説明

二次電池のセルケース

【課題】外気温の影響を抑制するとともに、外部からの水分の透過を防止し、且つケース内部で局所的に集中する圧力を分散させることが可能な二次電池のセルケースを提供する。
【解決手段】セルケース3を、樹脂からなり外面側を構成する第一層31と、樹脂からなり内面側を構成する第三層33と、第一層31と第三層33との間に設けられ多数の中空部32aを有する第二層32とから構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に係り、詳しくは二次電池のセルケースに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境への意識の向上などから二次電池の需要が高まっている。二次電池は、例えばハイブリット車の車載用としてモジュール化されており、一つのモジュールは、例えば薄膜状の正極、負極及びセパレータを重ねあわせて巻きまわした電極束をセルケースに入れ電解液とともに密閉して一つの電池セルを形成し、この電池セルを複数個束ねることで構成されている。
【0003】
そして、このような二次電池においては、一般的にセルケースとして金属製のケースが用いられている。
しかし、金属製のケースを用いた場合、二次電池の重量が増加してしまうという問題があった。このような場合、二次電池重量に占めるセルケースの重量割合が増加するため、重量エネルギー密度が低下する。
また、金属製のケースは、セル内部の温度が外気温の影響を受けやすくなるという問題があった。外気温の影響を受けてセル内部の温度が高温となった場合は電極を構成する材料が溶け出し、電池性能が低下することが知られている。また、外気温の影響を受けてセル内部の温度が低温となった場合は、電池内の反応バランスが崩れ、電池の性能が低下するおそれがあった。
【0004】
一方、二次電池の高性能化・小型化・軽量化の要求から、今後益々電池の高容量化・高出力化の流れが高まることが予想される。そこで、上述した金属製のケースによる問題点を解決することに加えて、前述の高容量化・高出力化を実現するものとして樹脂製のケースを用いることが検討されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、ニッケル水素電池の電池ケースとして、樹脂製電池ケースの側部の一部外面上に、バインダーとしての役割を果たす第一の樹脂層を介して、水素分子や水蒸気の漏れを防止するためのガスバリアとしての役割を果たす第二の樹脂層を一体的に形成し、さらにその上に樹脂層の表面を腐食から保護する役割を果たす第三の樹脂層を形成したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−22455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、現在検討されている樹脂製のケースは、耐電解液性を優先すると外部から水分を透過しやすくなるという問題があった。水分を透過すると非水系電解液が水分と反応して保存安定性が低下するおそれがあり、特に高温になった場合は水分透過量が多く、現状では樹脂製のケースを実用化するには至っていない。
【0008】
特許文献1に開示されている発明においても、ケース側部の一部外面上に水素分子や水蒸気の漏れを防止する樹脂層を形成しているものの、この樹脂層を形成した部分以外の箇所においては水分の透過が生じるおそれがあるという問題がある。
【0009】
さらに、二次電池においては、使用するにつれて内圧が上昇し、ケース内部に局所的に圧力が集中することが周知となっているが、このようにケース内部に局所的に圧力が集中すると、活物質が脱離する等、構造の劣化が生じ、局所的に性能が低下するおそれがあるという問題があった。
【0010】
このようなことから本発明は、外気温の影響を抑制するとともに、外部からセルケース内部への水分の透過を防止し、且つセルケース内部で局所的に集中する圧力を分散させることが可能な二次電池のセルケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための第1の発明に係る二次電池のセルケースは、樹脂からなり外面側を構成する外層と、樹脂からなり内面側を構成する内層と、前記外層と前記内層との間に設けられ中空部を有する空気含有層とを備えることを特徴とする。
【0012】
上記の課題を解決するための第2の発明に係る二次電池のセルケースは、第1の発明に係る二次電池のセルケースにおいて、前記空気含有層が、樹脂又は金属からなることを特徴とする。
【0013】
上記の課題を解決するための第3の発明に係る二次電池のセルケースは、第1または第2の発明に係る二次電池のセルケースにおいて、前記中空部は、電池の温度上昇領域に応じて前記空気含有層内で分散密度が異なることを特徴とする。
【0014】
上記に課題を解決するための第4の発明に係る二次電池のセルケースは、第1ないし第3のいずれかの発明に係る二次電池のセルケースにおいて、前記外層が、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル、ポリカーボネート、メタクリル、塩化ビニル、エポキシ、ポリエステル、又はアモルファスポリオレフィンからなる水分透過防止層であることを特徴とする。
