説明

二つの要素を低温熱圧着により封止する方法

【課題】従来技術の封止方法の欠点が無い新規の封止方法を提供すること。
【解決手段】二つの要素(100、102)間の封止方法であって、前記二つの要素のうちの第一要素(100)の面に第一封止材料(104)を生成するステップと、前記二つの要素のうちの第二要素の一つの面に、前記第一封止材料とは異なる第二封止材料(108)を生成するステップと、前記二つの要素を、前記第一封止材料および第二封止材料の融解温度未満の温度Tcで前記封止材料が互いに押し付けられる熱圧着により、固定するステップと、を含み、前記第一封止材料および第二封止材料がそれぞれ、前記固定するステップ中に前記封止材料の相の成分の相互拡散により他方の封止材料の相と反応できる少なくとも一つの相を有し、それにより温度Tcよりも高い融解温度を有する少なくとも一つの別の固相を形成するように、前記第一封止材料および前記第二封止材料が選ばれる、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの要素のアセンブリの分野に関する。本発明は、具体的には、封止材料による二つの基板の間の封止に関する。本発明はまた、MEMSおよび/またはNEMSデバイスなどのマイクロシステムのパッケージング中、あるいは三次元相互接続部の製造中に気密封止を生成するのにもよく適している。
【背景技術】
【0002】
例えばMEMSなどのマイクロエレクトロニクスデバイスのパッケージング中に二つの基板の間で封止を生成するいくつかの技法が、デバイスを中に封入することが目的の、これら二つの基板の間に形成される空洞の気密性を確実なものにするために、存在する。
【0003】
例えば、二つの基板の直接接着により分子封止を生成することが可能である。その場合、接着されるべき表面は、平坦で極めて平滑でなければならず(例えば、AFM(原子間力顕微鏡)5×5μm2で粗度RMS<0.5nm)、したがって、特殊な表面前処理ステップを実施することが必要になる。このタイプの封止はまた、微粒子汚染の影響を非常に受けやすく、このことにより、液体化学洗浄に耐えない解放構造物を含むマイクロシステムのパッケージングにこの封止を実施することが困難になる。
【0004】
また、二つの基板の間に、陽極接合とも呼ばれる陽極封止を生成することも可能である。このタイプの封止は一般に、シリコン基板とガラス基板とのアセンブリに限定される。このタイプの封止では、基板間に数百ボルト近辺の電圧を印加することが必要であり、この電圧印加は、多くのマイクロエレクトロニクス応用例に適合しない。
【0005】
また、二つの基板間に共晶金属封止またはTLP(過渡液相)封止を生成することも可能である。共晶金属封止の場合、各基板はサブ層で覆われる。このサブ層は、金属ろう付けにより他方の基板のサブ層に固定するためのものである。ろう付けを形成する金属合金の融解温度よりも高い温度での熱処理により、この合金は液相に切り替わる(switch)。この液相は、それが最初に配置されたサブ層を十分に濡らさなければならない。TLP封止の場合、液相を経由する転移または切替わり中に(固体-液体拡散により)ろう付けの合金の組成物が徐々に現れ、この方法による温度は一定のままとすることができるが、材料の融解温度は漸進的に変化する。次に等温凝固がある。両方(共晶金属封止およびTLP封止)の場合で、ろう付けの液相を経由する必要な転移にはいくつかの欠点がある。すなわち転移が、
スタックの寸法安定性を、特に基板間の間隔を限定し、
封止の後で合金に穴を生じさせるおそれがあり(例えば、非常に急速な等温凝固の場合(収縮)、また止め具がある状態で)、
液相転移中に、空洞内の真空度を低下させるおそれがある不純物の脱着を促進し、
複数の金属接続部が隣接して配置されている場合、合金の流出(run-out)により短絡を生じさせるおそれがある。
【0006】
封止はまた、熱圧着により行うこともできる。この場合、接着されるべき表面は酸素が無く、かつ比較的平滑でなければならず、下にある材料は、選択された封止温度でかなりの延性がなければならない。このタイプの封止には、Au/Au、Cu/CuまたはAl/Alタイプのチップオンウェハであろうとウェハオンウェハであろうと、いくつかの制約がある。すなわち、
適用されるべき熱バランスが比較的高く、例えば、金では1分から90分の間の時間で260℃から450℃の間、または銅では30分の時間で300℃から400℃の間であり、あるいはアルミニウムでは450℃に等しく、
接着されるべき表面に加えられる実際の圧力が比較的高く、すなわち、0.4MPaから約100MPaの間であり、接着されるべき表面の粗度が大きいほど加えられるべき圧力が高くなることが分かっており、
