二次電池の診断装置とそれに有用な情報収集装置
【課題】 二次電池が活性状態なのか不活性状態なのかを診断する技術を提供する。
【解決手段】 二次電池が活性状態なのか不活性状態なのかを判別する装置であり、二次電池の第1劣化指標を測定する装置と、二次電池の第2劣化指標を測定する装置と、第1劣化指標と第2劣化指標の二次元マップに活性範囲と不活性範囲を区分している基準活性マップを記憶している装置と、測定された第1劣化指標と第2劣化指標が、前記基準活性マップの活性範囲と不活性範囲のいずれにあるのかを判別する装置を備えている。
【解決手段】 二次電池が活性状態なのか不活性状態なのかを判別する装置であり、二次電池の第1劣化指標を測定する装置と、二次電池の第2劣化指標を測定する装置と、第1劣化指標と第2劣化指標の二次元マップに活性範囲と不活性範囲を区分している基準活性マップを記憶している装置と、測定された第1劣化指標と第2劣化指標が、前記基準活性マップの活性範囲と不活性範囲のいずれにあるのかを判別する装置を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電と放電のサイクルを繰返すことが可能な二次電池を診断する技術と、二次電池の診断に有用な情報を収集する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やノートパソコンやコードレス電動機器等の多くの電気機器の電源に二次電池が利用されている。これらの電気機器の動作が不調な場合に、電気機器側に問題があるのか二次電池側に問題があるのかを知る必要があり、二次電池を診断する装置が開発されている。
二次電池は、劣化が進行すると内部抵抗が急激に進行する特性をもっており、内部抵抗を測定して基準値と比較することによって、劣化が進んだのか否かを診断する装置が開発されている。二次電池の充放電容量も、劣化が進行すると急激に低下する特性をもっており、充放電容量を測定して劣化が進んだか否かを診断する装置も開発されている。充電装置に充電回数をカウントする機能を付加し、所定の回数だけ充電した電池を充電する際にその旨を報知することによって劣化の進行が進んでいることを知らせる技術も開発されている。充電装置で充電回数をカウントする場合、同一の充電装置で2以上の電池を充電することがあることから、電池にIDを付与しておき、電池毎に充電回数をカウントする技術も知られている。
特許文献1〜3に、上記の診断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−223164
【特許文献2】特開平11−233162
【特許文献3】特開平10−66266
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の電池診断装置は、電池が劣化したのか否かの結果を診断できるにすぎない。二次電池は、使用すれば劣化する性質を持っており、劣化していくこと自体は避けられない。しかしながら、電池の使用の仕方によって、使用量に比して急激に劣化することがある。過放電を繰返せば電池は急激に劣化する。あまりに高速に充電すれば電池温度が過熱されて電池は急激に劣化する。従来の技術では、電池が劣化したのか否かの結果を診断できるにすぎず、それが正常に劣化した結果であって避けられないものなのか、使用方法等が不適切であって異常に急速に劣化したものなのかを判断するのに有益な情報が得られない。正常に劣化したものなのか異常に劣化したものなのかを判断するのに有益な情報が得られなければ、使用方法を改善する必要があるのか、使用方法を改善すれば寿命を延ばせるのか、正常に劣化しており電池を交換する他はないのか等を客観的に判断することができない。電池ユーザは電池が劣化すれば電池の品質に問題があったと主張しがちであり、正常に劣化したものなのか異常に劣化したものなのかを判断するのに有益な情報が得られなければ、正常な電池まで品質に問題があったとされかねず、それでは電池産業の健全な成長が阻害されてしまう。
本発明では、二次電池の劣化が正常劣化なのか異常劣化なのかを判別して診断する技術を提供する。また、そのために有益な情報が得られる情報収集装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によって具現化される一つの電池診断装置は、二次電池の劣化が正常劣化なのか異常劣化なのかを判別する装置であり、二次電池の劣化指標を測定する装置と、二次電池の使用量を把握する装置と、測定された劣化指標が劣化基準値を超えた時の使用量を使用基準量と比較する装置を備えている。
ここで劣化指標が劣化基準値を超えるとは、劣化基準値が劣化指標の下限値を定めている場合には、劣化指標が劣化基準値を下回ることを意味する。また、劣化基準値が劣化指標の上限値を定めている場合には、劣化指標が劣化基準値を上回ることを意味する。
【0006】
二次電池の劣化とともに進行する劣化指標を測定し、それを劣化基準値と比較すれば、二次電池が劣化したか否かを判別することができる。ここまでは従来の診断技術と同一であり、様々な劣化指標を採用することができる。
この装置では、さらに二次電池の使用量を把握し、二次電池が劣化したと判別された時の使用量を使用基準量と比較する。使用基準量とは、正常な二次電池が正常に使用されているときに、劣化指標が劣化基準値を超えることが予定されている使用量である。二次電池が使用基準量よりも少ない使用量で劣化したのであれば、二次電池の使用方法等に問題があったことを知ることができ、使用方法を見直すことによって新たな二次電池を無用に消耗させてしまうことを避けることができる。二次電池が劣化していてもそれが使用基準量を超えてから劣化したものであれば、二次電池の品質に問題がなく、使用方法等にも問題なく、正常に使用されて正常に劣化したことを知ることができる。
この装置によって劣化した二次電池を診断することにより、正常劣化したものなのか異常劣化したものなのかを知ることができ、必要な対策を講じること等が可能となる。
【0007】
本発明は、劣化した二次電池が正常劣化したものなのか異常劣化したものなのかの判別に利用できるだけでなく、現に使用されている電池が正常に劣化しているのか異常に劣化しているのかを判別するのにも利用できる。すなわち、正常に劣化が進行しているのか異常に劣化が進行しているのかを判別することができる。
これができれば、そのままの使用方法を継続してもよいのか、使用方法等を改善しないと異常に短期に劣化してしまうことになるのかを知ることができる。
このために開発された本発明の電池診断装置は、二次電池の劣化指標を測定する装置と、二次電池の使用量を把握する装置と、劣化指標と使用量の二次元マップに正常劣化時範囲と異常劣化時範囲を区分している基準劣化マップを記憶している装置と、測定された劣化指標と把握された使用量が、前記基準劣化マップの正常劣化時範囲と異常劣化時範囲のいずれにあるのかを判別する装置を備えている。
【0008】
本発明者の研究により、劣化指標と使用量の二次元マップに、測定された劣化指標と把握された使用量の対の値をプロットすると、正常な二次電池が正常に使用されているときには、所定の範囲内に収まることが確認された。その一方、二次電池が不適切な使用方法で使用されているときには、劣化指標と使用量の対の値が、前記した範囲とは別の範囲にプロットされることが確認された。
この装置では、二次電池の劣化指標と使用量を対にして検出し、その対の値が、正常劣化時範囲と異常劣化時範囲のいずれにあるのかを判別する。それにより、使用中の二次電池が、正常に劣化しているのか異常に劣化しているのかを判別することが可能となる。二次電池が異常に劣化しているのであれば、例えば二次電池の使用の仕方を改善することによって、二次電池を無用に劣化させてしまうことも避けることができる。
この装置によって二次電池を診断することにより、使用中の二次電池の劣化が正常に進行しているのか異常に進行しているのかを知ることができ、必要な処置を講ずることが可能となる。
【0009】
上記の診断装置では、内部抵抗と充放電容量のいずれかを劣化指標とすることが好ましい。また、累積放電時間、累積充電時間、累積放電電力量、累積充電電力量、累積充電回数のいずれかを使用量とすることが好ましい。
二次電池の内部抵抗は、二次電池の劣化の進行によく追従して増大するために、好適な劣化指標とすることができる。二次電池の充放電容量も、二次電池の劣化の進行によく追従して低下するために、好適な劣化指標とすることができる。
また二次電池は、累積放電時間や累積充電時間や累積放電電力量や累積充電電力量や累積充電回数に追従して劣化が進行する。累積放電時間や累積充電時間や累積放電電力量や累積充電電力量や累積充電回数によって使用量とすることができる。
内部抵抗や充放電容量によって劣化の進行を測定し、累積放電時間や累積充電時間や累積放電電力量や累積充電電力量や累積充電回数によって使用量を測定すると、二次電池を正確に診断することができる。実際に採用する劣化指標や使用量は、上記の中から、二次電池の使用環境等に応じて選択するとよい。
【0010】
使用量は、累積放電時間、累積充電時間、累積放電電力量、累積充電電力量、累積充電回数のいずれかを、過放電および/または急速充電の発生頻度に基づいて修正したものであることが好ましい。
二次電池は、過放電されたり急速充電されたりするとより劣化が進行する。そのことから、過放電や急速充電の発生頻度が多い二次電池では、実際の使用量よりも多く使用されたと評価することが好ましい。それにより、二次電池をより正確に診断することができるようになる。
【0011】
二次電池は、僅かに放電してから充電するサイクルを繰返すと、充放電容量が低下する性質を持っている。しかしながら、この充放電容量の低下は、強制的に放電させてから充電すると(いわゆるリフレッシュ処理すると)大きな値に回復することが知られている。従って、電池が劣化して充放電容量が低下するのとは区別することができる。リフレッシュ処理すれば充放電容量が回復する状態で充放電容量が一時的に低下していることを、電池が不活性となっているという。
二次電池を診断する場合、電池が活性状態なのか不活性状態なのかを区分して診断する必要がある。二次電池が不活性状態となっていることを知ることができれば、リフレッシュ処理を行って充放電容量を回復させることもできる。活性状態の電池が劣化していることを知ることができれば、二次電池の使用の仕方が不適切であったこと等を知ることができ、使用方法の改善を図ることができる。本発明はこの要求に対しても有用であり、本発明を利用して下記の電池診断装置を具現化することができる。
【0012】
この目的のために創作された本発明の電池診断装置は、二次電池が活性状態なのか不活性状態なのかを判別する装置であり、二次電池の第1劣化指標を測定する装置と、二次電池の第2劣化指標を測定する装置と、第1劣化指標と第2劣化指標の二次元マップに活性範囲と不活性範囲を区分している基準活性マップを記憶している装置と、測定された第1劣化指標と第2劣化指標が、前記基準活性マップの活性範囲と不活性範囲のいずれにあるのかを判別する装置を備えている。
【0013】
本発明者の研究により、第1劣化指標と第2劣化指標の二次元マップに、測定された第1劣化指標と第2劣化指標の対の値をプロットすると、二次電池が活性状態であれば所定の範囲内にプロットされることが判明した。一方、二次電池が不活性状態であれば、それとは別の範囲に第1劣化指標と第2劣化指標の対の値がプロットされることが判明した。
この装置では、二次電池の第1劣化指標と第2劣化指標を対にして検出し、その対の値が活性範囲と不活性範囲のいずれにあるのかを判別する。それにより、二次電池が活性状態であるのか不活性状態になっているのかを判別することが可能となる。二次電池が不活性状態になっているのであれば、リフレッシュ処理を行って充放電容量を回復させることができ、二次電池の使用の仕方を見直すことによって再度不活性状態となることを避けるようにすることもできる。
この装置によって二次電池を診断することにより、二次電池が活性状態なのか不活性状態となっているのかを知ることができる。
【0014】
上記の診断装置では、第1劣化指標が二次電池の内部抵抗であり、第2劣化指標が二次電池の充放電容量であることが好ましい。
不活性状態となっている二次電池では、充放電容量は低下するが、内部抵抗はあまり増大しない。それに対し、活性状態で劣化している電池では、充放電容量が低下するのに伴って内部抵抗も増大している。このことから、二次電池の内部抵抗と二次電池の充放電容量の二次元マップを利用すると、活性範囲と不活性範囲を正確に区分することができ、二次電池が活性状態なのか不活性状態となっているのかを正確に知ることができる。
【0015】
本発明の技術は、下記の有用なアダプタに具現化することできる。このアダプタは、充電装置と二次電池の間に挿入して用いるときに充電装置と複合し、二次電池が活性状態なのか不活性状態なのかを判別する電池診断装置を構成する。このアダプタは、充電装置からの充電電流をアダプタを通過させて電池に給電する給電回路と、二次電池からの電流を放電する回路と、給電回路と放電回路のいずれか一方を有効にする切換回路と、判別装置で不活性範囲にあることが判別されたときに放電回路が有効な状態となるように切換回路を切換える手段を備えている。
ここでいう充電装置とは、二次電池の通常の使用において、二次電池を充電するために利用されている充電装置を含む。
【0016】
このアダプタを充電装置と二次電池の間に挿入すると、二次電池が活性状態なのか不活性状態となっているのかを判別すると共に、二次電池が不活性状態となっているときには、二次電池が強制的に放電される。不活性状態と判別されて強制放電された二次電池は、満充電まで充電されることによって低下していた充放電容量が回復する。
二次電池の充放電容量が低下しているときに、二次電池をこのアダプタを介して充電装置に接続すると、活性状態で劣化しているのか不活性状態となっているのかを判別できると共に、二次電池が不活性状態となっているときには、リフレッシュ処理することによって一時的に低下している充放電容量を回復することができる。
【0017】
二次電池は様々な環境で用いられる。急速充電を繰返すユーザもいれば、使用頻度が少ないユーザもいる。軽負荷作業を長持間続けるユーザもいれば、重負荷作業を断続的に繰返すユーザもいる。最後の最後まで電池を使用して過放電を繰返すユーザもいる。
それぞれの作業環境に対してふさわしい利用方法が存在するはずであるが、それを知ることは容易でない。多くの事例を収集し、検討してみなければわからないことが多く残されている。多くの診断情報を集約して診断のための知識をさらに蓄積することが必要とされている。
上記の要望に対して本発明では、二次電池の診断情報収集装置を提供する。この診断情報収集装置は、二次電池を診断して取得した診断情報を収集する装置であり、二次電池を診断して診断情報を取得する複数の端末診断装置群と、診断情報を累積して記憶する情報集積装置と、端末診断装置群と情報集積装置をコンピュータネットワークを介して接続する通信手段を備えている。
各端末診断装置は、本発明で創作された電池診断装置またはアダプタで構成することができる。通信手段は、端末診断装置群が取得した診断情報を情報集積装置に送信することを特徴とする。
この診断情報収集装置では、電池診断装置で取得した二次電池の診断情報が、コンピュータネットワークを介して情報集積装置に送信され、二次電池の診断情報が情報集積装置に累積記憶されていく。情報集積装置には多くの診断情報が集積され、様々な環境で使用された二次電池の診断情報が蓄積される。情報集積装置に蓄積された診断情報を解析することにより、二次電池を適切に診断するための知識をさらに発展させることができる。
【0018】
二次電池の劣化状態を判別するのに必要な使用量や劣化指標の基準は、二次電池の仕様や想定される使用方法等に基づいた計算式や、実際のテスト結果等から算定することができる。しかしながら、劣化に関わる多くの要素を計算式に忠実に反映させることは極めて困難である。また、実際のテスト結果に基づいて基準を定める場合でも、得られるサンプル数には限界があり、限られたサンプル数では推測値が得られるに過ぎない。二次電池の劣化状態をより正確に判別する技術が必要とされている。
上記の課題は、本発明が提供する診断情報収集装置の情報集積装置に累積記憶された診断情報から使用量と劣化指標の関係を抽出し、劣化基準値、使用基準量、正常劣化時範囲、異常劣化時範囲、活性範囲、不活性範囲の少なくとも1つの判別基準を算定する判別基準算定手段を付加することによって解決される。
情報集積装置に蓄積された診断情報は、様々な環境にある二次電池の診断情報から構成される。累積記憶された多数の診断情報から、使用量と劣化指標の関係を抽出することにより、二次電池の劣化状態を判別するための使用量や劣化指標等の基準をより正確に算定することができる。
通信装置は、判別基準算定手段が算定した判別基準を端末診断装置群に送信する。端末診断装置群はより正確な判別基準を得ることができ、端末診断装置群では二次電池の劣化状態をより正確に判別することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、二次電池の劣化が正常劣化なのか異常劣化なのかを判別して診断することが可能となる。また、そのために有益な情報が得られる情報収集装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】バッテリチェックシステムを示す図
【図2】電池パックを示す図
【図3】充電器を示す図
【図4】チェックアダプタを示す図
【図5】電池パックが充電器に装着されたときの電気構成を示す図
【図6】電池パックとチェックアダプタと充電器の電気構成を示す図
【図7】内部抵抗基準劣化マップを示す図
【図8】基準活性マップを示す図
【図9】バッテリチェックシステムの動作の流れを示すフローチャート
【図10】内部抵抗の推移から劣化進行度を推定する処理を説明する図
【図11】充放電容量基準劣化マップを示す図
【図12】ディスプレイに映し出される診断結果の表示例
【図13】ディスプレイに映し出される診断結果の表示例(使用初期品)
【図14】ディスプレイに映し出される診断結果の表示例(不活性状態)
【図15】ディスプレイに映し出される診断結果の表示例(寿命品)
【図16】ディスプレイに映し出される診断結果の表示例(故障品)
【図17】バッテリチェックネットワークの構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。最初に、以下に説明する実施例の主要な特徴を列記する。
(形態1) バッテリチェックシステムは、充電器と、充電器に装着されるチェックアダプタと、チェックアダプタと接続しているコンピュータ装置等によって構成されている。
(形態2) バッテリチェックシステムは、チェックアダプタに装着された電池パックに内蔵されている二次電池群の劣化状態を診断する。
