説明

乾燥血小板組成物

本発明は、乾燥血小板組成物ならびに凍結乾燥血小板組成物を作出および使用する方法を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乾燥血小板組成物に関し、具体的には1以上の血小板活性化阻害剤を含有する乾燥血小板組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
血小板は、例えば、創傷、血小板欠乏症(例えば、血小板減少症)、種々の遺伝性または後天性異常、および大量失血のような、種々の病態の治療に有用である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、その高い需要にもかかわらず、血小板の利用可能性は、少なくとも一つには、その短い有効期間および現行法では比較的長い期間の保存後に正常な血小板機能を維持できないことで限定されている。それ故に、有効期間を高めた血小板組成物を開発することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、一つには、3種の血小板活性化阻害剤および凍結保護物質を含有する凍結保存性の添加物(CPA)の存在下において乾燥されかつ再水和された血小板が正常機能の、全ての、またはかなりのレベルを保持しているという発見に基づいている。これらの所見により、乾燥血小板組成物(例えば、凍結乾燥血小板組成物)の基礎および凍結乾燥血小板組成物を作出する方法が得られる。さらに、本発明は治療方法を特徴とする。
【0005】
さらに具体的には、本発明は乾燥血小板組成物を提供する。該組成物は複数の乾燥血小板、および1以上の血小板活性化阻害剤を含む。1以上の血小板活性化阻害剤は、例えば、環状アデノシン一リン酸(cAMP)二次メッセンジャー系のエフェクター、ナトリウムチャネル阻害剤、および/または環状グアノシン5’一リン酸(cGMP)二次メッセンジャー系のエフェクターとすることができる。1以上の血小板活性化阻害剤は、例えば、アデノシン、アミロリド、および/またはニトロプルシドナトリウムを含むことができる。組成物の水和後、該組成物中の、アデノシンの濃度は約10μM〜約1mMとすることができ、アミロリドの濃度は約0.1mM〜約10mMとすることができ、およびニトロプルシドナトリウムの濃度は約2.5μM〜約250μMとすることができる。cAMP二次メッセンジャー系のエフェクターは、例えば、イロプロスト、プロスタサイクリン、プロスタグランジンE、ホルスコリン、コレラ毒素、イソプロテレノール、8−ブロモ環状アデノシン一リン酸、ジブチル環状アデノシン一リン酸、テオフィリン、イソブチルメチルキサンチン、チロトロピン、および/またはオウラノフィンとすることができる。ナトリウムチャネル阻害剤は、例えば、アミロリド類似体、ベプリジル、フレカイニド、サキシトキシン、ベンザミル、および/またはプラジュナリウムとすることができる。cGMP二次メッセンジャー系のエフェクターは、例えば、L−アルギニン、亜酸化窒素、SIN−1、SIN−1A、心房性ナトリウム利尿因子、バソプレッシン、オキシトシン、および/または三硝酸グリセリルとすることができる。該組成物は1以上の凍結保護剤、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、マルトデキストリン、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン、グルコース、ポリビニルピロリドン、および/またはマンニトールをさらに含むことができる。該組成物は同様に、乾燥血漿をさらに含むことができる。加えて、該組成物は1以上の細胞外マトリックス(ECM)成分をさらに含有することができる。ECM成分は粒状の無細胞組織マトリックス(particulate acellular tissue matrix)の粒子、例えば、粒状の無細胞皮膚マトリックス(particulate acellular dermal matrix)の粒子の成分とすることができる。この1以上のECM成分は、例えば、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、フィブリリン、ラミニン、デコリン、フィブロモジュリン、ヒアルロン酸、および/またはヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、もしくはデルマタン硫酸プロテオグリカンのようなプロテオグリカンとすることができる。
【0006】
さらに、乾燥血小板組成物の水和は、該乾燥血小板組成物が得られた新鮮な血小板サンプルの保有する少なくとも1つの血小板機能と実質的に同じレベルを有する再水和血小板組成物をもたらすことができる。少なくとも1つの血小板機能は、凝集する能力または1以上の成長因子、1以上のサイトカイン、もしくは1以上のケモカインを放出する能力とすることができる。成長因子またはケモカインは、例えば、形質転換成長因子−β(TGF−β)、血小板由来成長因子(PDGF)ファミリーのメンバー、上皮成長因子(EGF)、血管内皮成長因子(VEGF)ファミリーのメンバー、および/またはチモシンβ4とすることができる。あるいは、少なくとも1つの血小板機能は、細胞(例えば、線維芽細胞)増殖を誘導する能力とすることができる。この組成物の血小板はヒト血小板とすることができる。
【0007】
本明細書において記述されている血小板組成物のどれも、医薬として使用することができる。さらに、本明細書において記述されている血小板組成物のどれも、被験者内または被験者上の創傷(例えば、血小板(すなわち、本明細書において記述されている血小板組成物のいずれか)の投与から恩恵を受けうる、または恩恵を受ける可能性が高い創傷)の治療のための医薬組成物(すなわち、医薬)の調製に使用することもできる。創傷は、例えば、内部創傷または皮膚創傷とすることができ、下記の創傷のタイプのいずれかを含むことができるが、それらに限定されることはない。
【0008】
本発明の別の態様は、凍結乾燥血小板組成物を作出する方法である。この方法は、血小板を含有するサンプルを用意するステップ;血小板および1以上の血小板活性化阻害剤を含有する混合物を作出するステップ;ならびに混合物を乾燥するステップを含む。1以上の血小板活性化阻害剤は上記のもののいずれかとすることができる。該混合物中、アデノシンの濃度は約10μM〜約1mMとすることができ、アミロリドの濃度は約0.1mM〜約10mMとすることができ、およびニトロプルシドナトリウムの濃度は約2.5μM〜約250μMとすることができる。該混合物は、上記のもののいずれかのような1以上の凍結保護剤をさらに含むことができる。該混合物は同様に、血漿をさらに含むことができる。混合物を乾燥するステップは、例えば、混合物を凍結乾燥するステップによることができる。
【0009】
別の実施形態において、本発明は治療方法を特徴とする。この方法は、血小板の投与から恩恵を受けうる、または恩恵を受ける可能性が高い創傷を有する被験者を特定するステップ;および上記の乾燥血小板組成物を創傷に適用するステップを含む。別の治療方法は、血小板の投与から恩恵を受けうる、または恩恵を受ける可能性が高い創傷を有する被験者を特定するステップ;上記の乾燥血小板組成物を再水和して、再水和血小板組成物を作出するステップ;および再水和血小板組成物を創傷に適用するステップを含む。
【0010】
どちらの治療方法でも、創傷は皮膚創傷(例えば、褥瘡、静脈うっ血性潰瘍、糖尿病性潰瘍、動脈潰瘍、負傷(injury wound)、火傷、複合軟組織創傷、植皮もしくは皮弁の失敗、放射線による創傷、または壊疽した傷)あるいは内部創傷(例えば、皮膚の直下または下の創傷)とすることができる。内部創傷は、打撲傷、骨折、瘻孔、潰瘍、または内部器官の負傷を含むことができるが、これらに限定されることはない。
【0011】
血小板組成物、血小板、および組成物の他の成分(例えば、血漿)に関して用いられる「乾燥」という用語は、血小板組成物、血小板、または組成物の他の成分が水を実質的に含まないことを意味する。本明細書において用いられる「水を実質的に含まない」とは、5重量パーセント未満(例えば、4重量パーセント未満、3重量パーセント未満、1重量パーセント未満、0.5重量パーセント未満、0.2重量パーセント未満、0.1重量パーセント未満、0.01重量パーセント未満、または0.001重量パーセント未満)の水(結合水および非結合水を含む)を含有することを意味する。
【0012】
本明細書において用いられる「対照の創傷」は、本発明の血小板組成物が適用されなかった創傷である。そのような対照の創傷は、本発明の血小板組成物が適用された創傷を共に有する被験者にあってもよい。あるいは、対照の創傷は別の被験者にあってもよい。対照の創傷は、本発明の血小板組成物が適用される創傷と、同じタイプおよびサイズのものならびに同じ組織または器官中であることが好ましい。
【0013】
特に規定のない限り、本明細書において用いられる全ての技術的および科学的用語は、本発明の属する技術分野における当業者により共通して理解されるのと同じ意味を有する。好ましい方法および材料を以下に記述するが、本明細書に記述のものと類似または同等の方法および材料を本発明の実践または試験に使用することができる。本明細書において言及されている刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が参照により組み入れられる。本明細書において開示されている材料、方法、および実施例は一例にすぎず、限定することを意図するものではない。
【0014】
本発明の他の特徴および利点、例えば、乾燥血小板組成物は、以下の説明、図面および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
血小板は、血小板減少および/もしくは血小板機能不全を伴うさまざまな血小板の疾患または異常(例えば、血小板減少症)に、ならびに種々の創傷の治療に重要な治療用物質の構成要素となる。しかしながら、保存の間の血小板の生存性および機能の急激な喪失によって、血液バンクでは有効な血小板在庫の管理が大いに複雑になっている。多くの場面で、血小板の保存寿命の制限によりその用途が大幅に減っている。
【0016】
