説明

亀裂欠陥の検出方法

【課題】自動浸透探傷装置による浸透探傷検査において、微細な亀裂欠陥を漏れなく確実に検出することが保証できる亀裂欠陥の検出方法を提供する。
【解決手段】CCDカメラ6の焦点を、指示模様12aに対する焦点距離から所定の距離だけずらして、あるいは、ワーク11かCCDカメラ6のいずれか一方を、指示模様12aに対するCCDカメラ6の焦点方向に対して垂直でかつ互いに直角をなす二次元方向に振動させて、蛍光画像を撮影することにより、増幅された指示模様12b(12c)を蛍光画像として撮影するとともに、亀裂欠陥判定工程において、亀裂欠陥12が有る旨の判定がなされた場合に、指示模様12aに対するCCDカメラ6の解像度をより高めた状態で、より精細な蛍光画像を撮影する高精細蛍光画像撮影工程と、より精細な蛍光画像を画像処理して、亀裂欠陥12のサイズを検出する高精細蛍光画像処理工程と、を備える亀裂欠陥の検出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動浸透探傷装置による亀裂欠陥の検出方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非破壊検査の手法の一つとして、蛍光液や着色液等を用いた浸透探傷試験が知られている。浸透探傷試験を行うことによって、金属材料等の表面に存在する目視では確認することができない微細な亀裂状の欠陥(以下、亀裂欠陥と記載する)を検出することができる。
【0003】
例えば、蛍光液を使用する浸透探傷試験は、検査対象物たるワークの表面に蛍光液を塗布し亀裂欠陥内部に当該蛍光液を浸透させる工程と、所定時間経過後に塗布した蛍光液をワークの表面から拭き取る工程と、蛍光液を拭き取った後のワークの表面にブラックライトを照射して亀裂欠陥の内部に残存する蛍光液が発光する指示模様を浮かび上がらせる工程と、当該指示模様を観察する工程等を経て行われるのが一般的である。
【0004】
そして、このような浸透探傷試験の各工程を自動的に行うことができる自動浸透探傷装置が知られており、例えば、以下に示す特許文献1にその技術が開示され公知となっている。自動浸透探傷装置は、亀裂欠陥の有無、亀裂欠陥のサイズ(幅・長さ・開口面積等)を自動的に計測して、この計測値を基に製品の良否を自動的に判定することができる。このため、自動浸透探傷装置を用いることによって、製品の良否を人による目視で判定する場合に比して、判定ミスが発生する頻度を低減することができるとともに、製品の良否を判定する検査の省力化を図ることができる効果等も期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−17376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されている従来の自動浸透探傷装置では、亀裂欠陥の撮像手段たるCCDカメラによって、蛍光発光する亀裂欠陥の指示模様を撮影し、撮影した画像に基づいて亀裂欠陥を検出するが、亀裂欠陥が微細である場合に、CCDカメラでは亀裂欠陥を撮影できない場合があった。このため、従来の自動浸透探傷装置では、微細な亀裂欠陥は見逃してしまう場合があり、亀裂欠陥を漏れなく検出できるということが保証できないという問題があった。
【0007】
この問題を解消する方法としては、CCDカメラの解像度を極めて高くするという方法が考えられる。CCDカメラの解像度を高くするためには、CCDカメラを亀裂欠陥に対してより接近させた状態で撮影を行う方法や、あるいは、CCD素子の画素数を極めて高くする方法等が考え得る。しかしながら、前者の方法では、CCDカメラの視野(撮影できる範囲)が狭くなり、ワーク全体を撮影しようとすると、蛍光画像の撮影に多大な時間を要するため実用的でないという問題があり、また、後者の方法では、装置が高価になってしまうという問題があった。
【0008】
また、幅および長さが限りなく「0」に近いような微細な亀裂欠陥が存在している可能性があるため、亀裂欠陥の幅および長さの下限値を規定することは困難である。言い換えれば、亀裂欠陥は、ある幅および長さ未満の亀裂欠陥は存在しないということが言えないという性質がある。
このため、CCDカメラをどの程度の距離まで接近させれば亀裂欠陥を確実に検出することが可能かということや、CCD素子の画素数を幾らにすれば亀裂欠陥を確実に検出することが可能かということが規定できず、その結果、前述した各方法を採用したとしても、亀裂欠陥を漏れなく確実に検出することが保証できなかった。
このため従来は、自動浸透探傷装置を用いた浸透探傷検査において、微細な亀裂欠陥を漏れなく確実に検出することの保証ができなかった。
【0009】
本発明は、係る現状の課題を鑑みてなされたものであり、自動浸透探傷装置による浸透探傷検査において、微細な亀裂欠陥を漏れなく確実に検出することが保証できる亀裂欠陥の検出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
即ち、請求項1においては、対象物の表面に存在する亀裂欠陥に蛍光液を浸透させておき、前記蛍光液を蛍光発光させることによって現れる指示模様の画像である蛍光画像をCCDカメラで撮影する蛍光画像撮影工程と、該蛍光画像撮影工程において撮影された前記蛍光画像を画像処理して、前記指示模様の出現位置を検出する蛍光画像処理工程と、該蛍光画像処理工程において前記指示模様が検出されたか否かに基づいて、前記亀裂欠陥の有無を判定する亀裂欠陥判定工程と、を備える亀裂欠陥の検出方法であって、前記蛍光画像撮影工程において、前記CCDカメラの焦点を、前記CCDカメラの前記指示模様に対する焦点距離から所定の距離だけずらして前記蛍光画像を撮影するか、あるいは、前記対象物か前記CCDカメラのいずれか一方を、前記指示模様に対する前記CCDカメラの焦点方向に対して垂直でかつ互いに直角をなす二次元方向に、所定の振幅および周期で振動させながら前記蛍光画像を撮影するか、のいずれかにより、前記亀裂欠陥の真の幅および長さに比して増幅された幅および長さで現れる増幅された指示模様を前記蛍光画像として撮影するとともに、前記亀裂欠陥判定工程において、前記増幅された指示模様が検出されたか否かに基づいて、前記亀裂欠陥の有無を判定して、前記亀裂欠陥が有る旨の判定がなされた場合に、前記増幅された指示模様の出現位置に対して、前記蛍光画像撮影工程のときに比して前記CCDカメラを接近させて、前記指示模様に対する前記CCDカメラの解像度をより高めた状態で、より精細な蛍光画像を撮影する高精細蛍光画像撮影工程と、該高精細蛍光画像撮影工程において撮影された前記精細な蛍光画像を画像処理して、前記亀裂欠陥のサイズを検出する高精細蛍光画像処理工程と、を備えるものである。