(形態3) 電池パックは、充電回数データ、残容量履歴データ、温度履歴データ、充電特性データ、電池パックデータ等を記憶している記憶装置(例えばEEPROM)を内蔵している。
(形態4) 充電器は、電池パックの通常の使用において、電池パックを充電するための充電器である。
(形態5) チェックアダプタは、充電器と電池パックの二次電池を接続する回路と、二次電池を放電させる放電負荷と、接続回路と放電負荷のいずれか一方を有効にするリレーを有している。
(形態6) コンピュータ装置は、内部抵抗と累積充電回数の二次元マップに正常劣化時範囲と異常劣化時範囲と正常劣化済範囲と異常劣化済範囲を区分している内部抵抗基準劣化マップを記憶している。また、コンピュータ装置は、内部抵抗と充放電容量の二次元マップに活性範囲と不活性範囲を区分している基準活性マップを記憶している。
(形態7) コンピュータ装置は、電池パックの診断結果等を表示するディスプレイを有している。
(形態8) バッテリチェックシステムは、電池パックに内蔵されている記憶装置から情報を読み込むことや、電池パックに内蔵されている記憶装置に情報を書き込むことができる。バッテリチェックシステムは、診断結果を電池パックに内蔵されている記憶装置に書き込む。
(形態9) バッテリチェックシステムは、充電器に内蔵されている充電回路と、チェックアダプタに内蔵されている放電負荷によって、電池パックを完全放電したり満充電することができる。
(形態10) バッテリチェックシステムは、過去に診断した電池パックの診断情報を記憶している。診断情報は、電池パックの識別情報と共に記憶されている。
(形態11) バッテリチェックシステムは、インターネットに接続して用いられる。診断情報をインターネットを介して送信したり、内部抵抗基準劣化マップや基準活性マップ等をインターネットを介して受信することができる。
【実施例】
【0022】
(実施例1) 以下、本発明を具現化したバッテリチェックシステム2について図面を参照して説明する。図1は、本実施例のバッテリチェックシステム2の構成を示す。バッテリチェックシステム2は、電池パック10を充電する充電器30やチェックアダプタ50やコンピュータ装置70等から構成される。
図1は、充電器30にチェックアダプタ50が装着され、チェックアダプタ50とコンピュータ70が通信ケーブル100で接続された状態を示している。この状態において、電池パック10がチェックアダプタ50に装着されると、電池パック10の劣化状態が診断されて診断結果がコンピュータ70に表示される。
図2は電池パック10の外観を示す。図3は充電器30の外観を示す。図4はチェックアダプタ50の外観を示す。図5は充電器30に電池パック10が直接装着されたときの回路構成を示しており、充電器30が電池パック10を充電するときの状態を示している。図6は、充電器30にチェックアダプタ50を介して電池パック10が装着されたときの回路構成を示しており、バッテリチェックシステム2が電池パック10を診断するときの状態を示している。
【0023】
まず、図2と図5を用いて電池パック10を説明する。電池パック10は、電動工具(例えば、インパクトドライバ)用の電池パックであり、電動工具に装着されて、その電動工具の駆動源(例えば、モータ)に電力を供給する。
図2に示すように、電池パック10は略角柱状に形成された樹脂製のケーシング11を備える。ケーシング11の上端側は、電動工具(例えば、インパクトドライバ等)や充電器30やチェックアダプタ50に装着する際に相手側に嵌合可能な形状に形成されている。
また、ケーシング11の上端側には、プラス端子溝17、マイナス端子溝19およびコネクタ20が設けられている。プラス端子溝17の中には、図5に示すプラス端子18aが設けられており、マイナス端子溝19の中には図5に示すマイナス端子18bが設けられている。コネクタ20の内部には、図5に示すメモリ端子21aや温度センサ端子23aが設けられている。電池パック10が電動工具や充電器30やアダプタ50に装着されたときに、これらの端子が相手側の受電端子や出力端子と接触し得るように構成されている。
【0024】
図5に示すように、電池パック10のケーシング11内には、二次電池18群、EEPROM21、温度センサ23、電流検出部25、処理回路27が内蔵されている。
二次電池18群は、複数の二次電池18が直列に接続されている。本実施例の二次電池18群では、10個のニッケル水素電池が直列に接続されている。
二次電池18群の正極側は、電流検出部25を介してプラス端子18aと接続されている。二次電池18群の負極側はマイナス端子18bと接続されている。プラス端子18aとマイナス端子18bの端子間電圧は略12Vとなっている。
電流検出部25は、二次電池18群の充電電流の値や放電電流の値を検出し、処理回路27に教示する。処理回路27は、教示された二次電池18群の充放電電流値から、二次電池18群の残容量を経時的に演算し、EEPROM21に記述していく。
二次電池18群の近傍には、二次電池18群の温度を検出するための温度センサ23が配設されている。温度センサ23は、温度によって電気抵抗値が変化するサーミスタからなる。温度センサ23は温度センサ端子23aと接続されている。
ケーシング11内には、電子情報を記憶するEEPROM21が備えられている。EEPROM21はメモリ端子21aと接続されている。
【0025】
EEPROM21には、充電回数データや残容量履歴データや温度履歴データや充電特性データや電池パックデータや過去診断データ等が記憶されている。
充電回数データには、充電回数や満充電回数等が記述されている。充電回数とは、電池パック10がそれまでに充電された累積回数である。満充電回数とは、電池パック10が満充電の状態となるまで充電された累積回数である。充電回数と満充電回数の差は、電池パック10の充電を開始したものの、満充電の状態となる前に充電を中止した回数を示す。
残容量履歴データには、二次電池18群の残容量の履歴が記述されている。残容量履歴データは、処理回路27が二次電池18群の残容量を演算し、処理回路27がEEPROM21に記述したものである。二次電池18群が放電しているときの電流値や、二次電池18群が充電されているときの電流値は、電流検出部25によって検出される。処理回路27は、電流検出部25が検出した充放電電流値に基づいて、残容量履歴データに記述されている残容量を加減算しながら残容量の履歴を記述していく。残容量履歴データに記述されている残容量は、リフレッシュ処理等によって電池パック10を完全放電したときに、残容量値をゼロにリセットするようにしてもよい。それにより、累積された誤差を取り除くことができる。
温度履歴データには、二次電池18群の充電中の温度の履歴が記述されている。温度履歴データは、充電器30が電池パック10を充電するときに、充電器30によって更新される。二次電池18群は急速充電が行われると大きく発熱するので、充電中の二次電池の温度が高ければ、二次電池18群が急速充電されたと推定することができる。温度履歴データには、充電中における二次電池18群の温度値をすべて記述してもよいし、充電中の最高温度値や最低温度値等を抽出して記述してもよい。本実施例では、充電中における二次電池18群の温度値がすべて記述されている。
【0026】
充電特性データには、電池パック10の充電に関する特性が記述されている。例えば、電池パック10の二次電池18群にふさわしい充電電流や、二次電池18群にふさわしいリフレッシュ処理の頻度等が記述されている。
電池パックデータには、例えば電池パック10の形式が記述されている。例えば、電池パック10の形式とは、例えば電池パック10が内蔵する二次電池18群の種別や公称電圧や公称充放電容量等である。また、電池パック10を他の電池パックと識別する識別子等が記述されている。
過去診断データには、バッテリチェックシステム2が電池パック10を過去に診断したときの診断に関わる情報が記述されている。過去診断データには、過去の診断時の日時や、そのときの二次電池18群の内部抵抗値や充放電容量や充電回数や、その診断時におけるバッテリチェックシステム2の診断結果等が記述されている。
【0027】
次に、図3と図5を用いて充電器30を説明する。図1に示したように、充電器30にはアダプタ50を装着することができると共に、図3に示すように電池パック10を直接装着することもできる。充電器30は、バッテリチェックシステム2のみに使用されるものではなく、電池パック10の通常の使用において、電池パック10を充電する充電器でもある。
図3に示すように、充電器30は樹脂製の筐体31を有する。筐体31の上端面には、電池パック10やチェックアダプタ50を装着可能な嵌合部32が一体に成形されている。また、筐体31には、充電器30の動作状況を示す状態表示ランプ等の種々のインジケータ36が設けられている。
嵌合部32には、電池パック10やアダプタ50を案内可能なガイド33、34が設けられている。嵌合部32のガイド33とガイド34の間には、図5に示すプラス出力端子42aとマイナス出力端子42bが設けられている。また、電池パック10のコネクタ20に接続可能なコネクタ(図示せず)が設けられており、そのコネクタには図5に示す端子46a、48aが臨んでいる。
【0028】
図5に示すように、充電器30の制御回路は、主に、電源回路42、充電電流制御部44、制御部46、電圧検出部47、温度検出部48、記憶部49等から構成される。
電源回路42は、電池パック10の二次電池18群を充電可能な出力を有している。温度検出部48は、電池パック10の温度センサ23の出力から、二次電池18群の温度を検出することができる。電圧検出部47は、二次電池18群の電圧を検出することができる。記憶部49は所定のマップ等の電流値制御情報を記憶するものである。
【0029】
なお、上述した電源回路42、充電電流制御部44、制御部46、電圧検出部47、温度検出部48、記憶部49等は、本願出願人による先の特許出願(特開2000−278875号)に開示する充電器の構成と実質的に同様であり、二次電池18群の温度とその変化率の対の値から充電電流を決定して充電を行う構成である。記憶部49には、二次電池の温度とその変化率の対の値に対応付けて充電電流が記述されているマップが記憶されている。記憶部49には、複数の充電電流マップが記憶されており、使用されるマップは充電する二次電池の特性等に基づいて決定される。
【0030】
図5に示すように、充電器30の嵌合部32に電池パック10が装着されると、電池パック10が備える端子18a、18b、21a、23aと、充電器30が備える端子42a、42b、46a、48aがそれぞれ電気的に接続される。
制御部46は、電池パック10のEEPROM21から充電特性データを読み込み、電源回路42、充電電流制御部44、電圧検出部47、温度検出部48等を所定のアルゴリズムによって制御し、電池パック10内の二次電池18群を充電する。
充電を開始すると、制御部46は電池パック10のEEPROM21に記憶されている充電回数データの充電回数を1加算するように書換える。
充電中では、制御部46は二次電池18群の温度を監視し、電池パック10のEEPROM21に記憶されている温度履歴データを記述していく。
充電が完了すると、充電を停止しその旨をランプ等により告知する。制御部46は、電池パック10のEEPROM21に記憶されている充電回数データの満充電回数を1加算するよう書換える。
なお、充電器30にチェックアダプタ50が装着されたときは、後述するようにチェックアダプタ50からの制御により、充電等の各種動作を行い得るように構成されている。
【0031】
次に、図4および図6を用いてチェックアダプタ50の構成を説明する。図4に示すように、チェックアダプタ50は樹脂製のケーシング51を有する。ケーシング51の下面には、充電器30の嵌合部32に嵌合可能な嵌合部52が形成されている。ケーシング51の上面には、電池パック10の上端面が嵌合可能な嵌合部54が形成されている。
また、ケーシング51の上面には、種々のランプから構成される表示部64が設けられている。表示部64には、充電器30の動作状態やチェックアダプタ50の動作状態等が表示される。
【0032】
ケーシング51の下面の嵌合部52には、図6に示すプラス受電端子52a、マイナス受電端子52bが設けられている。また、充電器30のコネクタ20と接続するためのコネクタ(図示せず)が設けられており、そのコネクタには図6に示す端子61aが臨んでいる。
ケーシング51の上面の嵌合部54には、図6に示すプラス出力端子58a、マイナス出力端子58bが設けられている。また、電池パックのコネクタ20と接続するためのコネクタ(図示せず)が設けられており、そのコネクタには図6に示す端子61b、67aが臨んでいる。
ケーシング51の後背面には、図6に示す通信端子66が設けられている。図6に示すように、通信端子66には通信ケーブル100が接続されており、チェックアダプタ50とコンピュータ70が通信ケーブル100を介して接続されている。
【0033】
図6に示すように、チェックアダプタ50の制御回路は、主に、制御部61と、放電負荷62と、電圧検出部63と、表示部64と、温度検出部67と、リレー68と、そのリレー68を制御する充放電切換部65等から構成される。この制御回路は、充電器30側から電力の供給を受けて動作するように構成されている。
【0034】
放電負荷62は、二次電池18群を放電するときの負荷となる抵抗等から構成されている。放電負荷62は負荷抵抗値を調節することにより、制御部61の指令に基づいて放電電流を調節する。
電圧検出部63は、二次電池18群の電圧を検出できるように構成されている。電圧検出部63は、二次電池18群の電圧を検出して制御部61に教示する。
充放電切換部65は、制御部61の指令に基づいてリレー68を切換える。それにより、電池パック10の二次電池18群には、充電器30の電源回路42又はチェックアダプタ50の放電負荷62が切換えられて接続される。
温度検出部67は、電池パック10の温度センサ23の出力から、二次電池18群の温度を検出することができる。温度検出部67は、二次電池18群の温度を検出して制御部61に教示する。
チェックアダプタ50の制御部61は通信機能を有し、充電器30の制御部46やコンピュータ70との間で情報通信を行う。また、制御部61は電池パック10のEEPROM21から情報を読み込んだり、EEPROM21へ情報を書き込んだりすることができる。
【0035】
図6に示すように、充電器30にチェックアダプタ50を装着すると、充電器30が備える端子42a、42b、46aと、チェックアダプタ50が備える端子52a、52b、61aがそれぞれ電気的に接続される。また、電池パック10をチェックアダプタ50に装着すると、電池パック10が備える端子18a、18b、21a、23aと、チェックアダプタ50が備える端子58a、58b、61b、67aがそれぞれ電気的に接続される。
充電器30とチェックアダプタ50と電池パック10が順に接続されると、チェックアダプタ50の制御部61は、電池パック10のEEPROM21に記憶されている情報を読み込み、また、充電器30の制御部46や放電負荷62や充放電切換部65等に指令を与え、二次電池18群を充電したり放電させたりすることができる。例えば、二次電池18群を完全に放電させた後に満充電となるまで充電することもでき、いわゆる二次電池のリフレッシュ処理を行うことができる。
【0036】
次に、図6を用いてコンピュータ装置70の構成を説明する。コンピュータ装置70は、コンピュータ本体72、ディスプレイ74、入力装置76等から構成されている。
図6に示すように、コンピュータ本体72には、各種の処理に使用するデータ等を記憶している記憶部80と、電池パック10の診断に係る処理を行う診断処理部90と、二次電池18群の充放電容量を検出する容量検出部92と、二次電池18群の内部抵抗を算出する内部抵抗検出部94と、インターネット接続部96等が構成されている。記憶部80、診断処理部90、容量検出部92、内部抵抗検出部94、インターネット接続部96等は、コンピュータ本体72のハードウェアやソフトウェア等によって構成されている。
【0037】
記憶部80には判別基準データ82が記憶されている。判別基準データ82には、図7に示す内部抵抗基準劣化マップ120、図8に示す基準活性マップ140等が記述されている。
図7に示すように、内部抵抗基準劣化マップ120は、横軸が充電回数であり、縦軸が内部抵抗である二次元マップである。内部抵抗基準劣化マップ120では、充電回数と内部抵抗の関係から、正常劣化時範囲122と異常劣化時範囲124と正常劣化済範囲126と異常劣化済範囲128が定められている。正常劣化時範囲122と異常劣化時範囲124を区分している曲線130は、電池パック10が正常に製造されて正常に使用されている場合に、劣化していく二次電池18群の充電回数と内部抵抗の標準的関係を示している。図中の内部抵抗値Rzは、二次電池18群の内部抵抗がこの内部抵抗値Rzよりも増大したときに、二次電池18群が劣化したと判断される劣化基準抵抗値Rzである。また、充電回数Nzは、二次電池18群が正常に使用されたときに、内部抵抗がこの劣化基準抵抗値Rzよりも増大することが予定されている基準充電回数Nzである。
正常劣化時範囲122は、充電回数に対する内部抵抗が標準値以下の範囲であり、二次電池18群が充電回数に追従して正常に劣化していることを示す。異常劣化時範囲124は、充電回数に対する内部抵抗が標準値よりも高い範囲であり、二次電池18群が異常に劣化していることを示す。正常劣化済範囲126は、充電回数が基準充電回数Nz回以上であって内部抵抗が劣化基準抵抗値Rz以上の範囲であり、二次電池18群が正常に劣化しながら使用不能となるまで劣化したことを示す。異常劣化済範囲128は、充電回数が基準充電回数Nz回未満であって内部抵抗が劣化基準抵抗値Rz以上の範囲であり、二次電池18群が異常に劣化しながら使用不能となるまで劣化したことを示す。
【0038】
図8に示すように、基準活性マップ140は、横軸が充放電容量であり、縦軸が内部抵抗である二次元マップである。基準活性マップ140では、二次電池18群の充放電容量と内部抵抗の関係から、活性範囲142と不活性範囲144が定められている。不活性範囲144は、充放電容量が少なくて内部抵抗が低い範囲に定められている。
劣化の進んでいない二次電池は、充放電容量が多く内部抵抗も低い。一方、劣化の進行した二次電池は、充放電容量が低下しており、内部抵抗も増大している。それらに対し、不活性状態となっている二次電池18群では、充放電容量が低下しているが、内部抵抗はあまり増大していない。このことから、充放電容量が低下しているが、内部抵抗はあまり増大していない二次電池は、不活性状態となっていると判別することができる。このことから、図8に示すように、横軸が充放電容量であり縦軸が内部抵抗である二次元マップでは、充放電容量が少なくて内部抵抗が低い範囲を、不活性範囲と定めることができる。図中の充放電容量値Qzは、二次電池18群の充放電容量がこの充放電容量値Qzよりも減少したときに、二次電池18群が劣化したと判断される劣化基準容量値Qzである。図7を用いて説明したように、劣化した二次電池18群では、内部抵抗が劣化基準抵抗値Rzまで増大している。即ち、二次電池18群の充放電容量が劣化基準容量値Qzまで減少した時には、二次電池18群の内部抵抗は劣化基準値Rzまで増大すると予定されている。またその時の充電回数は、基準充電回数Nz回となることが予定されている。