現行のガイドラインによっては20℃〜24℃で最大5日間しか血小板の保存ができず、病院および血液バンクに在庫管理の問題をもたらしている[Lazarus et al. (1982) Transfusion 22:39-43; Murphy (1985) Seminars in Hematology 22:165-177]。この時間制限は、少なくとも一つには、室温での血小板の保存の間に微生物汚染の可能性があるという懸念のため、確立された。その一方で、血小板の保存寿命を伸ばす種々の凍結保存法の利用は、非常に効果的であるということが証明されていない。そのような方法は、例えば、正常な血小板の円盤状形態の喪失、血小板細胞数の減少、および血小板の機能的活動の低下を引き起こす[Balduni et al. (1993) Haematologia. 78:101-104; Bock et al. (1995) Transfusion. 35:921-924]。それ故に、長時間の保存後にも機能を保持している血小板を得ることが望まれている。
【0017】
本発明者らは、血小板活性化阻害剤を含有する凍結保存性の添加物(CPA)液の存在下において凍結乾燥および再水和された血小板が、その機能特性を保持していることを見出した。CPAとともに凍結乾燥および再水和された血小板は、CPA無しで凍結乾燥および再水和された血小板と比べてアゴニスト誘導性の凝集増大を示し、その成長因子分泌能を保持していた。TGF−βの場合(代表的な成長因子として)、実質的に全てのTGF−β特異的な抗体によって、CPA凍結乾燥および再水和後の血小板により産生されたタンパク質が活性を有することが検出された。さらに、CPA凍結乾燥および再水和後の血小板は、線維芽細胞の増殖を誘発する因子、つまり正常な創傷封鎖および再形成に重要な決定因子を分泌した。糖尿病マウス創傷モデルにおいて、肉芽形成、創傷封鎖、血管増生および細胞増殖の程度により評価した場合、CPAの存在下で凍結乾燥された血小板の創傷への送達によって創傷治癒の増大が起こった。
【0018】
これらの所見は、以下に記述される本発明の組成物および方法に寄与する。
【0019】
乾燥血小板組成物
本発明は乾燥血小板組成物を提供する。この組成物は、1以上の(例えば、2以上の、3以上の、4以上の、5以上の、6以上の、7以上の、8以上の、9以上の、10以上の、または12以上の)血小板活性化阻害剤の存在下にて、単離された血小板または血小板を含有する調製物もしくはサンプル(例えば、多血小板血漿)を乾燥する(例えば、凍結乾燥する)ことにより作出される。本明細書において用いられる「血小板活性化」は、血小板の形状(円盤状〜球状〜無定形状)の変化、および/または血小板からの顆粒放出、および/または血小板凝集を引き起こす生物学的(例えば、トロンビンを介した)または物理的(例えば、低温、例えば、4℃への曝露)過程をいう。「血小板活性化阻害剤」は、血小板活性化を完全に阻止できるまたは部分的に低減できる作用物質である。
【0020】
本発明の組成物を作出するのに有用な血小板を含有する調製物またはサンプルは、血小板以外の細胞を含まないことが好ましい。しかしながら、それらは少数のそのような細胞、例えば、赤血球、リンパ球、顆粒球、単球、および/またはマクロファージのような血球を含有してもよい。それらは、関連する血小板調製物またはサンプルが作出された血液中に存在する血小板以外の細胞種のいずれかを10%未満(例えば、5%;2%;1%;0.1%;0.01%;0.001%;または0.0001%未満)含有することが好ましいであろう。
【0021】
本発明の乾燥血小板組成物は、複数の乾燥血小板および1以上の血小板活性化阻害剤を含有する。1以上の血小板活性化阻害剤は、1以上の、環状アデノシン一リン酸(cAMP)二次メッセンジャー系のエフェクター(アクチベーターもしくはエンハンサー)、1以上のナトリウムチャネル阻害剤、および/または1以上の、環状グアノシン一リン酸(cGMP)二次メッセンジャー系のエフェクター(アクチベーターもしくはエンハンサー)を含む。その他の血小板活性化阻害剤は、シクロオキシゲナーゼ二次メッセンジャー系の阻害剤、リポキシゲナーゼ経路の阻害剤、ホスホリパーゼ経路の阻害剤、カルシウムカスケードの阻害剤、プロテアーゼおよびプロテイナーゼ阻害剤、ならびに膜改変物質を含む。
【0022】
cAMP二次メッセンジャー系のエフェクターは、例えば、アデノシン、イロプロスト、プロスタサイクリン、プロスタグランジンE、ホルスコリン、コレラ毒素、イソプロテレノール、8−ブロモ環状アデノシン一リン酸、ジブチル環状アデノシン一リン酸、テオフィリン、イソブチルメチルキサンチン、チロトロピン、およびオウラノフィンを含む。ナトリウムチャネル阻害剤は、例えば、アミロリド、アミロリド類似体、ベプリジル、フレカイニド、サキシトキシン、ベンザミル、およびプラジュナリウムを含む。cGMP二次メッセンジャー系のエフェクターは、例えば、ニトロプルシドナトリウム、L−アルギニン、亜酸化窒素、SIN−1(3−モルホリノシドノンイミン)、SIN−1A(N−ニトロソ−N−モルホリノアミノ−アセトニトリル)、心房性ナトリウム利尿因子、バソプレッシン、オキシトシン、および三硝酸グリセリルを含む。シクロオキシゲナーゼ経路の阻害剤は、アスピリン、ジピリダモール、フルルビプロフェン、チクロピジン、ケトプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、スルフィンピラゾン、グアナベンズ、ウルソル酸およびベンゾヒドロキノンとすることができる。リポキシゲナーゼ経路の阻害剤は、アスピリン、チクロピジン、ウルソル酸、ウンベリフェロン、5,8,11,14エイコサテトラエン酸およびエスクレチンを含む。ホスホリパーゼ経路の阻害剤は、キナクリンおよびメパクリンを含む。カルシウムカスケードの阻害剤は、プロテインキナーゼCエフェクター、カルシウムチャネル遮断薬、カルシウム濃度改変物質、カルモジュリンエフェクター、カルシウムイオノフォア、およびATPase刺激物質を含む。プロテアーゼおよびプロテイナーゼ阻害剤は、ヘパリンおよびアプロチニン(apoprotinin)を含む。膜改変物質は、アマンタジン、ヘパリン、チクロピジン、ペントキシフィリン、およびアホエンを含む。血小板活性化阻害剤は、米国特許第5,919,614号にさらに詳細に記述されており、この開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0023】
本発明の乾燥血小板組成物は、アデノシンをcAMP二次メッセンジャー系のエフェクターとして、アミロリドをナトリウムチャネル阻害剤として、およびニトロプルシドナトリウムをcGMP二次メッセンジャー系のエフェクターとして含むことができる。血小板が乾燥される溶液中の、または(それらが再水和されるなら)再水和後のこれらの血小板活性化阻害剤の濃度は、次のようにすることができる:アデノシンの濃度は約10μM〜約1mM(例えば、約100μM〜約1mMまたは約10μM〜約0.1mM)とすることができ;アミロリドの濃度は約0.1mM〜約10mM(例えば、約1mM〜約10mMまたは約0.1mM〜約1mM)とすることができ、およびニトロプルシドナトリウムの濃度は約2.5μM〜約250μM(例えば、約25μM〜約250μMまたは約2.5μM〜約25μM)とすることができる。例えば、好ましい実施形態において、アデノシンの濃度は0.1mMであり、アミロリドの濃度は0.25mMであり、およびニトロプルシドナトリウムの濃度は50μMである。
【0024】
血小板活性化阻害剤および凍結保護物質(下記参照)の濃度に関して使用される「約」という用語は、言及されている作用物質の濃度が表示濃度の20%まで(例えば、15%;10%;5%;2.5%;または1%まで)変化しうることを示す。
【0025】
1以上の血小板活性化阻害剤に加えて、1以上の凍結保護剤(本明細書において凍結保護物質とも称される)を乾燥前に血小板に添加することができる。このような凍結保護剤は、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、マルトデキストリン、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン、グルコース、ポリビニルピロリドン、マンニトール、およびそれらの組合せとすることができる。DMSO濃度は約0.5%〜約10%(例えば、約1.0%〜約10%;または約0.5%〜約1%)とすることができる。1つの好ましい実施形態において、DMSOの濃度は0.5%とすることができる。このように、1以上の凍結保護剤が乾燥前に血小板調製物に添加されている場合、得られる乾燥血小板組成物は適切な1以上の凍結保護剤を含有するであろう。
【0026】
乾燥の前に血小板に添加される血小板活性化阻害剤または凍結保護剤がその純粋な形態において液体(例えば、DMSO)である場合、乾燥血小板組成物(およびその再水和形態)は乾燥の前よりも血小板活性化阻害剤または凍結保護剤を少なく含有する可能性が高い。
【0027】
血小板活性化阻害剤および凍結保護剤に加えて、本発明の乾燥血小板組成物は1以上のタンパク質を含むことができる。例えば、該組成物は乾燥血漿、例えば、血小板の供与者に由来する乾燥血漿を含むことができる。これは本質的に、組成物を作出するために使用される血小板調製物として多血小板血漿(PRP)を用いて、組成物が作出される場合であろう。さらに、組成物中のタンパク質は乾燥血清として存在することができる。または、タンパク質は1以上の(例えば、全ての)単離された血漿由来タンパク質または血清由来タンパク質(例えば、アルブミンまたはガンマグロブリン)の形態で乾燥の前に血小板混合物に添加されてもよい。血漿、血清、またはどちらかに由来するタンパク質は、血小板と同じ供与者(すなわち、自己)、同一種の1以上の供与者、または1以上の他の種の1以上の供与者に由来することができる。これらのタンパク質供給源が得られる種は、組成物用の血小板の供給源として以下に記載されているもののいずれかとすることができる(下記参照)。さらに、血液または血清タンパク質は組換えタンパク質とすることができる。
【0028】
