説明

予備吐出受装置、これを有する搬送装置および画像形成装置

【課題】吸引搬送ベルトによる用紙搬送方式を用い、空吐出を実施可能な予備吐出受装置、およびこれを有する搬送装置ならびに画像形成装置であって、記録媒体担持体である搬送ベルトにおけるベルトに設けられた孔での空吐出動作の機能を損なう事無く、しかも用紙先端または後部の画像乱れを防止することのできる画像形成装置等を提供する。
【解決手段】記録媒体を、複数の孔を有する無端状ベルトの前記孔から吸引して搬送する搬送装置に内包され、前記記録媒体の搬送方向と直交する方向に延伸された遮蔽部432を有するベルト430と該ベルトを懸架する少なくとも2本のローラとを有する予備吐出受装置434。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式の画像形成装置に用いられる予備吐出受装置、これを有する搬送装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インク吐出手段である液吐出ヘッドのノズルからインク滴を吐出して紙などの記録媒体上に画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置が知られている。このような画像形成装置では、記録媒体をエアー吸引による負圧を利用して吸引搬送ベルトに吸着して搬送し、記録媒体上に画像形成することにより情報の記録が行われている。
【0003】
このような発明として、たとえば特許文献1には、用紙搬送機構の発明が開示されている。この公報には、用紙先端の画像汚れの発生を防止するために、インクジェットヘッドの直下から前記用紙搬送方向の下流側に向かう所定領域で空気量を減ずるように制御することを特徴とする搬送機構の発明が開示されている。
【0004】
また特許文献2には、空気の乱れや吸引力の低下を発生させることなく、種々のサイズの記録媒体を搬送することを目的として、搬送ベルトの内側にもう一枚吸引孔を閉塞するためのベルトを用いて用紙サイズよりも外側の吸引孔を閉塞してしまう発明が開示されている。
【0005】
一方、インクジェット方式の画像形成装置では、ノズル面の乾燥、ノズルからのインクの水分などの溶媒又は分散媒の蒸発により、インク粘度の上昇や、インクの固化や、塵埃の付着、気泡の混入などにより、インクが吐出不良となり、記録媒体への記録不良を起こすという問題がある。
【0006】
そのため、記録ヘッドからのインク吐出状態を良好に維持するため、印刷動作中などに、画像形成に寄与せずにインクを吐出する、いわゆる空吐出動作(予備吐出動作ともいう)を行っている。より具体的には、搬送ベルトを介して記録ヘッドに対向して配置させたインク受容部材を、搬送ベルトに設けられた予備吐出用孔、あるいは搬送ベルトに多数設けられたエアー吸引孔などの孔に向けて各ノズルからのインクを空吐出し、前記のインク受容部材で受け止めることが行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の発明には、空吐出(予備吐出)に関する記載はなく、ベルト孔での空吐出をどのように行うかに関し、その解決手段は何ら開示されてはいない。
また特許文献2の発明にも空吐出に関する記載は無い。
【0008】
本発明は、吸引搬送ベルトによる用紙搬送方式を用いた空吐出を実施可能な予備吐出受装置、およびこれを有する搬送装置ならびに画像形成装置であって、記録媒体担持体である搬送ベルトにおけるベルトに設けられた孔での空吐出の機能を損なう事無く、しかも用紙先端または後端部の画像乱れを防止することのできる画像形成装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明は以下の解決手段を有することを特徴としている。
(1) 記録媒体を、複数の孔を有する無端状ベルトの前記孔から吸引して搬送する搬送装置に内包され、前記記録媒体の搬送方向と直交する方向に延伸された遮蔽部を有するベルトと該ベルトを懸架する少なくとも2本のローラとを有する予備吐出受装置を特徴とする。
(2) 前記(1)に記載の予備吐出受装置において、前記予備吐出受装置は、前記遮蔽部が複数設けられることを特徴とする。
(3) 前記(1)または(2)に記載の予備吐出受装置において、前記ベルトは前記少なくとも2本のローラの各両端部に懸架され、前記遮蔽部の位置を感知できるマークを前記ベルトの端部に設けたことを特徴とする。