封止されるべき表面の粗度は、例えばAFM 5×5μm2スキャンで測定して3nm未満と、比較的小さいことが必要であり、
封止されるべき表面を洗浄および/または脱酸素を行うために適切な表面前処理が行われなければならない。すなわち、金/金封止の場合では、表面は、有機汚染に対して紫外線-オゾンを90分間用いて洗浄することができ、または温度70℃のH2O:H2O2:NH4OH (60:12:1)を10分間用いて洗浄することができ、またはH2SO4:H2O2(1:1)を1分間用いて、洗浄することができ、銅/銅封止の場合では、表面はHClを用いて脱酸素することができ、アルミニウムの場合では、空気に起因する酸素とアルミニウムとの親和力が、封止前の脱酸素、ならびに非常に制限的な脱酸素-封止連鎖を課する。
【0007】
したがって、各封止方法には欠点があると理解することができる。
【0008】
特定のマイクロシステムでは、以下の理由から、金属封止により好適に行われるべき気密パッケージングが必要とされる。
より良好な理論上の気密性があり、
接着されるべき基板間の電気通信が可能であり、
陽極封止とは異なり、封入されるべきデバイスを劣化させることがある高電圧を印加する必要がなく、
陽極封止とは異なり、ガラスカバーが体系的に使用されず、
分子接着とは異なり、表面の粗度および微粒子汚染に対して強いストレスがない。
【0009】
しかしながら、金属封止の実施を回避することが、ろう付けの液相への切替わり(switch)により以下の理由で好ましい場合がある。
接着されるべき基板間の間隔を(この技術をさらに複雑にする止め具を追加しないで)制御することが難しく、
液相での転移が、金属または金属合金中に閉じ込められたガスの脱着を引き起こす性質があり(とりわけ堆積材料中にH2が特に見出される電着後に)、
合金の化学組成、および接着されるべき表面全体の封止温度を管理することが難しく(特に直径200mmのウェハで)、この場合、封止温度を高くすることが、合金が実際に液相に確実に切り替わるようにするために必要であるが、これは、アセンブルされるべきデバイスの熱バランスが制限されていて封止熱バランスに近い場合には望ましくなく、
チップの要素との短絡の可能性を防止することが難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の一つの目的は、従来技術の封止方法の欠点が無い新規の封止方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のために、本発明は、少なくとも二つの要素間の封止方法であって、
前記二つの要素のうちの第一の要素の少なくとも一つの面または表面に、少なくとも一つの第一の封止材料を生成するステップと、
前記二つの要素のうちの第二の要素の少なくとも一つの面に、第一の封止材料とは異なる少なくとも一つの第二の封止材料を生成するステップと、
前記二つの要素を、第一の封止材料および第二の封止材料の融解温度未満の温度Tcで、封止材料の一方が他方に押し付けられる熱圧着により、固定するステップと、
を少なくとも含み、
第一の封止材料および第二の封止材料がそれぞれ、前記固定するステップ中に、封止材料の相の成分の相互拡散により、他方の封止材料の相と反応できる少なくとも一つの相を有するように、第一の封止材料および第二の封止材料が選ばれる、方法を提案する。
【0012】
前記固定するステップ中、封止材料の相は一緒に反応し、温度Tcよりも融解温度が高い、少なくとも一つの別の固相を形成する。
【0013】
本発明による封止方法では、二つの封止材料の熱圧着をこれらの封止材料の融解温度よりも低い温度で行うことを提案し、こうすることで、従来技術の封止方法と比べて低い熱バランスが示される。したがって、第一の封止材料および/または第二の封止材料は、液相に切り替わらないが軟化し、すなわち比較的軟らかくなり、そのため、封止材料の表面の粗度について何も心配しないで、あるいは封止されるべき表面を洗浄または脱酸素することを必要としないで、比較的低い圧力で熱圧着を実施することが可能になる。ここで封止材料の粗度が重要でない場合、本発明による封止方法は、封止材料を平坦化するための追加ステップ実施を必要としない。
【0014】
この封止方法の実施中、例えば融解温度に近い封止温度で少なくとも一つの封止材料を軟化させると、二つの要素間に加えられる機械的圧力により、軟化した封止材料を変形させて、接着されるべき二つの表面の良好な接触を最終的に確実なものにすることが可能になり、二つの要素間の接着を可能にする二つの封止材料間の相互拡散による反応に有利になる。
【0015】
