説明

二次電池を搭載する車両および二次電池を搭載する車両の制御方法

【課題】二次電池搭載車両において、二次電池の充電電力を効率的に利用する技術を提供する。
【解決手段】燃料電池車両100は、制御部10と、燃料電池20と、二次電池30と、二次電池30のSOCを検出するSOC検出部31と、外部接続インバータ60と、外部負荷200を二次電池30に接続させるための外部負荷接続部61とを備える。外部負荷200は、外部接続インバータ60を介して二次電池30の電力の供給を受ける。制御部10は、二次電池30の充電量が所定の範囲内に収まるように、二次電池30を充電する。そして、燃料電池車両100の停車中に外部負荷200に電力を供給するときには、燃料電池車両100の走行時より、二次電池30の充電量の上限値を低下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、二次電池の電力を駆動力として利用する二次電池搭載車両に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池車両は、一般に、電力源として、燃料電池と、二次電池とを搭載する(下記特許文献1等)。燃料電池車両は、通常、燃料電池を主電源として、燃料電池の出力によって走行するが、燃料電池が負荷の変動に追従できないときなどに、不足する電力を二次電池に補償させる。二次電池には、燃料電池の出力電力の一部や、回生電力などが充電される。
【0003】
ところで、燃料電池車両は、外部負荷を二次電池に接続させることにより、電源装置として機能させることができる。しかし、燃料電池の発電量や二次電池の容量には限りがあるため、燃料電池車両を移動式電源装置として機能させるときには、二次電池の電力を、より効率的に外部負荷に供給できることが望ましい。こうした要求は、燃料電池車両に限らず、ハイブリッド車両など、二次電池を副電源として搭載し、外部負荷に対する電源装置として機能可能な車両に共通する要求であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−279124号公報
【特許文献2】特開2002−008694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、二次電池を搭載した車両において、二次電池に接続された外部負荷に対して電力を効率的に供給できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
二次電池の電力を駆動力として利用する車両であって、前記二次電池を充電する発電装置と、前記二次電池の蓄電量を示す値を検出する蓄電量検出部と、前記二次電池が出力する電力を交流電力に変換するインバータと、交流電力を利用する外部負荷を前記インバータを介して前記二次電池に接続させるための外部負荷接続部と、前記二次電池の充放電を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記蓄電量検出部の検出値に基づき、前記二次電池の蓄電量が所定の範囲内に収まるように、前記発電装置に前記二次電池を充電させ、前記制御部は、前記車両の停車中に前記外部負荷に電力を供給するときには、前記二次電池の蓄電量の上限値が、前記車両が走行しているときとは異なるように、前記二次電池の蓄電量を制御する、車両。
本発明の発明者は、インバータに対する入力電圧が、インバータが出力する交流電圧に近いほど、インバータ効率が向上することを見出した。この適用例1の車両によれば、車両の停車中に外部負荷に電力を供給するときには、二次電池の充電量の上限値を変更することにより、二次電池からインバータに入力される電圧を、インバータの出力する交流電圧に近づけることができる。従って、インバータの電力変換効率を向上させた状態で、外部負荷に二次電池の電力を供給できる。
【0008】
[適用例2]
適用例1記載の車両であって 前記発電装置は、燃料電池であり、前記制御部は、
(i)前記燃料電池を主電源とし、前記二次電池を副電源として、前記燃料電池と前記二次電池の出力を前記車両の駆動に利用する通常走行制御と、
(ii)前記車両の停車中に、前記通常走行制御のときよりも、前記燃料電池の発電量を低下させるとともに、前記二次電池の蓄電量の上限値を低下させて、前記二次電池から前記外部負荷に電力を供給する電力供給制御と、
を実行する、車両。
