説明

二次監視レーダ

【課題】モードS機から送信される拡張スキッタを有効利用して航空機を監視する。
【解決手段】監視空域を飛行する航空機に質問信号を送信する送信手段122と、監視空域を飛行する航空機から送信された信号を受信する受信手段123と、受信手段が受信した信号から前記送信手段が送信した質問信号に応答する応答信号が検出されると、当該応答信号を解析する応答解析手段132b,133bと、受信手段が受信した信号から拡張スキッタが検出されると、当該拡張スキッタを解析するスキッタ解析手段132dとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機から受信する拡張スキッタを利用する二次監視レーダに関する。
【背景技術】
【0002】
二次監視レーダ(SSR:Secondary Surveillance Radar)は、地上局に設置され、図5に示すように航空機2に搭載されているトランスポンダ20に送受信部12が質問信号を送信し、この質問信号に対して航空機2のトランスポンダ20から送信される応答信号を受信する。送受信部12の処理は、信号処理部13aによって制御されている。二次監視レーダ1aは、このような信号の送受信によって、航空管制に必要な情報を取得している。
【0003】
トランスポンダ20には、従来から利用されているATCRBSトランスポンダと、ATCRBSトランスポンダよりも後に開発されたモードSトランスポンダの2種類があり、送受信される信号が異なる。図5に示す二次監視レーダ1aは、モードS二次監視レーダ(SSRモードS)であって、ATCRBSトランスポンダとモードSトランスポンダの両トランスポンダに対応し、ATCRBSトランスポンダが搭載される航空機(ATCRBS機)であっても、モードS二次監視レーダが搭載される航空機(モードS機)であっても監視することができる二次監視レーダである。
【0004】
モードS二次監視レーダ1aは、図6に示すように、信号の送受信を切り替える送受切替器121、信号を送信する送信器122及び信号を受信する受信器123を有する送受信部12を備えている。また、モードS二次監視レーダ1aは、信号の送信を制御する送信制御部131、モードS機から受信した信号を処理するモードS応答処理部136、ATCRBS機から受信した信号を処理するATCRBS応答処理部133、受信信号を利用してターゲットレポートを生成して航空機の飛行を監視する監視処理部137及びオールコール期間及びロールコール期間を管理するチャネル管理部134を有する信号処理部13を備えている。
【0005】
具体的には、受信器123は、図7に示すように、受信する信号からΣビデオを検出するΣビデオ検出器123aと、検出されたΣビデオを二値化する二値化手段123bと、Δビデオを検出するΔビデオ検出器123cと、検出されたΔビデオを二値化する二値化手段123dと、Ωビデオを検出するΩビデオ検出器123eと、Ωビデオを二値化する二値化手段123fとを有している。
【0006】
また、モードS応答処理部136は、図7に示すように、各二値化手段123b,123d,123fで二値化された信号からモードS機から送信されたモードS応答を検出する検出手段136aと、検出されたモードS応答を解析解析する解析手段136bとを備えている。また、ATCRBS応答処理部133は、各二値化手段123b,123d,123fで二値化された信号からATCRBS機から送信されたATCRBS応答を検出するATCRBS検出手段133aと、検出されたモードS応答を解析するATCRBS応答解析手段bとを備えている。
【0007】
さらに、監視処理部137は、解析手段136b,133bの解析結果を利用してターゲットレポートを生成するターゲットレポート生成手段137aとを備えている。
【0008】
モードS二次監視レーダ1aでは、ATCRBS機及びモードS機を捕捉するため、図8に示すように、決められた繰返し周波数や覆域に応じてオールコール期間Taとロールコール期間Trとに分けて処理を進めている。具体的には、モードS二次監視レーダ1aの送信制御部131は、オールコール期間Taには、一括質問を送信してATCRBS機とモードS機を捕捉し、ロールコール期間Trには、個別質問を送信してオールコール期間Taに捕捉したモードS機の捕捉を継続することで、監視空域内の全ての航空機の捕捉が可能になるように処理している(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
【0009】
しかしながら、モードS二次監視レーダ1aでは、監視空域に航空機数が増加し、データリンクの機能が付加されると、監視空域内の全ての航空機の捕捉が困難となり、各期間Ta,Trを効率よく使用することが重要になる。
