説明

二次電池、二次電池の制御システム、二次電池のリースシステム

【課題】複数の蓄電要素を備えた二次電池であっても、製造コストを低減し、それぞれの蓄電要素が有する電極群の内部まで電解液を速やかに浸透させることができ、使い勝手がよく利便性の高い二次電池を提供し、複数の蓄電要素を効率よく使用可能とする二次電池の制御システム、および、利便性の高い二次電池のリースシステムを提供する。
【解決手段】外装ケース11の同一平面上に、複数の蓄電要素を所定間隔L1離間して絶縁状態で並設し、それぞれの蓄電要素に対応する正負の外部端子(6Aa〜6Bb)をそれぞれ設けた構成とした。また、それぞれの外部端子と電圧検出線22(22A、22B)を介して接続される制御部21を介して、各蓄電要素の異常を検知する構成として、異常を検知した蓄電要素の接続部24を電気的に切り離す制御システムとし、通信部27を介してインターネット網28に接続して、異常情報を通信可能なリースシステムとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関し、特に、正極板と負極板を複数層積層した積層型の二次電池、この二次電池の制御システム、および、この二次電池のリースシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高エネルギー密度を有し小型軽量化が可能であることからリチウム二次電池が、携帯電話やノート型パソコン等の携帯型電子機器の電源用電池として用いられている。また、大容量化が可能であることから、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)等のモータ駆動電源や、電力貯蔵用蓄電池としても注目されてきている。
【0003】
上記リチウム二次電池は、電池缶を構成する外装ケース内部に正極板と負極板とをセパレータを挟んで対向配置した電極群を収納し、電解液を充填し、複数の正極板の正極集電タブに連結される正極集電リードと、この正極集電リードと電気的に接続される正極外部端子と、複数の負極板の負極集電タブに連結される負極集電リードと、この負極集電リードと電気的に接続される負極外部端子を備えた構成とされる。
【0004】
また、電極群としては、巻回型と積層型が知られている。巻回型の電極群は、正極板と負極板との間にセパレータを介装して一体に巻回した構成であり、積層型の電極群は、正極板と負極板とをセパレータを介して複数層積層した構成である。
【0005】
積層型の電極群を備えるリチウム二次電池においては、正極板と負極板とをセパレータを介して複数層積層した電極群を外装ケースに収容し、非水電解液で充填した構成とされ、それぞれの正極板の正極集電タブに連結される正極集電リードと、この正極集電リードと電気的に接続される外部端子、および、負極板の負極集電タブに連結される負極集電リードと、この負極集電リードと電気的に接続される外部端子がそれぞれ設けられている。
【0006】
そのために、通常の二次電池は、一つの電池缶に一つの電極群を収容し、正極外部端子と負極外部端子とがそれぞれ1個設けられている。また、大容量の二次電池を作製するためには、同一の正負極材料を用いた場合は、正極板および負極板の面積を大きくする、単位面積当りの塗工量を増やす、積層数を増加させる、活物質量に合わせて充填する電解液量も増加させるなどが必要である。
【0007】
しかし、大きなサイズの電池缶に1セットの蓄電要素(電極群と集電リードとを含む発電・蓄電部)を備える構成では、積層体作製中に異物混入が起こった場合に、一枚の集電体上に大面積の活物質領域が形成されていると、短絡などによる材料ロスが多くなってしまう。
【0008】
また、一定以上の面積になると、従来の注液・含浸方法では、中央部に電解液が充填されるまで時間がかかり好ましくない。また、電解液が浸み込み易くするために高真空にして真空注液を行う場合は、所定の真空度に達するまでの時間が長くなると共に、設備費用が高くなってしまう問題が生じる。
【0009】
また、小型化を目指しながら大容量化を図るために、蓄電要素(発電要素)を上下二段に重ねたスタック型の電池が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−257408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
蓄電要素の大容量化を図るために、積層型の電極群の平面積を大きくすると、搬送の際に撓んでしまいハンドリング性に問題が生じる。ハンドリング性が悪くなると、短絡などにより歩留まりが悪化し、材料ロスの原因となって、製造コストが増加するので好ましくない。
【0012】
また、所定大きさの蓄電要素を重ね合わせて、共通の電池缶に複数の蓄電要素を組み込む構成として大容量化を図ることは可能である。しかし、単に重ね合わせるだけでは、電極群の中央部まで電解液を浸透させる時間が長くなったり、中央部まで充分に浸透させることができなくなったりする問題が生じる。
【0013】
そのために、複数の電極群を共通の電池缶に組み込む際には、単一の電極群に電解液が浸透する程度の時間で、複数の電極群の全てに電解液が浸透可能な構成が好ましい。また、それぞれの蓄電要素の有効利用を図るためには、それぞれの電極群にそれぞれ外部端子を設けて、それぞれ個別にも、直列に接続して同時にも、使用可能な構成であり制御システムであることが好ましい。
【0014】
また、家庭用の電力貯蔵用蓄電池として用いる場合には、それぞれの蓄電要素の不具合情報を直ちに報告することで、複数の蓄電要素を備える二次電池の管理を容易とし、使い勝手の良い二次電池のリースシステムを構築することが求められる。
【0015】
そこで本発明は、上記問題点に鑑み、複数の蓄電要素を備えた二次電池であっても、製造コストを低減し、それぞれの蓄電要素が有する電極群の内部まで電解液を速やかに浸透させることができ、使い勝手がよく利便性の高い二次電池を提供し、複数の蓄電要素を効率よく使用可能とする二次電池の制御システムを提供し、使い勝手がよく利便性の高い二次電池のリースシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために本発明は、電池缶内に、正極板と負極板とをセパレータを介して複数層積層した電極群を具備する蓄電要素を、複数一体に収容し電解液を充填した二次電池であって、前記電池缶を構成する外装ケースの同一平面上に、複数の前記蓄電要素を所定間隔離間して並設し、それぞれの前記蓄電要素に対応する正負の外部端子をそれぞれ設けたことを特徴としている。
【0017】
この構成によると、複数の蓄電要素を外装ケースの同一平面上に所定間隔離間して並設しているので、厚み方向に厚くならず、複数の電極群に電解液を同時に浸透させることができ注液コストを低減することができる。また、複数の蓄電要素を合わせて大面積の電極を構成するので、それぞれの蓄電要素のハンドリング性が良好となって短絡などの弊害が生じる確率が低減することと併せて製造コストを低減することができる。さらに、複数の蓄電要素にそれぞれ正負の外部端子を設けているので、使い勝手がよく利便性の高い二次電池を得ることができる。