この適用例の車両であれば、通常走行制御の実行時には、二次電池の蓄電量を確保しておくことができ、電力供給制御の実行時には、外部負荷へ効率的に電力供給をすることができる。
【0009】
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載の車両であって、前記制御部は、前記車両の停車中に前記外部負荷に電力を供給するときにおける前記二次電池の電圧が、前記インバータに接続される前記外部負荷の電圧に近づくように、前記畜電量の上限値を低下させる、車両。
この適用例の車両であれば、二次電池の出力電圧を、インバータの出力する交流電圧に近づけるため、外部負荷に対して二次電池の電力を効率的に供給できる。
【0010】
[適用例4]
適用例1〜3のいずれかに記載の車両であって、前記制御部は、前記外部負荷の使用電力に基づいて、前記車両の停車中に前記外部負荷に電力を供給するときにおける前記蓄電量の上限値の低下幅を決定する、車両。
本発明の発明者は、インバータへの入力電圧を低下させたときのインバータ効率の上昇幅は、インバータの出力電力に応じて変わることを見出した。従って、この適用例の車両によれば、外部負荷の使用電力に応じて適切に二次電池の充電量(インバータへの入力電圧)を低下させることができるため、二次電池の電力を、より効率的に外部負荷に供給することができる。
【0011】
[適用例5]
二次電池の電力を駆動力として利用する車両の制御方法であって、
(a)前記二次電池の蓄電量を示す値を検出する工程と、
(b)前記工程(a)において取得された検出値に基づき、前記二次電池の蓄電量が所定の範囲内に収まるように、発電装置に前記二次電池を充電させる工程と、
を備え、
前記工程(b)は、前記車両の停車中に前記外部負荷に電力を供給するときに、前記二次電池の蓄電量の上限値が、前記車両が走行しているときとは異なるように、前記二次電池の蓄電量を制御する工程を含む、制御方法。
この適用例の制御方法であれば、車両の停車中に、二次電池の出力を外部負荷に効率的に供給することができる。
【0012】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、二次電池を備える燃料電池など、二次電池の電力を走行に利用する車両、その車両の制御方法、その制御方法を実行するためのプログラム、そのプログラムを記録した記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】燃料電池車両の構成を示す概略図。
【図2】制御部による燃料電池車両の制御手順を説明するための説明図。
【図3】SOCフィードバック制御を説明するための説明図。
【図4】インバータ出力と、インバータ効率との関係を説明するための説明図。
【図5】二次電池のSOCと、バッテリ電圧との関係を説明するための説明図。
【図6】二次電池のSOCと、インバータ効率との関係を説明するための説明図。
【図7】第2実施例としての燃料電池車両の構成を示す概略図。
【図8】インバータ効率の変動量と、インバータ出力との関係を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
A.第1実施例:
図1は本発明の一実施例としての燃料電池車両100の構成を示す概略図である。燃料電池車両100は、燃料電池20と、二次電池30とを備え、それらの出力電力を駆動力として走行する。また、本実施例の燃料電池車両100は、その停車中に、外部負荷200に対して電力を供給する移動式電源装置としても機能することができる。燃料電池車両100は、具体的に、以下のような構成を有している。
【0015】
燃料電池20は、反応ガスとして水素と空気の供給を受けて発電する固体高分子形燃料電池である。二次電池30は、例えばリチウムイオン電池で構成することができる。なお、燃料電池20や二次電池30としては、固体高分子形燃料電池やリチウムイオン電池に限らず、他の種々のタイプの燃料電池や充・放電可能な電池を採用することができる。
【0016】
燃料電池車両100は、さらに、制御部10と、運転モード切替スイッチ15と、SOC検出部31と、DC/DCコンバータ41と、走行用インバータ42と、モータ50と、外部接続インバータ60と、外部負荷接続部61と、車輪WLとを備える。なお、燃料電池車両100は、燃料電池20の発電のための反応ガスの供給部や排出部、冷媒供給部などを搭載しているが、それらの図示及び説明は省略する。また、燃料電池車両100では、燃料電池20や二次電池30の電力の一部が、燃料電池車両100を構成する補機類を駆動するために用いられるが、そうした補機類や、そのための配線の図示および説明は省略する。
