説明

二次監視レーダ装置

【課題】常に安定して、各航空機が質問信号を誤認識することのない二次監視レーダ装置を提供する。
【解決手段】SLSアンテナ13の出力を用いてINTアンテナ12の出力によるサイドローブを抑圧する場合に、この抑圧処理をINTアンテナ12及びSLSアンテナ13それぞれのアンテナ利得のみに頼らずに、SLSアンテナ13の伝送系に設けられる送信電力調整回路16にて電力増幅器15の増幅レベルを制御することで実行するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば航空管制用レーダ装置に用いられる二次監視レーダ装置に係り、特にゴースト抑圧の向上を目的とした技術に関する。
【背景技術】
【0002】
航空管制用の二次監視レーダ装置は、例えば特許文献1に示されているように、質問信号(1030MHz)を航空機上のトランスポンダ(応答装置)に送信し、このトランスポンダにより解読された質問信号に対応する応答信号(1090MHz)を受信することによって航空機の識別を行なうものである。
【特許文献1】特開2005−69890号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記各パルスのトランスポンダにおける受信電力は空中線のINT(インタロゲーション)系とSLS(サイドローブ・サプレッション)系のアンテナパターン特性の関係によって決定される。したがって、INT系のサイドローブレベルがSLS系のアンテナ利得より一部の範囲において高いと、誤認識するおそれがあり、INT系のサイドローブレベルよりSLS系のアンテナ利得を全方位の範囲において一定値より高くしかも、INT系のメインローブレベルよりも低く設定することが必要である。
【0004】
しかし、従来は、上記INT系とSLS系のアンテナ利得のみによりレベルの関係を維持していたので、常に安定した状態で、自己の航空機に対する質問信号か否かを判断することは困難であった。
【0005】
そこで、この発明の目的は、常に安定して、各航空機が質問信号を誤認識することのない二次監視レーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記目的を達成するために、以下のように構成される。
所定間隔で発生される第1乃至第3パルスのうち、第1及び第3パルスを用いて航空機に対する質問信号を送出する第1のアンテナ系と、第2パルスを送出する第2のアンテナ系と、この第2のアンテナ系の伝送路に接続され、第2のアンテナ系の送出信号の信号レベルを、第1のアンテナ系の出力によるアンテナパターンのメインローブの信号レベルより低くかつアンテナパターンのサイドローブの信号レベルより高くなるように調整する調整手段とを備えるようにしたものである。
【0007】
この構成によれば、第2のアンテナ系の出力を用いて第1のアンテナ系の出力によるサイドローブを抑圧する場合に、この抑圧処理を各アンテナ系のアンテナ利得のみに頼らずに、第2のアンテナ系の伝送路に設けられる増幅器等で実行することが可能となる。
【0008】
したがって、第2のアンテナ系の送出信号の信号レベルが、第1のアンテナ系の出力のメインローブの信号レベルより低くかつアンテナパターンのサイドローブの信号レベルより高くなるように、増幅器の増幅率を調整しておくだけで、アンテナの交換、調整等を行なう必要がなく、常に安定して、各航空機が質問信号を誤認識することのない装置を提供できる。
【発明の効果】
【0009】
以上詳述したようにこの発明によれば、常に安定して、各航空機が質問信号を誤認識することのない二次監視レーダ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係わる二次監視レーダ装置の構成を示すブロック図である。図1において、符号11は航空機に対する質問信号として搬送波周波数1030MHzの3つのP1パルス,P2パルス,P3パルスを所定の間隔で生成するエキサイタであり、そのP1パルス,P3パルスはINTアンテナ12の伝送系に分配され、P2パルスはSLSアンテナ13の伝送系に分配される。各伝送系には、INTアンテナ12への伝送信号を所要電力まで増幅するための電力増幅器14と、SLSアンテナ13への伝送信号を所要電力まで増幅するための電力増幅器15とが設けられる。
【0011】
また、この実施形態では、上記電力増幅器15に対し送信電力調整回路16が接続される。この送信電力調整回路16は、上記電力増幅器15の増幅レベルを調整する。
【0012】
次に、上記構成において、その運用動作を説明する。
図2は、従来の二次監視レーダ装置の構成例を示している。なお、図2において、上記図1と同一部分には同一符号を付す。
【0013】
エキサイタ11にて発生した質問信号は、電力増幅器17において所要電力増幅され、スイッチS1およびS2により、INTアンテナ12およびSLSアンテナ13に出力する信号(P1、P2、P3パルス)の切換えを行う。
【0014】
図3は、P1、P2、P3パルスが出力されるアンテナ系統と出力タイミングを示している。この場合、出力される各パルスの出力レベルは同じとなる。
【0015】
各パルス信号は、図4に示す各系のアンテナパターンにより空間に放射され、航空機のトランスポンダにて受信される。
【0016】
トランスポンダでは、図5に示すように受信した各パルスのレベル比較をすることにより、応答を行うか、否かを判断する。