【0018】
また本発明は上記構成の二次電池において、前記所定間隔は、前記電解液の流動性を阻害しない程度の幅とされることを特徴としている。この構成によると、複数の電極群を同一平面上に並設した構成であっても、それぞれの電極群に電解液を同時に浸透させることができ、電池缶に電解液を充填する時間を短縮することができる。
【0019】
また本発明は上記構成の二次電池において、並設される前記蓄電要素同士が電気的に絶縁されていることを特徴としている。この構成によると、同一の電池缶内に同じ電解液が充填された構成であっても、隣り合う蓄電要素同士が影響を及ぼし合うことなく、それぞれ個別の蓄電要素として用いることができる。
【0020】
また本発明は上記構成の二次電池において、並設される前記蓄電要素同士の間に、所定幅の絶縁部材からなるスペーサを配設したことを特徴としている。この構成によると、隣り合う蓄電要素を確実に絶縁状態に維持することができる。
【0021】
また本発明は上記構成の二次電池において、並設される前記蓄電要素同士の間、および、各蓄電要素と前記電池缶の内壁との間に、所定厚みの絶縁部材からなるスペーサを配設したことを特徴としている。この構成によると、それぞれの蓄電要素を個別に、また、電池缶に対して、確実に絶縁状態に維持することができる。
【0022】
また本発明は上記構成の二次電池において、前記蓄電要素の上面側と下面側とに前記スペーサを介装し、これらの上下のスペーサを介して前記蓄電要素を圧接状態に挟持することを特徴としている。この構成によると、絶縁部材からなるスペーサを介して蓄電要素を押し付けることで、電極同士の密着距離を所定の密着距離に維持して、所定の電池容量を維持することができる。
【0023】
また本発明は上記構成の二次電池において、前記蓄電要素は、長辺部と短辺部を有する矩形の活物質領域を備え、該活物質領域は、前記長辺部の端部から前記短辺の二等分線までの距離が100mm以下に形成されていることを特徴としている。この構成によると、大面積の電極群を構成する際に、一個の蓄電要素の大きさを、長辺部の端部から短辺の二等分線までの距離を100mm以下とすることで、電極群の中央部に電解液が浸透する時間が長くなり過ぎることを抑制し、電極群の内部まで電解液を速やかに浸透させることができる。
【0024】
また本発明は上記構成の二次電池において、前記外部端子に電圧検出線を接続し、それぞれの前記蓄電要素の電池容量を確認可能としたことを特徴としている。この構成によると、複数の蓄電要素を同一の電池缶内に収容した構成であっても、それぞれの外部端子に接続する電圧検出線を介して、各蓄電要素の電池容量を個別に確認して、それぞれの蓄電要素が正常であるか否かを検知することができる。
【0025】
また本発明は、請求項1から8のいずれかに記載された二次電池の制御システムであって、前記二次電池が備える複数の蓄電要素にそれぞれ設ける外部端子と外部機器とを電気的に接続する接続部と、該接続部の切り替えの制御と、前記外部端子に接続する電圧検出線を介して前記蓄電要素の出力電圧を認識して当該蓄電要素の異常を検知する機能を有する制御部と、を設け、前記制御部が異常を検知したときに、当該蓄電要素の接続部を電気的に切り離すことを特徴としている。
【0026】
この構成によると、制御部を介して、各蓄電要素の正常・異常を確認することができ、異常と確認された蓄電要素を切り離すことで、所定の電池容量を発揮する正常な蓄電要素のみを使用することができて、安定した電池容量を得る制御を行うことが可能となる。そのために、複数の蓄電要素を効率よく使用可能とする二次電池の制御システムを得ることができる。
【0027】
また本発明は、請求項1から8のいずれかに記載された二次電池のリースシステムであって、前記二次電池が備える複数の蓄電要素にそれぞれ設ける外部端子と外部機器とを電気的に接続する接続部と、該接続部の切り替えの制御と、前記外部端子に接続する電圧検出線を介して前記蓄電要素の出力電圧を認識して当該蓄電要素の異常を検知する機能を有する制御部と、該接続部に接続されインターネット網と通信可能な通信部とを設け、前記制御部が異常を検知したときに、前記通信部を介して、当該二次電池の使用者にその異常情報を通知すると同時に、前記インターネット網を経由して当該二次電池の管理会社にその異常情報および管理情報を通知することを特徴としている。この構成によると、二次電池に不具合が生じて規定容量以下となった情報を使用者(ユーザー)に伝えると同時に、二次電池管理会社に伝えることで、管理が容易となって、使い勝手がよく利便性の高い二次電池のリースシステムを構築することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、外装ケースの同一平面上に、複数の蓄電要素を所定間隔離間して並設し、それぞれの蓄電要素に対応する正負の外部端子をそれぞれ設けた構成としたので、複数の蓄電要素を備えた二次電池であっても、製造コストを低減し、それぞれの蓄電要素が有する電極群の内部まで電解液を速やかに浸透させることができ、使い勝手がよく利便性の高い二次電池を得ることができる。また、外部端子に接続した電圧検出線を介してそれぞれの蓄電要素の異常を検知して、電気的に切り離す制御を行うことで、複数の蓄電要素を効率よく使用可能とする二次電池の制御システムを得ることができる。また、インターネット網を介して、不具合が生じた二次電池の情報を管理会社に直ちに伝えるリースシステムとすることで、管理が容易となって、使い勝手がよく利便性の高い二次電池のリースシステムを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る二次電池の第一実施形態を示す概略平面図である。
【図2】本発明に係る二次電池の第二実施形態を示す概略平面図である。
【図3A】本発明に係る二次電池の第三実施形態を示す概略平面図である。
【図3B】本発明に係る二次電池の第四実施形態を示す概略側面図である。
【図4A】実施例1の電極群を示す概略説明図である。
【図4B】比較例1の電極群を示す概略平面図である。
【図5】本発明に係る二次電池の第五実施形態を示す概略平面図である。
【図6】二次電池の分解斜視図である。
【図7】二次電池が備える電極群の分解斜視図である。
【図8】二次電池の完成品を示す斜視図である。
【図9】電極群の概略断面図である。
【図10A】実施例A1の制御システムを示す概略説明図である。
【図10B】比較例B1の制御システムを示す概略説明図である。
【図10C】比較例B2の制御システムを示す概略説明図である。
【図10D】比較例B3の制御システムを示す概略説明図である。