【0017】
制御部10は、中央処理装置と主記憶装置とを備えるマイクロコンピュータによって構成されている。制御部10は、運転者による運転モード切替スイッチ15を介した切り替え操作を受け付け、燃料電池車両100の運転モードを切り替える。ここで、本実施例の燃料電池車両100は、運転モードとして、「通常走行モード」と、「電力供給モード」とを有している。
【0018】
「通常運転モード」とは、燃料電池車両100を運転者の操作に基づき走行させるためのモードである。通常運転モードが選択されているときには、制御部10は、運転者によるアクセル操作などの操作を受け付け、その操作内容に応じて、燃料電池20の発電や二次電池30の充放電を制御する。一方、「電力供給モード」とは、燃料電池車両100を、外部負荷に電力を供給させる電源装置として機能させるモードである。これらの運転モードにおける具体的な制御内容については後述する。
【0019】
SOC検出部31は、二次電池30の充電状態(SOC;State of Charge)を検出し、制御部10に送信する。なお、本明細書において「充電状態(SOC)」とは、二次電池30の現在の充電容量に対する充電残量(蓄電量)の比率を意味する。SOC検出部31は、二次電池30の温度や、出力電圧、出力電流を検出し、それらの検出値に基づき、SOCを検出する。
【0020】
制御部10は、SOC検出部31が検出したSOCを取得し、取得したSOCに基づき、二次電池30のSOCが所定の範囲内に収まるように、二次電池30の充放電を制御する。以後、本明細書では、この制御部10によるSOCの検出値に基づく二次電池30の充放電制御を「SOCフィードバック制御」と呼ぶ。制御部10は、SOCフィードバック制御を開始する際に、二次電池30のSOCの変動範囲を規定するための基準となるSOC目標値を予め設定する。SOC目標値については後述する。
【0021】
ここで、燃料電池20は、直流配線DCLを介して走行用インバータ42に接続され、二次電池30は、DC/DCコンバータ41を介して直流配線DCLに接続されている。なお、直流配線DCLには、二次電池30から燃料電池20への電流の逆流を防止するためのダイオードが設けられているが、その図示は省略してある。
【0022】
走行用インバータ42は、ギア等を介して車輪WLを駆動するモータ50に接続されている。モータ50は、三相コイルを備える同期モータによって構成され、走行用インバータ42は、燃料電池20および二次電池30の出力電力を三相交流電力に変換してモータ50に供給する。
【0023】
制御部10は、通常走行モードのときには、走行用インバータ42と、DC/DCコンバータ41とにそれぞれ、アクセル開度に応じた駆動信号を生成して送信する。走行用インバータ42は、制御部10の駆動信号に応じて、交流電圧のパルス幅を調整するなどして、モータ50にアクセル開度に応じた回転駆動をさせる。
【0024】
DC/DCコンバータ41は、制御部10からの駆動信号に応じて直流配線DCLの電圧レベルを可変に調整し、二次電池30の充電/放電の状態を切り替える。なお、モータ50において回生電力が発生する場合には、その回生電力は、走行用インバータ42によって直流電力に変換され、DC/DCコンバータ41を介して二次電池30に充電される。
【0025】
ところで、本実施例の燃料電池車両100では、二次電池30に外部接続インバータ60が接続されている。外部接続インバータ60には、交流電力によって作動する外部負荷200を接続させるための外部負荷接続部61が接続されている。この構成によって、燃料電池車両100は、二次電池30の充電電力を、外部負荷接続部61に接続された外部負荷200に供給することを可能としている。なお、本実施例の外部接続インバータ60は、交流100Vを出力するインバータによって構成され、外部負荷接続部61は、商用電源用のコンセントによって外部負荷200と接続する。
【0026】
図2は、制御部10による燃料電池車両100の制御手順を説明するためのフローチャートである。ステップS10では、制御部10は、運転モード切替スイッチ15に基づき、運転者の選択している運転モードを検出する。通常走行モードが選択されている場合には、制御部10は、二次電池30の蓄電量の制御基準となるSOC目標値を、所定の第1の値であるShighに設定する(ステップS20)。
