説明

二本鎖核酸−特異的色素を使用する二次構造の融解分析による一本鎖核酸の特徴付け

【課題】核酸を特徴付ける新規の方法。
【解決手段】核酸を、二本鎖核酸−特異的色素と組み合わせて、色素および核酸内の1つ以上の二本鎖構造の間に、検出可能な複合体を形成する。次いで、組合せを可変温度に暴露し、色素の蛍光発光を測定して、二本鎖構造の融解温度を決定する。次いで、いくつかの具体例において、融解温度プロファイルを、他の核酸につき発生させた融解温度プロファイルと比較して、比較された核酸間の差異を識別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸の同定および特徴付けならびにその修飾に関し、これを使用して、そのような核酸および/または表現型を含有する細胞および/または生物またはこれらの核酸またはそのような修飾と関連する疾患状態を同定することができる。
【背景技術】
【0002】
核酸の二次構造への洞察は、突然変異検出および生物同定の強力なツールを得た。いくつかの分析用技術が開発され、これは1つの試料および次の試料の間に存在する異なる二次構造を活用する。これらの技術のいくつかは、一本鎖高次構造的多形性(SSCP)(Oritaら, PNAS(USA) 86: 2766-2770(1989))、ヘテロ二本鎖移動度アッセイ(HMA)(Espejoら, Microbiology 144: 1611-1617(1998))、リボタイピング(Grimont and Grimont, Ann.lest.Pasteur Microbiol. 137B (2): 165-175 (1989))および産物融解温度(Tm)によるPCR後産物同定(Ririeら, Anal. Biochem. 245154-160(1997))を含む。
【0003】
二次構造分析法は、核酸特徴の検出に焦点を合わせ、これは特定の配列がどのようにお互いと相互作用するかによるものである。1989年に、Oritaらは、単一の塩基対欠失または改変は、核酸ゲル電気泳動において明白な一本鎖高次構造的多形性によって検出可能であることを示した(Oritaら 1989)。実質的に、彼女は、主要な核酸配列における小さな差が、結果的に、二次構造立体配座にわずかな差をもたらし、これが電気泳動ゲルマトリックス内で異なって移動することを発見した。SSCP分析は、非常に感度が高く、制限断片長多形(RFLP)方法よりもさらに特異的である(Oritaら 1989)。
【0004】
ヘテロ二本鎖移動度アッセイまたはHMAは、SSCPに似ている。HMAでは、非−完全にマッチングしたDNA標的−プローブ二本鎖の電気泳動移動度がモニターされる(Espejoら, 1998)。標的−プローブ二本鎖内のミスマッチングは、二次構造に歪みを起こし、これは結果的に二本鎖の移動度変化を起こす。標的配列の差は、すなわち、電気泳動ゲルマトリックスにおける差動的産物移動によって明白になる(Espejoら, 1998)。
【0005】
リボタイピングは、ゲル電気泳動によって観察されるリボソーム性核酸遺伝子制限パターンの同定である(Grimont and Grimont, 1989)。リボタイピングは、リボソームの偏在性質、核酸成分内で見受けられる高頻度可変領域および制限酵素の特異性を利用する。この方法では、保存領域によって隣接した高頻度可変領域を含有するrRNAの遺伝子コードが、PCRを用いて増幅され、生成されたDNAは、続いて、酵素的に消化される。特異的な制限酵素は、高頻度可変領域内の制限部位に選択される。これらの酵素によるDNA開裂によって、結果的に、可変長のDNAのセグメントが得られる。酵素的開裂に引き続いて、DNA断片はゲル上に流され、分析される。すなわち、DNAセグメントの特定の組合せ(パターン)は、主要な配列の指標である。もし酵素が適切に選択されれば、各生物タイプは、制限断片のユニークな組合せを有するだろう(Grimont and Grimont, 1989; Van Camp, Curr. Microbiol. 27 (3): 147-151 (1993))。
【0006】
リボソーム核酸(rRNA)の配列は、高度に保存された領域によって囲まれた多くの高頻度可変領域を同定した(De Rijkら, Nuc. Acids Res. 20 (Supplement): 2075-2089 (1992); Edwardsら, Nuc. Acids Res., 17 (19): 7843-7853 (1989); Grimont and Grimont, 1989; Van Camp, 1993)。実に、広範囲の生物からのDNAを増幅することが可能な多くの普遍的な主要部位が同定され、SSCPまたはリボタイピング分析用に適合された(Van Camp, 1993; Weisburgら, J. Bacteriol. 173 (2): 697-703(1991) ; Stubbsら, J. Clin. Microbiot 37 (2): 461-463 (1999); Anthonyら,J. Clin.Microbiol. 38 (2): 781-788 (2000);Rantakokko-Jalavaら, J. Clin. Microbiol. 38(1) : 32-39 (2000); Widjojoatmodjoら, J. Clin. Microbiol. 32 (12): 3002-3007 (1994))。これらのリサーチ群によって実施された研究は、高頻度可変領域セグメント内に二次構造を含有する16sおよび23s遺伝子内に、医学的に有意な領域を発見した。Van Campおよび同僚らは、23s遺伝子内の高頻度可変領域を増幅するのに使用できるいくつかの普遍的な主要箇所を同定した(1993)。Widjojoatmodjoによって行われた研究は、108bpないし300bpの範囲の小さなアンプリコンサイズを持つSSCPによる良好な種タイピングを示す(1994)。Erik Avaniss-Aghajaniらは、リボタイピング技術を用いて、細菌タイピング用の「実質的に全ての細菌からのSSU[小さなサブユニット]rRNAを増幅することが可能な」主要な組を同定し、テストした(Biotechiques. 17(1):144-146,148-149(1994))。
【0007】
上記した分析方法の各々において(SSCP、HMAおよびリボタイピング)、核酸配列は二次構造分析によって同定される。これらのプロセスのうち3つ全ては、配列変動に対して非常に敏感であり、これらを使用して、生物間に存在する核酸配列の差を同定することができる。しかしながら、アッセイは、全て、ゲル電気泳動によって決定され、リボタイピングは、酵素開裂のさらなる工程を必要とする。ゲル電気泳動および酵素開裂は、共に、時間を要する増幅後工程である。
【0008】
核酸の二次構造的分析のもう1つの形態内の主要な配列変動は、二本鎖核酸融解特徴を観察することによって、明白になる。核酸の融解は、二本−らせん状態から一本鎖状態への高次構造的転移を指す。核酸鎖の半分が二本−らせん状態にあり、半分が「ランダムコイル」(一本鎖)状態にある温度は、融解温度(Tm)として定義される(Santa Lucia, PNAS(USA) 95: 1460-1465(1998))。すなわち、核酸鎖の所与の対のTmは、鎖結合に対する鎖の安定性の指標であり、鎖の相補性、配列長、GC含有量および環境状態によって決定される(Lewin, GenesV, Chapter 5, Oxford University Press and Cell Press: New York, (1994) pp. 109-126 ; SantaLucia,1998)。
【0009】
核酸融解の分析は、多くの方法で達成された。核酸変性転移を観察および分析する方法は:示差熱量測定(DSC)によって変性する時に、試料中のエンタルピー変化を測定し(Kulinskiら, Nucleic Acids Res. 19 (9): 2449- 2455 (1991); Panerら, Biopolymers 29: 1715-1734 (1990); Volkerら, Biopolymers 50: 303-318 (1999))、フルオロフォアの共有結合対の蛍光を測定し(Vamosi and Clegg, Biochemistry 37: 14300-14316 (1998))、次いで核酸の濃色性の変化をモニターすること(Haugland,"In Vitro Applications for Nucleic Acid Stains and Probes", in Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals,dh ed. , Molecular Probes Inc, Eugene OR (1996) pp. 161-174)を含む。DSCは、化学薬品の純度を測定するのに最初に使用された技術である。プロセスは、化学反応または転移の間に進化または吸収された熱を測定する(Plato, Anal. Chem. 41 (2): 330-336 (1969))。核酸転移の理論的モデルの詳細な分析および発展は、DSC技術を用いて、可能であった(Panerら, 1990)。Kulinskiは、ルピナス種子および麦芽から入手した2つの植物5S rRNAの異なる融解プロファイルを、DSCを用いて観察した(Kulinski,1991)。残念ながら、光学的(濃色性)およびDSC分析は、両方とも、実質的な量の核酸を必要とし、分析は遅く、通常、一度につき、単一試料のみが研究できる。対のフルオロフォア間の蛍光共鳴エネルギー転移の測定は、Vamosi and Clegg (1998)に記載のごとく、二本鎖核酸の末端にて、フルオロフォアの共有結合を必要とし、その末端は、核酸が有効な測定用に二本鎖化される時、隣接していなければならない。
【0010】
また、二本鎖核酸のTm値は、核酸と合わせた二本鎖DNA−特異的色素の蛍光をモニタリングすることによって観察できる(Wittwerら, 1996)。二本鎖−特異的色素は、核酸−結合フルオロフォアである。典型的には、これらの色素の蛍光は、二本鎖核酸に結合する時、増加する(Wittwerら, BioTechniques 22 : 176-181(1997))。Ririeらは、二本鎖核酸結合色素SYBR(登録商標)Green Iを用いて、PCR後産物を、融解曲線分析によって識別することが可能であることを示した。SYBR(登録商標)Green Iは、優先的に、二本鎖核酸に結合する(Haugland, 1996)。
【0011】
Tm分析のプロセスは、さらなるPCR後の取り扱いを必要としない。しかしながら、SYBR Green Iといった二本鎖DNA−特異的色素を使用する本出願は、配列特異的ではなく、生物を1つのプライマー組で識別するのに使用されていなかった。さらに、これらの色素は、核酸の別々の相補的鎖の分析に使用されてきただけであった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Oritaら, PNAS(USA) 86: 2766-2770(1989)
【非特許文献2】Espejoら, Microbiology 144: 1611-1617(1998)
【非特許文献3】Grimont and Grimont、Ann.lest.Pasteur Microbiol. 137B (2): 165-175 (1989)
【非特許文献4】Ririeら, Anal. Biochem. 245154-160(1997)
【非特許文献5】Grimont and Grimont, 1989; Van Camp, Curr. Microbiol. 27 (3): 147-151 (1993)
【非特許文献6】De Rijkら, Nuc. Acids Res. 20 (Supplement): 2075-2089 (1992)
【非特許文献7】Edwardsら, Nuc. Acids Res., 17 (19): 7843-7853 (1989)
【非特許文献8】Weisburgら, J. Bacteriol. 173 (2): 697-703(1991)
【非特許文献9】Stubbsら, J. Clin. Microbiot 37 (2): 461-463 (1999)
【非特許文献10】Anthonyら,J. Clin.Microbiol. 38 (2): 781-788 (2000)
【非特許文献11】Rantakokko-Jalavaら, J. Clin. Microbiol. 38(1) : 32-39 (2000)
【非特許文献12】Widjojoatmodjoら, J. Clin. Microbiol. 32 (12): 3002-3007 (1994)
【非特許文献13】Erik Avaniss-Aghajaniら、Biotechiques. 17(1):144-146,148-149(1994)
【非特許文献14】Santa Lucia, PNAS(USA) 95: 1460-1465(1998)
【非特許文献15】Lewin, GenesV, Chapter 5, Oxford University Press and Cell Press: New York, (1994) pp. 109-126 ; SantaLucia,1998
【非特許文献16】Kulinskiら, Nucleic Acids Res. 19 (9): 2449- 2455 (1991)
【非特許文献17】Panerら, Biopolymers 29: 1715-1734 (1990)
【非特許文献18】Volkerら, Biopolymers 50: 303-318 (1999)
【非特許文献19】Vamosi and Clegg, Biochemistry 37: 14300-14316 (1998))、
【非特許文献20】Haugland,"In Vitro Applications for Nucleic Acid Stains and Probes", in Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals,dh ed. , Molecular Probes Inc, Eugene OR (1996) pp. 161-174
【非特許文献21】Plato, Anal. Chem. 41 (2): 330-336 (1969)
【非特許文献22】Wittwerら, BioTechniques 22 : 176-181(1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
これまでの議論に徴し、一本鎖核酸のより迅速かつ単純な分析方法への必要性が存在することは明らかである。そのような方法は、SSCPおよびHMAといった配列の変動を同定すること、リボタイピングのような生物をタイピングすることの両方に適用可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
先に従って、本発明は、核酸を特徴付ける方法を提供し、ここに核酸の一本鎖形態は、二本鎖核酸−特異的色素と合わせられ、該組合せは、可変温度に暴露されて、一本鎖核酸内で可逆的に形成される二本鎖二次構造に対する融解温度プロファイルを発生させる。
【0015】
好ましい具体例において、二本鎖核酸−特異的色素は、SYBR(登録商標)Green I、SYBR(登録商標)Gold、臭化エチジウム、臭化プロピジウム、Pico Green、Hoechst 33258、YO−PRO−IおよびYO−YO−Iよりなる群から選択される。
【0016】
さらなる好ましい具体例において、1つの核酸の融解温度プロファイルは、第2の核酸の融解温度プロファイルと比較され、ここにプロファイルの差は、該第1および第2の核酸の間の配列の差を示す。
【0017】
もう1つの好ましい具体例において、本発明は、核酸の突然変異の検出方法を提供する。この具体例において、一本鎖核酸試料の融解温度プロファイルは、二本鎖核酸−特異的色素を用いて決定され、核酸試料の融解温度プロファイルおよび野生型核酸融解温度プロファイルの差は、可逆的に二本鎖二次構造を形成することが可能な一本鎖核酸の1つ以上の領域内の核酸試料における1つ以上の突然変異の存在を示す。
【0018】
さらに好ましい具体例において、本発明は、細胞の特異的型を同定する方法を提供する。この具体例において、細胞からの試料rRNA、またはその断片の融解温度プロファイルが、二本鎖核酸−特異的色素を用いて、決定される。次いで、プロファイルは、1つ以上の細胞につき、既知のrRNAプロファイルと比較され、マッチは、試料rRNAは既知のrRNA細胞型からのものであることを示す。そのような細胞は、動物細胞、細菌細胞、または植物細胞であってもよい。
【0019】