【0010】
ところで、航空機からは、モードS二次監視レーダ1a送信する質問信号に応答して送信される応答信号の他、拡張スキッタが送信される。図9に示すように、拡張スキッタは、「トランスポンダの能力(CA)」、「トランスポンダのモードSアドレス(AA)」、「航空機の位置及び速度等(ME)」、「パリティ(PI)」の情報を含む信号である。この拡張スキッタは放送型自動従属監視(ADS−B)で利用される信号である。したがって、モードS二次監視レーダ1aでは拡張スキッタを受信する場合があるが、受信した拡張スキッタを利用していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−72950号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Michael C. Stevens “Secondary Surveillance Radar” 1998, ISBN 0-89006-292-7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように、従来のモードS二次監視レーダ1aでは、監視空域に航空機数が増加し、データリンクの機能が追加されると、全ての航空機の捕捉が困難となる。一方、応答信号とは無関係に受信する拡張スキッタは、モードS二次監視レーダ1aでは有効に利用されていない。
【0014】
従って本発明は、モードS機から送信される拡張スキッタを有効利用して航空機を監視する二次監視レーダを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の特徴に係る二次監視レーダは、監視空域を飛行する航空機に質問信号を送信する送信手段と、監視空域を飛行する航空機から送信された信号を受信する受信手段と、受信手段が受信した信号から前記送信手段が送信した質問信号に応答する応答信号が検出されると、当該応答信号を解析する応答解析手段と、受信手段が受信した信号から拡張スキッタが検出されると、当該拡張スキッタを解析するスキッタ解析手段とを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、モードS機から送信される拡張スキッタを有効利用して航空機を監視する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の最良の実施形態に係るモードS二次監視レーダの構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】図1に示すモードS二次監視レーダの構成の一部を説明する図である。
【図3】一般的なモードS二次監視レーダが受信する信号について説明する図である。
【図4】図1に示すモードS二次監視レーダにおける処理について説明する図である。
【図5】一般的なモードS二次監視レーダとトランスポンダを表わす概略図である。
【図6】従来のモードS二次監視レーダの構成を説明する機能ブロック図である。
【図7】図6に示すモードS二次監視レーダの構成の一部を説明する図である。
【図8】図6に示すモードS二次監視レーダにおける処理について説明する図である。
【図9】拡張スキッタの構成について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を用いて本発明の最良の実施形態に係るモードS二次監視レーダ1について説明する。モードS二次監視レーダ1は、図5を用いて上述したモードS二次監視レーダ1aと同様に、地上局に設置されており、航空機2に備えられるトランスポンダ20との質問応答に基づいて航空機2を監視する。以下の説明において、従来と同一の構成については、上述の説明と同一の符号を付して説明する。
【0019】
図1に示すように、本発明の最良の実施形態に係るモードS二次監視レーダ1は、アンテナ11と、アンテナ11を介して信号を送受信する送受信部12と、送受信部12に接続され、質問応答を制御するとともに受信する応答Aに基づいてターゲットレポートを生成して出力する信号処理部13とを備えている。
【0020】
送受信部12は、送受切替器121、送信器122及び受信器123を備え、アンテナ11を介して質問を送信するとともに、アンテナ11で受信する応答を信号処理部13に出力している。
【0021】
また、信号処理部13は、質問の送信制御を制御する送信制御部131、受信したモードS応答を処理するモードS応答処理部132、受信したATCRBS応答を処理するATCRBS応答処理部133、オールコール期間及びロールコール期間をスケジューリングするチャネル管理部134、応答を利用してターゲットレポートを生成する監視処理部135を備えている。
【0022】
