説明

二次監視レーダ装置及びエラー訂正方法

【課題】 モードS応答データのエラー訂正率を向上する二次監視レーダ装置及びエラー訂正方法を提供する。
【解決手段】 モードSトランスポンダからの応答信号の波形に基づいてモードS応答データのビットごとにエラーの可能性があるかどうかを信頼性判断部125で判断して信頼性データを生成し、この信頼性データに基づいて、エラー訂正処理部128でモードS応答データのエラーの可能性があるビットを1ビットずつ訂正し、すべてのエラーが解消するまで繰り返しエラー訂正処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モードSトランスポンダを搭載する航空機を監視する二次監視レーダ(Secondary Surveillance Radar:SSR)装置、及びSSR装置の質問信号に対する応答データのエラーを訂正するエラー訂正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SSRモードSは、航空機に搭載されているトランスポンダに対して質問信号を送信し、その質問信号に対する様々な情報を応答信号として受信することにより航空管制のための監視に関わる情報を取得する装置である。トランスポンダには、従来から使用されているATCRBSトランスポンダと、モードSトランスポンダの2種類がある。
【0003】
SSRモードSでは、質問信号の送信期間をオールコール期間とロールコール期間とに分け、ビーム照射期間(ビームドエル)内で航空機の捕捉を行う。オールコール期間は、モードSトランスポンダ及びATCRBSトランスポンダを捕捉するための期間である。ロールコール期間は、モードSトランスポンダに対する個別質問およびその応答のための期間である。
【0004】
ところで、モードSトランスポンダの応答データでは、モードSトランスポンダ,ATCRBSトランスポンダのフルーツや電波環境の悪化のためエラーが発生し、SSRモードSが正常に応答を把握することができないことがある。このためSSRモードSでは、モードS応答データのエラーを訂正する処理が行われる。
【0005】
なお、モードS応答データのエラー訂正処理に関する技術が非特許文献1に開示される。
【非特許文献1】ICAO(国際民間航空機関)、“MANUAL OF THE SECONDARY SURVEILLANCE RADAR (SSR) SYSTEMS(Doc 9684)”,SECOND EDITION-1998,Appendix1“MODE S CYCLIC POLYNOMIAL ERROR DETECTION AND CORRECTION”
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のエラー訂正処理方法では、モードS応答データにおいてエラー位置の間隔が24bit以内の場合は訂正することができるが、24bitより離れた位置のエラーパルスは訂正することができない場合がある。ところが実環境上では、エラーパルスが24bitより離れて発生することも多く、モードS応答データのエラー訂正率が低下するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、モードS応答データのエラー訂正率を向上する二次監視レーダ装置及びエラー訂正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、モードSトランスポンダを搭載する航空機に質問信号を送信する送信手段と、この送信手段により送信された前記質問信号に対する前記モードSトランスポンダからの応答信号を受信する受信手段と、前記応答信号を2値化処理して応答データを生成する2値化処理手段と、前記応答信号の波形に基づいて、前記応答データのビットごとにエラーの可能性があるかどうかを判断してビットごとの信頼性データを生成する信頼性判断手段と、前記信頼性データに基づいて前記応答データのエラーの可能性があるビットを1ビットずつ訂正し、すべてのエラーを解消するまで繰り返しエラー訂正処理を実行するエラー訂正手段とを有することを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記エラー訂正手段は、エラーの可能性があるビットの数が予め設定した訂正実行指定数以下の場合にエラー訂正処理を実行することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、モードSトランスポンダを搭載する航空機を監視する二次監視レーダ装置が送信する質問信号に対する応答データのエラーを訂正するエラー訂正方法であって、前記モードSトランスポンダからの応答信号の波形に基づいて、前記応答信号を2値化処理して生成される応答データのビットごとにエラーの可能性があるかどうかを判断してビットごとの信頼性データを生成する信頼性判断ステップと、前記信頼性データに基づいて前記応答データのエラーの可能性があるビットを1ビットずつ訂正し、すべてのエラーを解消するまで繰り返しエラー訂正処理を実行するエラー訂正ステップとを有することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、エラーの可能性があるビットの数が予め設定した訂正実行指定数以下であるかどうかを判断する訂正実行数判断ステップを有し、前記エラー訂正ステップは、エラーの可能性があるビットの数が前記訂正実行指定数以下の場合にエラー訂正を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、モードSトランスポンダからの応答信号の波形に基づいて応答データのビットごとにエラーの可能性があるかどうかを判断して信頼性データを生成し、この信頼性データに基づいて応答データのエラーの可能性があるビットを1ビットずつ訂正し、すべてのエラーが解消するまで繰り返しエラー訂正処理を実行するので、モードS応答データのエラー訂正率を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の二次監視レーダ装置及びエラー訂正方法を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は本発明の実施の形態に係る二次監視レーダ装置と機上側装置を示す概略構成図である。
【0015】
二次監視レーダ装置100は、インタロゲータ1とアンテナ2とを備える。インタロゲータ1は、アンテナ2を介して監視空域に質問信号を送信し応答信号を受信する送受信機1aと、質問信号を生成し応答信号から航空機ごとのターゲットレポートを取得して出力する信号処理部1bとを備える。二次監視レーダ装置100は地上に設置され、機上側装置200を搭載した航空機を捕捉する。
【0016】
機上側装置200は航空機に搭載され、トランスポンダ3とアンテナ4とを備える。トランスポンダ3はモードSトランスポンダ又はATCRBSトランスポンダである。トランスポンダ3は、二次監視レーダ装置100からの質問信号を受信して応答信号を返信する送受信機3aと、受信した質問信号に対する応答信号を生成する信号処理部3bとを備える。
【0017】
図2は図1に示す二次監視レーダ装置の構成をより詳細に示すブロック図である。図2に示すように二次監視レーダ装置100は、質問信号を送信し、応答信号を受信するアンテナ2と、質問信号を生成する送信制御部16と、送信制御部16で生成する質問信号の送信チャネルを管理するチャネル管理部15と、送信制御部16で生成された質問信号をサーキュレータ11に出力する送信機1a1と、送信機1a1からの質問信号をアンテナ2に出力し、アンテナ2からの応答信号を受信機1a2に出力するサーキュレータ11と、応答信号を受信し、モードS応答処理部12又はATCRBS応答処理部13のいずれかに出力する受信機1a2と、モードS応答信号に対するモードS応答データを生成するモードS応答処理部12と、ATCRBS応答信号に対するモードA/C応答データを生成するATCRBS応答処理部13と、チャネル管理部15を制御する監視処理部14とを備える。
【0018】
監視処理部14は、相関処理部14aを備える。相関処理部14aは、モードS応答データを取得し、これらのモードS応答データに対して既知の相関処理を施す。また相関処理部14aは、モードA/C応答データを取得し、これらのモードA/C応答データに対して既知の相関処理を施す。
【0019】
ここで、図2に示す二次監視レーダ装置100の動作を説明する。質問信号の送信期間はオールコール期間とロールコール期間とに分けられる。まずオールコール期間では、送信制御部16は、インタロゲータ識別IIを含む質問信号を生成して送信機1a1に出力する。インタロゲータ識別IIは、二次監視レーダ装置100のインタロゲータ1に付与されている識別番号であり、例えばII=15が質問信号にセットされる。送信機1a1は、サーキュレータ11を介してアンテナ2に送信信号を出力する。
【0020】
そして、アンテナ2は、監視空域に質問信号を送信して、この質問信号を受信した航空機のトランスポンダからの応答信号を受信し、サーキュレータ11を介して受信機1a2に応答信号を出力する。
【0021】
そして、受信機1a2は、モードSトランスポンダからのモードS応答信号をモードS応答処理部12に出力し、ATCRBSトランスポンダからのモードA/C応答信号をATCRBS応答処理部13に出力する。