もう1つの好ましい具体例において、一本鎖核酸は、増幅された遺伝子またはその断片から由来する。
【0020】
さらに好ましい具体例において、増幅された試料rRNAは、鎖置換増幅(SDA)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、ローリングサークル増幅(RCA)、増幅に基づく核酸配列(NASBA)、転写媒介増幅(TMA)、非対称的PCR増幅、およびリガーゼ連鎖反応(LCR)増幅よりなる群から選択される方法によって生成される。
【0021】
さらなる好ましい具体例において、融解温度プロファイルの決定は、一本鎖核酸試料を二本鎖核酸−特異的色素と合わせて、色素および該核酸内に形成する1つ以上の二本鎖二次構造の間に検出可能な複合体を形成し、温度を変動させる間に色素の蛍光発光を測定することによって、達成される。
【0022】
本発明のもう1つの態様において、様々な蛍光色素が、二次構造検出につき同定される。これらの色素は、PCR適用での使用につき最初に同定された。増幅の間または後のDNAに関して、これらの「飽和色素」は、PCRの阻害を最小化しつつ、十分に飽和な状態にて存在可能である。例えば、最大のPCR−適合濃度にて、dsDNA結合色素は、少なくとも50%のパーセント飽和を有する。他の具体例において、パーセント飽和は、少なくとも80%であり、より具体的には、少なくとも90%である。さらに他の具体例において、パーセント飽和は少なくとも99%である。パーセント飽和は、飽和濃度の同じ色素の蛍光と比較したパーセント蛍光であり、つまり、dsDNAの先に決定された量の存在下で可能な最も高い傾向強度を提供する濃度であると理解されている。これらの色素は、特定の核酸反応と有意に干渉することなしに、有意により高い濃度にて存在することが可能であるため、これらの色素は、一本鎖核酸の立体配座をモニタリングするのに、特に有用であり得ると考えられている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、高速DNA増幅およびPCRおよび蛍光モニタリングによる分析に使用される標準の2色LightCyclerの構成要素を表す。器具(1)は、空気注入口(2)、円試料カルーセル(3)、ステッパーモーター(4)、チャンバーファン(5)、およびオプティクス/フィルターアセンブリ(6)よりなる。試料(7)を、ガラスキャピラリー内に置き、24ブラスオフセットガイド(9)を持つ反応チャンバー(8)内に、垂直試料整列で維持する。ステッパーモーター(4)を使用して、試料カルーセル(3)を回転させ、試料(7)を励起および収集オプティクス(10)上に置く。高ワット数加熱コイル(11)および連続的気流を使用することによって、高速温度回転を達成する。チャンバーを通る空気の一般的な動きは、矢印によって示され、それはファン(5)の回転主導である。ガラスキャピラリーを使用することにより、試料(7)への熱転移速度が増加し、また、高められた蛍光モニタリングに対する総内部反射が得られる。次いで、反応混合物中に存在するフルオロフォアを励起させ、キャピラリーチップの落射によってモニターする。青LED(12)は、励起に使用され、2つのフォトダイオード(13)は、蛍光モニタリングに使用される。フィルターアセンブリ(6)は、示されたナノメーター切断を持つ2つの二色性(14−15)を含有して、蛍光発光を、データ収集用に、2つのチャンネルに分離する。
【図2】図2は、24試料LightCyclerに施された小さなチャンバー修飾を示す図である。現在の試料配置および蛍光モニタリングシステムの整合性を維持するために、少しの修飾のみが望ましかった。標準加熱コイルおよび空気注入口パイプを除去し、元の放射状のチャンバーファンを、軸ファン(30)で置き換えた。チャンバーファンへの電力を、半分減少させた。さらなる絶縁体(31)を、反応チャンバーおよび試料カルーセル(わずかに陰影を付した領域)の全てのセクションに加えて、チャンバーの熱負荷を減少させた。
【図3】図3は、冷却上部ヒートシンク温度を維持するのに使用されるアルミニウム冷却浴(40)の描写である。2つのブラスコネクター(41−42)(冷却浴の縁から延びている)を使用して、10% EtOH/HO冷却剤を持つゴム管を接続する。冷却浴の縁から下方に延び、浴の底部に達しているのは、ゴム管(43)の短いセクションであり、これにより、外部空気圧縮機を使用して、冷却浴のほぼ完全な排出が可能になった。接合の位置の直下(この図では見えない)のゴム管セクションの小さな穴によって、チャンバーを再度充填する際に、空気を逃がすことができる。冷却浴の底部から延びているのは、ペルチエモジュール(44)および付随するヒートシンク(45)である。4つのネジを使用して、下部ヒートシンクおよびペルチエモジュールを、浴の底部にしっかりと固定した。3つのネジを使用して、チャンバーを蓋で密閉した。
【図4】図4は修飾されたLC24器具の最終的な組織図である。付属するヒートシンク(44)およびペルチエモジュール(45)を持つ冷却浴(40)を組み込むため、試料カルーセル(3)の頂部開口を広くし、支柱(46)を付加して、冷却浴(40)に対してカルーセルが回転できるようにした。ブラス冷却剤採取(41)および吐出口取付具(42)、ならびにチャンバー−冷却剤排出を可能にするためのチャンバー(40)の底部に延びるゴム吐出口管(43)が記される。下部ヒートシンク(44)は、上部ヒートシンク(47)と同一に機械化されたが、ファン(30)を回転させるのに、いくつかのさらなる改変が必要であった。最終的な器具修飾は、完全に閉鎖され、冷凍状態を許容するよく絶縁されたシステムを作る。1つの外部調節されたペルチエモジュール(45)は、活性冷却および加熱インプットの両方を供給する。チャンバー修飾は、標準蛍光モニタリング経路(48)に全く影響を及ぼさなかった。
【図5】図5は、反応チャンバー温度を調節するのに使用される外部制御システムの基本的な構成成分の図である。1つのコンピューター(60)、稼働中のLab View5.1(National Instruments)を使用して、標準LightCycler制御ソフトウェアならびに新たなカスタム設計された制御エレクトロニクスを制御する。チャンバー温度フィードバックおよび制御回路は、Power Box(61)内で統合される。Power Box(61)からポンプ(62)および圧縮機(63)へと延びる黒い線は、Power Box(61)内の回路から生じる制御インプットを示す。制御ボックス(61)の右底部から延びる二本の線は、ペルチエモジュール(64)への電力インプットを表す。冷却管(65−67)は、ポンプ(62)および圧縮機(63)の両方から、アルミニウム冷却浴(68)の頂部へ延びる線によって示される。2つの一方向チェック弁(圧縮機およびポンプから延びる管と線で繋がる小さな灰色の箱)(69−70)を使用して、適切な空気および液体冷却剤の流れる方向を維持した。Power Box(61)内に配置された1つの100W電力供給(71)は、制御回路に電力を供給し、ならびにペルチエモジュール(64)に主導電力を供給する。
【図6】図6は、チャンバー温度を制御するのに使用される制御回路の具体的な電子工学構成成分を示す。制御回路は3つのセクションに分けられる:モジュール(90)を通る電流極性制御、モジュール(91)への直線状電力調節および圧縮機−ポンプ調節(92)。極性制御(90)。ペルチエモジュール(示されていない)を通る電流極性(上部陰影を付した領域)は、12ボルト6−リード機械的リレー(93)の状態によって調節され、これは、低電力NPNトランジスタ(94)の状態によって制御される。リード配置は、コイル活性化が、モジュール(示されていない)を通る電流方向を逆にするものである。リレーコイル(93)活性化は、リレーリード配置を切り換え、NPNトランジスタ(94)の底部末端(97)にバイアスを導入することによって開始される。バイアスは、トランジスタ(95)のコンダクタンスを増加させ、リレーコイル(96)から地面(99)への電力供給(98)から回路を実質的に閉鎖する。1つのダイオード(100)を使用して、リレーコイル(96)(誘導的負荷)を活性化および不活性化させることによって発生する小さな電位からコンピューター(101)を保護する。それぞれ1kΩ(102)および200Ω(103)のレジスタは、コンピューター(101)からの電力出力を減少させ、適切なトランジスタ(95)およびリレーコイル(96)活性化用の源電位を下げる。電力調節(91)。ペルチエモジュール(93)を通る電力調節は、電位−フィードバック配置の作業増幅器(105)と合わせて、高ワット数NPNトランジスタ(104)を使用する。(OPアンプ(105)の陽性末端に接続された)コンピューター(112)からの最大アナログ−制御電位は20kΩPOT(107)を用いる(可変レジスタ)(OPアンプ(105)の陰性末端に接続された)0.1オームレジスタ(106)を横切る最大電位低下に整合される。このように接続されると、0.1オームレジスタ(106)を横切る電位低下がコンピューター発生制御電位に整合するまで、OPアンプ(105)は、トランジスタ(104)の底部電位を調節する。すなわち、コンピューター出力は、ペルチエモジュール(93)を通る電力を変調し、最終的にはチャンバー温度を変調する。さらなる制御(92)。陰影を付した領域外の回路は、冷却剤ポンプ(110)および空気圧縮機(111)の活性を調節するリレー制御(108−109)を含む。両方のリレー(108−109)は、「シンク」配置に繋がれるか、あるいは偽論理を使用する。コンピューターボードからのより高いワット数出力は、シンク配置で可能である。
【図7】図7は、標準LC24(a)、修飾されたLC24(c)、およびLC32(d)が40℃ないし90℃の標的温度ランプに従う能力を示す誤差対温度プロットを示す。個々のランプ速度は、修飾されたLC24につき、0.05℃/秒であり、LC24およびLC32につき、0.1℃/秒であった。誤差プロットは、いずれかの所与の時間の標的温度から実際のチャンバー温度を差し引き、次いで、標的温度に対して誤差シグナルをプロットすることによって作成された。3つの機械の間、修飾されたLC24は、より標的温度中心の誤差で最も良く実行した。LC24およびLC32の両方は、標的温度から実質的に外れた。
【図8】図8は、正確な配列および使用された全13のモデルオリゴヌクレオチドの提案された二次構造の両方の図である。対応する配列および右に与えられた構造のすぐ上に、特有の名前と共に、配列を左にリストする。左の配列の下の陰影を付された領域は、右のヘアピン形成に関与した配列を同定する。配列長は10ヌクレオチドないし56ヌクレオチドの範囲である。オリゴは、ヘアピン長によって名付けられ、また、テールまたはミスマッチといった修飾の存在を示す。9−12ヘアピンと名付けられたオリゴは、9bpおよび12bpの二本鎖領域を形成する2つのヘアピンを含有する。
【図9】図9は、Mfoldソフトウェアによって計算されたごとく、モデルオリゴ(9−12ヘアピン)を含有する2つのヘアピンの二次構造を示す。5’および3’端ならびにステム長が示される。www.mfold.burnet.edu.au/rna_formにてオンラインで入手可能なMfoldソフトウェアは、最も近い隣接計算によって、二次構造を予測する(SantaLucia,1998)。20℃の所与の構造の遊離エネルギー計算は、図の直下で与えられる。
【図10】図10は、13のモデルオリゴヌクレオチドの各々の代表的な融解曲線の編集を示す。この図では、蛍光の陰性誘導体は、温度に対してプロットされる。器具融解温度範囲は最小化されて、各配列の融解転移を強調するため、曲線は断片化される。オリゴヌクレオチドの各々につき収集された全てのデータポイントが含まれる。融解ピークは、17.7℃ないし78.6℃の範囲である。ミスマッチ、テールまたは複数のドメインを含まないオリゴヌクレオチドの典型的な融解曲線は、上方のプロット(a)で与えられる。ミスマッチ、テールおよび2つのヘアピンを持つオリゴを有するオリゴヌクレオチドから発生された曲線は、下方のプロット(b)で与えられる。低温度へのTmシフトは、テールまたはミスマッチを有するヘアピンにつき、明白である。二本ヘアピンオリゴ内の9bpおよび12bpのヘアピン(9−12ヘアピン)の安定性は、下方のプロットで示される。
【図11】図11は、モデル核酸システムの各配列の平均Tm値の圧密を、ステムサイズによって示す。複数の集団が、テール、ミスマッチおよび複数の融解ドメインといった配列変動を有するステムサイズと共に見受けられる。すなわち、9−12ヘアピンからのデータは、構成成分ステムサイズデータ(ステムサイズ9および12)と共に含まれる。テール、ミスマッチまたは複数のステムを含まない平均Tm値は、丸で確認され、ここに、Tm値およびステムサイズの間の対数関係を計算するのに使用される。
【図12】図12は、SYBR Green I蛍光によって観察された単離された5S rRNAの代表的な融解プロファイルを示す。SYBR(登録商標)Green Iの存在下で、70ないし96℃の0.05℃/秒温度ランプに、5S rRNA試料を付し、蛍光をモニタリングすることによって、融解データは収集された。図では、蛍光の陰性誘導体は、温度に対してプロットされる。8つの融解プロファイル構成成分が同定される。テスト(n=8)を繰り返すと、最大の変動を示す2、5および6と数を付けられたピークを持つ同様の結果を得た。使用された濃度は、1.0mM RNA、SYBRの1:15,000原液希釈液、および1.0mM Mg+2緩衝液であった。
【図13】図13は、E.coil 5S rRNAセグメントの二次構造の図である。セグメントの二次構造は、特異的なループまたは大文字で標識されたヘアピンを持つアルファ、ベータおよびガンマに分けられる。太い数字を使用して、特異的な二本鎖セグメントを確認する。より小さい数字は、潜在的な、命名者−同定、サブ−ドメインを同定する。図12に示される融解プロファイルの8つの観察された構成成分のうち7つは、このように、5Sセグメントをサブ−分割することによって説明できる。残りの融解転移は、内部Eループ内でしばしば起こる非−ワトソン−クリック相互作用の融解を反映するかもしれない。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、二本鎖の領域で現れる二次構造を有する一本鎖核酸の分析方法を提供する。一本鎖セグメントおよび二本鎖セグメントを含有する核酸分子は、二本鎖核酸セクションの各々につき、特異的な測定可能な融解温度またはTmを有するだろう。二本鎖セグメントの融解転移は、二本鎖核酸−特定的(dsNA−S)色素の蛍光強度をモニタリングすることによって決定可能であることを示すのは、本発明が最初である。さらに、もし二本鎖領域内に種−特異的配列変動が存在するならば、種−依存性融解プロファイルは入手可能であることを、本発明は示す。核酸融解転移をモニタリングすることによって二次構造分析を行うこの分析技術は、改変または突然変異核酸およびあまり改変されていない核酸またはあまり突然変異していない核酸といった非−同一核酸を識別することが可能である。リボソームRNAといった種−特異的配列またはそれらをコードする遺伝子を有する相同的核酸を使用して、そのような核酸が採取される細胞の種を同定することができる。さらに、既知の技術に必須な通常の増幅後プロセスなしに、本発明を用いて、増幅された核酸を特徴付けることができる。
【0025】
従って、本明細書中で提供されるのは、一本鎖核酸を特徴付ける方法である。この特徴付けは、核酸の環境温度の変化に応答して、一本鎖核酸の二次構造の変化をモニタリングすることを含む。さらに具体的には、該方法は、二本鎖または一本鎖核酸の二次高次構造から得られる明白な二本鎖領域の融解温度(Tm)を決定することを含む。二本鎖核酸−特異的色素を使用して、変動する温度に応答する二次構造のこれらの転移をモニターすることができる。理論に制限されることなしに、一本鎖核酸の異なるセグメント間の水素結合および他の非共有相互作用のため、二本鎖領域は、相補的およびほぼ相補的な領域間で、主にハイブリダイゼーションを介して形成する。上記記載のごとく、一本鎖核酸の二本鎖領域は、本明細書中で、「二本鎖二次構造」として呼ばれる。
【0026】