【0027】
ステップS30では、制御部10は、燃料電池20を主電源とし、二次電池30を副電源とする通常の運転制御を開始する(ステップS20)。具体的には、制御部10は、アクセル開度に応じて燃料電池20に発電させ、その出力をモータ50の駆動や他の補機類等の駆動、二次電池30の充電に用いる。
【0028】
そして、制御部10は、燃料電池20の出力が出力要求(アクセル開度)の変動に追従できないときなど、燃料電池20の出力電力が不足する場合には、その不足分が補償されるように、二次電池30に放電させる。なお、二次電池30は、上述したSOCフィードバック制御により、そのSOCが、第1の値Shighに基づいて規定される所定の範囲内に保持されるが、その詳細は後述する。
【0029】
一方、制御部10は、運転モード切替スイッチ15によって電源供給モードが選択されている場合には(ステップS10)、二次電池30のSOCの制御基準となるSOC目標値を、所定の第2の値であるSlowに設定する(ステップS40)。ステップS50では、制御部10は、第2の値Slowに設定されたSOC目標値を用いて、二次電池30についてSOCフィードバック制御を開始し、外部接続インバータ60を介して、二次電池30に外部負荷200への電力の供給を開始させる。
【0030】
なお、この電力供給モードでは、制御部10は、燃料電池20に間欠運転をさせる。ここで、燃料電池20の間欠運転とは、基本的には燃料電池20を発電停止状態、または、出力がほぼ0の状態としておき、二次電池30の充電が必要になったときにのみ燃料電池20に充電のための発電をさせる運転態様を意味する。
【0031】
制御部10は、運転者が燃料電池車両100の運転を終了させるまで、通常走行モード、または、電力供給モードのいずれかの制御を継続する(ステップS60)。なお、運転モード切替スイッチ15による運転モードの切り替えは、燃料電池車両100が停止しているときにのみ可能であるものとしても良い。また、電力供給モードで制御されている間には、燃料電池20および二次電池30とモータ50との間の電気的な接続は遮断されるものとしても良い。逆に、通常走行モードで制御されている間には、外部負荷200と二次電池30との間の電気的な接続が遮断されるものとしても良い。
【0032】
図3は、通常走行モードと電力供給モードとのSOCフィードバック制御の相違を説明するための説明図である。図3の紙面上段と紙面下段とにはそれぞれ、通常走行モードと、電力供給モードとにおける二次電池30のSOCをゲージ表示する棒グラフを、互いに対応させて図示してある。これらの棒グラフでは、紙面左側の端をSOC=0%とし、紙面右側の端をSOC=100%として、ハッチングを付した領域によって、二次電池30のSOCが示されているものとする。
【0033】
ステップS30,S50で実行されるSOCフィードバック制御は、具体的には、以下のように実行される。制御部10は、ステップS20またはステップS40において設定されたSOC目標値Shigh,Slowを中心値として、SOCの上限値Smaxと下限値Slimとを設定する。ここで、通常走行モードにおけるSOCの上限値Smaxと下限値Slimとはそれぞれ、蓄電量の過多または過少に起因する二次電池30の劣化が抑制される値として決定されることが好ましい。また、外部供給モードにおけるSOCの下限値Slimは、通常運転モードにおけるSOCの下限値Slimと共通の値となるように設定されていることが好ましい。
【0034】
制御部10は、二次電池30のSOCが、その下限値Slimより低下しないように、二次電池30に充電を適宜開始させ、SOCがその上限値Shighを超えないように、その充電を適宜停止させる。このSOCフィードバック制御によって、電力供給モードのときには通常走行モードのときよりも二次電池30のSOCが変動する範囲を下限値側に縮小され、電力供給モードのときには、通常走行モードのときよりも、二次電池30のSOCの上限値が低下する。このように、電力供給モードにおいて、二次電池30のSOCの上限値を低下させる理由を以下に説明する。
【0035】
図4は、本発明の発明者の実験により得られたグラフであり、インバータが出力する電力(以下、「インバータ出力」と呼ぶ)と、インバータ効率との関係の一例を示すグラフである。ここで、「インバータ効率」とは、インバータに入力された電力に対するインバータが出力した電力の比率を意味し、インバータによる電力変換効率を意味する。
