説明

乾燥シリンダの使用方法

【課題】乾燥シリンダを備えた乾燥設備は、公知であるが、乾燥シリンダの乾燥速度に制限があるため、これらの乾燥設備には、比較的大きな空間量が必要である。この場合、乾燥速度は、実質的に、乾燥シリンダのカバーの厚さ、したがって熱抵抗により制限される。他方、充分な安定性を確実にするために、数メートルの長さ及び1メートルを超える直径が必要であり、このため、比較的厚いシリンダシェルとなる。従って、外部カバー層を通る熱の流れを増加させることの可能な、乾燥シリンダの使用方法を提供することを目的としている。
【解決手段】少なくとも1つの吸水性のベルト2が、繊維ウェブ1と共に乾燥シリンダ4の周りに巻き付き、繊維ウェブ1が乾燥シリンダ4と接触し、外側に置かれたさらなる高密度ベルト3が冷却されることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持要素と熱い流体によって加熱される外部カバー層とを有する、紙、厚紙、ティッシュ、又は別の繊維ウェブを生産する及び/又は仕上げ加工する機械において、これらを乾燥するための乾燥シリンダを対象とし、このような乾燥シリンダの使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような乾燥シリンダを備えた乾燥設備が、随分前より公知であり、繊維ウェブが、乾燥用布によって支えられて、これらのシリンダの周りに巻き付く。熱い円周表面と繊維ウェブとの接触により、加熱が発生し、特に乾燥シリンダから離れる方へと導かれた後に、蒸発が発生する。
【0003】
乾燥シリンダの乾燥速度に制限があるため、これらの乾燥設備には、比較的大きな空間量が必要である。
【0004】
この場合、乾燥速度は、実質的に、乾燥シリンダのカバーの厚さ、したがって熱抵抗により制限される。
【0005】
他方、充分な安定性を確実にするために、数メートルの長さ及び1メートルを超える直径が必要であり、このため、比較的厚いシリンダシェルとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、外部カバー層を通る熱の流れを増加させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、上記目的は、支持要素と外部カバー層との間には少なくとも1つの空洞があり、ここを通って流体が流れ、外部カバー層の大部分が非常に薄いので、材質の熱伝導率と外部カバー層の厚さとの比率が、スチールについては3.2kW/m2K、アルミニウムについては30kW/m2K、青銅合金については18kW/m2K、銅については3.4kW/m2K、マグネシウムについては6.1kW/m2Kである制限値より大きいことによって達成される。
【0008】
支持要素が乾燥シリンダ全体に渡って軸方向に延在し、このため、充分な安定性が確実となることが好ましい。これにより、外部カバー層の支持機能が実質的に軽減されるので、外部カバー層は、はるかにより薄く設計され得る。
【0009】
本質的に外部カバー層は、それ自体を支え、かつ空洞内の流体の内圧を吸収しなければならない。乾燥シリンダの構造及び幅、さらに外部カバー層の支持材によっては、外部カバー層が最小の厚さとなる。
【0010】
カバー層の厚さの上限値は、これに対応する材質の上記の制限値によって決まる。
【0011】
外部カバー層は、タイロッドにより支持要素上で支えられるべきであることが好ましい。これは、支柱、中間の壁などによって行われ得るか、或いは固定接続又は形状適合接続が可能である。
【0012】
しかし、支持要素が、ウェブ、スラットなどの接続要素により外部カバー層に接続された内部カバー層を担持し、外部カバー層と内部のカバー層との間に空洞が形成されることも好ましいであろう。
【0013】
特に、流体が蒸気であり、空洞内の圧力が、好ましくは1.5バール〜13バールの間にある場合には、5mm〜15mmの間の厚さを有する外部カバー層を設計すれば十分であろう。
【0014】
外部カバー層の内側で凝縮体が形成されることによる、蒸気から外部カバー層への熱移動を向上させるために、この内側を形状をつけて、好ましくは溝をつけて設計することが好ましい。
【0015】
最大限可能な熱の流れのために、タイロッド又は接続要素の外側の比率は、対応する制限値より上にあるべきであり、及び/又は外部カバー層の円周表面の60%を超える、好ましくは75%を超える場合に、比率は、少なくとも平均して、対応する制限値より大きくあるべきである。