乾燥血小板組成物はまた、1以上の細胞外マトリックス(ECM)成分、例えば、いずれかの型のコラーゲン(例えば、I型、II型、III型もしくはIV型コラーゲンまたはV〜XVII型コラーゲンのいずれかのような)、エラスチン、フィブロネクチン、ラミニン、デコリン、フィブリリン、フィブロモジュリン、ヒアルロン酸、および/またはヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、もしくはデルマタン硫酸プロテオグリカンのようなプロテオグリカンを含むことができる。これらの成分は乾燥前に血小板を含有する混合物に添加されてもよく、またはそれらは乾燥後に添加されてもよい。そのようなECM成分は、投与された血小板によって放出される因子のためのスキャホールド構造および局所結合部位を提供することにより創傷修復を促進することができる。さらに、ECM成分(上記のタンパク質添加物のような)は、凍結乾燥による乾燥の前に血小板混合物に添加される場合、血小板混合物中の多量の水と置き換わり、それによって血小板混合物の凍結時に形成される氷の量を減らし、それ故に氷を介した血小板への損傷を減らすことができる。ECM成分は、血漿、血清、またはどちらかに由来するタンパク質について上述した供与者のいずれかより得ることができる。さらに、タンパク質であるECMは、組換えタンパク質とすることができる。ECM成分は、例えば、さまざまなコラーゲン含有組織のいずれか、例えば、真皮から作出された粒状の無細胞組織マトリックスの形態で添加することができる。粒状の無細胞組織マトリックスは、米国特許第6,933,326号、米国特許出願第10/273,780号、および米国特許出願第10/959,780号に詳細に記述されており、これらの全ての開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0029】
かなりの割合の、乾燥血小板組成物の血小板が再水和時に(インビトロにおいてまたはインビボにおいて)少なくとも1つの血小板機能(例えば、少なくとも2つの、3つのまたは4つの血小板機能)を回復する。乾燥および再水和後に、本発明の血小板組成物は、対応する(同じ供与者由来の、乾燥および再水和されておらず、本発明の血小板組成物と同じ数の血小板を含有する)新鮮な血小板調製物が有すると思われる少なくとも1つの血小板機能のレベルの少なくとも10%(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)を有する。さらに、本発明の乾燥血小板組成物の血小板の少なくとも10%(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)が、再水和時に、少なくとも1つの血小板機能を有する。関連する血小板機能は、例えば、活性化による成長因子、サイトカイン、およびケモカインの産生;活性化による細胞(例えば、線維芽細胞、内皮細胞、または上皮細胞(例えば、角化細胞))増殖の刺激能;ならびに活性化による凝集能を含む。血小板機能のアッセイは当技術分野において公知であり、以下の実施例に記述されているものを含む。血小板によって産生される成長因子、サイトカインおよびケモカインは、非限定的に、形質転換成長因子−β(TGF−β)、血小板由来成長因子ファミリーのメンバー(例えば、PDGF−A、B、C、D、およびA/B)、上皮成長因子(EGF)、血管内皮成長因子のメンバー(VEGF、VEGF−B、VEGF−C、およびVEGF−D)、ならびにチモシン−β4を含む。試験できる無傷の血小板機能のさらなる兆候は、非限定的に、形態スコア(円盤状、球状、および/または無定形状である血小板の割合)、形態変化の程度(ESC)、低張ショック反応(HSR)、血小板凝集(血小板凝集能測定によって測定される)、血液凝固を誘導する効率(トロンボエラストグラフィー(TEG)によって測定される)、ならびに血小板アデノシン三リン酸(ATP)レベルを含む。血小板の表面上のP−セレクチン発現は、それが脱顆粒されたことを示唆する。脱顆粒は、例えば、凝集なしに起こりうる。
【0030】
再水和後の乾燥血小板組成物における血小板機能の評価は、定量的、半定量的、または定性的とすることができる。すなわちそれは、例えば、離散値として測定されてもよく、またはベースラインに対してもしくは対照サンプル(例えば、新鮮な血小板)での同様の測定の結果に対して表現されてもよい。血小板機能は、当技術分野において公知の種々の半定量的/定性的な系のいずれかを用いて評価および表現することができる。このように、血小板の生存能および/または機能は、例えば(a)「優」、「良」、「並」および/もしくは「不良」の1以上;(b)「非常に高い」、「高い」、「平均」、「低い」および/もしくは「非常に低い」の1以上;または(c)「++++」、「+++」、「++」、「+」、「+/−」および/もしくは「−」の1以上として表現することができる。
【0031】
血小板はさまざまな哺乳類種(例えば、ヒト、ヒト以外の霊長類(例えば、サル、ヒヒ、もしくはチンパンジー)、ウシ、ヒツジ、ウマ、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ハムスター、スナネズミ、ラット、またはマウス)のいずれかの1以上の個体から得ることができるが、それらが投与されることになる被験者と同じ種のものであることが好ましい。乾燥血小板組成物はインビトロまたはインビボにおいて使用することができる。乾燥血小板組成物のインビトロでの使用は、例えば、止血促進活性を有するもの、止血阻害活性を有するもの、または創傷治癒を促進するものについて、関心対象の化合物をインビトロでスクリーニングアッセイまたは試験するための標的としてのその使用を含む。乾燥血小板組成物は再水和され(例えば、生理食塩水または培地のような生理溶液を用いて)、組織培養皿に播種されてもよい。
【0032】
乾燥血小板組成物はインビトロでの産生および血小板によって発現される可溶性因子のその後の単離に使用することもできる(上記参照)。このような因子はそれ自体が診断手段として有用であり、または診断用の抗体を作出するための抗原として使用することができる。さらに、再水和された本発明の乾燥血小板はインビトロでの薬物の有効性または毒性アッセイに使用することができる。乾燥血小板組成物は、その他の血小板保存組成物を開発するための手順のなかで「陽性対照」として使用することもできる。
【0033】
本発明の乾燥血小板組成物を再水和することにより得られる血小板を用いて、培養液中の非血小板細胞の成長および/または分化を補助することもできる。このような血小板は活性化により、例えば、細胞培養液中の線維芽細胞または他の細胞(例えば、線維芽細胞、内皮細胞、もしくは上皮細胞(例えば、角化細胞))の生存および/または成長を促進することができる。乾燥血小板組成物は、血小板機能のインビトロおよびインビボでの基礎科学研究に使用することもできる。
【0034】
乾燥血小板組成物の、またはそれから得られる血小板のインビボでの用途としては、例えば、動物モデルでの(例えば、上記の哺乳類のいずれかでの)またはヒト被験者での研究が挙げられる。このような研究は、例えば、血小板それ自体のまたは血小板機能を調節する(アップもしくはダウンレギュレートする)化合物および生体分子の治療的および/または予防的有効性を評価するために行うことができる。本発明の血小板組成物の他の用途としては、治療方法が挙げられる(下記参照)。
【0035】
血小板を単離する方法は当技術分野において周知である。例えば、血小板は、多血小板血漿(PRP)法またはバフィーコート法のいずれかによる全血液の遠心分離によって調製することができる。さらに、血小板は、当技術分野において利用可能な種々のアフェレーシス技術によって収集することができる。
【0036】
凍結乾燥血小板組成物を作出する方法
また、本発明によって、凍結乾燥血小板組成物を作出する方法が具体化される。この方法は(a)血小板の調製物またはサンプルを用意するステップ;(b)血小板および1以上の血小板活性化阻害剤を含む混合物を作出するステップ;ならびに(c)混合物を乾燥するステップを含む。該混合物は必要に応じて、1以上の凍結保護物質、1以上のタンパク質(例えば、血漿)、および/または上記のECM成分を含んでもよい。
【0037】
血小板の調製物またはサンプル、血小板活性化阻害剤、ならびに任意の凍結保護物質、タンパク質およびECM成分は、上記のもののいずれかとすることができる。混合物の乾燥は、当技術分野において公知の任意の方法、例えば、空気乾燥、不活性ガス(例えば、窒素もしくはアルゴン)の、雰囲気の中でのもしくは流れの下での乾燥、または凍結乾燥によるものとすることができる。凍結乾燥法は当技術分野において周知である(例えば、Labconco, 2004による業界サービス誌「A Guide to Freeze-drying for the Laboratory」;Franks (1994) Proc. Inst. Refrigeration. 91: 32-39、ならびに米国特許第4,619,257号、同第4,676,070号、同第4,799,361号、同第4,865,871号、同第4,964,280号、同第5,024,838号、同第5,044,165号、同第5,154,007号、同第6,194,136号、同第5,336,616号、同第5,364,756号、および同第5,780,295号を参照されたく、これらの全ての開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
【0038】
1以上の血小板活性化阻害剤、および必要に応じて1以上の凍結保護物質を用いての血小板の凍結乾燥では、たとえあっても、血小板に対して最小限の機能的損傷しか起こらない。適当な凍結乾燥装置は商業的供給源、例えば、Labconco(Kansas City, MO)およびVirTis(Gardiner, NY)から入手可能である。液体(例えば、水)含有サンプルの凍結乾燥は、サンプルの凍結およびその後の、昇華と呼ばれる過程による凍結サンプルからの液体(例えば、水)の除去を含む。凍結は、例えば、凍結乾燥器中または−80℃の冷凍庫中とすることができる。サンプル中の液体が凝固するまで(視覚的に評価されるように)、サンプルを冷却する。凍結は、例えば1分あたり1℃〜5℃の冷却速度ですることができ、「即時冷凍」ではないことが好ましい。凍結法は、凍結乾燥に関して引用されている上記の参考文献の中に広く記述されている。昇華は、凍結した液体が液相を通過せず直接的に気相状態に進むときに起こる。凍結乾燥は、例えば、マニホールド法、バッチ法、またはバルク法を含めて、各種の方法のいずれかによって行うことができる。
