説明

二剤混合容器

【課題】主剤と副剤を簡単な操作のもとで均一に混合できる二剤混合容器を提案する。
【解決手段】二剤混合容器を、主剤を充填する充填空間Mを有し、ピストン4の押し込みにより注出ノズル3を通して充填空間M内の内容物の排出を可能とするメインシリンジ1と、このメインシリンジ1の注出ノズル3に連結、離脱可能な口頚部(筒体)11を有し、該口頚部11をメインシリンジ1の注出ノズル3に連結して該ピストン4の押し込みと引き戻し動作を誘導することによりその口頚部11につながる本体部分に充填された副剤と主剤とを混合するサブシリンジ9とによって構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用直前に簡単な操作のもとで主剤と副剤を均一な状態に混合して注出することができる二剤混合容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
種類の異なる内容物を使用直前に混合して注出する二剤混合容器は、医療分野で使用される薬剤や毛染め剤等のみならずお茶等の飲料分野へも適用される傾向にあり、その需要は今後益々増大していくと見込まれており、この点に関する先行技術としては、上部容器体を、中間筒部材を介して下部容器体の上に配置し、双方の容器を互いに逆向きに回動させてその相互間に配置した中栓の破断部を捩じ切ることによって開栓、上部容器体内に収容した液を下部容器体へ落下させて混合させるようにした二剤混合容器が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−49638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のこの種の混合容器、とくに、副剤を入れた収納筒の如きを容器体へ落下させるタイプのものにあっては、主剤と副剤との十分な混合を図るのが困難であり、注出の開始直後から終了間際に至る間までにおいて注出物の濃度の変動が避けられない等の不具合があり、未だ改良の余地が残されていた。
【0005】
本発明の課題は、主剤と副剤とを簡単な操作のもとで均一に混合して排出できる新規な二剤混合容器を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、主剤を充填する充填空間を有し、ピストンの押し込みにより注出ノズルを通して充填空間内の内容物を排出するメインシリンジと、このメインシリンジの注出ノズルに連結、離脱可能な口頚部を有し、該口頚部をメインシリンジの注出ノズルに連結して該ピストンの押し込みと引き戻し動作を誘導することによりその口頚部につながる本体部分に充填された副剤と主剤とを混合するサブシリンジとを備えたことを特徴とする二剤混合容器である。
【0007】
上記の二剤混合容器においては、メインシリンジに、ピストンを、メインシリンジの後端部へ向けて付勢する弾性支持部材を設けることができる。また、サブシリンジの口頚部内には、ピストンの押し込みと引き戻し動作に際して主剤と副剤の混合を促進するミキサーを配置するのが望ましい。
【0008】
また、メインシリンジには、該メインシリンジの軸方向に沿って形成され、ピストンの押し込みと引き戻し動作を誘導する細長い窓孔を設けることができる。窓孔は、平行配置になる少なくとも二本の長孔と、メインシリンジの周方向に沿い設けられ、各長孔を相互につなぐ少なくとも一つの短孔からなるものがとくに好適であり、短孔については、各長孔を相互に区切る凸部を設けることができる。
【発明の効果】
【0009】
メインシリンジ内の主剤を、サブシリンジ内へ一旦送り出して副剤との混合を図り、さらに、混合にかかわる容物をメインシリンジへ吸引するようにしたので、二剤の均一な混合が可能となる。
【0010】
メインシリンジ内に配置されるピストンを該メインシリンジの後端部に向けて押しやる向きに付勢する弾性支持部材を設けておくことで、何らの負荷を加えることなしにサブシリンジ内の内容物をメインシリンジ内へ吸引することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明にしたがう二剤混合容器の実施の形態を模式的に示した図である。
