二次電池保護用ICの検査方法
【課題】二次電池保護用ICの過充電検出電圧検査時の検査時間を短縮する。
【解決手段】二次電池の過充電を検出するための過充電検出回路と、過充電の検出時間を所定の遅延時間で遅延させるための遅延回路とを備えた二次電池保護用ICに対して、過充電検出電圧の設計値よりも低い電圧を二次電池保護用ICの電源電圧端子に供給する。電源電圧端子の電流値を監視しつつ、過電流検出遅延時間よりも短い時間間隔で段階的に電源電圧端子の電圧を上昇させる。電源電圧端子に所定の電流値変化が得られたときに電源電圧端子に供給されている電圧を過充電検出電圧として検出する。
【解決手段】二次電池の過充電を検出するための過充電検出回路と、過充電の検出時間を所定の遅延時間で遅延させるための遅延回路とを備えた二次電池保護用ICに対して、過充電検出電圧の設計値よりも低い電圧を二次電池保護用ICの電源電圧端子に供給する。電源電圧端子の電流値を監視しつつ、過電流検出遅延時間よりも短い時間間隔で段階的に電源電圧端子の電圧を上昇させる。電源電圧端子に所定の電流値変化が得られたときに電源電圧端子に供給されている電圧を過充電検出電圧として検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話やノートパソコン、PDA(Personal Digital Assistance)等の各種電子機器に用いる電池パックのリチウム(Li)イオン/リチウム(Li)ポリマー二次電池等の二次電池を過充電や過放電、充電過電流、放電過電流から保護するための二次電池保護用IC(Integrated circuit)の検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やノートパソコン、PDA等の各種電子機器に用いられる電池パックにおける二次電池を過充電や過放電、充電過電流、放電過電流から保護するための技術として、二次電池保護用ICが搭載された二次電池保護モジュールを備えた電池パックがある(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
図7は、二次電池保護用ICが搭載された二次電池保護モジュールを備えた電池パックを説明するためのブロック図である。図8は二次電池保護用ICの概略的な外観図である。
電池パック1は、リチウムイオン二次電池やリチウムポリマー二次電池等の二次電池3と、二次電池保護モジュール5で構成されている。二次電池保護モジュール5は4つの端子BATT+,BATT−,OUT+,OUT−を備えている。端子BATT+,BATT−は二次電池3に接続されている。端子OUT+,OUT−は充電器7、又は携帯電話やノートパソコン、PDA等の負荷に接続される。
【0004】
二次電池保護モジュール5は、二次電池保護用IC9、充電制御用FET(field effect transistor)Q1、放電制御用FETQ2、抵抗素子R1,R2、容量素子C1等を備えている。
二次電池保護モジュール5の主要部を構成する二次電池保護用IC9は、おおまかには過充電検出回路11、過放電検出回路13、放電過電流検出回路15、充電過電流検出回路17、短絡検出回路19、発振回路21とカウンタ23で構成される遅延回路25、論理回路27,29、レベルシフト回路31及び遅延回路33で構成されている。二次電池保護用IC9は、外部接続端子として電源電圧端子VDD、グランド端子VSS、過充電検出出力端子COUT、過放電検出出力端子DOUT及び充電器マイナス電位入力端子V−を備えている。
【0005】
二次電池保護用IC9の基本的な動作を説明する。
過充電検出回路11、過放電検出回路13、放電過電流検出回路15、充電過電流検出回路17又は短絡検出回路19により、過充電、過放電、放電過電流、充電過電流又は短絡が検出されると、発振回路21が動作を開始し、カウンタ23が計数を始める。
カウンタ23によって、それぞれの検出時に予め設定されている遅延時間がカウントされると、過充電又は充電過電流の場合は論理回路27及びレベルシフト回路31を通して過充電検出出力端子COUTの出力がローレベルになって充電制御用FETQ1がオフにされ、過放電、放電過電流、又は短絡の場合は論理回路29を通して過放電検出出力端子DOUTの出力がローレベルになり放電制御用FETQ2がオフにされる。
【0006】
このように、一般的に、二次電池保護用IC9には、過充電、過放電、放電過電流、充電過電流又は短絡が検出された際の動作に対して遅延時間が設定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
二次電池保護用ICに対して、半導体ウエハ上で又はパッケージングされた半導体チップの状態で、過充電検出電圧、過放電検出電圧、充電過電流検出電圧、放電過電流検出電圧についてテストが行なわれる。
各検出電圧を測定する際には、設定されている遅延時間分だけ待ちながら測定を行なわなければならず、二次電池保護用ICのテストに長時間を要するという問題があった。
【0008】
図9は、従来の過充電検出電圧検査時の測定時間を説明するための図である。縦軸は電源電圧端子VDDの電圧(VDD電圧)と過充電検出出力端子COUTの電圧(COUT電圧)を示し、横軸は時間を示す。
【0009】
図8も参照して説明すると、過充電検出電圧テストに際して、グランド端子VSSは接地電位に接続され、充電器マイナス電位入力端子V−には所定の電圧が供給される。過放電検出出力端子DOUTの電圧は電源電圧端子VDDと同じ電圧になる。過充電検出出力端子COUTの電圧を監視しつつ、電源電圧端子VDDの電圧が過充電検出電圧の設計値よりも低い電圧(テスト開始時電圧)から段階的に上げられる。電源電圧端子VDDの電圧が段階的に上げられるときの時間間隔(1ステップの時間)は、二次電池保護用ICに設定されている過充電検出遅延時間tVDET1である。過充電検出出力端子COUTの電圧が電源電圧端子VDDの電圧から充電器マイナス電位入力端子V−の電圧へ変化したときの電源電圧端子VDDの電圧が過充電検出電圧である。
【0010】
図10は、従来の放電過電流検出電圧検査時の測定時間を説明するための図である。縦軸は充電器マイナス電位入力端子V−の電圧(V−電圧)と過放電検出出力端子DOUTの電圧(DOUT電圧)を示し、横軸は時間を示す。
【0011】
図8も参照して説明すると、放電過電流検出電圧テストに際して、グランド端子VSSは接地電位に接続され、電源電圧端子VDDには所定の電圧が供給される。過充電検出出力端子COUTの電圧は電源電圧端子VDDと同じ電圧になる。過放電検出出力端子DOUTの電圧を監視しつつ、充電器マイナス電位入力端子V−の電圧が放電過電流検出電圧の設計値よりも低い電圧(テスト開始時電圧)から段階的に上げられる。充電器マイナス電位入力端子V−の電圧が段階的に上げられるときの時間間隔(1ステップの時間)は、二次電池保護用ICに設定されている放電過電流検出遅延時間tVDET3である。過放電検出出力端子DOUTの電圧が電源電圧端子VDDの電圧からグランド端子VSSの電圧へ変化したとき又は発振したときの充電器マイナス電位入力端子V−の電圧が放電過電流検出電圧である。
【0012】
図11は、従来の充電過電流検出電圧検査時の測定時間を説明するための図である。縦軸は充電器マイナス電位入力端子V−の電圧(V−電圧)と過充電検出出力端子COUTの電圧(COUT電圧)を示し、横軸は時間を示す。
【0013】
図8も参照して説明すると、放電過電流検出電圧テストに際して、グランド端子VSSは接地電位に接続され、電源電圧端子VDDには所定の電圧が供給される。過放電検出出力端子DOUTの電圧は電源電圧端子VDDと同じ電圧になる。過充電検出出力端子COUTの電圧を監視しつつ、充電器マイナス電位入力端子V−の電圧が充電過電流検出電圧の設計値よりも高い電圧(テスト開始時電圧)から段階的に下げられる。充電器マイナス電位入力端子V−の電圧が段階的に下げられるときの時間間隔(1ステップの時間)は、二次電池保護用ICに設定されている充電過電流検出遅延時間tVDET4である。過充電検出出力端子COUTの電圧が電源電圧端子VDDの電圧からグランド端子VSSの電圧へ変化したとき又は発振したときの充電器マイナス電位入力端子V−の電圧が充電過電流検出電圧である。