【0022】
モードS応答処理部12は、オールコール期間では、モードS応答信号に対するモードSオールコール応答データを生成して監視処理部14に出力する。また、モードSオールコール応答データに含まれるインタロゲータ識別IIが、質問信号に含まれるインタロゲータ1自らのインタロゲータ識別II=15と一致するかどうかを判断する。一致するモードSオールコール応答データは次に行う相関処理の対象となり、一致しないモードSオールコール応答データは処理対象外となる。また、モードS応答処理部12は、モードSアドレスをモードSオールコール応答データから取得する。モードSアドレスは、各航空機のトランスポンダに割り当てられた識別番号であり、例えばモードSアドレス“801015”がモードSオールコール応答データの中に含まれる。
【0023】
ATCRBS応答処理部13は、ATCRBS応答信号に対するモードA/C応答データを生成して監視処理部14に出力する。
【0024】
そして、相関処理部14aは、モードSオールコール応答データを取得し、これらのモードSオールコール応答データに対して既知の相関処理を施す。その結果に基づいて相関処理部14aは、同じ航空機から送出されたモードS応答信号を特定する。また相関処理部14aは、モードA/C応答データを取得し、これらのモードA/C応答データに対して既知の相関処理を施す。その結果に基づいて相関処理部14aは、同じ航空機から送出されたモードA/C応答信号を特定する。
【0025】
その後、ロールコール期間に移り、監視処理部14は、相関処理部14aでの相関処理結果に基づいて、航空機が存在する距離、方向を示す位置情報をチャネル管理部15に出力する。そして、チャネル管理部15は、位置情報に基づいて、送信制御部16で生成する質問信号の送信チャネルを管理する。
【0026】
そして、送信制御部16は、オールコール期間のモードSオールコール応答データから取得したモードSアドレス“801015”を含む質問信号を生成して送信機1a1に出力する。送信機1a1は、サーキュレータ11を介してアンテナ2に質問信号を出力する。
【0027】
そして、アンテナ2は、監視空域に質問信号を送信して、この質問信号を受信した航空機のモードSトランスポンダからの応答信号を受信し、サーキュレータ11を介して受信機1a2に応答信号を出力する。受信機1a2は、モードSトランスポンダからのモードS応答信号をモードS応答処理部12に出力する。
【0028】
モードS応答処理部12は、モードS応答信号に対するモードSロールコール応答データを生成して監視処理部14に出力する。また、モードSロールコール応答データに含まれるモードSアドレスが、質問信号のモードSアドレス“801015”と一致するかどうかを判断する。一致するモードSロールコール応答データは次に行う相関処理の対象となり、一致しないモードSロールコール応答データは処理対象外となる。
【0029】
そして、相関処理部14aは、モードSロールコール応答データを取得し、これらのモードSロールコール応答データに対して既知の相関処理を施し、ターゲットレポートを出力する。
【0030】
次に、モードS応答処理部12について説明する。まず、従来のモードS応答処理部における処理について説明する。図3は従来の二次レーダ装置におけるモードS応答処理部の構成を示すブロック図である。
【0031】
図3に示すように、従来の二次レーダ装置におけるモードS応答処理部12Aは、モードS応答信号のプリアンブルパルスを検出するプリアンブルパルス検出部121と、モードS応答信号を2値化処理してモードS応答データを生成する2値化処理部122と、モードS応答データのパルス列から“0”,“1”の判定を行い、パリティ部分(AP又はPIフィールド)をデコードする処理(以下デコード処理と記述)を行うデコード処理部123と、インタロゲータ識別II又はモードSアドレスの比較を行うエラー判定処理部124と、モードS応答データのビットごとにエラーの可能性があるかどうかを判断して信頼性データを生成する信頼性判断部125と、モードS応答データのエラー訂正を行うエラー訂正処理部126と、エラー訂正処理部126でエラー訂正されたモードS応答データに対してエラー判定処理部124と同様の処理を行うエラー判定処理部127とを備える。
【0032】
まず、プリアンブルパルス検出部121は、モードS応答信号であることを示すプリアンブルパルスを検出し、モードS応答信号と検出ネーブルを2値化処理部122に出力し、モードS応答信号を信頼性判断部125に出力する。
【0033】
