説明

予備成形物加熱装置

可塑性ボトル又は容器を製造するプロセスにおけるブロー成形段階の前に、予備成形物を精密及び強く局所的に加熱することが可能な予備成型品加熱装置。この装置は新規性のある構成をしており、したがって、非常に早い速度で加熱要素における計画の温度に到達するために、必要とされるエネルギーを著しく減少させるので、高い効率性を実現することが可能である。インダクタは直接的に予備成形物を加熱するのではなく、放射及び対流によってPETを順に加熱する特定の形状をした伝導性材料を用いて、電流の流れによって生み出された電磁流を集中させることで温度を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予備成形物加熱装置、特には、ブロー成形手段によってボトル及び容器の製造をするために予備成型品を誘導加熱するのに適している予備成形物加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロー成形技術によって可塑性材料よりなる中空体を製造する際に使用される予備成型品を加熱する装置には、様々なタイプのものがある。
【0003】
そのような装置の一例が、特許文献1に記載されている。この装置は、ブロー成形の間に様々な程度で膨張する予備成形物の壁部の諸部分間にある遷移領域に、専用加熱要素の手段を用いて、放射及び対流による付加的な熱をもたらすものであり、該遷移領域は特に、ほとんど又は全く膨張しない領域と、それに比べて遙かに膨張する他の領域との間の領域を指す。
【特許文献1】国際公開第92/15442号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、既存の装置においては、直接的な熱伝導によって加熱するために、装置全体の構成要素がかなりの温度に到達してしまう過加熱の問題が生じる。すなわち、電気抵抗の存在は、長期に渡って手間のかかるメンテナンスが必要となる、経年劣化の問題を必然的に有している。
【0005】
そういった装置設計によって決定される構成要素の温度プロフィールは、予備成形物を加熱する要素が計画の温度に到達することを可能とするように、パワーの高散逸性も有している。また、このことは、カスタマイズすることが難しい構造、その構造が有する大きな熱慣性による予備成形物加熱の遅さ、及び、従来の抵抗器によって達成され得る最大温度値の限界のために、熱流を集中させる際の不正確性を導いてしまう。
【0006】
したがって、上記欠点を克服することが可能な新しい予備成形物加熱装置が求められている。
【0007】
本発明の主となる目的は、可塑性ボトル又は容器を製造するプロセスにおけるブロー成形段階の前に予備成形物を局所的に精密かつ強く加熱することが可能な、予備成形物加熱装置を作ることである。
【0008】
さらなる目的は、新規性のある構成をした予備成形物加熱装置を提供することであり、それによって、加熱要素において計画の温度に到達するために必要とされるエネルギーが減少するために、ホットエア調節システムを備えた方法においてより良い効果を得ることが可能である。
【0009】
最後に、単純かつ簡易で置換可能な放射要素を備えた赤外線装置を提供することをさらなる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明は、可塑性中空体を製造するための予備成形物加熱装置を作ることによって上記目的を達成するのであり、該装置は、請求項1にしたがい、前記装置の中に適切に挿入されることが可能な少なくとも1つの予備成形物(10)に対して放射によって予め規定された熱量を伝達するために、電流を流したときに少なくとも1つの熱伝達手段(4)に電磁流を適切に引き起こすことが可能な少なくとも1つの誘導手段(2)を有する。
【0011】
有利なことに、この装置は、予め規定された許容範囲内で、通常はPETにおいて、その厚さに沿って及び加熱が及ぼされている箇所の長手方向に割り当てられる熱プロフィールを保証することができる。インダクタはその箇所を直接的に加熱することはない。というのも、予備成形物は非伝導性材料から構成されているので、PET予備成形物の領域を順に放射によって加熱する適切な部分を有する伝導性材料からなるリングによって、電磁流の手段を用いて、温度を得ることが可能だからである。
【0012】
有利なことに、流れ集中器は、加熱要素に有効な電磁流をより良く集中させるために設けられている。こうすることで、過加熱の問題を回避し、及び全システムの性能及び効果を著しく向上させることができ、本発明の装置の構成要素の熱プロフィールがさらに改善する。
【0013】
特定の適用例においては、流れ集中器の使用を避けることも可能な場合があり、そうすることで、装置の構造を単純化することができる。