(4) 前記(1)〜(3)のいずれかに記載の予備吐出受装置において、前記予備吐出受装置は、前記少なくとも2本のローラの1つを稼動させて前記記録媒体の端部と同期させて移動させる手段を有して構成されることを特徴とする。
(5) 前記(1)〜(4)のいずれかに記載の予備吐出受装置において、前記予備吐出受装置は、インクジェットヘッドからの吐出液を受けるものであって前記記録媒体の搬送区域外に前記インクジェットヘッドからの吐出液を受けるように、空吐出用の孔を閉塞しない位置に前記遮蔽部が待機することを特徴とする。
(6) 記録媒体を、複数の孔を有する無端状ベルトの前記孔から吸引して搬送する搬送装置において、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の予備吐出受装置を有することを特徴とする。
(7) 前記(1)〜(5)のいずれかに記載の予備吐出受装置を有する搬送装置と、記録媒体の搬送方向とほぼ直交する方向に複数配列された複数のノズルを有する液滴吐出ヘッドとを有し、前記記録媒体の端を検知する第一のセンサと前記予備吐出受装置の吸引遮蔽部の位置を検知する第二のセンサを具備し、前記第一と第二のセンサにより前記記録媒体の端部に同期して前記吸引遮蔽部を作動させる画像形成装置を特徴とする。
(8) 前記(7)に記載の画像形成装置において、前記吸引遮蔽部の後端が、前記記録媒体の先端と同じか重なる位置になるように前記吸引遮蔽部を動作させることを特徴とする。
(9) 前記(7)または(8)に記載の画像形成装置において、前記記録媒体の先端または後端部に画像データが無い場合は、前記吸引遮蔽部を動作しないことを特徴とする。
(10) 前記(7)〜(9)のいずれかに記載の画像形成装置において、前記吸引遮蔽部の幅よりも、前記記録媒体間の間隔を広くすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
画像乱れの原因である用紙先端部の吸引孔による吸引を選択的に予備吐出受装置の遮蔽部で遮蔽して空気の流れを遮断し、用紙先端部における画像乱れを防止すると共に、空吐出時は遮蔽部以外に吐出する事が出来る吸引搬送ベルトを用いた画像形成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ライン型インクジェット方式の画像形成装置の全体構成を示す概略側面図である。
【図2】ライン型インクジェット画像形成装置の全体構成を示す概略平面図である。
【図3】ライン型インクジェットのヘッドモジュールおよびヘッドのノズル面を説明するための概略図である。
【図4】ライン型インクジェットのヘッドモジュールおよびヘッドのノズル面を説明するための概略拡大図である。
【図5】本発明の画像形成装置に使用される搬送ベルトの一部を示す概略図である。
【図6】本発明の画像形成装置に使用されるプラテンの概略を示す平面図である。
【図7】1ヘッド内の2列の使用するインク配置の例を説明するための図である。
【図8】本発明の画像形成装置の制御部の概略構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の予備吐出受装置を含んだ搬送装置の実施形態例を示す概略図である。
【図10】本発明の予備吐出受装置の実施形態例を示す概略図である。
【図11】本発明の予備吐出受装置の他の実施形態例を示す概略図である。
【図12】本発明の予備吐出受装置の他の実施形態例を示す概略図である。
【図13】本発明の画像形成装置における予備吐出受装置による吸引遮蔽調整のフローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の画像形成装置について、ライン型画像形成装置を例にして、図面を参照しながら説明する。
図1はライン型インクジェット方式の画像形成装置の全体構成を示す概略側面図であり、図2はライン型インクジェット画像形成装置の全体構成を示す概略平面図である。
図1に示すように、本発明の画像形成装置は、記録媒体Pを積載し給紙する給紙トレイ2、印刷された記録媒体Pを排紙積載する排紙トレイ3、シート状の記録媒体Pを給紙トレイ2から排紙トレイ3まで搬送する搬送ユニット4などを備えた装置本体1を有している。装置本体1の上部には、各記録ヘッド51(51A〜51D)をモジュール化した記録ヘッドモジュール部50、サブタンク81、メインタンク91(91A〜91D)などが設けられた画像形成ユニット5を有している。
【0013】