【0039】
記憶部80には、診断情報累積データ86が記憶されている。診断情報累積データ86には、これまでにバッテリチェックシステム2が診断した電池パック10の診断情報が累積して記述されている。診断情報累積データ86には、例えば電池パック10のEEPROM21から読み込んだデータや、診断時に算出したデータや、利用者によって入力されたデータ等が記述されている。
容量検出部92は、二次電池18群の充放電容量を検出することができるように構成されている。詳しくは、容量検出部92は、電池パック10のEEPROM21に記憶されている残容量履歴データから最新の極大値を抽出することによって、二次電池18群の充放電容量を検出する。
内部抵抗検出部94は、二次電池18群が充放電されたときの二次電池18群の電圧値から、二次電池18群の内部抵抗の値を算出することができる。例えば内部抵抗検出部94は、二次電池18群の非通電時の電圧値と、所定電流で放電させたときの電圧値から、内部抵抗を算出することができる。
インターネット接続部96は、コンピュータ装置70がインターネットに接続することを可能にする。コンピュータ装置10は、インターネット接続部96によってインターネットに接続し、外部のコンピュータ装置等と電子情報を授受することができる。
【0040】
以上、本実施例のバッテリチェックシステム2の構成について説明した。次に、バッテリチェックシステム2の動作の流れについて、図9に示すフローチャートを参照して説明する。
ステップS2では、電池パック10がチェックアダプタ50に装着されるまで待機状態となる。電池パック10が装着されたことは、例えば電圧検出部63が二次電池18群の電圧を検出することによって認識することができる。
ステップS4では、チェックアダプタ50の制御部61が、電池パック10のEEPROM21の情報を読み込む。制御部61は、読み込んだEEPROM21の情報を、コンピュータ装置70の診断処理部90に教示する。チェックアダプタ50の制御部61やコンピュータ装置70の診断処理部90は、電池パック10の充電回数データや残容量履歴データや温度履歴データや充電特性データや電池パックデータから、例えば二次電池18群の充電回数等を検出する。
ステップS6では、二次電池18群の充放電容量が検出される。電池パック10の残容量履歴データが、診断処理部90から容量検出部92に教示され、容量検出部92は残容量履歴データから最新の極大値を抽出して、二次電池18群の充放電容量を検出する。なお、二次電池の充放電容量を検出する方法は、上記に限定されるものではく、他の方法を用いてもよい。例えば、二次電池18群を完全に放電した後に満充電となるまで充電して、そのときの充電電力量を測定してもよい。
ステップS8では、二次電池18群の内部抵抗が検出される。診断処理部90は、チェックアダプタ50の制御部61に指令して、二次電池18群に診断用充放電を行わせる。その診断用充放電において、二次電池18群の電圧値はチェックアダプタ50の電圧検出部63によって検出され、制御部61と診断処理部90を経由して内部抵抗検出部94に教示される。内部抵抗検出部94は、診断用充放電に対する二次電池18群の電圧値から、二次電池18群の内部抵抗を算出する。
以上のステップS4、S6、S8によって、二次電池18群の充電回数、充放電容量、内部抵抗等が検出される。
【0041】
図9のステップS10では、二次電池18群が活性状態であるのか不活性状態となっているのかの判別処理が行われる。診断処理部90は、ステップS6で検出された充放電容量とステップS8で測定された内部抵抗の対の値を、基準活性マップ140上にプロットし、二次電池18群が活性状態であるのか不活性状態となっているのかの判別をする。
図8に示すように、例えば検出された充放電容量がQ1であり、検出された内部抵抗がR1のときは、二次電池18群は活性状態であると判別する。一方、例えば検出された充放電容量が劣化基準容量値Qzであり、検出された内部抵抗が内部抵抗値R1のときは、二次電池18群は不活性状態となっていると判別する。充放電容量のみから判別すれば、充放電容量が劣化基準容量値Qzとなっている二次電池18群は劣化したと判別されてしまう。それに対し、バッテリチェックシステム2では、充放電容量と内部抵抗を組み合わせて判別することにより、二次電池18群が不活性状態となっていることを判別することができる。
【0042】
ステップS12では、ステップS10の判別において、二次電池18群が活性状態であればステップS14に進み、不活性状態となっていればステップS32に進む。
ステップS32に進んだ場合、ステップS32では二次電池18群のリフレッシュ処理が行われる。診断処理部90は、二次電池18群が不活性状態となっていることを判別すると、チェックアダプタ50の制御部61に、二次電池18群のリフレッシュ処理をするように指令する。その指令を受け、チェックアダプタ50の制御部61は、充電器30の制御部46や放電負荷62や充放電切換部65等に指令を与え、二次電池18群のリフレッシュ処理を行う。リフレッシュ処理を行った後、ステップS4に戻る。ステップS4では、電池パック10のEEPROM21からリフレッシュ後の残容量履歴データが読み込まれ、ステップS6で二次電池18群のリフレッシュ後の充放電容量が検出される。このように、バッテリチェックシステム2では、二次電池18群が不活性状態となっている場合、一時的に低下している充放電容量を回復させた後に、以降の二次電池18群の診断処理を行う。
【0043】
図9のステップS14では、電池パック10の使用履歴に基づいて、ステップS4で検出した電池パック10の充電回数が修正される。本実施例では、電池パック10の使用履歴を、ステップS4で読み込んだ残容量履歴データと温度履歴データから推定する。診断処理部90は、残容量履歴データから、二次電池18群の残容量が所定値を下回った回数を計数する。その計数した回数を、二次電池18群が過放電された回数とする。また、診断処理部90は、温度履歴データから、二次電池18群の温度が所定値を上回った回数を計数する。その計数した回数を、二次電池18群が急速充電された回数とする。診断処理部は90、二次電池18群の過放電回数と急速充電回数と充電回数から、過放電や急速充電の発生頻度を計算し、その発生頻度が高いほど検出した充電回数を多くなるように修正する。このように充電回数を修正することにより、劣化が進みやすい使用方法が繰返された二次電池18群では、実際の充電回数よりも多くの充電がなされたと評価されることとなる。
【0044】
ステップS16では、二次電池18群の劣化状態の判別処理が行われる。詳しくは、二次電池18群が使用不能となるまで劣化しているのか否かの判別が行われる。二次電池18群が使用不能となるまで劣化しているのであれば、二次電池18群は正常劣化であったのか、異常劣化であったのか判別する。一方、二次電池18群がまだ使用可能な状態であるときには、正常に劣化しているのか異常に劣化しているのかの判別が行われる。
診断処理部90は、ステップS14で修正された二次電池18群の充電回数と、ステップS8で検出した二次電池18群の内部抵抗との対の値を、図7に示した内部抵抗基準劣化マップ120上にプロットし、二次電池18群の劣化状態を判別する。図7に示すように、例えば点Uのように異常劣化済範囲128にプロットされれば、二次電池18群は使用不能の状態まで劣化しており、その劣化は異常であったと判別する。点Vのように正常劣化済範囲126にプロットされれば、二次電池18群は使用不能の状態まで劣化しており、その劣化は正常であったと判別する。点Wのように異常劣化時範囲124にプロットされれば、二次電池18群はまだ使用可能の状態であり、その劣化は異常に進行していると判別する。点Xのように正常劣化時範囲122にプロットされれば、二次電池18群は使用可能の状態であり、その劣化は正常に進行していると判別する。
【0045】
ステップS18では、二次電池18群の劣化の進行度が推定される。二次電池18群の劣化の進行度とは、二次電池18群のそのときの劣化状態が、使用不能な状態となる劣化状態に対して、どの程度進行しているのかを示す度合である。例えば、劣化進行度が50パーセントであれば、二次電池18群をそれまでの使用量だけさらに使用すると、二次電池18群が使用不能となるまで劣化することを意味する。
図10を参照して、診断処理部90による劣化の進行度の推定処理を説明する。図10に示すように、診断処理部90は、ステップS4で検出した二次電池18群の充電回数と、ステップS8で検出した二次電池18群の内部抵抗との対の値を、図7に示した内部抵抗基準劣化マップ120上にプロットする。ここでは、点Xにプロットされたものとする。なお、この処理で利用する充電回数は、ステップS14で修正した充電回数ではないことに留意されたい。診断処理部90は、プロットされた点Xと、内部抵抗基準劣化マップ120に記述されている標準的関係曲線130を用いて、内部抵抗基準劣化マップ120上に充電回数と内部抵抗の今後の推移曲線132を作成する。この推移曲線132において、内部抵抗が劣化基準抵抗値Rzとなるときの充電回数N3を求める。即ち、二次電池18群は、充電回数がN3回となったときに、内部抵抗が劣化基準抵抗値Rzまで増大し、使用不能となるまで劣化すると推定される。診断処理部90は、そのときの充電回数N1回と、推定した劣化充電回数N3回の比から、劣化の進行度を求める。
【0046】
ステップS20では、上記の処理による判別結果等が、ディスプレイ74に表示される。図12に、ディスプレイ74に表示される表示画面150を例示する。図12に示すように、表示画面150は、主に入力表示部160と結果表示部170から構成されている。入力表示部160は、利用者がバッテリチェックシステム2に情報を入力したり指示を与えたりするための情報が表示される。例えば利用者は、電池パック10に関して、所有者(図中161)、使用される機器(電動工具等)の形式(図中162)、生産ロットナンバ(図中163)、購入年月日(図中164)、所有者の評価コメント(図中165)や、今回の診断目的等のコメント(図中166)を入力することができる。
入力表示部160には、診断指示ボタン168と履歴表示ボタン169が表示されており、それらのボタンによって利用者はバッテリチェックシステム2に指示を与えることができる。診断指示ボタン168により、バッテリチェックシステム2に電池パック10の診断処理の実行を指令することができる。なお、電池パック10の診断処理は、先に説明したように電池パック10がチェックアダプタ2に接続されることによっても開始される(ステップS2)。診断指示ボタン168は、例えば同じ電池パック10を続けて診断する場合のように、電池パック10が既に接続されている場合等に使用する。履歴表示ボタン169により、記憶部80の診断情報累積データ86が記述している電池パック10の過去の診断情報を、結果表示部170に表示させることもできる。
【0047】
結果表示部170には、診断結果コメント表示部172、寿命進行度表示部174、検出値表示部176が構成されており、電池パック10の診断結果が表示される。診断結果コメント表示部172には、ステップS10の活性/不活性の判別結果や、ステップS16の劣化状態の判別結果に基づいてコメントが表示される。ステップS16における判別が「正常劣化時」であれば、例えば図12に示すように「正常です。」等と表示される。
寿命進行度表示部174には、ステップS18で推定された劣化の進行度が表示される。検出値表示部176には、診断処理で検出された各種検出値が表示される。例えば、二次電池18群の公称電圧値や、検出された二次電池18群の実際の電圧値や、温度センサ23で検出された二次電池18群の温度等が表示される。また、EEPROM21から読み込んだ充電回数や、検出した二次電池18群の内部抵抗値等が表示される。
【0048】
図13、14、15、16は、結果表示部170の表示例を示している。図13は、二次電池18群の劣化状態が「正常劣化時」と判別され、さらに充電回数が少ない新品の電池パック10を診断したときの表示例を示す。使用を開始して間もない電池パック10を診断することは、製造等に起因する初期故障の有無を確認することができるので有効である。
図14は、二次電池18群の劣化状態がステップS10の活性/不活性の判別で「不活性」と判別され、リフレッシュ処理の後の診断で「正常劣化時」と判別された場合の表示例を示している。図14に示すように、二次電池18群が不活性状態となっている判別された場合には、完全充放電等のリフレッシュ処理を推奨するコメントを併せて表示するとよい。
図15は、二次電池18群の劣化状態が「正常劣化済」と判別された場合の表示例を示している。電池パック10のEEPROM21に記憶されている残容量履歴データから、高い頻度で過放電されていることが確認される場合には、図15に示すように「過放電はバッテリの劣化を早めます。工具の力が落ちてきたと感じたら充電して下さい。」と表示して、電池パック10の使用者に助言を与えるコメントを表示するのもよい。
図16は、二次電池18群の劣化状態が「異常劣化済」と判別された場合の表示例を示している。二次電池18群の劣化が異常劣化であって、充電回数も少ない場合には、電池パック10が故障していることが推測される。図16に示すように、二次電池18群が故障していることが推測される場合には、その旨を告知することにより、故障した電池パック10が使用し続けられることを防止することができる。
図9のステップS22では、今回の診断結果が記憶部80の診断情報累積データ86に追加して記憶される。ここでいう診断結果とは、電池パック10のEEPROM21から読み込んだデータや、検出した二次電池18群の電圧変化パターンや温度や、算出した二次電池18群の充放電容量や内部抵抗値や、劣化状態の判別結果や、利用者が入力表示部160に入力した情報を含む。バッテリチェックシステム2は、診断情報累積データ86に記憶している診断情報を読み出して、図12〜16に示すような診断結果の表示画面150を、いつでもディスプレイ74に表示することができる。また、バッテリチェックシステム2は、電池パック10のEEPROM21に記憶されている過去診断データを読み込んで、ディスプレイ74に表示することもできる。
また、このステップS22では、今回の診断結果が電池パック10のEEPORM21にも書き込まれる。電池パック10のEEPROM21に今回の診断結果が記憶されることで、電池パック10が他のバッテリチェックシステム2で診断されたときでも、今回の診断情報を表示させることができる。
【0049】
以上で説明した流れによって、バッテリチェックシステム2は、電池パック10の二次電池18群を診断する。バッテリチェックシステム2は、二次電池18群が充電回数に伴って正常に劣化しているのか、異常に劣化しているのかを判別することができる。それにより、故障している電池パック10を使用し続けて、電動工具を損傷してしまうような二次災害を予防することができる。
また、バッテリチェックシステム2は、二次電池18群の劣化が、寿命に対してどの程度まで進行しているかを推定することができる。二次電池18群の寿命が尽きる時期を推測することもでき、二次電池18群の使用者は電池パック10の今後の使用計画等に反映することができる。
また、バッテリチェックシステム2は、電池パック10が二次電池18群の劣化を進めるような形態で使用されているか否かを推定することもできる。それにより、電池パック10の使用者は、自身の使用形態が二次電池18群の劣化を助長していることを知り、電池パック10の今後の使用方法を改善することができる。
【0050】
上記では、ステップS16において、充電回数と内部抵抗の対の値から、二次電池18群の劣化状態を判別する処理について説明したが、内部抵抗に替えて充放電容量を用いることもできる。この場合、図7に示した内部抵抗基準劣化マップ120に替えて、図11に示す充放電容量基準劣化マップ180を用いればよい。
図11に示すように、充放電容量基準劣化マップ180は、横軸が充電回数であり、縦軸が充放電容量である二次元マップである。充放電容量基準劣化マップ180では、充電回数と充放電容量の関係から、正常劣化時範囲182と異常劣化時範囲184と正常劣化済範囲186と異常劣化済範囲188が定められている。正常劣化時範囲182と異常劣化時範囲184を区分している曲線190は、電池パック10が正常に製造されて正常に使用されている場合に、劣化していく二次電池18群の充電回数と充放電容量の標準的関係を示している。図中の充放電容量値Qzは、劣化基準容量値Qzである。また、充電回数Nzは、二次電池18群が正常に使用されたときに、充放電容量がこの劣化基準容量値Qzよりも増大することが予定されている基準充電回数Nzである。
充放電容量基準劣化マップ180において、正常劣化時範囲182は、充電回数に対する充放電容量が標準値以上の範囲であり、二次電池18群が充電回数に追従して正常に劣化していることを示す。異常劣化時範囲184は、充電回数に対する充放電容量が標準値よりも少ない範囲であり、二次電池18群が異常に劣化していることを示す。正常劣化済範囲186は、充電回数が基準充電回数Nz回以上であって充放電容量が劣化基準容量Qz以下の範囲であり、二次電池18群が正常に劣化しながら使用不能となるまで劣化したことを示す。異常劣化済範囲188は、充電回数が基準充電回数Nz回未満であって充放電容量が劣化基準充放電容量Qz以下の範囲であり、二次電池18群が異常に劣化しながら使用不能となるまで劣化したことを示す。
充放電容量基準劣化マップ180は、判別基準データ82に追加して記述しておくとよい。
【0051】
診断処理部90は、ステップS14で修正された二次電池18群の充電回数と、ステップS6で検出した二次電池18群の充放電容量との対の値を、図11に示した充放電容量基準劣化マップ180上にプロットし、二次電池18群の劣化状態を判別することができる。図11に示すように、例えば点Kのように正常劣化時範囲182にプロットされれば、二次電池18群は使用可能の状態であり、その劣化は正常に進行していると判別する。
点Lのように異常劣化時範囲184にプロットされれば、二次電池18群はまだ使用可能の状態であり、その劣化は異常に進行していると判別する。点Jのように正常劣化済範囲186にプロットされれば、二次電池18群は使用不能の状態まで劣化しており、その劣化は正常であったと判別する。点Hのように異常劣化済範囲188にプロットされれば、二次電池18群は使用不能の状態まで劣化しており、その劣化は異常であったと判別する。