【0012】
また、請求項2においては、前記亀裂欠陥判定工程において、前記亀裂欠陥が有る旨の判定がなされた場合に、前記蛍光画像処理工程で検出した前記増幅された指示模様の出現位置において、前記対象物を洗浄する指示模様洗浄工程と、洗浄後の前記対象物における前記増幅された指示模様の出現位置に対して、前記CCDカメラによって前記蛍光画像を撮影する第二の蛍光画像撮影工程と、該第二の蛍光画像撮影工程において撮影された前記蛍光画像を画像処理して、前記増幅された指示模様の出現位置を検出する第二の蛍光画像処理工程と、該第二の蛍光画像処理工程において前記増幅された指示模様が検出されたか否かに基づいて、前記亀裂欠陥の有無を判定する第二の亀裂欠陥判定工程と、をさらに備えるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
請求項1においては、自動浸透探傷装置によって、微細な亀裂欠陥を確実に検出することができる。これにより、自動浸透探傷装置による浸透探傷検査において、亀裂欠陥を漏れなく検出することが保証できる。
【0015】
請求項2においては、自動浸透探傷装置による浸透探傷検査において、亀裂欠陥の誤検出を確実に防止し、亀裂欠陥の検出精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例に係る自動浸透探傷装置の全体構成を示す模式図。
【図2】CCD素子による亀裂欠陥の検出状況を示す模式図、(a)亀裂欠陥を検出できる場合を示す模式図、(b)亀裂欠陥を検出できない場合を示す模式図。
【図3】指示模様を増幅させる第一の方法を示す模式図、(a)増幅前の亀裂欠陥を示す模式図、(b)増幅された指示模様を示す模式図、(c)増幅された指示模様の検出状況を示す模式図。
【図4】指示模様を増幅させる第二の方法を示す模式図、(a)増幅前の亀裂欠陥を示す模式図、(b)増幅された指示模様を示す模式図、(c)増幅された指示模様の検出状況を示す模式図。
【図5】本発明の一実施例に係る亀裂欠陥の検出方法の流れを示すフロー図。
【図6】本発明の一実施例に係る亀裂欠陥の検出方法(自動洗浄工程を含む場合)の流れを示すフロー図。
【図7】本発明の一実施例に係る自動浸透探傷装置(自動洗浄装置を含む場合)の全体構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず始めに、本発明に係る亀裂欠陥の検出方法を実現する自動浸透探傷装置の全体構成について、図1を用いて説明をする。
【0018】
図1に示す如く、本発明に係る亀裂欠陥の検出方法を実現する自動浸透探傷装置の一実施態様である自動浸透探傷装置1は、浸透探傷検査を自動的に行うことができる装置であり、暗室2、搬送装置3、ワーク支持架台4、カメラ支持架台5、CCDカメラ6、ブラックライト8・8、制御装置9等によって構成される。
【0019】
暗室2は、検査位置に配置されるワーク11の周囲を囲むようにして配設される遮蔽部材によって形成され、亀裂欠陥12の指示模様を含む画像(以下、蛍光画像と呼ぶ)に対してノイズとなる可視光線等の光線を排除するために、外光を遮断し当該検査位置を低照度の状態に保持するために設けられるものである。これにより、微弱な発光強度で出現する指示模様を含む蛍光画像の撮影を可能とするものである。
【0020】
搬送装置3は、ワーク支持架台4およびワーク11をその載置面3aに載置した状態で搬送することができるとともに、ワーク支持架台4を所定の位置に位置決めして保持することができる装置である。尚、本実施例では、搬送装置3として、所謂ローラーコンベアを採用する場合を例示している。
【0021】
そして、搬送装置3は暗室2の内部を通過しており、その通過する部分の両端に位置する部位には、搬入口2aおよび搬出口2bが設けられている。そして、搬入口2aを開放した状態で搬送装置3を用いてワーク11を搬送することによって、暗室2内の検査位置にワーク11を搬入することができ、また、搬出口2bを開放した状態で搬送装置3を用いてワーク11を搬送することによって、暗室2内の検査位置からワーク11を搬出することができる。
【0022】
ワーク支持架台4は、ワーク11の所定の各部の形状に対応する支持部4a・4b・4cが形成される架台であり、ワーク11の所定の各部を各支持部4a・4b・4cに載置することにより、ワーク11を容易に所定の姿勢で所定の位置に保持することができる。このワーク支持架台4は、ワーク11の種類に応じた専用のものが準備される。
【0023】
また、各支持部4a・4b・4cは、ワーク支持架台4において、振動発生装置4dを介して支持される構成としている。
振動発生装置4dは、二次元方向に所定の振幅および周期で変位する振動を発生することができる装置であり、ワーク支持架台4の各支持部4a・4b・4c上に載置されたワーク11に振動を与えることができる。この振動発生装置4dとしては、所謂バイブレータを採用することができる。そして本実施例では、CCDカメラ6の焦点方向(鉛直下向き)に対して垂直で、かつ、互いに直交する方向である二次元の水平方向を、振動発生装置4dによる振動の発生方向(振幅方向)としている。
【0024】
カメラ支持架台5は、CCDカメラ6を支持するための架台であり、CCDカメラ6を暗室2内の検査位置に対してCCDカメラ6の焦点方向が向くように設定して、CCDカメラ6を所定の姿勢で所定の位置に保持することができる。
また、カメラ支持架台5は、振動発生装置5aを介して、CCDカメラ6を支持する構成としている。
【0025】
振動発生装置5aは、二次元方向に所定の振幅および周期で変位する振動を発生することができる装置であり、カメラ支持架台5によって支持されたCCDカメラ6に振動を与えることができる。この振動発生装置5aとしては、所謂バイブレータを採用することができる。そして本実施例では、CCDカメラ6の焦点方向(鉛直下向き)に対して垂直で、かつ、互いに直交する方向である二次元の水平方向を、振動発生装置5aによる振動の発生方向(振幅方向)としている。