上記した給紙トレイ2により記録媒体である用紙Pを積載して給紙を行い、排紙トレイ3により、印刷された用紙Pを積載しておく。上記した画像形成ユニット5は、搬送ユニット4によって搬送される用紙Pに液滴を吐出し印字する各記録ヘッド51を有する記録ヘッドモジュール部50を含んで構成されている。その他、本発明の画像形成装置には、印刷終了後又は所要のタイミングで画像形成ユニット5の各記録ヘッド51の維持回復を行う維持回復機構であるヘッドクリーニング装置6と、ヘッドクリーニング装置6を開閉するための搬送ガイド部7と、画像形成ユニット5の記録ヘッドモジュール部50にインクを供給するインクタンクユニット8と、これにインクを供給するメインタンクユニット9を有する。なお搬送ユニット4については後述する。
【0014】
本発明の画像形成装置では、記録ヘッドモジュール部50には、互いに記録媒体Pの移動方向である搬送方向に並びながら記録媒体にイエローY、マゼンタM、シアンC、黒Kのインクを吐出するインク吐出手段である液吐出ヘッドモジュール51A〜51D(これらは上記Y、M、C、Kの順番であってよい)を有している。各液吐出ヘッドモジュール51A〜51Dは、記録媒体Pの幅方向の全幅に沿ってノズルが配列されたラインヘッドとなっている。記録ヘッドモジュール部50の構成は、これに限られない。例えば、同色のインクを吐出する複数の液吐出ヘッドを記録媒体Pの幅方向に一列に配置したり、千鳥状に配列してもよい。記録ヘッドモジュール部50の上部には、各色の液吐出ヘッドにそれぞれインク液を供給するための分岐管が各吐出ヘッドモジュール51A〜51Dに対応して設けられている。
【0015】
画像形成装置本体1は、図示しない前後側板及びステーなどを有して構成され、給紙トレイ2上に積載されている用紙Pは、分離ローラ21及び給紙ローラ22によって1枚ずつ搬送ユニット4に給紙される。
搬送ユニット4は、搬送駆動ローラ41A、搬送従動ローラ41B、これらのローラ41A、41B間に掛け回された無端状の搬送ベルト46、および搬送ベルト46の裏面側に配設されたプラテン部材(ベルト案内部材)45を備えている。この搬送ベルト46は図5に示すように、複数の吸引孔46aが搬送方向に対して直交する方向に、ほぼ等間隔に並んだ列を形成し、この列はほぼ平行に並び、隣接する列同士の孔の配置が互い違いに千鳥足状に形成された無端状のベルトである。図1に示すように搬送ベルト46の下部には用紙Pを吸引する吸引ファン44が配置されている。また、搬送駆動ローラ41A、搬送従動ローラ41Bの上部には、それぞれ搬送ガイドローラ42A、42Bが図示しないガイドに保持されて、自重によって搬送ベルト46に当接している。
【0016】
本発明で用いられるプラテン部材45の例を図6に示す。図6に示すプラテン45では、空吐出用の貫通孔(予備吐出受用孔)45aを設ける領域Asとして有している。プラテン部材45は、ノズル面とベルトとの間のギャップを均一(平面化)にするための支持部材(剛体)としての役割がある。
【0017】
搬送ベルト46は、搬送駆動ローラ41Aが図示しないモータにより回転されることで周回移動し、用紙Pは搬送ベルト46上に吸引ファン44によって発生される負圧による吸引力により吸い付けられ、搬送ベルト46の周回移動によって搬送される。なお、搬送従動ローラ41B、搬送ガイドローラ42A、42Bは搬送ベルト46に従動して回転する。
【0018】
搬送ユニット4の上部には用紙Pに印字する液滴を吐出する複数のヘッドモジュール51で構成される画像形成ユニット5が、矢印で示すA方向(またはその逆方向)に移動可能に配置されている。この画像形成ユニット5は、維持回復動作時(クリーニング時)にはクリーニング装置6上方まで移動してクリーニング等が行われ、画像形成時には図1の位置に戻され画像形成が可能となっている。
【0019】
画像形成ユニット5は、記録ヘッドユニット50を備えている。記録ヘッドユニット50は図2に示すように吐出ヘッドモジュール51A〜51Dを有して構成されている。各吐出ヘッドモジュール51は図3及び図4に示すように、液滴を吐出する複数のノズル102をプレート104に2列102−1〜102−2配列したヘッドモジュール51があり、このヘッドモジュール51は図3に示すようにインクを分配供給する分岐部材54とともに一体化されている。図1〜2に示すように、各吐出ヘッドモジュール51A〜51Dが、用紙搬送方向に沿って並べられ、ラインベース部材52に取付けられて配置されている。
【0020】