【0052】
バッテリチェックシステム2は、インターネット接続部96によってインターネットに接続し、インターネットを経由して外部のコンピュータ装置等と情報を授受することができる。例えばバッテリチェックシステム2は、外部のコンピュータ装置から新たな判別基準データ82等を受信することができる。
バッテリチェックシステム2は、記憶部80に記憶している診断情報累積データ86を、外部のコンピュータ装置に送信することができる。それにより、バッテリチェックシステム2の利用者は、電池パック10についてより詳しい知識を有する者(例えば電池パック10の供給者)に、電池パック10の診断情報を送信して助言を仰ぐことができる。
【0053】
(実施例2) 本発明を具現化したバッテリチェックネットワーク200について図面を参照して説明する。図17は、本実施例のバッテリチェックネットワーク200の構成を示す。図17に示すように、バッテリチェックネットワーク200は、ホストコンピュータ212と複数の実施例1のバッテリチェックシステム2群で構成される。ホストコンピュータ212とバッテリチェックシステム2群は、インターネット204を介して接続されている。
ホストコンピュータ212は、ホストコンピュータ212の処理動作を行う処理部214と、電池パック10の診断情報を累積して記憶する診断情報集積部216と、処理部214から入力された情報を表示するディスプレイ218等で構成されている。
処理部214には、ディスプレイ218に表示する表示情報を生成して出力する表示処理部222や、診断情報集積部216に累積記憶された診断情報から二次電池18群の判別基準を算定する判別基準算定部224や、ホストコンピュータ212がインターネットに接続して、バッテリチェックシステム2等と電子情報を授受するインターネット接続部226を備えている。
【0054】
バッテリチェックネットワーク200の各端末診断装置群であるバッテリチェックシステム2は、実施例1で説明したバッテリチェックシステム2であり、実施例1で説明したように動作して電池パック10を診断する。ただし、本実施例のバッテリチェックシステム2群では、インターネット接続部96によってインターネット204に接続すると、インターネット204内でホストコンピュータ212を探索して接続するように設定されている。
バッテリチェックシステム2群は、電池パック10を診断して得た診断情報を、インターネット204を介してホストコンピュータ212に送信する。バッテリチェックシステム2群は、電池パック10を診断する毎に診断情報を送信してもよいし、診断情報累積データ86に記述しておいた診断情報をまとめて送信してもよい。
【0055】
ホストコンピュータ212は、バッテリチェックシステム2群から送信された診断情報を、診断情報集積部216に累積して記憶する。診断情報集積部216には、多数のバッテリチェックシステム2群から送信された多数の診断情報が累積して記憶されていく。診断情報集積部216には、様々な使用環境にある電池パック10の診断情報が蓄積されていく。
診断情報集積部216に集積された診断情報を検討することにより、二次電池18群の劣化の態様を検討することができ、診断のための知識をさらに蓄積することができる。累積記憶された診断情報は、表示処理部222によってディスプレイ218に表示させて評価することもできる。
【0056】
判別基準算定部224は、診断情報集積部216に累積記憶された診断情報から二次電池18群の判別基準を算定することができる。例えば判別基準算定部224は、累積記憶された多数の診断情報から、多数の充電回数と内部抵抗の対の値を抽出し、充電回数と内部抵抗の二次元マップにプロットする。そのプロット点の分布から、図7に示した内部抵抗基準劣化マップ120の正常劣化時範囲122、異常劣化時範囲124、正常劣化済範囲126、異常劣化済範囲128等を画定して、新たな内部抵抗基準劣化マップ120を生成することもできる。同様にして、新たな基準活性マップ140や新たな容量基準劣化マップ180を生成することもできる。このようにして作成される判別基準データは、様々な使用環境にある二次電池18群の多数の事例が反映されており、これらの判別基準データを用いることにより、二次電池18群の劣化をより正確に判別することが可能となる。
判別基準算定部224によって生成された内部抵抗基準劣化マップ120や、基準活性マップ140や充放電容量基準劣化マップ180等の判別基準データは、インターネット204を介してバッテリチェックシステム2群に配信される。バッテリチェックシステム2群は、記憶部80に記憶している判別基準データ86を、配信された新たな判別基準データへと更新する。
【0057】
電池パック10の使用方法の一つとして、電動工具を連続的に駆動するために複数の電池パック10を用意し、一つの電池パック10の充電電力を使い切ると、充電済みの他の電池パック10に取替えて作業を続けるという使用方法がある。充電電力を使い切った電池パック10は、直ちに充電を開始して次の使用に備える。この使用方法は、例えば工場の生産ライン等で多く採用されている。この使用方法において、用意すべき電池パック10の数を決定するためには、作業量や、電動工具の数や、一つの電池パック10で作業する時間や、電池パック10の充電に必要な時間等のパラメータを併せて計算する必要がある。用意した電池パック10の数が少ないと、各電池パック10は使用される時間が長くなり、電池パック10の二次電池18群は過放電されやすく、電動工具の出力も安定しなくなる。用意した電池パック10の数が多い場合では、各電池パック10は使用される時間が短くなり、二次電池18群が充分に放電しない状態で充電が開始されて、二次電池18群が不活性状態になり易くなる。用意すべき電池パック10の数を正しく求めることは困難であり、また用意した電池パック10の数が正しいのか否かを判断することも困難である。用意すべき電池パック10の数を正しく求めることができなければ、電池パック10の使用者は電池パック10を有効に利用することができない。その結果、電池パック10の利用者は電池パック10の能力を過小に評価してしまい、電池パック10の使用者と供給者との間の信頼関係に影響を与え、電池産業の健全な成長が阻害されてしまう。
【0058】
バッテリチェックネットワーク200は、上記の問題にも有用である。この問題を解決するためには、電池パック10に詳しい者(供給者等)がアクセス可能なホストコンピュータ212と、電池パック10が使用されている現場に配備されたバッテリチェックシステム2群によって、バッテリチェックネットワーク200を構築するとよい。
同一の使用環境で多数の電池パック10群を使用する使用者が、電池パック10の劣化の進行速度が早いと感じ、バッテリチェックシステム2によって電池パック10群を診断したところ、電池パック10群が共通して劣化の進行が異常であると診断されたとする。同一の条件下で使用される多数の電池パックが同様に診断される場合、電池パック10自体の異常に起因するものではなく、電池パック10群の使用方法に起因するものと疑われる。しかしながら、電池パック10に対して使用者が持っている知識では、その使用方法の問題点を抽出して、使用方法を改善することは困難である。
バッテリチェックネットワーク200では、バッテリチェックシステム2で診断した電池パック10の診断情報が、ホストコンピュータ212に送信される。このとき、図12に示したように、電池パック10群について、使用者(図中161)や、電動工具等の形式(図中162)や、生産ロットナンバ(図中163)や、購入年月日(図中164)等の情報も入力しておくとよい。また、図中の165、166のコメントを入力する欄には、電動工具の台数と電池パック10の台数の関係や、作業内容や作業時間等を入力しておくとよい。診断情報はインターネットを介してリアルタイムに送信することもでき、電池パック10群自体を送付する必要はない。
【0059】
電池パック10の供給者等は、送信された電池パック10群の診断情報から、電池パック10群の使用方法を推定することができる。例えば、電池パック10群の残容量履歴データから電池パック10がよく過放電されていることが確認されれば、用意された電池パック10群の数が、用意すべき数に対して少ない状態で使用されていると推定することができる。あるいは、電池パック10群に総じて不活性状態の傾向が見られる場合には、用意された電池パック10群の数が、用意すべき数に対して多い状態で使用されていると推定することができる。これらの推定は、送信された他の診断情報、例えば電池パック10の形式と電動工具の形式との対応や、作業内容や作業時間等によって裏付けることができる。電池パック10の供給者等は、電池パックの使用者に対して、電池パック10の使用形態の改善案として、電池パック10群の増減や電動工具の変更等を提案することができる。このように、バッテリチェックネットワーク200を用いることにより、電池パック10群の使用者は電池パック10の供給者等から電池パック10群の使用方法の診断を受けることができる。また、電池パック10の供給者等は電池パック10群の使用者に電池パック10の使用方法の改善案を提案することができる。電池パック10群の使用者は、電池パック10の供給者等の診断に基づいて電池パック10群の使用形態を改善した後に、バッテリチェックシステムによって再び電池パック10群の診断を行い、その診断情報を電池パック10の供給者に送信する。電池パック10の供給者は、受信した診断情報から、提案した改善案の効果を確認することができる。それにより、電池パック10の使用者と供給者との間の信頼関係が築きあげられて、電池産業の健全な成長が促進されることとなる。
【0060】
上記で説明したバッテリチェックネットワーク200は、以下に説明する事例についても有用である。
電池パック10の充電処理の態様は、EEPROM21に記憶されている充電特性データに基づいて行われる。この充電特性データは、多数回の充放電サイクルに亘って二次電池18群の能力が維持されるように、二次電池18群の特性等に基づいて充電電流やリフレッシュ処理の必要頻度が定められている。
しかしながら、電池パック10が使用される形態は各個体ごとに様々であり、EEPROM21が記述している充電特性データが、各電池パック10の二次電池18群に最適であるとは限らない。例えば、充分に放電された後に満充電の状態まで充電するという充放電サイクルで使用されている電池パック10は、不活性状態になりにくいので、リフレッシュ処理をあまり必要としない。このような電池パック10では、リフレッシュ処理の頻度を少なくした方が、二次電池18群の劣化を抑制することができる。特に、リフレッシュ処理には時間を要するので、リフレッシュ処理の頻度を減らしたいと要望する使用者も多い。あるいは、二次電池18群の劣化の進行速度が多少速くなっても短時間で充電を完了したいと要望する使用者もいる。このように、電池パック10に要求される充電処理に関する特性は、二次電池18群の特性のみならず、使用形態に応じて各個体毎に異なることも多い。しかしながら従来は、多様な使用形態に対して最大公約数となるような充電特性データが、すべての電池パック10に画一的に規定されていた。
【0061】
電池パック10の使用者は、電池パック10の充電処理の規定を修正したい場合、その電池パック10をバッテリチェックシステム2によって診断する。このとき、図12に示したように、電池パック10について、所有者(図中161)や、電動工具等の形式(図中162)や、生産ロットナンバ(図中163)や、購入年月日(図中164)等の情報を入力する。また、図中の165、166のコメントを入力する欄には、電池パック10の使用形態や電池パック10に要望する特性等を入力する。例えば「リフレッシュ処理の頻度を減らしたい」等と入力する。これらの電池パック10の診断情報は、ホストコンピュータ212に送信される。診断情報はインターネットを介して送信されるので、遠隔地にあるホストコンピュータ212にもリアルタイムに送信される。電池パック10自体を送付する必要はない。
【0062】
電池パック10の供給者等は、ホストコンピュータ212に送信された電池パック10の診断情報から、電池パック10の充電特性データを知ることができる。また、電池パック10の劣化状態や使用形態等を知ることができる。また、使用者が電池パック10に対して要望している特性を知ることができる。
電池パック10の供給者等は、電池パック10の充電特性データを、電池パック10の実際の劣化状態や使用方法と併せて診断し、その電池パック10にふさわしいのか否かを判別する。例えば、二次電池18群に不活性状態の兆候が見られず、また過放電の発生頻度が高いような場合では、リフレッシュ処理の頻度を減少させてもよいと診断することができる。使用者の要望である「リフレッシュ処理の頻度を減らしたい」に対し、そのように処置することが、その電池パック10にとって適切であるか否かを確認することができる。電池パック10の供給者等は、リフレッシュ処理の頻度をより少なく規定する充電処理データを、ホストコンピュータ212からバッテリチェックシステム2へ送信する。バッテリチェックシステム2が受信した新たな充電特性データは、チェックアダプタ50の制御部61に教示され、制御部61は電池パック10のEEPROM21の充電特性データを新たな充電特性データへと更新する。充電特性データが更新された電池パック10では、リフレッシュ処理を要求する頻度が減少する。
【0063】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
本実施例では、二次電池18群の使用量を示す指標として累積の充電回数を採用しているが、例えば累積放電時間、累積充電時間、累積放電電力量、累積充電電力量等を採用することもできる。実施する形態に併せて自由に採用することができ、それに応じて本実施例から設計変更すればよい。
本実施例では、二次電池18群の劣化の進行を示す指標として内部抵抗や充放電容量を採用しているが、これに限定されるものではない。二次電池の劣化の進行に追従して変化する指標を自由に採用することができ、それに応じて本実施例から設計変更すればよい。
本実施例で採用している充電回数、内部抵抗、充放電容量等の検出方法は例示に過ぎず、それらの指標を他の方法で検出するようにしてもよい。
本実施例のバッテリチェックネットワークでは、インターネットを利用しているが、他のコンピュータネットワークを採用することもできる。電子情報の通信技術は今後の発展が期待されている分野であり、新たに開発される通信技術を採用することもできる。
本実施例のバッテリチェックシステムでは、充電器と電池パック10の間に挿入できるアダプタを有する形態を採用しているが、これに限定されるものではない。充電器等に接続することなく、同様のバッテリチェックシステムを構成することもできる。
【0064】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0065】
2・・バッテリチェックシステム
10・・電池パック
18・・二次電池
21・・EEPROM
30・・充電器
50・・チェックアダプタ
70・・コンピュータ装置
74・・ディスプレイ
120・・内部抵抗基準劣化マップ
140・・基準活性マップ
180・・充放電容量基準劣化データ
200・・バッテリチェックネットワーク
204・・インターネット
212・・ホストコンピュータ
216・・診断情報集積部
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電と放電のサイクルを繰返すことが可能な二次電池を診断する技術と、二次電池の診断に有用な情報を収集する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やノートパソコンやコードレス電動機器等の多くの電気機器の電源に二次電池が利用されている。これらの電気機器の動作が不調な場合に、電気機器側に問題があるのか二次電池側に問題があるのかを知る必要があり、二次電池を診断する装置が開発されている。
二次電池は、劣化が進行すると内部抵抗が急激に進行する特性をもっており、内部抵抗を測定して基準値と比較することによって、劣化が進んだのか否かを診断する装置が開発されている。二次電池の充放電容量も、劣化が進行すると急激に低下する特性をもっており、充放電容量を測定して劣化が進んだか否かを診断する装置も開発されている。充電装置に充電回数をカウントする機能を付加し、所定の回数だけ充電した電池を充電する際にその旨を報知することによって劣化の進行が進んでいることを知らせる技術も開発されている。充電装置で充電回数をカウントする場合、同一の充電装置で2以上の電池を充電することがあることから、電池にIDを付与しておき、電池毎に充電回数をカウントする技術も知られている。
特許文献1〜3に、上記の診断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−223164
【特許文献2】特開平11−233162
【特許文献3】特開平10−66266
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の電池診断装置は、電池が劣化したのか否かの結果を診断できるにすぎない。二次電池は、使用すれば劣化する性質を持っており、劣化していくこと自体は避けられない。しかしながら、電池の使用の仕方によって、使用量に比して急激に劣化することがある。過放電を繰返せば電池は急激に劣化する。あまりに高速に充電すれば電池温度が過熱されて電池は急激に劣化する。従来の技術では、電池が劣化したのか否かの結果を診断できるにすぎず、それが正常に劣化した結果であって避けられないものなのか、使用方法等が不適切であって異常に急速に劣化したものなのかを判断するのに有益な情報が得られない。正常に劣化したものなのか異常に劣化したものなのかを判断するのに有益な情報が得られなければ、使用方法を改善する必要があるのか、使用方法を改善すれば寿命を延ばせるのか、正常に劣化しており電池を交換する他はないのか等を客観的に判断することができない。電池ユーザは電池が劣化すれば電池の品質に問題があったと主張しがちであり、正常に劣化したものなのか異常に劣化したものなのかを判断するのに有益な情報が得られなければ、正常な電池まで品質に問題があったとされかねず、それでは電池産業の健全な成長が阻害されてしまう。
本発明では、二次電池の劣化が正常劣化なのか異常劣化なのかを判別して診断する技術を提供する。また、そのために有益な情報が得られる情報収集装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によって具現化される一つの電池診断装置は、二次電池の劣化が正常劣化なのか異常劣化なのかを判別する装置であり、二次電池の劣化指標を測定する装置と、二次電池の使用量を把握する装置と、測定された劣化指標が劣化基準値を超えた時の使用量を使用基準量と比較する装置を備えている。