【0014】
従来の過充電検出電圧テストの場合、電源電圧端子VDDの電圧を1ステップ分上げるごとに少なくとも過充電検出遅延時間tVDET1だけ待つ必要がある。同様に、放電過電流検出電圧テスト及び充電過電流検出電圧テストの場合、充電器マイナス電位入力端子V−の電圧を変化させる際に少なくとも放電過電流検出遅延時間tVDET3又は充電過電流検出遅延時間tVDET4だけ待つ必要がある。
【0015】
過充電検出電圧の測定時間は過充電検出遅延時間tVDET1とステップ数により決まる。例えば、過充電検出遅延時間tVDET1が50ミリ秒、ステップ数が20回の場合、「50ミリ秒×20回=1000ミリ秒=1秒」の時間が過充電検出電圧測定に際して必要になる。
同様に、放電過電流検出電圧の測定時間及び充電過電流検出電圧の測定時間は放電過電流検出遅延時間tVDET3又は充電過電流検出遅延時間tVDET4とステップ数により決まる。例えば、放電過電流検出遅延時間tVDET3及び充電過電流検出遅延時間tVDET4が10ミリ秒、ステップ数が20回の場合、「10ミリ秒×20回=200ミリ秒」の時間が放電過電流検出電圧測定及び充電過電流検出電圧測定に際してそれぞれ必要になる。
【0016】
従来技術では、検出遅延時間を短縮するため、二次電池保護用ICの内部回路にテストモード回路と呼ばれる検出遅延時間の短縮が可能な回路を備えている二次電池保護用ICもある。
しかし、テストモード回路による検出遅延時間の短縮には限界がある。また、テストモード回路を用いた場合、真の測定値から多少なりともズレがあるため、歩留まりを低下させるという問題もあった。
【0017】
本発明は、二次電池保護用ICの過充電検出電圧検査、放電過電流検出電圧検査及び充電過電流検出電圧検査について、検査時間を短縮することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明にかかる二次電池保護用ICの検査方法の一局面は過充電検出電圧の測定に関する。具体的には、本発明の第1局面は、二次電池の過充電を検出するための過充電検出回路と、過充電の検出時間を所定の遅延時間で遅延させるための遅延回路とを備えた二次電池保護用ICについて過充電検出電圧を測定するための二次電池保護用ICの検査方法であって、上記二次電池保護用ICの電源電圧端子の電流値を監視しつつ、連続的に又は上記遅延時間よりも短い時間間隔で段階的に、上記電源電圧端子の電圧を過充電検出電圧の設計値よりも低い電圧から上昇させ、上記電源電圧端子の電流値の変化に基づいて過充電検出電圧を測定する。
【0019】
本発明にかかる二次電池保護用ICの検査方法の他の局面は放電過電流検出電圧の測定に関する。具体的には、本発明の第2局面は、二次電池の放電過電流を検出するための放電過電流検出回路と、放電過電流の検出時間を所定の遅延時間で遅延させるための遅延回路とを備えた二次電池保護用ICについて放電過電流検出電圧を測定するための二次電池保護用ICの検査方法であって、上記二次電池保護用ICの電源電圧端子の電流値を監視しつつ、連続的に又は上記遅延時間よりも短い時間間隔で段階的に、上記二次電池保護用ICの充電器マイナス電位入力端子の電圧を放電過電流検出電圧の設計値よりも高い電圧から降下させ、上記電源電圧端子の電流値の変化に基づいて放電過電流検出電圧を測定する。
【0020】
本発明にかかる二次電池保護用ICの検査方法のさらに他の局面は充電過電流検出電圧の測定に関する。具体的には、本発明の第2局面は、二次電池の充電過電流を検出するための充電過電流検出回路と、充電過電流の検出時間を所定の遅延時間で遅延させるための遅延回路とを備えた二次電池保護用ICについて充電過電流検出電圧を測定するための二次電池保護用ICの検査方法であって、上記二次電池保護用ICの電源電圧端子の電流値を監視しつつ、連続的に又は上記遅延時間よりも短い時間間隔で段階的に、上記二次電池保護用ICの充電器マイナス電位入力端子の電圧を充電過電流検出電圧の設計値よりも低い電圧から上昇させ、上記電源電圧端子の電流値の変化に基づいて充電過電流検出電圧を測定する。
【0021】
本願発明者は、二次電池保護用ICで過充電検出機能、放電過電流検出機能及び放電過充電検出機能が働く際に電源電圧端子の電流が多く流れる方向に変化することを見出した。二次電池保護用ICが過充電や放電過電流、放電過電流を検出したとき、その検出信号が出力されるまでには上述のように遅延時間が設定されているが、過充電検出機能や放電過電流検出機能、放電過電流検出機能が働いた際の電源電圧端子の電流値変化には遅延時間はない。したがって、本発明は、電源電圧端子の電圧又は充電器マイナス電位入力端子の電圧を各検出電圧に対する遅延時間以上の時間間隔をもって変化させなくても、電源電圧端子の電流値変化を監視しつつ、連続的に又は遅延時間未満の時間間隔で段階的に電源電圧端子の電圧又は充電器マイナス電位入力端子を変化させることにより、過充電検出電圧、放電過電流検出電圧又は充電過電流検出電圧を測定できる。
【0022】
本発明の各局面において、上記遅延時間よりも短い時間間隔で段階的に上記電源電圧端子の電圧又は上記充電器マイナス電位入力端子の電圧を上昇又は降下させる場合、当該電圧を所定量だけ上昇又は降下させるステップを電圧上昇ステップ又は電圧降下ステップとし、前記電源電圧端子の電流値の変化を検出するための基準値として1回前の電圧上昇ステップ又は電圧降下ステップにおける電流値を用いる上記電源電圧端子の電流値の変化を検出するための基準値として1ステップ前の電流値を用いる例を挙げることができる。ただし、電源電圧端子の電流値の変化を検出するための基準値は、これに限定されるものではなく、例えば、測定開始時における電源電圧端子の電流値であってもよいし、予め設定された所定の電流値であってもよい。
【0023】
電源電圧端子の電流値の変化は、例えば、電流値の基準値に対する変化率もしくは差分にしきい値を設定しておくことにより、又は、電流値に検出しきい値を予め設定しておくことにより、検出することができる。なお、過充電検出機能や放電過電流検出機能、放電過電流検出機能が働いたことに起因する電源電圧端子の電流値の変化の検出方法はこれらに限定されない。
【発明の効果】
【0024】
本発明の二次電池保護用ICの検査方法は、電源電圧端子の電圧又は充電器マイナス電位入力端子の電圧を各検出電圧に対する遅延時間以上の時間間隔をもって変化させなくても、電源電圧端子の電流値変化を監視しつつ、連続的に又は遅延時間未満の時間間隔で段階的に電源電圧端子の電圧又は充電器マイナス電位入力端子を変化させることにより、過充電検出電圧、放電過電流検出電圧又は充電過電流検出電圧を測定できるので、二次電池保護用ICの過充電検出電圧検査、放電過電流検出電圧検査及び充電過電流検出電圧検査について、検査時間を短縮することができる。
電源電圧端子の電流値変化の監視は電流計を用いることにより行なうことができるので、本発明は、特別な測定機能を用いることなく、安価で低機能な半導体検査装置でも実現できる。
さらに、本発明は、テストモード回路を用いる必要がないので、二次電池保護用ICの回路構成の複雑化及び歩留まりの低下を防止できる。
【0025】
本発明の各局面で、遅延時間よりも短い時間間隔で段階的に電源電圧端子の電圧又は充電器マイナス電位入力端子の電圧を上昇又は降下させる場合、当該電圧を所定量だけ上昇又は降下させるステップを電圧上昇ステップ又は電圧降下ステップとし、電源電圧端子の電流値の変化を検出するための基準値として1回前の電圧上昇ステップ又は電圧降下ステップにおける電流値を用いるようにしてもよい。電圧を段階的に変化させている間にも電流値は徐々に減っていき、テスト開始時電流値と検出時の電流測定値を比較する場合においてはテスト開始時電流値と検出時の電流測定値が同じくらいになってしまう場合も想定されるが、この局面はそのような誤測定になってしまうことを回避できるので、より正確な測定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】過充電検出電圧を測定するための一実施例を説明するためのフローチャートである。