2値化処理部122は、モードS応答信号を2値化処理してモードS応答データを生成し、デコード処理部123に出力する。デコード処理部123は、モードS応答データのデコード処理を行いデコードされたモードS応答データをエラー判定処理部124に出力する。
【0034】
そして、エラー判定処理部124は、オールコール期間においては、モードS応答データに含まれるインタロゲータ識別IIが、質問信号に含まれるインタロゲータ1自らのインタロゲータ識別II=15と一致するかどうかを判断する。また、ロールコール期間においては、モードS応答データに含まれるモードSアドレスが、質問信号のモードSアドレス“801015”と一致するかどうかを判断する。一致する場合は、質問に対する正常な応答であるとして、モードS応答データを相関処理部14aに出力する。一方、一致しない場合は、エラー判定処理部124は、モードS応答データをエラー訂正処理部126に出力する。
【0035】
信頼性判断部125は、モードS応答信号の波形に基づいて応答データのビットごとにエラーの可能性があるかどうかを判断して信頼性データを生成し、この信頼性データをエラー判定処理部124に出力する。
【0036】
その後、エラー訂正処理部126は、信頼性データに基づいて、エラー判定処理部124から入力されたモードS応答データに対して既知のエラー訂正処理を行い、エラー訂正されたモードS応答データをエラー判定処理部127に出力する。
【0037】
そして、エラー判定処理部127は、エラー判定処理部124と同様の処理を行い、一致する場合は、質問に対する正常な応答であるとして、モードS応答データを相関処理部14aに出力する。一致しない場合は、モードS応答データは相関処理部14aで処理対象外であるとして破棄される。
【0038】
図4はモードS応答データを示す図、図5はモードS応答データのエラー訂正ができる例を示す図、図6はモードS応答データのエラー訂正ができない例を示す図である。
【0039】
図4に示すように、モードS応答データは、モードS応答であることを示す8μsのプリアンブルパルスと、32bit又は88bitのプロトコルフィールドと、24bitのAPフィールド又はPIフィールドを表す部分とからなる。最後の24bitの部分がAPフィールドとなるのは個別質問時の応答データであり、PIフィールドとなるのはオールコール質問時の応答データである。
【0040】
図5に示すモードS応答データは、1bit目と2bit目とに干渉波があり、1bit目は本来“1”であるのに“0”と判断され、2bit目は本来“0”であるのに“1”と判断される例を示す。また、図6に示すモードS応答データは、1bit目と56bit目とに干渉波があり、1bit目は本来“1”であるのに“0”と判断され、56bit目は本来“0”であるのに“1”と判断される例を示す。
【0041】
図3に示す従来のモードS応答処理部12Aでは、エラー位置の間隔が24bit以内の場合は訂正することができるが、24bitより離れている場合はエラーを訂正することができなかった。つまり、図5に示すモードS応答データのエラーは訂正することができるが、図6に示すモードS応答データは、エラー位置の間隔が24bitより離れているため訂正することができない。
【0042】
ここで、本発明の実施の形態のモードS応答処理部12について説明する。図7は本発明の実施の形態の二次レーダ装置におけるモードS応答処理部の構成を示すブロック図である。図7に示すモードS応答処理部12の構成要素において、図3と同一の構成要素については、同一番号をつけることによりその説明は省略する。
【0043】
図7において図3に示すモードS応答処理部12Aと異なる点は、エラー訂正処理部128が追加された点である。エラー訂正処理部128は、エラー訂正処理部126でエラー訂正処理された後、エラー判定処理部127で一致しないと判定されたモードS応答データについて、信頼性データに基づいてエラー訂正処理を行う。
【0044】
ここで、エラー訂正処理部128でエラー訂正処理を行う手順を説明する。図8は本発明の実施の形態のエラー訂正処理の手順を示すフローチャートである。
【0045】
まず、ステップS10では、エラー訂正処理部128は、信頼性判断部125から入力される信頼性データに基づいて、エラー判定処理部127から入力されるモードS応答データの中に信頼性の低いビットがあるかどうかを判断する。信頼性の低いビットがある(YES)ときはステップS20に進む。信頼性の低いビットがない(NO)ときはエラー訂正することができないため、モードS応答データは相関処理部14aで処理対象外であるとして破棄される。
【0046】