【0036】
本発明の発明者は、交流100Vの電圧を出力するインバータに二次電池を接続し、二次電池が出力する電圧ごとに、インバータが出力した電力に対するインバータ効率を計測した。なお、以下では、二次電池が出力する電圧、即ち、二次電池からインバータに入力される電圧を、「インバータ入力電圧」と呼ぶ。
【0037】
インバータ効率は、いずれのインバータ入力電圧のときにも、インバータ出力が比較的小さい初期段階において著しく増大し、その後、ほぼ一定の値が保持された。そして、インバータ入力電圧が、インバータが出力する交流電圧(100V)に近いほど、インバータ出力に対するインバータ効率は、インバータ出力が著しく高い値となるまでは、ほぼ全域に渡って高い値を示した。
【0038】
図5は、本発明の発明者の実験により得られたグラフであり、二次電池のSOCと二次電池の出力電圧(以下、「バッテリ電圧」とも呼ぶ)との関係の一例を示すグラフである。本発明の発明者は、二次電池のSOCを変えて、SOCごとにバッテリ電圧を計測した。このグラフが示すように、二次電池では、そのSOCと出力電圧とが、SOCが高いほどその出力電圧が増大する、一意の関係にある。
【0039】
図6は、二次電池のSOCと、インバータ効率との関係の一例を示すグラフである。ここで、バッテリ電圧はインバータ入力電圧に相当することから、図4のインバータ入力電圧と、図5のバッテリ電圧とを対応させることにより、インバータ出力ごとに、SOCに対するインバータ効率を求めることができる。この図6のグラフから、二次電池におけるSOCが低いほど、二次電池に接続されたインバータのインバータ効率は上昇する傾向にあり、インバータ出力が小さいほど、その傾向が顕著になることがわかる。
【0040】
ここで、図3で説明したように、本実施例の燃料電池車両100では、電力供給モードのときには、通常走行モードのときより、二次電池30のSOCの上限が制限される。そのため、電力供給モードのときには、通常走行モードのときよりも、二次電池30のSOCが低い状態のまま、外部接続インバータ60への電力の供給が継続されることになる。
【0041】
図4〜図6で説明したように、二次電池30のSOCが低いほど、外部接続インバータ60において高いインバータ効率を得ることができる。即ち、本実施例の燃料電池車両100では、電力供給モードのときには、二次電池30のSOCの上限が制限されるため、外部接続インバータ60において高いインバータ効率を得ることができる。従って、二次電池30の電力を、より効率的に外部負荷200に供給可能であり、電力の供給時間を長くすることができる。
【0042】
なお、図4で説明したように、インバータ入力電圧が、インバータが出力する交流電圧に近いほどインバータ効率は向上する。従って、電力供給モードのときのSOC目標値は、二次電池30の出力電圧が外部接続インバータの出力電圧(本実施例では100V)に近づくように設定されることが好ましい。
【0043】
このように、本実施例の燃料電池車両100では、二次電池30の高い出力が要求される可能性がある通常走行モードでは、SOC目標値を高い値に設定して、二次電池30の蓄電量を確保する。そして、二次電池30から外部負荷200への効率的な電力供給が要求される電力供給モードでは、SOC目標値を低い値に設定して、外部接続インバータ60のインバータ効率を向上させ、外部負荷200への電力の供給効率を向上させる。
【0044】
なお、本実施例の燃料電池車両100では、電力供給モードにおいて、燃料電池20が間欠運転される。しかし、上記のように、外部負荷200に対する電力の供給効率が向上している分だけ、燃料電池20が起動と停止とを繰り返す頻度を低下させることができるため、燃料電池20の劣化を抑制することが可能である。
【0045】
B.第2実施例:
図7は本発明の第2実施例としての燃料電池車両100Aの構成を示す概略図である。図7は、インバータ出力検出部63が設けられている点以外は、図1とほぼ同じである。インバータ出力検出部63は、外部接続インバータ60と外部負荷接続部61との間の電流値および電圧値を検出することにより、外部接続インバータ60のインバータ出力(外部負荷200に対して供給される電力)を取得する。
【0046】