【図2】同実施例における過充電検出電圧検査時の測定時間を説明するための図である。
【図3】放電過電流検出電圧を測定するための一実施例を説明するためのフローチャートである。
【図4】同実施例における放電過電流検出電圧検査時の測定時間を説明するための図である。
【図5】充電過電流検出電圧を測定するための一実施例を説明するためのフローチャートである。
【図6】同実施例における充電過電流検出電圧検査時の測定時間を説明するための図である。
【図7】二次電池保護用ICが搭載された二次電池保護モジュールを備えた電池パックを説明するためのブロック図である。
【図8】二次電池保護用ICの概略的な外観図である。
【図9】従来の過充電検出電圧検査時の測定時間を説明するための図である。
【図10】従来の放電過電流検出電圧検査時の測定時間を説明するための図である。
【図11】従来の充電過電流検出電圧検査時の測定時間を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、過充電検出電圧を測定するための一実施例を説明するためのフローチャートである。図2は、この実施例における過充電検出電圧検査時の測定時間を説明するための図である。図2で、縦軸は電源電圧端子VDDの電圧(VDD電圧)と電流(VDD電流)を示し、横軸は時間を示す。図7及び図8も参照してこの実施例を説明する。
【0028】
ステップS1:過充電検出電圧の設計値よりも低い電圧(テスト開始時電圧)を電源電圧端子VDDに供給する。二次電池保護用IC9のグランド端子VSSを接地電位に接続する。充電器マイナス電位入力端子V−に所定の電圧を供給する。過充電検出出力端子COUT及び過放電検出出力端子DOUTの電圧は電源電圧端子VDDと同じ電圧になる。電源電圧端子VDDの電流値の変化を監視する。
例えば、過充電検出電圧の設計値は4.2V、電源電圧端子VDDに供給するテスト開始時電圧は4.193V、充電器マイナス電位入力端子V−に供給する電圧は−3Vであり、このときの電源電圧端子VDDの電流値(テスト開始時電流)は約4.0μA(マイクロアンペア)である。
【0029】
ステップS2:電源電圧端子VDDの電流値に、テスト開始時の電流値に対して所定の電流値変化が生じたかどうかを判断する。例えば、所定の電流値変化は、テスト開始時の電流値(約4.0μA)に対して0.3μA以上上昇したときと設定される。電源電圧端子VDDにテスト開始時電圧が供給されている状態では電源電圧端子VDDの電流値に変化は生じていないので(No)、ステップ3に進む。なお、テスト開始時の電流値や、所定の電流値変化を検出するための基準値は一例であり、これらの値は被検査対象の二次電池保護用ICの種類や製造プロセスでのパラメータ等によって異なることは言うまでもない。
【0030】
ステップS3:電源電圧端子VDDの電圧を所定量だけ上昇させる(電圧上昇ステップ)。例えば、電源電圧端子VDDの電圧を1.0mV(ミリボルト)上昇させる。このとき、電源電圧端子VDDの電流値は約10nA(ナノアンペア)減少する。ステップS2に戻って、電源電圧端子VDDの電流値に、テスト開始時の電流値に対して所定の電流値変化が生じたかどうかを判断する。二次電池保護用IC9の電源電圧端子VDDの電圧が過充電検出電圧以上になって過充電検出機能(例えば図7の過充電検出回路11、ならびに発振回路21及びカウンタ23で構成される遅延回路25)が動作すると、電源電圧端子VDDの電流値は例えば約4.4μAに上昇する。ステップS2で電源電圧端子VDDに所定の電流値変化が生じるまでステップS3及びステップS2を繰り返す。電源電圧端子VDDの電圧を上昇させる時間間隔は、例えば1ミリ秒以下、ここでは500マイクロ秒(μS)である。ただし、この時間間隔はこれらの時間に限定されない。この時間間隔は二次電池保護用IC9に設定された過充電検出遅延時間よりも短ければよく、例えば数百マイクロ秒であってもよい。また、電源電圧端子VDDの電圧を連続的に上昇させてもよい。二次電池保護用IC9が過充電を検出したとき、その検出信号が過充電検出出力端子COUTに出力されるまでには過充電検出遅延時間を要するが、過充電検出機能が働いた際の電源電圧端子VDDの電流値変化には遅延時間はないので、電源電圧端子VDDの電圧を上昇させる時間間隔を過充電検出遅延時間よりも短くすることができる。
【0031】
ステップS4:ステップS2で電源電圧端子VDDに所定の電流値変化を検出したとき(Yes)に電源電圧端子VDDに供給されている電圧を過充電検出電圧とする。このように、この実施例では、電源電圧端子VDDの電流値変化を監視しつつ、過充電検出遅延時間未満の時間間隔(500マイクロ秒間隔)で段階的に電源電圧端子VDDの電圧を上昇させることにより、過充電検出電圧を測定できる。
【0032】
例えば、電源電圧端子VDDの電圧を上昇させる時間間隔が500マイクロ秒、ステップ数が20回の場合、過充電検出電圧測定に必要な時間は「500マイクロ秒×20回=10000マイクロ秒=10ミリ秒」である。従来技術は、過充電検出電圧測定に際して、電源電圧端子VDDの電圧を上昇させる時間間隔について過充電検出遅延時間(例えば50ミリ秒)以上の時間が必要であり、ステップ数が20回の場合、少なくとも「50ミリ秒×20回=1000ミリ秒=1秒」の時間が必要であった。したがって、この実施例は、従来技術に比べて、過充電検出電圧測定時間を約1/100に短縮することができる。過充電検出電圧測定には、プログラムの命令文における時間情報や測定値情報を読み取る時間などが含まれるため、実際には測定時間は1/100にはならないが、この実施例は、1回の測定当り、従来技術では1秒かかっていた時間を10ミリ秒に短縮、すなわち990ミリ秒の測定時間の短縮を実現できる。
【0033】
図3は、放電過電流検出電圧を測定するための一実施例を説明するためのフローチャートである。図4は、この実施例における放電過電流検出電圧検査時の測定時間を説明するための図である。図4で、縦軸は充電器マイナス電位入力端子V−の電圧(V−電圧)と電源電圧端子VDDの電流(VDD電流)を示し、横軸は時間を示す。図7及び図8も参照してこの実施例を説明する。
【0034】
ステップS11:放電過電流検出電圧の設計値よりも低い電圧(テスト開始時電圧)を充電器マイナス電位入力端子V−に供給する。二次電池保護用IC9のグランド端子VSSを接地電位に接続する。電源電圧端子VDDに所定の電圧を供給する。過充電検出出力端子COUT及び過放電検出出力端子DOUTの電圧は電源電圧端子VDDと同じ電圧になる。電源電圧端子VDDの電流値の変化を監視する。
例えば、放電過電流検出電圧の設計値は0.2V、充電器マイナス電位入力端子V−に供給するテスト開始時電圧は0.193V、電源電圧端子に供給する電圧は3Vであり、このときの電源電圧端子VDDの電流値(テスト開始時電流)は約4.0μAである。
【0035】
ステップS12:電源電圧端子VDDの電流値に、テスト開始時の電流値に対して所定の電流値変化が生じたかどうかを判断する。例えば、所定の電流値変化は、テスト開始時の電流値(約4.0μA)に対して0.3μA以上上昇したときと設定される。充電器マイナス電位入力端子V−にテスト開始時電圧が供給されている状態では電源電圧端子VDDの電流値に変化は生じていないので(No)、ステップ13に進む。なお、テスト開始時の電流値や、所定の電流値変化を検出するための基準値は一例であり、これらの値は被検査対象の二次電池保護用ICの種類や製造プロセスでのパラメータ等によって異なることは言うまでもない。
【0036】