さらに、封止材料の表面に形成された薄い酸化物層を除去する化学的表面処理は、この潜在的な薄い酸化物層を残しておくことが可能であるので、不要である。このような、例えばスズベースの酸化物層は、例えば、Au5Sn相およびAuSn相により形成された第一の封止層の表面に現れる。この第一の封止材料の固定は金の層と適合し、それにより、酸化しない第二の封止材料が形成される。さらに、封止材料が液相に切り替わらない場合、熱圧着は流出を引き起こさず、そのため短絡のリスクが回避され、封止される要素間の間隔が制御される。最後に、そうして行われた封止により、封止された要素の非常に良好な機械的強度が得られる。
【0016】
この新規の封止方法で得られる気密性もまた非常に良好である。例えば、本発明による方法を用いて空洞カバーを形成する膜を有する基板が、別の基板に固定される場合に、制御された雰囲気中の膜のたわみ測定で、経時的な膜の変形は観察できなかった。この気密性は特に、この封止方法の実施後、形成された封止相に細孔がほとんどないことから、得られる。
【0017】
「相」という用語は、化学的および物理的に均質である、すなわち物理的および化学的パラメータが連続的に変化する、つまり直線的に変化する、合金または純粋な物体を意味する。
【0018】
封止材料は、金、スズ、銅、アルミニウムなどの純粋な金属材料とすることができる。一の代替的な実施形態において、封止材料は、例えばAuSn、Au5Sn、AuInなどの均質または非均質な金属合金とすることができる。「均質合金」とは、単一相を有する合金をいい、「非均質合金」とは、混合または多層の相(例えばAuSn+Au5Sn)をいう。封止材料のうちの一方が純粋な金属であり、他方の封止材料が合金であることもまた可能である。
【0019】
前記固定するステップ中、封止材料の各相が一緒に反応して少なくとも一つの別の相を形成することができる。この場合、この別の相は固相であり、温度Tcよりも高い融解温度を有する。このようにして、熱圧着中に、封止されるべき二つの要素の間に存在する相の何れも液相ではなく、そのため、封止されるべき表面を洗浄または脱酸素しなければならないことを省くことが可能になり、かつ相の流出と関連した短絡のリスクの存在を避けることが可能になる。
【0020】
温度Tcは、約300℃未満とすることができる。
【0021】
第一の封止材料および/または第二の封止材料は、共晶合金とすることができる。
【0022】
この場合、共晶合金である封止材料の生成は、共晶合金を形成するための材料の複数の連続堆積(several successive depositions of materials)と、前記共晶合金を形成するための材料の各融解温度未満での、共晶合金を形成するための前記材料の少なくとも一つの熱処理(at least one thermal treatment)と、を少なくとも実施して、前記材料を均質化することにより、行うことができる。
【0023】
第一の封止材料は金とスズベースの合金とすることができ、第二の封止材料は金である場合がある。このような封止材料の選択は、以下の理由で興味深い。
封止熱バランスは比較的低く、例えば約270℃で、約20分間である。
接着されるべき表面に加えられる実圧力は比較的低く、例えば約5MPaに等しい。
封止されるべき表面のいかなる粗度に関しても、考慮に入れる必要がある特別な注意が不要である。
封止されるべき表面を脱酸素または洗浄する必要がない。
【0024】
固定ステップは、約200℃または230℃よりも高い温度で実施でき、かつ/あるいは、約106Paよりも高い圧力で、(効果的に接着される表面で得られる圧力に相当)第一の封止材料を第二の封止材料に押し付ける圧着を含むことができる。この温度は、各封止材料の成分の相互拡散を促進するために、使用される技術および応用例に適合しながらできるだけ高くなるように選ぶことができ、それにより、各封止材料または封止材料の1つが急速に展性(malleable)になる場合、封止継続時間が最小限になる。
【0025】
生成される第一の封止材料および/または第二の封止材料の厚さは、約100nmから数十マイクロメートルの間、例えば約100nmから50μmの間とすることができる。考慮すべきバルク制約条件に応じて、より大きい厚さを検討することができる。
【0026】
第一の封止材料および/または第二の封止材料の生成中、第一の封止材料および/または第二の封止材料の相とは異なる一つの層または複数の相を、第一の要素および/また第二の要素の面に形成することができ、次に、第一の封止材料および/または第二の封止材料は、前記相の上に配置される。この場合では、封止材料が金およびAuSnであると、特に有利になる。したがって、AuSnは、経時的な合金の発生(周囲温度でのAu/Sn相互拡散)を回避し、封止を可能にする熱力学バランスに近い相を形成し、かつスズの酸化を回避するために、熱処理(TTH)により安定化される。さらに、こうした中間相はまた、封止前の各ステップを実施中の温度サイクル時に引き起こされる変形を吸収する役割を果たすこともできる。