ここで、第2実施例の燃料電池車両100Aでは、制御部10は、第1実施例の燃料電池車両100と同様に、電力供給モードと通常走行モードとで、SOC目標値を変えて、二次電池30のSOCフィードバック制御を実行する(図2)。ただし、第2実施例の燃料電池車両100Aでは、電力供給モードのときに設定されるSOC目標値は、制御部10が以下に説明するように決定する。
【0047】
図8は、二次電池のSOCを所定の値だけ低下させたときに得られるインバータ効率の変動量と、インバータ出力との関係の一例を示すグラフである。図8のグラフは、図6のグラフにおいて、各インバータ出力ごとに、SOCを第1の値S1から第2の値S2へと低下させたときのインバータ効率の増加量Δeを求めることにより得ることができる。図8のグラフから、インバータ出力が低いときほど、インバータ効率の変動量Δeは増大することがわかる。
【0048】
このように、インバータでは、インバータ入力電圧を低下させても、インバータ出力が高い場合には、インバータ効率の向上の度合いが低くなる。そのため、電力供給モードのときに、二次電池30のSOC目標値を通常走行モードのときより低下させた場合であっても、外部負荷200の使用電力によっては、かえって、二次電池30の充電の頻度を増大させてしまう可能性がある。二次電池30の充電頻度が増大すると、二次電池30の劣化が促進されてしまう可能性がある。また、二次電池30の充電頻度の増大は、燃料電池20の発電と停止の繰り返しの頻度の増大につながり、燃料電池20の劣化や、燃料電池車両100Aの燃費の低下の原因となる。
【0049】
そこで、第2実施例の燃料電池車両100Aでは、制御部10が、インバータ出力検出部63の検出値を受信し、その検出値に基づいて、電力供給モードのときに二次電池30のSOC目標値を低下させる低下幅を決定する。具体的には、制御部10は、外部接続インバータ60のインバータ出力が大きいときの方が、インバータ出力が小さいときより、SOC目標値の低下幅を縮小されるように、SOC目標値を決定するものとしても良い。あるいは、制御部10は、外部接続インバータ60のインバータ出力が大きいほど、SOC目標値の低下幅を縮小させるものとしても良い。
【0050】
このように、第2実施例の燃料電池車両100Aでは、外部負荷200の使用電力に応じて、電力供給モードのときの二次電池30のSOC目標値の低下幅を決定する。従って、電力供給モードにおいて、外部負荷200の使用電力に対して、二次電池30の蓄電量が過小となり、二次電池30に対する充電の実行頻度が増大してしまうことを抑制でき、燃料電池20の劣化や、燃料電池車両100の燃費の低下を抑制できる。
【0051】
C.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。例えば、上記実施例では、二次電池を搭載する燃料電池車両に本発明を適用していた。しかし、本発明は、他の二次電池を搭載する車両に適用されるものとしても良い。具体的には、本発明は、ハイブリッド車や、プラグインハイブリッド車など、二次電池の電力を駆動力として利用しつつ、内燃機関を発電装置として機能させて、二次電池の畜電量が所定の範囲内に収まるように制御する車両に適用することが可能である。また、本発明は、燃料電池車両の中でも、特に、燃料電池バスや、燃料電池トラックなどの燃料電池を搭載した大型車両に適用することにより、電力供給効率に優れた電源車を構成することが可能であり有用である。さらに、本発明の実施態様は、以下のような変形も可能である。
【0052】
C1.変形例1:
上記実施例では、予め設定された運転モードである、通常運転モードと、電力供給モードとで、二次電池30のSOCフィードバック制御に用いられるSOC目標値を異なる値に設定して、二次電池30の蓄電量の上限値を変更していた。しかし、燃料電池車両100,100Aには、そうした運転モードが予め設定されていなくとも良く、二次電池30の蓄電量の上限値は、そうした運転モードに基づいて変更されなくとも良い。燃料電池車両100では、その停車中に外部負荷200に電力を供給するときに、二次電池30の蓄電量の上限値が、その走行時とは異なるように、二次電池30の蓄電量が制御されていれば良い。
【0053】