【0014】
従属請求項には、本発明の好ましい実施形態が記されている。
【0015】
本発明のさらなる特徴及び利点は、好ましいが排他的ではない、予備成形物加熱装置の実施形態において詳細に記載されており、該装置は、非限定的な例で該装置が図示されている付属の図面の助けを借りることでより明らかなものとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1から4には、予備成形物を加熱する装置の様々な実施形態が図示されており、該装置は:
−インダクタ2、
−磁性誘電体材料3からなる選択的流れ集中器、
−加熱リング4、
−前記リングの少なくとも1つの支持部5、
からなっている。
【0017】
この装置はさらに、一般的にはスチール製の支持基部1と、好ましくはアルミニウム製である少なくとも1つの外側中央支持部6と、を有している。前記基部1と前記少なくとも1つの中央支持部6は、例えばスクリュー、ボルト又は他の同様の要素といった留め手段11によって結合されている。
【0018】
好ましくは銅製であるインダクタ2は、外側中央支持部6に沿って、必ずしもというわけではないが好ましくは環状という形態で装置の内部に存在している。インダクタ内における電流の流れは磁場を生みだし、またその流れは流れ集中器3の手段によって加熱リング4に運ばれる。前記加熱リングは、高温に対して耐性を有する高電気抵抗合金製、例えばNi−Cr−Fe合金製であり、そのようなリングは予め決められた温度、好ましくは800℃以上、に到達することが可能である。そのような温度のリング4は、可塑性ボトル及び容器のブロー製造において使用される予備成形物を適切にプレヒートすることが可能なように予め規定された時間だけ、該予備成形物10に放射によって熱を適切に伝達することができる。事実、装置の覆いには、加熱リング4によって囲まれている領域に、予備成形物10を導入するのに適した寸法の穴が設けられている。
【0019】
有利なことに、インダクタ2は水流又は該インダクタの内部を流れる他の冷却流体手段によって冷却される。
【0020】
図1に示されている実施形態において、多角形状断面を有するリング4は、単純に構造的観点から、流れ集中器3及びインダクタ2を一緒にかたく固定する固定システムによって保持されており、そして該リングは、個別に分離された金属タブ7が設けられた、リングの支持部5を有している。これによって、特に対流伝導現象が考慮される場合、加熱リング4と残りの装置構成要素との間の良好な断熱が可能となる。
【0021】
図2には、リング4に設けられたハウジングに固定された支持部5の先端部8を有する、固定システムを備えたさらに単純な実施形態が示されている。図1及び2に示されている装置において、集中器3は、装置の内部にインダクタ2を保持することが可能な形態をしている。インダクタ−集中器ブロックとリング4との間には、ギャップ9がある。
【0022】
図3に示されている1つの有利な実施形態では、本発明のより頑丈な構成、及び加熱リング4の他の放射構成要素のより大きな防護がなされている。この実施形態において、リングの支持部5は、実際に、より厚いものであり、相補的な形状をした1つ以上のプレート5’から構成されている。ここで、前記プレートは、加熱リングの作業温度に耐えることができるように耐熱性材料、例えば酸化物、セラミック又は繊維強化耐熱性セメントから構成されている。リングの温度は、その熱伝導性に強く影響を受けるので、好ましくは、熱伝導性は1W/mK以下がよい。
【0023】
この場合、インダクタ−集中器ブロックとリングは、前記耐熱性プレートによって互いに結合されているのであるが、それらが直接的に接触することは防がれている。
【0024】
図4に示されている、図3の実施形態の1つの有利な別様態は、リング4と耐熱性プレート5’の間にギャップ9’を有している。このギャップ9’があることによって、装置構成要素が過加熱すること、したがってエネルギーが散逸してしまうことを防ぐことが可能である。
【0025】
放射を集中させるために、有利なことに、調節可能スクリーン13が、装置の中に挿入された予備成型物10と装置の内部構成要素の間に配置されており、それによって、例えば首部といった予備成形物の予め決められた領域を加熱する際に、そこに熱をより良く集中することができる。
【0026】
本発明の加熱装置の性能をより向上させるために、特定の実施形態において、異なる材料から作られた構成要素を用いてテストを行った。
【0027】
その結果、磁性誘電体材料からなる流れ集中器3が、本発明の装置として選択された。
【0028】