【0015】
上記の課題を解決するための第5の発明に係る二次電池のセルケースは、第1ないし第4のいずれかの発明に係る二次電池のセルケースにおいて、前記内層が、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミドイミド、又はポリエーテルイミドからなる耐電解液層であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上述した第1の発明に係る二次電池のセルケースによれば、樹脂からなり外面側を構成する外層と、樹脂からなり内面側を構成する内層と、外層と内層との間に設けられ中空部を有する空気含有層とを備えるので、外気温の影響を抑制するとともに、外部からの水分の透過を防止し、且つケース内部に局所的に集中する圧力を分散させることが可能となる。また、空気含有層を設けたことによりセルケースの外部からの水分の透過を防止することができるので、外層および内層に樹脂を用いることが可能となり金属製のケースを用いる場合に比較して軽量化が可能となる。
【0017】
第2の発明に係る二次電池のセルケースによれば、空気含有層が、樹脂又は金属からなるので、空気含有層の形成を容易に行うことができる。
【0018】
第3の発明に係る二次電池のセルケースによれば、中空部は、電池の温度上昇領域に応じて空気含有層内で分散密度が異なるので、外気温の影響を効率よく低減することができる。
【0019】
第4の発明に係る二次電池のセルケースによれば、外層が、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル、ポリカーボネート、メタクリル、塩化ビニル、エポキシ、ポリエステル、又はアモルファスポリオレフィンからなる水分透過防止層であるので、セルケース内部への水分の透過をより確実に防止することができる。
【0020】
第5の発明に係る二次電池のセルケースによれば、内層が、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミドイミド、又はポリエーテルイミドからなる耐電解液層であるので、セルケース内部から電解液層が漏出することをより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例に係る二次電池のセルケースを示す斜視図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】図2のIII部拡大図である。
【図4】図2のIV部拡大図である。
【図5】本発明の実施例に係る二次電池のセルケースの空気含有層の中空部と電極束との位置関係の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る二次電池のセルケースの詳細を説明する。
【実施例】
【0023】
図1ないし図4を用いて本発明に係る二次電池のセルケースの一実施例を説明する。
図1及び図2に示すように、本実施例に係る二次電池のセル(以下、電池セルという)1は、電極束2をセルケース3に入れ、電解液4とともに密閉して構成されている。電池セル1の上部両端には、正極から伸びた正極端子5及び負極から伸びた負極端子6がそれぞれ設けられている。
【0024】
図3に示すように、電極束2は、薄膜状の正極21、負極22及びこれら正極21と負極22とを絶縁するように正極21と負極22との間で挟持されたセパレータ23を重ねあわせたものを巻きまわしてなるものである。正極21は正極集電体21a及びこの正極集電体21aの両面に塗布された正極活物質21bから構成され、負極22は負極集電体22a及びこの負極集電体22aの両面に塗布された負極活物質22bから構成されている。
【0025】
そして、図4に示すように、セルケース3は該セルケース3の外面側を構成する外層としての第一層31、第一層31の内側に位置する空気含有層としての第二層32、および第二層32の内側に位置しセルケース3の内面側を構成する内層としての第三層33からなる三層構造を有している。換言すると、セルケース3の外面側に設けられた第一層31と、セルケース3の内面側に設けられた第三層33との間に第二層32を設けた構成となっている。
【0026】
第一層31は、樹脂製であって例えば水分を透過しないようにポリオレフィンから構成された水分透過防止層となっている。第二層32は、例えば樹脂製であって第一層31と同様、水分を透過しないようにポリオレフィンから構成され、且つ層内に多数の中空部32aを有している。中空部32aは、例えば層内に多数のマイクロカプセルを分散させることにより気泡を形成する等により構成することができる。第三層33は、樹脂製であって例えば耐電解液性を有するようにポリスチレンから構成された耐電解液層となっている。
【0027】
なお、本実施例においては便宜上、正極端子5、負極端子6が設けられている側を上として説明を行ったが、実際に使用する場合にどちらを上側として位置するかは任意である。
【0028】