【0039】
治療方法
本発明はまた、治療方法を提供する。この方法は、血小板の投与から恩恵を受けうる、または恩恵を受ける可能性が高い被験者を特定するステップおよび該被験者に上記の血小板組成物のいずれかを投与するステップを含むことができる。
【0040】
乾燥血小板組成物は、それ自体が被験者に投与されてもよい。この場合、血小板の再水和は被験者内で行われる。または、該血小板組成物を再水和し、その後で被験者に投与してもよい。後者の場合、該組成物は必要に応じて、投与される前に、全てのまたはかなりの量の1以上の血小板活性化阻害剤および、関連する組成物に使用されているなら、1以上の凍結保護物質を除去するため、洗浄過程に供されてもよい。このような洗浄方法は、当技術分野において公知であり、一般に1以上の(例えば、2つの、3つの、または4つの)遠心分離ステップを含む。使用される血小板活性化阻害剤および/または凍結保護物質が有毒である場合、そのような洗浄ステップを行うことが特に望ましい。この場合、洗浄は、有毒な成分が全く、または許容される低レベルの有毒な成分しか、組成物の中に残らなくなるまで、行われる。
【0041】
再水和(および必要に応じて洗浄)は、血小板が1以上のその機能(上記参照)を保持するような任意の生理溶液(例えば、水、生理食塩水、組織培地、または以下の実施例1および実施例7に記述の生理溶液)を用いてすることができる。乾燥された血小板組成物は必要に応じて、血小板が適切な被験者に投与されることになる製薬上許容される担体(下記参照)の中で再水和されてもよい。再水和は、関連する担体中での血小板の速やかな浸漬によってもまたは乾燥血小板への担体の緩やかな、例えば、滴下によってもよい。
【0042】
血小板の投与から恩恵を受けうる、または恩恵を受ける可能性が高い被験者は、創傷している。創傷は、血小板を用いて治療されることから恩恵を受けうる、または恩恵を受ける可能性が高いものとすることができる。創傷は、褥瘡、静脈うっ血性潰瘍、糖尿病性潰瘍、動脈潰瘍、負傷、火傷、複合軟組織創傷、植皮もしくは皮弁の失敗、放射線による組織創傷、および壊疽した傷でありうる皮膚創傷、またはそれらの結果でありうる皮膚創傷とすることができる。創傷はまた、任意の内部器官または組織、例えば、胃腸組織、肺性(肺または気管支)組織、心臓組織、結合組織(例えば、腱、靱帯、および軟骨)、骨組織、神経(中枢および末梢神経系)組織、ならびに血管(静脈および動脈)組織の内部創傷とすることができる。関心対象の内部創傷は、非限定的に、打撲傷、骨折、瘻孔、潰瘍、または内部器官の損傷(例えば、腸、脾臓、肝臓、肺、もしくは心臓の損傷)を含む。創傷は、例えば、複雑骨折、銃創、または事故による擦り傷を含めて、外傷により引き起こされうる。
【0043】
乾燥(または再水和)血小板組成物は、発生直後の創傷またはその自然治癒過程の任意の段階にある創傷に送達することができる。血小板組成物は、被験者において創傷が検出または形成された後に、または検出または形成されてからすぐに、創傷に送達されることが好ましいであろう。血小板組成物を用いて治療される創傷は、さまざまな外観、サイズ、奥行き(すなわち、段階)、および色を持つことがあり、例えば、血腫、血清腫、創傷浸出液、壊死組織、および痂皮の存在を含むことがある。
【0044】
乾燥(または再水和)血小板組成物は局所的に、すなわち、創傷に直接的に適用することができる。これは任意の適当な手段により、例えば、血小板を創傷に振り掛けるもしくは吹き掛けることにより、血小板を創傷の中に詰め込むことにより、または以下に論じられる外科的補助によって創傷に適用することができる。噴霧可能なエアロゾル調製物は、血小板組成物を固体または液体の不活性な担体材料と組み合わせることができ、スクイーズボトルの中にまたは加圧された揮発性の、通常は高圧ガス、例えば、フレオンとの混合物の中に含めることができる。
【0045】
乾燥血小板は、例えば、創傷被覆材もしくは包帯、縫合糸、編物、または人工装具のような、外科的補助によって創傷に適用されてもよい。そのような補助は、例えば、生理学上許容される固体基材および該基材上のまたは中の(例えば、該基材上のコーティングとして適用されたまたは該基材中に含浸された)血小板を含むことができる。典型的には、そのような外科的補助は、滅菌容器の中に詰められた滅菌形態で提供される。外科的補助の基材は、例えば、乾燥血小板を該材料に振り掛けることによりまたは外科的補助の基材に1以上の血小板活性化阻害剤(および必要に応じて1以上の凍結保護物質)を含有する新鮮な血小板の液体懸濁液を含浸し、もしくはその表面に1以上の血小板活性化阻害剤(および必要に応じて1以上の凍結保護物質)を含有する新鮮な血小板の液体懸濁液を適用し、血小板が外科的補助の基材に接着するように外科的補助/血小板の混合物を乾燥する(例えば、凍結乾燥する)ことにより、血小板でコーティングすることができる。あるいは、乾燥血小板は適当な接着性材料により外科的補助の基材に接着されてもよく、または被験者への外科的補助の適用の前に外科的補助に単純に振り掛けられてもよい。
【0046】
外科的補助は任意の適当な形状およびサイズのものとすることができ、生理学上許容される、疎水性または親水性の、任意の適当な固体材料からなることができる。例えば、縫合糸は、単繊維で編まれていてもよく、生分解性とすることができ、および例えば、ナイロンシルク、ポリエステル、または綿のような材料からなることができる。人工装具は例えば、動脈、静脈、管の修復において使用される織物または押出管状構造体;ヘルニア治療においておよび損傷した肝臓、腎臓、またはその他の内部器官の補助において外科的に有用な編物;ピン、スクリュー、および補強板;心臓弁、人工腱、または軟骨材料を含む。包帯は、綿または創傷にもしくは創傷を覆うように適用するのに適したその他の織物のような、任意の適当な基材からなることができ、必要に応じて裏当て材を含んでもよく、および必要に応じて創傷を覆う包帯を固定するためそのフェース面に1以上の接着領域を含んでもよい。
【0047】
本発明の血小板組成物は、製薬上許容される担体を含んだ製薬上許容される処方物中に含めて被験者に投与される。製薬上許容される担体、例えば、生理食塩水、賦形剤、または安定剤は、それらが被験者に投与される前に細胞に添加することができる。「製薬上許容される」という語句は、ヒトに投与される場合、使用される濃度で、細胞に有害でなく、生理学的に寛容され、かつ通常は異常亢進、目まいなどのような、アレルギー反応または類似の有害反応を生じない、分子的実体および組成物をいう。
【0048】
適当な処方物は、溶液、懸濁液、乳濁液、クリーム、軟膏、粉末、塗布薬、膏薬、およびエアロゾルを含むが、これらに限定されることはなく、これらは必要に応じて、滅菌されあるいは助剤、例えば保存剤、安定剤、湿潤剤、防腐剤、抗菌剤(例えば、過酸化水素、ベタジン、もしくは酢酸)、または浸透圧に影響を与えるための緩衝液もしくは塩と混合される。多種多様な製薬上許容される担体、賦形剤または安定剤は、当技術分野において公知である[Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th Edition, Osol, A. Ed. 1980]。製薬上許容される担体、賦形剤または安定剤は、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、および他の無毒性の有機酸緩衝液のような、緩衝液;アスコルビン酸のような抗酸化剤;低分子量(10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性重合体;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、もしくはリジンのようなアミノ酸;単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノース、もしくはデキストランを含む他の糖質;EDTAのようなキレート剤;マンニトール、もしくはソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような塩形成対イオン;ならびに/またはTween、Pluronics、もしくはPEGのような非イオン性界面活性化剤を含む。
【0049】
必要とされる血小板組成物の投与量は、処方物の性質、創傷の性質または治療される創傷のタイプおよび重症度、被験者のサイズ、体重、表面積、年齢および性別、投与される他の治療薬、ならびに主治医の判断に依る。さまざまな投与経路の有効性の違いを考慮して、必要とされる投与量の幅は大きいと予想される。血小板組成物は、再水和組成物およそ1mlが各およそ1cmの創傷に適用されるように、創傷に適用することができる。これらの投与量レベルは、当技術分野において十分に理解されているように、最適化のための標準的な実験手順により調整することができる。
【0050】
血小板組成物は被験者に1回または複数回投与することができる。すなわち、該組成物は1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、15回、17回、20回、25回、30回、35回、40回、45回、50回、60回、70回、80回、100回、150回、200回、250回、300回、350回、400回、450回、500回、700回、1000回、またはそれ以上の回数、投与することができる。複数回の投与が行われる場合、投与は任意の適切な時間、例えば、30秒間、1分間、2分間、3分間、4分間、5分間、10分間、20分間、30分間、45分間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、8時間、12時間、18時間、24時間、2日間、3日間、4日間、1週間、2週間、3週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、8ヶ月間、10ヶ月間、1年間、18ヶ月間、2年間、3年間、4年間、または5年間で区切られてもよい。
【0051】