ステップS13:充電器マイナス電位入力端子V−の電圧を所定量だけ上昇させる(電圧上昇ステップ)。例えば、電源電圧端子VDDの電圧を1.0mV上昇させる。ステップS12に戻って、電源電圧端子VDDの電流値に、テスト開始時の電流値に対して所定の電流値変化が生じたかどうかを判断する。二次電池保護用IC9の充電器マイナス電位入力端子V−の電圧が放電過電流検出電圧以上になって放電過電流検出機能(例えば図7の放電過電流検出回路15、ならびに発振回路21及びカウンタ23で構成される遅延回路25)が動作すると、電源電圧端子VDDの電流値は例えば約4.4μAに上昇する。ステップS12で電源電圧端子VDDに所定の電流値変化が生じるまでステップS13及びステップS12を繰り返す。充電器マイナス電位入力端子V−の電圧を上昇させる時間間隔は、例えば1ミリ秒以下、ここでは500マイクロ秒(μS)である。ただし、この時間間隔はこれらの時間に限定されない。この時間間隔は二次電池保護用IC9に設定された放電過電流検出遅延時間よりも短ければよく、例えば数百マイクロ秒であってもよい。また、充電器マイナス電位入力端子V−の電圧を連続的に上昇させてもよい。二次電池保護用IC9が放電過電流を検出したとき、その検出信号が過放電検出出力端子DOUTに出力されるまでには放電過電流検出遅延時間を要するが、放電過電流検出機能が働いた際の電源電圧端子VDDの電流値変化には遅延時間はないので、充電器マイナス電位入力端子V−の電圧を上昇させる時間間隔を放電過電流検出遅延時間よりも短くすることができる。
【0037】
ステップS14:ステップS12で電源電圧端子VDDに所定の電流値変化を検出したとき(Yes)に充電器マイナス電位入力端子V−に供給されている電圧を放電過電流検出電圧とする。このように、この実施例では、電源電圧端子VDDの電流値変化を監視しつつ、放電過電流検出遅延時間未満の時間間隔(500マイクロ秒間隔)で段階的に充電器マイナス電位入力端子V−の電圧を上昇させることにより、放電過電流検出電圧を測定できる。
【0038】
例えば、充電器マイナス電位入力端子V−の電圧を上昇させる時間間隔が500マイクロ秒、ステップ数が20回の場合、放電過電流検出電圧測定に必要な時間は「500マイクロ秒×20回=10000マイクロ秒=10ミリ秒」である。従来技術は、放電過電流検出電圧測定に際して、充電器マイナス電位入力端子V−の電圧を上昇させる時間間隔について放電過電流検出遅延時間(例えば10ミリ秒)以上の時間が必要であり、ステップ数が20回の場合、少なくとも「10ミリ秒×20回=200ミリ秒」の時間が必要であった。したがって、この実施例は、1回の測定当り、従来技術では200ミリ秒かかっていた時間を10ミリ秒に短縮、すなわち190ミリ秒の測定時間の短縮を実現できる。
【0039】
図5は、充電過電流検出電圧を測定するための一実施例を説明するためのフローチャートである。図6は、この実施例における充電過電流検出電圧検査時の測定時間を説明するための図である。図6で、縦軸は充電器マイナス電位入力端子V−の電圧(V−電圧)と電源電圧端子VDDの電流(VDD電流)を示し、横軸は時間を示す。図7及び図8も参照してこの実施例を説明する。
【0040】
ステップS21:充電過電流検出電圧の設計値よりも高い電圧(テスト開始時電圧)を充電器マイナス電位入力端子V−に供給する。二次電池保護用IC9のグランド端子VSSを接地電位に接続する。電源電圧端子VDDに所定の電圧を供給する。過充電検出出力端子COUT及び過放電検出出力端子DOUTの電圧は電源電圧端子VDDと同じ電圧になる。電源電圧端子VDDの電流値の変化を監視する。
例えば、充電過電流検出電圧の設計値は−0.2V、充電器マイナス電位入力端子V−に供給するテスト開始時電圧は−0.193V、電源電圧端子に供給する電圧は3Vであり、このときの電源電圧端子VDDの電流値(テスト開始時電流)は約4.0μAである。
【0041】
ステップS22:電源電圧端子VDDの電流値に、テスト開始時の電流値に対して所定の電流値変化が生じたかどうかを判断する。例えば、所定の電流値変化は、テスト開始時の電流値(約4.0μA)に対して0.3μA以上上昇したときと設定される。充電器マイナス電位入力端子V−にテスト開始時電圧が供給されている状態では電源電圧端子VDDの電流値に変化は生じていないので(No)、ステップ23に進む。なお、テスト開始時の電流値や、所定の電流値変化を検出するための基準値は一例であり、これらの値は被検査対象の二次電池保護用ICの種類や製造プロセスでのパラメータ等によって異なることは言うまでもない。
【0042】
ステップS23:充電器マイナス電位入力端子V−の電圧を所定量だけ降下させる(電圧降下ステップ)。例えば、電源電圧端子VDDの電圧を1.0mV降下させる。ステップS22に戻って、電源電圧端子VDDの電流値に、テスト開始時の電流値に対して所定の電流値変化が生じたかどうかを判断する。二次電池保護用IC9の充電器マイナス電位入力端子V−の電圧が充電過電流検出電圧以下になって充電過電流検出機能(例えば図7の充電過電流検出回路17、ならびに発振回路21及びカウンタ23で構成される遅延回路25)が動作すると、電源電圧端子VDDの電流値は例えば約4.4μAに上昇する。ステップS22で電源電圧端子VDDに所定の電流値変化が生じるまでステップS23及びステップS22を繰り返す。充電器マイナス電位入力端子V−の電圧を降下させる時間間隔は、例えば1ミリ秒以下、ここでは500マイクロ秒(μS)である。ただし、この時間間隔はこれらの時間に限定されない。この時間間隔は二次電池保護用IC9に設定された充電過電流検出遅延時間よりも短ければよく、例えば数百マイクロ秒であってもよい。また、充電器マイナス電位入力端子V−の電圧を連続的に効果させてもよい。二次電池保護用IC9が充電過電流を検出したとき、その検出信号が過充電検出出力端子COUTに出力されるまでには充電過電流検出遅延時間を要するが、充電過電流検出機能が働いた際の電源電圧端子VDDの電流値変化には遅延時間はないので、充電器マイナス電位入力端子V−の電圧を降下させる時間間隔を充電過電流検出遅延時間よりも短くすることができる。
【0043】
ステップS24:ステップS22で電源電圧端子VDDに所定の電流値変化を検出したとき(Yes)に充電器マイナス電位入力端子V−に供給されている電圧を充電過電流検出電圧とする。このように、この実施例では、電源電圧端子VDDの電流値変化を監視しつつ、充電過電流検出遅延時間未満の時間間隔(500マイクロ秒間隔)で段階的に充電器マイナス電位入力端子V−の電圧を降下させることにより、充電過電流検出電圧を測定できる。
【0044】
例えば、充電器マイナス電位入力端子V−の電圧を降下させる時間間隔が500マイクロ秒、ステップ数が20回の場合、充電過電流検出電圧測定に必要な時間は「500マイクロ秒×20回=10000マイクロ秒=10ミリ秒」である。従来技術は、充電過電流検出電圧測定に際して、充電器マイナス電位入力端子V−の電圧を降下させる時間間隔について充電過電流検出遅延時間(例えば10ミリ秒)以上の時間が必要であり、ステップ数が20回の場合、少なくとも「10ミリ秒×20回=200ミリ秒」の時間が必要であった。したがって、この実施例は、1回の測定当り、従来技術では200ミリ秒かかっていた時間を10ミリ秒に短縮、すなわち190ミリ秒の測定時間の短縮を実現できる。
【0045】
以上、本発明の実施例を説明したが、上記実施例における電圧値、電流値、時間設定、回路構成等は一例であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、上記実施例は、電源電圧端子の電流値変化を検出するための基準値として、測定開始時の電源電圧端子の電流値を用いているが、当該基準値はこれに限定されない。例えば、当該基準値は、1回前の電圧上昇ステップ又は電圧降下ステップにおける電流値であってもよいし、予め設定された所定の電流値であってもよい。
【0046】
また、上記実施例は、電源電圧端子の電流値変化を、電流値の基準値に対する差分にしきい値を設定しておくことにより検出しているが、電源電圧端子の電流値変化の検出方法はこれに限定されない。例えば、電源電圧端子の電流値変化の検出は、電流値の基準値に対する変化率を求めて行なってもよいし、電流値に検出しきい値を予め設定しておくことにより行なってもよい。