ここで劣化指標が劣化基準値を超えるとは、劣化基準値が劣化指標の下限値を定めている場合には、劣化指標が劣化基準値を下回ることを意味する。また、劣化基準値が劣化指標の上限値を定めている場合には、劣化指標が劣化基準値を上回ることを意味する。
【0006】
二次電池の劣化とともに進行する劣化指標を測定し、それを劣化基準値と比較すれば、二次電池が劣化したか否かを判別することができる。ここまでは従来の診断技術と同一であり、様々な劣化指標を採用することができる。
この装置では、さらに二次電池の使用量を把握し、二次電池が劣化したと判別された時の使用量を使用基準量と比較する。使用基準量とは、正常な二次電池が正常に使用されているときに、劣化指標が劣化基準値を超えることが予定されている使用量である。二次電池が使用基準量よりも少ない使用量で劣化したのであれば、二次電池の使用方法等に問題があったことを知ることができ、使用方法を見直すことによって新たな二次電池を無用に消耗させてしまうことを避けることができる。二次電池が劣化していてもそれが使用基準量を超えてから劣化したものであれば、二次電池の品質に問題がなく、使用方法等にも問題なく、正常に使用されて正常に劣化したことを知ることができる。
この装置によって劣化した二次電池を診断することにより、正常劣化したものなのか異常劣化したものなのかを知ることができ、必要な対策を講じること等が可能となる。
【0007】
本発明は、劣化した二次電池が正常劣化したものなのか異常劣化したものなのかの判別に利用できるだけでなく、現に使用されている電池が正常に劣化しているのか異常に劣化しているのかを判別するのにも利用できる。すなわち、正常に劣化が進行しているのか異常に劣化が進行しているのかを判別することができる。
これができれば、そのままの使用方法を継続してもよいのか、使用方法等を改善しないと異常に短期に劣化してしまうことになるのかを知ることができる。
このために開発された本発明の電池診断装置は、二次電池の劣化指標を測定する装置と、二次電池の使用量を把握する装置と、劣化指標と使用量の二次元マップに正常劣化時範囲と異常劣化時範囲を区分している基準劣化マップを記憶している装置と、測定された劣化指標と把握された使用量が、前記基準劣化マップの正常劣化時範囲と異常劣化時範囲のいずれにあるのかを判別する装置を備えている。
【0008】
本発明者の研究により、劣化指標と使用量の二次元マップに、測定された劣化指標と把握された使用量の対の値をプロットすると、正常な二次電池が正常に使用されているときには、所定の範囲内に収まることが確認された。その一方、二次電池が不適切な使用方法で使用されているときには、劣化指標と使用量の対の値が、前記した範囲とは別の範囲にプロットされることが確認された。
この装置では、二次電池の劣化指標と使用量を対にして検出し、その対の値が、正常劣化時範囲と異常劣化時範囲のいずれにあるのかを判別する。それにより、使用中の二次電池が、正常に劣化しているのか異常に劣化しているのかを判別することが可能となる。二次電池が異常に劣化しているのであれば、例えば二次電池の使用の仕方を改善することによって、二次電池を無用に劣化させてしまうことも避けることができる。
この装置によって二次電池を診断することにより、使用中の二次電池の劣化が正常に進行しているのか異常に進行しているのかを知ることができ、必要な処置を講ずることが可能となる。
【0009】
上記の診断装置では、内部抵抗と充放電容量のいずれかを劣化指標とすることが好ましい。また、累積放電時間、累積充電時間、累積放電電力量、累積充電電力量、累積充電回数のいずれかを使用量とすることが好ましい。
二次電池の内部抵抗は、二次電池の劣化の進行によく追従して増大するために、好適な劣化指標とすることができる。二次電池の充放電容量も、二次電池の劣化の進行によく追従して低下するために、好適な劣化指標とすることができる。
また二次電池は、累積放電時間や累積充電時間や累積放電電力量や累積充電電力量や累積充電回数に追従して劣化が進行する。累積放電時間や累積充電時間や累積放電電力量や累積充電電力量や累積充電回数によって使用量とすることができる。
内部抵抗や充放電容量によって劣化の進行を測定し、累積放電時間や累積充電時間や累積放電電力量や累積充電電力量や累積充電回数によって使用量を測定すると、二次電池を正確に診断することができる。実際に採用する劣化指標や使用量は、上記の中から、二次電池の使用環境等に応じて選択するとよい。
【0010】
使用量は、累積放電時間、累積充電時間、累積放電電力量、累積充電電力量、累積充電回数のいずれかを、過放電および/または急速充電の発生頻度に基づいて修正したものであることが好ましい。
二次電池は、過放電されたり急速充電されたりするとより劣化が進行する。そのことから、過放電や急速充電の発生頻度が多い二次電池では、実際の使用量よりも多く使用されたと評価することが好ましい。それにより、二次電池をより正確に診断することができるようになる。
【0011】
二次電池は、僅かに放電してから充電するサイクルを繰返すと、充放電容量が低下する性質を持っている。しかしながら、この充放電容量の低下は、強制的に放電させてから充電すると(いわゆるリフレッシュ処理すると)大きな値に回復することが知られている。従って、電池が劣化して充放電容量が低下するのとは区別することができる。リフレッシュ処理すれば充放電容量が回復する状態で充放電容量が一時的に低下していることを、電池が不活性となっているという。
二次電池を診断する場合、電池が活性状態なのか不活性状態なのかを区分して診断する必要がある。二次電池が不活性状態となっていることを知ることができれば、リフレッシュ処理を行って充放電容量を回復させることもできる。活性状態の電池が劣化していることを知ることができれば、二次電池の使用の仕方が不適切であったこと等を知ることができ、使用方法の改善を図ることができる。本発明はこの要求に対しても有用であり、本発明を利用して下記の電池診断装置を具現化することができる。
【0012】
この目的のために創作された本発明の電池診断装置は、二次電池が活性状態なのか不活性状態なのかを判別する装置であり、二次電池の第1劣化指標を測定する装置と、二次電池の第2劣化指標を測定する装置と、第1劣化指標と第2劣化指標の二次元マップに活性範囲と不活性範囲を区分している基準活性マップを記憶している装置と、測定された第1劣化指標と第2劣化指標が、前記基準活性マップの活性範囲と不活性範囲のいずれにあるのかを判別する装置を備えている。
【0013】
本発明者の研究により、第1劣化指標と第2劣化指標の二次元マップに、測定された第1劣化指標と第2劣化指標の対の値をプロットすると、二次電池が活性状態であれば所定の範囲内にプロットされることが判明した。一方、二次電池が不活性状態であれば、それとは別の範囲に第1劣化指標と第2劣化指標の対の値がプロットされることが判明した。
この装置では、二次電池の第1劣化指標と第2劣化指標を対にして検出し、その対の値が活性範囲と不活性範囲のいずれにあるのかを判別する。それにより、二次電池が活性状態であるのか不活性状態になっているのかを判別することが可能となる。二次電池が不活性状態になっているのであれば、リフレッシュ処理を行って充放電容量を回復させることができ、二次電池の使用の仕方を見直すことによって再度不活性状態となることを避けるようにすることもできる。
この装置によって二次電池を診断することにより、二次電池が活性状態なのか不活性状態となっているのかを知ることができる。
【0014】
上記の診断装置では、第1劣化指標が二次電池の内部抵抗であり、第2劣化指標が二次電池の充放電容量であることが好ましい。
不活性状態となっている二次電池では、充放電容量は低下するが、内部抵抗はあまり増大しない。それに対し、活性状態で劣化している電池では、充放電容量が低下するのに伴って内部抵抗も増大している。このことから、二次電池の内部抵抗と二次電池の充放電容量の二次元マップを利用すると、活性範囲と不活性範囲を正確に区分することができ、二次電池が活性状態なのか不活性状態となっているのかを正確に知ることができる。
【0015】
本発明の技術は、下記の有用なアダプタに具現化することできる。このアダプタは、充電装置と二次電池の間に挿入して用いるときに充電装置と複合し、二次電池が活性状態なのか不活性状態なのかを判別する電池診断装置を構成する。このアダプタは、充電装置からの充電電流をアダプタを通過させて電池に給電する給電回路と、二次電池からの電流を放電する回路と、給電回路と放電回路のいずれか一方を有効にする切換回路と、判別装置で不活性範囲にあることが判別されたときに放電回路が有効な状態となるように切換回路を切換える手段を備えている。
ここでいう充電装置とは、二次電池の通常の使用において、二次電池を充電するために利用されている充電装置を含む。
【0016】
このアダプタを充電装置と二次電池の間に挿入すると、二次電池が活性状態なのか不活性状態となっているのかを判別すると共に、二次電池が不活性状態となっているときには、二次電池が強制的に放電される。不活性状態と判別されて強制放電された二次電池は、満充電まで充電されることによって低下していた充放電容量が回復する。
二次電池の充放電容量が低下しているときに、二次電池をこのアダプタを介して充電装置に接続すると、活性状態で劣化しているのか不活性状態となっているのかを判別できると共に、二次電池が不活性状態となっているときには、リフレッシュ処理することによって一時的に低下している充放電容量を回復することができる。
【0017】
二次電池は様々な環境で用いられる。急速充電を繰返すユーザもいれば、使用頻度が少ないユーザもいる。軽負荷作業を長持間続けるユーザもいれば、重負荷作業を断続的に繰返すユーザもいる。最後の最後まで電池を使用して過放電を繰返すユーザもいる。
それぞれの作業環境に対してふさわしい利用方法が存在するはずであるが、それを知ることは容易でない。多くの事例を収集し、検討してみなければわからないことが多く残されている。多くの診断情報を集約して診断のための知識をさらに蓄積することが必要とされている。
上記の要望に対して本発明では、二次電池の診断情報収集装置を提供する。この診断情報収集装置は、二次電池を診断して取得した診断情報を収集する装置であり、二次電池を診断して診断情報を取得する複数の端末診断装置群と、診断情報を累積して記憶する情報集積装置と、端末診断装置群と情報集積装置をコンピュータネットワークを介して接続する通信手段を備えている。
各端末診断装置は、本発明で創作された電池診断装置またはアダプタで構成することができる。通信手段は、端末診断装置群が取得した診断情報を情報集積装置に送信することを特徴とする。
この診断情報収集装置では、電池診断装置で取得した二次電池の診断情報が、コンピュータネットワークを介して情報集積装置に送信され、二次電池の診断情報が情報集積装置に累積記憶されていく。情報集積装置には多くの診断情報が集積され、様々な環境で使用された二次電池の診断情報が蓄積される。情報集積装置に蓄積された診断情報を解析することにより、二次電池を適切に診断するための知識をさらに発展させることができる。
【0018】
二次電池の劣化状態を判別するのに必要な使用量や劣化指標の基準は、二次電池の仕様や想定される使用方法等に基づいた計算式や、実際のテスト結果等から算定することができる。しかしながら、劣化に関わる多くの要素を計算式に忠実に反映させることは極めて困難である。また、実際のテスト結果に基づいて基準を定める場合でも、得られるサンプル数には限界があり、限られたサンプル数では推測値が得られるに過ぎない。二次電池の劣化状態をより正確に判別する技術が必要とされている。
上記の課題は、本発明が提供する診断情報収集装置の情報集積装置に累積記憶された診断情報から使用量と劣化指標の関係を抽出し、劣化基準値、使用基準量、正常劣化時範囲、異常劣化時範囲、活性範囲、不活性範囲の少なくとも1つの判別基準を算定する判別基準算定手段を付加することによって解決される。
情報集積装置に蓄積された診断情報は、様々な環境にある二次電池の診断情報から構成される。累積記憶された多数の診断情報から、使用量と劣化指標の関係を抽出することにより、二次電池の劣化状態を判別するための使用量や劣化指標等の基準をより正確に算定することができる。
通信装置は、判別基準算定手段が算定した判別基準を端末診断装置群に送信する。端末診断装置群はより正確な判別基準を得ることができ、端末診断装置群では二次電池の劣化状態をより正確に判別することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、二次電池の劣化が正常劣化なのか異常劣化なのかを判別して診断することが可能となる。また、そのために有益な情報が得られる情報収集装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】バッテリチェックシステムを示す図
【図2】電池パックを示す図
【図3】充電器を示す図
【図4】チェックアダプタを示す図
【図5】電池パックが充電器に装着されたときの電気構成を示す図
【図6】電池パックとチェックアダプタと充電器の電気構成を示す図
【図7】内部抵抗基準劣化マップを示す図
【図8】基準活性マップを示す図
【図9】バッテリチェックシステムの動作の流れを示すフローチャート
【図10】内部抵抗の推移から劣化進行度を推定する処理を説明する図
【図11】充放電容量基準劣化マップを示す図
【図12】ディスプレイに映し出される診断結果の表示例
【図13】ディスプレイに映し出される診断結果の表示例(使用初期品)
【図14】ディスプレイに映し出される診断結果の表示例(不活性状態)
【図15】ディスプレイに映し出される診断結果の表示例(寿命品)
【図16】ディスプレイに映し出される診断結果の表示例(故障品)
【図17】バッテリチェックネットワークの構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。最初に、以下に説明する実施例の主要な特徴を列記する。
(形態1) バッテリチェックシステムは、充電器と、充電器に装着されるチェックアダプタと、チェックアダプタと接続しているコンピュータ装置等によって構成されている。
(形態2) バッテリチェックシステムは、チェックアダプタに装着された電池パックに内蔵されている二次電池群の劣化状態を診断する。
(形態3) 電池パックは、充電回数データ、残容量履歴データ、温度履歴データ、充電特性データ、電池パックデータ等を記憶している記憶装置(例えばEEPROM)を内蔵している。
(形態4) 充電器は、電池パックの通常の使用において、電池パックを充電するための充電器である。
(形態5) チェックアダプタは、充電器と電池パックの二次電池を接続する回路と、二次電池を放電させる放電負荷と、接続回路と放電負荷のいずれか一方を有効にするリレーを有している。
(形態6) コンピュータ装置は、内部抵抗と累積充電回数の二次元マップに正常劣化時範囲と異常劣化時範囲と正常劣化済範囲と異常劣化済範囲を区分している内部抵抗基準劣化マップを記憶している。また、コンピュータ装置は、内部抵抗と充放電容量の二次元マップに活性範囲と不活性範囲を区分している基準活性マップを記憶している。
(形態7) コンピュータ装置は、電池パックの診断結果等を表示するディスプレイを有している。
(形態8) バッテリチェックシステムは、電池パックに内蔵されている記憶装置から情報を読み込むことや、電池パックに内蔵されている記憶装置に情報を書き込むことができる。バッテリチェックシステムは、診断結果を電池パックに内蔵されている記憶装置に書き込む。
(形態9) バッテリチェックシステムは、充電器に内蔵されている充電回路と、チェックアダプタに内蔵されている放電負荷によって、電池パックを完全放電したり満充電することができる。
(形態10) バッテリチェックシステムは、過去に診断した電池パックの診断情報を記憶している。診断情報は、電池パックの識別情報と共に記憶されている。
(形態11) バッテリチェックシステムは、インターネットに接続して用いられる。診断情報をインターネットを介して送信したり、内部抵抗基準劣化マップや基準活性マップ等をインターネットを介して受信することができる。
【実施例】
【0022】
(実施例1) 以下、本発明を具現化したバッテリチェックシステム2について図面を参照して説明する。図1は、本実施例のバッテリチェックシステム2の構成を示す。バッテリチェックシステム2は、電池パック10を充電する充電器30やチェックアダプタ50やコンピュータ装置70等から構成される。
図1は、充電器30にチェックアダプタ50が装着され、チェックアダプタ50とコンピュータ70が通信ケーブル100で接続された状態を示している。この状態において、電池パック10がチェックアダプタ50に装着されると、電池パック10の劣化状態が診断されて診断結果がコンピュータ70に表示される。
図2は電池パック10の外観を示す。図3は充電器30の外観を示す。図4はチェックアダプタ50の外観を示す。図5は充電器30に電池パック10が直接装着されたときの回路構成を示しており、充電器30が電池パック10を充電するときの状態を示している。図6は、充電器30にチェックアダプタ50を介して電池パック10が装着されたときの回路構成を示しており、バッテリチェックシステム2が電池パック10を診断するときの状態を示している。
【0023】
まず、図2と図5を用いて電池パック10を説明する。電池パック10は、電動工具(例えば、インパクトドライバ)用の電池パックであり、電動工具に装着されて、その電動工具の駆動源(例えば、モータ)に電力を供給する。
図2に示すように、電池パック10は略角柱状に形成された樹脂製のケーシング11を備える。ケーシング11の上端側は、電動工具(例えば、インパクトドライバ等)や充電器30やチェックアダプタ50に装着する際に相手側に嵌合可能な形状に形成されている。
また、ケーシング11の上端側には、プラス端子溝17、マイナス端子溝19およびコネクタ20が設けられている。プラス端子溝17の中には、図5に示すプラス端子18aが設けられており、マイナス端子溝19の中には図5に示すマイナス端子18bが設けられている。コネクタ20の内部には、図5に示すメモリ端子21aや温度センサ端子23aが設けられている。電池パック10が電動工具や充電器30やアダプタ50に装着されたときに、これらの端子が相手側の受電端子や出力端子と接触し得るように構成されている。
【0024】
図5に示すように、電池パック10のケーシング11内には、二次電池18群、EEPROM21、温度センサ23、電流検出部25、処理回路27が内蔵されている。
二次電池18群は、複数の二次電池18が直列に接続されている。本実施例の二次電池18群では、10個のニッケル水素電池が直列に接続されている。
二次電池18群の正極側は、電流検出部25を介してプラス端子18aと接続されている。二次電池18群の負極側はマイナス端子18bと接続されている。プラス端子18aとマイナス端子18bの端子間電圧は略12Vとなっている。