血小板は、血小板組成物が投与される個体(受容者)から得ることができ、すなわち、血小板は自家性とすることができる。あるいは、それらは受容者と同種の1以上の個体から得ることができ、例えば、血小板組成物は、複数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100またはそれ以上)の被験者、例えば、ヒトボランティアから調製された血小板サンプルのプールから作出することができる。受容者は供与者以外の種のものとすることもできる。さらに、血小板は成人、幼児の血液、または1以上の個体の胎児血液から単離することができる。血小板の受容者および供与者は、上記のその他任意の種のものとすることができる。
【0052】
本明細書において用いられる「治療(の)」または「治療(法)」は、病態(例えば、創傷)の症状の完全な消失または病態の症状の重症度の軽減を意味する。「予防」は、病態の症状が本質的にないことを意味する。本明細書において用いられる「予防(法)」は、病態の症状の完全な阻止、病態の症状の発症の遅延、または後に現れる病態症状の重症度の緩和を意味する。
【0053】
以下の例は本発明を例示し、限定はしないよう意図される。
【実施例】
【0054】
実施例1−実施例1〜6において使用される血小板組成物の調製
ヒト多血小板血漿(PRP)の収集
ヒト血小板の無作為供与者単位(random donor unit;RDU)の形態でのPRPサンプルを米国血液バンク協会(AABB)公認の血液バンクから購入し、室温で撹拌しながら保存し、提供から5日以内に使用した。必要とされる全ての供与者スクリーニングおよび放出試験は、AABBの要件[MEB Technical Manual 14th ed. Bethesda, MD: American Association of Blood Banks (2002)]にしたがい該血液バンクによって行われた。
【0055】
PRPの凍結乾燥
PRPのアリコートを代謝阻害剤アミロリド、アデノシン、およびニトロプルシドナトリウムならびに凍結保護物質ポリビニルピロリドン(PVP)、マンニトール、およびジメチルスルホキシド(DMSO)からなる凍結保存性の添加物(CPA)液と混合した。これらの化合物を全て、等張緩衝液(実施例7に記述の緩衝液B)に希釈した。別個の対照PRPアリコートは等張緩衝液のみと混合した。処理されたPRPサンプルおよび対照PRPサンプル中の血小板の終濃度は細胞9×10個/μlとし、代謝阻害剤および凍結保護物質の終濃度は次のとおりであった:アミロリド(0.25mM)、アデノシン(0.1mM)、ニトロプルシドナトリウム(50μM)、ポリビニルピロリドン(4% w/v)、マンニトール(50mM)、およびジメチルスルホキシド(0.5% v/v)。
【0056】
両血小板サンプルを1分あたり1℃〜5℃の冷却速度で凍結し、次に標準的な条件の下で凍結乾燥した。凍結乾燥した後に、PRPサンプルを5日未満の間−80℃で保存し、次いで凍結乾燥前の量まで緩衝液Bの迅速な全量添加により再水和した。
【0057】
実施例2−CPAの存在下において凍結乾燥されかつ再水和された血小板は、血小板凝集の増大を示す
CPAとともに凍結乾燥されかつ再水和された血小板が止血の重要な機能を媒介できるかどうかを判定するため、CPA有りまたは無しで凍結乾燥されかつ再水和されたサンプルの凝集能をアデノシン二リン酸(10μM)およびI型ウマコラーゲン(2μg/ml;Chrono−Log Corp,Havertown,PA)の存在下において試験した。これらの試験の場合、下記の他の実験とは対照的に、CPA処理および対照の凍結乾燥サンプルを緩衝液Bで1回洗浄した。両サンプル中の血小板の濃度を次に、緩衝液Bで血小板3×10個/μlに調整し、両サンプルを37℃で1時間インキュベートし、その後アデノシンおよびコラーゲンを表示の濃度で添加した。サンプル温度を37℃に維持しながら、凝集を光学的血小板凝集計で測定した。データは新鮮な血小板の(凍結乾燥サンプルを作出するために使用されたPRPサンプルの)凝集反応の割合で表された、凍結乾燥および再水和血小板の凝集反応として示されている。
【0058】
CPAの存在下において凍結乾燥されかつ再水和された血小板は、対照の凍結乾燥血小板に比べて凝集能の増大を示した(図1)。
【0059】
実施例3−血小板成長因子放出アッセイ
トロンビン活性化血小板からの成長因子の放出を測定するためのアッセイの初期確認において、新鮮な血小板懸濁液(凍結または凍結乾燥および再水和されていない)を試験した。新鮮な血小板PRPサンプルを緩衝液Bで細胞3×10個/μlの濃度に希釈し、室温で5分間トロンビン(1単位/ml)により活性化した。得られた血小板凝集塊を遠心分離し、上清をペレット状の凝集塊から分離した。市販のキット(R & D Systems,Minneapolis,MN)を製造元の指示にしたがって用い、4種の成長因子の上清中濃度を酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により測定した。これらの成長因子は形質転換成長因子−β(TGF−β)、血小板由来成長因子(PDGF A/B)、上皮由来成長因子(EGF)、および血管内皮成長因子(VEGF)であった。
【0060】
データは、同じ血小板の対応サンプルの超音波処理によって放出された成長因子の量の割合で表された、トロンビン活性化上清中に放出された成長因子の量として示されている(表1)。実験は、各実験に対し別個の供与者由来のPRPを用いて3回行った。データは3回の実験から得られた平均であり、標準偏差が示されている。これらの平均は各実験群における3回の反復の平均値の平均である。
【0061】
表1に示されるように、全4種の成長因子に対し、超音波処理により放出される成長因子のおよそ50%がトロンビン活性化により新鮮な血小板から放出された。
【0062】
(表1)新鮮なヒト血小板からの成長因子の放出
【表1】

【0063】
実施例4−CPA含有の凍結乾燥されかつ再水和された血小板の成長因子放出
CPAの存在下および非存在下での血小板の凍結乾燥および再水和による血小板成長因子の放出に及ぼす影響を調べた。代表的な成長因子としてTGF−βについて得られたデータを表2に示す。ELISAアッセイ(実施例3にあるように)を以下のサンプルで行った:
(a)凍結乾燥に使用されるPRPサンプルの遠心分離によって得られた上清(「新鮮な」「血漿」)、
(b)超音波処理後の同じPRPサンプル(「新鮮な」「超音波処理物」);この測定では、PRPサンプルの血漿中のTGF−βに加えて、PRPサンプル中の血小板から放出可能な全TGF−βが得られた、
(c)(CPAの存在下および非存在下において)凍結乾燥されかつ再水和されたPRPサンプルの遠心分離によって得られた上清(「F/D/R」「血漿」)、
(d)超音波処理後の、(CPAの存在下および非存在下において)凍結乾燥されかつ再水和されたPRPサンプル(「F/D/R」「超音波処理物」)、
(e)トロンビン処理され(実施例3にあるように)、(CPAの存在下および非存在下において)凍結乾燥されかつ再水和されたPRPの遠心分離によって得られた上清;(c)において検出された量を差し引いた、これらの上清中において検出された量を(c)において検出された量を差し引いた、(d)において検出された量の関数(割合)として表した(「放出」)。
【0064】
CPA成分は試験の前にサンプルから流し去られなかった。実験は、各実験に対し別個の供与者由来のPRPを用いて3回行った。データは3回の実験から得られた平均であり、標準偏差が示されている。これらの平均は各実験群における3回の反復の平均値の平均である。
【0065】
(表2)(CPA有りまたは無しで)凍結乾燥されかつ再水和された血小板によるTGF−βの放出
【表2】

F/D/R;凍結乾燥されかつ再水和された
【0066】
CPA処理および未処理の両血小板の凍結乾燥および/または再水和により、新鮮な血小板懸濁液に比べて顕著なレベルの自発的なTGF−β漏出が起こった(表2)。しかしながら、この自発的な漏出は、CPAが無いよりも有る状態で凍結乾燥された血小板において若干低かった。最も重要なことには、CPAの存在下において凍結乾燥されかつ再水和された血小板は、CPA無しで凍結乾燥されかつ再水和された血小板よりもTGF−βを放出する能力がかなり高い。同様の結果が、上記のその他3種の成長因子についても認められた。
【0067】
実施例5−CPAの存在下において凍結乾燥されかつ再水和された血小板により産生されるTGF−βは活性している
超音波処理された新鮮なPRPおよび超音波処理され、CPA有りで凍結乾燥されかつ再水和された(F/D/R)PRP由来の上清における、細胞アッセイ(下記参照)により測定される活性TGF−βのレベル、およびELISAにより測定される全TGF−βタンパク質のレベルを比較した(表3)。これらの上清は、表2に示されているもののいくつかと同じであった。TGF−β活性を測定するのに使われた細胞培養アッセイは、Abeら[(1994) Anal. Biochem. 216 (2):276-284]に記述のものとし、この文献の開示内容はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。実験は、各実験に対し別個の供与者由来のPRPを用いて3回行った。データは3回の実験から得られた平均であり、標準偏差が示されている。これらの平均は各実験における3回の反復の平均値の平均である。
【0068】
超音波処理された新鮮な血小板および超音波処理され、CPA有りで凍結乾燥されかつ再水和された血小板から放出された実質的に全てのTGF−βが活性していた(表3)。同じ結果が、超音波処理され、CPA無しで凍結乾燥されかつ再水和された血小板で得られた。
【0069】
(表3)ヒト血小板におけるTGF−β活性の測定
【表3】

【0070】
実施例6−細胞増殖アッセイ
アッセイのデザインと検証