広い意味で、本明細書中の「核酸」、「ポリヌクレオチド」または「オリゴヌクレオチド」または文法的に同等のものは、一緒に共有結合した少なくとも2つのヌクレオチドを意味する。本発明の分析に影響されやすい核酸は、直線状配列の少なくとも2つの領域間で十分な相補性を有し、少なくとも1つの二本鎖二次構造を形成するのに十分な長さを有する。一般に、核酸は、天然に生じるヌクレオチドよりなる。しかしながら、当業者は、本発明はゲノムおよびcDNA双方のDNA、RNAまたはハイブリッドである核酸に適用可能であり、ここに核酸配列はデオキシリボ−およびリボ−ヌクレオチドのいずれかの組合せ、およびウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチンヒポキサンチン、イソシトシン、イソグアニン等を含む塩基のいずれかの組合せを含有する。本明細書中で使用されるごとく、用語「ヌクレオシド」は、ヌクレオチドおよびヌクレオシドおよびヌクレオチド類似体、およびアミノ修飾ヌクレオシドのような修飾されたヌクレオシドを含む。加えて、「ヌクレオシド」は、非−天然に生じるアナログ構造を含む。すなわち、例えば、各々が塩基を含有するペプチド核酸配列の個々のユニットは、本明細書中で、ヌクレオシドと呼ばれる。
【0027】
当業者は、例えば、ホスホルアミデート(Beaucageら, Tetrahedron 49(10) :1925(1993)およびその中の引用; Letsinger, J. Org. Chem. 35: 3800 (1970); Sprinzlら, Eur.J. Biochem. 81 : 579 (1977); Letsingerら,Nucl. Acids Res. 14 : 3487(1986); Sawaiら, Chem. Lett. 805(1984), Letsingerら, J. Am. Chem.Soc. 110: 4470(1988);およびPauwelsら, Chemica Scripta 26:141 91986))、ホスホロチオエート(Magら, Nucleic Acids Res. 19: 1437 (1991);および米国特許第5,644,048号)、ホスホロジチオエート(Briuら,J. Am. Chem. Soc. 111: 2321 (1989))、O−メチルホスホルアミデート結合(Eckstein,Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, Oxford University Press参照)、およびペプチド核酸骨格および結合(Egholm, J. Am. Chem. Soc. 114: 1895 (1992); Meierら, Chem. Int. Ed. Engl. 31:1008 (1992);Nielsen, Nature, 365: 566 (1993);Carlssonら, Nature 380: 207 (1996)参照),これら全ては引用によって組み込まれる)を含む代替の骨格を有する核酸アナログに、本発明は適用可能であることを理解するだろうが、本発明の核酸配列は、一般に、リン酸ジエステル結合を含有するだろう。本発明を使用して分析することができる他のアナログ核酸は、陽性の骨格(Denpcyら, Proc.Natl. Acad. Sci. USA 92: 6097 (1995);非イオン性骨格(米国特許第5,386,023号、同第5,637,684号、同第5,602,240号、同第5,216,141号および同第4,469,863号; Kiedrowshiら, Angew. Chem. Intl. Ed. English 30: 423 (1991); Letsingerら, J. Am. Chem. Soc.110 : 4470(1988); Letsingerら, Nucleoside & Nucleotide 13: 1597(1994); Chapters 2 and 3, ASC Symposium Series 580, "Carbohydrate Modifications in Antisense Research", Ed. Y. S. Sanghui and P. Dan Cook; Mesmaekerら, Bioorganic & Medicinal Chem. Lett. 4: 395 (1994); Jeffsら, J.BiomolecularNMR 34 : 17 (1994); Tetrahedron Lett. 37: 743 (1996))および米国特許第5,235,033号および同第5,034,506号、およびChapters 6 and 7, ASC Symposium Series 580,"Carbohydrate Modifications in Antisense Research", Ed. Y. S. Sanghui and P. Dan Cook記載のものを含む非−リボース骨格を含む。また、1つ以上の炭素環式糖を含有する核酸は、核酸の一つの定義内に含まれる(Jenkinsら, Chem. Soc. Rev. (1995)pp 169-176参照)。いくつかの核酸アナログは、Rawls, C & E News June 2,1997ページ35に記載されている。これらの引用の全ては、引用によって、ここに明白に組み込まれる。
【0028】
当業者によって理解されるように、これらの核酸アナログの全ては、本発明における利用法を見つけるだろう。加えて、天然に生じる核酸およびアナログの混合物ならびに異なる核酸アナログの混合物、および天然に生じる核酸およびアナログの混合物は、本発明を用いて分析可能である。
【0029】
本発明の好ましい具体例において、一本鎖核酸は、二本鎖核酸−特異的色素と組み合わせられる。「組み合わせる」およびその文法的に同等のものによって意味されるのは、核酸および色素は、相互作用するように十分に近接されるということである。例えば、核酸および色素は、同じ溶液に、同時に、またはいずれかの順序で引き続いて添加されてもよい。特に下記の論議から当業者は認識するであろうごとく、例えば核酸が増幅産物である時、一本鎖核酸は、色素の存在下で生成される。また、本明細書中で使用するように、もう1つの成分の存在下での一方の成分の生成は、用語「組み合わせる」によって網羅される。
【0030】
二本鎖核酸−特異的色素は、当該分野でよく知られている。一般に、dsNA−S色素は、好ましくは、二本鎖核酸と複合体化した存在下にある時に検出可能であるいずれかの物質である。典型的には、dsNA−S色素は、好ましくは、二本鎖核酸と結合されるか、あるいは複合体化されているだろう。
【0031】
好ましくは、dsNA−S色素は蛍光色素であり、二本鎖核酸と複合体化された時のその蛍光特徴は、それがあまり複合体化されていない時から区別可能である。典型的には、二本鎖核酸と複合体化されている時の方がされていない時よりも、dsNA−S色素は、より強い(より大きい)蛍光シグナル(蛍光発光)を生成するだろう。しかしながら、二本鎖核酸に結合すると、そのような色素はより弱い(より小さい)蛍光シグナルを生成することがあり、あるいはそれらは、例えば異なる波長のシグナルといった異なる蛍光シグナルを生成するかもしれない。そのような区別可能なシグナルは本発明において有用である。
【0032】
本明細書中に開示する方法で有用な色素は、SYBR(登録商標)Green I、SYBR(登録商標)Gold、臭化エチジウム、アクリジンオレンジ、臭化プロピジウム、PicoGreen、Hoechst 33258、Hoechst 33342、Hoechst 34580、Y−PRO(登録商標)−IおよびYOYO(登録商標)−Iを含むが、これらに限定されるものではない。例えば、the Molecular Probes (Eugene, OR) catalog Handbook of Fluorescent Probes and Research Products, 第8版(on CD-ROM, May,2001;引用によって、本明細書中に組み込まれる)のChapter 8は、本発明で使用可能な色素のホストをリストする。
【0033】
また、飽和色素は、本発明の方法において使用可能である。多くの飽和色素は、シアニン族に属する。しかしながら、dsDNA結合色素の他の族は有用であると考えられ、これはフェナントリジニウムインターカレーターおよびフェナントロリン系メタロインターカレーターを含むが、これらに限定されるものではない。本発明の方法で有用なシアニン色素は、LightCycler GreenおよびPO−PRO−1、BO−PRO−1、SYTO 43、SYTO 44、SYTO 45、POPO−1、POPO−3、BOBO−1、およびBOBO−3(分子プローブ)を含むが、これらに限定されるものではなく、これらは:
【化1】

[式中、
部位Yは、所望により置換された縮合単環式または多環式芳香環または窒素含有芳香族複素環を形成し;
Xは酸素、硫黄、セレン、テルル、またはC(CH、およびNRよりなる群から選択され、ここにRは水素またはC1−6アルキルである;
は所望により置換されたC1−6アルキル、または環式または非環式ヘテロ原子含有部位である]
として一般に記載されるピリジニウム核構造との非対称性シアニンのモノマーまたはダイマーである。例示的なヘテロ原子含有部位は、所望により置換されたヘテロアルキル、ヘテロシクリル、スルホネート、アミノ、カルボキシ、ヘテロアルケニル、ヘテロアリール、エステル、アミン、アミド、リン−酸素、およびリン−硫黄結合を含む。例示的なヘテロ原子含有部位は、米国特許第5,658,751号およびWO00/66664で論議され、これらは引用によって本明細書中に組み込まれる。
t=0または1であり;
zは0または1から選択される電荷であり、但し、z=tであり;
、R、およびR10は、独立して、水素およびC1−6アルキルから選択され;
n=0、1、または2であり;
Qは:
【化2】

[式中、R、R、R、R、およびRは、独立して、水素;ハロゲン;アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルケニル、ポリアルケニル、アルキニル、ポリアルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル(これらは全て所望により置換される);他のヘテロ原子含有部位;BRIDGE−DYE(ダイマーを含む);および反応性基(これらは各々、所望により、第四級アンモニウムといった荷電基を含む)よりなる群から選択される]
よりなる構造の群から選択される芳香環である。BRIDGEは、WO00/66664で定義され、既に引用によって組み込まれている。DYEは、式Iの化合物である。立体異性体は、特記しない限り、シアニン色素構造の記載に含まれる。
【0034】
本発明での使用に対して例示的な色素は、式Iのシアニン色素であり、これは、ピリジニウムまたはピリミジニウム核構造を有し、ここに部位Yは、所望により置換されたベンゼンを形成し、それにより、ベンザゾリウム環を形成し;Xは酸素または硫黄であり;n=0または1であり;t=0または1であり;Rはメチルであり;Qは:
【化3】

よりなる構造の群から選択される芳香環であり、
好ましくは、Qは:
【化4】

[式中、
は水素、アルコキシ(例えばOMe)、アルキルチオ(例えばSMe)、またはヘテロシクロアルキル(例えばピペラジニル)、または荷電基(例えば4,4−ジメチルピペラジニウム−1−イル)を含むヘテロシクロアルキルであり;
はC1−6アルキル、(例えばMe)、またはフェニル、(CH(Me)、または(CHMe(CHMe(CHであり、加えて、これは第2の4−ピリジニウムの窒素に結合しており、それにより、ダイマーを形成し、ここに第2のピリミジニウムは式Iの第2の化合物の部分であり;R、R、およびRは水素である]
である。
【0035】
LO−PRO−1、JO−PRO−1、YO−PRO−1、TO−PRO−1、SYTO 11、SYTO 13、SYTO 15、SYTO 16、SYTO 20、SYTO 23、TOTO−3、YOYO−3(Molecular Probes,Inc.)、GelSタール(Cambrex Bio ScienceRockland Inc., Rockland, ME)、およびチアゾールオレンジ(Aldrich)に限定されるものではないが、こういったキノリニウム核構造との非対称性シアニンもまた有用である。4−キノリニウム(式IIとして下記に示す)または2−キノリニウムのいずれかが、ピリジニウムの代わりに分子の右部分を占有することを除いては、キノリニウム核構造は、ピリミジニウム系シアニンのそれと似ている。
【化5】

[式中、
部位Yは、所望により置換された縮合単式または多環式芳香環または窒素含有芳香族複素環を形成し;
Xは酸素、硫黄、セレン、テルル、またはC(CH、およびNRから選択される基であり、ここにRは水素またはC1−6アルキルである;
は所望により置換されたC1−6アルキルであり、あるいは環式または非環式ヘテロ原子含有部位である]
t=0または1であり;
zは0または1から選択される電荷であり、但し、z=tであり;
、R、およびR10は、独立して、水素およびC1−6アルキルから選択され;
n=0、1、または2であり;
、R、R、R11、R12、R13、およびR14は、独立して、水素;ハロゲン;アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルケニル、ポリアルケニル、アルキニル、ポリアルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル(これら全ては所望により置換される);他のヘテロ原子含有部位;および反応性基、(もしRは115未満、より好ましくは105未満の分子量であるならば、これらは各々所望により第四級アンモニウムといった荷電基を含む)である。代わりに、R、R、R11、R12、R13、およびR14は上記定義通りであり、式IIの2つの化合物は一緒になって、ダイマーを形成し、ここに、もし色素がキノリニウムシアニンn=1または2のダイマーであるならば、式IIの各々の基Rは一緒になって、二価部位を形成する。
【0036】
本発明における使用のための例示的な色素は、式IIのシアニン色素を含み、ここに部位Yは所望により置換されたベンゼンを形成し、それにより、ベンザゾリウム環を形成し;Xは酸素または硫黄であり;n=0または1であり;t=0または1であり;Rはメチルであり;
は水素、(Meといった)C1−6アルキル、または所望により置換されたフェニル、好ましくはフェニルであり;
は、(メチルのような)C1−6アルキル、または所望により置換されたフェニル、好ましくはフェニルであり;次いで
は水素であり、R11、R12、R13、およびR14は水素または(メトキシといった)アルコキシである。
また、本発明における使用のための例示的な色素は、例示的に、式IIのシアニン色素を含み、ここに部位Yは、所望により置換された(1−メチルピリジニウムまたは3−ブロモ−1−メチルピリジニウムといった)複素環を形成し;Xは酸素または硫黄であり;n=0または1であり;t=z=0であり;
は水素、または(Meといった)C1−6アルキルであり;
は、(Meのような)C1−6アルキル、所望により置換されたフェニル、好ましくはフェニルまたは(基−(CHN(Me))といった)荷電基を含むヘテロアルキルであり;次いで
は水素であり、R11、R12、R13、およびR14は水素、(メチルのような)アルキル、または(メトキシのごとき)アルコキシである。
【0037】
上記のシアニン色素は例示的なものであって、他のシアニン色素もまたここに記載される方法において有用であり得る。
【0038】
SYBR(登録商標)Green Iを含むキノリニウム系非対称性シアニンのいくつかは、「飽和色素」の定義内に含まれていない。色素が、キノリニウム系シアニンのモノマーである時、キノロニウム環(Rと同等の位置)の窒素に隣接した炭素でのかさ高い置換は、色素が高飽和レベルで結合する能力を妨害する。かさ高い置換は、例えば、MW=150より大きい脂肪族分岐で置換された長分岐ヘテロ−原子−含有脂肪族鎖または芳香族部位である。しかしながら、この制限は、先に言及したピリジニウムシアニンには適用しない。キノリニウム系シアニンダイマーの場合、(基−CR(=CR−CR10=によって決定される)左および右環系間の長さは、また、官能性を決定するようである。これらの色素は「飽和色素」の定義内に含まれず、特定の適用に適していないが、SYBR(登録商標)Green Iといった色素は、本開示の方法と適合する。
【0039】
好ましい具体例において、一本鎖およびdsNA−S色素の組合せは、結果的に、核酸内の色素および1つ以上の二本鎖二次構造間に検出可能な複合体を形成する。理論によって制限されることなしに言えば、dsNA−S色素は、二本鎖核酸に対して優先的な親和性を有し、しばしば核酸の二つの鎖の間に介入することによって、二本鎖核酸に結合、あるいはさもなければそれと連結する。色素および核酸の連結は、結果的に、二本鎖核酸とあまり連結していない色素から色素を識別する。すなわち、本明細書中で使用するごとく、「検出可能な複合体」は、二本鎖二次構造を意味し、ここに一本鎖核酸およびdsNA−S色素は一緒になって、二本鎖二次構造と連結していないdsNA−S色素から識別可能な複合体を形成する。