【0016】
また、乾燥シリンダの好ましい適用形態(使用方法)においては、従来の乾燥シリンダとの交換に加えて、繊維ウェブのための乾燥設備が生じ、これによれば、少なくとも1つの吸水性のベルトが、繊維ウェブと共に乾燥シリンダの周りを走り、繊維ウェブが乾燥シリンダに接触し、外側に置かれたさらなる高密度ベルトが、乾燥シリンダの巻き付け領域内で冷却される。
【0017】
このタイプの乾燥設備においては、乾燥シリンダとの接触中に繊維ウェブの加熱によって作られた蒸気は、吸水性のベルトが乾燥シリンダの周りに巻き付いているので、繊維ウェブの周囲の吸水性のベルト中へ移行する。これらのベルトにおいて、凝縮体の凝縮及び堆積が発生する。
【0018】
周りに巻き付いた後、ベルトは、繊維ウェブから離れる方へと導かれ、再び洗浄され乾燥される。
【0019】
ベルトについては、高密度ベルトが、乾燥シリンダの周りに巻き付き、これにより蒸気が逃げるのを防止する。この高密度ベルトは、繊維ウェブからの蒸発の方向を事前に定義するよう、かつ蒸気の凝縮を強化するよう、このようにして乾燥シリンダに対して温度勾配を強化することにより、通常は冷却される。
【0020】
熱移動を向上するためには、繊維ウェブが、少なくとも10、好ましくは少なくとも20kN/mのベルト張力を有するベルト、好ましくは乾燥用布により、乾燥シリンダの円周表面に押圧されることが好ましい。
【0021】
以下、いくつかの例示的実施形態を用いて、本発明についてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る使用方法の適用される乾燥シリンダを示す概略断面図。
【図2】本発明に係る使用方法の適用される別の乾燥シリンダを示す図。
【図3】本発明に係る乾燥シリンダの使用方法が適用される乾燥設備を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る使用方法の適用される乾燥シリンダ4の重要な特徴は、できる限り薄く、かつ乾燥シリンダ4の支持要素8によって安定している、外部カバー層7である。
【0024】
この場合、支持要素8と外部カバー層7との間に、軸方向に走る複数の空洞12があり、ここを通って熱い蒸気が流れる。この蒸気が、外部カバー層7の、したがってまた外部カバー層7に接触している繊維ウェブ1の加熱に影響を及ぼす。
【0025】
外部カバー層7を通る熱の流れを最適化するために、外部カバー層7は、使用される材質によって、できる限り薄く設計されるべきである。本明細書においてはスチールが使用されるので、熱伝導率λとカバー厚sとの比率Aは、3.2kW/m2Kより大きい。したがって、外部カバー層7の厚さは、4mm〜18mmの間にある。
【0026】
この場合、安定性の損失は、乾燥シリンダ4全体に渡って軸方向に延在する支持要素8によって補償される。
【0027】
空洞内の蒸気は、1.5バール〜10バールの間の圧力を有し、空洞12を通って軸方向に流れる。蒸気の供給及び排出は、乾燥シリンダ4での回転式接続によって行われる。
【0028】
外部カバー層7上で、凝縮が発生する。しかし、蒸気から外部カバー層7への良好な熱移動を確実にできるようにするために、このカバー層7の内側は、凝縮体層から突出するリブ10を有する。
【0029】
図1においては、支持要素8は、同時に空洞12を境界付ける、厚肉シリンダシェルとして構築される。
【0030】
支持要素8と外部カバー層7との間には、空洞12内の蒸気の正圧に対抗して支持要素8上で外部カバー層7を保持する、円周全体に分散されて配置されたタイロッド9がある。
【0031】
これとは対照的に、図2の空洞12は、内部のカバー層11及び外部カバー層7によって境界づけられる。これらのカバー層7、11の間の安定接続要素6として、側壁が使用される。内部のカバー層11は、支持要素8によって担持される。
【0032】
図3は、本発明に係る乾燥シリンダの使用方法が適用される乾燥設備内における、乾燥シリンダ4の好ましい適用形態を示しており、これによれば、繊維ウェブ1は、外側に関して少なくとも1つの吸水性のベルト2及び高い密度を有するベルト3と共に乾燥シリンダ4の周りに巻き付く。
【0033】
この場合、高密度ベルト2は、周りに巻き付く時に、フード5からの水で冷却される。
【0034】