【図11A】容量保持率80%で切り離し制御を行ったサイクル特性を示す。
【図11B】容量保持率70%で切り離し制御を行ったサイクル特性を示す。
【図11C】容量保持率60%で切り離し制御を行ったサイクル特性を示す。
【図12】注液時間を比較したインピーダンス測定結果を示す。
【図13】二次電池のリースシステムの概要を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。また、同一構成部材については同一の符号を用い、詳細な説明は適宜省略する。
【0031】
本発明に係る二次電池としてリチウム二次電池について説明する。例えば、図1に示す本実施形態に係るリチウム二次電池RB1は、積層型の二次電池であって、電池缶10内に、正極板と負極板とをセパレータを介して複数層積層した積層型の電極群1(1A、1B)を複数備えた構成である。また、それぞれの電極群の極板の面積を大きくし、積層数を増やすことで比較的大容量の二次電池となり、電気自動車用蓄電池や電力貯蔵用蓄電池などに適用可能なものである。
【0032】
また、電極群1A、1Bはそれぞれ別の外部端子に接続されており、電極群1Aの正極集電リード5Aaと負極集電リード5Abは、それぞれ正極外部端子6Aa、負極外部端子6Abに接続し、電極群1Bの正極集電リード5Baと負極集電リード5Bbは、それぞれ正極外部端子6Ba、負極外部端子6Bbに接続している。
【0033】
次に、積層型のリチウム二次電池RBと電極群1の具体的な構成について、図6〜図9を用いて説明する。
【0034】
図6に示すように、積層型のリチウム二次電池RBは平面視矩形とされ、それぞれが矩形とされる正極板と負極板とセパレータとを積層した電極群1を備えている。また、底部11aと側部11b〜11eを備えて箱型とされる外装ケース11と蓋部材12とから構成される電池缶10に収容して、外装ケース11の側面(例えば、側部11b、11cの対向する二側面)に設ける外部端子11f(前述した正極外部端子6Aa、6Ba、負極外部端子6Ab、6Bbに相当)から充放電を行う構成としている。
【0035】
電極群1は、正極板と負極板とをセパレータを介して複数層積層した構成であって、図7に示すように、正極集電体2b(例えば、アルミニウム箔)の両面に正極活物質からなる正極活物質層2aが形成された正極板2と、負極集電体3b(例えば、銅箔)の両面に負極活物質からなる負極活物質層3aが形成された負極板3とがセパレータ4を介して積層されている。
【0036】
セパレータ4により、正極板2と負極板3との絶縁が図られているが、外装ケース11に充填される電解液を介して正極板2と負極板3との間でリチウムイオンの移動が可能となっている。
【0037】
ここで、正極板2の正極活物質としては、リチウムが含有された酸化物(LiCoO2,LiNiO2,LiFeO2,LiMnO2,LiMn24など)や、その酸化物の遷移金属の一部を他の金属元素で置換した化合物などが挙げられる。なかでも、通常の使用において、正極板2が保有するリチウムの80%以上を電池反応に利用し得るものを正極活物質として用いれば、過充電などの事故に対する安全性を高めることができる。このような正極活物質としては、例えば、LiMn24のようなスピネル構造を有する化合物、および、LiMPO4(Mは、Co、Ni、Mn、Feから選択される少なくとも1種以上の元素)で表されるオリビン構造を有する化合物などが挙げられる。なかでも、MnおよびFeの少なくとも一方を含む正極活物質がコストの観点から好ましい。さらに、安全性の観点からは、LiFePO4を用いるのが好ましい。
【0038】
また、負極板3の負極活物質としては、リチウムが含有された物質やリチウムの挿入/離脱が可能な物質が用いられる。特に、高いエネルギー密度を持たせるためには、リチウムの挿入/離脱電位が金属リチウムの析出/溶解電位に近いものを用いるのが好ましい。その典型例は、粒子状(鱗片状、塊状、繊維状、ウィスカー状、球状および粉砕粒子状など)の天然黒鉛もしくは人造黒鉛である。
【0039】
なお、正極板2の正極活物質に加えて、また、負極板3の負極活物質に加えて、導電材、増粘材および結着材などが含有されていてもよい。導電材は、正極板2や負極板3の電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、グラファイト(天然黒鉛、人造黒鉛)、炭素繊維などの炭素質材料や導電性金属酸化物などを用いることができる。
【0040】
増粘材としては、例えば、ポリエチレングリコール類、セルロース類、ポリアクリルアミド類、ポリN−ビニルアミド類、ポリN−ビニルピロリドン類などを用いることができる。結着材は、活物質粒子および導電材粒子を繋ぎとめる役割を果たすものであり、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルピリジン、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系ポリマーや、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系ポリマーや、スチレンブタジエンゴムなどを用いることができる。
【0041】
また、セパレータ4としては、微多孔性の高分子フィルムを用いることが好ましい。具体的には、ナイロン、セルロースアセテート、ニトロセルロース、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテンなどのポリオレフィン高分子からなるフィルムが使用可能である。
【0042】
また、電解液としては、有機電解液を用いることが好ましい。具体的には、有機電解液の有機溶媒として、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ―ブチロラクトンなどのエステル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタンなどのエーテル類、さらに、ジメチルスルホキシド、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、ギ酸メチル、酢酸メチルなどが使用可能である。なお、これらの有機溶媒は、単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0043】
さらに、有機溶媒には電解質塩が含まれていてもよい。この電解質塩としては、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ホウフッ化リチウム、六フッ化リン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸(LiCF3SO3)、フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウムおよび四塩化アルミン酸リチウムなどのリチウム塩が挙げられる。なお、これらの電解質塩は、単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0044】
