説明

予備コネクタ接続型光ファイバケーブルネットワーク相互接続装置

予備コネクタ接続型ネットワーク相互接続装置であって、少なくとも1つのコネクタアダプタを受け入れる少なくとも1つの開口部を構成するハウジングと、ハウジングに可動的に取り付けられていて、光ファイバケーブルへの接近に関する開放位置と閉鎖位置との間で動くことができる光ファイバケーブル保管トレーと、保管トレーに設けられた状態に維持されている所定長さの予備コネクタ接続型光ファイバケーブルとを有し、光ファイバケーブルの第1の端部は、ネットワーク相互接続装置内の少なくとも1つのコネクタアダプタまで引き回された少なくとも1つのコネクタで終端し、光ファイバケーブルの第2の端部は、光ファイバネットワーク内の所定の場所まで引き回された少なくとも1つのコネクタで終端している、ネットワーク相互接続装置。1本の予備コネクタ接続型光ファイバケーブルを用いて互いに離隔されている光ファイバ接続点を連係するデータセンタネットワーク装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には、光ファイバケーブルを保管すると共に維持し、データセンタ又は他の光ネットワーク環境内での将来の配備又は構築のためのリンクを提供する装置に関し、特に、技術者が設置された装置の後側からの将来の布設又は再布設のために所望長さの予備コネクタ接続型光ファイバケーブルを巻いたり巻き出したりすることができるようにする光ファイバネットワーク相互接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバネットワークは、音声、映像及びデータ伝送を構内網(プライベートネットワーク)と公衆網(パブリックネットワーク)の両方により加入者に提供するよう構築されている。これら光ファイバネットワークは、「生きている光ファイバ(live fiber)」を1つの接続点から別の接続点まで提供するために光ファイバをリンクさせることが必要な互いに分離されている接続点を有する場合が多い。多くの場合、これら分離された接続点は、データセンタ又は中央局内に設けられた別々の配線盤内に見受けられる。配線盤は、典型的には、コネクタハウジング、端子ブロック及び(又は)主フレームコネクタを取り付けるために用いられ、光ファイバアダプタへの接近及びケーブル管理は、配線盤をポピュレートするコネクタの個数に起因して複雑且つ困難である場合が多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
モジュール方式による連係(リンキング)及び相互接続を容易にするために必要なものは、従来の接続端子及び将来開発される接続端子、例えばコネクタハウジング内に設置可能なネットワーク装置であり、このようなコネクタハウジングの例は、ノースカロライナ州ヒッコリー所在のコーニング・ケーブル・システムズ(Corning Cable Systems)社から入手可能なPretium(登録商標)コネクタハウジング製品系列に見られる。このような装置は、分離されている接続点を互いにリンクすることができ、しかも配備されていない場合及び設置された場合にこのような装置内での光ファイバケーブルの保護及び維持を可能にする必要がある。装置を取り外す必要なく、装置内の光ファイバケーブルに後側から接近することが望ましい。さらに所望されることは、取付け可能なハウジング、少なくとも1つのアダプタ、工具の使用を不要にする固定特徴部、ケーブル管理特徴部及び光ファイバケーブルを含む予備コネクタ接続型パッケージ一式であり、このような光ファイバケーブルは、ケーブルの一端に設けられていて、少なくとも1つのアダプタまで引き回される少なくとも1つ、好ましくは複数個の単心コネクタ及びケーブルの他端に設けられていて、ネットワーク内の所定の場所まで引き回し可能な多心コネクタを有する。パッケージ化されたデータセンタは、移動、追加及び交換のため並びにコネクタクリーニングのためにコネクタへの容易な開放状態での接近(オープンアクセス)を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態では、本発明は、「生きている光ファイバ」を1つの接続点から別の接続点まで提供するために分離されている接続点を互いにリンクするパッケージ化データセンタ装置を提供する。データセンタ装置は、ハウジングと、ハウジング内に設けられた少なくとも1つのアダプタと、予備コネクタ接続型光ファイバケーブルと、光ファイバケーブルを維持する構造体とを有する。一実施形態では、ケーブルは、一端が、ハウジングの内部から少なくとも1つのアダプタの後側まで引き回されている複数の単心コネクタで終端し、ケーブルの他端は、ネットワーク内の所定の場所まで引き回されている単心コネクタで終端する。ケーブルは、装置内に保管又は収納される所定長さを有し、このようなケーブルは、多心コネクタを所定の場所まで引き回すのに適度な長さを提供するために手動で巻かれたり巻き出されたりするのが良い。