【0017】
領域1:必ず応答する。
領域2:応答するか否か不明確。
領域3:応答しない。
【0018】
このように、INT系から出力されたパルス(P1,P3)の受信レベルとSLS系から出力されたパルス(P2)の受信レベルを比較することにより、各航空機は自己に対しての質問か否かを判断する。
【0019】
ところが、上記INTアンテナ12およびSLSアンテナ13自体の特性によって、INT系のサイドローブレベルがSLS系のアンテナ利得より一部の範囲において高くなる場合には、航空機にて誤認識するおそれがある。
【0020】
この場合、上記INTアンテナ12およびSLSアンテナ13を修理(調整)もしくは新たなINTアンテナおよびSLSアンテナに交換することもできるが、交換作業等に人手を要するため、作業完了までに多くの手間と時間がかかるとともに、コストがかかる。
【0021】
そこで、本実施形態では、SLS系の電力増幅器15の増幅レベルの調整を行うための送信電力調整回路16を備えるようにしている。
【0022】
SLS系の電力増幅器15では、INTアンテナ12のサイドローブレベルとSLSアンテナ13のアンテナ利得より算出されたレベル差に基づきP2パルスを増幅する。
【0023】
図6は、この実施形態における各パルスのレベルを示している。すなわち、P2パルスのレベルはP1,P3パルスに対してアンテナ特性を補正した(加味した)電力レベル(CdB)となる。これは、送信電力調整回路16にてSLSアンテナ13の送出信号の信号レベルをINTアンテナ12の出力におけるアンテナパターンのメインローブの信号レベルより低くかつサイドローブの信号レベルより高くなるように、電力増幅器15の増幅レベルを調整することにより実現される。
【0024】
これにより、SLSアンテナ13から空間へ放射される電力レベルは、INTアンテナ12のサイドローブレベルから放射される電力レベルに対し一定値より低く設定されることになる。
【0025】
すなわち、電力増幅器15の出力電力をSxとし、SLSアンテナ13のアンテナ利得をANTSgとすると、SLS系のトータルの出力レベルTSLSは次式で表される。
【0026】
TSLS=Sx+ANTSg
そして、本発明の上記実施形態では電力増幅器15の出力である上記Sxを送信電力調整回路16により、調製することを意味する。
【0027】
以上のように上記実施形態では、SLSアンテナ13の出力を用いてINTアンテナ12の出力によるサイドローブを抑圧する場合に、この抑圧処理をINTアンテナ12及びSLSアンテナ13それぞれのアンテナ利得のみに頼らずに、SLSアンテナ13の伝送系に設けられる送信電力調整回路16にて電力増幅器15の増幅レベルを調整することで実行するようにしている。
【0028】
したがって、送信電力調整回路16を電力増幅器15に接続して、SLSアンテナ13の送出信号の信号レベルが、INTアンテナ12の出力のメインローブの信号レベルより低くかつアンテナパターンのサイドローブの信号レベルより高くなるように、電力増幅器15の増幅レベルを調整しておくだけで、INTアンテナ12及びSLSアンテナ13の交換、調整等を行なう必要がなく、常に安定して、各航空機が質問信号を誤認識することのない二次監視レーダ装置を提供できる。
【0029】
なお、本発明は、類似のゴースト抑圧方式であるISLS(Improved SLS)機能においても適用することが可能である。
【0030】
また、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の一実施形態に係わる二次監視レーダ装置の構成を示すブロック図。
【図2】以前に考えられていた二次監視レーダ装置の構成例を示すブロック図。
【図3】P1、P2、P3パルスが出力されるアンテナ系統と出力タイミングを示す図。
【図4】各系のアンテナによるアンテナパターンを説明するために示す図。
【図5】航空機のトランスポンダにより判定される応答結果を示す図。
【図6】本実施形態における各パルスのレベルを示す図。
【符号の説明】
【0032】
11…エキサイタ、12…INTアンテナ、13…SLSアンテナ、14,15…電力増幅器、16…送信電力調整回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔で発生される第1乃至第3パルスのうち、第1及び第3パルスを用いて航空機に対する質問信号を送出する第1のアンテナ系と、
前記第2パルスを送出する第2のアンテナ系と、
この第2のアンテナ系の伝送路に接続され、前記第2のアンテナ系の送出信号の信号レベルを、前記第1のアンテナ系の出力によるアンテナパターンのメインローブの信号レベルより低くかつ前記アンテナパターンのサイドローブの信号レベルより高くなるように調整する調整手段とを具備したことを特徴とする二次監視レーダ装置。
【請求項2】
前記調整手段は、前記第2のアンテナ系の送出信号の増幅率を任意に調整可能な増幅器を備えることを特徴とする請求項1記載の二次監視レーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−218622(P2007−218622A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−36734(P2006−36734)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】