電流検出部25は、二次電池18群の充電電流の値や放電電流の値を検出し、処理回路27に教示する。処理回路27は、教示された二次電池18群の充放電電流値から、二次電池18群の残容量を経時的に演算し、EEPROM21に記述していく。
二次電池18群の近傍には、二次電池18群の温度を検出するための温度センサ23が配設されている。温度センサ23は、温度によって電気抵抗値が変化するサーミスタからなる。温度センサ23は温度センサ端子23aと接続されている。
ケーシング11内には、電子情報を記憶するEEPROM21が備えられている。EEPROM21はメモリ端子21aと接続されている。
【0025】
EEPROM21には、充電回数データや残容量履歴データや温度履歴データや充電特性データや電池パックデータや過去診断データ等が記憶されている。
充電回数データには、充電回数や満充電回数等が記述されている。充電回数とは、電池パック10がそれまでに充電された累積回数である。満充電回数とは、電池パック10が満充電の状態となるまで充電された累積回数である。充電回数と満充電回数の差は、電池パック10の充電を開始したものの、満充電の状態となる前に充電を中止した回数を示す。
残容量履歴データには、二次電池18群の残容量の履歴が記述されている。残容量履歴データは、処理回路27が二次電池18群の残容量を演算し、処理回路27がEEPROM21に記述したものである。二次電池18群が放電しているときの電流値や、二次電池18群が充電されているときの電流値は、電流検出部25によって検出される。処理回路27は、電流検出部25が検出した充放電電流値に基づいて、残容量履歴データに記述されている残容量を加減算しながら残容量の履歴を記述していく。残容量履歴データに記述されている残容量は、リフレッシュ処理等によって電池パック10を完全放電したときに、残容量値をゼロにリセットするようにしてもよい。それにより、累積された誤差を取り除くことができる。
温度履歴データには、二次電池18群の充電中の温度の履歴が記述されている。温度履歴データは、充電器30が電池パック10を充電するときに、充電器30によって更新される。二次電池18群は急速充電が行われると大きく発熱するので、充電中の二次電池の温度が高ければ、二次電池18群が急速充電されたと推定することができる。温度履歴データには、充電中における二次電池18群の温度値をすべて記述してもよいし、充電中の最高温度値や最低温度値等を抽出して記述してもよい。本実施例では、充電中における二次電池18群の温度値がすべて記述されている。
【0026】
充電特性データには、電池パック10の充電に関する特性が記述されている。例えば、電池パック10の二次電池18群にふさわしい充電電流や、二次電池18群にふさわしいリフレッシュ処理の頻度等が記述されている。
電池パックデータには、例えば電池パック10の形式が記述されている。例えば、電池パック10の形式とは、例えば電池パック10が内蔵する二次電池18群の種別や公称電圧や公称充放電容量等である。また、電池パック10を他の電池パックと識別する識別子等が記述されている。
過去診断データには、バッテリチェックシステム2が電池パック10を過去に診断したときの診断に関わる情報が記述されている。過去診断データには、過去の診断時の日時や、そのときの二次電池18群の内部抵抗値や充放電容量や充電回数や、その診断時におけるバッテリチェックシステム2の診断結果等が記述されている。
【0027】
次に、図3と図5を用いて充電器30を説明する。図1に示したように、充電器30にはアダプタ50を装着することができると共に、図3に示すように電池パック10を直接装着することもできる。充電器30は、バッテリチェックシステム2のみに使用されるものではなく、電池パック10の通常の使用において、電池パック10を充電する充電器でもある。
図3に示すように、充電器30は樹脂製の筐体31を有する。筐体31の上端面には、電池パック10やチェックアダプタ50を装着可能な嵌合部32が一体に成形されている。また、筐体31には、充電器30の動作状況を示す状態表示ランプ等の種々のインジケータ36が設けられている。
嵌合部32には、電池パック10やアダプタ50を案内可能なガイド33、34が設けられている。嵌合部32のガイド33とガイド34の間には、図5に示すプラス出力端子42aとマイナス出力端子42bが設けられている。また、電池パック10のコネクタ20に接続可能なコネクタ(図示せず)が設けられており、そのコネクタには図5に示す端子46a、48aが臨んでいる。
【0028】
図5に示すように、充電器30の制御回路は、主に、電源回路42、充電電流制御部44、制御部46、電圧検出部47、温度検出部48、記憶部49等から構成される。
電源回路42は、電池パック10の二次電池18群を充電可能な出力を有している。温度検出部48は、電池パック10の温度センサ23の出力から、二次電池18群の温度を検出することができる。電圧検出部47は、二次電池18群の電圧を検出することができる。記憶部49は所定のマップ等の電流値制御情報を記憶するものである。
【0029】
なお、上述した電源回路42、充電電流制御部44、制御部46、電圧検出部47、温度検出部48、記憶部49等は、本願出願人による先の特許出願(特開2000−278875号)に開示する充電器の構成と実質的に同様であり、二次電池18群の温度とその変化率の対の値から充電電流を決定して充電を行う構成である。記憶部49には、二次電池の温度とその変化率の対の値に対応付けて充電電流が記述されているマップが記憶されている。記憶部49には、複数の充電電流マップが記憶されており、使用されるマップは充電する二次電池の特性等に基づいて決定される。
【0030】
図5に示すように、充電器30の嵌合部32に電池パック10が装着されると、電池パック10が備える端子18a、18b、21a、23aと、充電器30が備える端子42a、42b、46a、48aがそれぞれ電気的に接続される。
制御部46は、電池パック10のEEPROM21から充電特性データを読み込み、電源回路42、充電電流制御部44、電圧検出部47、温度検出部48等を所定のアルゴリズムによって制御し、電池パック10内の二次電池18群を充電する。
充電を開始すると、制御部46は電池パック10のEEPROM21に記憶されている充電回数データの充電回数を1加算するように書換える。
充電中では、制御部46は二次電池18群の温度を監視し、電池パック10のEEPROM21に記憶されている温度履歴データを記述していく。
充電が完了すると、充電を停止しその旨をランプ等により告知する。制御部46は、電池パック10のEEPROM21に記憶されている充電回数データの満充電回数を1加算するよう書換える。
なお、充電器30にチェックアダプタ50が装着されたときは、後述するようにチェックアダプタ50からの制御により、充電等の各種動作を行い得るように構成されている。
【0031】
次に、図4および図6を用いてチェックアダプタ50の構成を説明する。図4に示すように、チェックアダプタ50は樹脂製のケーシング51を有する。ケーシング51の下面には、充電器30の嵌合部32に嵌合可能な嵌合部52が形成されている。ケーシング51の上面には、電池パック10の上端面が嵌合可能な嵌合部54が形成されている。
また、ケーシング51の上面には、種々のランプから構成される表示部64が設けられている。表示部64には、充電器30の動作状態やチェックアダプタ50の動作状態等が表示される。
【0032】
ケーシング51の下面の嵌合部52には、図6に示すプラス受電端子52a、マイナス受電端子52bが設けられている。また、充電器30のコネクタ20と接続するためのコネクタ(図示せず)が設けられており、そのコネクタには図6に示す端子61aが臨んでいる。
ケーシング51の上面の嵌合部54には、図6に示すプラス出力端子58a、マイナス出力端子58bが設けられている。また、電池パックのコネクタ20と接続するためのコネクタ(図示せず)が設けられており、そのコネクタには図6に示す端子61b、67aが臨んでいる。
ケーシング51の後背面には、図6に示す通信端子66が設けられている。図6に示すように、通信端子66には通信ケーブル100が接続されており、チェックアダプタ50とコンピュータ70が通信ケーブル100を介して接続されている。
【0033】
図6に示すように、チェックアダプタ50の制御回路は、主に、制御部61と、放電負荷62と、電圧検出部63と、表示部64と、温度検出部67と、リレー68と、そのリレー68を制御する充放電切換部65等から構成される。この制御回路は、充電器30側から電力の供給を受けて動作するように構成されている。
【0034】
放電負荷62は、二次電池18群を放電するときの負荷となる抵抗等から構成されている。放電負荷62は負荷抵抗値を調節することにより、制御部61の指令に基づいて放電電流を調節する。
電圧検出部63は、二次電池18群の電圧を検出できるように構成されている。電圧検出部63は、二次電池18群の電圧を検出して制御部61に教示する。
充放電切換部65は、制御部61の指令に基づいてリレー68を切換える。それにより、電池パック10の二次電池18群には、充電器30の電源回路42又はチェックアダプタ50の放電負荷62が切換えられて接続される。
温度検出部67は、電池パック10の温度センサ23の出力から、二次電池18群の温度を検出することができる。温度検出部67は、二次電池18群の温度を検出して制御部61に教示する。
チェックアダプタ50の制御部61は通信機能を有し、充電器30の制御部46やコンピュータ70との間で情報通信を行う。また、制御部61は電池パック10のEEPROM21から情報を読み込んだり、EEPROM21へ情報を書き込んだりすることができる。
【0035】
図6に示すように、充電器30にチェックアダプタ50を装着すると、充電器30が備える端子42a、42b、46aと、チェックアダプタ50が備える端子52a、52b、61aがそれぞれ電気的に接続される。また、電池パック10をチェックアダプタ50に装着すると、電池パック10が備える端子18a、18b、21a、23aと、チェックアダプタ50が備える端子58a、58b、61b、67aがそれぞれ電気的に接続される。
充電器30とチェックアダプタ50と電池パック10が順に接続されると、チェックアダプタ50の制御部61は、電池パック10のEEPROM21に記憶されている情報を読み込み、また、充電器30の制御部46や放電負荷62や充放電切換部65等に指令を与え、二次電池18群を充電したり放電させたりすることができる。例えば、二次電池18群を完全に放電させた後に満充電となるまで充電することもでき、いわゆる二次電池のリフレッシュ処理を行うことができる。
【0036】
次に、図6を用いてコンピュータ装置70の構成を説明する。コンピュータ装置70は、コンピュータ本体72、ディスプレイ74、入力装置76等から構成されている。
図6に示すように、コンピュータ本体72には、各種の処理に使用するデータ等を記憶している記憶部80と、電池パック10の診断に係る処理を行う診断処理部90と、二次電池18群の充放電容量を検出する容量検出部92と、二次電池18群の内部抵抗を算出する内部抵抗検出部94と、インターネット接続部96等が構成されている。記憶部80、診断処理部90、容量検出部92、内部抵抗検出部94、インターネット接続部96等は、コンピュータ本体72のハードウェアやソフトウェア等によって構成されている。
【0037】
記憶部80には判別基準データ82が記憶されている。判別基準データ82には、図7に示す内部抵抗基準劣化マップ120、図8に示す基準活性マップ140等が記述されている。
図7に示すように、内部抵抗基準劣化マップ120は、横軸が充電回数であり、縦軸が内部抵抗である二次元マップである。内部抵抗基準劣化マップ120では、充電回数と内部抵抗の関係から、正常劣化時範囲122と異常劣化時範囲124と正常劣化済範囲126と異常劣化済範囲128が定められている。正常劣化時範囲122と異常劣化時範囲124を区分している曲線130は、電池パック10が正常に製造されて正常に使用されている場合に、劣化していく二次電池18群の充電回数と内部抵抗の標準的関係を示している。図中の内部抵抗値Rzは、二次電池18群の内部抵抗がこの内部抵抗値Rzよりも増大したときに、二次電池18群が劣化したと判断される劣化基準抵抗値Rzである。また、充電回数Nzは、二次電池18群が正常に使用されたときに、内部抵抗がこの劣化基準抵抗値Rzよりも増大することが予定されている基準充電回数Nzである。
正常劣化時範囲122は、充電回数に対する内部抵抗が標準値以下の範囲であり、二次電池18群が充電回数に追従して正常に劣化していることを示す。異常劣化時範囲124は、充電回数に対する内部抵抗が標準値よりも高い範囲であり、二次電池18群が異常に劣化していることを示す。正常劣化済範囲126は、充電回数が基準充電回数Nz回以上であって内部抵抗が劣化基準抵抗値Rz以上の範囲であり、二次電池18群が正常に劣化しながら使用不能となるまで劣化したことを示す。異常劣化済範囲128は、充電回数が基準充電回数Nz回未満であって内部抵抗が劣化基準抵抗値Rz以上の範囲であり、二次電池18群が異常に劣化しながら使用不能となるまで劣化したことを示す。
【0038】
図8に示すように、基準活性マップ140は、横軸が充放電容量であり、縦軸が内部抵抗である二次元マップである。基準活性マップ140では、二次電池18群の充放電容量と内部抵抗の関係から、活性範囲142と不活性範囲144が定められている。不活性範囲144は、充放電容量が少なくて内部抵抗が低い範囲に定められている。
劣化の進んでいない二次電池は、充放電容量が多く内部抵抗も低い。一方、劣化の進行した二次電池は、充放電容量が低下しており、内部抵抗も増大している。それらに対し、不活性状態となっている二次電池18群では、充放電容量が低下しているが、内部抵抗はあまり増大していない。このことから、充放電容量が低下しているが、内部抵抗はあまり増大していない二次電池は、不活性状態となっていると判別することができる。このことから、図8に示すように、横軸が充放電容量であり縦軸が内部抵抗である二次元マップでは、充放電容量が少なくて内部抵抗が低い範囲を、不活性範囲と定めることができる。図中の充放電容量値Qzは、二次電池18群の充放電容量がこの充放電容量値Qzよりも減少したときに、二次電池18群が劣化したと判断される劣化基準容量値Qzである。図7を用いて説明したように、劣化した二次電池18群では、内部抵抗が劣化基準抵抗値Rzまで増大している。即ち、二次電池18群の充放電容量が劣化基準容量値Qzまで減少した時には、二次電池18群の内部抵抗は劣化基準値Rzまで増大すると予定されている。またその時の充電回数は、基準充電回数Nz回となることが予定されている。
【0039】
記憶部80には、診断情報累積データ86が記憶されている。診断情報累積データ86には、これまでにバッテリチェックシステム2が診断した電池パック10の診断情報が累積して記述されている。診断情報累積データ86には、例えば電池パック10のEEPROM21から読み込んだデータや、診断時に算出したデータや、利用者によって入力されたデータ等が記述されている。
容量検出部92は、二次電池18群の充放電容量を検出することができるように構成されている。詳しくは、容量検出部92は、電池パック10のEEPROM21に記憶されている残容量履歴データから最新の極大値を抽出することによって、二次電池18群の充放電容量を検出する。
内部抵抗検出部94は、二次電池18群が充放電されたときの二次電池18群の電圧値から、二次電池18群の内部抵抗の値を算出することができる。例えば内部抵抗検出部94は、二次電池18群の非通電時の電圧値と、所定電流で放電させたときの電圧値から、内部抵抗を算出することができる。
インターネット接続部96は、コンピュータ装置70がインターネットに接続することを可能にする。コンピュータ装置10は、インターネット接続部96によってインターネットに接続し、外部のコンピュータ装置等と電子情報を授受することができる。
【0040】
以上、本実施例のバッテリチェックシステム2の構成について説明した。次に、バッテリチェックシステム2の動作の流れについて、図9に示すフローチャートを参照して説明する。
ステップS2では、電池パック10がチェックアダプタ50に装着されるまで待機状態となる。電池パック10が装着されたことは、例えば電圧検出部63が二次電池18群の電圧を検出することによって認識することができる。
ステップS4では、チェックアダプタ50の制御部61が、電池パック10のEEPROM21の情報を読み込む。制御部61は、読み込んだEEPROM21の情報を、コンピュータ装置70の診断処理部90に教示する。チェックアダプタ50の制御部61やコンピュータ装置70の診断処理部90は、電池パック10の充電回数データや残容量履歴データや温度履歴データや充電特性データや電池パックデータから、例えば二次電池18群の充電回数等を検出する。
ステップS6では、二次電池18群の充放電容量が検出される。電池パック10の残容量履歴データが、診断処理部90から容量検出部92に教示され、容量検出部92は残容量履歴データから最新の極大値を抽出して、二次電池18群の充放電容量を検出する。なお、二次電池の充放電容量を検出する方法は、上記に限定されるものではく、他の方法を用いてもよい。例えば、二次電池18群を完全に放電した後に満充電となるまで充電して、そのときの充電電力量を測定してもよい。
ステップS8では、二次電池18群の内部抵抗が検出される。診断処理部90は、チェックアダプタ50の制御部61に指令して、二次電池18群に診断用充放電を行わせる。その診断用充放電において、二次電池18群の電圧値はチェックアダプタ50の電圧検出部63によって検出され、制御部61と診断処理部90を経由して内部抵抗検出部94に教示される。内部抵抗検出部94は、診断用充放電に対する二次電池18群の電圧値から、二次電池18群の内部抵抗を算出する。
以上のステップS4、S6、S8によって、二次電池18群の充電回数、充放電容量、内部抵抗等が検出される。
【0041】
図9のステップS10では、二次電池18群が活性状態であるのか不活性状態となっているのかの判別処理が行われる。診断処理部90は、ステップS6で検出された充放電容量とステップS8で測定された内部抵抗の対の値を、基準活性マップ140上にプロットし、二次電池18群が活性状態であるのか不活性状態となっているのかの判別をする。
図8に示すように、例えば検出された充放電容量がQ1であり、検出された内部抵抗がR1のときは、二次電池18群は活性状態であると判別する。一方、例えば検出された充放電容量が劣化基準容量値Qzであり、検出された内部抵抗が内部抵抗値R1のときは、二次電池18群は不活性状態となっていると判別する。充放電容量のみから判別すれば、充放電容量が劣化基準容量値Qzとなっている二次電池18群は劣化したと判別されてしまう。それに対し、バッテリチェックシステム2では、充放電容量と内部抵抗を組み合わせて判別することにより、二次電池18群が不活性状態となっていることを判別することができる。