具体的には、受信器123は、図2に示すように、受信信号からΣビデオを検出するΣビデオ検出器123aと、検出したΣビデオを二値化する二値化手段123bと、受信信号からΔビデオを検出するΔビデオ検出器123cと、検出したΔビデオを二値化する二値化手段123dと、受信信号からΩビデオを検出するΩビデオ検出器123eと、検出したΩビデオを二値化する二値化手段123fとを有している。受信器123の各二値化手段123b,123d,123fは、二値化したビデオをモードS応答処理部132及びATCRBS応答処理部133に出力する。
【0023】
モードS応答処理部132は、図2に示すように、受信器123からΣビデオ、Δビデオ及びΩビデオを入力し、送信器122が送信した質問信号に応答して航空機2から送信されたモードS応答を検出するモードS応答検出手段132aと、モードS応答検出手段132aで検出されたモードS応答を解析して解析結果を監視処理部135に出力するモードS応答解析手段132bと、受信器123からΩビデオを入力して航空機2から送信された拡張スキッタを検出する拡張スキッタ検出手段132cと、拡張スキッタ検出手段132cで検出された拡張スキッタを解析して解析結果を監視処理部135に出力する拡張スキッタ解析手段132dとを有している。
【0024】
ATCRBS応答処理部133は、図2に示すように、受信器123からΣビデオ、Δビデオ及びΩビデオを入力し、送信器122が送信した質問信号に応答して航空機2から送信されたATCRBS応答を検出するATCRBS検出手段133aと、ATCRBS検出手段133aで検出されたATCRBS応答を解析して解析結果を監視処理部135に出力するATCRBS応答解析手段133bとを有している。
【0025】
監視処理部135は、図2に示すように、応答信号と拡張スキッタの解析結果を利用してターゲットレポートを生成するターゲットレポート生成手段135aと、拡張スキッタの座標を変換する座標変換手段135bとを有している。
【0026】
Σビデオは、図3に示すように、アンテナ11を中心軸とし、アンテナ11の正面方向fの領域Aで受信された信号である。また、Δビデオは、図3に示すように、アンテナ11の正面方向fの両側の領域Bで受信された信号である。さらに、Ωビデオは、図3に示すように、広い領域Cで受信された信号である。
【0027】
図3に示すように、Σビデオ及びΔビデオは指向性の信号であり、アンテナ11を基準とした所定範囲(角度)を飛行する航空機との通信に限って利用することができる。一方、Ωビデオは無指向性の信号であり、アンテナ11を基準として広範囲(角度)を飛行する航空機との通信に利用することができる。また、オールコール質問応答やロールコール質問応答は、アンテナ11を基準とした所定範囲(角度)を飛行する航空機のみを対象としている。したがって、無指向性であるΩビデオを利用した場合、あらゆるトランスポンダからの応答(フルーツ応答、スキッタ応答等)が対象となる。
【0028】
具体的には、拡張スキッタ解析手段132dは、拡張スキッタ検出手段132cで検出された拡張スキッタのデータブロックをデコードし、その結果を監視処理部135に出力する。拡張スキッタは、図9に示すような構成であるが、PIフィールドの値が“0”となるため、拡張スキッタ解析手段132dは、デコードの結果、PIフィールドの値が“0”、かつ、DFフィールドの値が“10001”(DF=17)または“10010”(DF=18)となった場合にのみ、監視処理部135に出力する。
【0029】
また、座標変換手段135bは、拡張スキッタに含まれる位置情報を応答信号に含まれる位置情報に適合させる。すなわち、モードS応答解析手段132b及びATCRBS応答解析手段133bで解析された応答信号には、航空機2の位置情報として、モードS二次監視レーダを中心として航空機2の位置を表わす座標(レンジ及びアジマス)が含まれている。一方、拡張スキッタ解析手段132dで解析された拡張スキッタには、航空機2の位置情報として、航空機2の位置を表わす緯度と経度が含まれている。したがって、座標変換手段135bは、拡張スキッタ解析手段132dで解析された緯度及び経度を、航空機2の位置を特定する座標(レンジ及びアジマス)に変換する。
【0030】
上述したように、モードS二次監視レーダ1では、航空機2から受信する拡張スキッタも処理している。この拡張スキッタは、航空機2が定期的に送信する信号であるため、モードS二次監視レーダ1は、オールコール期間Ta及びロールコール期間Trとは無関係なタイミングで拡張スキッタを受信する。したがって、図4に示すように、モードS応答処理部132では、受信する拡張スキッタをオールコール期間Ta及びロールコール期間Trとは無関係に処理する。
【0031】