ここでは、図4に示すように、吐出ヘッドモジュール51の列の1つ51C、51Dの102−1でイエローYの液滴を、他方の列102−2でマゼンタMの液滴を吐出し、また、吐出ヘッドモジュール51A、51Bの一方の列102−1または102−2でシアンCの液滴を、他方の列でブラック(K)の液滴を吐出する。つまり、図7に示すように、1ヘッド内の2列102−1〜102−2で別々のインク色で構成される例を挙げることができる。この画像形成ユニット5は、同じ色の液滴を吐出する2つの吐出ヘッドモジュール51が用紙搬送方向に並べて配置され、2つの吐出ヘッドモジュール51(51A〜51Dの連続する2列)で用紙幅相当の1列分のノズル列が構成されている構成としている。ただし、本発明では、図7に示す例に限定されるものではない。たとえば同一インク色を同じヘッドの2列にしてもよい。なお図7において、図中横方向に示すヘッドの行(51A〜51Dのそれぞれ)の数を3として図示しているが、これは例示のためであり、たとえば図2又は図6に示すようにこの数を5としたり他の数とすることは、言うまでもない。
【0021】
この画像形成ユニット5の上流側にはインクタンクユニット8のサブタンク81が配置され(図示する都合上、インクタンク1つのみに符号81を付した)、供給チューブ82を介してサブタンク81からインクが各吐出ヘッドモジュール51(51A〜51D)の分岐部材54に供給され、インクタンク81と吐出ヘッドモジュール51との水頭差により吐出ヘッドモジュール51の各ヘッド101に対する負圧が形成される。このインクタンクユニット8は画像形成ユニット5とともに矢示A方向に移動可能に配置されている。なお、インクタンク81から吐出ヘッドモジュール51に対する供給チューブ82は分かり易くするため吐出ヘッドモジュール51の上方から接続した状態の例を図示しているが、吐出ヘッドモジュール51の長手方向である用紙搬送方向と直交する方向の端部に接続されている。
【0022】
さらに、インクタンク81の上流側にはインク収容手段であるメインタンクユニット9が配置され、メインタンク(たとえばインクカートリッジ)91から供給チューブ92を介してインクがサブタンク81に供給される。
【0023】
搬送ユニット4の下流側には用紙Pを排紙トレイ3に排紙する搬送ガイド部7が設けられている。搬送ガイド部7にて案内されて搬送される記録媒体である用紙Pは排紙トレイ3に排紙される。排紙トレイ3は、図2に示すように、記録媒体Pの幅方向を規制する対のサイドフェンス31と用紙Pの先端を規制するエンドフェンス32を備えている。
【0024】
図2に示すように、維持回復機構(ヘッドクリーニング装置)6は、画像形成ユニット5の記録ヘッドユニット50を構成する各吐出ヘッドモジュール51に対応して、4列分のクリーニング手段61A〜61Dが配置され、1つのクリーニング手段61は、吐出ヘッドモジュール51の各ヘッド101(図3参照)に対応してノズル面をキャッピングするキャップ部材62及びノズル面を払拭するワイピング部材(ワイパ部材)64などで構成されている。なお、各クリーニング手段61のキャップ部材62は、各列毎に独立して上下動させることができる構成としている。さらに、クリーニング手段61の下方には、図1に示すように、キャップ部材62でヘッド101のノズル面をキャップした状態でノズルからインクを吸引するための吸引手段である吸引ポンプ63A〜63Dが配置されている。
【0025】
また、この画像形成装置においては、印刷終了後、液滴を吐出する吐出ヘッドモジュール51の各ヘッドのノズル面を、クリーニング手段61でキャップした状態でノズルからインクを吸引する場合、あるいは、吐出ヘッドモジュール51の各ヘッド101のノズル面に付着したインクをワイピング部材64で清掃する場合は、図1に示すように、印刷停止後、搬送ユニット4全体が矢印B方向に上下動し、画像形成ユニット5との間の空間を画像形成時よりも大きくすることで、画像形成ユニット5の移動スペースを確保するようにしている。このとき、ヘッドクリーニング装置6上部に配置されている搬送ガイド部7の搬送ガイド板71も支点72にて矢印C方向上方に回動され、ヘッドクリーニング装置6の上方が開放される。
【0026】
そして、搬送ユニット4と搬送ガイド部7がそれぞれ解放(解除)された後に、画像形成ユニット5が用紙通紙方向(図1に示す矢印Aの方向)に移動し、ヘッドクリーニング装置6上方で停止され、クリーニング手段61が上昇して各吐出ヘッドモジュール51のクリーニング動作(維持回復動作)に移行する。
【0027】
(印刷動作)
次に本発明の画像形成装置の印刷動作について、図8を参照しながら説明する。