電解質塩の濃度は特に限定されないが、約0.5〜約2.5mol/Lであれば好ましく、約1.0〜2.2mol/Lであればより好ましい。なお、電解質塩の濃度が約0.5mol/L未満の場合には、電解液中においてキャリア濃度が低くなり、電解液の抵抗が高くなる虞がある。一方、電解質塩の濃度が約2.5mol/Lよりも高い場合には、塩自体の解離度が低くなり、電解液中のキャリア濃度が上がらない虞がある。
【0045】
電池缶10は、外装ケース11と蓋部材12とを備え、鉄、ニッケルメッキされた鉄、ステンレススチール、およびアルミニウムなどからなる。また、本実施形態では、図8に示すように、電池缶10は、外装ケース11と蓋部材12とが組み合わされたときに、外形形状が実質的に扁平角型形状となるように形成されている。
【0046】
外装ケース11は、略長方形状の底面を持つ底部11aと、この底部11aから立設した4面の側部11b〜11eを有する箱型状とされ、この箱型状内部に電極群1を収容する。電極群1は、正極板の集電タブに連結される正極集電リードと、負極板の集電タブに連結される負極集電リードを備え、これらの集電タブと電気的に接続される外部端子11fが外装ケース11の側部にそれぞれ設けられている。外部端子11fは、例えば、対向する二側部11b、11cの二箇所に設けられる。また、10aは注液口であって、ここから電解液を注液する。
【0047】
外装ケース11に電極群1を収容し、それぞれの集電リードを外部端子に接続した後、蓋部材12を外装ケース11の開口縁に固定する。すると、外装ケース11の底部11aと蓋部材12との間に電極群1が挟持され、電池缶10の内部において電極群1が保持される。なお、外装ケース11に対する蓋部材12の固定は、例えば、レーザ溶接などによってなされる。また、集電リードと外部端子との接続は、超音波溶接やレーザ溶接、抵抗溶接などの溶接以外に、電解液によって侵されない場合は、導電性接着剤などを用いて行うこともできる。
【0048】
上記したように、本実施形態に係る二次電池RBは、正極板2と負極板3とをセパレータ4を介して複数層積層した電極群1と、この電極群1を収容し電解液が充填される外装ケース11と、外装ケース11に設ける外部端子11fと、正負の極板と外部端子11fとを電気的に接続する正負の集電リードと、外装ケース11に装着される蓋部材12と、を備えた構成である。
【0049】
外装ケース11に収容された電極群1は、例えば、図9に示すように、正極集電体2bの両面に正極活物質層2aが形成された正極板2と、負極集電体3bの両面に負極活物質層3aが形成された負極板3とがセパレータ4を介して積層され、さらに両端面にセパレータ4を配設している。また、両端面のセパレータ4に替えて、このセパレータ4と同じ材質の樹脂フィルムを巻回して、電極群1を絶縁性を有する樹脂フィルムで被覆する構成としてもよい。いずれにしても、積層電極群1の上面は、電解液浸透性および絶縁性を有する部材が積層される構成となる。そのために、この面に直接蓋部材12を当接させることができ、蓋部材を介して所定の圧で押さえ付けることも可能である。
【0050】
また、複数の電極群を一つの電池缶内に収容する構成の二次電池では、電極群同士が接触しないように、それぞれを所定の位置に固定しておくことが好ましく、所定間隔離して設置するなどして、電極群同士を電気的に絶縁しておくことが好ましい。
【0051】
また、複数の電極群を一つの電池缶内に収容する構成であっても、電解液を充填する時間を短縮することが、製造コストを低減するために好ましいので、電解液が流れ易い状態に複数の電極群を配置することが肝要である。次に、複数の電極群1(1A、1B・・・)を備えた二次電池の構成例について、図1〜図5を用いて説明する。
【0052】
図1は、二個の電極群1A、1Bを備えた二次電池RB1を示している。また、電極群1Aは、複数の正極タブを一体に集束した正極集電リード5Aaに接続される正極外部端子6Aaと、複数の負極タブを一体に集束した負極集電リード5Abに接続される負極外部端子6Abに、電気的に接続されている。また、電極群1Bは、その正極集電リード5Baが正極外部端子6Baに接続され、負極集電リード5Bbが負極外部端子6Bbに接続されている。
【0053】
つまり、電池缶10から外に突出して設けられるそれぞれの外部端子を介して、電極群の(すなわち蓄電要素の)充放電を行うことが可能な構成である。また、電極群1A、1Bがそれぞれ個別に外部端子を備える構成であるので、各電極群がそれぞれ独立した蓄電要素となる。
【0054】
そのために、それぞれの蓄電要素を、それぞれ個別にも、直列に接続して同時にも使用可能な構成となって、それぞれの蓄電要素の有効利用を図ることが可能となる。すなわち、使い勝手がよく利便性の高い二次電池を得ることができる。
【0055】
また、それぞれの蓄電要素同士を電気的に絶縁しておくことが好ましいので、それぞれの電極群同士を所定間隔離間して設置している。また、この離間距離L1は、電解液を注液する際に、電解液の流動性を阻害しない、電解液が流れ易い離間距離であることが好ましい。
【0056】
同一の電池缶に収容する蓄電要素は二個以上の複数でもよく、例えば、図2に示すように、n個の蓄電要素を収容した二次電池RB2とする。この二次電池RB2はn個の蓄電要素を備えているので、電極群1A、1B、・・・1Nのn個の電極群と、n×2の外部端子を備えた構成となる。
【0057】
図に示すように、複数の蓄電要素を同一平面上に配設しているので、電極群の厚み方向に重ならず、電解液の電極群内部への浸透性を阻害せず、それぞれ同時に電解液を浸透させることができる。また、それぞれの電極群間の離間距離を電解液が流れ易い離間距離L1としておくことで、電極群の内部まで電解液を速やかに浸透させることができる。
【0058】
この二次電池RB2は、n個の蓄電要素がn個の正極外部端子とn個の負極外部端子を備えた構成となるので、それぞれを個別に使用する小電力多様使用型と、直列に連結して同時に使用する大電力単一使用型と、これらの中間の、複数の蓄電要素を組み合わせた、中電力タイプとの複数の用い方が可能である。すなわち、使い勝手がよく利便性の高い二次電池となって好ましい形態となる。
【0059】
また、並設される蓄電要素同士の間に所定幅のスペーサを介装して、電解液が流れ易い離間距離L1を維持する構成としてもよい。また、スペーサを介装する際には、このスペーサは絶縁部材であることが好ましい。このように、並設される蓄電要素同士の間に、所定幅の絶縁部材を配設することで、蓄電要素間の短絡を確実に防止すると共に電解液が流れ易い離間距離L1を維持することができて好ましい。この絶縁部材を介装した一実施形態について図3A、図3Bを用いて説明する。