【0040】
好ましくは、dsNA−S色素は、蛍光色素である。好ましくは、検出は、dsNA−S色素からの蛍光発光の測定によるものである。一般的に、「励起」波長と呼ばれる特定の周波数または周波数のバンドへの露出に応答して、フルオロフォアは、特定の周波数または周波数のバンドにて、蛍光発光(フォトン発光)を生成する。本発明において、色素が検出可能な複合体にない時と区別することができる検出可能な複合体の二本鎖二次構造と連結する時に、各dsNA−S色素は蛍光発光を生成する。好ましくは、検出可能な複合体の色素の発光は、発光の強さおよび/または発光のスペクトル含有量によって区別できる。いくつかの場合、色素は検出可能な複合体内にない場合、実質的に全く蛍光発光を有しない。典型的には、色素の発光は、検出可能な複合体内にある時により大きい(より強い)が;しかしながら、検出可能な複合体の形成は、いくつかの色素の発光を減少させ、および/または、発光のスペクトル含有量を改変する。
【0041】
蛍光dsNA−S色素のごとき、フルオロフォアからの蛍光発光(ルミネセンス)の測定は、当該分野でよく知られている。典型的には、励起照明はフルオロフォアを含有する試料に提供され、関心のある周波数または周波数バンドは、1つ以上のフィルターおよび光学検出器、たとえばフォトダイオードを用いて測定される。
【0042】
本発明の好ましい具体例において、分析下にある一本鎖核酸の温度は変動する。「温度を変動させる」によって意味されるのは、温度を上昇させるおよび/または減少させることである。好ましい具体例において、一本鎖核酸は、1つ以上のその二本鎖二次構造の融解温度(下記定義される)以下の温度にて提供され、二本鎖二次構造のTmを超える温度まで上昇される。核酸試料の温度を変動させる多くの手段は、当該分野で知られ、入手可能である。
【0043】
本発明の好ましい具体例において、変動が起こる間の温度は、約10°および100℃であり、より好ましくは約20°および95℃であり、さらにより好ましくは約30°および95℃である。
【0044】
好ましい具体例において、一本鎖核酸の温度は、約0.005°および0.05℃/秒間、より好ましくは0.001°および0.1℃/秒間、よりさらに好ましくは約0.0001°および1℃/秒間の率にて変動する。特に好ましい具体例において、一本鎖核酸の温度は約0.01℃/秒またはそれ未満の率にて変動する。
【0045】
好ましい具体例において、一本鎖核酸の1つ以上の二本鎖二次構造の融解温度(Tm)は、決定される。一般に、核酸の融解は、二重らせん状態から一本鎖状態への高次的転移を指す。核酸鎖の半分が二重らせん状態にあり、半分が「ランダムコイル」(一本鎖)状態にある際の温度は、融解温度として定義される(Santa Lucia, PNAS(USA) 95: 1460-1465 (1998))。すなわち、核酸鎖の所与の対のTmは、鎖結合に対する鎖の安定性の指標であり、鎖の相補性、配列長、GC含有量および環境状態によって決定される(Lewin, GenesV, Chapter 5, Oxford University Press and Cell Press: New York, (1994) pp. 109-126 ; SantaLucia,1998)。本明細書中で使用されるごとく、一本鎖核酸の二本鎖二次構造に関して、二本鎖二次構造を形成した一本鎖核酸の2つのセグメントの解離のため、「融解温度」、「Tm」およびその文法的同等物は、試料の一本鎖核酸の約半分が二本鎖二次構造よりなり、約半分はそうではない時の温度を意味する。
【0046】
発明の背景のセクションで論議したように、核酸の融解温度を決定する多くの方法は、当該分野で知られている。好ましい具体例において、一本鎖核酸の二本鎖二次構造のTmは、核酸の温度を変動させる間に、一本鎖核酸と合わせたdsNA−S色素の蛍光発光をモニタリングすることによって決定される。所与の温度または制限された温度範囲での蛍光発光の変化は、二本鎖二次構造の融解温度を示す。
【0047】
当業者は理解するように、一般に、いずれかの二本鎖核酸構造の融解は、制限された温度範囲にわたり、同様の核酸の集団の実質的な集団で起こり、典型的には、該核酸のTmの近似値にて、融解(最速の移動)のピークを迎えるだろう。すなわち、蛍光発光の変化のそのようなピークを使用して、二本鎖二次構造に対するTmを計算することができる。
【0048】
さらに、1つ以上の二本鎖二次構造を有するいずれかの一本鎖核酸は、特徴的なTmプロファイルを提供するだろう。「Tmプロファイル」によって、「融解温度プロファイル」、およびその文法的同等物は、二本鎖二次構造を有する一本鎖核酸の相対的量の記載を意味する。好ましい具体例において、Tmプロファイルは、dsNA−S色素の蛍光発光を測定することによって発生されて、二本鎖二次構造を持つ検出可能な複合体に組み込まれた色素の量を示し、すなわち、二本鎖高次構造にある一本鎖核酸の量を示す。
【0049】
融解温度プロファイルは、Tに対して−dF/dTをプロットすることによって図示的に表され、ここにdFは測定された蛍光発光の変化であり、dTは、核酸の温度の変化であり、Tは核酸の温度である。そのような図示的表示は、融解温度を示しつつ、蛍光の最速の変化が起こる温度でのピークを見せるだろう。
【0050】
二本鎖二次構造のTmにつき分析される一本鎖核酸は、細胞または組織資料からの核酸のようないずれかの源からの主要な試料の部分であるか、あるいはそれから単離されたものである。核酸は、合成核酸であってもよい。また、分析される核酸は、核酸増幅産物であってもよい。もちろん、増幅される核酸は、天然に生じる源あるいは合成された源のいずれからでも入手できる。
【0051】
「核酸増幅産物」、「増幅産物」、「増幅核酸」およびその文法的同等物は、核酸増幅方法の産物を意味し、これによって、初期の核酸のコピーが作成される。当業者は、核酸を増幅する多くの入手可能な方法が存在することを理解するだろう。恐らく、最も人気のある方法は、ポリメラーゼ連鎖反応である(PCR;例えば、米国特許第4,683,195号および同第4,683,202号、ならびにSaikiら, Science 230: 1350-1354 (1985)およびGyllenstenら, PNAS (USA) 85: 7652-7656 (1985)参照)。PCR方法の好ましいバリエーションは、非対称性PCRである(例えば、Maoら, Biotechniques 27 (4): 674-678 (1999); Lehbeinら, Electrophoresis 19 (8-9): 1381-1384 (1998); Lazaroら, Molec. Cell. Probes 6 (5): 357-359 (1992);および米国特許第6,197,499号参照)。他の増幅方法は、鎖置換増幅(SDA)(Walkerら, Nuc. Acids Res. 20 (7): 1691-1696 (1992)、ならびに米国特許第5,744,311号、同第5,648,211号および同第5,631,147号参照)、ローリングサークル増幅(RCA)(PCT公報WO97/19193参照)、核酸配列に基づいた増幅(NASBA)(Compton, Nature 350: 91-92 (1991) ;ならびに米国特許第5,409,818号および同第5,554,527号参照)、転写媒介増幅(TMA)(Kwohら, PNAS (USA) 86: 1173-1177(1989)ならびに米国特許第5,399,491号参照)、自己持続性配列複製(3SR)(Guatelliら,PNAS(USA) 87: 1874-1879 (1990)参照)およびリガーゼ連鎖反応(LCA)(米国特許第5,427,930号および同第5,792,607号参照)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0052】
1つの好ましい具体例において、分析される核酸は、細胞または組織試料から入手されたかあるいは単離された天然に生じる核酸である。もう1つの好ましい具体例において、核酸は増幅された核酸である。後者の具体例において、好ましくは、増幅された核酸はPCRの産物であり、より好ましくは、非対称性PCRの産物である。
【0053】
本発明は、多くの利用法がある。例えば、Tmプロファイルを使用して、一本鎖核酸を特徴付けることができる。次いで、そのような特徴付けを使用して、異なる一本鎖核酸を比較することが可能である。2つの核酸のTmプロファイルの差異は、2つの核酸が異なる配列を有することを示す。2つの核酸間の配列の差異の同定は、多くの利用法がある。
【0054】
1つの具体例において、試料核酸の配列の改変は、試料核酸のTmプロファイルを、既知の配列を有する核酸のそれと比較することによって、検出可能である。例えば、通常または鎖細胞のゲノムからの既知の配列の核酸のTmプロファイルは決定され得る。同一の細胞型の試料からの同様の核酸のTmプロファイルは決定され得る。通常/標準細胞からの核酸および試料からの核酸のTmプロファイル間の差異は、試料からの核酸の対立形質の変動または突然変異を示す。さらに、もし既知の配列変動のプロファイルが決定されたならば、試料からの核酸のTmプロファイルは、通常/標準核酸からの差異の性質を示す。この技術を用いて、個人は、特定の対立遺伝子につきタイプされ得、あるいは特定の突然変異体によって引き起こされる疾患につきスクリーンされ得る。
【0055】
細胞からの核酸試料のTmプロファイル決定に対するもう1つの使用法は、どの細胞の種型から試料が得られたかの決定である。そのような決定につき特に有用なのは、リボソームRNAであり、あるいは、好ましくは、DAコーディングリボソームRNAの増幅された領域である。発明の背景セクションで論議したごとく、高頻度可変領域は種−特異的であるため、リボソームの配列の高度に保存された領域によって囲まれた多くの高頻度可変領域が同定されてきた。保存された領域に基づくプライマーは、リボタイピング技術用に、そのような高頻度可変領域を特異的に増幅するように開発された。本発明を同様の方法で使用して、試料中のリボソーム核酸のセグメント(例えば、エンドヌクレアーゼ消化断片)を増幅させ、そのような増幅産物に対するTmプロファイルを決定することによって、核酸試料が入手された細胞をタイプすることができる。Tmプロファイルを、既知の種からの同様の核酸セグメントからのTmプロファイルと比較すると、試料が入手された種がわかる。これらの方法を使用して、例えば、感染の原因を同定、あるいは感染性細胞種の存在を同定することが可能である。
【0056】
本発明は、多くの分野で利用法があり、これは、遺伝学、免疫学、感染性疾患、腫瘍学、疫学および法医学を含むが、これらに限定されるものではない。そのような使用は、腫瘍原性物質の突然変異を同定すること、遺伝性の遺伝病を同定すること、およびそのような疾患の治療を導くことを含むが、これらに限定されるものではない。加えて、本発明を使用して、対立遺伝子変異体を同定し、生物学的試料の源を同定し、および父性を決定することが可能である。
【0057】
当業者には、本発明の多くの他の適用が可能であることが明白であろう。本明細書中に引用する全ての文献は、それらの全文において組み込まれる。
【0058】
次の実施例は、例示的な目的のために提供される。これらの実施例は、本発明の真の範囲を制限するようなものではない。
【実施例】
【0059】
実施例1:20℃ないし100℃の範囲で、試料温度の生成に対して蛍光検出能力を有する高速熱サイクリングデバイスの修飾
その蛍光モニタリング能力および小試料容量のため、本明細書中に記載する実験用の選択器具として、LightCyclerTM(Idaho Technologies, Idaho Falls, ID)を選択した。しかしながら、核酸の融解温度に関する文献の概説は、LightCyclerTMの標準の範囲である40℃ないし100℃よりも広い範囲の温度が必要であろうことを示唆している。例えば、リボソーム遺伝子内の二重−らせん領域の標準の長さは、約3bpないし20bpの範囲であると知られていた((De Rijkら, 前掲; Gutellら, Nucleic Acids Res. 21 (13) :3055-3074 (1993); Spechtら, Nucleic Acids Res. 25(1) :96-97(1997) ; Szymanskiら, Nucleic Acids Res. 28(1) :166-167 (2000))。Kulinksiら(1991)は、麦芽およびルピナス種子の両方からの5S rRNA試料は300および340K(27°および67℃)間の観察可能な転移を有し、非常に特徴的な融解転移プロファイルが、2つの検体につき観察されることを発見した。Panerらは、4bpループを持つ6bpステムを含有するヘアピンにつき、55℃中心の転移を報告している(1990)。VamosiおよびCleggは、8bpないし20bpのステムサイズの範囲にあるヘアピンにつき、20°ないし71℃の融解範囲を記録している(1998)。Volkerおよび同僚らによって行われた研究は、200bpプラスミドの活性をモニターし、短い内部セグメントは、75℃および95℃の間で融解することが判明している(1999)。これらの研究群によって使用された温度転移速度は、通常、60℃/時間(<0.017℃/秒)未満であった。この情報に基づき、LightCyclerTMの温度調節を修飾して、3℃ほどの低温度を達成し、0.01℃/秒に近い転移速度を達成した。
【0060】
先に修飾されたLightCyclerTMシステムは、「高速温度調節を持つマイクロボリュームマルチサンプル蛍光光度計」である(Wittwerら, 1997)。基本的な熱サイクリングデバイスは、米国特許第5,455,175号および同第5,935,522号に詳細に記載され、これらは全文において、本明細書中に組み込まれる。LightCyclerTMに似たデバイスは、同時係属米国特許第09/651,374号に記載され、これもまた本明細書中に組み込まれる。
【0061】
図1は、熱サイクリングおよび増幅産物分析用に使用される作用器具の基本的な構成要素の全てを示す。温度サイクリングは、調節可能な高−ワット数加熱コイルおよび連続的気流によって可能になる。器具を囲む空気は、チャンバー内部で見受けられる放射状のファンの作用によってチャンバー内に吸い込まれ続ける。それがチャンバーの頂部を出るまで、ファンの回転は、中心から外側および上側に空気を押す。空気の外側への動きは、チャンバーの中心に低圧力領域を起こし、これは空気を、加熱コイルを横切ってチャンバーへと吸い込ませる。また、円状気流パターンが、チャンバー内部で確立される。反応試料は、小さな試料ホルダー内で含有され、チャンバー内部の熱環境に曝される。チャンバー内部の高速循環空気は、個々の試料ホルダー内へあるいはその外へと、熱移動を増加させ、PCR反応としてのそのような適用のために使用する高速熱サイクリングを可能にする。試料の増幅反応および産物分析の間の産物蓄積のモニタリングは、ステッパーモーターで励起および収光オプティックス上方で試料を回転させ、蛍光核酸色素を取り込むことによって可能になる。核酸色素用の励起源としての青色LED機能および励起およびシグナル収集は、同一の経路(近軸向き)に沿って起こる。
【0062】
図1は、2つのフォトダイオードを使用して、出力シグナルを収集する二色取得の可能性を持つLightCyclerTMを示す。2つの二色性を使用して、それぞれ505nmおよび560nmにてカットオフで、色分離を達成する。試料回転経路の内側のチャンバーに置かれた熱電対は、温度フィードバックをコントローラーに供給する。温度、ステッパーモーター、ファン速度、および蛍光データ取得は、LabView−based software(National Instruments, Austin, TX)を用いて調節される。
【0063】
修飾されていないチャンバーは、主に、試料−含有ガラスキャピラリーを保持するための24−真鍮差込を持つ陽極酸化されたアルミニウムで構成される(図1参照)。絶縁体は、チャンバーの内部の全側面に並ぶ(図1−チャンバーの内部に並ぶ絶縁体を灰色で陰影を付ける)。計測手段修飾は、チャンバー修飾、および温度調節修飾に分けられる。蛍光モニタリングに使用する通常の光学経路を再構築する必要を避けるため、チャンバー修飾は最小化された。通常のシステムへの修飾は、チャンバーの内部および外部へのさらなる絶縁強化、ペルチエ冷却/加熱デバイスの利用、試料カルーセルの頂部開口への寸法的調整、さらなる軸受けの組み込み、冷却剤浴組み込みおよびファン修飾を含んだ。特定の修飾されたLightCyclerTMは、標準の24−試料熱サイクラー(LC24)であった。
【0064】