【0027】
第一の封止材料は、第二の封止材料の硬度とは異なる硬度を有することができる。二つの封止材料の間の硬度の違いにより、熱圧着時に、最も硬くない封止材料の変形を生じさせることが可能になり、それにより、最も硬くない封止材料を最も硬い封止材料の形状に合わせることができる。
【0028】
第一の封止材料および/または第二の封止材料は、約400℃未満の融解温度を有することができる。
【0029】
固定ステップは真空中で実施することができ、それにより、封止方法を通じて、ガスを例えば封止材料中に閉じ込めることを回避することが可能になる。
【0030】
各要素は、基板または支持体を有することができる。本発明による方法は特に、金属接続部によりアセンブルされる必要があるすべてのタイプの基板に適用可能であり、この金属接続部は、MEMSパッケージングの特定の場合、空洞を画定することができる(複数の電子チップが作製されるウェハの規模、または一つの電子チップの規模で)。これは、1つまたは複数の微小構成要素が封入される場合であり、二つの基板の一方が、封止材料の1つを受け取るための面に微小構成要素を含み、二つの基板の他方が、微小構成要素のカバーとしての役割を果たす。
【0031】
封止材料は、要素上に、層状または紐状に生成することができ、あるいは任意のパターンを使用して作製することができる。紐状の封止材料の生成は特に、微小構成要素の封入時に用いることができ、封止材料の紐(cords)は、一つの封入空洞または複数の封入空洞の周辺部に作製される。
【0032】
本発明は、純粋に情報として非限定的に提示される諸実施形態についての説明を、添付の図面を参照して読むことによって、よりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1A】特定の一実施形態による、本発明の主題である封止方法の一ステップを示す図である。
【図1B】特定の一実施形態による、本発明の主題である封止方法の一ステップを示す図である。
【図1C】特定の一実施形態による、本発明の主題である封止方法の一ステップを示す図である。
【図2A】別の特定の実施形態による、本発明の主題である封止方法の一ステップを示す図である。
【図2B】別の特定の実施形態による、本発明の主題である封止方法の一ステップを示す図である。
【図2C】別の特定の実施形態による、本発明の主題である封止方法の一ステップを示す図である。
【図2D】別の特定の実施形態による、本発明の主題である封止方法の一ステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下で説明する別々の図における同一、類似、または等価な部分には、一つの図から別の図への移行を容易にするために、同じ参照数字が付いている。
【0035】
各図に示された別々の部分は、図をより見やすくするために、必ずしも一定の尺度を用いて示されていない。
【0036】
別々の実現可能なもの(代替形態および実施形態)は、相互に排他的ではないと理解されなければならず、また互いに組み合わせることができる。
【0037】
まず、図1Aから図1Cを参照すると、各図は、特定の一実施形態による二つの基板100および基板102を封止する方法の各ステップを示す。
【0038】
図1Aに示されるように、第一の封止材料の層104が、第一の基板100の面に作られる。第一の基板100に直接押し付けた層104を作ることが可能であるが、図1Aに示されるように、層104の生成が、第一の基板100上で1つまたは複数の他の相106を形成することになる可能性もまたある。
【0039】
第二の封止材料の層108が、第二の基板102の面に作られる。この第二の封止材料は、第一の封止材料とは異なる性質である。これら二つの封止材料は、これらの材料の相の各成分が一緒に反応して少なくとも一つの別の相を形成できるように選ばれる。
【0040】
図1Bに示されるように、次に層104は、層108に接触して押し付けられる。このアセンブリは、層104および層108を形成する封止材料の融解温度未満、例えば約300℃未満の温度Tcで行われる。こうして特定の熱圧着が行われ、この間に層104および層108の封止材料の成分の相互拡散が起こる。この相互拡散により1つまたは複数の別の相110が形成され、それにより基板100と基板102とが一緒に封止される(図1C)。封止材料の層104および層108の初期厚さに依存して相110は、二つの層104および層108のすべての成分により、あるいは層104または層108の一方のすべての成分と、他方の層108または層104それぞれの成分の一部とにより、あるいは二つの層104, 108の各成分の一部により、形成することができる。
【0041】