【0042】
ステップS12では、ステップS10の判別において、二次電池18群が活性状態であればステップS14に進み、不活性状態となっていればステップS32に進む。
ステップS32に進んだ場合、ステップS32では二次電池18群のリフレッシュ処理が行われる。診断処理部90は、二次電池18群が不活性状態となっていることを判別すると、チェックアダプタ50の制御部61に、二次電池18群のリフレッシュ処理をするように指令する。その指令を受け、チェックアダプタ50の制御部61は、充電器30の制御部46や放電負荷62や充放電切換部65等に指令を与え、二次電池18群のリフレッシュ処理を行う。リフレッシュ処理を行った後、ステップS4に戻る。ステップS4では、電池パック10のEEPROM21からリフレッシュ後の残容量履歴データが読み込まれ、ステップS6で二次電池18群のリフレッシュ後の充放電容量が検出される。このように、バッテリチェックシステム2では、二次電池18群が不活性状態となっている場合、一時的に低下している充放電容量を回復させた後に、以降の二次電池18群の診断処理を行う。
【0043】
図9のステップS14では、電池パック10の使用履歴に基づいて、ステップS4で検出した電池パック10の充電回数が修正される。本実施例では、電池パック10の使用履歴を、ステップS4で読み込んだ残容量履歴データと温度履歴データから推定する。診断処理部90は、残容量履歴データから、二次電池18群の残容量が所定値を下回った回数を計数する。その計数した回数を、二次電池18群が過放電された回数とする。また、診断処理部90は、温度履歴データから、二次電池18群の温度が所定値を上回った回数を計数する。その計数した回数を、二次電池18群が急速充電された回数とする。診断処理部は90、二次電池18群の過放電回数と急速充電回数と充電回数から、過放電や急速充電の発生頻度を計算し、その発生頻度が高いほど検出した充電回数を多くなるように修正する。このように充電回数を修正することにより、劣化が進みやすい使用方法が繰返された二次電池18群では、実際の充電回数よりも多くの充電がなされたと評価されることとなる。
【0044】
ステップS16では、二次電池18群の劣化状態の判別処理が行われる。詳しくは、二次電池18群が使用不能となるまで劣化しているのか否かの判別が行われる。二次電池18群が使用不能となるまで劣化しているのであれば、二次電池18群は正常劣化であったのか、異常劣化であったのか判別する。一方、二次電池18群がまだ使用可能な状態であるときには、正常に劣化しているのか異常に劣化しているのかの判別が行われる。
診断処理部90は、ステップS14で修正された二次電池18群の充電回数と、ステップS8で検出した二次電池18群の内部抵抗との対の値を、図7に示した内部抵抗基準劣化マップ120上にプロットし、二次電池18群の劣化状態を判別する。図7に示すように、例えば点Uのように異常劣化済範囲128にプロットされれば、二次電池18群は使用不能の状態まで劣化しており、その劣化は異常であったと判別する。点Vのように正常劣化済範囲126にプロットされれば、二次電池18群は使用不能の状態まで劣化しており、その劣化は正常であったと判別する。点Wのように異常劣化時範囲124にプロットされれば、二次電池18群はまだ使用可能の状態であり、その劣化は異常に進行していると判別する。点Xのように正常劣化時範囲122にプロットされれば、二次電池18群は使用可能の状態であり、その劣化は正常に進行していると判別する。
【0045】
ステップS18では、二次電池18群の劣化の進行度が推定される。二次電池18群の劣化の進行度とは、二次電池18群のそのときの劣化状態が、使用不能な状態となる劣化状態に対して、どの程度進行しているのかを示す度合である。例えば、劣化進行度が50パーセントであれば、二次電池18群をそれまでの使用量だけさらに使用すると、二次電池18群が使用不能となるまで劣化することを意味する。
図10を参照して、診断処理部90による劣化の進行度の推定処理を説明する。図10に示すように、診断処理部90は、ステップS4で検出した二次電池18群の充電回数と、ステップS8で検出した二次電池18群の内部抵抗との対の値を、図7に示した内部抵抗基準劣化マップ120上にプロットする。ここでは、点Xにプロットされたものとする。なお、この処理で利用する充電回数は、ステップS14で修正した充電回数ではないことに留意されたい。診断処理部90は、プロットされた点Xと、内部抵抗基準劣化マップ120に記述されている標準的関係曲線130を用いて、内部抵抗基準劣化マップ120上に充電回数と内部抵抗の今後の推移曲線132を作成する。この推移曲線132において、内部抵抗が劣化基準抵抗値Rzとなるときの充電回数N3を求める。即ち、二次電池18群は、充電回数がN3回となったときに、内部抵抗が劣化基準抵抗値Rzまで増大し、使用不能となるまで劣化すると推定される。診断処理部90は、そのときの充電回数N1回と、推定した劣化充電回数N3回の比から、劣化の進行度を求める。
【0046】
ステップS20では、上記の処理による判別結果等が、ディスプレイ74に表示される。図12に、ディスプレイ74に表示される表示画面150を例示する。図12に示すように、表示画面150は、主に入力表示部160と結果表示部170から構成されている。入力表示部160は、利用者がバッテリチェックシステム2に情報を入力したり指示を与えたりするための情報が表示される。例えば利用者は、電池パック10に関して、所有者(図中161)、使用される機器(電動工具等)の形式(図中162)、生産ロットナンバ(図中163)、購入年月日(図中164)、所有者の評価コメント(図中165)や、今回の診断目的等のコメント(図中166)を入力することができる。
入力表示部160には、診断指示ボタン168と履歴表示ボタン169が表示されており、それらのボタンによって利用者はバッテリチェックシステム2に指示を与えることができる。診断指示ボタン168により、バッテリチェックシステム2に電池パック10の診断処理の実行を指令することができる。なお、電池パック10の診断処理は、先に説明したように電池パック10がチェックアダプタ2に接続されることによっても開始される(ステップS2)。診断指示ボタン168は、例えば同じ電池パック10を続けて診断する場合のように、電池パック10が既に接続されている場合等に使用する。履歴表示ボタン169により、記憶部80の診断情報累積データ86が記述している電池パック10の過去の診断情報を、結果表示部170に表示させることもできる。
【0047】
結果表示部170には、診断結果コメント表示部172、寿命進行度表示部174、検出値表示部176が構成されており、電池パック10の診断結果が表示される。診断結果コメント表示部172には、ステップS10の活性/不活性の判別結果や、ステップS16の劣化状態の判別結果に基づいてコメントが表示される。ステップS16における判別が「正常劣化時」であれば、例えば図12に示すように「正常です。」等と表示される。
寿命進行度表示部174には、ステップS18で推定された劣化の進行度が表示される。検出値表示部176には、診断処理で検出された各種検出値が表示される。例えば、二次電池18群の公称電圧値や、検出された二次電池18群の実際の電圧値や、温度センサ23で検出された二次電池18群の温度等が表示される。また、EEPROM21から読み込んだ充電回数や、検出した二次電池18群の内部抵抗値等が表示される。
【0048】
図13、14、15、16は、結果表示部170の表示例を示している。図13は、二次電池18群の劣化状態が「正常劣化時」と判別され、さらに充電回数が少ない新品の電池パック10を診断したときの表示例を示す。使用を開始して間もない電池パック10を診断することは、製造等に起因する初期故障の有無を確認することができるので有効である。
図14は、二次電池18群の劣化状態がステップS10の活性/不活性の判別で「不活性」と判別され、リフレッシュ処理の後の診断で「正常劣化時」と判別された場合の表示例を示している。図14に示すように、二次電池18群が不活性状態となっている判別された場合には、完全充放電等のリフレッシュ処理を推奨するコメントを併せて表示するとよい。
図15は、二次電池18群の劣化状態が「正常劣化済」と判別された場合の表示例を示している。電池パック10のEEPROM21に記憶されている残容量履歴データから、高い頻度で過放電されていることが確認される場合には、図15に示すように「過放電はバッテリの劣化を早めます。工具の力が落ちてきたと感じたら充電して下さい。」と表示して、電池パック10の使用者に助言を与えるコメントを表示するのもよい。
図16は、二次電池18群の劣化状態が「異常劣化済」と判別された場合の表示例を示している。二次電池18群の劣化が異常劣化であって、充電回数も少ない場合には、電池パック10が故障していることが推測される。図16に示すように、二次電池18群が故障していることが推測される場合には、その旨を告知することにより、故障した電池パック10が使用し続けられることを防止することができる。
図9のステップS22では、今回の診断結果が記憶部80の診断情報累積データ86に追加して記憶される。ここでいう診断結果とは、電池パック10のEEPROM21から読み込んだデータや、検出した二次電池18群の電圧変化パターンや温度や、算出した二次電池18群の充放電容量や内部抵抗値や、劣化状態の判別結果や、利用者が入力表示部160に入力した情報を含む。バッテリチェックシステム2は、診断情報累積データ86に記憶している診断情報を読み出して、図12〜16に示すような診断結果の表示画面150を、いつでもディスプレイ74に表示することができる。また、バッテリチェックシステム2は、電池パック10のEEPROM21に記憶されている過去診断データを読み込んで、ディスプレイ74に表示することもできる。
また、このステップS22では、今回の診断結果が電池パック10のEEPORM21にも書き込まれる。電池パック10のEEPROM21に今回の診断結果が記憶されることで、電池パック10が他のバッテリチェックシステム2で診断されたときでも、今回の診断情報を表示させることができる。
【0049】
以上で説明した流れによって、バッテリチェックシステム2は、電池パック10の二次電池18群を診断する。バッテリチェックシステム2は、二次電池18群が充電回数に伴って正常に劣化しているのか、異常に劣化しているのかを判別することができる。それにより、故障している電池パック10を使用し続けて、電動工具を損傷してしまうような二次災害を予防することができる。
また、バッテリチェックシステム2は、二次電池18群の劣化が、寿命に対してどの程度まで進行しているかを推定することができる。二次電池18群の寿命が尽きる時期を推測することもでき、二次電池18群の使用者は電池パック10の今後の使用計画等に反映することができる。
また、バッテリチェックシステム2は、電池パック10が二次電池18群の劣化を進めるような形態で使用されているか否かを推定することもできる。それにより、電池パック10の使用者は、自身の使用形態が二次電池18群の劣化を助長していることを知り、電池パック10の今後の使用方法を改善することができる。
【0050】
上記では、ステップS16において、充電回数と内部抵抗の対の値から、二次電池18群の劣化状態を判別する処理について説明したが、内部抵抗に替えて充放電容量を用いることもできる。この場合、図7に示した内部抵抗基準劣化マップ120に替えて、図11に示す充放電容量基準劣化マップ180を用いればよい。
図11に示すように、充放電容量基準劣化マップ180は、横軸が充電回数であり、縦軸が充放電容量である二次元マップである。充放電容量基準劣化マップ180では、充電回数と充放電容量の関係から、正常劣化時範囲182と異常劣化時範囲184と正常劣化済範囲186と異常劣化済範囲188が定められている。正常劣化時範囲182と異常劣化時範囲184を区分している曲線190は、電池パック10が正常に製造されて正常に使用されている場合に、劣化していく二次電池18群の充電回数と充放電容量の標準的関係を示している。図中の充放電容量値Qzは、劣化基準容量値Qzである。また、充電回数Nzは、二次電池18群が正常に使用されたときに、充放電容量がこの劣化基準容量値Qzよりも増大することが予定されている基準充電回数Nzである。
充放電容量基準劣化マップ180において、正常劣化時範囲182は、充電回数に対する充放電容量が標準値以上の範囲であり、二次電池18群が充電回数に追従して正常に劣化していることを示す。異常劣化時範囲184は、充電回数に対する充放電容量が標準値よりも少ない範囲であり、二次電池18群が異常に劣化していることを示す。正常劣化済範囲186は、充電回数が基準充電回数Nz回以上であって充放電容量が劣化基準容量Qz以下の範囲であり、二次電池18群が正常に劣化しながら使用不能となるまで劣化したことを示す。異常劣化済範囲188は、充電回数が基準充電回数Nz回未満であって充放電容量が劣化基準充放電容量Qz以下の範囲であり、二次電池18群が異常に劣化しながら使用不能となるまで劣化したことを示す。
充放電容量基準劣化マップ180は、判別基準データ82に追加して記述しておくとよい。
【0051】
診断処理部90は、ステップS14で修正された二次電池18群の充電回数と、ステップS6で検出した二次電池18群の充放電容量との対の値を、図11に示した充放電容量基準劣化マップ180上にプロットし、二次電池18群の劣化状態を判別することができる。図11に示すように、例えば点Kのように正常劣化時範囲182にプロットされれば、二次電池18群は使用可能の状態であり、その劣化は正常に進行していると判別する。
点Lのように異常劣化時範囲184にプロットされれば、二次電池18群はまだ使用可能の状態であり、その劣化は異常に進行していると判別する。点Jのように正常劣化済範囲186にプロットされれば、二次電池18群は使用不能の状態まで劣化しており、その劣化は正常であったと判別する。点Hのように異常劣化済範囲188にプロットされれば、二次電池18群は使用不能の状態まで劣化しており、その劣化は異常であったと判別する。
【0052】
バッテリチェックシステム2は、インターネット接続部96によってインターネットに接続し、インターネットを経由して外部のコンピュータ装置等と情報を授受することができる。例えばバッテリチェックシステム2は、外部のコンピュータ装置から新たな判別基準データ82等を受信することができる。
バッテリチェックシステム2は、記憶部80に記憶している診断情報累積データ86を、外部のコンピュータ装置に送信することができる。それにより、バッテリチェックシステム2の利用者は、電池パック10についてより詳しい知識を有する者(例えば電池パック10の供給者)に、電池パック10の診断情報を送信して助言を仰ぐことができる。
【0053】
(実施例2) 本発明を具現化したバッテリチェックネットワーク200について図面を参照して説明する。図17は、本実施例のバッテリチェックネットワーク200の構成を示す。図17に示すように、バッテリチェックネットワーク200は、ホストコンピュータ212と複数の実施例1のバッテリチェックシステム2群で構成される。ホストコンピュータ212とバッテリチェックシステム2群は、インターネット204を介して接続されている。
ホストコンピュータ212は、ホストコンピュータ212の処理動作を行う処理部214と、電池パック10の診断情報を累積して記憶する診断情報集積部216と、処理部214から入力された情報を表示するディスプレイ218等で構成されている。
処理部214には、ディスプレイ218に表示する表示情報を生成して出力する表示処理部222や、診断情報集積部216に累積記憶された診断情報から二次電池18群の判別基準を算定する判別基準算定部224や、ホストコンピュータ212がインターネットに接続して、バッテリチェックシステム2等と電子情報を授受するインターネット接続部226を備えている。
【0054】
バッテリチェックネットワーク200の各端末診断装置群であるバッテリチェックシステム2は、実施例1で説明したバッテリチェックシステム2であり、実施例1で説明したように動作して電池パック10を診断する。ただし、本実施例のバッテリチェックシステム2群では、インターネット接続部96によってインターネット204に接続すると、インターネット204内でホストコンピュータ212を探索して接続するように設定されている。
バッテリチェックシステム2群は、電池パック10を診断して得た診断情報を、インターネット204を介してホストコンピュータ212に送信する。バッテリチェックシステム2群は、電池パック10を診断する毎に診断情報を送信してもよいし、診断情報累積データ86に記述しておいた診断情報をまとめて送信してもよい。
【0055】
ホストコンピュータ212は、バッテリチェックシステム2群から送信された診断情報を、診断情報集積部216に累積して記憶する。診断情報集積部216には、多数のバッテリチェックシステム2群から送信された多数の診断情報が累積して記憶されていく。診断情報集積部216には、様々な使用環境にある電池パック10の診断情報が蓄積されていく。
診断情報集積部216に集積された診断情報を検討することにより、二次電池18群の劣化の態様を検討することができ、診断のための知識をさらに蓄積することができる。累積記憶された診断情報は、表示処理部222によってディスプレイ218に表示させて評価することもできる。
【0056】
判別基準算定部224は、診断情報集積部216に累積記憶された診断情報から二次電池18群の判別基準を算定することができる。例えば判別基準算定部224は、累積記憶された多数の診断情報から、多数の充電回数と内部抵抗の対の値を抽出し、充電回数と内部抵抗の二次元マップにプロットする。そのプロット点の分布から、図7に示した内部抵抗基準劣化マップ120の正常劣化時範囲122、異常劣化時範囲124、正常劣化済範囲126、異常劣化済範囲128等を画定して、新たな内部抵抗基準劣化マップ120を生成することもできる。同様にして、新たな基準活性マップ140や新たな容量基準劣化マップ180を生成することもできる。このようにして作成される判別基準データは、様々な使用環境にある二次電池18群の多数の事例が反映されており、これらの判別基準データを用いることにより、二次電池18群の劣化をより正確に判別することが可能となる。
判別基準算定部224によって生成された内部抵抗基準劣化マップ120や、基準活性マップ140や充放電容量基準劣化マップ180等の判別基準データは、インターネット204を介してバッテリチェックシステム2群に配信される。バッテリチェックシステム2群は、記憶部80に記憶している判別基準データ86を、配信された新たな判別基準データへと更新する。