チャンバー修飾
高速熱移動率を持つ現在のチャンバーデザインを、ガラスキャピラリーに利用するために、小さな修飾のみが、反応チャンバーに行われた。上記のごとく、さらなる絶縁体をチャンバーの内部および外部に加えた。最も重要なことには、新たな絶縁体を、試料カルーセルの上部に配置して、真鍮差込を介するチャンバーへの熱の高速移動を減少させた。また、さらなる絶縁体を、試料チャンバーの側面に付けた。標準の放射状のチャンバーファンを、軸ファンで置き換えて、ファンモーターへの力を半分に減少させた。図2は、標準加熱コイルの取出および他のチャンバー調整を示す。
【0065】
温度制御修飾
変化を最小化するために、標準LightCyclerTMの加熱体として、冷却/加熱源を同一の位置に置いた。システムモデリングから得られる推定されるチャンバー性質を使用して、ワット数出力および寸法に基づいて、ペルチエ冷却/加熱モジュールを選択した(Melcor Materials Electronic Products Corporation, Trenton, New Jersey, Part #CP 1.0-127-05L-1)。2つのヒートシンク(Wakefield Engineering, Wakefield, MA, Part#698-100AB)を入手し、ペルチエモジュールと組合せて使用するために修飾した;モジュールの温かい側および冷たい側の両方につき、1つのヒートシンク。「熱い」ヒートシンクの連続的冷却との最適なペルチエ作動のため、連続した冷却流能力を持つアルミニウムの水浴または冷却浴も構築し、機械化した(図3参照)。上部ヒートシンクを、冷却チャンバー内に置き、下部ヒートシンクを、ペルチエモジュールから反応チャンバーへ延長した。冷却チャンバーに配置された上部ヒートシンクの最終的な形は、1.75インチ(4.4cm)の底部直径および1.2インチ(3.0cm)の高さを持つ円柱状であった。底部ヒートシンクを同じ寸法に切ったが、フィンを修飾して、チャンバーへのヒートシンク浸透を最大化し、ファン回転させた。
【0066】
試料カルーセルへの小さな修飾は、閉鎖したシステムを維持する間、ヒートシンクを伴う冷却浴の組み込みおよびカルーセル回転の両方を可能にするために必要であった。頂部開口を僅かに拡大させ、2.5”OD(2.0”ID)機械的軸受けを締め付けることによって、ペルチエモジュールについての回転を達成した(Kaydon Corp., Muskegon, MI)。機械的軸受けによって、試料カルーセルがその下を回転している間、アルミニウム冷却チャンバーを静置させておくことができた。
【0067】
冷却浴を含むペルチエモジュール冷却/加熱システム
試料カルーセルへの熱入力を、60W(3.9A15ボルト)ペルチエモジュール(Melcor Corp. Part # CP 1.0-127-051-1)、2つの修飾されたヒートシンク(上記で言及)およびカスタムデザインされた/カスタム形成されたアルミニウムの冷却浴で達成した。3cm平方ペルチエモジュールを、下部ヒートシンクおよび冷却浴の下面双方を通って、上部ヒートシンク中の4つの6−40テーパー付きの穴へ延びる4つのネジで冷却浴の下面に締め付けた。ネジの締めが、下部ヒートシンクおよび冷却浴の下面の間にモジュールを拘束するような配置とした。熱ペースト(Melcor Corp. Part #TCE-001)を、各界面にて使用して、モジュールから下部ヒートシンクおよび冷却浴への熱移動を促進させた。上部ヒートシンクを、冷却浴に含めて、液体冷却剤に暴露される表面領域を拡大した。デジタル温度計(Physitemp Instruments, Inc.Clifton, NJ)によって読み取られる2つのさらなる熱電対を使用して、ペルチエモジュール性能をモニターした。1つを下部ヒートシンクに置き、他方を上部ヒートシンクの冷却浴内に置いた。両方の熱電対を、熱エポキシ(Melcor Corp. part#TCE-001)で、それぞれのヒートシンクに固定した。
【0068】
3インチのアルミニウムバーストックから機械で作られた冷却浴は、カップ様冷却浴および蓋よりなる。蓋を3半インチ(1.75cm)6−40ネジで浴の上部に固定した。ゴム製ガスケットを、蓋および浴の間に置いて、接合部を水密にした。冷却浴の内部容量は(上部ヒートシンクなしで)80mLであった。10%EtOH溶液を液体冷却剤として使用し、蓋にネジ止めされた2つの銅取付具に付着したゴム管を用いて、溜め内および外に送った。冷却循環を、冷凍および加熱能力を有する循環サーモスタット(Haake, Karlsruhe, Germany, #FK16)によって動かした。室温冷却剤流速は、約1400mL/分であった。10%エタノール溶液は、水の凝固点を約10℃降下させた(Weast, CRC Handbook of Chemistry and Physics, 第63版, CRC Press, Boca Raton, FL (1982) p.236)が、冷却剤が冷却されると、溶液は僅かにより粘稠性になり、流速は減少した。−10℃の冷却温度では、流速は室温の大体半分であった。1つの銅取付具のルーメンから下には、ゴム管のセグメントがあり、これは外部空気圧縮機による自動冷却剤排出を可能にした。空気が密閉冷却チャンバーに押し出されると、液体は延長管を介して押し出された。管は、チャンバーの底部のすぐ上に達するため、冷却チャンバーのほぼ完全な放出は可能であった。銅取付具のすぐ下のゴム延長管の小さな穴によって、チャンバーを再充填する際に得られた空気を逃がすことができた。図4は、完全な冷却浴デザインおよび試料反応チャンバーへの組み込みを示す。また、ヒートシンクデザインも図4で示される。
【0069】
温度調節修飾
LightCyclerTMによって使用される高ワット数パルス幅変調制御スキームは、ペルチエモジュールと不適合であるため、新たなペルチエモジュール加熱/冷却システムもまた、新たな調節システムを必要とした。結果的に、別々の電力供給およびリニアーコントローラーを構築し、システムに組み込んだ。図5は、修飾されたシステム内の各構成要素の関係を示す。Lab Viewを動かしているコンピューターを使用して、ポンプ活動、圧縮機活動、100W電力供給からの電力出力およびLightCyclerTM用の標準実行ソフトウェアを含む修飾されたシステムの全側面を制御した。図5に示されるごとく、Power Boxは、各構成要素からコンピューターへの入力および出力を流すジャンパーステーションとして作動する。また、Power Boxは、システムの各構成要素の活動を媒介する電力供給および制御エレクトロニクスを収容する。具体的な制御構成要素は、ペルチエモジュールへの電力を調節するカスタム形成リニアーコントローラーおよび圧縮機および冷却剤ポンプの活動を制御する2つのソリッドステートリレー(Crydom Corp., San Diego,Cal., Part #DID07)を含む。リニアーコントローラーは、電流極性制御および電力制御セグメントよりなる。温度フィードバックは、LightCyclerTM標準熱電対を介して起こる。
【0070】
制御システムの各側面の詳細は、図6に図示する。図6内の陰影を付した領域は、電力極性を制御する際に使用される回路およびペルチエモジュールを介する電力−調節を示す。図6の上方の最も陰影を付した領域は、モジュールを介して電力極性を制御するのに使用される構成要素を示し、下方の陰影を付した領域は、使用された電力調節スキームを表す。陰影を付した領域の外の回路図は、空気圧縮機および冷却剤ポンプ用の制御経路を示す。100W電力供給は、Lab Viewによって発生した制御電圧を除く全ての調節構成要素用の電源電圧である。脚注は、どの接地経路が使用されたかを特定する。調節回路の各セグメントは、下記で論議する。
【0071】
極性制御は、12V(20mA)切換コイル(Matsushita Electric Works, Ltd. (Nais group), New Providence, New Jersey. Part #JW2SN-DC12VAJW7211)、1Aシリコン整流器(ダイオード)(DigiKey Inc., Part #IN4007GICT-NDから入手可能)、低電力NPNトランジスタ(Digi-Key. Part #2Sd 1474-NDから入手可能)、1つの1−Kオームレジスタ、200オームレジスタおよび1つの220mF50ボルトコンデンサを持つ5A6ピンリレーを含む。200−オームレジスタは、リレーコイルを通って、14Vないし10.5Vまで電圧を段階的に下げ、1Kオームレジスタは、Lab Viewからの電流出力を制限する。リレー制御コイルは、誘起電荷であるため、ダイオードを使用して、コイル活性解除に起因するいずれの電流からもコンピューター回路を保護する。リレーの右側への配線は、電流方向を、コイル活性と相関するように変化させることができ、左側の配線は、コイル活性化制御を示す。
【0072】
6ピン、2状態リレーによって、電流方向は、リレーを通じて一定の極性を維持しつつ、モジュールを介して変化させることができる。例示するために、もし図6で示すごとくリレーのデフォルトのリード配置に従うならば、正電圧はモジュールの赤リードによって見られ、リレーを横切る電圧降下は、赤リードおよび黒リードの間に起こる。次いで、ペルチエモジュールからの負の黒ワイヤは、電力トランジスタに接続されたリードに接続される。もしリード配置が、コイル活性化によって変化すれば、正電圧はモジュールの黒リードにそれが接続されているリレー(灰色ワイヤ)の底面に切り換えられる。次いで、デフォルトケースの逆極性(方向)のモジュールを通って電圧降下が起こる。ペルチエモジュールから(今は赤ワイヤを通って)戻る電圧は、電力トランジスタに接続されたリードに直接切り換えられる。このように、ペルチエモジュール用の電力調節トランジスタは、モジュールを通る電流の方向に拘わらず、常に、同じ電流極性を見るであろう。
【0073】
リレーのコイル活性化は、次の通り制御した。(Vs(14v)と標識された)電源電圧ピンからLab View接地へ通過することができる電力量、またはリレー内の制御コイルを通る電力は、NPNトランジスタの状態によって調節した。デジタル制御ピン#47によって、トランジスタゲートにて導入された5Vバイアスは、トランジスタのコンダクタンスを上昇させ、全電力がリレーコイルを通り抜けることを可能にする。コイルを通過する電流は、磁場を作り出し、これを使用して、リレーの内部リード立体配置を変化させ、これは代わりにペルチエモジュールを通る電流の方向を変化させる。ピン#47にて、制御電位をゼロまで降下させると、トランジスタのコンダクタンスは通常まで戻り、制御コイルを通る電力は停止し、リレーリード立体配置は通常の状態に戻る。不活性化の際に調節コイルによって発生するいずれの電圧も、ダイオードの作用によって制御回路に入ることはできない。
【0074】
ペルチエモジュール電力調節は、高電圧適用、OPアンプ(作動増幅器)(Analog Devices Inc., Norwood, MA. Part#AD5941)、1つの20kオームPOT(可変レジスタ)、1つの200オームレジスタ、1つの0.1オームレジスタおよび1つの0.1mFコンデンサ用に構築された1つのNPNパナソニック電力トランジスタ(Panasonic, Secaucus, NJ. Part#2SD 1474)を含む。システムを設計して、ペルチエモジュールに伝達される電力に対する電圧調節直線状制御を得る。第1に、OPアンプを用いてトランジスタの非線形性質を説明し、第2に、0.1オームレジスタを横切る電圧への正OPアンプターミナルで見られる最大電圧をマッチングさせることによって、線形電力調節は可能になる。もしペルチエモジュールから流れる最大電流は、4A(実際の最大電流は、製造者によって示される通り、3.9である)であると仮定するならば、0.1オームレジスタを横切る最大電圧降下は、オームの法則に従い、0.4V(オームの法則:V=IR)になるだろう。Lab Viewからの最大電圧出力は、10Vであるため、POTは800に設定され、19200オームは、POTの中心ピンに接続されたOPアンプの正ターミナルと並んで配置される。再びオームの法則に従い、20,000オームの全抵抗を持つPOTを通して10Vにて、0.0005アンペアが回路を流れる。次いで、個々の電圧降下は、0.4V(800x0.0005)および9.6V(192000x0.0005)になるだろう。この配置で、Lab Viewからの制御電圧が0および10V間で変動する時、OPアンプは電力−トランジスタのゲートバイアスを変化させ、(Lab Viewからの)入力制御電圧をマッチさせる試みにおけるそのコンダクタンスを0.1−オームレジスタを横切っての電圧降下に変化させる。結果的に、ペルチエモジュールを介する電力は、トランジスタのコンダクタンス状態によって調節され、これは、OPアンプの正ターミナルにて、電圧によって調節される。ペルチエ活性から得られるチャンバー温度変動がLab View系コントローラーへフィードバックされる時に、完全に閉じたループ状のシステムが形成される。
【0075】
2つのさらなる制御経路を使用して、モジュール性能にも影響を及ぼす空気圧縮機および冷却剤ポンプの活性を制御する。空気圧縮機の活性化は、アルミニウム冷却剤ポンプを排出し、ポンプは連続的な冷却剤循環を供給する。冷却剤循環は上部ヒートシンクを冷却剤の温度に非常に近い状態で維持しつつ、チャンバーを排出することによって、上部ヒートシンクの温度を上昇させることができる。2つのチェック弁(一方向弁、United States Plastic Corp., Lima, Ohio. Part#22294)を、圧縮機およびポンプの両方のすぐ後に置いて、空気および液体流の適切な方向の維持を確保する。「シンク」配置の2つのさらなるLab Viewデジタル出力ピンを使用して、2つの固体状態リレーをスイッチして、圧縮機または水ポンプをつけたり消したりした。1つのDC/AC固体状態リレー(Continental Industries Inc., Mesa, AR#AC-DC-108-000)を使用して、水ポンプを壁電流と接続させて、DC/AC(Crydom. Part #D1D07)リレーを使用して、空気圧縮機の制御回路内のさらなるリレーを活性化させた(空気圧縮機は、このように、コンピューター制御用に構築された)。シンク配置において、1つのターミナルに5V電源電圧を接続し、他方にデジタル制御電圧を接続することによって、リレーを制御した。デジタル制御電圧が5Vから0Vに降下する時、5V降下が制御ターミナルを横切って存在し、リレーは活性化される。この配置によって、National Instruments I/Oボード(National Instruments Corp., 1995)からのより高いワット数出力が可能になる。
【0076】
器具の性能の決定
性能評価を、標準の24試料LightCyclerTM(LC24)、32試料LightCyclerTM(LC32)、および修飾されたLightCyclerTM(modLC24)について、設定温度ランプを実施し、結果を比較することによって達成した。器具は、0.1℃/秒(0.05℃/秒の速度を、modLC24につき使用した)の温度転移速度にて、40℃ないし90℃まで、チャンバー温度を上昇させるものであった。記録された温度追跡を、誤差シグナルに変換し、グラフ化して、標的温度ランプについての温度変動を示した。いずれの時間間隔での標的温度も、0.1℃/秒または0.05℃/秒の勾配を持つ開始および終了温度(それぞれ40°および90℃)を通る線によって表される。いずれかの所与の時間の標的温度を、実際のチャンバー温度から差し引くことにより、誤差シグナルを読み取ることができる。この誤差シグナルを記して、各機械の性能を実施した。最大および最小の誤差読み取りの間の差異を計算することによって決定された全体的な変動(ランの全時間スケールにわたる)、および局所的な最大および最小によって決定される局所的変動(小さな時間スケール、〜10秒)を比較して、温度制御性能を決定した。
【0077】
修飾されたLC24の構築の間、新たな軸ファンのファン速度を最適化した。ペルチエモジュールを横切る全電力および一定の冷却剤循環率を維持しつつ、ファンモーターでPOTを連続して挿入することによって、最適化を実施した。1分後、チャンバーの温度を、POTを横切る電流電圧降下と共に記録した。1分後に最も低いチャンバー温度を与えた可変レジスタを横切る電圧降下を記録した。
【0078】
器具の性能結果
ファンの稼働あるなしで、同等の回路モデルのMatLab計算を行った。チャンバーの熱負荷は、(それぞれ、ファンあるなしで)6.1ワットおよび4.8ワットであることがわかった。システムの全熱負荷計算を、さらなる内部および外部絶縁体で反復した(上部および側面のみ)。さらなる絶縁体を計算して、システムの損失を、ファン作動あるなしで、それぞれ3.6および3.1ワットまで減少させた。