【0060】
図3Aに示す二次電池RB3Aは、電池缶10内に、二個の電極群1A、1Bを備えた構成であり、これらの電極群間を所定の離間距離L1に維持するスペーサ7Aを介装したものである。
【0061】
スペーサ7Aは、離間距離L1に相当する所定幅を有する平板状部材でもよいが、図示するような、所定幅部が凸状に突出する凸型として、電極群1A、1B間の離間距離だけでなく、電池缶の壁面からの距離も規定する形状が好ましい。この際に、外装ケース11の底部と接する面に電解液の通り道となる凹部を設けると、電解液を速やかに浸透させることができて好ましい。
【0062】
また、電池缶10の四隅にも、スペーサ7Bを介装して、電極群1A、1Bを電池缶内の所定位置に規定することが好ましい。これらの、スペーサ7A、7Bは、いずれも、絶縁部材からなることが好ましい。さらに、絶縁性に加えて、伸縮性と可撓性を備える発泡材からなることがより好ましい。また、これらの、スペーサ7A、7Bが一体型であれば、振動などの外力によって、スペーサが個別に移動しないので好ましい。
【0063】
絶縁部材からなるスペーサ7Aを介して、電極群1A、1B同士を電気的に確実に絶縁しておくことができる。また、このスペーサ7Aと同じく絶縁部材からなるスペーサ7Bを介して、電極群1A、1Bと電池缶10との電気的な絶縁を良好に図ることができる。
【0064】
図3Bに示す二次電池RB3Bは、電池缶10内に、二個の電極群1A、1Bを備え、並設される電極群(蓄電要素)の間、および、各電極群と電池缶10の内壁との間に、所定厚みの絶縁部材からなるスペーサを配設している。また、スペーサとして、電池缶10を構成する外装ケース11の電極群載置面に、つまり、蓄電要素の下面側に、スペーサ8Aを設け、蓋部材12の下側に、つまり、蓄電要素の上面側に、スペーサ8Bを介装して、これらの上下のスペーサを介して蓄電要素を圧接状態に挟持している。
【0065】
この構成であれば、それぞれの蓄電要素を個別に、また、電池缶に対して、確実に絶縁状態に維持することができる。また、絶縁部材からなるスペーサ8A、8Bを介して蓄電要素を押し付けることで、電極同士の密着距離を所定の密着距離に維持して、所定の電池容量を維持することができる。
【0066】
スペーサ8Aは、それぞれの蓄電要素の底面部に相当する面積を有する板状でよい。スペーサ8Bは、それぞれの蓄電要素の上側に嵌まり込む断面コの字状の枠状とされ、隣り合う蓄電要素にそれぞれスペーサ8Bを装着したときに、隣り合う蓄電要素間の離間距離L1を呈する部材厚みであることが好ましい。
【0067】
スペーサ8Bを嵌め込む深さは、蓄電要素間に、電解液が流れる溝9Aを形成する程度であればよい。また、電池缶10の内壁との間にも、電解液が流れる溝9Bを形成する形状であることが好ましい。
【0068】
この構成であれば、複数の蓄電要素を備えた二次電池であっても、それぞれの蓄電要素が有する電極群の内部まで電解液を速やかに浸透させることができて好ましい。
【0069】
スペーサ7A、7B、8A、8Bは、蓄電要素間および電池缶との絶縁が取れ、蓄電要素を位置固定するだけの機械的強度および電解液に溶け出さない材質であればよく、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などを用いることができる。
【0070】
また、スペーサ7A、7B、8A、8Bは、電解液浸透性を有する素材からなるものであってもよい。電解液浸透性を有する素材からなるものであれば、電極群1(1A、1B)への電解液の浸透性がさらに良好となる。
【0071】
次に、本実施形態に係る二次電池であれば、電解液を速やかに浸透させることができることを確認した実験について図4A、図4Bを用いて説明する。
【0072】
図4Aに示す二次電池RB4は、本実施形態に係る二次電池の一実施例であって、長手方向×短手方向×深さ、がそれぞれ内寸で、266mm×230mm×50mmの大きさの電池缶内に、長辺(W)200.5mm×短辺(2H)110mmの矩形の電極群1A、1Bを離間距離L1として5mm離して二個設置した構成である。この電極群1A、1Bの作製手順について以下説明する。
【0073】
(実施例)
[正極板の作製]
正極活物質としてのLiFePO4(90重量部)と、導電材としてのアセチレンブラック(5重量部)と、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(5重量部)と、を混合し、溶媒としてのN−メチル−2−ピロリドンを適宜加えて各材料を分散させてスラリーを調製し、このスラリーを正極集電体としてのアルミニウム箔(厚み20μm)の両面上に均一に塗布して乾燥させた後、ロールプレスで圧縮し、所定のサイズで切断して板状の正極板2を作製した。
【0074】
また、作製した正極板のサイズは、185mm×105mm(未塗工部15mm×105mm含む)で、厚みは230μmであって、この正極板2を32枚用いた。
【0075】
[負極板の作製]
負極活物質としての天然黒鉛(90重量部)と、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(10重量部)と、を混合し、溶媒としてのN−メチル−2−ピロリドンを適宜加えて各材料を分散させてスラリーを調製し、このスラリーを負極集電体としての銅箔(厚み16μm)の両面上に均一に塗布して乾燥させた後、ロールプレスで圧縮し、所定のサイズで切断して板状の負極板3を作製した。
【0076】
また、作製した負極板のサイズは、187mm×110mm(未塗工部14mm×110mm含む)で、厚みは146μmであって、この負極板2を33枚用いた。
【0077】
また、セパレータとして、サイズ177mm×110mmで、厚み25μmのポリエチレンフィルムを64枚作製した。
【0078】
[非水電解液の作製]
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを、30:70の容積比で混合した混合液(溶媒)に、LiPF6を1mol/L溶解して非水電解液を調整した。
【0079】
[電池缶の作製]
電池缶を構成する外装ケースおよび蓋部材の材料としては、SUS304の板を用いてそれぞれ作製した。また、そのいずれもが、厚み0.8mmで、長手方向×短手方向×深さ、がそれぞれ内寸で、266mm×230mm×50mmの電池缶サイズで、注液口を具備した角型リチウム二次電池を作製した。また、蓋部材を電極群の上面に密着させるために、平板状ではなく、缶の内部に嵌まり込む皿型状の蓋部材を用いる構成とした。皿型状の蓋部材を用いると、蓋部材を溶接する際に動くのを防止できて、溶接作業が容易となる。また、皿型状の落ち込み量を変更することで、収容する電極群の厚みの変化に容易に対応できる。さらに、皿型状であれば、蓋部材の強度、および電池缶の強度を向上することが可能となって好ましい。