【0026】
尚、本実施例では、ワーク支持架台4およびカメラ支持架台5に、それぞれ各振動発生装置4d・5aを備える構成としているが、必ずしも両架台4・5に振動発生装置を備える構成とする必要はなく、いずれか一方(ワーク支持架台4またはカメラ支持架台5)に振動発生装置を備える構成とすることも可能である。また、本実施例では、各振動発生装置4d・5aのうち、いずれか一方(振動発生装置4dまたは振動発生装置5a)により振動を発生させる構成としているが、互いの振動を打ち消し合わないように振動を発生させるよう考慮すれば、両方の振動発生装置4d・5aにより同時に振動を発生させる構成とすることも可能である。
【0027】
CCDカメラ6は、撮像用の半導体素子であるCCD素子7を備えており、レンズ6aの視野に存在する撮影対象の像を、レンズ6aを通してCCD素子7の受光面に結像させて、その像をデジタル画像として取得(撮影)することができるカメラである。
【0028】
また、CCDカメラ6のレンズ6aの前面には、フィルタ6bが設けられている。該フィルタ6bとしては、所謂バンドパスフィルタと呼ばれる光学フィルタが採用されており、蛍光液による発光特有の周波数以外の周波数の光をカットするものが採用されている。そして、このようなフィルタ6bを通して蛍光画像を撮影することにより、亀裂欠陥12において現れる微弱な発光強度の指示模様を効果的に検出(撮影)することができる。
【0029】
ブラックライト8・8は、検査位置に配置されたワーク11に対して近紫外線(波長が300〜400nm程度の紫外線)を照射するためのライト(照明器具)であり、二灯のブラックライト8・8によって、ワーク11に対して近紫外線を照射し、近紫外線が照射されない部位(影)を作らない構成としている。尚、本発明に係る自動浸透探傷装置に備えられるブラックライトの灯数を本実施例の灯数(二灯)に限定するものではなく、一灯のブラックライトで構成したり、三灯以上のブラックライトで構成したりすることも可能である。
【0030】
制御装置9は、自動浸透探傷装置1の各部の動作を制御するとともに、撮影された蛍光画像に画像処理を施すための装置であり、蛍光画像を画像処理したデータを取得するとともに、このデータに基づいて、自動浸透探傷装置1の各部の動作を制御したり、ワーク11の表面に亀裂欠陥12が存在するか否か(亀裂欠陥12の有無)を判定したり、あるいは、亀裂欠陥12が存在する場合に、亀裂欠陥12のサイズ(幅・長さ・開口面積等)を演算によって求めたりすることができる装置である。この制御装置9は、一般的なパーソナルコンピュータに所定の動作制御プログラムや画像処理プログラムを実装することによって実現することが可能である。
【0031】
また、制御装置9に接続される外部記憶装置10は、制御装置9による亀裂欠陥12の有無の判定結果や、亀裂欠陥12のサイズの演算結果等を、個々のワーク11に関連付けて記憶しておくことができる装置であり、ワーク11に対する浸透探傷検査の結果について、トレーサビリティを確保することを目的として設けられるものである。この外部記憶装置10は、一般的なハードディスクドライブ等の記憶装置によって実現することが可能である。
【0032】
次に、CCD素子による亀裂欠陥の検出状況について、図2を用いて説明をする。
図2(a)・(b)に示す如く、CCD素子7の受光面は、格子状に配列される複数の画素7a・7a・・・によって形成されている。複数の画素7a・7aに跨る範囲で受光された画像(例えば、亀裂欠陥12)は、各画素7a・7a・・・の一つ一つにおいて、当該画素7a上に結像する画像が存在するか否かが検出される。また、結像する画像の存在を検出した場合には、さらに、その画像の色情報(色調・明度等)を検出するようにしている。
そして、一つ一つの画素7aで検出された画像の情報に基づいて、その一つ一つの画像の情報をそれぞれに対応する格子上に配列された複数のドットで表示することによって、デジタル画像として表現される。
【0033】
図2(a)に示す如く、CCD素子7は、CCD素子7に対して入力される画像(例えば、亀裂欠陥12)が、単一の画素7aの面積に対して50%以上の面積で結像した画像の重なりが得られた各画素7a・7a・・・(つまり、図2(a)中において、パターン模様を付与して表している画素)においては、画像の存在(即ち、亀裂欠陥12の存在)を検出するとともに、その画像の色情報(色調・明度等)を検出することができる。
【0034】
一方、CCD素子7は、単一の画素7aの面積に対して50%以上の面積で結像した画像の重なりが得られていない画素7a・7a・・・(つまり、図2(a)・(b)中において、パターン模様を付与していない画素)においては、画像の存在を検出することができない。
【0035】
つまり、図2(b)に示すように、微細な亀裂欠陥12を撮影対象とした場合には、画素7aの面積に対して50%以上の範囲で画像が全く結像しない可能性があるため、この場合、実際に亀裂欠陥12が存在し、CCD素子7の受光面(即ち、各画素7a・7a・・・)上に画像が結像しているにも関わらず、各画素7a・7a・・・において画像の存在(即ち、亀裂欠陥12の存在)を検出することができず、このため、CCD素子7が、亀裂欠陥12を検出できないという事象が生じてしまう。
【0036】
尚、本実施例では、CCD素子7の受光感度が、画素7aの面積に対して50%以上の面積で画像が結像したときに画像の存在を検出する仕様である場合を例示しているが、CCD素子7の受光感度は採用するCCD素子の仕様によって異なるため、本発明に係る亀裂欠陥の検出方法を、CCD素子の受光感度が本実施例に示す感度である場合に限定するものではない。
【0037】
本発明に係る亀裂欠陥の検出方法は、CCD素子の解像度と亀裂欠陥のサイズ(幅および長さ)との関係で、亀裂欠陥が検出できない場合があるという不具合を解消するべく開発がなされたものであり、亀裂欠陥のサイズの如何に関わらず、CCD素子による亀裂欠陥の検出を可能とすることを特徴とするものである。
【0038】