【図2】図1に示した二剤混合容器のメインシリンジの外観斜視図である。
【図3】(a)〜(c)は本発明にしたがう二剤混合容器に配置されるミキサーの構成部材を示した図である。
【図4】本発明にしたがう二剤混合容器の混合要領の説明図である。
【図5】本発明にしたがう二剤混合容器の内容物の排出状況を示した図である。
【図6】本発明にしたがう二剤混合容器の内容物の排出状況を示した図である。
【図7】本発明にしたがう二剤混合容器の他の例を示した図である。
【図8】本発明にしたがう二剤混合容器のさらに他の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明をより具体的に説明する。
図1は本発明にしたがう二剤混合容器の実施の形態を模式的に示したものであり、図2はメインシリンジの外観を示した図である。
【0013】
図における1は筒状をなすメインシリンジである。このメインシリンジ1は、主剤の充填空間Mを形成するとともにピストンを摺動可能に配置する本体筒部1aと、この本体筒部1aの周り取り囲みその相互間にメインシリンジ1の後端部において開放された環状溝部1bを形成する外筒1cから構成されている。環状溝部1bにはスプリングの如き弾性部材Sが配置されている。
【0014】
また、2は、メインシリンジ1の本体筒部1aの後端に設けられた開口(ピストンの導入口)、3は、メインシリンジ1の先端部に設けられた注出ノズルである。この注出ノズル3は、本体筒部1aにつながる通路rを有し、その外周壁にねじ部nが設けられた筒部3aと、この筒部3aの先端に一体的につながり、該筒部3aの通路rを通り抜けた内容物を開孔hから外界へ向けて排出する細径筒部3bからなる。
【0015】
4は、メインシリンジ1の本体筒部1a内に摺動可能に配置されるピストン、5は、ピストン4の後端部につながり、該ピストン4の押し込み、引き戻しを行うためのロッドである。このロッド5は、ピストン4の後端部に直接つながるロッド本体5aと、このロッド本体5aの後端部につながり、外筒1cに設けられた起立片1c′との協働下にピストン4の押し込み、引き戻しを行う操作部5bと、ロッド本体5aに一体的につながり、環状溝部1bにスライド可能に配置される先端開放型の大径筒部5cからなっており、ロッド5は体径筒部5cにおいて弾性部材Sによって支持されている(ロッド5には、ピストン4をメインシリンジ1の後端部へ向けて押しやる付勢力が作用している。)。
【0016】
6は、大径筒部5cの外周壁に設けられた突起、7は、メインシシリンジ1の外筒1cに設けられ、該突起6を位置せしめて大径筒部5cをガイドする細長い窓孔であり、この窓孔7は、メインシリンジ1の軸方向に沿って平行に延びる二本の長孔7a、7bと、メインシリンジ1の周方向に沿って伸延し、長孔7aの後端及び長孔7bの先端とをつなぐ短孔7cからなっており、各長孔7a、7bの範囲内でピストン4をスライドさせることができるようになっている。窓孔7は対向位置にももう一つ設けられていて、メインシリンジ1の先端側(注出ノズル3に近い方)に位置する長孔7bは、主剤をサブシリンジへ送出すときと、混合された内容物をメインシリンジ1から排出する時に突起6を誘導するガイドとして機能し、メインシリンジ1の後端側に位置する長孔7aについては、後述するサブシリンジの充填空間内に存在する内容物(主剤と副剤が混合されたもの)をメインシリンジ1の充填空間Mへ移行する際に突起6を誘導するガイドとして機能する。短孔7cは突起6を長孔7a、7bに移動させる際の切替ガイドとして用いるが、短孔7cの、長孔7b側の端面に突起6を当接させることによって弾性部材Sによる長孔7aでの、突起6の動きが規制される(ピストン4のストッパーとして機能する)。該短孔7cには、各長孔7a、7bを相互に区切り、突起6の不用意な位置ずれによるピストン4の移動を回避するため、使用者の力によって乗り越え可能な凸部7cを設けておくのがよい。
【0017】