【0005】
別の実施形態では、本発明は、配線盤又はコネクタハウジング内に設置可能な予備コネクタ接続型相互接続装置を提供する。この装置は、光ファイバケーブルの保管又は収納のための第1の部分及び少なくとも1つのアダプタまで引き回される光ファイバケーブルのための第2の部分を備えたハウジングを有する。第1の部分と第2の部分は、本明細書では「疑似底部」とも呼ばれる移行蓋によって互いに分離されるのが良い。移行蓋は、光ファイバケーブルを第1の部分から第2の部分に移行させる開口部を構成するのが良い。1本の光ファイバケーブルが、本明細書では「蓋」とも呼ばれるトレーに取り付けられた保管構造体によって保管されると共に維持される。保管トレーは、装置ハウジングに摺動可能且つ枢動可能に取り付けられている。ハウジングの前側部分は、少なくとも1つのアダプタを取り付けるための少なくとも1つのスロットを有する。一実施形態では、この前側部分は、複数個のアダプタを取り付けるための少なくとも1つの列又は行をなすスロットを備えている。前側部分は装置を、配線盤、コネクタハウジング又は他の取付け構造体内に容易且つ取り外し可能に設けるための取付け特徴部、例えばプランジャ及びグロメットを更に備えるのが良い。トレーにより構成される装置の後側部分は、光ファイバケーブルを挿通させることができるポート、ケーブルが強力に引っ張られた場合、トレーが伸長されるのを阻止するロック機構体及び所与の長さの光ファイバケーブルに接近するようトレーを引き出すためのオプションとしての取っ手を有する。装置は、自動ロックラッチを更に有するのが良い。
【0006】
さらに別の実施形態では、本発明は、データセンタモジュールを提供し、このデータセンタモジュールは、このモジュールの前部周りに位置決めされた少なくとも1つのLCデュプレックス及び(又は)SCデュプレックスアダプタ及びモジュールの後部周りに位置決めされたMTPコネクタを有している。モジュール内の光ファイバケーブルは、ケーブルが強力に引っ張られている状況において最小曲げ半径を超えることにより引き起こされる損傷を阻止するために張力逃がし(ひずみ逃がし)される。可撓性ブーツが、モジュールの後部周りに設けられ、このような可撓性ブーツは、モジュールによって構成された凹部内に保持される。可撓性ブーツは、凹部内に挿入されたときにケーブルの張力逃がしを行うことができ、更に、モジュールに隣接しているケーブルのもつれ(キンク)又は急な曲げを阻止する。モジュールは、モジュール相互間にリンクを提供することができる任意形式及び任意長さの光ファイバケーブルを有するのが良い。光ファイバケーブルは、シングルモード、マルチモード及び曲げの影響を受けにくい形式の光ファイバを含む現在知られている又は将来開発される形式の光ファイバを含むことができる。保管トレーに接近するためにモジュールを開くことにより光ファイバケーブル長さ分への接近が行われる。ケーブルへの接近を容易にするためにいったん開かれると、保管トレーを滑らせて所定角度まで回転させることができる。ケーブルは、必要に応じて手動で巻かれ又は巻き出されて布設される。モジュールサイズとしては、とりわけ、シングルワイド又はダブルワイドバージョンが挙げられる。モジュールは、光ファイバケーブルをモジュールの頂部又は底部でで出すようにするために左開きか右開きかのいずれかであるように設計されるのが良い。好ましい実施形態では、モジュールは、接近及び作業のための工具を必要としない。
【0007】
本発明の追加の特徴及び利点は、本発明の原理及び作用を説明する以下の詳細な説明に記載され、又、このような説明から当業者には容易に明らかになると共に(或いは)本発明を説明した通りに実施することにより認識されよう。上述の全体的説明及び以下の詳細な説明は、本発明の例示の実施形態に係るものであり、このような実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の性状及び特徴を理解するための概観及び枠組を提供するものである。添付の図面は、本明細書に組み込まれてその一部をなしており、添付の図面は、本発明の例示の実施形態を記載すると共にこれらを一段と強調している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】予備コネクタ接続型データセンタネットワーク装置の正面型斜視図であり、少なくとも1つのアダプタを示す図である。