具体的には、図4に示すように、オールコール期間Taには、モードS二次監視レーダ1は、ATCRBS機及びモードS機に一括質問を送信して受信した応答を処理(α、β)するとともに、モードS機から受信する拡張スキッタを処理する(δ)。また、ロールコール期間Trには、モードS二次監視レーダ1は、過去のオールコール期間Taに応答を受信したモードS機に個別質問送信し、受信した応答を処理(γ)するとともに、拡張スキッタを受信した応答を処理(δ)する。また、モードS二次監視レーダ1は、ロールコール期間Trにも、モードS機から受信する拡張スキッタを処理する(δ)。
【0032】
本発明の最良の実施形態に係るモードS二次監視レーダ1によれば、ATCRBS応答及びモードS応答に含まれる情報に加え、拡張スキッタに含まれる情報を利用してターゲットレポートを生成している。したがって、モードS二次監視レーダ1では、拡張スキッタを利用することで、通常の質問応答のみでは捕捉することのできなかった航空機の情報も取得して、航空機の監視性能を向上することができる。
【符号の説明】
【0033】
1…二次監視レーダ
2…トランスポンダ
11…アンテナ
12…送受信部
121…送受切替器
122…送信器(送信手段)
123…受信器(受信手段)
123a…Σビデオ検出器
123c…Δビデオ検出器
123e…Ωビデオ検出器
123b,123d,123f…二値化手段
13…信号処理部
131…送信制御部
132…モードS応答処理部
132a…モードS応答検出手段
132b…モードS応答解析手段(応答解析手段)
132c…拡張スキッタ検出手段
132d…拡張スキッタ解析手段(スキッタ解析手段)
133…ATCRBS応答処理部
133a…ATCRBS応答検出手段
133b…ATCRBS応答解析手段(応答解析手段)
134…チャネル管理部
135…監視処理部
135a…ターゲットレポート生成手段
135b…座標変換手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視空域を飛行する航空機に質問信号を送信する送信手段と、
前記監視空域を飛行する航空機から送信された信号を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した信号から前記送信手段が送信した質問信号に応答する応答信号が検出されると、当該応答信号を解析する応答解析手段と、
前記受信手段が受信した信号から拡張スキッタが検出されると、当該拡張スキッタを解析するスキッタ解析手段と、
を備えることを特徴とする二次監視レーダ。
【請求項2】
前記スキッタ解析手段は、受信信号のうち、Ωビデオの受信信号から検出された拡張スキッタを解析することを特徴とする請求項1に記載の二次監視レーダ。
【請求項3】
前記スキッタ解析手段で解析された拡張スキッタから当該拡張スキッタを送信した航空機の位置を表わす緯度及び経度を抽出し、当該緯度及び経度から前記モードS二次監視レーダを基準として航空機の位置を表わす座標に変換する座標変換手段をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の二次監視レーダ。
【請求項4】
前記応答解析手段の解析結果と、前記スキッタ解析手段の解析結果とで航空機の監視に利用するターゲットレポートを生成するターゲットレポート生成手段とを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の二次監視レーダ。
【請求項5】
前記スキッタ解析手段で解析された拡張スキッタから当該拡張スキッタを送信した航空機の位置を表わす緯度及び経度を抽出し、当該緯度及び経度から前記モードS二次監視レーダを基準として航空機の位置を表わす座標に変換する座標変換手段をさらに備え、
前記ターゲットレポート生成手段は、ターゲットレポートの生成に前記座標変換手段で変換された航空機の座標を利用することを特徴とする請求項3に記載の二次監視レーダ。
【請求項6】
前記スキッタ解析手段は、受信信号のうち、PIフィールドの値が0で、DFフィールドの値が17又は18となる信号を拡張スキッタとして利用することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1記載の二次監視レーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−266350(P2010−266350A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118473(P2009−118473)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】