次に、ステップS20では、エラー訂正処理部128は、信頼性の低いビットの数nが訂正実行指定数以下であるかどうかを判断する。訂正実行指定数以下である(YES)ときはステップS30に進み、訂正実行指定数以下でない(NO)ときはエラー訂正することが困難なため、モードS応答データは相関処理部14aで処理対象外であるとして破棄される。
【0047】
エラー訂正処理部128のエラー訂正処理では、最大2−1回の計算を実施する。例えばn=10であると1023回の計算を実施する必要がある。しかし、信頼性の低いビットの数nが大きい場合は、エラー訂正処理を実施してもエラー訂正できる確率が低くなる。例えば、2機の航空機のモードS応答が重なっている場合はエラー訂正できる確率はほとんどない。このため、訂正実行指定数を予め設定し、信頼性の低いビットの数nが訂正実行指定数より多い場合は訂正処理を実行しないように制限を設けている。
【0048】
次に、ステップS30では、エラー訂正処理部128は、信頼性の低いビットを1bitずつ“0”から“1” 又は“1”から“0”に変更し、APフィールド又はPIフィールドをデコードする。
【0049】
次に、ステップS40では、エラー訂正処理部128は、オールコール期間においては、モードS応答データに含まれるインタロゲータ識別IIが、質問信号に含まれるインタロゲータ1自らのインタロゲータ識別IIと一致するかどうかを判断する。また、ロールコール期間においては、モードS応答データに含まれるモードSアドレスが、質問信号のモードSアドレスと一致するかどうかを判断する。一致する(YES)ときは、エラーが訂正された正常な応答であるとして、モードS応答データを相関処理部14aに出力する。一致しない(NO)ときは、ステップS50に進む。
【0050】
そして、ステップS50では、エラー訂正処理部128は、信頼性の低いビットの変更処理を2−1回実行したかどうかを判断する。2−1回実行した(YES)ときは、エラー訂正することができないため、モードS応答データは相関処理部14aで処理対象外であるとして破棄される。2−1回実行していない(NO)ときは、ステップS30に戻って以降の処理を繰り返す。
【0051】
ここで、エラー訂正の手順を具体的に説明する。図9はモードS応答データと信頼性データの関係を示す図、図10は1回目の変更処理を示す図、図11は2回目の変更処理を示す図、図12は3回目の変更処理を示す図である。図9において、信頼性データ“0”は、エラーである可能性が高く、信頼性が低いことを示し、信頼性データ“1”は、信頼性が高いことを示す。
【0052】
図9では、1bit目と56bit目とが信頼性データ“0”となっており、モードS応答データが誤って判定されている可能性を表している。この場合は、信頼性の低いビットの数n=2であるので、信頼性の低いビットの変更処理を2−1=3回実行する。
【0053】
まず1回目は、エラー訂正処理部128は、図10に示すように、モードS応答データの1bit目を“0”から“1”に変更し、APフィールド又はPIフィールドをデコードし、モードSアドレス又はインタロゲータ識別IIが一致するかどうかを判断する。一致すればこの1bit目が間違った値で判断されたものとし、この1bit目の値を変更し、エラー訂正できたものとする。一致しなければ、2回目の処理に移る。
【0054】
2回目は、エラー訂正処理部128は、図11に示すように、モードS応答データの1bit目と56bit目とを“0”から“1”に変更し、APフィールド又はPIフィールドをデコードし、モードSアドレス又はインタロゲータ識別IIが一致するかどうかを判断する。一致すれば1bit目と56bit目の値を変更し、エラー訂正できたものとする。一致しなければ、3回目の処理に移る。
【0055】
3回目は、エラー訂正処理部128は、図12に示すように、モードS応答データの56bit目を“0”から“1”に変更し、APフィールド又はPIフィールドをデコードし、モードSアドレス又はインタロゲータ識別IIが一致するかどうかを判断する。一致すれば56bit目の値を変更し、エラー訂正できたものとする。一致しなければ、エラー訂正することができないものと判断する。
【0056】
このように、本発明の実施の形態に係る二次監視レーダ装置及びエラー訂正方法によれば、モードSトランスポンダからの応答信号の波形に基づいてモードS応答データのビットごとにエラーの可能性があるかどうかを信頼性判断部125で判断して信頼性データを生成し、この信頼性データに基づいてエラー訂正処理部128でモードS応答データのエラーの可能性があるビットを1ビットずつ訂正し、すべてのエラーが解消するまで繰り返しエラー訂正処理を実行するので、24bitより離れた位置のエラーを訂正することができる。また、24bit以内の複数のエラーを訂正することができる。このため、モードS応答データのエラー訂正率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態に係る二次監視レーダ装置と機上側装置を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す二次監視レーダ装置の構成をより詳細に示すブロック図である。