実際、そのような材料を用いると、それが他の材料、例えばガラス接着フェライト(glass−bonded ferrite)からなる集中器3であったときの40%以下の電流を提供する電力供給器を使用しても、リング4において予め設定された温度を得ることが可能である。ガラス接着フェライトはコストが安い材料ではあるが、このような場合にそれを用いると、電力供給器をより多く消費することになり、かえってよけいにコストがかかってしまう。
【0029】
10kHzの周波数を発生させる周波数発生器を有する、磁性誘電体材料とガラス接着フェライト材料のそれぞれを使用している集中器3を備えた2つの装置を用いてテストを行ったところ、以下のような結果を得ることができた。そのテストにおいては、一例として、リング4で非過渡状態において900℃に到達するために使用される、全有効電力かつ消費電力、電力効率及び電流について調べた。
【0030】
【表1】

【0031】
以上より、磁性誘電体材料からなる流れ集中器は著しく装置の効率性を改善することがわかった。したがって、使用される全電力が低いので、より小さな寸法の電力供給器及びより低電力の冷却システムを使用することができる。
【0032】
電力供給器の端部における電圧の値、及び電圧と電力の間の位相整合、したがって問題となっている無効電力を分析することで、磁性誘電体材料からなる集中器3、又は中心部分では、ガラス接着フェライト材料のものと比較して、消耗する無効電力の量がかなり小さいことがわかった。
【0033】
周波数解析をする手段によって調べた結果、磁性誘電体材料からなる集中器3は、変動周波数においてさえ高い効果を有することもわかった。
【0034】
サーモグラフィー分析では、使用する材料によって、異なる構成要素からなる装置を一時的に作動する間に到達する温度を完全に耐えることが可能であることがわかった。
【0035】
有利なことに、専用プラントで予備成形物からボトル及び容器を製造するために、加熱される予備成形物を保持するのに適した本発明にしたがう一連の加熱装置を材料の配列に合わせて又は一列に保持することが可能なように、プレート又は多孔のモジュールがブロー成形機から上流の方に配置されている。
【0036】
本発明にしたがう装置の線形配列をなしている多孔モジュールの一例が、図6に示されている。
【0037】
例えば、同様のタイプの装置を20個直列に配置することで、ちょうど20kWの電力、したがって1つの孔当たり1kWの電力を生み出す発電器を使用することが可能である。
【0038】
本発明の装置は、飲料のための標準タイプのボトルを製造する際に使用される予備成形物を加熱するためのものであり、既存のホットエアジェット加熱装置と比べて約20%の電力の節約が可能であり、すなわち1つの孔当たり約0.8kWという電力消費量となっている。具体的な加熱力は既存の装置で得られるものより高く、少なくとも15W/cmに達する。
【0039】
ホットエアジェット装置に関する、本発明の装置のさらなる利点は以下のことである:
−ホットエアの流れではなく装置の寸法のみに依存しているので、予備成形物の領域をより精密に加熱することができ、したがってより加熱プロセスを安定的に行うことができること;
−温度パラメータのみを考慮して、実行されるプロセスをコントロールできること;
−予備成型品の周囲を囲む熱源が存在しているので、予備成形物を部分的に回転させる必要がないこと。
【0040】
機械的観点からして、本発明の装置は、少ない機械的要素からなり、そしてまた、様々な変形態において記載されている構成を有することで、構成要素の熱的膨張がないという高い安定性を備えていることにより、大きな信頼性を有している。また、その装置は、正しく予備成形物を加熱するために予備成形物を回転させる必要がないので、その構成が複雑ではない。さらに、電気抵抗が存在しないので、正しい装置機能のために必要とされるメンテナンスを減少させることができる。
【0041】
最後になるが、そのような装置を用いることで、様々な厚さを有し、例えば長い主部を有する容器の場合のような低軸伸張比である様々な形状の予備成形物、例えば楕円形の予備成形物を加熱することが可能である。
【0042】
これまでに記載された詳しい実施形態は本出願の範囲を制限するものではなく、請求項に規定されている本発明の変形態を全て包含する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明にしたがう加熱装置の第1の実施形態の断面図である。
【図2】構成要素に関係する変形態を有する、図1に示されている加熱装置の断面図である。
【図3】本発明の装置の第2の実施形態の断面図である。
【図4】構成要素に関係する変形態を備えた、図3に示されている装置の断面図である。
【図5a】本発明の装置の断面図の不等角投影図である。