【0047】
また、上記実施例は、図7及び図8を参照して説明した二次電池保護用IC9を用いているが、本発明が適用される二次電池保護用ICはこれに限定されるものではなく、過充電検出回路、放電過電流検出回路、充電過電流検出回路、及びそれらの検出遅延時間を設定する遅延回路を備えた二次電池保護用ICに本発明を適用できる。なお、過充電検出回路、放電過電流検出回路、充電過電流検出回路及びそれらの検出遅延時間を設定する遅延回路の回路構成は問わない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、携帯電話やノートパソコン、PDA等の各種電子機器に用いられる電池パックにおける二次電池を過充電や過放電、充電過電流、放電過電流から保護するための二次電池保護用ICの検査に応用される。
【符号の説明】
【0049】
3 二次電池
9 二次電池保護用IC
11 過充電検出回路
15 放電過電流検出回路
17 充電過電流検出回路
25 遅延回路
VDD 電源電圧端子
V− 充電器マイナス電位入力端子
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】
【特許文献1】特開2002−176730号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話やノートパソコン、PDA(Personal Digital Assistance)等の各種電子機器に用いる電池パックのリチウム(Li)イオン/リチウム(Li)ポリマー二次電池等の二次電池を過充電や過放電、充電過電流、放電過電流から保護するための二次電池保護用IC(Integrated circuit)の検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やノートパソコン、PDA等の各種電子機器に用いられる電池パックにおける二次電池を過充電や過放電、充電過電流、放電過電流から保護するための技術として、二次電池保護用ICが搭載された二次電池保護モジュールを備えた電池パックがある(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
図7は、二次電池保護用ICが搭載された二次電池保護モジュールを備えた電池パックを説明するためのブロック図である。図8は二次電池保護用ICの概略的な外観図である。
電池パック1は、リチウムイオン二次電池やリチウムポリマー二次電池等の二次電池3と、二次電池保護モジュール5で構成されている。二次電池保護モジュール5は4つの端子BATT+,BATT−,OUT+,OUT−を備えている。端子BATT+,BATT−は二次電池3に接続されている。端子OUT+,OUT−は充電器7、又は携帯電話やノートパソコン、PDA等の負荷に接続される。
【0004】
二次電池保護モジュール5は、二次電池保護用IC9、充電制御用FET(field effect transistor)Q1、放電制御用FETQ2、抵抗素子R1,R2、容量素子C1等を備えている。
二次電池保護モジュール5の主要部を構成する二次電池保護用IC9は、おおまかには過充電検出回路11、過放電検出回路13、放電過電流検出回路15、充電過電流検出回路17、短絡検出回路19、発振回路21とカウンタ23で構成される遅延回路25、論理回路27,29、レベルシフト回路31及び遅延回路33で構成されている。二次電池保護用IC9は、外部接続端子として電源電圧端子VDD、グランド端子VSS、過充電検出出力端子COUT、過放電検出出力端子DOUT及び充電器マイナス電位入力端子V−を備えている。
【0005】
二次電池保護用IC9の基本的な動作を説明する。
過充電検出回路11、過放電検出回路13、放電過電流検出回路15、充電過電流検出回路17又は短絡検出回路19により、過充電、過放電、放電過電流、充電過電流又は短絡が検出されると、発振回路21が動作を開始し、カウンタ23が計数を始める。
カウンタ23によって、それぞれの検出時に予め設定されている遅延時間がカウントされると、過充電又は充電過電流の場合は論理回路27及びレベルシフト回路31を通して過充電検出出力端子COUTの出力がローレベルになって充電制御用FETQ1がオフにされ、過放電、放電過電流、又は短絡の場合は論理回路29を通して過放電検出出力端子DOUTの出力がローレベルになり放電制御用FETQ2がオフにされる。
【0006】
このように、一般的に、二次電池保護用IC9には、過充電、過放電、放電過電流、充電過電流又は短絡が検出された際の動作に対して遅延時間が設定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
二次電池保護用ICに対して、半導体ウエハ上で又はパッケージングされた半導体チップの状態で、過充電検出電圧、過放電検出電圧、充電過電流検出電圧、放電過電流検出電圧についてテストが行なわれる。
各検出電圧を測定する際には、設定されている遅延時間分だけ待ちながら測定を行なわなければならず、二次電池保護用ICのテストに長時間を要するという問題があった。
【0008】
図9は、従来の過充電検出電圧検査時の測定時間を説明するための図である。縦軸は電源電圧端子VDDの電圧(VDD電圧)と過充電検出出力端子COUTの電圧(COUT電圧)を示し、横軸は時間を示す。
【0009】
図8も参照して説明すると、過充電検出電圧テストに際して、グランド端子VSSは接地電位に接続され、充電器マイナス電位入力端子V−には所定の電圧が供給される。過放電検出出力端子DOUTの電圧は電源電圧端子VDDと同じ電圧になる。過充電検出出力端子COUTの電圧を監視しつつ、電源電圧端子VDDの電圧が過充電検出電圧の設計値よりも低い電圧(テスト開始時電圧)から段階的に上げられる。電源電圧端子VDDの電圧が段階的に上げられるときの時間間隔(1ステップの時間)は、二次電池保護用ICに設定されている過充電検出遅延時間tVDET1である。過充電検出出力端子COUTの電圧が電源電圧端子VDDの電圧から充電器マイナス電位入力端子V−の電圧へ変化したときの電源電圧端子VDDの電圧が過充電検出電圧である。
【0010】
図10は、従来の放電過電流検出電圧検査時の測定時間を説明するための図である。縦軸は充電器マイナス電位入力端子V−の電圧(V−電圧)と過放電検出出力端子DOUTの電圧(DOUT電圧)を示し、横軸は時間を示す。
【0011】
図8も参照して説明すると、放電過電流検出電圧テストに際して、グランド端子VSSは接地電位に接続され、電源電圧端子VDDには所定の電圧が供給される。過充電検出出力端子COUTの電圧は電源電圧端子VDDと同じ電圧になる。過放電検出出力端子DOUTの電圧を監視しつつ、充電器マイナス電位入力端子V−の電圧が放電過電流検出電圧の設計値よりも低い電圧(テスト開始時電圧)から段階的に上げられる。充電器マイナス電位入力端子V−の電圧が段階的に上げられるときの時間間隔(1ステップの時間)は、二次電池保護用ICに設定されている放電過電流検出遅延時間tVDET3である。過放電検出出力端子DOUTの電圧が電源電圧端子VDDの電圧からグランド端子VSSの電圧へ変化したとき又は発振したときの充電器マイナス電位入力端子V−の電圧が放電過電流検出電圧である。
【0012】
図11は、従来の充電過電流検出電圧検査時の測定時間を説明するための図である。縦軸は充電器マイナス電位入力端子V−の電圧(V−電圧)と過充電検出出力端子COUTの電圧(COUT電圧)を示し、横軸は時間を示す。
【0013】
図8も参照して説明すると、放電過電流検出電圧テストに際して、グランド端子VSSは接地電位に接続され、電源電圧端子VDDには所定の電圧が供給される。過放電検出出力端子DOUTの電圧は電源電圧端子VDDと同じ電圧になる。過充電検出出力端子COUTの電圧を監視しつつ、充電器マイナス電位入力端子V−の電圧が充電過電流検出電圧の設計値よりも高い電圧(テスト開始時電圧)から段階的に下げられる。充電器マイナス電位入力端子V−の電圧が段階的に下げられるときの時間間隔(1ステップの時間)は、二次電池保護用ICに設定されている充電過電流検出遅延時間tVDET4である。過充電検出出力端子COUTの電圧が電源電圧端子VDDの電圧からグランド端子VSSの電圧へ変化したとき又は発振したときの充電器マイナス電位入力端子V−の電圧が充電過電流検出電圧である。