本発明の画像形成装置の印刷動作に関して、CPU501は、ホストI/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505によりデータの並び替え処理等(場合によっては、画像処理の一部の処理)を行ってヘッド駆動制御部508に画像データを転送する。なお、画像出力するための印刷データのビットマップデータ(印刷ラスタデータ)への変換は、ホスト側のプリンタドライバで画像データをビットマップデータに展開し、印刷データのビットマップデータ(印刷ラスタデータ)を作成した上で、該印刷ラスタデータをこの装置に転送するようにしている。
【0028】
ヘッド駆動制御部508は、印刷ラスタデータを受け取ると、このドットパターンデータ(印刷ラスタデータ)を、クロック信号に同期して、ヘッドドライバ509にシリアルデータで送出し、また所定のタイミングでラッチ信号をヘッドドライバ509に送出する。
【0029】
このヘッド駆動制御部508は、駆動波形(駆動信号)のパターンデータを格納したROM(ROM502で構成することもできる。)と、このROMから読出される駆動波形のデータをD/A変換するD/A変換器を含む波形生成回路及びアンプ等で構成される図示しない駆動波形発生回路を含む。また、ヘッドドライバ509は、ヘッド駆動制御部508からのクロック信号及び画像データであるシリアルデータを入力するシフトレジスタと、シフトレジスタのレジスト値をヘッド駆動制御部508からのラッチ信号でラッチするラッチ回路と、ラッチ回路の出力値をレベル変化するレベル変換回路(レベルシフタ)と、このレベルシフタでオン/オフが制御されるアナログスイッチアレイ(スイッチ手段)等を含む。ヘッドドライバ509は、アナログスイッチアレイのオン/オフを制御することで駆動波形に含まれる所要の駆動波形を選択的に各吐出ヘッドモジュール51(51A〜51D)のアクチュエータ手段に個別に印加して吐出ヘッドモジュール51(51A〜51Dの少なくとも1つ)を駆動し、画像データを印刷してドットパターンを形成する。
【0030】
ホストからの印刷命令により、搬送ベルト46、吸引ファン44が動作し、給紙トレイ2より用紙Pが搬送され、用紙センサ521で用紙を検知するとCPU501で処理が行われ、吸引遮蔽ベルト430への動作命令及び吐出ヘッドモジュール51への動作命令が実施される。
【0031】
以下に本発明の予備吐出受装置を有する画像形成装置について、説明する。
(実施形態1)
図9は、本発明の予備吐出受装置を有する画像形成装置の実施形態1を説明するための図であり、吸引遮蔽部を有する予備吐出受装置400の概略図である。
本発明では、記録紙を搬送するための搬送機構は、搬送駆動ローラ41Aと搬送従動ローラ41Bと、これらのローラ41A、41B間に掛け回された無端状の搬送手段としての搬送ベルト46とを有して構成される。この搬送機構には、吸引遮蔽駆動ローラ410Aと吸引遮蔽従動ローラ410B間に掛け回された無端状の吸引遮蔽ベルト430と、その吸引遮蔽ユニット(予備吐出受装置)400内に空吐出受け434を備えている。その一例として、図10に詳細図を示す。予備吐出受装置400に対向する位置に、画像形成ユニット5が配置される。本実施形態1の例では、吸引遮蔽ベルト430の一部は吸引エアーを遮断する為にベルトに孔が設けられていない吸引遮蔽部432が具備されている。他に吸引遮蔽部の位置が検出可能なマークと、そのマークにより吸引遮蔽部の位置を検知するセンサなどを予備吐出受装置400は有することができる。なお予備吐出受装置400は、図9に示すように搬送ユニット4に内包される大きさとなっており、搬送ユニット4と独立して動作可能となっている。
【0032】
この構成によって、用紙P先端ないしは用紙P後端に予備吐出受装置400の吸引遮蔽部432によって吸引を遮断することが可能となる。また本発明では、用紙P及び吸引遮蔽部432以外の所で空吐出(予備吐出)が出来る。本発明の画像形成装置において、図10に示す例では、予備吐出受装置400として、吸引遮蔽部432が用紙搬送方向に直交する方向で吸引遮蔽駆動ローラ410Aのローラ軸方向に設けられる。なお印写用の用紙Pに印写される場合の動作については後述する。前記した吸引遮蔽部432の用紙搬送方向への長さ(幅)は、吸引による気流の影響によって吐出インク滴が、その目標とする位置(目標の着弾位置)からずれない距離としている。この長さ(幅)は、インク滴の大きさ、気流の速度、温度、搬送ベルトの速度などによって変化し、また記録媒体Pの先端または後端などの余白など、その記録媒体Pである用紙の書式設定情報も勘案し、適宜決まるものである。たとえば吸引遮蔽部432の長さ(幅)を5mm以上とすることができる。