熱圧着が行われる温度Tcは、層104を「軟化する」、すなわちこの層104の硬度を低減するために、第一の封止材料の融解温度(層104の融解温度)に近くなるように選ばれる。したがって、封止中に基板100と基板102との間に加えられる機械的圧力により層104がわずかに変形して、基板100と基板102との間の接着に関与する第一の封止材料と第二の封止材料の成分間の反応を促進しながら、接着されるべき二つの表面間の密接な接触を最終的に確実なものにすることができる。さらに、この軟化により、かなり粗度を有する表面を封止することが、心配する必要なしに、すなわち、例えばこれらの粗度を取り除くための、標準的な熱圧着が行われる場合には実施しない平坦化を実施する必要なしに、可能になる。
【0042】
有利なことに、第一の封止材料および第二の封止材料は、それらが異なる硬度を有するように選ぶことが可能であり、これにより、最も硬くない相を含む封止材料を、他方の封止材料の最も硬い相の表面に合うように変形させることが可能になる。
【0043】
さらに、封止材料の層104および層108を介して基板100、102を接触させて配置することは、封止工程中にガスを閉じ込めることを避けるために真空中で行われる。
【0044】
次に、前述した封止方法の特定の一実施形態を図2Aから図2Dに関連して説明する。
【0045】
この実施形態では、層104の第一の封止材料は、AuSnタイプの共晶合金である。このような合金の状態図が図2Aに示されている。この実施形態において、第一の封止材料の合金は、約29原子百分率のスズと残りの金で形成される。
【0046】
状態図に示された垂直軸202は、ここで使用される共晶合金に対応する。この状態図から、ここで考えられている共晶合金は、周囲温度で、Au5Sn(ξ')相およびAuSn(δ)相からなり、融解温度は約278℃に等しいことが明らかになる。
【0047】
第一の封止材料を形成するためのこの共晶合金は、第一の基板100の上に第一の層204を形成する第一の金堆積物をまず生成し、次に、第二の層206を形成する第二のスズ堆積物を電気分解により、例えば紐状に対応するパターンのマスクを介して第一の基板100の上に直接、所望の比率(Sn29%およびAu71%)で生成することにより、得られる。図1Aの例とは異なり、第一の封止材料からなる層と第一の基板100との間に相が挿入されない(図2B参照)。
【0048】
次に、熱処理が、先に堆積された堆積物204および堆積物206を均質化するために、例えば200℃にほぼ等しい温度で約4時間行われる。図2Cに示されるように、基板100の上に、基板100に押し付けられて配置された相ξからなる層210と、層210の表面上のAuSn(δ)相+Au5Sn(ξ')相からなる層212と、を得る。ここで層210、212は、約4.5μmに等しい厚さを有し、例えばAFM 5×5μm2で測定して約70nmから100nmの間の粗度を有する。したがって層212は、ここで第一の封止材料を形成する。
【0049】
第一の基板100の前処理(preparation)と並行して、図1Aに示された第二の封止材料からなる層108に相当する、厚さが約100nmに等しい金ベースの層が第二の基板102上に堆積される。
【0050】
この金層は、ここではAFM 5×5μm2で測定して約1.5nmに等しい粗度を有する。
【0051】
こうして、封止材料の層を介する二つの基板100と基板102との熱圧着に進む。この特定の実施形態では、封止温度は、層212を形成する共晶合金の溶解温度(279℃)に近くなるように、例えば約270℃に等しい温度に選ばれる。約50バールに等しい圧力(効果的に接着される表面で得られる圧力)が二つの基板100と基板102との間に約20分に等しい時間、温度が270℃に達した時から加えられる。
【0052】
金(第二の封止材料)とAuSn(δ)+Au5Sn(ξ')層212との反応後に、基板100と基板102との間の封止が行われ、これにより、図2Dにおいて214の参照符号が付けられると共に図1Cに示される相110に相当する、ξまたはAu5Sn相が形成される。この反応は、相212の軟化による封止材料間の大きな接触面により有利になる。
【0053】
この実施形態では、第二の封止材料としての役割を果たす金の層は、比較的薄くなるように選ばれているが(約100nmに等しい厚さ)、この層が1または数マイクロメートル近辺の厚さを有することもまた可能である。封止材料の厚さの選択は、アセンブルされるべき基板間の所望の間隔により決まるが、封止中に封止材料の各相の成分の間で相互拡散が起こるのに十分な厚さである。
【符号の説明】
【0054】
100 第一の基板
102 第二の基板
104 層
106 相
108 層
110 相
202 垂直軸
204 第一の層
206 第二の層
210 層