上述した本実施例に係る二次電池によれば、セルケース3の外面側を構成する第一層31と、セルケース3の内面側を構成する第三層33との間に多数の中空部32aを有する第二層32を設けたことにより、セルケース3外部からの水分の透過および外気温の影響を第二層32において遮断することができるとともに、中空部32aにより内部圧力を吸収して圧力の局在化を防止することができる。
【0029】
さらに、第一層31及び第二層32を水分を透過しないポリオレフィンから構成し、第三層33を耐電解液性を有するポリスチレンから構成すれば、セルケース3外部からの水分の透過をより確実に防止するとともに、セルケース3内部から電解液が漏出することを確実に防止することができる。また、第一層31及び第三層33を樹脂により構成することにより金属製のケースを用いる場合に比較して電池セル1の重量を軽量化することが可能となる。
【0030】
なお、図4では中空部32aを第二層32内に均一に分散させる例を示したが、中空部32aの配分は図4に示した例に限定されるものではなく、例えば、セルケース3の剛性が比較的低い部分に中空部32aを多く分散させて圧力の影響をより効率よく低減してもよい。また、電極束の中央部は温度が上昇しやすいことが周知となっているので、図5に示すように、温度上昇領域にあたる電極束2の中央部に対応するセルケース3の側面中央部(図5の一点鎖線で囲んだ部分)に中空部32aを多く分散させて外気温の影響を効率よく低減してもよい。このように、中空部32aは目的に応じて分散密度を変えることが可能である。
【0031】
また、上述した実施例では第二層32を樹脂から構成する例を示したが、第二層32を構成する材質は樹脂に限定されるものではなく、例えば、箔状の金属を波形に形成する等により段ボール紙のように中空部を付与する、又は空気を含有する木材や軽石のような天然素材を用いるなど、第一層31と第三層33の間に中空部を有する第二層32を設けることができる材質であればよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0032】
また、第一層31の材料としてポリオレフィンを用いる例を示したが、第一層31の材料としてはポリオレフィンに限らず、例えば、アクリル、ポリカーボネート、メタクリル、ポリスチレン、塩化ビニル、エポキシ、ポリエステル、アモルファスポリオレフィン等であってもよい。なお、第一層31の材料としては、水分を透過しにくい材料を用いればより好適である。
【0033】
また、第三層33の材料としてポリスチレンを用いる例を示したが、第三層33の材料としてはポリスチレンに限らず、例えば、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミドイミド、およびポリエーテルイミド等であってもよい。なお、第三層33の材料としては、耐電解液性を有する材料を用いればより好適である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、二次電池のセルケースに適用して好適なものである。
【符号の説明】
【0035】
1 電池セル
2 電極束
3 セルケース
4 電解液
5 正極端子
6 負極端子
21 正極
21a 正極集電体
21b 正極活物質
22 負極
22a 負極集電体
22b 負極活物質
23セパレータ
31 第一層(外層)
32 第二層(空気含有層)
32a 中空部
33 第三層(内層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂からなり外面側を構成する外層と、
樹脂からなり内面側を構成する内層と、
前記外層と前記内層との間に設けられ中空部を有する空気含有層と
を備えることを特徴とする二次電池のセルケース。
【請求項2】
前記空気含有層が、樹脂又は金属からなる
ことを特徴とする請求項1記載の二次電池のセルケース。
【請求項3】
前記中空部は、電池の温度上昇領域に応じて前記空気含有層内で分散密度が異なる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の二次電池のセルケース。
【請求項4】
前記外層が、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル、ポリカーボネート、メタクリル、塩化ビニル、エポキシ、ポリエステル、又はアモルファスポリオレフィンからなる水分透過防止層である
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の二次電池のセルケース。
【請求項5】
前記内層が、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミドイミド、又はポリエーテルイミドからなる耐電解液層である
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の二次電池のセルケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−26047(P2013−26047A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160418(P2011−160418)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】