ここで、本明細書における「燃料電池車両100の停車中」とは、燃料電池20および二次電池30からモータ50の駆動に対して電力を供給していない状態を意味する。そして、アクセル操作やシフトチェンジによって加速が開始される状態である、いわゆるアイドリング状態を含まないものとする。なお、パーキングブレーキ(いわゆる、サイドブレーキ)などの制動機構によって、燃料電池車両100の移動が固定的に制限された状態も、この状態に含まれるものとする。一方、「燃料電池車両100の走行時」とは、燃料電池20と二次電池30の少なくとも一方の電力を利用して、モータ50を駆動させている状態を意味する。そして、この状態には、上記のアイドリング状態(パーキングブレーキなどの制動機構によって固定的に移動が制限された状態を除く)が含まれるものとする。
【0054】
C2.変形例2:
上記実施例では、制御部10は、二次電池30のSOCに基づき、二次電池30のSOCが所定の範囲内に収まるように制御していた(SOCフィードバック制御)。しかし、制御部10は、二次電池30のSOCに基づくSOCフィードバック制御を実行しなくとも良い。制御部10は、二次電池30の蓄電量を示す値に基づいて、二次電池30の蓄電量が所定の範囲内に収まるように二次電池30の充放電を管理すれば良い。この場合には、制御部10は、SOC目標値に変えて、蓄電量の目標値を設定するものとしても良い。
【0055】
ここで、二次電池30のSOCは、二次電池30の蓄電量を示す値である。従って、上記実施例の燃料電池車両100におけるSOCフィードバック制御は、制御部10が、取得した二次電池30の蓄電量を示す値に基づき、二次電池30の蓄電量が所定の範囲内に収まるように、その充放電を制御する制御であると解釈することできる。そして、上記実施例では、電力供給モードにおいて、二次電池30のSOCの上限値Smaxを低下させていたが、これは、二次電池30の蓄電量の上限値を低下させていたものと解釈することができる。
【0056】
C3.変形例3:
上記実施例では、燃料電池車両100,100Aは、電力供給モードのときには、燃料電池20を間欠運転させていた。しかし、燃料電池車両100,100Aは、電力供給モードのときに、燃料電池20を間欠運転させなくとも良い。燃料電池車両100,100Aは、電力供給モードのときには、通常走行モードのときよりも、燃料電池20の発電量が低減されるように、その出力を低下させるものとしても良い。なお、燃料電池車両100,100Aの燃費の改善のためにも、電力供給モードのとき、即ち、燃料電池車両100の停車中には、燃料電池20の発電量が少ない方が好ましい。
【0057】
C4.変形例4:
上記実施例では、外部接続インバータ60は、交流100Vを出力するインバータによって構成され、外部負荷接続部61は、商用電源用のコンセントによって外部負荷200と接続するコネクタとして構成されていた。しかし、外部接続インバータ60は、交流100Vを出力するインバータでなくとも良く、外部負荷接続部61は、商用電源用のコンセントによって外部負荷200と接続しなくとも良い。外部接続インバータ60は、二次電池30の直流電力を交流電力に変換するものであれば良い。また、外部負荷接続部61としては、外部接続インバータ60と外部負荷200とを電気的に接続することができれるものであれば良く、種々のコネクタ形状、接続態様を採用することが可能である。
【0058】
C5.変形例5:
上記実施例では、制御部10は、SOC目標値を中心として、SOCの上限値Shighと下限値Slowとを設定し、それらの上限値Smaxと下限値Slimとの間にSOCが収まるように二次電池30の充放電を制御していた。しかし、制御部10は、SOC目標値を設定することなく、SOCの上限値Smaxと下限値Slimとを直接的に設定するものとしても良い。また、上記実施例では、通常走行モードと電力供給モードとで、SOCの下限値Slimを同じ値となるように設定していたが、異なる値に設定しても良い。ただし、電力供給モードにおけるSOCの下限値Slimは、二次電池30の劣化が抑制されるとともに、二次電池30に対する充電の頻度が著しく増加しないように設定されることが望ましい。
【0059】
C6.変形例6:
上記実施例において、燃料電池車両100,100Aは、運転モード切替スイッチ15によって、通常走行モードと電力供給モードとを切り替えていた。しかし、運転モード切替スイッチ15は省略されるものとしても良い。この場合には、制御部10が、燃料電池車両100,100Aの運転状態や外部負荷200の接続状態に基づいて、通常走行モードと電力供給モードとを切り替えるものとしても良い。例えば、制御部10は、燃料電池車両100のアイドリング時に、外部負荷200が接続されたとき、または、外部負荷200による電力使用が開始されたとき、パーキングブレーキがかけられたときに、自動的に電力供給モードに移行するものとしても良い。また、制御部10は、電力供給モードのときに、パーキングブレーキが解除されたり、アクセルペダルが踏み込まれた場合に、外部負荷200の電気的接続を遮断し、通常走行モードに強制的に移行するものとしても良い。