次に、微細な亀裂欠陥をCCD素子で検出するための方法について、図3および図4を用いて説明をする。ここでは、まず、微細な亀裂欠陥をCCD素子で検出するための第一の方法について、図3を用いて説明をする。
【0039】
微細な亀裂欠陥12をCCD素子で検出するための第一の方法は、CCDカメラ6の亀裂欠陥に対する焦点距離をずらした状態で撮影する方法である。
図3に示す如く、亀裂欠陥12の指示模様12aをCCDカメラ6(図示せず)で撮影するに際し、CCDカメラ6の焦点を、指示模様12aに対する焦点距離に対して所定の距離だけずらした状態(所謂ピンボケの状態)で撮影をする。これにより、指示模様12aの像がぼやけて、指示模様12aの真の幅および長さに比して増幅された指示模様12bがCCD素子7の受光面に結像する。例えば、図3(a)・(b)に示すように、亀裂欠陥12(指示模様12a)の真の幅が幅d1である場合に、増幅された指示模様12bの幅は幅d2に増幅される。
【0040】
ここで、焦点距離をずらす量を調整すれば、増幅された指示模様12bの面積が確実に画素7aの面積に対して50%以上となるように増幅することができるため、CCD素子7によって、亀裂欠陥12を見落とすことが防止できる。例えば、画素7aの一辺の長さに所定の安全係数を乗じた値に基づいて、焦点距離のずらし量を求めることができる。尚、この場合に画素7aの面積に対して50%以上の範囲で画像の重なりが得られた各画素7a・7a・・・では、画像の存在を検出することができるため、図3(c)において、パターン模様を付与して表した模様のような蛍光画像が取得される。
【0041】
尚、増幅された指示模様12bの蛍光画像は、亀裂欠陥12の真の状態を表す画像ではないため、亀裂欠陥12の有無の判別と亀裂欠陥12が有る部位の特定にのみ用いられ、亀裂欠陥12の真のサイズを演算するために必要となる指示模様12aを含む蛍光画像を取得するための撮影が、その後再度行われる。
【0042】
次に、微細な亀裂欠陥をCCD素子で検出するための第二の方法について、図4を用いて説明をする。
【0043】
微細な亀裂欠陥12をCCD素子で検出するための第二の方法は、CCDカメラ6、あるいは、ワーク11を振動させた状態で、亀裂欠陥12を撮影する方法である。
図4に示す如く、亀裂欠陥12をCCDカメラ6(図示せず)で撮影するに際し、CCDカメラ6、あるいは、ワーク11を振動させた状態で撮影をする。これにより、指示模様12aの残像を生じさせることができ、この指示模様12aの残像を撮影することにより、指示模様12aの真の幅および長さに比して増幅された指示模様12cがCCD素子7の受光面に結像する。例えば、図4(a)・(b)に示すように、亀裂欠陥12(指示模様12a)の真の幅が幅d1である場合に、増幅された指示模様12cの幅は幅d3に増幅される。
【0044】
ここで、振動発生装置4d(あるいは振動発生装置5a)によって発生させる振動の振幅を調整すれば、増幅された指示模様12cの面積が確実に画素7aの面積に対して50%以上となるように増幅することができるため、CCD素子7によって、亀裂欠陥12を見落とすことが防止できる。例えば、振動発生装置4dにより発生させる振動の振幅を、画素7aの一辺の長さに基づいて、これに所定の安全係数を乗じた値の振幅とすれば、画素7aに結像する画像の面積が、確実に画素7aの面積に対して50%以上となる増幅された指示模様12cとすることができる。尚、この場合に画素7aの面積に対して50%以上の重なりが得られた各画素7a・7a・・・では、画像の存在を検出することができるため、図4(c)において、パターン模様を付与して表した模様のような蛍光画像が取得される。
【0045】
尚、増幅された指示模様12cの蛍光画像は、亀裂欠陥12の真の状態を表す画像ではないため、亀裂欠陥12の有無の判別と亀裂欠陥12が有る部位の特定にのみ用いられ、亀裂欠陥12の真のサイズを演算するために必要となる指示模様12aを含む蛍光画像を取得するための撮影が、その後再度行われる。
【0046】
次に、本発明の第一実施例に係る自動浸透探傷装置1による浸透探傷検査における亀裂欠陥の検出方法について、図5を用いて説明をする。
【0047】
(蛍光液浸透工程)
図5に示す如く、本発明の第一実施例に係る自動浸透探傷装置1による浸透探傷検査では、まず始めに、蛍光液浸透工程が行われる(STEP−1)。
蛍光液浸透工程では、自動浸透探傷装置1の自動蛍光液塗布装置(図示せず)によって、ワーク11の表面に蛍光液を塗布した後に、所定の時間だけ放置して、ワーク11に存在する亀裂欠陥12の内部に蛍光液を浸透させる。そして、自動浸透探傷装置1の自動蛍光液除去装置(図示せず)によって、ワーク11表面の蛍光液だけを除去して、亀裂欠陥12内部にのみ蛍光液が残存している状態のワーク11が準備される。
【0048】
(蛍光画像撮影工程)
次に、本発明の第一実施例に係る自動浸透探傷装置1による浸透探傷検査では、蛍光画像撮影工程が行われる(STEP−2)。
蛍光画像撮影工程では、蛍光液浸透工程において、亀裂欠陥12内部にのみ蛍光液が残存している状態に準備されたワーク11を暗室2の検査位置に導入する。ここで、ワーク11は、ワーク支持架台4によって、所定の姿勢に保持されるとともに、搬送装置3によって、所定の検査位置に配置された状態が保持される。これにより、制御装置9によって、ワーク11の表面に現れる指示模様の出現位置を特定することが可能になる。
【0049】
そして、ワーク11の表面にブラックライト8・8によって近紫外線を照射して、ワーク11の表面に亀裂欠陥12を表す指示模様12aを浮かび上がらせつつ、CCDカメラ6の焦点をずらすか、あるいは、振動発生装置4d(あるいは振動発生装置5a)を作動させることによって、増幅された指示模様12a(あるいは指示模様12c(以下、単に(12c)と記載する))を生じさせることができる。
そして、増幅された指示模様12b(12c)をCCDカメラ6によって撮影する。撮影した蛍光画像は、CCDカメラ6に接続された制御装置9に送られ、制御装置9によって、当該ワーク11に対応する蛍光画像が取得される。
【0050】
(蛍光画像処理工程)
次に、本発明の第一実施例に係る自動浸透探傷装置1による浸透探傷検査では、蛍光画像処理工程が行われる(STEP−3)。