【図2】図1の装置の後方側斜視図であり、予備コネクタ接続型光ファイバケーブル、ケーブル出口点、引き取っ手及びロック機構体を示す図である。
【図3】保管トレーが開放且つ枢動位置にある状態で示された図1の装置の斜視図である。
【図4】保管トレーが開放且つ枢動位置にある状態で示されている図3の装置の斜視図であり、移行蓋を示す図である。
【図5】図1の装置の詳細斜視図であり、張力逃がし特徴部及び光ファイバケーブルを出すための可撓性ブーツを示す図である。
【図6】保管トレーが開放且つ枢動位置にある状態で示された図1の装置の斜視図である。
【図7】並列に配置された多数の予備コネクタ接続型データセンタネットワーク装置斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の好ましい実施形態を詳細に参照するが、このような好ましい実施形態の例が、添付の図面に示されている。可能な場合にはいつでも、同一の参照符号は、同一のコンポーネント又は部分を示すために用いられる。特定のデータセンタネットワーク装置が示されると共にデュプレックスSC又はLCコネクタアダプタを有しているが、任意形式のアダプタ、コネクタ又はケーブルを含む他の構成の装置が、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく利用できることが想定される。本発明を主としてデータセンタに用いられるものとして説明するが、本発明は、予備コネクタ接続型光ファイバリンク又は相互接続点を提供することが望ましいネットワーク環境であればどれにでも利用できる。データセンタ装置は、スタンドアロン型ユニットであっても良く、他の構造体のコネクタハウジングの配線盤内に設けられても良い。
【0010】
図1〜図8を参照すると、本明細書において「相互接続装置」、「接続装置」、「モジュール」又は「装置」ともいう本発明のデータセンタ装置100は、ハウジング102、ハウジング102に摺動可能且つ枢動可能に取り付けられた光ファイバケーブル保管又は収納トレー104、所与の長さの予備コネクタ接続型光ファイバケーブル106及び少なくとも1つのコネクタアダプタ108を有している。特に図1を参照すると、装置100の前端部110は、少なくとも1つのアダプタ108を受け入れてこれを固定することができる任意の数の列又は行をなして配置された1つ又は2つ以上のスロット112を備えている。図示のように、装置110は、12個のSCコネクタのための接続点を提供する全部で6つのSCデュプレックスアダプタ108の場合、各々が単一のSCデュプレックスアダプタ108を受け入れる単一の列をなしたスロット112を有する。上述したように、装置100は、任意形式及び任意個数のコネクタを受け入れることができる任意個数のコネクタアダプタ又はコネクタ受け入れ部位を有するのが良い。図示のように、アダプタ108は、ポピュレートされていない状態のアダプタを必要になるまで保護する取り外し可能なカバー114を有する。前端部110は、装置100を配線盤、コネクタハウジング又は他の取付け構造体に又はこの中に取り外し可能に固定する取付け特徴部116を更に有している。図示のように、取付け特徴部は、工具を使用することなく装置100を設置し又は取り外すことができるプランジャ及びグロメット形態を含む。ハウジング102及びケーブル保管トレー104は、一緒になって、1本の予備コネクタ接続型光ファイバケーブル106を保管し又は収納するケーブル保管又は収納キャビティを構成し、このような光ファイバケーブルは、必要に応じて手動で巻かれ又は巻き出されてネットワーク内の所定の場所まで引き回し可能である。
【0011】