トロンビン活性化血小板により放出された可溶性因子の細胞増殖誘導活性を試験するため、インビトロの「Transwell(登録商標)」細胞培養系を使用した。図2Aはこの「Transwell(登録商標)」細胞培養系の図表示である。Swiss Albinoマウス3T3線維芽細胞を増殖培地(GM;4mMグルタミン、405g/Lグルコース、1.5g/L重炭酸ナトリウム、および10%ウシ血清を添加したダルベッコ改変イーグル培地(Invitrogen,Carlsbad,CA))中にて24ウェル組織培養プレートの培養ウェルの底面に1ウェルあたり細胞10,000個の密度で播種し、5%COの加湿環境中37℃で16時間培養した。活性化または超音波処理血小板を添加した培養物(および対応する対照培養物)において(下記参照)、GMを低血清培地(SRM;GMと同じだが、10%ではなく0.5%のウシ血清を添加)と交換した。超音波処理またはトロンビン活性化(37℃で5分間1単位/ml)血小板(血小板1.2×10個/μl 75μl中)およびSRM(血小板1.2×10個/μl 225μl)を、半透膜(8μmの細孔を有する)からなる底部を有するTranswell(登録商標)チャンバーに添加し、チャンバーの底部が培養ウェル中の培地に浸かるように、該チャンバーを適切な培養ウェル中の細胞の上方に置いた(図2A参照)。この培養系では、培地および可溶性因子(しかし全血小板または不溶性血小板物質ではない)が半透膜を通して拡散し、培養ウェル底部の線維芽細胞に接触することができた。「陽性対照」培養物にはGMが含まれ、血小板物質が含まれなかった。これらの培養物を表示の時間インキュベートし、その後、増殖をMTS[3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム、内塩]代謝的変換アッセイにより測定した。これには:(a)培養ウェルからのTranswell(登録商標)チャンバーおよび培地の除去;(b)ウェルへの新鮮なSRM 0.5mlおよびCellTiter96(登録商標) Aqueous One溶液(Promega Corporation,Madison,WI) 100μlの添加;ならびに(c)3時間のさらなるインキュベーション(上記の同一条件下での)が含まれた。各培養物の上清(100μl)を96ウェルマイクロタイタープレートのウェルに移し、各々のOD540(相対的細胞増殖の指標として)をマイクロタイタープレートリーダー(BioRad,Hercules,CA)を使用して測定した。
【0071】
培養容器ウェルへの試験血小板物質を含有するTranswell(登録商標)チャンバーの導入後から計72時間の間、24時間毎に細胞増殖の測定値を個々の培養ウェルにおいて記録した(図2B)。図2Bにおいて、グラフ縦棒はベースラインレベル(0時点、すなわち、血小板物質を含有するTranswell(登録商標)チャンバーが培養物に添加された時点で測定された)に対するMTSレベルの増大の割合(y軸左側)を表し、グラフ線は実際の細胞計数(y軸右側)を表す。水平の破線は0時点の細胞数(y軸右側)を示す。超音波処理された血小板および1単位/mlのトロンビンで活性化された血小板は、時間依存的に線維芽細胞の増殖を増大した(SRMしか含まない培養と比較して)。
【0072】
細胞増殖の最低レベル(SRMしか含まない培養において認められた)を差し引いた、超音波処理およびトロンビン活性化血小板により72時間の時点で得られた細胞増殖レベルを、細胞増殖の最低レベル(SRMしか含まない培養において認められた)を差し引いた、細胞増殖の最高レベル(GMしか含まない培養において認められた)の割合として表した。得られた値は「誘導%」と称されている(図2C)。
【0073】
CPAの存在下において凍結乾燥されかつ再水和された血小板により産生される可溶性因子は、細胞増殖誘導能を保持する
上記のインビトロ細胞増殖アッセイを用いて、CPAの存在下での凍結乾燥および再水和による、血小板の細胞増殖誘導能に及ぼす影響を判定した。実施例1に記述されているように血小板をCPA溶液と混合し、凍結乾燥し、緩衝液Bに再懸濁した。図2に示した実験に記述されているのと同じ対照実験を行い、データを図2Cに記述されているように算出した。CPA有りで凍結乾燥されかつ再水和された血小板調製物は、トロンビンで活性化した後の新鮮な血小板とほぼ同じ増殖誘導%を示した(図3)。
【0074】
遠心分離された新鮮な血小板PRP、CPAの非存在下において凍結乾燥されかつ再水和された血小板およびCPAの存在下において凍結乾燥されかつ再水和された血小板(図4中の「血漿」のデータ)由来の上清、ならびにトロンビン活性化後のその同じ3サンプル由来の上清を、図2に描かれている実験におけるアッセイと実質的に同じアッセイにおいて試験した(図4中の「血小板」のデータ)。CPA有りで凍結乾燥されかつ再水和された血小板は、新鮮な血小板の細胞増殖誘導能を保持したが、CPA無しで凍結乾燥されかつ再水和されたものは保持していなかった(図4)。図4中の破線は、線維芽細胞増殖を誘導する血漿サンプルの平均的能力を示す。
【0075】
さらに、CPAの存在下において凍結乾燥されたPRPサンプルをいくつかのアリコートに分割し、これらを24週までの種々の期間−80℃で保存した。これらのサンプルを該当の時点で再水和し、上記のTranswell(登録商標)培養系においてその線維芽細胞増殖誘導能を試験した。全てのサンプルが、保存なしで試験された対照サンプルと同じ線維芽細胞増殖誘導能を示した。
【0076】
凍結乾燥された血小板の細胞増殖誘導能は、用量依存的である
上記のように血小板をトロンビンにより活性化し、CPAの存在下において凍結乾燥しかつ再水和した。Transwell(登録商標)チャンバーへの再水和された血小板サンプルの添加により、さまざまな量のサンプル(同じ血小板濃度)を上記のTranswell(登録商標)線維芽細胞増殖アッセイ系において試験した(図5)。活性化血小板の存在下で72時間培養した後に測定を行った。トロンビンにより活性化され、凍結乾燥された血小板の線維芽細胞の増殖を誘導する能力は、アッセイ系に添加された再水和血小板の量に用量依存的であった。
【0077】
実施例7−CPA処理により凍結乾燥された血小板は糖尿病マウス創傷モデルにおいて創傷治癒を増大する
材料および方法
血小板治療用物質の調製
ヒト血小板の単一供与者単位(Single donor units;SDU)を米国血液バンク協会(AABB)公認の血液バンクから購入し、室温で撹拌しながら保存し、提供から5日以内に使用した。必要とされる全ての供与者スクリーニングおよび放出試験は、AABBの要件[MEB Technical Manual 14th ed. Bethesda, MD: American Association of Blood Banks (2002)]にしたがい該血液バンクによって行われた。各SDUを3つのアリコートに分割して、3つの特異な血小板に基づく治療用物質を調製した。第1のアリコートは溶媒として生理的緩衝液[緩衝液B;136mM NaCl、11.9mM NaHCO、5.6mMグルコース、5mM HEPES、2.7mM KCl、2.0mM MgCl、0.42mM NaHPO;pH7.4]を用いてCPA含有溶液により血小板1.2×10個/μlに調整し、凍結乾燥し、これによってCPA安定保存の凍結乾燥多血小板血漿(FDP−CPA)を作出した。第2のアリコートは緩衝液Bを用いて血小板1.2×10個/μlに調整し、凍結乾燥して、凍結乾燥多血小板血漿(FDP)サンプルを作出した。第3のアリコートは緩衝液Bを用いて血小板1.2×10個/μlに調整し、10秒間超音波処理して細胞構造を破壊し、細胞内構成要素を放出させ、−80℃で凍結し、新鮮な凍結血小板(FFP)サンプルを作出した。CPA保護物質溶液の添加により、250μMアミロリド(amilioride)、100μMアデノシン、50μMニトロプルシドナトリウム、1%(v/v)ジメチルスルホキシド、4%(w/v)ポリビニルピロリドン(Plasdone(商標)C−15,International Specialty Products,Wayne,NJ)、および50mMマンニトールの最終の処理組成物を得た。血小板物質の操作は全て標準的な無菌法を用いて行い、溶液は全て孔径0.2μmのフィルター(Millipore,Billerica,MA)を用いてろ過滅菌した。血小板濃度はCellDyn(登録商標)1700血球分析装置(Abbott Laboratories,Abbott Park,IL)を用いて確認した。乾燥された血小板産物を乾燥窒素下、熱融着アルミ箔袋の中に包装し、使用まで−80℃で保存した。
【0078】
創傷モデルおよび治療法
ホモ接合性の、遺伝的に糖尿病の8〜12週齢Lep/r−db/db雄マウス(C57BL/KsJ−Leprdb系統)をAAALAC公認の施設において、認可済の動物プロトコルの下で使用した。外科治療の前日に、毛を剪定し、脱毛した(Nair(登録商標);Church & Dwight Co.,Princeton,NJ)。外科治療当日(術後第0日;POD 0)に、動物を計量し、60mg/kgのネンブタール(登録商標)(ペントバルビタールナトリウム)で麻酔した。背面の皮膚領域1.0cmおよび筋肉層を切除し、創傷を撮影した。同時に、以下の血小板ベースの治療剤を調製した:FFPサンプルを融解し、その一方で凍結乾燥サンプル(FDPおよびFDP−CPA)をその元の量まで滅菌dHOで再水和した。前処理測定に基づき、等価な血小板濃度で、3種の異なる血小板治療剤を250μlのアリコートに分割した。各アリコートを使用の直前に1U/mlトロンビン(Chronolog Corporation,Havertown,PA)で処理し、in situにて凝固させ、それにより創傷での血小板物質の残存を促進した。各血小板実験群(NT(未治療)、FFP、FDPおよびFDP−CPA)には15の創傷が含まれた。全ての創傷を半閉鎖ポリウレタン包帯(Tegaderm(商標),3M,St.Paul,MN)で覆った。術後第9日(POD 9)に、動物を安楽死させ、創傷を撮影し、切除し、10%中性緩衝ホルマリン溶液中で固定した。
【0079】
創傷封鎖分析
POD 9に記録されたデジタル写真は面積測定法(Scion Image,Scion Corporation,Frederick,MD)を用いて、治療様式に盲目の、2人の独立した観察者により初期の写真(POD 0)と比較された。元の創傷面積の割合として収縮、再上皮化、および開放創を測定することにより、創傷封鎖を定量化した。収縮、再上皮化および開放創の面積の合計は、元の創傷サイズの100%に等しい[Sullivan et al. (2004) Plast. Reconstr. Surg. 113(3):953]。
【0080】
顕微分析