【0014】
従来の過充電検出電圧テストの場合、電源電圧端子VDDの電圧を1ステップ分上げるごとに少なくとも過充電検出遅延時間tVDET1だけ待つ必要がある。同様に、放電過電流検出電圧テスト及び充電過電流検出電圧テストの場合、充電器マイナス電位入力端子V−の電圧を変化させる際に少なくとも放電過電流検出遅延時間tVDET3又は充電過電流検出遅延時間tVDET4だけ待つ必要がある。
【0015】
過充電検出電圧の測定時間は過充電検出遅延時間tVDET1とステップ数により決まる。例えば、過充電検出遅延時間tVDET1が50ミリ秒、ステップ数が20回の場合、「50ミリ秒×20回=1000ミリ秒=1秒」の時間が過充電検出電圧測定に際して必要になる。
同様に、放電過電流検出電圧の測定時間及び充電過電流検出電圧の測定時間は放電過電流検出遅延時間tVDET3又は充電過電流検出遅延時間tVDET4とステップ数により決まる。例えば、放電過電流検出遅延時間tVDET3及び充電過電流検出遅延時間tVDET4が10ミリ秒、ステップ数が20回の場合、「10ミリ秒×20回=200ミリ秒」の時間が放電過電流検出電圧測定及び充電過電流検出電圧測定に際してそれぞれ必要になる。
【0016】
従来技術では、検出遅延時間を短縮するため、二次電池保護用ICの内部回路にテストモード回路と呼ばれる検出遅延時間の短縮が可能な回路を備えている二次電池保護用ICもある。
しかし、テストモード回路による検出遅延時間の短縮には限界がある。また、テストモード回路を用いた場合、真の測定値から多少なりともズレがあるため、歩留まりを低下させるという問題もあった。
【0017】
本発明は、二次電池保護用ICの過充電検出電圧検査、放電過電流検出電圧検査及び充電過電流検出電圧検査について、検査時間を短縮することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明にかかる二次電池保護用ICの検査方法の一局面は過充電検出電圧の測定に関する。具体的には、本発明の第1局面は、二次電池の過充電を検出するための過充電検出回路と、過充電の検出時間を所定の遅延時間で遅延させるための遅延回路とを備えた二次電池保護用ICについて過充電検出電圧を測定するための二次電池保護用ICの検査方法であって、上記二次電池保護用ICの電源電圧端子の電流値を監視しつつ、連続的に又は上記遅延時間よりも短い時間間隔で段階的に、上記電源電圧端子の電圧を過充電検出電圧の設計値よりも低い電圧から上昇させ、上記電源電圧端子の電流値の変化に基づいて過充電検出電圧を測定する。
【0019】
本発明にかかる二次電池保護用ICの検査方法の他の局面は放電過電流検出電圧の測定に関する。具体的には、本発明の第2局面は、二次電池の放電過電流を検出するための放電過電流検出回路と、放電過電流の検出時間を所定の遅延時間で遅延させるための遅延回路とを備えた二次電池保護用ICについて放電過電流検出電圧を測定するための二次電池保護用ICの検査方法であって、上記二次電池保護用ICの電源電圧端子の電流値を監視しつつ、連続的に又は上記遅延時間よりも短い時間間隔で段階的に、上記二次電池保護用ICの充電器マイナス電位入力端子の電圧を放電過電流検出電圧の設計値よりも高い電圧から降下させ、上記電源電圧端子の電流値の変化に基づいて放電過電流検出電圧を測定する。
【0020】
本発明にかかる二次電池保護用ICの検査方法のさらに他の局面は充電過電流検出電圧の測定に関する。具体的には、本発明の第2局面は、二次電池の充電過電流を検出するための充電過電流検出回路と、充電過電流の検出時間を所定の遅延時間で遅延させるための遅延回路とを備えた二次電池保護用ICについて充電過電流検出電圧を測定するための二次電池保護用ICの検査方法であって、上記二次電池保護用ICの電源電圧端子の電流値を監視しつつ、連続的に又は上記遅延時間よりも短い時間間隔で段階的に、上記二次電池保護用ICの充電器マイナス電位入力端子の電圧を充電過電流検出電圧の設計値よりも低い電圧から上昇させ、上記電源電圧端子の電流値の変化に基づいて充電過電流検出電圧を測定する。
【0021】
本願発明者は、二次電池保護用ICで過充電検出機能、放電過電流検出機能及び放電過充電検出機能が働く際に電源電圧端子の電流が多く流れる方向に変化することを見出した。二次電池保護用ICが過充電や放電過電流、放電過電流を検出したとき、その検出信号が出力されるまでには上述のように遅延時間が設定されているが、過充電検出機能や放電過電流検出機能、放電過電流検出機能が働いた際の電源電圧端子の電流値変化には遅延時間はない。したがって、本発明は、電源電圧端子の電圧又は充電器マイナス電位入力端子の電圧を各検出電圧に対する遅延時間以上の時間間隔をもって変化させなくても、電源電圧端子の電流値変化を監視しつつ、連続的に又は遅延時間未満の時間間隔で段階的に電源電圧端子の電圧又は充電器マイナス電位入力端子を変化させることにより、過充電検出電圧、放電過電流検出電圧又は充電過電流検出電圧を測定できる。
【0022】
本発明の各局面において、上記遅延時間よりも短い時間間隔で段階的に上記電源電圧端子の電圧又は上記充電器マイナス電位入力端子の電圧を上昇又は降下させる場合、当該電圧を所定量だけ上昇又は降下させるステップを電圧上昇ステップ又は電圧降下ステップとし、前記電源電圧端子の電流値の変化を検出するための基準値として1回前の電圧上昇ステップ又は電圧降下ステップにおける電流値を用いる上記電源電圧端子の電流値の変化を検出するための基準値として1ステップ前の電流値を用いる例を挙げることができる。ただし、電源電圧端子の電流値の変化を検出するための基準値は、これに限定されるものではなく、例えば、測定開始時における電源電圧端子の電流値であってもよいし、予め設定された所定の電流値であってもよい。
【0023】
電源電圧端子の電流値の変化は、例えば、電流値の基準値に対する変化率もしくは差分にしきい値を設定しておくことにより、又は、電流値に検出しきい値を予め設定しておくことにより、検出することができる。なお、過充電検出機能や放電過電流検出機能、放電過電流検出機能が働いたことに起因する電源電圧端子の電流値の変化の検出方法はこれらに限定されない。
【発明の効果】
【0024】
本発明の二次電池保護用ICの検査方法は、電源電圧端子の電圧又は充電器マイナス電位入力端子の電圧を各検出電圧に対する遅延時間以上の時間間隔をもって変化させなくても、電源電圧端子の電流値変化を監視しつつ、連続的に又は遅延時間未満の時間間隔で段階的に電源電圧端子の電圧又は充電器マイナス電位入力端子を変化させることにより、過充電検出電圧、放電過電流検出電圧又は充電過電流検出電圧を測定できるので、二次電池保護用ICの過充電検出電圧検査、放電過電流検出電圧検査及び充電過電流検出電圧検査について、検査時間を短縮することができる。
電源電圧端子の電流値変化の監視は電流計を用いることにより行なうことができるので、本発明は、特別な測定機能を用いることなく、安価で低機能な半導体検査装置でも実現できる。
さらに、本発明は、テストモード回路を用いる必要がないので、二次電池保護用ICの回路構成の複雑化及び歩留まりの低下を防止できる。
【0025】
本発明の各局面で、遅延時間よりも短い時間間隔で段階的に電源電圧端子の電圧又は充電器マイナス電位入力端子の電圧を上昇又は降下させる場合、当該電圧を所定量だけ上昇又は降下させるステップを電圧上昇ステップ又は電圧降下ステップとし、電源電圧端子の電流値の変化を検出するための基準値として1回前の電圧上昇ステップ又は電圧降下ステップにおける電流値を用いるようにしてもよい。電圧を段階的に変化させている間にも電流値は徐々に減っていき、テスト開始時電流値と検出時の電流測定値を比較する場合においてはテスト開始時電流値と検出時の電流測定値が同じくらいになってしまう場合も想定されるが、この局面はそのような誤測定になってしまうことを回避できるので、より正確な測定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】過充電検出電圧を測定するための一実施例を説明するためのフローチャートである。