蛍光画像処理工程では、制御装置9によって、取得された蛍光画像が画像処理され、画像処理データが生成されるとともに、当該画像処理データが取得される。そして、この画像処理データに基づいて、制御装置9によって、ワーク11表面上のどの位置に増幅された指示模様12b(12c)が出現しているかが演算によって求められ、増幅された指示模様12b(12c)の出現位置に係る情報が取得される。あるいは、ワーク11表面上のどの位置にも増幅された指示模様12b(12c)が出現していない場合には、制御装置9によって、増幅された指示模様12b(12c)が存在していない旨の情報が取得される。
【0051】
(亀裂欠陥判定工程)
次に、本発明の第一実施例に係る自動浸透探傷装置1による浸透探傷検査では、亀裂欠陥判定工程が行われる(STEP−4)。
亀裂欠陥判定工程では、制御装置9によって、蛍光画像処理工程において取得された情報に基づく判定が行われる(STEP−4−1)。蛍光画像処理工程において、制御装置9によって、増幅された指示模様12b(12c)の出現位置に係る情報が取得されていた(即ち、亀裂欠陥12が有る)場合には、制御装置9によって、当該ワーク11の表面に亀裂欠陥12が存在している旨の判定が行われ(STEP−4−2)、次のステップ(STEP−5)に移行される。
【0052】
一方、蛍光画像処理工程において、制御装置9によって、増幅された指示模様12b(12c)が存在していない旨の情報が取得されていた(即ち、亀裂欠陥12が無い)場合には、制御装置9によって、当該ワーク11の表面には亀裂欠陥12が存在していない旨の判定が行われ(STEP−4−3)、亀裂欠陥記録工程(STEP−7)に移行される。
【0053】
(高精細蛍光画像撮影工程)
次に、本発明の第一実施例に係る自動浸透探傷装置1による浸透探傷検査では、高精細蛍光画像撮影工程が行われる(STEP−5)。
高精細蛍光画像撮影工程では、制御装置9によって、蛍光画像処理工程で取得された増幅された指示模様12b(12c)の出現位置に係る情報に基づいて、指示模様12aの出現位置が特定されるとともに、CCDカメラ6を、その出現位置に対してさらに接近させる。これにより、指示模様12aに対するCCDカメラ6の解像度を高めた状態とすることができる。
そして、CCDカメラ6を指示模様12aに接近させた状態で、CCDカメラ6によって、蛍光画像撮影工程で撮影された蛍光画像に比して解像度の高い(高精細である)高精細蛍光画像が撮影される。撮影した蛍光画像は、CCDカメラ6に接続された制御装置9に送られ、制御装置9によって、当該ワーク11に対応する高精細蛍光画像が取得される。
【0054】
尚、ここでいう解像度とは、画像を表現する格子の細かさを意味するものであり、CCD素子7の受光面の面積(一定)に対する、実際にCCD素子7の受光面に結像している画像の実際の被写体における面積の割合を意味している。つまり、CCDカメラ6をワーク11に接近させて、ワーク11のより狭い範囲を撮影することによって、CCDカメラ6のワーク11に対する解像度を高めることができ、CCDカメラ6をワーク11から遠ざけて、ワーク11のより広い範囲(例えば、ワーク11の全体)を撮影することによって、CCDカメラ6のワーク11に対する解像度を低くすることができる。
【0055】
(高精細蛍光画像処理工程)
次に、本発明の第一実施例に係る自動浸透探傷装置1による浸透探傷検査では、高精細蛍光画像処理工程が行われる(STEP−6)。
高精細蛍光画像処理工程では、制御装置9によって、取得された高精細蛍光画像を画像処理が行われるとともに、指示模様12aのサイズ(幅・長さ・開口面積等)が演算により求められる。これにより、制御装置9によって、亀裂欠陥12のサイズに係る情報が取得される。
【0056】
(亀裂欠陥記録工程)
次に、本発明の第一実施例に係る自動浸透探傷装置1による浸透探傷検査では、亀裂欠陥記録工程が行われる(STEP−7)。
亀裂欠陥記録工程では、制御装置9によって、高精細蛍光画像処理工程において取得された亀裂欠陥12のサイズに係る情報が、外部記憶装置10に記録される。
あるいは、ワーク11の表面に亀裂欠陥12が存在していなかった場合には、その旨が、外部記憶装置10に記録される。これにより、当該ワーク11についての浸透探傷検査の検査結果についてトレーサビリティを確保することができる。
【0057】
そして、以上により、一連の本発明の第一実施例に係る自動浸透探傷装置1による浸透探傷検査を終了する(STEP−8)。
【0058】
即ち、本発明の第一実施例に係る自動浸透探傷装置1による浸透探傷検査における亀裂欠陥の検出方法は、対象物たるワーク11の表面に存在する亀裂欠陥12に蛍光液を浸透させておき、蛍光液を蛍光発光させることによって現れる指示模様12aの画像である蛍光画像をCCDカメラ6で撮影する蛍光画像撮影工程と、該蛍光画像撮影工程において撮影された蛍光画像を画像処理して、指示模様12aの出現位置を検出する蛍光画像処理工程と、該蛍光画像処理工程において指示模様12aが検出されたか否かに基づいて、亀裂欠陥12の有無を判定する亀裂欠陥判定工程と、を備える亀裂欠陥の検出方法であって、蛍光画像撮影工程において、CCDカメラ6の焦点を、CCDカメラ6の指示模様12aに対する焦点距離から所定の距離だけずらして蛍光画像を撮影するか、あるいは、ワーク11かCCDカメラ6のいずれか一方を、指示模様12aに対するCCDカメラ6の焦点方向に対して直角をなす二次元方向に、所定の振幅および周期で振動させながら蛍光画像を撮影するか、のいずれかにより、亀裂欠陥12の真の幅および長さに比して増幅された幅および長さで現れる増幅された指示模様12b(12c)を蛍光画像として撮影するとともに、亀裂欠陥判定工程において、増幅された指示模様12b(12c)が検出されたか否かに基づいて、亀裂欠陥12の有無を判定して、亀裂欠陥12が有る旨の判定がなされた場合に、増幅された指示模様12b(12c)の出現位置に対して、蛍光画像撮影工程のときに比してCCDカメラ6を接近させて、指示模様12aに対するCCDカメラ6の解像度をより高めた状態で、より精細な蛍光画像を撮影する高精細蛍光画像撮影工程と、該高精細蛍光画像撮影工程において撮影された精細な蛍光画像を画像処理して、亀裂欠陥12のサイズを検出する高精細蛍光画像処理工程と、を備えるものである。
【0059】