8は、注出ノズル3の筒部3aに設けられたねじ部nに係合するねじ部nを有するキャップである。このキャップ8はその内側に細径筒部3bの開口に適合する筒体8aを有しており、使用前(混合前)においてメインシリンジ1を密閉状態に保持する。
【0018】
9は、筒状をなしその内側に副剤の充填空間を形成するサブシリンジである。このサブシリンジ9には、内周壁に沿ってスライド可能な中蓋9aが配置されている。
【0019】
10は、サブシリンジ9の後端部に配置され、中蓋9aのサブシリンジ9からの脱落を防止する抑え部材である。この抑え部材10は外気を導通させる開口10aを有している。
【0020】
11は、サブシリンジ9の先端部分に一体連結して該サブシリンダ9の口頚部を形成する筒体である。この筒体11の内周壁には、注出ノズル3の筒部3aに設けられたねじ部nに係合するねじ部nが設けられている。
【0021】
12は、筒体11の内側に配置されたミキサーである。このミキサー12はサブシリンジ9の充填空間Mにつながる通路を形成する筒部12aと、この筒部12aの内側に配置され、該筒部12aを通り抜ける際に内容物に乱流を生じさせて撹拌する撹拌子12bから構成されている。撹拌子12bは、図3(a)〜(c)に示すように、サブシリンジ9の軸芯に沿う軸体12bと、この軸体12bに一体的に固定保持されたリブからなっている。リブとしては、例えば、軸体12bの先端部の対向位置に設けられた二枚の縦リブ12bと、その後端につながり互いに逆向きの傾斜を有する傾斜リブ12bと、この傾斜リブ12bの後端に位置し、傾斜する向きを90°ずらして配置された傾斜リブ12b、12bとを組み合わせたものを適用することが可能であり、これにより主剤と副剤との混合がより一層促進される。傾斜リブについては、この例では、軸体12bの軸芯に沿って3つ配置した場合について示したが、軸体12bの先端から後端に向けて連続して延びる螺旋状リブを設けてもよく、この点については限定されない。
【0022】
さらに、13は、筒体11の内周壁に設けられたねじ部nに係合するねじ部nを有するキャップである。このキャップ13はその先端部にミキサー12の筒部12aの開口端に適合する凸状の隔壁部13aを有しており、使用前(混合前)においてサブシリンジ9を密閉状態に保持する。
【0023】
メインシリンジ1内の主剤と、サブシリンジ9内の副剤を混合して排出するには、まず、それぞれに取付けられたキャップ8、13を取り外し、メインシリンジ1の注出ノズル3の筒部3aを、サブシリンジ9の口頚部を形成する筒体11にねじ込んで相互に連結する。そして、ロッド5の操作部5bを把持してピストン4を図4に示すように注出ノズル3側へ向けて押し込む。この押し込みによりメインシリンジ1内に充填されていた主剤は、筒部12aを通ってサブシリンジ9の充填空間M内へと移行して主剤と副剤が混合される。
【0024】
主剤がサブシリンジ9の充填空間Mへ移行したのち、ピストン4の押し込みにかかる力を取り除くと、弾性部材Sによってピストン4はロッド5とともに、メインシリンジ1の後端部へ向けて移動し、この移動に伴うメインシリンジ1の充填空間M内の負圧により、サブシリンジ9内の内容物は、図5に示すように、メインシリンジ1の充填空間M内へと吸引され、この時、内容物はミキサー12の撹拌子12b(縦リブ12b2、傾斜リブ12b、12b、12b)を通ることになるので、主剤と副剤はここでより一層撹拌されて均一な混合状態となる。
【0025】
サブシリンジ9の充填空間M内の内容物が全てメインシリンジ1の充填空間Mに移行したのちは、サブシリンジ9をメインシリンジ1から取り外して図6に示すようにロッド5の操作部5bに適宜押圧力を付与してピストン4を移動させればよく、これにより均一に混合された内容物が注出ノズル3から排出される。
【0026】
上掲図1〜6に示した二剤混合容器においては、弾性部材Sを用いてロッド5を弾性支持するようにしたが、該弾性部材5を配置するような構成を採用せずともよく、これによりメインシリンジ1の径の細径化が可能になる利点があり、この場合、ピストン4の移動は手動によって行うことになる。
【0027】