【図2】同実施例における過充電検出電圧検査時の測定時間を説明するための図である。
【図3】放電過電流検出電圧を測定するための一実施例を説明するためのフローチャートである。
【図4】同実施例における放電過電流検出電圧検査時の測定時間を説明するための図である。
【図5】充電過電流検出電圧を測定するための一実施例を説明するためのフローチャートである。
【図6】同実施例における充電過電流検出電圧検査時の測定時間を説明するための図である。
【図7】二次電池保護用ICが搭載された二次電池保護モジュールを備えた電池パックを説明するためのブロック図である。
【図8】二次電池保護用ICの概略的な外観図である。
【図9】従来の過充電検出電圧検査時の測定時間を説明するための図である。
【図10】従来の放電過電流検出電圧検査時の測定時間を説明するための図である。
【図11】従来の充電過電流検出電圧検査時の測定時間を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、過充電検出電圧を測定するための一実施例を説明するためのフローチャートである。図2は、この実施例における過充電検出電圧検査時の測定時間を説明するための図である。図2で、縦軸は電源電圧端子VDDの電圧(VDD電圧)と電流(VDD電流)を示し、横軸は時間を示す。図7及び図8も参照してこの実施例を説明する。
【0028】
ステップS1:過充電検出電圧の設計値よりも低い電圧(テスト開始時電圧)を電源電圧端子VDDに供給する。二次電池保護用IC9のグランド端子VSSを接地電位に接続する。充電器マイナス電位入力端子V−に所定の電圧を供給する。過充電検出出力端子COUT及び過放電検出出力端子DOUTの電圧は電源電圧端子VDDと同じ電圧になる。電源電圧端子VDDの電流値の変化を監視する。
例えば、過充電検出電圧の設計値は4.2V、電源電圧端子VDDに供給するテスト開始時電圧は4.193V、充電器マイナス電位入力端子V−に供給する電圧は−3Vであり、このときの電源電圧端子VDDの電流値(テスト開始時電流)は約4.0μA(マイクロアンペア)である。
【0029】
ステップS2:電源電圧端子VDDの電流値に、テスト開始時の電流値に対して所定の電流値変化が生じたかどうかを判断する。例えば、所定の電流値変化は、テスト開始時の電流値(約4.0μA)に対して0.3μA以上上昇したときと設定される。電源電圧端子VDDにテスト開始時電圧が供給されている状態では電源電圧端子VDDの電流値に変化は生じていないので(No)、ステップ3に進む。なお、テスト開始時の電流値や、所定の電流値変化を検出するための基準値は一例であり、これらの値は被検査対象の二次電池保護用ICの種類や製造プロセスでのパラメータ等によって異なることは言うまでもない。
【0030】
ステップS3:電源電圧端子VDDの電圧を所定量だけ上昇させる(電圧上昇ステップ)。例えば、電源電圧端子VDDの電圧を1.0mV(ミリボルト)上昇させる。このとき、電源電圧端子VDDの電流値は約10nA(ナノアンペア)減少する。ステップS2に戻って、電源電圧端子VDDの電流値に、テスト開始時の電流値に対して所定の電流値変化が生じたかどうかを判断する。二次電池保護用IC9の電源電圧端子VDDの電圧が過充電検出電圧以上になって過充電検出機能(例えば図7の過充電検出回路11、ならびに発振回路21及びカウンタ23で構成される遅延回路25)が動作すると、電源電圧端子VDDの電流値は例えば約4.4μAに上昇する。ステップS2で電源電圧端子VDDに所定の電流値変化が生じるまでステップS3及びステップS2を繰り返す。電源電圧端子VDDの電圧を上昇させる時間間隔は、例えば1ミリ秒以下、ここでは500マイクロ秒(μS)である。ただし、この時間間隔はこれらの時間に限定されない。この時間間隔は二次電池保護用IC9に設定された過充電検出遅延時間よりも短ければよく、例えば数百マイクロ秒であってもよい。また、電源電圧端子VDDの電圧を連続的に上昇させてもよい。二次電池保護用IC9が過充電を検出したとき、その検出信号が過充電検出出力端子COUTに出力されるまでには過充電検出遅延時間を要するが、過充電検出機能が働いた際の電源電圧端子VDDの電流値変化には遅延時間はないので、電源電圧端子VDDの電圧を上昇させる時間間隔を過充電検出遅延時間よりも短くすることができる。
【0031】
ステップS4:ステップS2で電源電圧端子VDDに所定の電流値変化を検出したとき(Yes)に電源電圧端子VDDに供給されている電圧を過充電検出電圧とする。このように、この実施例では、電源電圧端子VDDの電流値変化を監視しつつ、過充電検出遅延時間未満の時間間隔(500マイクロ秒間隔)で段階的に電源電圧端子VDDの電圧を上昇させることにより、過充電検出電圧を測定できる。
【0032】
例えば、電源電圧端子VDDの電圧を上昇させる時間間隔が500マイクロ秒、ステップ数が20回の場合、過充電検出電圧測定に必要な時間は「500マイクロ秒×20回=10000マイクロ秒=10ミリ秒」である。従来技術は、過充電検出電圧測定に際して、電源電圧端子VDDの電圧を上昇させる時間間隔について過充電検出遅延時間(例えば50ミリ秒)以上の時間が必要であり、ステップ数が20回の場合、少なくとも「50ミリ秒×20回=1000ミリ秒=1秒」の時間が必要であった。したがって、この実施例は、従来技術に比べて、過充電検出電圧測定時間を約1/100に短縮することができる。過充電検出電圧測定には、プログラムの命令文における時間情報や測定値情報を読み取る時間などが含まれるため、実際には測定時間は1/100にはならないが、この実施例は、1回の測定当り、従来技術では1秒かかっていた時間を10ミリ秒に短縮、すなわち990ミリ秒の測定時間の短縮を実現できる。
【0033】
図3は、放電過電流検出電圧を測定するための一実施例を説明するためのフローチャートである。図4は、この実施例における放電過電流検出電圧検査時の測定時間を説明するための図である。図4で、縦軸は充電器マイナス電位入力端子V−の電圧(V−電圧)と電源電圧端子VDDの電流(VDD電流)を示し、横軸は時間を示す。図7及び図8も参照してこの実施例を説明する。
【0034】
ステップS11:放電過電流検出電圧の設計値よりも低い電圧(テスト開始時電圧)を充電器マイナス電位入力端子V−に供給する。二次電池保護用IC9のグランド端子VSSを接地電位に接続する。電源電圧端子VDDに所定の電圧を供給する。過充電検出出力端子COUT及び過放電検出出力端子DOUTの電圧は電源電圧端子VDDと同じ電圧になる。電源電圧端子VDDの電流値の変化を監視する。
例えば、放電過電流検出電圧の設計値は0.2V、充電器マイナス電位入力端子V−に供給するテスト開始時電圧は0.193V、電源電圧端子に供給する電圧は3Vであり、このときの電源電圧端子VDDの電流値(テスト開始時電流)は約4.0μAである。
【0035】
ステップS12:電源電圧端子VDDの電流値に、テスト開始時の電流値に対して所定の電流値変化が生じたかどうかを判断する。例えば、所定の電流値変化は、テスト開始時の電流値(約4.0μA)に対して0.3μA以上上昇したときと設定される。充電器マイナス電位入力端子V−にテスト開始時電圧が供給されている状態では電源電圧端子VDDの電流値に変化は生じていないので(No)、ステップ13に進む。なお、テスト開始時の電流値や、所定の電流値変化を検出するための基準値は一例であり、これらの値は被検査対象の二次電池保護用ICの種類や製造プロセスでのパラメータ等によって異なることは言うまでもない。
【0036】