212 層
214 ξまたはAu5Sn相

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二つの要素(100、102)の間の封止方法であって、
前記二つの要素のうちの第一の要素(100)の少なくとも一つの面に、少なくとも一つの第一の封止材料(104、212)を生成するステップと、
前記二つの要素のうちの第二の要素(102)の少なくとも一つの面に、前記第一の封止材料(104、212)とは異なる少なくとも一つの第二の封止材料(108)を生成するステップと、
前記二つの要素(100、102)を、前記第一の封止材料および第二の封止材料(104、108、212)の融解温度未満の温度Tcで前記封止材料(104、108、212)の一方が他方に押し付けられる熱圧着により、固定するステップと、
を少なくとも含み、前記第一の封止材料および第二の封止材料(104、108、212)がそれぞれ、前記固定するステップ中に前記封止材料(104、108、212)の相の成分の相互拡散により他方の封止材料の相と反応できる少なくとも一つの相を有するように、かつ前記封止材料(104、108、212)の相が一緒に反応し、前記温度Tcよりも融解温度が高い少なくとも一つの別の固相(110、214)を形成するように、前記第一の封止材料および第二の封止材料(104、108、212)が選ばれる、封止方法。
【請求項2】
前記温度Tcが、約300℃未満である、請求項1に記載の封止方法。
【請求項3】
前記第一の封止材料および/または第二の封止材料(212)が、共晶合金である、請求項1または2に記載の封止方法。
【請求項4】
共晶合金である封止材料(212)の生成が、前記共晶合金を形成するための材料(204、206)の複数の連続堆積と、前記共晶合金を形成するための材料(204、206)のそれぞれの融解温度未満の温度での、前記共晶合金を形成するための材料(204、206)の少なくとも一つの熱処理と、を少なくとも実施することにより得られる、請求項3に記載の封止方法。
【請求項5】
前記第一の封止材料(212)が金とスズベースとの合金であり、前記第二の封止材料が金である、請求項1から4のいずれか一項に記載の封止方法。
【請求項6】
前記固定するステップが、約200℃よりも高い温度で実施される、かつ/または、約106Paよりも高い圧力で前記第一の封止材料(104、212)を前記第二の封止材料(108)に押し付ける圧着を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の封止方法。
【請求項7】
前記第一の封止材料(104、212)および/または前記第二の封止材料(108)の厚さが、約100nmから50μmの間である、請求項1から6のいずれか一項に記載の封止方法。
【請求項8】
前記第一の封止材料(104)および/または前記第二の封止材料(108、212)の生成中、前記第一の封止材料(104)および/または前記第二の封止材料(108、212)の相とは異なる一つまたは複数の相(106、210)が、前記第一の要素(100)および/または前記第二の要素の面に形成され、次に、前記第一の封止材料(104)および/または前記第二の封止材料(212)が、前記相(106、210)の上に配置される、請求項1から7のいずれか一項に記載の封止方法。
【請求項9】
前記第一の封止材料(104、212)が、前記第二の封止材料(108)の硬度とは異なる硬度を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の封止方法。
【請求項10】
前記固定するステップが、真空中で実施される、請求項1から9のいずれか一項に記載の封止方法。
【請求項11】
前記各要素(100、102)が基板を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の封止方法。
【請求項12】
前記封止材料(104、108、212)が、前記要素(100、102)上に層状または紐状に生成される、請求項1から11のいずれか一項に記載の封止方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate


【公開番号】特開2012−9862(P2012−9862A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−138154(P2011−138154)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(502124444)コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ (383)
【Fターム(参考)】