【図3】従来の二次レーダ装置におけるモードS応答処理部の構成を示すブロック図である。
【図4】モードS応答データを示す図である。
【図5】モードS応答データのエラー訂正ができる例を示す図である。
【図6】モードS応答データのエラー訂正ができない例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態の二次レーダ装置におけるモードS応答処理部の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施の形態のエラー訂正処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】モードS応答データと信頼性データの関係を示す図である。
【図10】1回目の変更処理を示す図である。
【図11】2回目の変更処理を示す図である。
【図12】3回目の変更処理を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 インタロゲータ
1a,3a 送受信機
1b,3b 信号処理部
2,4 アンテナ
3 トランスポンダ
1a1 送信機
1a2 受信機
11 サーキュレータ
12,12A モードS応答処理部
13 ATCRBS応答処理部
14 監視処理部
14a 相関処理部
15 チャネル管理部
16 送信制御部
100 二次監視レーダ装置
121 プリアンブルパルス検出部
122 2値化処理部
123 デコード処理部
124,127 エラー判定処理部
125 信頼性判断部
126,128 エラー訂正処理部
200 機上側装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モードSトランスポンダを搭載する航空機に質問信号を送信する送信手段と、
この送信手段により送信された前記質問信号に対する前記モードSトランスポンダからの応答信号を受信する受信手段と、
前記応答信号を2値化処理して応答データを生成する2値化処理手段と、
前記応答信号の波形に基づいて、前記応答データのビットごとにエラーの可能性があるかどうかを判断してビットごとの信頼性データを生成する信頼性判断手段と、
前記信頼性データに基づいて前記応答データのエラーの可能性があるビットを1ビットずつ訂正し、すべてのエラーを解消するまで繰り返しエラー訂正処理を実行するエラー訂正手段と
を有することを特徴とする二次監視レーダ装置。
【請求項2】
前記エラー訂正手段は、エラーの可能性があるビットの数が予め設定した訂正実行指定数以下の場合にエラー訂正処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の二次監視レーダ装置。
【請求項3】
モードSトランスポンダを搭載する航空機を監視する二次監視レーダ装置が送信する質問信号に対する応答データのエラーを訂正するエラー訂正方法であって、
前記モードSトランスポンダからの応答信号の波形に基づいて、前記応答信号を2値化処理して生成される応答データのビットごとにエラーの可能性があるかどうかを判断してビットごとの信頼性データを生成する信頼性判断ステップと、
前記信頼性データに基づいて前記応答データのエラーの可能性があるビットを1ビットずつ訂正し、すべてのエラーを解消するまで繰り返しエラー訂正処理を実行するエラー訂正ステップと
を有することを特徴とするエラー訂正方法。
【請求項4】
エラーの可能性があるビットの数が予め設定した訂正実行指定数以下であるかどうかを判断する訂正実行数判断ステップを有し、
前記エラー訂正ステップは、エラーの可能性があるビットの数が前記訂正実行指定数以下の場合にエラー訂正を実行することを特徴とする請求項3に記載のエラー訂正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−71623(P2007−71623A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257516(P2005−257516)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】