【0057】
電池パック10の使用方法の一つとして、電動工具を連続的に駆動するために複数の電池パック10を用意し、一つの電池パック10の充電電力を使い切ると、充電済みの他の電池パック10に取替えて作業を続けるという使用方法がある。充電電力を使い切った電池パック10は、直ちに充電を開始して次の使用に備える。この使用方法は、例えば工場の生産ライン等で多く採用されている。この使用方法において、用意すべき電池パック10の数を決定するためには、作業量や、電動工具の数や、一つの電池パック10で作業する時間や、電池パック10の充電に必要な時間等のパラメータを併せて計算する必要がある。用意した電池パック10の数が少ないと、各電池パック10は使用される時間が長くなり、電池パック10の二次電池18群は過放電されやすく、電動工具の出力も安定しなくなる。用意した電池パック10の数が多い場合では、各電池パック10は使用される時間が短くなり、二次電池18群が充分に放電しない状態で充電が開始されて、二次電池18群が不活性状態になり易くなる。用意すべき電池パック10の数を正しく求めることは困難であり、また用意した電池パック10の数が正しいのか否かを判断することも困難である。用意すべき電池パック10の数を正しく求めることができなければ、電池パック10の使用者は電池パック10を有効に利用することができない。その結果、電池パック10の利用者は電池パック10の能力を過小に評価してしまい、電池パック10の使用者と供給者との間の信頼関係に影響を与え、電池産業の健全な成長が阻害されてしまう。
【0058】
バッテリチェックネットワーク200は、上記の問題にも有用である。この問題を解決するためには、電池パック10に詳しい者(供給者等)がアクセス可能なホストコンピュータ212と、電池パック10が使用されている現場に配備されたバッテリチェックシステム2群によって、バッテリチェックネットワーク200を構築するとよい。
同一の使用環境で多数の電池パック10群を使用する使用者が、電池パック10の劣化の進行速度が早いと感じ、バッテリチェックシステム2によって電池パック10群を診断したところ、電池パック10群が共通して劣化の進行が異常であると診断されたとする。同一の条件下で使用される多数の電池パックが同様に診断される場合、電池パック10自体の異常に起因するものではなく、電池パック10群の使用方法に起因するものと疑われる。しかしながら、電池パック10に対して使用者が持っている知識では、その使用方法の問題点を抽出して、使用方法を改善することは困難である。
バッテリチェックネットワーク200では、バッテリチェックシステム2で診断した電池パック10の診断情報が、ホストコンピュータ212に送信される。このとき、図12に示したように、電池パック10群について、使用者(図中161)や、電動工具等の形式(図中162)や、生産ロットナンバ(図中163)や、購入年月日(図中164)等の情報も入力しておくとよい。また、図中の165、166のコメントを入力する欄には、電動工具の台数と電池パック10の台数の関係や、作業内容や作業時間等を入力しておくとよい。診断情報はインターネットを介してリアルタイムに送信することもでき、電池パック10群自体を送付する必要はない。
【0059】
電池パック10の供給者等は、送信された電池パック10群の診断情報から、電池パック10群の使用方法を推定することができる。例えば、電池パック10群の残容量履歴データから電池パック10がよく過放電されていることが確認されれば、用意された電池パック10群の数が、用意すべき数に対して少ない状態で使用されていると推定することができる。あるいは、電池パック10群に総じて不活性状態の傾向が見られる場合には、用意された電池パック10群の数が、用意すべき数に対して多い状態で使用されていると推定することができる。これらの推定は、送信された他の診断情報、例えば電池パック10の形式と電動工具の形式との対応や、作業内容や作業時間等によって裏付けることができる。電池パック10の供給者等は、電池パックの使用者に対して、電池パック10の使用形態の改善案として、電池パック10群の増減や電動工具の変更等を提案することができる。このように、バッテリチェックネットワーク200を用いることにより、電池パック10群の使用者は電池パック10の供給者等から電池パック10群の使用方法の診断を受けることができる。また、電池パック10の供給者等は電池パック10群の使用者に電池パック10の使用方法の改善案を提案することができる。電池パック10群の使用者は、電池パック10の供給者等の診断に基づいて電池パック10群の使用形態を改善した後に、バッテリチェックシステムによって再び電池パック10群の診断を行い、その診断情報を電池パック10の供給者に送信する。電池パック10の供給者は、受信した診断情報から、提案した改善案の効果を確認することができる。それにより、電池パック10の使用者と供給者との間の信頼関係が築きあげられて、電池産業の健全な成長が促進されることとなる。
【0060】
上記で説明したバッテリチェックネットワーク200は、以下に説明する事例についても有用である。
電池パック10の充電処理の態様は、EEPROM21に記憶されている充電特性データに基づいて行われる。この充電特性データは、多数回の充放電サイクルに亘って二次電池18群の能力が維持されるように、二次電池18群の特性等に基づいて充電電流やリフレッシュ処理の必要頻度が定められている。
しかしながら、電池パック10が使用される形態は各個体ごとに様々であり、EEPROM21が記述している充電特性データが、各電池パック10の二次電池18群に最適であるとは限らない。例えば、充分に放電された後に満充電の状態まで充電するという充放電サイクルで使用されている電池パック10は、不活性状態になりにくいので、リフレッシュ処理をあまり必要としない。このような電池パック10では、リフレッシュ処理の頻度を少なくした方が、二次電池18群の劣化を抑制することができる。特に、リフレッシュ処理には時間を要するので、リフレッシュ処理の頻度を減らしたいと要望する使用者も多い。あるいは、二次電池18群の劣化の進行速度が多少速くなっても短時間で充電を完了したいと要望する使用者もいる。このように、電池パック10に要求される充電処理に関する特性は、二次電池18群の特性のみならず、使用形態に応じて各個体毎に異なることも多い。しかしながら従来は、多様な使用形態に対して最大公約数となるような充電特性データが、すべての電池パック10に画一的に規定されていた。
【0061】
電池パック10の使用者は、電池パック10の充電処理の規定を修正したい場合、その電池パック10をバッテリチェックシステム2によって診断する。このとき、図12に示したように、電池パック10について、所有者(図中161)や、電動工具等の形式(図中162)や、生産ロットナンバ(図中163)や、購入年月日(図中164)等の情報を入力する。また、図中の165、166のコメントを入力する欄には、電池パック10の使用形態や電池パック10に要望する特性等を入力する。例えば「リフレッシュ処理の頻度を減らしたい」等と入力する。これらの電池パック10の診断情報は、ホストコンピュータ212に送信される。診断情報はインターネットを介して送信されるので、遠隔地にあるホストコンピュータ212にもリアルタイムに送信される。電池パック10自体を送付する必要はない。
【0062】
電池パック10の供給者等は、ホストコンピュータ212に送信された電池パック10の診断情報から、電池パック10の充電特性データを知ることができる。また、電池パック10の劣化状態や使用形態等を知ることができる。また、使用者が電池パック10に対して要望している特性を知ることができる。
電池パック10の供給者等は、電池パック10の充電特性データを、電池パック10の実際の劣化状態や使用方法と併せて診断し、その電池パック10にふさわしいのか否かを判別する。例えば、二次電池18群に不活性状態の兆候が見られず、また過放電の発生頻度が高いような場合では、リフレッシュ処理の頻度を減少させてもよいと診断することができる。使用者の要望である「リフレッシュ処理の頻度を減らしたい」に対し、そのように処置することが、その電池パック10にとって適切であるか否かを確認することができる。電池パック10の供給者等は、リフレッシュ処理の頻度をより少なく規定する充電処理データを、ホストコンピュータ212からバッテリチェックシステム2へ送信する。バッテリチェックシステム2が受信した新たな充電特性データは、チェックアダプタ50の制御部61に教示され、制御部61は電池パック10のEEPROM21の充電特性データを新たな充電特性データへと更新する。充電特性データが更新された電池パック10では、リフレッシュ処理を要求する頻度が減少する。
【0063】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
本実施例では、二次電池18群の使用量を示す指標として累積の充電回数を採用しているが、例えば累積放電時間、累積充電時間、累積放電電力量、累積充電電力量等を採用することもできる。実施する形態に併せて自由に採用することができ、それに応じて本実施例から設計変更すればよい。
本実施例では、二次電池18群の劣化の進行を示す指標として内部抵抗や充放電容量を採用しているが、これに限定されるものではない。二次電池の劣化の進行に追従して変化する指標を自由に採用することができ、それに応じて本実施例から設計変更すればよい。
本実施例で採用している充電回数、内部抵抗、充放電容量等の検出方法は例示に過ぎず、それらの指標を他の方法で検出するようにしてもよい。
本実施例のバッテリチェックネットワークでは、インターネットを利用しているが、他のコンピュータネットワークを採用することもできる。電子情報の通信技術は今後の発展が期待されている分野であり、新たに開発される通信技術を採用することもできる。
本実施例のバッテリチェックシステムでは、充電器と電池パック10の間に挿入できるアダプタを有する形態を採用しているが、これに限定されるものではない。充電器等に接続することなく、同様のバッテリチェックシステムを構成することもできる。
【0064】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0065】
2・・バッテリチェックシステム
10・・電池パック
18・・二次電池
21・・EEPROM
30・・充電器
50・・チェックアダプタ
70・・コンピュータ装置
74・・ディスプレイ
120・・内部抵抗基準劣化マップ
140・・基準活性マップ
180・・充放電容量基準劣化データ
200・・バッテリチェックネットワーク
204・・インターネット
212・・ホストコンピュータ
216・・診断情報集積部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の劣化が正常劣化なのか異常劣化なのかを判別する装置であり、
二次電池の劣化指標を測定する装置と、
二次電池の使用量を把握する装置と、
測定された劣化指標が劣化基準値を超えた時の使用量を使用基準量と比較する装置と、
を備えている電池診断装置。
【請求項2】
二次電池が正常に劣化しているのか異常に劣化しているのかを判別する装置であり、
二次電池の劣化指標を測定する装置と、
二次電池の使用量を把握する装置と、
劣化指標と使用量の二次元マップに正常劣化時範囲と異常劣化時範囲を区分している基準劣化マップを記憶している装置と、
測定された劣化指標と把握された使用量が、前記基準劣化マップの正常劣化時範囲と異常劣化時範囲のいずれにあるのかを判別する装置と、
を備えている電池診断装置。
【請求項3】
前記劣化指標は、内部抵抗または充放電容量であり、
前記使用量は、累積放電時間、累積充電時間、累積放電電力量、累積充電電力量、累積充電回数のいずれかであることを特徴とする請求項1または2の電池診断装置。
【請求項4】
前記劣化指標は、内部抵抗または充放電容量であり、
前記使用量は、累積放電時間、累積充電時間、累積放電電力量、累積充電電力量、累積充電回数のいずれかを、過放電および/または急速充電の発生頻度に基づいて修正したものであることを特徴とする請求項1または2の電池診断装置。
【請求項5】
二次電池が活性状態なのか不活性状態なのかを判別する装置であり、
二次電池の第1劣化指標を測定する装置と、
二次電池の第2劣化指標を測定する装置と、
第1劣化指標と第2劣化指標の二次元マップに活性範囲と不活性範囲を区分している基準活性マップを記憶している装置と、
測定された第1劣化指標と第2劣化指標が、前記基準活性マップの活性範囲と不活性範囲のいずれにあるのかを判別する装置と、
を備えている電池診断装置。
【請求項6】
第1劣化指標が内部抵抗であり、第2劣化指標が充放電容量であることを特徴とする請求項5に記載の電池診断装置。
【請求項7】
充電装置と二次電池の間に挿入して用いる際に充電装置と複合して請求項5または6の電池診断装置を構成するアダプタであり、
充電装置からの充電電流をアダプタを通過させて電池に給電する給電回路と、
二次電池からの電流を放電する回路と、
給電回路と放電回路のいずれか一方を有効にする切換回路と、
前記判別装置で不活性範囲にあることが判別されたときに放電回路が有効な状態となるように切換回路を切換える手段と、
を備えているアダプタ。
【請求項8】
二次電池を診断して取得した診断情報を収集する診断情報収集装置であり、
二次電池を診断して診断情報を取得する複数の端末診断装置群と、
診断情報を累積して記憶する情報集積装置と、
端末診断装置群と情報集積装置をコンピュータネットワークを介して接続する通信手段を備えており、
各端末診断装置は、請求項1から7のいずれかの電池診断装置またはアダプタであり、
通信手段は、端末診断装置群が取得した診断情報を情報集積装置に送信することを特徴とする診断情報収集装置。
【請求項9】
前記情報集積装置に累積記憶された診断情報から使用量と劣化指標の関係を抽出し、前記劣化基準値、使用基準量、正常劣化時範囲、異常劣化時範囲、活性範囲、不活性範囲の少なくとも1つの判別基準を算定する判別基準算定手段が付加されており、
前記通信手段は、判別基準算定手段が算定した判別基準を端末診断装置群に送信することを特徴とする請求項8の診断情報収集装置。
【請求項1】
二次電池の劣化が正常劣化なのか異常劣化なのかを判別する装置であり、
二次電池の劣化指標を測定する装置と、
二次電池の使用量を把握する装置と、
測定された劣化指標が劣化基準値を超えた時の使用量を使用基準量と比較する装置と、
を備えている電池診断装置。
【請求項2】
二次電池が正常に劣化しているのか異常に劣化しているのかを判別する装置であり、
二次電池の劣化指標を測定する装置と、
二次電池の使用量を把握する装置と、
劣化指標と使用量の二次元マップに正常劣化時範囲と異常劣化時範囲を区分している基準劣化マップを記憶している装置と、
測定された劣化指標と把握された使用量が、前記基準劣化マップの正常劣化時範囲と異常劣化時範囲のいずれにあるのかを判別する装置と、
を備えている電池診断装置。
【請求項3】
前記劣化指標は、内部抵抗または充放電容量であり、
前記使用量は、累積放電時間、累積充電時間、累積放電電力量、累積充電電力量、累積充電回数のいずれかであることを特徴とする請求項1または2の電池診断装置。
【請求項4】
前記劣化指標は、内部抵抗または充放電容量であり、
前記使用量は、累積放電時間、累積充電時間、累積放電電力量、累積充電電力量、累積充電回数のいずれかを、過放電および/または急速充電の発生頻度に基づいて修正したものであることを特徴とする請求項1または2の電池診断装置。
【請求項5】
二次電池が活性状態なのか不活性状態なのかを判別する装置であり、
二次電池の第1劣化指標を測定する装置と、
二次電池の第2劣化指標を測定する装置と、
第1劣化指標と第2劣化指標の二次元マップに活性範囲と不活性範囲を区分している基準活性マップを記憶している装置と、
測定された第1劣化指標と第2劣化指標が、前記基準活性マップの活性範囲と不活性範囲のいずれにあるのかを判別する装置と、
を備えている電池診断装置。
【請求項6】
第1劣化指標が内部抵抗であり、第2劣化指標が充放電容量であることを特徴とする請求項5に記載の電池診断装置。
【請求項7】
充電装置と二次電池の間に挿入して用いる際に充電装置と複合して請求項5または6の電池診断装置を構成するアダプタであり、
充電装置からの充電電流をアダプタを通過させて電池に給電する給電回路と、
二次電池からの電流を放電する回路と、
給電回路と放電回路のいずれか一方を有効にする切換回路と、
前記判別装置で不活性範囲にあることが判別されたときに放電回路が有効な状態となるように切換回路を切換える手段と、
を備えているアダプタ。
【請求項8】
二次電池を診断して取得した診断情報を収集する診断情報収集装置であり、
二次電池を診断して診断情報を取得する複数の端末診断装置群と、
診断情報を累積して記憶する情報集積装置と、
端末診断装置群と情報集積装置をコンピュータネットワークを介して接続する通信手段を備えており、
各端末診断装置は、請求項1から7のいずれかの電池診断装置またはアダプタであり、
通信手段は、端末診断装置群が取得した診断情報を情報集積装置に送信することを特徴とする診断情報収集装置。
【請求項9】
前記情報集積装置に累積記憶された診断情報から使用量と劣化指標の関係を抽出し、前記劣化基準値、使用基準量、正常劣化時範囲、異常劣化時範囲、活性範囲、不活性範囲の少なくとも1つの判別基準を算定する判別基準算定手段が付加されており、
前記通信手段は、判別基準算定手段が算定した判別基準を端末診断装置群に送信することを特徴とする請求項8の診断情報収集装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−259837(P2009−259837A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128501(P2009−128501)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【分割の表示】特願2004−40849(P2004−40849)の分割
【原出願日】平成16年2月18日(2004.2.18)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【分割の表示】特願2004−40849(P2004−40849)の分割
【原出願日】平成16年2月18日(2004.2.18)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】
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