【0080】
[二次電池の組立]
正極板と負極板とをセパレータを介して交互に積層する。その際に、正極板に対して負極板が外側に位置するように、正極版32枚、負極板33枚、セパレータ64枚を積層し、この積層体をセパレータと同じ厚み25μmのポリエチレンフィルムを用いて巻回する構成として、電極群1A、1Bを構築した。
【0081】
正負の極板間に介装するセパレータの大きさは前述したように、サイズ177mm×110mmであり、正極活物質領域(170mm×105mm)、負極活物質領域(173mm×110mm)よりも少し大きなサイズである。これにより、正極板および負極板に形成された活物質層を確実に被覆することができる。また、正極の集電体露出部および負極の集電体露出部に、集電部材(集電リード)の接続片を接続した。
【0082】
集電リードを接続した電極群1A、1Bを外装ケースに収容し、集電リードと外部端子とをそれぞれ接続し、蓋部材を取り付けて密封し、注液孔から非水電解液を減圧注液した。注液後に、注液孔を封口して、二次電池RB4を作製した。
【0083】
図4Bに示す二次電池RB5は、同じ容量の電池缶内に、長辺(W)200.5mm×短辺(4H)220mmの矩形の電極群1ABを一個設置した構成の比較例である。なお、それぞれの電極群を構成する正極板、負極板、セパレータの材質や厚みや積層枚数は同じであり、積層厚みは同一としている。ただ、面積が二倍となっている点が異なる。
【0084】
上記したように、実施例として用いた蓄電要素は、長辺Wが200.5mmで短辺2Hが110mmの矩形とされる。そのために、本実施形態に係る蓄電要素は、長辺部と短辺部を有する矩形の活物質領域を備え、該活物質領域は、長辺部の端部から短辺の二等分線までの 距離H(最短距離)が100mm以下に形成されているといえる。
【0085】
このように、同じサイズの電池缶に、大きな面積の蓄電部材を一個収容した比較例1(二次電池RB5に相当)と、半分の面積の蓄電部材を二個所定距離離間して設置した実施例1(二次電池RB4に相当)と、における電解液の注液時間を測定し比較した。その結果を表1に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
表1に示すように、比較例1では電解液の注液時間は8時間(8H)掛かるが、本実施形態に係る実施例1では、3時間(3H)で注液できることが明らかとなった。全体の電極板の面積は同じであるが、二分割式とし、これらを同一平面上で所定距離離間して設置することで、注液時間を1/2以下にできることが判った。
【0088】
このように、短辺が220mmの蓄電要素では電解液の注液時間が長くなってしまうので、一個の蓄電要素の大きさを、長辺部の端部から短辺の二等分線までの距離(最短距離)を100mm以下とすることで、電極群の中央部に電解液が浸透する時間が長くなり過ぎることを抑制し、電極群の内部まで電解液を速やかに浸透させることができる。すなわち、電解液が浸透するのは活物質領域であるので、この活物質領域は、長辺部の端部から短辺の二等分線までの距離(最短距離)が100mm以下であることが好ましいといえる。
【0089】
次に、外部端子に電圧検出線を接続した実施形態について図5を用いて説明する。
【0090】
図5には、電極群1Aが備える外部端子6Aa、6Ab、および、電極群1Bが備える外部端子6Ba、6Bbにそれぞれ電圧検出線22(22A、22B)を接続した二次電池RB6を示している。またこれらの電圧検出線22は制御部21に一括に入力される。
【0091】
制御部21は、外部端子6Aa、6Abに接続された電圧検出線22(22A)を介して電極群1Aの電圧を検知して、発電量(放電容量)および蓄電量(充電容量)を推定し、外部端子6Ba、6Bbに接続された電圧検出線22(22B)を介して電極群1Bの電圧を検知して、発電量(放電容量)および蓄電量(充電容量)を推定する。
【0092】
また、制御部21は、外部端子と外部機器(電力使用部26)とを電気的に接続する接続部24の切り替えを制御する機能を有する。また、接続部24は、接続回路23を介して制御部21と接続され、接続回路25を介して電力使用部26と接続されている。そのために、それぞれの電圧検出線22(22A、22B)を介して、検出した電圧を基に、それぞれの蓄電要素の電池容量を推定することができ、予め定める電池容量を下回る蓄電要素を電気的に切り離す制御を行うことができる。
【0093】
このような構成であれば、制御部21を介して、それぞれの蓄電要素が正常な電池容量を発揮しているか否かを判定可能となり、正常な蓄電要素のみを組み合わせて使用して、所定の電力を発揮する制御を行うことができる。また、そのために、複数の蓄電要素を一体に収容した構成の二次電池において、ある蓄電要素が劣化したり故障したりして、正常な電池容量を発揮しなくなったとしても、正常な電池容量を発揮しているその他の蓄電要素を用いて外部機器を使用することが可能であるため、使い勝手がよく利便性の高い二次電池となる。
【0094】
このように、一つの電池缶に複数の蓄電要素を収容した構成であっても、異常が発生した蓄電要素を検知すると速やかに切り離す制御を行って、その他の正常な蓄電要素を使用することできるので、電池缶の使用可能な期間を延ばすことができ、二次電池としての寿命が長くなる効果を発揮する。
【0095】
次に、一つの電池缶内に二個の蓄電要素を平面上に所定距離離間して収容し、それぞれに外部端子を設け、電圧検出線を用いて制御部に接続した本実施形態品(実施例A1)と、一つの電池缶内に二個の蓄電要素を上下に重ね合わせて、それぞれに外部端子を設け、電圧検出線を用いて制御部に接続した比較品(比較例B1)と、一つの電池缶内に二個の蓄電要素を平面上に所定距離離間して収容し、共通の外部端子を設け、電圧検出線を用いて制御部に接続した比較品(比較例B2)と、一つの電池缶内に一個の大型の蓄電要素を収容し、外部端子を電圧検出線を用いて制御部に接続した比較品(比較例B3)と、を用いて、電池容量の保持率を測定した実験について説明する。
【0096】
実験は、前述した二次電池RB4が備える電極群1A、1Bを用いて、実施例A1、比較例B1、比較例B2を作製し、これらが備える二個の蓄電要素の一方に、短絡要因素子となる金属片(直径1mm、長さ10mmのアルミ棒)を混入して充放電を繰り返し、電池容量の保持率を測定してサイクル特性を調べる異物混入試験である。ただし、比較例B1は、下部の蓄電要素に金属片を混入している。また、比較例B3は、前述した二次電池RB5が備える電極群1ABを用いた一個の大型の蓄電要素内に同じ金属片を混入して実験を行った。
【0097】
図10Aは実施例A1に相当する二次電池を用いた制御システムの概要(平面図)を示し、図10Bに比較例B1に相当する二次電池を用いた制御システムの概要(断面図)を示し、図10Cに比較例B2に相当する二次電池を用いた制御システムの概要(平面図)を示し、図10Dに比較例B3に相当する二次電池を用いた制御システムの概要(平面図)を示す。また、図11A〜図11Cに電池容量の保持率を測定した実験の結果を示す。