【0060】
C7.変形例7:
上記実施例において、制御部10は、燃料電池車両100,100Aの停車中に外部負荷200に電力を供給するときに、燃料電池車両100,100Aの走行時よりも、二次電池30の蓄電量の上限値を低下させていた。しかし、制御部10は、外部接続インバータ60の出力電圧が、燃料電池車両100,100Aの走行時における二次電池30の出力電圧の上限値よりも高い場合には、燃料電池車両100,100Aの停車中に外部負荷200に電力を供給するときに、燃料電池車両100,100Aの走行時よりも、二次電池30の蓄電量の上限値を上昇させるものとしても良い。
【符号の説明】
【0061】
10…制御部
15…運転モード切替スイッチ
20…燃料電池
30…二次電池
31…SOC検出部
41…DC/DCコンバータ
42…走行用インバータ
50…モータ
60…外部接続インバータ
61…外部負荷接続部
63…インバータ出力検出部
100,100A…燃料電池車両
200…外部負荷
DCL…直流配線
WL…車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の電力を駆動力として利用する車両であって、
前記二次電池を充電する発電装置と、
前記二次電池の蓄電量を示す値を検出する蓄電量検出部と、
前記二次電池が出力する電力を交流電力に変換するインバータと、
交流電力を利用する外部負荷を前記インバータを介して前記二次電池に接続させるための外部負荷接続部と、
前記二次電池の充放電を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記蓄電量検出部の検出値に基づき、前記二次電池の蓄電量が所定の範囲内に収まるように、前記発電装置に前記二次電池を充電させ、
前記制御部は、前記車両の停車中に前記外部負荷に電力を供給するときには、前記二次電池の蓄電量の上限値が、前記車両が走行しているときとは異なるように、前記二次電池の蓄電量を制御する、車両。
【請求項2】
請求項1記載の車両であって、
前記発電装置は、燃料電池であり、
前記制御部は、
(i)前記燃料電池を主電源とし、前記二次電池を副電源として、前記燃料電池と前記二次電池の出力を前記車両の駆動に利用する通常走行制御と、
(ii)前記車両の停車中に、前記通常走行制御のときよりも、前記燃料電池の発電量を低下させるとともに、前記二次電池の蓄電量の上限値を低下させて、前記二次電池から前記外部負荷に電力を供給する電力供給制御と、
を実行する、車両。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両であって、
前記制御部は、前記車両の停車中に前記外部負荷に電力を供給するときにおける前記二次電池の電圧が、前記インバータに接続される前記外部負荷の電圧に近づくように、前記畜電量の上限値を低下させる、車両。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両であって、
前記制御部は、前記外部負荷の使用電力に基づいて、前記車両の停車中に前記外部負荷に電力を供給するときにおける前記蓄電量の上限値の低下幅を決定する、車両。
【請求項5】
二次電池の電力を駆動力として利用する車両の制御方法であって、
(a)前記二次電池の蓄電量を示す値を検出する工程と、
(b)前記工程(a)において取得された検出値に基づき、前記二次電池の蓄電量が所定の範囲内に収まるように、発電装置に前記二次電池を充電させる工程と、
を備え、
前記工程(b)は、前記車両の停車中に前記外部負荷に電力を供給するときに、前記二次電池の蓄電量の上限値が、前記車両が走行しているときとは異なるように、前記二次電池の蓄電量を制御する工程を含む、制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−93941(P2013−93941A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233545(P2011−233545)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】