【0033】
(実施形態1の変形例1)
図11は、本発明の画像形成装置に用いられる吸引遮蔽部432を有する予備吐出受装置(予備吐出受部)400のその他の構成例を説明するための概略図である。
吸引遮蔽部432を複数有する予備吐出受装置400を示す。なお吸引遮蔽部432は実施形態1と同様に、用紙搬送方向に直交する方向で吸引遮蔽駆動ローラ410Aのローラ軸方向に設けられる。また、その長さ(幅)も前記同様である。またその他、実施形態1と同様である。
このように本実施形態では、吸引遮蔽部432を複数有する構成とした事で生産性の向上がはかれる。本実施形態の場合、吸引遮蔽部432を設けていない空きの領域が、空吐出用の貫通孔45aが設けられる領域As以上の広さとすることができる。
【0034】
(実施形態1の変形例2)
図12は、本発明の吸引遮蔽部432のその他の例を説明する概略図である。
本実施形態では、予備吐出受装置(予備吐出受部)400として、吸引遮蔽ベルト430の一部に吸引遮蔽部432の位置を検知する、位置検知センサー431を有している。これによって用紙検知センサー521により用紙端を検知した後、用紙端と同期させ、用紙端から所定の位置に吸引遮蔽部432が来るように作動させる。これにより、記録媒体Pの先端部あるいは後端部において吸引される負圧によって、記録時のインクジェットの液滴の飛行の乱れを防止することによって、記録媒体Pへの記録不良を防止できる。本発明ではまた、記録媒体Pのサイズが混在するようなサイズの異なる記録媒体Pへの画像形成の場合でも、記録不良を防止することができる。
【0035】
(動作例)
図13は、本発明の画像形成装置の印刷時における予備吐出受装置(予備吐出受部)400による吸引遮蔽調整のフローを示すフローチャートである。
印刷動作時において、まず印刷開始命令が来ると(ステップS−0)、CPU501において画像データの解析を実施し、その際に用紙先端部の画像データの有無を行う(ステップS−1)。次に用紙後端部の画像データの有無をそれぞれ判別する(ステップS−2)。本動作例において用紙端から所定範囲、たとえば30mm以内での画像は吸引気流の影響を受けるとする。この場合、上記所定範囲(30mm)内の画像データの有無を判別することにしている。この条件は、搬送速度、液滴量、用紙サイズ等により変動するため、それぞれ条件の違いにより設定値を準備するかあるいはユーザーが任意に設定できるようにしてもよい。なお本装置内に学習機能を有するようにし、条件設定が初期の値と変わってきた場合には学習による値を加味して同期するタイミングを変えて、記録される画像が吸引気流の乱れを生じないようにすることができる。
【0036】
一例として用紙Pの先端部および後端部に、ともに画像データがある場合、用紙センサ521で搬送される用紙の先端及び後端を検知し、それぞれ用紙先端及び後端と同期させて、吸引遮蔽ベルト移動モータ制御部に信号を送り、吸引遮蔽ベルト430が、用紙先端及び後端を遮蔽するように同期させて稼動することができる(S−3)。ちなみに印刷動作時の吸引遮蔽ベルトの動作フローは、用紙先端部のみ(S−2/N→S−10→S−11)、用紙先端及び後端の両方(S−2/Y→S−3)、用紙後端のみ(S−1/N→S−6→S−7/Y→S−8)、動作しない(S−1/N→S−6→S−7/N→S−9)、の大きく分けて4通りある。その4通りの1つを行って印刷を実行し(S−4)、印刷を終了することにより、印刷時の予備吐出受装置(予備吐出受部)400の動作を終了する。また本発明では、印刷開始(S−0)でない場合には、予備吐出受装置400の吸引遮蔽部432がプラテン45上の空吐出孔45aを閉塞しないようにし、空吐出(予備吐出)を自在に行うようにしている。特に本発明では、空吐出を行う頻度が高い黒Kを記録ヘッド51Dに配することにより、吸引遮蔽部432による遮蔽の動作を少なくして動作に係る稼動を減少させることができ、さらなるエネルギーの減少を図ることもできる。
【0037】
本発明の画像形成装置では、予備吐出受装置(予備吐出受部)400の吸引遮蔽部432の後端が、記録媒体Pの先端と同じか重なる位置になるように吸引遮蔽部432を動作させることとしている。
また、本発明の画像形成装置では、記録媒体Pの先端または後端部に画像データが無い場合には、図13のフローチャートに示すように、予備吐出受装置(予備吐出受部)400の吸引遮蔽部432を動作しない。
また本発明の画像形成装置では、吸引遮蔽部432の幅よりも、記録媒体P間の間隔を広くすることが望ましい。
【符号の説明】