【0098】
図10Aに示す実施例A1は、一つの電池缶内に二個の蓄電要素(電極群1A、1B)を平面上に所定距離離間して収容し、それぞれに外部端子を設け、電圧検出線22を用いて制御部21に接続している。図10Bに示す比較例B1は、一つの電池缶内に二個の蓄電要素(電極群1A、1B)を上下二重ね合わせて収容し、それぞれに外部端子を設け、電圧検出線22を用いて制御部21に接続している。図10Cに示す比較例B2は、一つの電池缶内に二個の蓄電要素(電極群1A、1B)を平面上に所定距離離間して収容し、共通の外部端子を設け、電圧検出線22を用いて制御部21に接続している。また、図10Dに示す比較例B3は、一つの電池缶内に一個の蓄電要素(電極群1AB)を収容し、外部端子に接続する電圧検出線22を介して制御部21に接続している。
【0099】
それぞれの外部端子は、図5に記載した接続部24と接続回路25を介して充放電装置(図5の電力使用部に替えて設置される)に接続されており、充放電装置は接続回路23を介して制御部21に接続されている。そのために、接続回路25が充放電回路となり、この充放電装置と制御部21を介して充放電サイクルを繰り返しながら電池容量を測定し、短絡要因素子が混入された蓄電要素が、予め定める所定の容量保持率を下回ると、その蓄電要素を切り離す制御を行った。また、所定の容量保持率は、60%、70%、80%の三種類とした。
【0100】
図11Aは、容量保持率80%を下回ると切り離す制御を行った実験結果であって、実施例A1は、容量保持率が80%以下となって異常と判断された一方の蓄電要素を切り離しても、その後1000サイクルまで45%の容量保持率を維持していることが判った。しかし、比較例B2、B3は、外部端子が1セットしかないため、蓄電システム全体が切断されたことを示している。
【0101】
比較例B1は、600サイクル当りまでは、容量保持率40%を維持しているが、その後徐々に低下している。これは、二個の蓄電要素を重ね合わせた構成であるので、蓄電要素が厚い状態に相当して、上部の電解液が不足気味になる等して、サイクル特性が悪化しているものと思われる。
【0102】
図11Bは、容量保持率70%を下回ると切り離す制御を行った実験結果であるが、この図からも明らかなように、実施例A1は、蓄電システムを長期間使用可能であることを示している。また、比較例B1は、ある程度の期間は使用可能であるが、実施例A1と比較して徐々に電池容量が低下しているのが判る。
【0103】
図11Cは、容量保持率60%を下回ると切り離す制御を行った実験結果である。容量保持率が60%に低下するまで充放電を繰り返すと、異物を混入していない蓄電要素も徐々に劣化しているため、実施例A1、比較例B1でも容量保持率が低下傾向にある。しかし、実施例A1が長寿命化を図れることは明らかである。
【0104】
図11A〜図11Cに示す実験結果から、複数の蓄電要素を同一平面上に所定間隔離間して絶縁状態で並設し、それぞれの蓄電要素に対応して外部端子を設ける本実施形態に係る構成の二次電池は、長時間使用可能な蓄電システムを構築できることが判った。
【0105】
また、実施例A1と比較例B3とで電解液注液後のインピーダンス測定による電解液浸み込み確認テストについて図12を用いて説明する。
【0106】
蓄電要素の電極間に電解液が十分浸透すると、電極間のインピーダンスが低下するので、外部端子を介して蓄電要素のインピーダンスを測定することで、蓄電要素の内部まで電解液が浸透しているか否かが判定できる。
【0107】
図12は、横軸に注液時間(比較例3で目標インピーダンスに到達するまでの注液時間を100%としている)を示し、縦軸に測定されたインピーダンス(単位mΩ)を示している。また、比較例3で測定したインピーダンスがほぼ一定となった値を目標インピーダンスと定め、この目標インピーダンスに到達した時間を実施例1の注液時間とした。
【0108】
図中に示す比較例B3のインピーダンス曲線IP3は、時間T3で目標インピーダンスに到達している。すなわち時間T3が比較例B3の注液時間となる。実施例A1のインピーダンス曲線IP1は、時間T1で目標インピーダンスに到達している。すなわち時間T1が実施例A1の注液時間であって、時間T3の略40%程度の時間(前述した1/2以下に相当)であることが判る。
【0109】
このように、電池缶を構成する外装ケースの同一平面上に、所定サイズの複数の蓄電要素を所定間隔離間して並設する本実施形態によれば、電解液の注液時間を短縮可能であることが明らかとなった。
【0110】
上記した実施例A1で採用した本実施形態に係る二次電池の制御システムは、二次電池が備える複数の蓄電要素にそれぞれ設ける外部端子と外部機器とを電気的に接続する接続部24と、該接続部24の切り替えの制御と、外部端子に接続する電圧検出線22を介して蓄電要素の出力電圧を認識して当該蓄電要素の異常を検知する機能を有する制御部21と、を設け、制御部21が異常を検知したときに、当該蓄電要素の接続部24を電気的に切り離すようにしている。
【0111】
このような制御システムであれば、制御部21を介して、各蓄電要素の正常・異常を確認することができ、異常と確認された蓄電要素を切り離すことで、安定した電池容量を得る制御を行うことが可能となって、複数の蓄電要素を効率よく使用可能とする二次電池の制御システムを得ることができる。
【0112】
次に、図13を用いて、本実施形態に係る二次電池のリースシステムについて説明する。図13に示すように、制御部21に通信部27を接続している。通信部27はインターネット網28と通信可能な通信部であるので、制御部21の検知情報をインターネット網28を介して予め定める通信先(使用者29および管理会社30)に通知可能となる。
【0113】
使用者29は二次電池管理会社30とこの二次電池のリース契約を結んでおり、二次電池管理情報として、物品毎の型番、リース費用、リース満了日などの基本情報の他に、充放電履歴情報を蓄積している。そのために、制御部21が、規定の容量以下となった蓄電要素を検知したときに、その旨(二次電池の異常情報)を、使用者29、および管理会社30に直ちに伝えることができる。また、二次電池管理会社30は、当該異常情報以外に二次電池管理情報を制御部21から受け、リース中の二次電池を交換するまでの間に使用可能な電池容量および充放電回数(二次電池利用日数)をユーザーに説明でき、当該物品の交換などの手配を行うことができる。
【0114】