【0079】
修飾されたLC24の精度および精密度は、LightCyclerTM24(LC24)機械の標準の温度制御より4倍ほど良いことがわかった。2つの機械からの誤差信号の図示表現は、図7に示す通りである。ピークからピークの全体的および局所的変動は、LC24においてより不正確であった。LC24の最大記録誤差は、標的温度から3℃以上ずれていることが観察されたが、修飾されたLC24機械は、標的の0.2℃以内に温度を維持した。より重要なことに、modLC24およびLC24の局所的変動(10秒未満の小さな時間スケール)は、それぞれ0.32℃および1.3℃であった。2つの機械の観察された性能の作表は、表1の通りである。全誤差シグナルの標準偏差ならびに最大および最小誤差の標準偏差が示されている。また、表1には、器具の全体の温度範囲および各機械に対する可能なランプ速度が含まれる。
【0080】
【表1】

表1.器具性能データの作表。時間特異的誤差データを、図7記載の方法で計算し、それを使用して、最後の5欄に示したデータを発生させた。第2欄および第3欄は、各機械につき、各々、最も遅い可能なランプ速度および正常作動温度をリストする。具体的な機械を最も左の欄に示す。全ての3つの機械は、40℃ないし90℃の温度ランプに従い、標準LC24、修飾LC24およびLC32で用いたそれぞれの各ランプ速度は、0.1℃/秒、0.05℃/秒、および0.1℃/秒であった。
【0081】
LC24への修飾は、システムの熱安定性ならびに器具の温度範囲を上昇させた。標準の24LightCyclerTMの稼働中の温度範囲は、40°および100℃の間であった。修飾されたLC24内のペルチエモジュールによる能動的冷却は、より低い温度範囲を、約40℃ないし0℃減少させた。温度上限は他の機械より10℃低かった。10℃未満のチャンバー温度は、0℃未満の冷却剤温度を必要とし、80℃を超えるチャンバー温度は60℃を超える冷却剤温度を必要とした。すなわち、温度極端は、ペルチエモジュールのワット数およびモジュールの可能なΔTによって決定された。温度範囲の極端および軸ファンへの最適電力伝達(標準のLC24ファン電力の50%)にて、絶対的下部ヒートシンク温度は、常に、絶対的チャンバー温度を少なくとも15度超えた。いずれの冷却剤温度においても、上部および下部ヒートシンクを通して観察された最大持続ΔTは、約45℃であった。
【0082】
器具使用論議
試料チャンバーを閉鎖システムに変換することにより、修飾されたLC24の温度制御性能が4倍増加する。標準LightCyclerTM配置において、チャンバー内からの空気は、チャンバーファンの作用によって、連続して、上部空気弁から押し出され、新たな空気は連続して、注入管からチャンバーへ入る。すなわち、適切なチャンバー温度制御は、それが丁度チャンバーよりも優れた加熱体を素速く通るにつれて入ってくる空気の加熱、およびチャンバーファンによるチャンバー空気の適切な混合に依存する。入ってくる空気は迅速に加熱コイルを通過し、入ってくる空気の非−均質の温度に至るため、混合は必要である。すなわち、高速ファン速度は、入ってくる空気を適切に混合するのに必要である。また、熱移動速度は、空気の速度によって決まるため(Hagen, Heat Transfer with Applications, 第一版, Prentice Hall, Upper Saddle River, NJ (1999))、高速ファン速度は、熱移動速度を試料キャピラリへと上昇させる。すなわち、高速温度循環は可能であり、結果的に、PCR反応の多くの循環は、比較的短い時間間隔で起こり得る。しかしながら、ファン速度および空気流が増加するにつれ、対照表面(加熱体)上の空気暴露時間は減少し、入ってくる空気量のより大きい温度差が存在するだろう。加熱された、入ってくる空気は、より少なく、より均質性に乏しいため、より多くの混合およびより高速のファン速度が必要になる。また、より短い加熱体暴露時間は、小さい時間間隔で適切な電力調整を行うためにより精密なコントローラー精度を必要とする。LightCyclerTMの製造者らは、高速ファン速度に対する最適な調節スキームを発見することに大きな関心を寄せてきた。また、器具のLightCyclerTMラインは、特に、迅速な温度循環のために構築されたものであり、温度移動を遅くするためのものではないことは記されるべきである。
【0083】
システムを閉鎖し、試料チャンバーに新たな空気を連続導入しないことによって、低電力加熱/冷却エレメントおよびより遅いファン速度を用いることにより、均質な環境を試料チャンバー内に維持することが可能である。混合する時間を増加させ、対照表面(下部ヒートシンク)への空気の露出時間を増加させることにより、システムの閉鎖によって、より厳密な温度調節が得られる。混合する時間を増加させることによって、非常に小容量の空気の収集というよりも1つのヒートマスといったような対照表面温度の変化に、チャンバーを応答させる。チャンバー空気は、1つのマスのように動き、対照表面上の温度変化にゆっくりと応答する。次いで、システムは、緩慢にのみ応答することができ、より緩慢な速度およびより良い熱安定度が、システムの特徴になる。
【0084】
0°および90℃の範囲のチャンバー反応温度は、ペルチエモジュールおよびより緩慢なファン速度によって実現する。記載する制御スキームを用いて、ペルチエモジュールを横切る極性を変化させることによって、能動的な冷却および加熱が可能である。ファン速度を減少させることにより、チャンバーの壁を通るシステムの熱損失は減少され、それにより、低ワット数温度調節スキームは、依然として、所望のチャンバー状態を達成することができる。LC24のより高いファン速度は、加熱エレメントから空気への熱移動速度だけではなく、チャンバーの壁を通る熱移動速度も増加させる。
【0085】
2つのヒートシンクにわたって維持される最大ΔT、および下部ヒートシンクおよびチャンバー温度間の温度差といった個々のシステム構成要素の測定された温度から、システムの実際の熱的性質が洞察される。下部ヒートシン温度クおよび最大電力出力でのチャンバー温度の間の観察された15℃の差は、対照表面(下部ヒートシンク)からの熱移動およびチャンバーの壁を通るそれの間のバランスを表す。2つのヒートシンクにわたり観察された45℃のΔTは、ペルチエモジュールワット数、上部ヒートシンクから液体冷却剤への熱移動速度およびアルミニウム冷却浴の壁を通る熱負荷によって決定される。
【0086】
所望により、温度範囲の増加は、現在のシステムのカップル態様を変化させることによって達成できる。温度範囲強化は、チャンバー壁を通る熱移動を減少させ、かつ対照表面(下部および上部ヒートシンク)からの熱移動を増加させることにより、ペルチエモジュール特徴(サイズ、ワット数、ΔT)を増加させることによって達成できる。チャンバーに加えられたさらなる絶縁体は、チャンバーの壁を通る熱移動を減少させようという試みであった。チャンバー内の気流を増加させる(より速いファン速度)ことが、チャンバー壁を通る熱移動速度よりも対照表面からの熱移動速度により大きな影響を及ぼす地点まで、絶縁体を増加させることが可能かもしれない。また、下部ヒートシンクを通るより定方向の気流は、ヒートシンクからチャンバーへの熱移動を増加させるが、チャンバーの壁に沿った気流は大して増加させない。放射状のファンから軸ファンへ変化させて、下部ヒートシンクを通る気流を増加させようと試みた。
【0087】
また、冷却流速を増加させることで、上部ヒートシンクからの熱移動を増加させることによって、ペルチエモジュール性能を改善することができる。冷却剤浴内のより速い流速は、試料チャンバー内の流速を増加させるのと同じシステム効果を持ち;上部ヒートシンクから冷却剤への熱移動速度は増加するだろう。上部ヒートシンク温度が冷却剤温度により近づくと、2つのヒートシンクを横切る潜在的なΔTを上昇させることによって、冷却移動速度に対してより良い上部ヒートシンクは、ペルチエモジュールの性能を増加させるだろう。しかしながら、冷却浴の壁を通る熱移動速度もまた上昇し、これは、モジュールの性能を減少させる傾向にある。従って、絶縁体もまた、冷却浴の外側に置かれた。
【0088】
実施例2:二次構造融解曲線および複数のドメイン融解の実証
モデルオリゴヌクレオチドシステムは、(1)二本鎖DNA特異的核酸色素SYBR Green Iの蛍光強度をモニタリングすることによって、二次構造融解曲線を実証し、(2)経験的に、二次構造融解温度範囲を決定し、(3)SYBR Green I蛍光を用いて、複数ドメイン融解を実証し、(4)SYBR Green Iを用いて、二次構造の配列特異的融解を実証するように設計された。核酸の複数ドメイン融解は、示差走査熱分析(Kulinski, 1991; Panerら, 1990)を使用し、光学吸収度(Volkerら, 1999)を使用し、ならびに共有結合したフルオロフォア(Vamosi and Clegg, 1998; Volkerら, 1999)をモニタリングすることによって先に報告されているが、複数ドメイン融解決定は、SYBR Green Iといった二本鎖核酸−特異的色素を用いては示されていない。
【0089】
モデルオリゴヌクレオチドデザイン
13の特異的に設計されたモデル核酸オリゴヌクレオチドを、IT Biochem(Salt Lake City, UT)による標準高速促進ホスホルアミダイト化学を用いて、Perceptive BioSystems 8909 MOSS合成器(Framingham, MA)で合成した。合成後、各オリゴヌクレオチドを、標準脱保護および脱塩条件で、C18逆相HPLCを用いて精製した。13のオリゴヌクレオチドの各々は、3塩基対(bp)ないし18bpの可変長のループおよびステム中に4つのヌクレオチドを有する少なくとも1つのヘアピンを含有した(図8参照)。ステム長が9の塩基対およびそれより短いものに対するループ配列は、全て同一であった(−AAAA−)。9を超えるステム長に対するループ配列は、全て−TCCT−であった。全てのステムにおいて、一定のGC含有量を維持しようと努力したが、ステム配列は完全には同一ではなかった。全てのオリゴヌクレオチドの平均的なGC含有量は、約48%であった。図8は、各オリゴヌクレオチドおよびそれらの提唱された二次構造に対する特異的な配列を示す。13の配列から、2つのオリゴヌクレオチドは、ステム配列内にミスマッチを含有し、2つは二次構造(テール)内に組み込まれていないさらなる塩基を有し、1つは異なるステム長(9bpおよび12bp)を持つ複数のヘアピンを含有する。合成に引き続いて、全てのオリゴヌクレオチドを、1xTE’(0.01M EDTAによる1M TRIS−HCLの1:100希釈)中に再懸濁し、Ultraspec2000分光光度計(Pharmacia Biotech, Cambridge, England)を用いて、260/280の割合を取った。配列は既知であったため、核酸濃度を、まず、核酸の公開された光学性質(Borer,"Nucleic Acids", In Handbook of biochemistry and Molecular Biology, 第三版, (Fasman, ed.) CRC Press, Boca Raton, FL (1975) p.589)およびカスタム設計されたソフトウェア(CTWTool-2-18-00, Carl T. Wittwer, University of Utah, SLC, UT)を用いて、各オリゴヌクレオチドにつき、吸光係数を計算することによって、決定した。二次構造立体配座を、20℃および1M NaClの2つのヌクレオチド構造−予測ソフトウェアパッケージ、Prime Designer(Sci-ed Software, Durham, NC)およびMfold(Dr. M. Zuker, Washington University Medical School, St. Louis, MO)を用いて確認した。Prime Designerは、Mfoldが同定した2つのヘアピン構造を同定することができなかった。図9は、Mfoldによって計算されたように、2つのヘアピンを含有するオリゴヌクレオチドの得られた構造を示す。
【0090】
アッセイ最適化
将来のPCR後反応状態を見越して、各反応は、PCR緩衝液(IT Biochem: 50mM「透明」緩衝液)内に、DNAおよびSYBR Green Iを含有した。3つの構成成分に対して最適化ランを実施した。まず、SYBR Green IおよびDNA濃度の範囲を調べ、引き続いて、緩衝液濃度の範囲を調べた。融解ピークおよびピークの相対的なシグナル対ノイズ比(またはピークの標準偏差)両方の存在を、最適濃度を決定する基準として使用した。標準LightCyclerTMデータ分析ソフトウェア(LCDA 3.0, Idaho Technology Inc, SLC, UT)を用いて、観察された融解ピークの標準偏差を計算した。
【0091】
最初の最適化ランを、32の試料ホルダーを持つLightCyclerTMを用いて、2つのヘアピンを含有するオリゴヌクレオチドで実施して、最適化プロセスを促進させた。複数ドメイン融解を調べるために最適化されたSYBR Green I、DNAおよび緩衝液の最終濃度は、SYBR Green I(Molecular Probes, Eugene, OR, Part #S-7567)の1:20,000原液希釈液、0.1mMのDNA、および50mM透明PCR緩衝液の1:50原液希釈液(最終構成成分濃度:5mM トリス、5mg/ml BSA、および1.0mM Mg2+)であった。9bpより短いステムを含有する試料につき、最終DNA濃度は、1.0mMから3.5mMへと変更されて、ステムループ蛍光を増加させた。アッセイ最適化に従い、13のモデルオリゴヌクレオチドのうち12(6の反復で実行)を、各オリゴヌクレオチドの融解転移温度辺りに標的した温度範囲で修飾されたLC24を用いて、0.05℃/秒温度ランプに付した。LC32を使用して、2つのヘアピンを含有するオリゴヌクレオチドからデータを収集した。得られたデータを、標準LightCyclerTM分析ソフトウェア(LCDA 3.0)を用いて分析し、Tm値を作表した。また、平均および標準偏差計算を含むTm値を基本的な統計学的に分析した。
【0092】
モデルオリゴシステム結果
平均Tm、標準偏差、およびデルタTm値(ステム配列変動またはオリゴヌクレオチドデザイン差異により、Tmはシフトする)を含む13のオリゴヌクレオチドの各々からの結果は、表2の通りである。特定のオリゴヌクレオチドおよびステムサイズは、2つの左の欄で確認される。Tm1欄の値は、平均Tm値であり、各オリゴに対するnは、右に示されている。融解温度に対する標準偏差は、標準偏差下で示される。2つのヘアピンを含有するオリゴは、両方のヘアピンに対するデータを有する。LC32で得られた9ないし12のヘアピンを除く全てのデータは、修飾されたLC24を用いて入手した。
【0093】
【表2】

*は、37bpテールの存在を示す。
**は、ヘアピンステム内の1つのミスマッチの存在を示す。
表2.モデルオリゴシステムからの結果の表化。特定のオリゴヌクレオチドおよびステムサイズは、2つの左欄で確認される。Tm1欄の値は、平均Tm値であり、各オリゴに対するnは、右に示されている。融解温度の標準偏差は、標準偏差下で示される.2つのヘアピンを含有するオリゴは、両方のヘアピンに対するデータを有する。LC32で得られた9ないし12のヘアピンを除く全てのデータは、修飾されたLC24を用いて入手した。
【0094】
融解ピーク値は、17.7°から78℃の範囲であり、Tm値はステムサイズと共に増加する(図10参照)。ステム配列および配列長一貫性の変動は、異なるTm値を与える。13のオリゴヌクレオチドの各々に対する融解曲線の編集は、図10aおよび10bにある。図10aは、ミスマッチ、テールおよび複数のドメインを含まないオリゴヌクレオチドの典型的な融解曲線を与える。ミスマッチ、テールおよび複数のドメインを含有するオリゴヌクレオチドの融解曲線は、図10bに示される。特異的なオリゴヌクレオチドに対応する曲線は、脚注で示される。一般に、バックグラウンドを超える融解ピーク高は、ヘアピンステム長と共に増加する(図10a参照)。しかしながら、12bpヘアピンステムを含有する合成オリゴヌクレオチドのピーク高は、あまり顕著ではなく、3bpまたは4bpのステムを持つヘアピンを含有するオリゴヌクレオチドに似ていた。
【0095】
ステムサイズ対Tmの関係をよりはっきりと視覚化するため、各オリゴヌクレオチドの平均Tm値を、ステムサイズに対してプロットした(図11)。ミスマッチ、テールまたは二重ステムを持つオリゴヌクレオチドを除いて、ステムサイズおよび生成物Tm間の関係は、対数関係