この種の容器おいては、混合した内容物は一度に使い切るのが普通であるが、使い方によっては、少量ずつ小出にして排出する場合もあり、小出し排出に対応させるため外筒1cには窓孔7に沿って目盛りを設けておくこともできる。
【0028】
また、小出し排出においては、適正な量が排出できるように、ピストン4の移動が多段階になるような図7に示すような段付きの窓孔14を設けるか、あるいは図示はしないが凹凸を設けて多段階に排出ができるようにしておけばよい。とくに図7に示すような段付きの窓孔14(長孔14a〜14d、短孔14e〜14g、凸部14h〜14j)を設けたものにあっては、定量注出が可能であり、ピストン4を移動させる際に付加された押圧力を取り除いたときに該弾性部材Sによりピストン4が初期位置へとすぐさま復帰するのでバックサクションが期待でき、内容物の垂れを回避できる利点がある。
【0029】
図8は、本発明にしたがう二剤混合容器のさらに他の例を示した図である。この例は、長孔7aに長孔7a′を設けて長孔7bと同様の位置まで延長したものであり、メインシリンジ1の充填区間Mにある主剤をサブシリンジ9へ移行させる場合には長孔7bを使用し、サブシリンジ9の充填空間M内の内容物をメインシリンジ1へ移行させる際には、突起6が長孔7aに位置するように本体筒部1a(あるいはロッド5)を回動させればよく、さらに混合済の内容物をメインシリンジ1から排出するには、そのままロッド5を押圧すればよく、この時、突起6は長孔7a、長孔7a′に沿って移動することになる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
簡単な操作でもって主剤と副剤の均一混合が可能な二剤混合容器が提供できる。
【符号の説明】
【0031】
1 メインシリンジ
1a 本体筒部
1b 環状溝部
1c 外筒
2 開口
2a べース
3 注出ノズル
3a 筒部
3b 細径筒部
4 ピストン
5 ロッド
5a ロッド本体
5b 操作部
5c 大径筒部
6 突起
7 窓孔
7a 長孔
7a′ 長孔
7b 長孔
7c 短孔
8 キャップ
9 サブシリンジ
9a 中蓋
10 抑え部材
10a 開口
11 筒体
12 ミキサー
12a 筒部
12b 撹拌子
13 キャップ
13a 隔壁部
14 窓孔
M 充填空間
装填空間
S 弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤を充填する充填空間を有し、ピストンの押し込みにより注出ノズルを通して充填空間内の内容物の排出を可能とするメインシリンジと、このメインシリンジの注出ノズルに連結、離脱可能な口頚部を有し、該口頚部をメインシリンジの注出ノズルに連結して該ピストンの押し込みと引き戻し動作を誘導することによりその口頚部につながる本体部分に充填された副剤と主剤とを混合するサブシリンジとからなる、ことを特徴とする二剤混合容器。
【請求項2】
前記メインシリンジに、ピストンを、メインシリンジの後端部へ向けて付勢する弾性支持部材を設け、前記サブシリンジの口頚部内に、ピストンの押し込みと引き戻し動作に際して主剤と副剤の混合を促進するミキサーを配置したことを特徴とする請求項1記載の二剤混合容器。
【請求項3】
前記メインシリンジに、該メインシリンジの軸方向に沿って形成され、ピストンの押し込みと引き戻し動作を誘導する細長い窓孔を設けた、請求項1又は2記載の二剤混合容器。
【請求項4】
前記窓孔が、平行配置になる少なくとも二本の長孔と、メインシリンジの周方向に沿い設けられ、各長孔を相互につなぐ少なくとも一つの短孔からなる、請求項3記載の二剤混合容器。
【請求項5】
前記短孔は、各長孔を相互に区切る凸部を有する、請求項4記載の二剤混合容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−260591(P2010−260591A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111469(P2009−111469)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】