このように、二次電池が備える複数の蓄電要素にそれぞれ設ける外部端子と外部機器とを電気的に接続する接続部と、該接続部の切り替えの制御と、前記外部端子に接続する電圧検出線を介して前記蓄電要素の出力電圧を認識して当該蓄電要素の異常を検知する機能を有する制御部21と、該制御部21に接続されインターネット網28と通信可能な通信部27とを設け、制御部21が異常を検知したときに、通信部27を介して、当該二次電池の使用者29にその異常情報を通知すると同時に、インターネット網28を経由して当該二次電池の管理会社30にその異常情報および管理情報を通知するリースシステムであれば、二次電池に不具合が生じて規定容量以下となった情報を使用者(ユーザー)に伝えると同時に、二次電池管理会社に伝えることで、管理が容易となって、使い勝手がよく利便性の高い二次電池のリースシステムを構築することができる。
【0115】
上記したように、本発明に係る二次電池によれば、外装ケースの同一平面上に、複数の蓄電要素を所定間隔離間して絶縁状態で並設し、それぞれの蓄電要素に対応する正負の外部端子をそれぞれ設けた構成としたので、複数の蓄電要素を備えた二次電池であっても、製造コストを低減し、それぞれの蓄電要素が有する電極群の内部まで電解液を速やかに浸透させることができ、使い勝手がよく利便性の高い二次電池を得ることができる。
【0116】
また、複数の蓄電要素を同一の電池缶に収容するので、電池缶の製造コストを低減でき、比較的小型に分割される蓄電要素のハンドリング性が良好となって短絡などの弊害が生じずに歩留まりが悪化しないことと併せて製造コストを低減することができる。
【0117】
また、本発明に係る二次電池の制御システムによれば、外部端子に接続した電圧検出線を介してそれぞれの蓄電要素の異常を検知して、電気的に切り離す制御を行うことで、複数の蓄電要素を効率よく使用可能とする二次電池の制御システムを得ることができる。
【0118】
また、本発明に係る二次電池のリースシステムによれば、制御部をインターネット網と通信可能な通信部に接続することで、二次電池に不具合が生じて規定容量以下となった情報および二次電池管理情報を二次電池管理会社に伝えることで、管理することが容易となり、使い勝手がよく利便性の高い二次電池のリースシステムを構築することができる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
そのために、本発明に係る二次電池、その制御システム、そのリースシステムは、大型化および性能安定化が求められる大容量の蓄電池、その制御システム、およびそのリースシステムに好適に利用可能となる。
【符号の説明】
【0120】
1(1A、1B) 電極群(蓄電要素)
2 正極板
3 負極板
4 セパレータ
5 集電リード
6Aa〜6Bb 外部端子
7A、7B スペーサ
8A、8B スペーサ
10 電池缶
11 外装ケース
12 蓋部材
21 制御部
22(22A、22B) 電圧検出線
24 接続部
27 通信部
28 インターネット網
29 二次電池使用者(ユーザー)
30 二次電池管理会社
L1 離間距離(所定間隔)
RB、RB1〜RB6 二次電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池缶内に、正極板と負極板とをセパレータを介して複数層積層した電極群を具備する蓄電要素を、複数一体に収容し電解液を充填した二次電池であって、
前記電池缶を構成する外装ケースの同一平面上に、複数の前記蓄電要素を所定間隔離間して並設し、それぞれの前記蓄電要素に対応する正負の外部端子をそれぞれ設けたことを特徴とする二次電池。
【請求項2】
前記所定間隔は、前記電解液の流動性を阻害しない程度の幅とされることを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
並設される前記蓄電要素同士が電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項1または2に記載の二次電池。
【請求項4】
並設される前記蓄電要素同士の間に、所定幅の絶縁部材からなるスペーサを配設したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の二次電池。
【請求項5】
並設される前記蓄電要素同士の間、および、各蓄電要素と前記電池缶の内壁との間に、所定厚みの絶縁部材からなるスペーサを配設したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の二次電池。
【請求項6】
前記蓄電要素の上面側と下面側とに前記スペーサを介装し、これらの上下のスペーサを介して前記蓄電要素を圧接状態に挟持することを特徴とする請求項5に記載の二次電池。
【請求項7】
前記蓄電要素は、長辺部と短辺部を有する矩形の活物質領域を備え、該活物質領域は、前記長辺部の端部から前記短辺の二等分線までの距離が100mm以下に形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の二次電池。
【請求項8】
前記外部端子に電圧検出線を接続し、それぞれの前記蓄電要素の電池容量を確認可能としたことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の二次電池。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載された二次電池の制御システムであって、前記二次電池が備える複数の蓄電要素にそれぞれ設ける外部端子と外部機器とを電気的に接続する接続部と、該接続部の切り替えの制御と、前記外部端子に接続する電圧検出線を介して前記蓄電要素の出力電圧を認識して当該蓄電要素の異常を検知する機能を有する制御部と、を設け、前記制御部が異常を検知したときに、当該蓄電要素の接続部を電気的に切り離すことを特徴とする二次電池の制御システム。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかに記載された二次電池のリースシステムであって、前記二次電池が備える複数の蓄電要素にそれぞれ設ける外部端子と外部機器とを電気的に接続する接続部と、該接続部の切り替えの制御と、前記外部端子に接続する電圧検出線を介して前記蓄電要素の出力電圧を認識して当該蓄電要素の異常を検知する機能を有する制御部と、該接続部に接続されインターネット網と通信可能とされる通信部とを設け、前記制御部が異常を検知したときに、前記通信部を介して、当該二次電池の使用者にその異常情報を通知すると同時に、前記インターネット網を経由して当該二次電池の管理会社にその異常情報および管理情報を通知することを特徴とする二次電池のリースシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−142095(P2012−142095A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292060(P2010−292060)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】