依然として図1を参照すると、光ファイバケーブル106は、一端が多心コネクタ118で終端した状態で示されている。MTPコネクタが図示されているが、光ファイバケーブル106は、任意形式の単心又は多心コネクタで終端することができるものの、好ましくは、多心コネクタで終端する。図示されていないが、光ファイバケーブルの他端は、少なくとも1つのコネクタ、好ましくは複数の単心コネクタ、例えばSC又はLCコネクタで終端している。光ファイバケーブル106は、移行蓋(以下において詳細に説明する)を通って装置102内で引き回され、この移行蓋でで、少なくとも1つ、好ましくは複数個のコネクタが少なくとも1つのアダプタ108の裏側まで引き回される。ネットワーク装置100は、装置100の内部の光ファイバケーブル106から少なくとも1つのコネクタを受け入れると共に装置100の外部の別の源から少なくとも1つのコネクタを受け入れることができる。互いに嵌合するコネクタは、同一形態のものであっても良く、異なっていても良い。少なくとも1つのアダプタ108は、標準型アダプタであっても良く、ハイブリッドアダプタであっても良い。図示していないが、少なくとも1つのアダプタ108は各々、コネクタ軸合わせスリーブを有するのが良い。光ファイバケーブル106は、所定の長さを有し、装置100内に保管又は収納されており、このような光ファイバケーブルは、多心コネクタ118を所定の場所まで引き回すのに適当な長さを提供するために巻かれたり巻き出されたりする。
【0012】
図2を参照すると、ネットワーク装置100の後方側斜視図が示されている。装置100の後側120、特に、保管トレー104は、予備コネクタ接続型光ファイバケーブル出口点122、出口点122内に位置決めされていて、光ファイバケーブルを装置100の内部から外部に移行させるための移行ブーツ124、必要に応じて保管トレー104の引き出し及び押し込みを行うための引き取っ手126及びトレーロック機構体128を有している。取っ手126に代えて、保管トレー104を操作するために把持可能な任意の特徴部を用いても良い。ロック機構体128は、光ファイバケーブル106が強く引っ張られても保管トレー104が偶発的に開かれるのを阻止することができる。図示のロック機構体128は、プランジャ130及びブラケット132を有している。保管トレー104をハウジング102から離脱させるためには、プランジャ130を引き上げてブラケット132を持ち上げ、次にトレー104を開く。トレー104を定位置にロックするためには、トレー104を閉じ、ブラケット132を押し下げてブラケットを受け入れタブに当て、プランジャ130を押し下げてブラケット132をハウジング102のタブに固定する。
【0013】
図3を参照すると、保管トレー104は、開放且つ枢動形態で示されている。保管トレー104は、少なくとも1つの光ファイバケーブルを維持すると共に保持する特徴部134を有する。少なくとも1つの特徴部134は、光ファイバの最小曲げ半径に違反することなくケーブル106を巻き形態に維持することができる。巻かれた状態の光ファイバケーブルの長さは、任意長さのものであって良い。装置100の幅は、この中に入っている余長の量によって決定される場合がある。1本の光ファイバケーブルは、輸送及び布設中、少なくとも1つの特徴部134に巻き付けられ、必要に応じて巻き出される。光ファイバケーブルの長さは、約1フィート(1フィートは、0.3048m)から数百フィート、好ましくは約1フィートから約100フィートまでの範囲にわたるのが良い。光ファイバケーブル106は、いずれの方向にも巻け、好ましくは、ケーブルの各端部がケーブル106に急な曲げを生じさせることなく、装置100内のそのそれぞれの所定の行き先までスムーズに引き回されるよう巻かれている。ケーブル106は、更にケーブル106を引っ張ることなく保管トレー104を伸長させることができるよう所与の長さの余長をコイルから自由にした状態で巻かれても良い。使用にあたり、以下に詳細に説明するように、ケーブル106は、出口点122を通って装置100から出ている。ケーブル106をケーブル移行ブーツ124中に送り込む。移行ブーツ124は、出口チェーン122内に保持されている。可撓性移行ブーツ124は、保管トレー104に隣接したケーブルのキンク又は急な曲げを阻止する。ケーブルを巻き出しながらケーブルを引っ張り、ケーブルは、移行ブーツ124中を滑る。変形実施形態では、ブーツ124を出口点122中に挿入し、出口点凹部がブーツ124を圧縮しているときに、ケーブル106に対して部分的な張力逃がし又はひずみ逃がし作用を与えることができる。一実施形態では、移行ブーツ124は、ブーツを収納トレースロット内に滑り込ませているときにブーツが締め付けられたとき、張力逃がし及び部分的又は完全密封が生じることができるようブーツ内面に設けられた隆起部を有するのが良い。装置100は、左開きか右開きかのいずれかであるように設計されているのが良く、出ていくケーブル106は、装置100の頂部か底部かのいずれかに配置されるのが良い。
【0014】