創傷生検試料を二等分し、加工処理し、通常のヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)プロトコルにしたがって染色した。デジタル写真を倍率40×で顕微鏡用創傷切片を撮影し、Adobe Photoshop(登録商標)CSソフトウェア(Adobe Systems Incorporated,San Jose,CA)を用いて各創傷のパノラマ式の横断面合成画像を作出した。肉芽組織の面積および厚さを定量化するため、実験的な治療様式に盲目の、2人の独立した観察者がScion Image(商標)ソフトウェア(Scion Corporation,Frederick,MD)によりデジタル画像を分析した。毛細血管密度は、倍率200×で表示されたスライド1枚につき3視野を用いて:1つは創傷の中央においておよび1つは各創縁の位置で評価した。これらの画像をAdobe Photoshop(登録商標)CSソフトウェアで表示し、各高倍率視野内の血管に印を付け、これを計測した。
【0081】
統計分析
値は本文および図の中で平均+/−標準偏差として表した。一元配置分散分析およびad hoc Dunnetts検定を用いて、治療様式間の有意差を判定した。
【0082】
結果
創傷封鎖
創傷治癒は創傷の収縮(contration)および再上皮化の組合せにより全ての群で起こった。先の研究から、糖尿病マウスにおいて1.0cmの創傷が外科治療から約8〜12日の時点で50%の封鎖点に到達することや、いったん治癒したら、糖尿病マウスおよび対照の非糖尿病マウスにおける創傷の組織像または外観に差異のないことが明らかにされている(データは示されていない)。図6から、再上皮化は全治療群において同様であったものの、他の群に比べてFDP−CPA群では創傷の収縮が著しく低下していたことが明らかである。
【0083】
肉芽組織
各創傷のパノラマ式の横断面デジタル画像を用意して、肉芽組織の面積および厚さを分析した(図7)。FDP−CPAもFDPもともにNT群に比べて肉芽組織の面積の有意な(p<0.01)2.3倍の増大を誘導した(図7)。FFPを用いた治療も未治療の創傷と比較した場合、肉芽組織の形成を刺激したが(p<0.05)、いずれの凍結乾燥条件よりも目に見えて高い浮腫性を示した。同様の結果が肉芽組織の厚さに対して認められた(図7)。FDP−CPAおよびFDP治療はNT群と比べて、創傷の中央で測定された肉芽組織の厚さの有意な(p<0.01)、それぞれ、3.1倍および3.2倍の増大を誘導した。FFP治療に応じて組織の厚さもNTに比べ有意に上昇した(p<0.01)が、凍結乾燥治療の条件に匹敵する結果を達成することはできなかった。
【0084】
新生血管
血小板物質による治療に応じた組織血管の増大は、標準的なH&E染色創傷切片の測定で明らかであった。FDP−CPA治療はNT群およびFFP群に比べて、高倍率視野あたりの平均血管数の有意な(p<0.01)、それぞれ、2.2倍および1.8倍の増大をもたらした。FDP治療はNT群に比べて1.6倍の増大を誘導した(p<0.01)。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】血小板活性化阻害剤および凍結保護剤を含有する凍結保存性の添加物(CPA)液の存在下または非存在下において凍結乾燥されかつ再水和された血小板の凝集能の回復を示す棒グラフである。血小板凝集反応は、アデノシン二リン酸(10mM)およびコラーゲン(2μg/ml)の組合せによって活性化された。データは、凍結乾燥血小板を作出するために使用された同じサンプル由来の新鮮な血小板の凝集反応の割合として、凍結乾燥および再水和血小板サンプルの凝集反応として示されている。実験は、各実験に対し別個の供与者由来の多血小板血漿(PRP)を用いて3回行った。示されているデータは3回の実験から得られた平均であり、標準偏差が示されている。これらの平均は各実験群における3回の反復の平均値の平均である。
【図2A】血小板により放出された可溶性因子に応じた線維芽細胞の増殖を測定するために使用された「Transwell(登録商標)」細胞培養系の図表示である。線維芽細胞を24ウェル組織培養プレートのウェルの底面に播種し、可溶性因子(しかし全血小板または不溶性血小板物質ではない)の、それらが線維芽細胞と接触する培養ウェルへのTranswell(登録商標)チャンバーからの拡散を可能にする半透膜からなる床面を有するTranswell(登録商標)チャンバーに、試験血小板物質を添加した。
【図2B】増殖培地単独、低血清培地単独、または低血清培地および超音波処理血小板もしくは図2Aに記述のTranswell(登録商標)培養系の中で1単位/mlのトロンビンにより活性化された血小板から放出された可溶性因子、への曝露から24時間、48時間、および72時間の時点での線維芽細胞の増殖の誘導を示す棒グラフおよび線グラフである。グラフ棒はベースラインに対する、基質MTS[3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム、内塩]の代謝的変換により産生された着色生成物の量の増大の割合(相対細胞数の指標として)(y軸左側)を表し、グラフ線は実際の細胞数(y軸右側)を表す。水平の破線は血小板物質への線維芽細胞の初期曝露時(すなわち、0時)の細胞数を示す。実験は、各実験に対し別個の供与者由来のPRPを用いて3回行った。データは3回の実験から得られた平均であり、標準偏差が示されている。これらの平均は各実験群における3回の反復の平均値の平均である。
【図2C】超音波処理および活性化血小板から放出された可溶性因子への曝露から72時間後の線維芽細胞増殖の誘導の割合を示す棒グラフである。データは、図2Bに示した実験の72時間の時点での観察結果から得られた。実験は、各実験に対し別個の供与者由来のPRPを用いて3回行った。データは3回の実験から得られた平均であり、標準偏差が示されている。これらの平均は各実験群における3回の反復の平均値の平均である。
【図3】新鮮な血小板およびCPAの存在下において凍結乾燥されかつ再水和された(F/D/R CPA)血小板に応じた線維芽細胞増殖の誘導の割合(図2Aに示したTranswell(登録商標)細胞培養系を用いて得られたデータから計算された)を示す棒グラフである。実験は、各実験に対し別個の供与者由来のPRPを用いて3回行った。データは3回の実験から得られた平均であり、標準偏差が示されている。これらの平均は各実験群における3回の反復の平均値の平均である。
【図4】新鮮な血小板、CPAの存在下(w/CPA)もしくはCPAの非存在下(w/o CPA)において凍結乾燥されかつ再水和された(F/D/R)血小板、または凍結乾燥血小板調製物を作出するのに使用された血小板の供給源とされた多血小板血漿(PRP)の遠心分離によりもしくは2種の再水和凍結乾燥サンプルの遠心分離により得られた血漿による処理後の線維芽細胞増殖の誘導の割合(図2Aに示したTranswell(登録商標)細胞培養系を用いて得られたデータから計算された)を示す棒グラフである。破線は、3種全ての血漿サンプルによる線維芽細胞増殖の平均的な誘導の割合を示す。実験は、各実験に対し別個の供与者由来のPRPを用いて3回行った。データは3回の実験から得られた平均であり、標準偏差が示されている。これらの平均は各実験群における3回の反復の平均値の平均である。
【図5】図2Aに示したTranswell(登録商標)細胞培養系を用いて評価した場合の、線維芽細胞増殖を誘導するさまざまな量の血小板(CPAの存在下において凍結乾燥されかつ再水和された)の能力を示す棒グラフである。凡例は、培養系のTranswell(登録商標)チャンバーに添加された血小板の相対量を示す。実験は、各実験に対し別個の供与者由来のPRPを用いて3回行った。データは3回の実験から得られた平均であり、標準偏差が示されている。これらの平均は各実験における3回の反復の平均である。
【図6A】治療されなかった(NT)または新鮮な凍結血小板(FFP)、CPAの非存在下において凍結乾燥されかつ再水和された血小板(FDP)、もしくはCPAの存在下において凍結乾燥されかつ再水和された血小板(FDP−CPA)により治療された、創傷後の糖尿病マウス創傷の一連の写真である。スケールバー,500mm。
【図6B】図6Aに示した創傷の上皮化の割合(%)を示す棒グラフである。スケールバー,5mm。
【図6C】図6Aに示した創傷の収縮の割合(%)を示す棒グラフである。スケールバー,5mm。
【図7A】図6Aに示した創傷の下側面の組織切片における異なる量の肉芽組織沈着を示す一連の顕微鏡写真である。矢印は上皮周縁部を示し、囲い枠は、組織の面積および厚さの測定が行われた場所を示す(図7Bおよび7C参照)。スケールバー,100μm。
【図7B】図7A中の囲い枠により示された創傷の領域における肉芽組織の面積を示す棒グラフである。はp<0.01を示す。
【図7C】図7A中の囲い枠により示された創傷の領域における肉芽組織の厚さを示す棒グラフである。はp<0.01を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥血小板組成物であって、以下を含む組成物:
複数の乾燥血小板;および
1以上の血小板活性化阻害剤。
【請求項2】
1以上の血小板活性化阻害剤が環状アデノシン一リン酸(cAMP)二次メッセンジャー系のエフェクター、ナトリウムチャネル阻害剤、および環状グアノシン5’一リン酸(cGMP)二次メッセンジャー系のエフェクターより選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
1以上の血小板活性化阻害剤がアデノシン、アミロリド、およびニトロプルシドナトリウムを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物の水和後、該組成物中の、アデノシンの濃度が約10μM〜約1mMであり、アミロリドの濃度が約0.1mM〜約10mMであり、およびニトロプルシドナトリウムの濃度が約2.5μM〜約250μMである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
cAMP二次メッセンジャー系のエフェクターがイロプロスト、プロスタサイクリン、プロスタグランジンE、ホルスコリン、コレラ毒素、イソプロテレノール、8−ブロモ環状アデノシン一リン酸、ジブチル環状アデノシン一リン酸、テオフィリン、イソブチルメチルキサンチン、チロトロピン、およびオウラノフィンからなる群より選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