このような構成により、自動浸透探傷装置1によって、幅および長さが限りなく「0」に近いような微細な亀裂欠陥12を確実に検出することができる。これにより、自動浸透探傷装置1による浸透探傷検査において、亀裂欠陥12を漏れなく検出することが保証できる。
また、亀裂欠陥12を検出した場合、検出した亀裂欠陥12の出現位置にCCDカメラ6を接近させて、より精細な蛍光画像を撮影して亀裂欠陥12のサイズを検出するように構成しているので、最初からCCDカメラ6を亀裂欠陥12に対してより接近させた状態でワーク11の全体を撮影する場合とは異なり、少ない時間で蛍光画像の撮影を行うことが可能となっている。
【0060】
次に、本発明の第二実施例に係る自動浸透探傷装置21による浸透探傷検査における亀裂欠陥の検出方法について、図6および図7を用いて説明をする。
図6に示す如く、本発明の第二実施例に係る自動浸透探傷装置21による浸透探傷検査では、先述した本発明の第一実施例に係る浸透探傷検査の各工程に加えて、さらに自動洗浄工程を備える構成としている。
【0061】
(蛍光液浸透工程)
図6に示す如く、本発明の第二実施例に係る自動浸透探傷装置21による浸透探傷検査では、まず始めに、蛍光液浸透工程が行われる(STEP−1)。
蛍光液浸透工程では、自動浸透探傷装置1の自動蛍光液塗布装置(図示せず)によって、ワーク11の表面に蛍光液を塗布した後に、所定の時間だけ放置して、ワーク11に存在する亀裂欠陥12の内部に蛍光液を浸透させる。そして、自動浸透探傷装置1の自動蛍光液除去装置(図示せず)によって、ワーク11表面の蛍光液だけを除去して、亀裂欠陥12内部にのみ蛍光液が残存している状態のワーク11が準備される。
【0062】
(蛍光画像撮影工程<1>)
次に、本発明の第二実施例に係る自動浸透探傷装置21による浸透探傷検査では、第一の蛍光画像撮影工程である蛍光画像撮影工程<1>が行われる(STEP−2)。
蛍光画像撮影工程<1>では、蛍光液浸透工程において、亀裂欠陥12内部にのみ蛍光液が残存している状態に準備されたワーク11を暗室2の検査位置に導入する。ここで、ワーク11は、ワーク支持架台4によって、所定の姿勢に保持されるとともに、搬送装置3によって、所定の検査位置に配置された状態が保持される。これにより、制御装置9によって、ワーク11の表面に現れる指示模様の出現位置を特定することが可能になる。
【0063】
そして、ワーク11の表面にブラックライト8・8によって近紫外線を照射して、ワーク11の表面に亀裂欠陥12を表す指示模様12aを浮かび上がらせつつ、CCDカメラ6の焦点をずらすか、あるいは、振動発生装置4d(あるいは振動発生装置5a)を作動させることによって、増幅された指示模様12a(あるいは増幅された指示模様12c(以下、単に(12c)と記載する))を生じさせることができる。
そして、増幅された指示模様12b(12c)をCCDカメラ6によって撮影する。撮影した蛍光画像は、CCDカメラ6に接続された制御装置9に送られ、制御装置9によって、当該ワーク11に対応する蛍光画像が取得される。
【0064】
(蛍光画像処理工程<1>)
次に、本発明の第二実施例に係る自動浸透探傷装置21による浸透探傷検査では、第一の蛍光画像処理工程である蛍光画像処理工程<1>が行われる(STEP−3)。
蛍光画像処理工程<1>では、制御装置9によって、取得された蛍光画像が画像処理され、画像処理データが生成されるとともに、当該画像処理データが取得される。そして、この画像処理データに基づいて、制御装置9によって、ワーク11表面上のどの位置に増幅された指示模様12b(12c)が出現しているかが演算により求められ、増幅された指示模様12b(12c)の出現位置に係る情報が取得される。あるいは、ワーク11表面上のどの位置にも増幅された指示模様12b(12c)が出現していない場合には、制御装置9によって、増幅された指示模様12b(12c)が存在していない旨の情報が取得される。
【0065】
(亀裂欠陥判定工程<1>)
次に、本発明の第二実施例に係る自動浸透探傷装置21による浸透探傷検査では、亀裂欠陥判定工程が行われ(STEP−4)、第一の亀裂欠陥判定工程である亀裂欠陥判定工程<1>が行われる(STEP−4−1)。
亀裂欠陥判定工程<1>では、制御装置9によって、蛍光画像処理工程<1>において取得された情報に基づく判定が行われる。蛍光画像処理工程<1>において、制御装置9によって、増幅された指示模様12b(12c)の出現位置に係る情報が取得されていた(即ち、亀裂欠陥が有る)場合には、制御装置9によって、当該ワーク11の表面に亀裂欠陥12が存在している旨の判定が行われる。そして、この場合には、指示模様洗浄工程(STEP−4−2)に移行される。
【0066】
一方、蛍光画像処理工程<1>において、制御装置9によって、増幅された指示模様12b(12c)が存在していない旨の情報が取得されていた(即ち、亀裂欠陥が無い)場合には、制御装置9によって、当該ワーク11の表面には亀裂欠陥12が存在していない旨の判定が行われ(STEP−4−7)、亀裂欠陥記録工程(STEP−7)に移行される。
【0067】
図7に示す如く、本発明の第二実施例に係る浸透探傷検査を実現する自動浸透探傷装置21は、自動洗浄装置13を備えている。自動洗浄装置13は、ロボットアーム13a、回転ブラシ13b等を備えており、制御装置9と接続されている。
そして、蛍光画像処理工程<1>において、制御装置9によって、増幅された指示模様12b(12c)の出現位置に係る情報が取得されていた場合には、その旨の信号および増幅された指示模様12b(12c)の出現位置に係る情報が自動洗浄装置13に送信される。自動洗浄装置13は、この信号および情報を受けて、ロボットアーム13aによって、増幅された指示模様12b(12c)の出現位置に回転ブラシ13bを配置し、自動的に当該部位を洗浄することができる装置である。
【0068】
そして、指示模様洗浄工程(STEP−4−2)では、自動洗浄装置13が、制御装置9からの信号を受けて自動的に作動し、蛍光画像処理工程<1>において取得された増幅された指示模様12b(12c)の出現位置を、回転ブラシ13bでブラッシングをする。これにより、増幅された指示模様12b(12c)の出現位置に対して、蛍光液の再洗浄を試みる。
【0069】
(蛍光画像撮影工程<2>)