図4を参照すると、保管トレー104は、装置100の内部キャビティ及び移行蓋136を示すために開放且つ枢動形態で示されている。装置100は、光ファイバケーブル保管又は収納のための第1の内部キャビティ部分及び少なくとも1つのアダプタまで引き回される光ファイバケーブルのための第2の部分を備えている。第1の部分と第2の部分は、本明細書においては「疑似底部」ともいう移行蓋136によって分離されている。移行蓋136は、光ファイバケーブル106を第1の部分から第2の部分に移行させる開口部138を備えるのが良い。移行蓋136は、更に、光ファイバケーブル106を巻き又は巻き出すために装置100に接近したとき、ケーブル106のピグテール形端部に対する保護を行うのが良い。図示の例では、移行蓋136は、12本の光ファイバのこれらのそれぞれのアダプタへの引き回し状態を隠し/覆っている。変形実施形態では、多心コネクタに代えて単心コネクタを設けても良く、スプリッタ又は他の信号分割装置を装置内、例えば第2の部分内に設けるのが良く、多数の光ファイバをアダプタまで引き回すことができる。
【0015】
図5を参照すると、ケーブル張力逃がし部及び移行ブーツ124が、詳細に示されている。光ファイバケーブル106は、所望長さまでいったん巻き出されると、ケーブルの内部の残りの長さ分をケーブルの外側の部分に加えられた引張り力から解放するよう保管トレー104に張力逃がしされるのが良い。ケーブルは、上述したような移行ブーツ124を用いて部分的に張力逃がしされても良い。ケーブルは又、トレー104の表面、好ましくは内面に固定されたグロメット140を用いて張力逃がしされても良い。ケーブルは又、当該技術分野において知られている任意他の方法を用いて強力逃がしされても良く、このような方法としては、ケーブル結束具が挙げられるが、これには限定されない。
【0016】
図6を参照すると、装置100は、保管トレーを摺動開放すると共に枢動させると共にロック機構体128を解除した状態で示されている。ハウジング102は、ハウジングの各側の長さに沿って設けられていて、保管トレー104のローラ144又は車輪を案内すると共に維持する軌道となるチャネル又はスロット142を有している。保管トレー104の摺動運動及び枢動運動は、ローラ144によって支援される。さらに、2つのローラ144を保管トレー104の各側に設けることにより、トレーは、運動の終了前にねじれるのが阻止される。保管トレー104の各側のローラ144のうちの少なくとも一方は、完全伸長位置では、軌道142から所定の角度外れたところに設けられた枢動可能スロット146内に延びるのが良い。保管トレー104が摺動運動の終わりに完全伸長状態で枢動できるようにすることにより、装置100をいったん現場に設置すると、所定長さの光ファイバケーブルへの向上した接近性が現場技術者に提供される。枢動できるようにすることにより、技術者は、特に多数の装置又はモジュールが単一コネクタハウジング内に並列に設けられている用途では、或るケーブル長さ分を巻いたり巻き出しするのが楽になる。保管トレー104は、装置の長手方向軸線に対して約90°、より好ましくは最大約45°まで枢動することができる。保管トレー104が隣接の装置に接触するのを阻止するために所定の最大枢動量が提供されるのが良い。図示のように、保管トレー104は、装置の長手方向軸線に対して約40°回転する。
【0017】
図7を参照すると、多数のネットワーク装置100が、並列に配置されており、コネクタハウジング内の典型的な設置環境が示されている。装置を収納設置することができるコネクタハウジングの例としては、ノースカロライナ州ヒッコリー所在のコーニング・ケーブル・システムズ社から入手できるPretium(登録商標)コネクタハウジング製品系列が挙げられる。特定の設置環境は、コーニング・ケーブル・システムズ社から入手できるPCH−04Uコネクタハウジングへのデータセンタ内での設置を含むのが良い。図示のように、中間に位置する装置100の保管トレー104は、完全伸長位置で示されると共に枢動しており、光ファイバケーブル長さへの容易な接近が得られている。図示のように、装置100は、予備コネクタ接続型光ファイバケーブルを備えていない。
【0018】