y=32.287ln(x)−9.0318
[式中、yは℃で生成物Tmを表し、xは塩基対(bp)のステムサイズである]によって(R=0.914)で最も適切に示される。最も適合した対数式は、マイクロソフトのExcelによって実行された最小二乗計算によって決定された。図11は、計算された傾向ラインおよびR値を含む生成物Tmおよびステムサイズ間の関係を示す。
【0096】
12bpステムおよび15bpステムは、上記の対数関係によって予測されたようには融解しなかった。12bpヘアピンは、15bpステムよりも、0.4℃高く(平均Tm値)融解した。12bpおよび15bpヘアピンの標準偏差は、それぞれ、0.78℃および0.3℃であった。9bpおよび12bpサイズにて、Tm値の4つの集団が観察された。2つの融解ピークが、9bpおよび12bpのステムサイズを持つ複数のヘアピンを含有するオリゴヌクレオチドから観察された。9bpに対応する融解ピークは9bpヘアピン融解のみと比較すると、+8.4℃(プラスまたはマイナス1.5℃)シフトした。複数のヘアピンオリゴヌクレオチドの中で、12bpに対応する融解ピークは、+2℃Tmシフト(プラスまたはマイナス0.6℃)を示した。9bpステムおよび12bpステムのミスマッチは、それぞれ−14℃および−15℃のTmシフトを与えた。「テール」の存在、9bpステムおよび12bpステムから延びているステム構造に関与していない37の塩基は、それぞれ−8.1℃および−2.2℃のTmシフトを与えた。
【0097】
モデルオリゴシステム論議
モデルシステムを設計して、下記の目的を各々達成した。
1.二本鎖特異的核酸色素の蛍光活性をモニタリングすることによって、二次構造融解曲線を示す。
2.経験的に、二次構造融解温度範囲を決定する。
3.二本鎖特異的核酸色素蛍光を用いて、複数ドメイン融解を示す。
4.二次構造の配列特異的融解を示す。
これらの目的の各々は、モデルシステムから得られた結果を用いて取り組むことができる。1つのDNA分子内に存在している二次構造は、二本鎖−特異的核酸色素蛍光をモニタリングすることによって検出可能であることを、モデルオリゴヌクレオチドシステムからの結果は示した。また、3bpないし18bpのステム長範囲のヘアピンが融解した温度に関して、60℃の温度範囲を決定した(18°および78℃の間)。ミスマッチまたはテールを含有するオリゴヌクレオチドに対して観察されたTmシフトによって明白になったように、Tm値は配列特有の形で変動した。最終的に、2つのヘアピンドメインを含有する合成オリゴヌクレオチドの融解は、2つの融解ピークを得、すなわち、二本鎖−特異的核酸色素蛍光を用いて、複数ドメイン融解を示した。生成物Tmの配列依存性ならびにTmのステムサイズへの依存性を示すこれらの結果は、Tmの配列依存性に対する先に公開された結果と一致する(Kulinskiら 1991; Panerら, 1990; Ririeら, 1997; Vamosi and Clegg, 1998)。
【0098】
Tmによって生成物の長さを識別する能力は、ステムサイズが増加するにつれ減少する。図11で記すように、生成物Tmおよびステムサイズ間の関係を示す曲線の傾斜は、ステムサイズが増加するにつれ平らになる。明らかに、ステム長が増加すれば、ヘアピンステムに添加されたさらなる塩基対は、ヘアピンの安定性をあまり増加させない。しかしながら、関係が最大値に達するか、あるいは上昇し続けるかは、これらの結果からは決定できない。
【0099】
他の核酸システムの概説およびリサーチは、たとえ長い二本鎖長においても、Tmはステム長と共に変動することを示す。例えば、異なる長さのPCR生成物は、SYBR Green(Ririeら, 1997)を用いるTm分析によって識別可能であり、これはステムサイズを増加させることは、Tmを増加させ続けるであろうことを示唆する。しかしながら、この研究は、二本鎖アンプリコンおよび生成物Tm値に対して行われ、すなわち、2つの別々の、しかし相補的なDNA鎖の融解を表す。モデルヘアピンシステム内で、二本鎖相互作用は、分子間とは対照的に、分子内である。ヘアピン内の2つの相補的なセグメントは、相補的な鎖をあまり時間をかけずに発見し、2つの相補的な鎖の濃度は効果的に増加する。例えば、Vamosi and Cleggは、34bp分子間(つまり、2つの別々のDNA鎖の間の)相互作用は、20bp分子内(ヘアピン)相互作用よりも、低い温度で融解することを観察した(1998)。言い換えれば、分子間システムからの結果(例えば、Ririeら,1997による研究)は、分子内システムに直接適用することができない。それならば、分子内システムにつき、ステムサイズおよびTm間の関係を決定する最良の方法は、増加するサイズのステムを持つヘアピンを分析するか、他の分子内核酸研究から得られたデータを使用することである。
【0100】
ステムサイズおよびTm間の良い相関関係は、本研究で示される。相関関係の有効性は、部分的に、R値によって示され、また記録されたTm値の標準偏差によっても示される。ステムサイズおよびTm間の計算された関係は、他のヘアピンのTm値を推定する方法を提供する。
【0101】
高解像度LC32を用いて、9bpおよび12bpヘアピンの両方を含有するモデルオリゴヌクレオチドは、2つの融解ピークを得、SYBR Green I分析によって、複数ドメイン融解を示した(図12b参照)。9bpおよび12bpヘアピンのTmのシフトによって示されるように、同一分子内の複数のヘアピンの存在は、分子の全体的な安定性に影響を及ぼした。一旦融解すると、9bpヘアピンは、テールセグメントと同様に作用し、12bpヘアピンの安定性を減少させると考えるだろうが、その代わりに、+2.0℃Tmシフトが観察された。9bpヘアピンの観察された安定性は、+8.4℃のTmシフトと共に増加した。この安定性の理由は不明である。1つの説明としては、一本鎖セグメントと比較して、より少ない熱運動がDNAの二本鎖領域に存在していることかもしれない。図9に示すごとく、9bpおよび12bpセグメントの両方が二本鎖立体配座にある時、二本鎖でないのは、短3bpリンカーおよび2つの短3bpテールしかない。
【0102】
結果的に、完全構造の熱運動を最小化して、9bpセグメントを高温度にて融解させることによって、12bpヘアピンは、9bpヘアピンを安定化させるかもしれない。これと同じ論理に従い、9bp断片が融解し、一本鎖になり、それにより分子の熱運動が増加する時、12bpヘアピンの安定性は減少し、よい低いTmが観察されるはずである。
【0103】
テールがシステムに対して持ち得る効果に関して、1990年にDoktyczらによって行われた研究(Biopolymers 30: 829-845)が関連している。示差走査熱分析を用いて、様々な配列の4bpのダングリング末端(またはテール)は、一貫して、同一の配列の平滑末端(ダングリング末端なし)ヘアピンよりも高温度にて融解した。彼らはダングリング末端のヘアピンにつき、より高いTm値を観察したが、このTmシフトは、ダングリング末端を持つヘアピンの融解転移の型の変化に起因する。彼らは、ダングリング末端の存在は、ヘアピンを完全な「全てそう、あるいは全くそうでない」といった形で融解させ(つまり、完全に二本鎖または完全に一本鎖)、該平滑末端ヘアピンは「全てそう、あるいは全くそうでない」モデルから逸脱すると議論する(Doktyczら, 1990)。すなわち、それが融解する時、より不安定な立体配座を介して通過するため、より低温度の転移は、平滑末端オリゴヌクレオチドで観察される。ダングリング末端を持つヘアピンにおいて、二本鎖から一本鎖への転移を引き起こすのに、より強い熱エネルギーまたはエンタルピーが実際に必要であった(Doktyczら, 1990)。従って、二本ヘアピンモデルオリゴヌクレオチド内の3bpテールの存在も、2つのヘアピンで観察されたより高い熱安定性に寄与するかもしれない。
【0104】
モデルシステムのテールを持つ全てのヘアピンは、Tm増加よりもむしろ実質的なTm減少を経験したため、Doktyczの研究および本実施例に記載するモデルシステムからの観察の間に明白な矛盾が存在する。この矛盾は、注意深く取りかかる必要がある。Doktyczは、4つの塩基のダングリング末端(またはテール)を使用したが、モデルシステムのダングリング末端(12−テールおよび9−テールオリゴヌクレオチド)は、37塩基長であった。Doktyczシステムにおけるヘアピン安定性の度合いは、ダングリング末端の最初の塩基に密接に相関していた(Doktyczら, 1990)。モデルオリゴヌクレオチドシステムの37塩基ダングリング末端をもって、最初の塩基のいずれの安定化効果も、長い非二本鎖配列の総エネルギーによって覆われるだろうと推論することができるだろう。しかしながら、3bpテールは9bpおよび12bpヘアピンの両方に存在するため、二本ヘアピンモデルオリゴヌクレオチドで観察された安定性は、Doktyczによる結論によって支持される。モデルシステムの長いテールのヘアピン不安定化効果は、エントロピー主導であると考えられ、これはDoktyczおよび他者の研究によって支持される(Doktyczら, 1990 ; Panerら, 1990 ; Rentzeperisら,Nucleic Acids Res. 21 (11) : 2683-2689 (1993))。
【0105】
本明細書中で研究されたステム長の比較的小さな範囲に拘わらず、ステム長は、天然に生じるステム長にほぼ近いものを使用した。小さなおよび大きなリボソームサブユニット内で見受けられた核酸二次構造相互作用の大部分は、3bpおよび25bp間のステムサイズを持つヘアピンで構成されている。(Szymanskiら, 1997; Spechtら, 1997; De Rijkら, 1992; Kulinski, 1991)。結果的に、天然システムから由来した配列は、二本鎖核酸−特異的色素を用いるTm分析によって観察可能であるはずである。
【0106】
複数ドメイン融解プロセスの正確な仕組みが不明瞭であるにも拘わらず、二本鎖核酸−特異的色素を用いる複数ドメイン融解は、モデル核酸システムで確認されている。さらに、使用される化学濃度は、PCR後適用に対して実行可能である。SYBR Green Iによる一本鎖立体配座Tm分析の将来の研究は、Tm分析によって観察できる十分な、生物依存性二次構造差異を含有する増幅可能領域を発見することにかかっている。
【0107】
実施例3:5S rRNAの複数成分融解の実証
5S rRNAの複数の融解構成成分を識別する能力は、商業的に入手可能なrRNAを用いて示された。E. Coli MRE600 5S rRNAを、Roche Molecular Diagnostics(Boehringer Mannheim, GmbH, Germany, Part#206911)から入手した。5S rRNA試料を選択して、SYBR Green Iを用いる天然システムの複数ドメイン融解を同定する可能性を実証した。濃度最適化を、モデルオリゴヌクレオチドシステムと同様に行った。最終的な最適化された濃度は、1.0mM RNAおよび1.0mM Mg+2PCR緩衝液(5mMトリス,5mg/ml BSA, および1.OmM Mg2+)中のSYBR Greenの1:15,000原液希釈液であった。(IT Biochem, SLC, UT)。
【0108】
最適化の後、5S rRNA試料を、八回、融解させた。開始および終了温度はそれぞれ60℃および97℃で、融解転移速度は0.05℃/秒であった。次いで、融解曲線を、LCDA3.0を用いて分析した(融解ピークを、2.5℃に平均設定された度数を持つ多項フィティングスキームを用いて観察した)。構成成分Tm値を、−dF/dT対温度のソフトウェア発生プロットから手動で同定し、統計学的概説用にExcelで作表した。
【0109】
SYBR(登録商標)Green Iによる5S rRNA融解モニタリング
図12は、SYBR Green Iの存在下で、5S rRNA試料を、0.05℃/秒温度ランプに付すことによって得られた結果を示す。二つ組のラン(n=8)は、融解プロファイルの8つの特徴が反復可能であることを示唆する。融解プロファイルは、81℃および82℃間の低蛍光(−dF/dT)「谷」、および82℃ないし95℃の温度範囲のいくつかの異なる融解構成成分を含有する広い融解転移よりなる。低蛍光「谷」内に、小さなピークが、一般に、81.7℃の平均Tmと共に存在していた。蛍光谷下では、一貫した融解転移は観察されなかった。各ランに対応するTm値は、表3に作表した。1つのケースで、8つのピークのうち2つは同定されなかった。ピーク2、5および6は、最も変動を示した。各ピークに対する平均Tm値および標準偏差は含まれる。ピーク5は、標準偏差0.67℃と共に、Tm値で最高の変動を示した。平均ΔTm値、または1つのピークおよび次のピーク間の温度差は、3.1°、1.1°、1.3°、1.2°、1.2°、1.5°、および1.4°であった。
【0110】
【表3】

表3.5S rRNA融解曲線内で見受けられる最も顕著な融解構成成分の温度の作表。ピーク数は、頂部の列に沿って示される。平均および標準偏差は、各ピークにつき与えられる。ピーク数5は、最大の変動を見せ、最初のピークは最小のピークを見せ、それぞれ標準偏差は、0.67℃および0.31℃であった。構成成分融解ピーク7および8は、ラン数8からは解読できなかった。試料を、60ないし97℃の範囲の0.05℃/秒温度ランプに付した。rRNA、SYBR Green Iおよびマグネシウム緩衝液の最終濃度は、それぞれ1.0mM、1:15,000原液希釈液、および1.0mM Mg+2であった。
【0111】
天然5S rRNAシステム論議
5S rRNA試料の分析からの予備結果は、8つの同定可能な構成成分または転移を持つ融解曲線プロファイルを得た。どのような可能な説明が存在するにしても、5S rRNA立体配座の特定の構成成分は、未だ、経験的または理論的に、個々の融解転移にリンクされていない。
【0112】
広範囲の生物体からの5S rRNAセグメントの配列に関する詳細な情報および二次構造情報は、核酸関連のジャーナルおよびリボソームのオンラインデータベースで見つけることができる。基本的な、3ドメイン、二次元5S構造は、5つの二本鎖領域、2つのヘアピンループおよび3つの内部ループ(膨隆)よりなる(Brownleeら,Nature 215 (102): 735-736 (1967); De Rijk, 1992; Spechtら, 1997 ; Szymanskiら, 1997)。核酸セグメントの長さは、種から種で変動するが、一般的に、120塩基長である(Spechtら,1997; Szymanskiら, 1997)。いくつかの高頻度可変領域は、セグメントならびに1つのかなり保存された領域内に存在する。加えて、非−ワトソン−クリック相互作用は、しばしば、5S rRNA構造のE−ループ内に存在する(Browleeら,1967 ; Voetら,"Nucleic Acid Structure", In Fundamentals of Biochemistry, 初版, John Wiley & Sons, Inc., New York, NY (1999) pp.742-743)。標準塩基番号付けおよびヘアピンまたはループ同定は、E.coli標準に基づいている(Spechtら, 1997; Szymanskiら, 1997)。図15は、ドメイン同定およびループ図案化を含むE.coli由来5S rRNAの基本的な組織を示す。
【0113】
5S rRNA分子の二次構造および観察された融解プロファイルの間の直接的な相関関係は、すぐには明らかではない。図13に示されるように、通常、5つの二本鎖セグメントのみが、5S配列で同定されるが、そこには融解プロファイルの8つの反復可能な構成成分がある。多くの方法で、さらなる3つの構成成分を説明することができるだろう。まず、試料汚染は常に可能性としてある。正確な単離手順は開示されておらず、第2当事者によって行われたため、試料は純粋であると仮定されているだけである。第2に、全ての融解構成成分は、二本鎖から一本鎖への転移を直接的に反映しないかもしれない。完全な5S立体配座は三次元であり、全ての構造転移は、厳密には二次構造に関係していないかもしれない。さらに、二本鎖から一本鎖への転移を直接的に反映しないさらなる融解構成成分の存在を認めれば、三次元転移への洞察の余地が出てくる。第三に、5S rRNA分子の2つの二本鎖領域(図13で、2および3と標識されたセグメント)は、2つの部分に細分化することができ、それにより、5S分子内の7つの総二本鎖領域を増加させる。最後に、非−ワトソン−クリック相互作用は、しばしば、リボソームの第二次立体配座内で発見される(Brownleeら, 1967; Voetら, 1999)。いくつかのそのような非標準結合相互作用は、5S分子のE ループで同定されている(Voetら, 1999)。もし非標準相互作用がループであると考えられる領域内で起これば、ループ形成を表すさらなる融解ピークが観察されるだろう。