次に、本発明の第二実施例に係る自動浸透探傷装置21による浸透探傷検査では、第二の蛍光画像撮影工程である蛍光画像撮影工程<2>が行われる(STEP−4−3)。
蛍光画像撮影工程<2>では、指示模様洗浄工程において蛍光液の除去を試みた後のワーク11について、再度その表面にブラックライト8・8によって近紫外線を照射して、指示模様を浮かび上がらせつつ、CCDカメラ6の焦点をずらすか、あるいは、振動発生装置4d(あるいは振動発生装置5a)を作動させることによって、増幅された指示模様12a(12c)を、生じさせることができる。
そして、増幅された指示模様12b(12c)をCCDカメラ6によって再度撮影する。撮影した蛍光画像は、CCDカメラ6に接続された制御装置9に送られ、制御装置9によって、当該ワーク11に対応する蛍光画像が再度取得される。
【0070】
(蛍光画像処理工程<2>)
次に、本発明の第二実施例に係る自動浸透探傷装置21による浸透探傷検査では、第二の蛍光画像処理工程である蛍光画像処理工程<2>が行われる(STEP−4−4)。
蛍光画像処理工程<2>では、制御装置9によって、蛍光画像撮影工程<2>において取得された蛍光画像の画像処理が行われるとともに、指示模様洗浄工程において蛍光液の除去を試みた後であっても、ワーク11表面上に増幅された指示模様12b(12c)が未だ出現するか否かを確認する。
【0071】
そして、蛍光液の除去を試みた後に、ワーク11の表面上に未だ残っている増幅された指示模様12b(12c)については、制御装置9によって、増幅された指示模様12b(12c)の出現位置が演算により求められ、増幅された指示模様12b(12c)の出現位置に係る情報が取得される。
【0072】
一方、蛍光液の除去を試みた後に、ワーク11の表面上から消滅した増幅された指示模様12b(12c)については、制御装置9によって、蛍光画像撮影工程<1>において撮影されていた増幅された指示模様12b(12c)はノイズであったと判断される。そして、蛍光液の除去を試みた後に、ワーク11の表面上から全ての増幅された指示模様12b(12c)が消滅した場合には、制御装置9によって、当該ワーク11の表面上には増幅された指示模様12b(12c)が存在していない旨の情報が取得される。
【0073】
(亀裂欠陥判定工程<2>)
次に、本発明の第二実施例に係る自動浸透探傷装置21による浸透探傷検査では、第二の亀裂欠陥判定工程である亀裂欠陥判定工程<2>が行われる(STEP−4−5)。
亀裂欠陥判定工程<2>では、制御装置9によって、蛍光画像処理工程<2>において取得された情報に基づく判定が行われる。蛍光画像処理工程<2>において、制御装置9によって、増幅された指示模様12b(12c)の出現位置に係る情報が取得されていた(即ち、亀裂欠陥が有る)場合には、制御装置9によって、当該ワーク11の表面に亀裂欠陥12が存在している旨の判定が行われる(STEP−4−6)。そして、この場合には、高精細蛍光画像撮影工程(STEP−5)に移行される。
【0074】
一方、蛍光画像処理工程<2>において、制御装置9によって、増幅された指示模様12b(12c)が存在していない旨の情報が取得されていた(即ち、亀裂欠陥が無い)場合には、制御装置9によって、当該ワーク11の表面には亀裂欠陥12が存在していない旨の判定が行われ(STEP−4−6)、亀裂欠陥記録工程(STEP−7)に移行される。
【0075】
(高精細蛍光画像撮影工程)
次に、本発明の第二実施例に係る自動浸透探傷装置21による浸透探傷検査では、高精細蛍光画像撮影工程が行われる(STEP−5)。
高精細蛍光画像撮影工程では、制御装置9によって、蛍光画像処理工程<2>で取得した増幅された指示模様12b(12c)の出現位置に係る情報に基づいて、指示模様12aの出現位置が特定されるとともに、CCDカメラ6をその出現位置に対してさらに接近させる。これにより、指示模様12aに対するCCDカメラ6の解像度を高めた状態で蛍光画像の撮影をすることができる。
そして、CCDカメラ6を指示模様12aに接近させた状態で、CCDカメラ6によって、蛍光画像撮影工程<1>・<2>で撮影された蛍光画像に比して解像度の高い(高精細である)高精細蛍光画像が撮影される。撮影した蛍光画像は、CCDカメラ6に接続された制御装置9に送られ、制御装置9によって、当該ワーク11に対応する高精細蛍光画像が取得される。
【0076】
(高精細蛍光画像処理工程)
次に、本発明の第二実施例に係る自動浸透探傷装置21による浸透探傷検査では、高精細蛍光画像処理工程が行われる(STEP−6)。
高精細蛍光画像処理工程では、制御装置9によって、取得された高精細蛍光画像の画像処理が行われるとともに、指示模様12aのサイズが演算により求められる。これにより、制御装置9によって、亀裂欠陥12のサイズに係る情報が取得される。
【0077】
(亀裂欠陥記録工程)
次に、本発明の第二実施例に係る自動浸透探傷装置21による浸透探傷検査では、亀裂欠陥記録工程が行われる(STEP−7)。
亀裂欠陥記録工程では、制御装置9によって、高精細蛍光画像処理工程において取得された亀裂欠陥12のサイズに係る情報が、外部記憶装置10に記録される。
あるいは、ワーク11の表面に亀裂欠陥12が存在していなかった場合には、その旨が、外部記憶装置10に記録される。これにより、当該ワーク11に対する浸透探傷検査の検査結果についてトレーサビリティを確保することができる。
【0078】
そして、以上により、一連の本発明の第二実施例に係る自動浸透探傷装置21による浸透探傷検査を終了する(STEP−8)。
【0079】
即ち、本発明の第二実施例に係る自動浸透探傷装置21による浸透探傷検査における亀裂欠陥の検出方法は、亀裂欠陥判定工程において、亀裂欠陥12が有る旨の判定がなされた場合に、蛍光画像処理工程<1>で検出した増幅された指示模様12b(12c)の出現位置において、ワーク11を洗浄する指示模様洗浄工程と、洗浄後のワーク11における増幅された指示模様12b(12c)の出現位置に対して、CCDカメラ6によって蛍光画像を撮影する第二の蛍光画像撮影工程たる蛍光画像撮影工程<2>と、該蛍光画像撮影工程<2>において撮影された蛍光画像を画像処理して、増幅された指示模様12b(12c)の出現位置を検出する第二の蛍光画像処理工程たる蛍光画像処理工程<2>と、該蛍光画像処理工程<2>において増幅された指示模様12b(12c)が検出されたか否かに基づいて、亀裂欠陥12の有無を判定する第二の亀裂欠陥判定工程たる亀裂欠陥判定工程<2>と、をさらに備えるものである。