上述の種々の実施形態では、ハウジング、保管トレー及び他のコンポーネントを設置環境に応じて、種々の材料、例えばプラスチック、金属、これらの組合せ等(これらには限定されない)で作ることができる。移行ブーツは、好ましくは、可撓性又は軟質材料で作られる。装置寸法形状は、必要な光ファイバケーブル保管量及びアダプタの個数に応じて様々であって良い。好ましい実施形態では、ネットワーク装置を取り付け、保管トレーに接近し又は或る長さのケーブルを巻いたり巻き出したりする作業のための工具は不要である。上述のネットワーク装置は、所定長さのケーブルへの後側からの接近を可能にするので、所定長さのケーブルに接近するために装置をその取付け位置から取り外す必要はない。別の装置設計例は、保管トレーのみの摺動又は保管トレーのみの枢動を含む場合がある。
【0019】
予備コネクタ接続型ケーブルは、任意形式の光ファイバを含んで良く、このような光ファイバとしては、「曲げの影響を受けにくい光ファイバ」又は「曲げ最適化光ファイバ」とも呼ばれる曲げ性能光ファイバが挙げられるが、これには限定されない。曲げ性能光ファイバとしては、コア部分及びコア部分を包囲した被覆部分を有する微細構造化光ファイバが挙げられ、被覆領域は、光ファイバが1つ又は2つ以上の動作波長範囲内の1つ又は2つ以上の波長でシングルモード伝送を行うことができるよう非周期的に設けられた穴で構成されている環状穴を有する領域を有する。コア領域及び被覆領域は、曲げ抵抗の向上をもたらすと共に好ましくは1500nm以上、或る実施形態では1400nmより長く、他の実施形態では、1260nmよりも長い波長でのシングルモード動作をもたらす。光ファイバは、1310nmの波長で、好ましくは8.0ミクロンよりも大きく、より好ましくは8.0〜10.0ミクロンのモードフィールド径を提供する。好ましい実施形態では、曲げ性能光ファイバは、シングルモード伝送光ファイバである。
【0020】
幾つかの実施形態では、微細構造化光ファイバは、長手方向中心線回りに設けられたコア領域及びコア領域を包囲した被覆領域を有し、被覆領域は、非周期的に設けられた穴で構成されている環状穴を備えた領域を有し、環状穴を備えた領域は、12ミクロン未満の最大半径方向幅を有し、環状穴を備えた領域は、30パーセント未満の局所空隙領域を有し、非周期的に設けられた穴の平均直径は、1550nm未満である。「非周期的に設けられ」又は「非周期的分布」という用語は、光ファイバの断面(例えば、長手方向軸線に垂直な断面)を取った場合に、非周期的に設けられた穴が光ファイバの一部を横切ってランダムに又は非周期的に分布して設けられていることを意味している。光ファイバの長さに沿う別々の箇所で取った類似の断面は、互いに異なる断面穴パターンを表し、即ち、種々の断面は、互いに異なる穴パターンを有し、この場合、穴の分布状態及び穴のサイズは、互いに一致していない。即ち、空隙又は穴は、非周期的であり、即ち、空隙又は穴は、光ファイバ構造体内に周期的に配置されているわけではない。これらの穴は、光ファイバの長さ(即ち、長手方向軸線に全体として平行な方向)に沿って引き伸ばされ(細長くなっている)が、伝送光ファイバの典型的な長さに関し、光ファイバ1本の全長にわたって延びているわけではない。
【0021】
種々の用途に関し、穴の95%以上、好ましくは全てが、1550nm未満、より好ましくは775nm未満、最も好ましくは約390nm未満の光ファイバの被覆の平均穴サイズを示すよう穴を形成することが望ましい。同様に、光ファイバの穴の最大直径は、7000nm未満、より好ましくは2000nm未満、更により好ましくは1550nm未満、最も好ましくは775nm未満であることが好ましい。幾つかの実施形態では、本明細書に開示した光ファイバは、5000個よりも少ない穴、幾つかの実施形態では1000個よりも少ない穴を有し、他の実施形態では、穴の総数は、光ファイバの垂直断面が所与の場合、500個未満である。当然のことながら、最も好ましい光ファイバは、これらの特性の組合せを呈するものである。例えば、光ファイバの1つの特定の好ましい実施形態では、光ファイバに200個よりも少ない穴が設けられ、これらの穴の最大直径は、1550nm未満であり、平均直径は、775nm未満である。ただし、これよりも大きくしかも多い数の穴を用いて有用な曲げ抵抗光ファイバを実現することができる。
【0022】
