前記制御部は、前記第1運転モードで一定の熱量を投入したとき、前記温度センサが前記室内空間の温度の急峻な上昇を検出すると、前記第1運転モードから前記第2運転モードに移行することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の乾燥システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−202679(P2012−202679A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71019(P2011−71019)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】