【0114】
三次影響の可能性に関して、三次元構造が温度の上昇と共に緩和し始めると、SYBR Green I結合部位の有効性が増加すると仮定するのが妥当である。より多くのSYBR Green Iが、新たに暴露された5S分子の二本鎖DNAセグメントに結合すると、色素の蛍光は、代わりに、わずかに増加する。そうすると、実際に融解曲線の平面化を表す図12で明白な低−dF/dT「谷」は、5S三次構造の初期緩和を表す。強度、異方性、寿命およびスペクトルといったフルオロフォアの特異的な性質を、核酸構造の異なる態様にリンクするVamosi and Clegg(1998)によって使用される技術を使用して、潜在的な三次影響を実証することができるだろう。加えて、Doktycz ら, 1990, SantaLucia, 1998, and Bonnetら, PNAS (USA) 96: 6171-6176 (1999)によって行われた複雑な数学的モデリングを適用することで、5S rRNA配列の熱融解の詳細を洞察することもできるだろう。
【0115】
潜在的な三次影響にも拘わらず、該三次影響が二次構造転移と重ならない限り、5つの二本鎖セグメントは観察可能なはずである。Molecular Probesは、核酸融解に際し、SYBR Green Iの蛍光強度の大きな減少を報告し(Haugland,1996)、LightCyclerTMが蛍光強度をモニターするため、融解プロファイルの主要な特徴は、5S rRNA分子内で二次構造融解転移を反映すると考えられる。
【0116】
先に論議したモデルオリゴヌクレオチドから、1つ以上のヘアピンの存在が、他のヘアピンのTm値に影響を及ぼすことが発見された。モデルオリゴヌクレオチド論議で使用される同一の論議を用いて、5つの二本鎖セグメントのTm値は、より高い温度にシフトする可能性が非常に高い。最長のモデルオリゴヌクレオチド(18bp)は、77.8℃で融解した。5Sシステムの最長の二本鎖領域は、10bpだけであるが、主要な蛍光変化が86°および94℃間で観察される。もし最も安定した二次転移の前にいずれかおよび全ての三次影響が起こると考えられるならば、図12の8と標識されたピークは、最大の5Sヘアピンステムの融解を表すだろう。それならば、ピーク7ないし4は、二番目に大きなステムから最小のステムへ融解するステムを表すだろう。
【0117】
図13に示されるごとく、β−ドメインのステムの両方は、ミスマッチを含有する。もしこれらのミスマッチがステム内のサブ−ドメインを識別するように作成されれば、5S rRNA融解プロファイルのさらなる解釈が示される。そうなると、ステム数2は1つのミスマッチによって分離された2bpステムおよび6bpステムよりなる。ステム数3は、2−塩基挿入によって分離された3bpおよび4bpステムに分けられる。潜在的な別々の融解ドメインの数は、全部で7つである。モデルオリゴヌクレオチドシステムは、3bpステムの融解はモニターでき、5S rRNAシステムのステムを、2bpないし8bpのサイズ範囲のより小さなサブユニットに分離することは適切ではないことを示した。もし非−ワトソン−クリック相互作用がEループ内にあると考えられるなら、全ての8つの融解転移は説明できる。もしEループ内の非−ワトソン−クリック相互作用がいずれの他の相互作用よりもより安定していないと考えるなら、8つの潜在的な異なる融解ドメインは存在する。そうなれば、Eループ、2bp、3bp、4bp、5bp、6bp、8bpおよび19bpステム内の非−ワトソン−クリック相互作用を含む解釈が可能であり、これは、それぞれ、81.6℃、84.8℃、86.8℃、87.5℃、88.9℃、90.2℃、91.6℃および93.1℃の融解転移に対応する。全ての8つの潜在的転移は、このように説明できるが、三次影響の影響は、不明瞭ではあるが、考慮されていない。
【0118】
決定された5S rRNA Tmプロファイルの他の説明が可能である。5S構造の融解が進むにつれ、可変サイズのループが発生し、これは、付随するステムの安定性を変化させる。すなわち、融解システムは非常に複雑であり、上記略述通りには進行しないだろう。他方で、ステムをサブステムに分けることは、モデルオリゴヌクレオチドシステムによって得られた観察によって支持される。また、潜在的な解釈は、全ての立体配座転移は80°および95℃の間で起こると仮定するが、これは当てはまらないかもしれない。しかしながら、モデルオリゴヌクレオチドシステムからの結果は、5Sセグメントで見受けられるような複雑な二次組織内の二本鎖領域は高温度で融解する可能性を支持する。
【0119】
不明瞭ではあっても、どのように8つの融解転移が5S rRNA試料に関連するかに関して、予備結果が有用である。考慮すべき8つの異なる構成成分に対して、いくつかの生物体間の融解プロファイルの差異を観察する可能性が予測される。天然の二次構造のSYBR Green I由来の結果を、濃色性または示差熱量測定(DSC)といった他の方法に比較することによって、融解転移の仕組みへの洞察を得ることができるかもしれない。Doktyczら, 1990, Panerら, 1990, and Vamosi and Clegg, 1998によって使用された技術および数学的モデルを用いる5S rRNAまたはrDNA配列の完全な熱力学的研究は、5Sセグメントの融解転移を完全に解明することができる。しかしながら、融解転移の裏にある正確な仕組みの詳細は、プロセスを使用して生物体を識別する前に決定する必要はない。1つの試料から次へと一定の差異が観察される限り、TmおよびSYBR Green Iによる二次構造立体配座の分析を使用して、生物体を同定することができる。
【0120】
モデルシステムは、核酸の分子内の二次構造特徴を検出する可能性を示す際に、非常に強力なツールであることが証明された。5S rRNA融解プロファイルで示したごとく、天然に生じる配列は、この研究で使用されたモデルシステムよりも遙かに複雑である。リボソームRNA内二次構造の配列決定および同定に関して、多くの研究がなされてきた。例えば、101の膨隆またはヘアピンループが、Pseudomonas cepacia (Van Campら, 1993)から入手された23s rRNA分子で同定された。対照的に、5S rRNA構造は、5つの二本鎖領域、2つのヘアピンループおよび3つの内部ループ(膨隆)のみで構成されている(De Rijk, 1992; Szymanskiら, 1997)。いずれの場合も、天然に生じる二次構造の複雑さは計り知れない。しかしながら、これらの配列の殆どに、高度に保存された領域が存在し、これにより、SSCPおよびリボタイピングといったアッセイによって、セグメント増幅のためにPCRを用いて、生物体レベルにて、試料を識別することが可能になる。Van Campおよび同僚らは、いくつかの普遍的なプライマー部位を同定し、これを使用して、23s遺伝子内の高頻度可変領域を増幅することができる(1993)。Erik Avaniss-Aghajaniらは、リボタイピング技術を用いて、細菌タイピングのための「実質的に全ての細菌からのSSU(小さなサブユニット)rRNAを増幅することが可能な」プライマー対を同定し、テストした(1994)。そのような領域は、SSCPおよびリボタイピングといったアッセイに現在使用されており、TmおよびSYBR Green Iを使用する二次構造分析にも良いはずである。
【0121】
多くの細菌検体をタイプするのに使用可能な普遍的なプライマー部位を同定するために、多くの研究がなされてきた。恐らく、二次構造構成成分を含有する有益な高頻度可変領域の増幅に、5S rRNA/rDNAよりも、16sおよび23s rRNA遺伝子を現在研究している何人かの研究者によって設計された普遍的なプライマーの方が適しているだろう(Anthonyら, 2000; Rantakokoo-Jalavaら, 2000; Widjojoatmodjoら, 1994)。これらの研究グループによって行われた研究は、高頻度可変セグメント内に二次構造を含有する16sおよび23s遺伝子内に、医学的に有意な領域を発見した。具体的には、Widjojoatmodjoによって行われた研究は、108bpないし300bpの範囲の小さなアンプリコンサイズを持つSSCPによる良種タイピングを示す(1994)。本発明による分析用に、これらの同一領域から、一貫しているが区別可能な融解プロファイルが入手できる。
【符号の説明】
【0122】
1 器具
2 空気注入口
3 円試料カルーセル
4 ステッパーモーター
5 チャンバーファン
6 オプティクス/フィルターアセンブリ
7 試料
8 反応チャンバー
9 24ブラスオフセットガイド
10 励起および収集オプティクス
11 高ワット数加熱コイル
12 青LED
13 フォトダイオード
30 軸ファン
31 絶縁体
40 アルミニウム冷却浴
41 ブラスコネクター
42 ブラスコネクター
43 ゴム管
44 ペルチエモジュール
45 ヒートシンク
46 支柱
47 ゴム吐出口管
48 標準蛍光モニタリング経路
60 コンピューター
62 ポンプ
63 圧縮機
64 ペルチエモジュール
65 冷却管
66 冷却管
67 冷却管
68 アルミニウム冷却浴
69 一方向チェック弁
70 一方向チェック弁
71 100W電力供給
90 モジュール
91 モジュール
93 12ボルト6−リード機械的リレー
94 低電力NPNトランジスタ
95 トランジスタ
93 リレーコイル
97 底部末端
98 電力供給
99 地面
100 ダイオード
101 コンピューター
104 高ワット数NPNトランジスタ
105 作業増幅器
106 0.1オームレジスタ
108 リレー制御
109 リレー制御
110 冷却剤ポンプ
111 空気圧縮機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)一本鎖核酸を、少なくとも50%のパーセント飽和を有する二本鎖核酸−特異的色素と組み合わせて、該一本鎖核酸内に、該色素および1つ以上の二本鎖二次構造の間に検出可能な複合体を形成し;次いで
b)該一本鎖核酸の温度を変動させて、該検出可能な複合体中の各該二次構造に対する融解温度(Tm)を決定し、ここに該融解温度は、該一本鎖核酸を特徴付けるTmプロファイルを定義することを特徴とする一本鎖核酸を特徴付ける方法。
【請求項2】
a)少なくとも50%のパーセント飽和を有する二本鎖核酸−特異的色素を用いて、第1の一本鎖核酸のTmプロファイルを決定し;次いで
b)第1の一本鎖核酸のTmプロファイルを、第2の一本鎖核酸のTmプロファイルと比較し;ここに該第1および第2の一本鎖核酸間のTmプロファイルの差異は、該第1および第2核酸間の配列の差異を示すことを特徴とする第1および第2の一本鎖核酸の配列間の差を検出する方法。
【請求項3】
既知の配列を有する核酸と比較した、試料核酸の配列の変化を検出する方法であって、少なくとも50%のパーセント飽和を有する二本鎖核酸−特異的色素を用いて、一本鎖核酸のTmプロファイルを決定し、ここに該核酸試料のTmプロファイルおよび既知の配列を有する該核酸のTmプロファイル間の差は、該既知の配列と比較した、該試料核酸の配列の改変を示すことを特徴とする該方法。
【請求項4】
細胞の種型を同定する方法であって、少なくとも50%のパーセント飽和を有する二本鎖核酸−特異的色素を用いて、細胞からの試料rRNAまたはその断片のTmプロファイルを決定し、ここに、該決定されたTmプロファイルおよび既知の種型からの細胞の対応するrRNAまたはその断片のTmプロファイルの間のマッチングが、試料rRNAは既知のrRNA細胞型からのものであることを示すことを特徴とする該方法。
【請求項5】
該変化が突然変異である請求項3記載の方法。
【請求項6】
該試料rRNAまたはその断片が、増幅されたrRNA遺伝子またはその断片である請求項4記載の方法。
【請求項7】
該一本鎖核酸が、増幅された核酸産物である請求項1ないし3のいずれか1記載の方法。
【請求項8】
該一本鎖核酸が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅産物である請求項7記載の方法。
【請求項9】
該PCRが非対称的PCRである請求項8記載の方法。
【請求項10】
該一本鎖核酸が、鎖置換増幅(SDA)、ローリングサークル増幅(RCA)、核酸配列に基づく増幅(NASBA)、転写媒介増幅(TMA)およびリガーゼ連鎖反応(LCR)よりなる群から選択される増幅反応の産物である請求項7記載の方法。
【請求項11】
該二本鎖核酸−特異的色素が、YO−PRO−1およびYO−YO−1よりなる群から選択される請求項1ないし4のいずれか1記載の方法。
【請求項12】
さらに、該方法が:該Tmプロファイルの該決定前あるいはそれと同時に、該一本鎖核酸を増幅することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1記載の方法。
【請求項13】
該決定が、核酸の温度を変化させつつ、該二本鎖核酸−特異的色素の蛍光発光を測定することによるものである請求項1ないし4のいずれか1記載の方法。
【請求項14】
該温度が、0.01℃ないし0.1℃/秒の速度にて変化する請求項13記載の方法。
【請求項15】
蛍光の変化が、該一本鎖核酸の二次構造の変化を示す請求項13記載の方法。
【請求項16】
該決定が、該第1の一本鎖核酸を少なくとも50%のパーセント飽和を有する二本鎖核酸−特異的色素と組み合わせて、該第1の一本鎖核酸内で該色素および1つ以上の二本鎖二次構造の間の検出可能な複合体を形成し、該組合せの温度を変化させつつ、該二本鎖核酸−特異的色素の蛍光発光を測定することによるものである請求項2ないし4のいずれか1記載の方法。
【請求項17】
該温度が、0.01℃ないし0.1℃/秒の速度にて変化する請求項16記載の方法。
【請求項18】
蛍光の変化が、該一本鎖核酸の二次構造の変化を示す請求項16記載の方法。
【請求項19】
該増幅で使用されるプライマーが、既知の配列を有する該核酸の配列から由来する請求項7記載の方法。
【請求項20】
該細胞が細菌細胞である請求項4記載の方法。
【請求項21】
該細胞が植物細胞である請求項4記載の方法。
【請求項22】
該増幅rRNA遺伝子またはその断片が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅によって生成される請求項6記載の方法。
【請求項23】
該PCRが非対称的PCRである請求項22記載の方法。
【請求項24】
該rRNA遺伝子またはその断片が、鎖置換増幅(SDA)、ローリングサークル増幅(RCA)、核酸配列に基づく増幅(NASBA)、転写媒介増幅(TMA)およびリガーゼ連鎖反応(LCR)よりなる群から選択される増幅反応によって生成される請求項6記載の方法。
【請求項25】
該決定が、該rRNA遺伝子またはその断片を少なくとも50%のパーセント飽和を有する二本鎖核酸−特異的色素と組み合わせて、該増幅rRNA遺伝子またはその断片内で、該色素および1つ以上の二本鎖二次構造の間に検出可能な複合体を形成し、該組合せの温度を変化させつつ、該二本鎖核酸−特異的色素の蛍光発光を測定することによるものである請求項4記載の方法。
【請求項26】
該Tmプロファイルの温度範囲が、20℃および100℃の間である請求項1ないし4のいずれか1記載の方法。
【請求項27】
該温度範囲の該下限が、40℃未満である請求項26記載の方法。
【請求項28】
該温度範囲の該下限が、35℃未満である請求項27記載の方法。
【請求項29】
該色素が、少なくとも80%のパーセント飽和を有する請求項1ないし4のいずれか1記載の方法。
【請求項30】
該色素が、少なくとも90%のパーセント飽和を有する請求項1ないし4のいずれか1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−162034(P2010−162034A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44596(P2010−44596)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【分割の表示】特願2003−587944(P2003−587944)の分割
【原出願日】平成15年4月25日(2003.4.25)
【出願人】(500189230)ユニバーシティ・オブ・ユタ・リサーチ・ファウンデーション (11)
【Fターム(参考)】