乾燥シリンダ4の外部カバー層7と接触中の繊維ウェブ1の加熱により、吸水性のベルト2内の液体が蒸発し凝縮する。これは、乾燥シリンダ4と冷却されたベルト3との間の温度勾配により、さらに促進される。
【符号の説明】
【0035】
1…繊維ウェブ、
2…ベルト、
3…高密度ベルト、
4…乾燥シリンダ、
5…フード、
6…接続要素、
7…外部カバー層、
8…支持要素、
9…タイロッド、
11…内部カバー層、
12…空洞。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持要素(8)と熱い流体によって加熱される外部カバー層(7)とを有する、紙、厚紙、ティッシュ、又は別の繊維ウェブ(1)を生産する及び/又は仕上げ加工する機械において、これらを乾燥するための乾燥シリンダ(4)であって、前記支持要素(8)と前記外部カバー層(7)との間には、少なくとも1つの空洞(12)があり、ここを通って前記流体が流れ、前記外部カバー層(7)の大部分が非常に薄いので、材質の熱伝導率(λ)と前記外部カバー層(7)の厚さ(s)との比率(A)が、スチールについては3.2kW/m2K、アルミニウムについては30kW/m2K、青銅合金については18kW/m2K、銅については3.4kW/m2K、マグネシウムについては6.1kW/m2Kである制限値(G)より大きい乾燥シリンダ(4)の使用方法であって、
少なくとも1つの吸水性のベルト(2)が、前記繊維ウェブ(1)と共に、前記乾燥シリンダ(4)の周りに巻き付き、前記繊維ウェブ(1)が前記乾燥シリンダ(4)と接触し、外側に置かれたさらなる高密度ベルト(3)が冷却されることを特徴とする乾燥シリンダの使用方法。
【請求項2】
前記外部カバー層(7)が、タイロッド(9)により前記支持要素(8)上で支えられることを特徴とする請求項1に記載の乾燥シリンダの使用方法。
【請求項3】
前記支持要素(8)が、ウェブ、スラットなどの接続要素(6)により前記外部カバー層(7)に接続された内部カバー層(11)を担持し、前記空洞(12)が、前記外部カバー層(7)と前記内部カバー層(11)との間に形成されることを特徴とする請求項1に記載の乾燥シリンダの使用方法。
【請求項4】
前記流体が蒸気であり、前記空洞(12)内の圧力が1.5バール〜13バールの間にあることが好ましいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の乾燥シリンダの使用方法。
【請求項5】
前記外部カバー層(7)の内側が、形状をつけて、好ましくは溝をつけて設計されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の乾燥シリンダの使用方法。
【請求項6】
タイロッド(9)又は接続要素(6)の外側の前記比率(A)が、前記対応する制限値より上にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の乾燥シリンダの使用方法。
【請求項7】
前記外部カバー層(7)の円周表面の60%を超える、好ましくは75%を超える場合に、前記比率(A)が、少なくとも平均して、前記対応する制限値(G)より大きいことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の乾燥シリンダの使用方法。
【請求項8】
前記繊維ウェブ(1)が、少なくとも10、好ましくは少なくとも20kN/mのベルト張力を有するベルト、好ましくは乾燥用布により、前記乾燥シリンダ(4)の円周表面に押圧されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の乾燥シリンダの使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−47643(P2011−47643A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210831(P2010−210831)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【分割の表示】特願2007−548796(P2007−548796)の分割
【原出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(506294244)ボイス パテント ゲーエムベーハー (57)
【氏名又は名称原語表記】Voith Patent GmbH
【Fターム(参考)】