【0080】
このような構成により、自動浸透探傷装置21による浸透探傷検査において、亀裂欠陥12の誤検出を確実に防止し、亀裂欠陥12の検出精度を高めることができる。
【0081】
次に、亀裂欠陥の蛍光画像を画像処理する際に、ノイズによる影響を低減し、さらに亀裂欠陥の検出精度の向上を可能とするノイズの除去方法について説明をする。
蛍光液の発光による指示模様にはノイズが含まれていることがあり、ノイズを排除することが亀裂欠陥の検出精度の向上を図る上で重要な要素となっている。このようなノイズとしては、蛍光液残りノイズと洗浄液残りノイズの少なくとも二種類があることが判っている。
【0082】
まず、蛍光液残りノイズの除去方法について説明をする。
蛍光液残りノイズは、蛍光液をワーク11に浸透させた後に行われる洗浄工程において、蛍光液の洗浄不足があった場合に発生するノイズである。この蛍光液残りノイズは、ワーク11に形成された深い凹部の底角に円形状に発光するのが特徴である。
【0083】
このため、蛍光液残りノイズが発生し得る部位を予め特定しておくことが可能であり、この予想される部位において円形状に発光する部位があった場合には、蛍光液残りノイズであると判別することができる。そして、この蛍光液残りノイズの除去方法を、先述した各実施例に係る蛍光画像処理工程において併せて適用することによって、蛍光液残りノイズを、亀裂欠陥12に起因する指示模様12aと区別してこれを排除することができ、ワーク11の亀裂欠陥12の有無を自動判定する精度を向上させることができる。
【0084】
次に、洗浄液残りノイズの除去方法について説明をする。
洗浄液残りノイズは、蛍光液をワーク11に浸透させた後に行われる洗浄工程の初期において、蛍光液と洗浄液が混じりあった状態にある洗浄液の洗い流しが不十分であった場合に発生するノイズである。この洗浄液残りノイズは、洗い流されずにワーク11の凹部等に残っていた洗浄液(蛍光液を含んでいる)が、洗浄後の搬送時等に自重でワーク11の表面に沿って流れ落ちる結果、蛍光液がワークの表面に残存して発生するものである。そして、洗浄液残りノイズは、すじ状の模様として現れ、かつ、発光強度が通常の指示模様12aに比して低いという特徴がある。
【0085】
このため、洗浄液残りノイズは、模様の形状や発光強度の特徴から、洗浄液残りノイズであると判別することができる。そして、この洗浄液残りノイズの除去方法を、先述した各実施例に係る蛍光画像処理工程において併せて適用することによって、洗浄液残りノイズを、亀裂欠陥12に起因する指示模様12aと区別してこれを排除することでき、ワーク11の亀裂欠陥12の有無を自動判定する精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0086】
1 自動浸透探傷装置
4 ワーク支持架台
4d 振動発生装置
5 カメラ支持架台
5a 振動発生装置
6 CCDカメラ
8 ブラックライト
9 制御装置
11 ワーク
12 亀裂欠陥
12a 指示模様
12b 増幅された指示模様
12c 増幅された指示模様
13 自動洗浄装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の表面に存在する亀裂欠陥に蛍光液を浸透させておき、前記蛍光液を蛍光発光させることによって現れる指示模様の画像である蛍光画像をCCDカメラで撮影する蛍光画像撮影工程と、
該蛍光画像撮影工程において撮影された前記蛍光画像を画像処理して、前記指示模様の出現位置を検出する蛍光画像処理工程と、
該蛍光画像処理工程において前記指示模様が検出されたか否かに基づいて、前記亀裂欠陥の有無を判定する亀裂欠陥判定工程と、
を備える亀裂欠陥の検出方法であって、
前記蛍光画像撮影工程において、
前記CCDカメラの焦点を、前記CCDカメラの前記指示模様に対する焦点距離から所定の距離だけずらして前記蛍光画像を撮影するか、あるいは、
前記対象物か前記CCDカメラのいずれか一方を、前記指示模様に対する前記CCDカメラの焦点方向に対して垂直でかつ互いに直角をなす二次元方向に、所定の振幅および周期で振動させながら前記蛍光画像を撮影するか、のいずれかにより、
前記亀裂欠陥の真の幅および長さに比して増幅された幅および長さで現れる増幅された指示模様を前記蛍光画像として撮影するとともに、
前記亀裂欠陥判定工程において、前記増幅された指示模様が検出されたか否かに基づいて、前記亀裂欠陥の有無を判定して、前記亀裂欠陥が有る旨の判定がなされた場合に、
前記増幅された指示模様の出現位置に対して、前記蛍光画像撮影工程のときに比して前記CCDカメラを接近させて、前記指示模様に対する前記CCDカメラの解像度をより高めた状態で、より精細な蛍光画像を撮影する高精細蛍光画像撮影工程と、
該高精細蛍光画像撮影工程において撮影された前記精細な蛍光画像を画像処理して、前記亀裂欠陥のサイズを検出する高精細蛍光画像処理工程と、
を備える、
ことを特徴とする亀裂欠陥の検出方法。
【請求項2】
前記亀裂欠陥判定工程において、前記亀裂欠陥が有る旨の判定がなされた場合に、
前記蛍光画像処理工程で検出した前記増幅された指示模様の出現位置において、前記対象物を洗浄する指示模様洗浄工程と、
洗浄後の前記対象物における前記増幅された指示模様の出現位置に対して、前記CCDカメラによって前記蛍光画像を撮影する第二の蛍光画像撮影工程と、
該第二の蛍光画像撮影工程において撮影された前記蛍光画像を画像処理して、前記増幅された指示模様の出現位置を検出する第二の蛍光画像処理工程と、
該第二の蛍光画像処理工程において前記増幅された指示模様が検出されたか否かに基づいて、前記亀裂欠陥の有無を判定する第二の亀裂欠陥判定工程と、
をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の亀裂欠陥の検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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