【0038】
1 装置本体、2 給紙トレイ、3 排紙トレイ、4 搬送ユニット、5 画像形成ユニット、6 ヘッドクリーニング装置、7 搬送ガイド部、8 インクタンクユニット、9 メインタンクユニット、41A 搬送駆動ローラ、41B 搬送従動ローラ、44 吸引ファン、45 プラテン、45a 空吐出孔(空吐出用の貫通孔)、46 搬送ベルト、50 吐出ヘッドモジュール部、51(51A〜51D) 吐出ヘッドモジュール、54 、61(61A〜61D) クリーニング手段、62 キャップ部材、 63A〜63D 吸引ポンプ、64 ワイピング部材、101 吐出ヘッドモジュール、102 吐出ヘッドモジュールのヘッド、102−1〜102−2 ヘッドの列、104 プレート、400 予備吐出受装置、410A 吸引遮蔽駆動ローラ、410B 吸引遮蔽従動ローラ、430 吸引遮蔽ベルト、431 位置検知センサ、 432 吸引遮蔽部、433 吸引遮蔽部位置マーク、434 空吐出受け、P 記録媒体(用紙)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0039】
【特許文献1】特開2007−31007号公報
【特許文献2】特開2006−62828号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を、複数の孔を有する無端状ベルトの前記孔から吸引して搬送する搬送装置に内包され、前記記録媒体の搬送方向と直交する方向に延伸された遮蔽部を有するベルトと該ベルトを懸架する少なくとも2本のローラとを有することを特徴とする予備吐出受装置。
【請求項2】
前記予備吐出受装置は、前記遮蔽部が複数設けられることを特徴とする請求項1に記載の予備吐出受装置。
【請求項3】
前記ベルトは前記少なくとも2本のローラの各両端部に懸架され、前記遮蔽部の位置を感知できるマークを前記ベルトの端部に設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の予備吐出受装置。
【請求項4】
前記予備吐出受装置は、前記少なくとも2本のローラの1つを稼動させて前記記録媒体の端部と同期させて移動させる手段を有して構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の予備吐出受装置。
【請求項5】
前記予備吐出受装置は、インクジェットヘッドからの吐出液を受けるものであって前記記録媒体の搬送区域外に前記インクジェットヘッドからの吐出液を受けるように、空吐出用の孔を閉塞しない位置に前記遮蔽部が待機することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の予備吐出受装置。
【請求項6】
記録媒体を、複数の孔を有する無端状ベルトの前記孔から吸引して搬送する搬送装置において、
請求項1〜5のいずれかに記載の予備吐出受装置を有することを特徴とする搬送装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の予備吐出受装置を有する搬送装置と、
記録媒体の搬送方向とほぼ直交する方向に複数配列された複数のノズルを有する液滴吐出ヘッドとを有し、
前記記録媒体の端を検知する第一のセンサと前記予備吐出受装置の吸引遮蔽部の位置を検知する第二のセンサを具備し、
前記第一と第二のセンサにより前記記録媒体の端部に同期して前記吸引遮蔽部を作動させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記吸引遮蔽部の後端が、前記記録媒体の先端と同じか重なる位置になるように前記吸引遮蔽部を動作させることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記記録媒体の先端または後端部に画像データが無い場合は、前記吸引遮蔽部を動作しないことを特徴とする請求項7または8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記吸引遮蔽部の幅よりも、前記記録媒体間の間隔を広くすることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−173313(P2011−173313A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38673(P2010−38673)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】