【図5b】本発明の装置の断面図の不等角投影図である。
【図6】装置にしたがって線形に配列された幾つかの装置の不等角投影図である。
【図7】インダクタに電力を繋げるための異なる配置を有する、インダクタ2’の異なる実施形態である。
【図7a】インダクタに電力を繋げるための異なる配置を有する、インダクタ2’の異なる実施形態である。
【符号の説明】
【0044】
1 支持基部
2、2’ インダクタ
3 磁性誘電体材料
4 加熱リング
5 支持部
5’ プレート
6 外側中央支持部
7 金属タブ
8 先端部
9、9’ ギャップ
11 留め手段
10 予備成形物
13 調節可能スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可塑性物体を製造するために予備成形物を加熱するための加熱装置であって、
前記装置の中に適切に挿入されることが可能な少なくとも1つの予備成形物(10)に対して放射によって予め規定された熱量を伝達するために、電流を流したときに少なくとも1つの熱伝達手段(4)に電磁流を適切に引き起こすことが可能な少なくとも1つの誘導手段(2)を有することを特徴とする予備成形物を加熱するための加熱装置。
【請求項2】
前記電磁流の集中手段(3)は、前記少なくとも1つの伝達手段(4)に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記集中手段(3)は、前記少なくとも1つの誘導手段(2)を保持する形状をなしていることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの伝達手段は、多角形断面を有するリング(4)によって構成されていることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
支持手段(5)は、前記リング(4)のために設けられていることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記支持手段(5)は、金属タブ(7)を有することを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記支持手段(5)は、リング(4)に設けられた対応するハウジングに配列された先端部(8)を有することを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記支持手段(5)は、低熱伝導断熱材料からなる少なくとも1つのプレート(5’)を有することを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項9】
2つ以上のプレート(5’)は、互いに相補的な形状で設けられていることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
ギャップ(9)は、前記少なくとも1つの伝達手段(4)と前記集中手段(3)の間に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項11】
ギャップ(9)は、前記少なくとも1つの伝達手段(4)と前記少なくとも1つのプレート(5’)の間に設けられていることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項12】
留め手段(11)によって相互に結合された、基部(1)と装置中央支持部(6)とを有することを特徴とする前述の請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
スクリーン(13)を有することを特徴とする前述の請求項のいずれかに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図7a】
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【公表番号】特表2009−507688(P2009−507688A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530503(P2008−530503)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【国際出願番号】PCT/EP2006/066268
【国際公開番号】WO2007/031509
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(503308405)エス.アイ.ピー.エイ.ソシエタ’インダストリアリザッジオーネ プロゲッタジオーネ エ オートマジオーネ ソシエタ ペル アチオニ (15)
【Fターム(参考)】