穴の数、平均直径、最大直径及び全空隙領域パーセントは、全て、米国メリーランド州シルバー・スプリング所在のメディア・サイバーメティックス・インコーポレイテッド(Media Cybermetrics, Inc.)から入手できる倍率が約800Xの走査型電子顕微鏡及び画像分析ソフトウェアにより計算できる。本明細書において開示した光ファイバは、光ファイバのコア及び(又は)被覆の屈折率をも調節するためにゲルマニア(germania)又はフッ素を有しても良く又は有さなくても良いが、これらのドーパントは又、中間環状領域では回避されるのが良く、その代わり、穴(穴内に設けられる場合のある任意の1種類又は複数種類のガスと組み合わせて)を用いて光が光ファイバのコアに沿ってこれを下って案内される仕方を調整することができる。穴を備えた領域は、ドープしていない(純粋な)シリカから成るのが良く、それにより、屈折率の減少を達成するよう穴を備えた領域へのドーパントの使用が完全に回避され、又は、穴を備えた領域は、複数個の穴を備えているドープしたシリカ、例えばフッ素をドープしたシリカから成っていても良い。実施形態のうちの1つの組では、コア領域は、純粋なシリカに対して正の屈折率をもたらすためにドープしたシリカ、例えばゲルマニアをドープしたシリカを有する。好ましくは、コア領域には穴が存在しない。
【0023】
本発明を好ましい実施形態及びこれらの特定の例を参照して本明細書において説明すると共に図示したが、他の実施形態及び他の例が実質的に同一の機能を実行すると共に(或いは)実質的に同一の結果を達成できることは当業者には容易に明らかであろう。例えば、ラッチ止め、摺動、ヒンジ止め、張力逃がし、分岐及び締結に関する均等例は、本発明の範囲に含まれる。このような均等例としての実施形態及び実施例は全て、本発明の精神及び範囲に属すると共に特許請求の範囲の記載に包含されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予備コネクタ接続型ネットワーク相互接続装置であって、
少なくとも1つのコネクタアダプタを収納状態で取り付ける少なくとも1つの開口部を構成するハウジングと、
前記ハウジングに可動的に取り付けられていて、光ファイバケーブルへの接近のために開放位置と閉鎖位置との間で動くことができる光ファイバケーブル保管トレーと、
前記保管トレーに設けられた状態に維持されている所定長さの予備コネクタ接続型光ファイバケーブルとを有し、前記光ファイバケーブルの第1の端部は、前記ネットワーク相互接続装置内の前記少なくとも1つのコネクタアダプタまで引き回された少なくとも1つのコネクタで終端し、前記光ファイバケーブルの第2の端部は、光ファイバネットワーク内の所定の場所まで引き回された少なくとも1つのコネクタで終端している、ネットワーク相互接続装置。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記所定長さの光ファイバケーブルを受け入れる第1の内部キャビティ部分及び前記少なくとも1つのコネクタアダプタまで引き回された前記少なくとも1つのコネクタを維持する第2の内部キャビティ部分を構成し、前記第1の内部キャビティ部分と前記第2の内部キャビティ部分は、前記光ファイバケーブルを挿通させることができる開口部を構成している移行蓋によって実質的に分離されている、請求項1記載のネットワーク相互接続装置。
【請求項3】
ケーブル移行ブーツ及びケーブル張力逃がし特徴部を更に有する、請求項1記載のネットワーク相互接続装置。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記保管トレーが前記ハウジングに摺動可能に係合するよう前記保管トレーの少なくとも1つのローラを受け入れる少なくとも1つの軌道を備えている、請求項1記載のネットワーク相互接続装置。
【請求項5】
前記保管トレーは、前記ハウジングに枢動可能に取り付けられている、請求項1記載のネットワーク相互接続装置。
【請求項6】
前記保管トレーは、前記ネットワーク相互接続装置の長手方向軸線に対して約45°以下枢動する、請求項5記載のネットワーク相互接続装置。
【請求項7】
前記保管トレーは、前記ハウジングに摺動可能且つ枢動可能に取り付けられている、請求項1記載のネットワーク相互接続装置。
【請求項8】
前記保管トレーは、前記ネットワーク相互接続装置を取付け構造体から取り外す必要なく、前記ネットワーク相互接続装置の後側からの前記所定長さの光ファイバケーブルへの接近を可能にする、請求項1記載のネットワーク相互接続装置。
【請求項9】
前記保管トレーに固定されていて、前記保管トレーからの引き出し及び前記保管トレーへの押し込みのための取っ手を更に有する、請求項1記載のネットワーク相互接続装置。
【請求項10】
前記保管トレーを定位置にロックする自動ロック機構体を更に有する、請求項1記載のネットワーク相互接続装置。
【請求項11】
前記ネットワーク相互接続装置は、光ファイバ接続点相互間のリンクを提供するよう光ファイバネットワークのデータセンタ内に配備されている、請求項1記載のネットワーク相互接続装置。