ナトリウムチャネル阻害剤がアミロリド類似体、ベプリジル、フレカイニド、サキシトキシン、ベンザミル、およびプラジュナリウムからなる群より選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
cGMP二次メッセンジャー系のエフェクターがL−アルギニン、亜酸化窒素、SIN−1、SIN−1A、心房性ナトリウム利尿因子、バソプレッシン、オキシトシン、および三硝酸グリセリルからなる群より選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
1以上の凍結保護剤をさらに含む、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
凍結保護剤がジメチルスルホキシド、マルトデキストリン、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン、グルコース、ポリビニルピロリドン、マンニトール、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
乾燥血漿をさらに含む、請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
1以上の細胞外マトリックス(ECM)成分をさらに含む、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
1以上のECM成分がコラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、フィブリリン、ラミニン、デコリン、フィブロモジュリン、ヒアルロン酸、およびプロテオグリカンからなる群より選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
ECM成分が粒状の無細胞組織マトリックス(particulate acellular tissue matrix)の粒子中に存在する、請求項11または12に記載の組成物。
【請求項14】
粒状の無細胞組織マトリックスが粒状の無細胞皮膚マトリックス(particulate acellular dermal matrix)である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
乾燥血小板組成物の水和は、該乾燥血小板組成物が得られた新鮮な血小板サンプルの保有する少なくとも1つの血小板機能と実質的に同じレベルを有する再水和血小板組成物をもたらす、請求項1〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
少なくとも1つの血小板機能が凝集する能力である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
少なくとも1つの血小板機能が1以上の成長因子またはケモカインを放出する能力である、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
成長因子またはケモカインが形質転換成長因子−β(TGF−β)、血小板由来成長因子(PDGF)ファミリーのメンバー、上皮成長因子(EGF)、血管内皮成長因子(VEGF)ファミリーのメンバー、およびチモシンβ4からなる群より選択される、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
少なくとも1つの血小板機能が細胞増殖を誘導する能力である、請求項15に記載の組成物。
【請求項20】
細胞増殖が線維芽細胞増殖である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
血小板がヒト血小板である、請求項1〜20のいずれかに記載の組成物。
【請求項22】
凍結乾燥血小板組成物を作出する方法であって、以下のステップを含む方法:
血小板を含むサンプルを用意するステップ;
血小板および1以上の血小板活性化阻害剤を含む混合物を作出するステップ;ならびに
混合物を乾燥するステップ。
【請求項23】
1以上の血小板活性化阻害剤がcAMP二次メッセンジャー系のエフェクター、ナトリウムチャネル阻害剤、およびcGMP二次メッセンジャー系のエフェクターより選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
1以上の血小板活性化阻害剤がアデノシン、アミロリド、およびニトロプルシドナトリウムを含む、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
混合物中、アデノシンの濃度が約10μM〜約1mMであり、アミロリドの濃度が約0.1mM〜約10mMであり、およびニトロプルシドナトリウムの濃度が約2.5μM〜約250μMである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
cAMP二次メッセンジャー系のエフェクターがイロプロスト、プロスタサイクリン、プロスタグランジンE、ホルスコリン、コレラ毒素、イソプロテレノール、8−ブロモ環状アデノシン一リン酸、ジブチル環状アデノシン一リン酸、テオフィリン、イソブチルメチルキサンチン、チロトロピン、およびオウラノフィンからなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
ナトリウムチャネル阻害剤がアミロリド類似体、ベプリジル、フレカイニド、サキシトキシン、ベンザミル、およびプラジュナリウムからなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
cGMP二次メッセンジャー系のエフェクターがL−アルギニン、亜酸化窒素、SIN−1、SIN−1A、心房性ナトリウム利尿因子、バソプレッシン、オキシトシン、および三硝酸グリセリルからなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
混合物が1以上の凍結保護剤をさらに含む、請求項22〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
1以上の凍結保護剤がジメチルスルホキシド、マルトデキストリン、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン、グルコース、ポリビニルピロリドン、マンニトール、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
混合物が1以上の細胞外マトリックス(ECM)成分をさらに含む、請求項22〜30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
1以上のECM成分がコラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、フィブリリン、ラミニン、デコリン、フィブロモジュリン、ヒアルロン酸、およびプロテオグリカンからなる群より選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
ECM成分が粒状の無細胞組織マトリックスの粒子中に存在する、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
粒状の無細胞組織マトリックスが粒状の無細胞皮膚マトリックスである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
混合物が血漿をさらに含む、請求項22〜34に記載の方法。
【請求項36】
混合物を乾燥するステップが混合物を凍結乾燥するステップを含む、請求項22〜35に記載の方法。
【請求項37】
医薬として用いるための請求項1〜21のいずれかに記載の組成物。
【請求項38】
創傷の治療のための医薬組成物の製造に用いるための請求項1〜21のいずれかに記載の組成物。
【請求項39】
治療方法であって、以下のステップを含む方法:
血小板の投与から恩恵を受けうる、または恩恵を受ける可能性が高い創傷を有する被験者を特定するステップ;および
請求項1〜21のいずれかに記載の乾燥血小板組成物を創傷に適用するステップ。
【請求項40】
治療方法であって、以下のステップを含む方法:
血小板の投与から恩恵を受けうる、または恩恵を受ける可能性が高い創傷を有する被験者を特定するステップ;
請求項1〜21のいずれかに記載の乾燥血小板組成物を再水和して、再水和血小板組成物を作出するステップ;および
再水和血小板組成物を創傷に適用するステップ。
【請求項41】
創傷が皮膚創傷である、請求項38〜40のいずれかに記載の方法または使用。
【請求項42】
皮膚創傷が褥瘡、静脈うっ血性潰瘍、糖尿病性潰瘍、動脈潰瘍、負傷、火傷、複合軟組織創傷、植皮もしくは皮弁の失敗、放射線による創傷、および壊疽した傷からなる群より選択される、請求項41に記載の方法または使用。
【請求項43】
創傷が内部創傷である、請求項38〜40のいずれかに記載の方法または使用。
【請求項44】
内部創傷が打撲傷、骨折、瘻孔、潰瘍、および内部器官の負傷(injury wound)からなる群より選択される、請求項43に記載の方法または使用。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【公表番号】特表2009−509976(P2009−509976A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532503(P2008−532503)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【国際出願番号】PCT/US2006/037741
【国際公開番号】WO2007/038629
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(504154148)ライフセル コーポレーション (13)
【氏名又は名称原語表記】LifeCell Corporation
【Fターム(参考)】