【請求項12】
前記所定長さの光ファイバケーブルは、前記光ファイバケーブルの前記第2の端部を前記所定の場所まで引き回すのに十分なケーブル長を提供するよう必要に応じて手動で巻かれたり巻き出される、請求項1記載のネットワーク相互接続装置。
【請求項13】
前記光ファイバケーブルの前記第1の端部は、少なくとも1つの単心コネクタで終端し、前記第2の端部は、少なくとも1つの多心コネクタで終端している、請求項1記載のネットワーク相互接続装置。
【請求項14】
前記ネットワーク相互接続装置は、左開きか右開きかのいずれかであるように構成可能である、請求項1記載のネットワーク相互接続装置。
【請求項15】
光ファイバケーブルへの接近には、工具の使用は不要である、請求項1記載のネットワーク相互接続装置。
【請求項16】
前記光ファイバケーブルは、曲げ性能光ファイバを含む、請求項1記載のネットワーク相互接続装置。
【請求項17】
光ファイバネットワーク相互接続装置であって、
ハウジングを有し、前記ハウジングは、前記ハウジングの前端部の周りに設けられていて、少なくとも1つのアダプタを受け入れる少なくとも1つの開口部を構成し、
前記ハウジングに摺動可能且つ枢動可能に取り付けられた光ファイバケーブル保管トレーを有し、
前記保管トレーに設けられた状態で維持されている所定長さの予備コネクタ接続型光ファイバケーブルを有し、前記予備コネクタ接続型光ファイバケーブルは、第1の端部が前記少なくとも1つのアダプタの後側まで引き回された少なくとも1つの単心コネクタで終端し、第2の端部が多心コネクタで終端しており、
前記所定長さの予備コネクタ接続型光ファイバケーブルは、技術者が前記多心コネクタを前記ネットワーク内の所定の場所まで引き回すのに十分なケーブル長を提供するよう前記ケーブルを巻き出し又は巻くことができるようにする、ネットワーク相互接続装置。
【請求項18】
前記ハウジングは、前記所定長さの光ファイバケーブルを受け入れる第1の内部キャビティ部分及び前記少なくとも1つのコネクタアダプタまで引き回された前記少なくとも1つのコネクタを維持する第2の内部キャビティ部分を構成し、前記第1の内部キャビティ部分と前記第2の内部キャビティ部分は、前記光ファイバケーブルを挿通させることができる開口部を構成している移行蓋によって実質的に分離されている、請求項17記載のネットワーク相互接続装置。
【請求項19】
前記保管トレーは、取っ手と、ロック機構体と、可撓性ケーブル移行ブーツを受け入れるスロットと、ケーブル張力逃がし特徴部とを有する、請求項17記載のネットワーク相互接続装置。
【請求項20】
光ファイバデータセンタネットワーク装置であって、
少なくとも1つのコネクタアダプタが収納状態で設けられたハウジングを有し、前記ハウジングは、少なくとも1つの単心コネクタを維持するための第1の部分及び1本の光ファイバケーブルを受け入れる第2の部分を備え、前記第1の部分と前記第2の部分は、移行蓋により少なくとも部分的に分離され、
前記ハウジングに可動的に取り付けられていて、前記装置を取付け構造体から取り外す必要なく、前記装置の後側からの所与の長さの光ファイバケーブルへの接近を可能にするよう開放位置と閉鎖位置との間で動くことができるケーブル保管トレーを有し、
前記保管トレーの少なくとも1つのケーブル維持特徴部に巻き付けられた予備コネクタ接続型光ファイバケーブルを有し、前記光ファイバケーブルは、第1の端部が前記少なくとも1つの単心コネクタで終端し、第2の端部が少なくとも1つの多心コネクタで終端しており、
前記所与の長さの光ファイバケーブルは、前記少なくとも1つの多心コネクタを所望の場所まで引き回すのに十分な長さの前記光ファイバケーブルを提供するよう必要に応じて巻かれ又は巻き出される、装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−503015(P2010−503015A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526616(P2009−526616)
【出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/018193
【国際公開番号】WO2008/027201
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(501209863)コーニング ケーブル システムズ リミテッド ライアビリティ カンパニー (65)
【Fターム(参考)】