ステップS13:充電器マイナス電位入力端子V−の電圧を所定量だけ上昇させる(電圧上昇ステップ)。例えば、電源電圧端子VDDの電圧を1.0mV上昇させる。ステップS12に戻って、電源電圧端子VDDの電流値に、テスト開始時の電流値に対して所定の電流値変化が生じたかどうかを判断する。二次電池保護用IC9の充電器マイナス電位入力端子V−の電圧が放電過電流検出電圧以上になって放電過電流検出機能(例えば図7の放電過電流検出回路15、ならびに発振回路21及びカウンタ23で構成される遅延回路25)が動作すると、電源電圧端子VDDの電流値は例えば約4.4μAに上昇する。ステップS12で電源電圧端子VDDに所定の電流値変化が生じるまでステップS13及びステップS12を繰り返す。充電器マイナス電位入力端子V−の電圧を上昇させる時間間隔は、例えば1ミリ秒以下、ここでは500マイクロ秒(μS)である。ただし、この時間間隔はこれらの時間に限定されない。この時間間隔は二次電池保護用IC9に設定された放電過電流検出遅延時間よりも短ければよく、例えば数百マイクロ秒であってもよい。また、充電器マイナス電位入力端子V−の電圧を連続的に上昇させてもよい。二次電池保護用IC9が放電過電流を検出したとき、その検出信号が過放電検出出力端子DOUTに出力されるまでには放電過電流検出遅延時間を要するが、放電過電流検出機能が働いた際の電源電圧端子VDDの電流値変化には遅延時間はないので、充電器マイナス電位入力端子V−の電圧を上昇させる時間間隔を放電過電流検出遅延時間よりも短くすることができる。
【0037】
ステップS14:ステップS12で電源電圧端子VDDに所定の電流値変化を検出したとき(Yes)に充電器マイナス電位入力端子V−に供給されている電圧を放電過電流検出電圧とする。このように、この実施例では、電源電圧端子VDDの電流値変化を監視しつつ、放電過電流検出遅延時間未満の時間間隔(500マイクロ秒間隔)で段階的に充電器マイナス電位入力端子V−の電圧を上昇させることにより、放電過電流検出電圧を測定できる。
【0038】
例えば、充電器マイナス電位入力端子V−の電圧を上昇させる時間間隔が500マイクロ秒、ステップ数が20回の場合、放電過電流検出電圧測定に必要な時間は「500マイクロ秒×20回=10000マイクロ秒=10ミリ秒」である。従来技術は、放電過電流検出電圧測定に際して、充電器マイナス電位入力端子V−の電圧を上昇させる時間間隔について放電過電流検出遅延時間(例えば10ミリ秒)以上の時間が必要であり、ステップ数が20回の場合、少なくとも「10ミリ秒×20回=200ミリ秒」の時間が必要であった。したがって、この実施例は、1回の測定当り、従来技術では200ミリ秒かかっていた時間を10ミリ秒に短縮、すなわち190ミリ秒の測定時間の短縮を実現できる。
【0039】
図5は、充電過電流検出電圧を測定するための一実施例を説明するためのフローチャートである。図6は、この実施例における充電過電流検出電圧検査時の測定時間を説明するための図である。図6で、縦軸は充電器マイナス電位入力端子V−の電圧(V−電圧)と電源電圧端子VDDの電流(VDD電流)を示し、横軸は時間を示す。図7及び図8も参照してこの実施例を説明する。
【0040】
ステップS21:充電過電流検出電圧の設計値よりも高い電圧(テスト開始時電圧)を充電器マイナス電位入力端子V−に供給する。二次電池保護用IC9のグランド端子VSSを接地電位に接続する。電源電圧端子VDDに所定の電圧を供給する。過充電検出出力端子COUT及び過放電検出出力端子DOUTの電圧は電源電圧端子VDDと同じ電圧になる。電源電圧端子VDDの電流値の変化を監視する。
例えば、充電過電流検出電圧の設計値は−0.2V、充電器マイナス電位入力端子V−に供給するテスト開始時電圧は−0.193V、電源電圧端子に供給する電圧は3Vであり、このときの電源電圧端子VDDの電流値(テスト開始時電流)は約4.0μAである。
【0041】
ステップS22:電源電圧端子VDDの電流値に、テスト開始時の電流値に対して所定の電流値変化が生じたかどうかを判断する。例えば、所定の電流値変化は、テスト開始時の電流値(約4.0μA)に対して0.3μA以上上昇したときと設定される。充電器マイナス電位入力端子V−にテスト開始時電圧が供給されている状態では電源電圧端子VDDの電流値に変化は生じていないので(No)、ステップ23に進む。なお、テスト開始時の電流値や、所定の電流値変化を検出するための基準値は一例であり、これらの値は被検査対象の二次電池保護用ICの種類や製造プロセスでのパラメータ等によって異なることは言うまでもない。
【0042】
ステップS23:充電器マイナス電位入力端子V−の電圧を所定量だけ降下させる(電圧降下ステップ)。例えば、電源電圧端子VDDの電圧を1.0mV降下させる。ステップS22に戻って、電源電圧端子VDDの電流値に、テスト開始時の電流値に対して所定の電流値変化が生じたかどうかを判断する。二次電池保護用IC9の充電器マイナス電位入力端子V−の電圧が充電過電流検出電圧以下になって充電過電流検出機能(例えば図7の充電過電流検出回路17、ならびに発振回路21及びカウンタ23で構成される遅延回路25)が動作すると、電源電圧端子VDDの電流値は例えば約4.4μAに上昇する。ステップS22で電源電圧端子VDDに所定の電流値変化が生じるまでステップS23及びステップS22を繰り返す。充電器マイナス電位入力端子V−の電圧を降下させる時間間隔は、例えば1ミリ秒以下、ここでは500マイクロ秒(μS)である。ただし、この時間間隔はこれらの時間に限定されない。この時間間隔は二次電池保護用IC9に設定された充電過電流検出遅延時間よりも短ければよく、例えば数百マイクロ秒であってもよい。また、充電器マイナス電位入力端子V−の電圧を連続的に効果させてもよい。二次電池保護用IC9が充電過電流を検出したとき、その検出信号が過充電検出出力端子COUTに出力されるまでには充電過電流検出遅延時間を要するが、充電過電流検出機能が働いた際の電源電圧端子VDDの電流値変化には遅延時間はないので、充電器マイナス電位入力端子V−の電圧を降下させる時間間隔を充電過電流検出遅延時間よりも短くすることができる。
【0043】
ステップS24:ステップS22で電源電圧端子VDDに所定の電流値変化を検出したとき(Yes)に充電器マイナス電位入力端子V−に供給されている電圧を充電過電流検出電圧とする。このように、この実施例では、電源電圧端子VDDの電流値変化を監視しつつ、充電過電流検出遅延時間未満の時間間隔(500マイクロ秒間隔)で段階的に充電器マイナス電位入力端子V−の電圧を降下させることにより、充電過電流検出電圧を測定できる。
【0044】
例えば、充電器マイナス電位入力端子V−の電圧を降下させる時間間隔が500マイクロ秒、ステップ数が20回の場合、充電過電流検出電圧測定に必要な時間は「500マイクロ秒×20回=10000マイクロ秒=10ミリ秒」である。従来技術は、充電過電流検出電圧測定に際して、充電器マイナス電位入力端子V−の電圧を降下させる時間間隔について充電過電流検出遅延時間(例えば10ミリ秒)以上の時間が必要であり、ステップ数が20回の場合、少なくとも「10ミリ秒×20回=200ミリ秒」の時間が必要であった。したがって、この実施例は、1回の測定当り、従来技術では200ミリ秒かかっていた時間を10ミリ秒に短縮、すなわち190ミリ秒の測定時間の短縮を実現できる。
【0045】
以上、本発明の実施例を説明したが、上記実施例における電圧値、電流値、時間設定、回路構成等は一例であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、上記実施例は、電源電圧端子の電流値変化を検出するための基準値として、測定開始時の電源電圧端子の電流値を用いているが、当該基準値はこれに限定されない。例えば、当該基準値は、1回前の電圧上昇ステップ又は電圧降下ステップにおける電流値であってもよいし、予め設定された所定の電流値であってもよい。
【0046】
また、上記実施例は、電源電圧端子の電流値変化を、電流値の基準値に対する差分にしきい値を設定しておくことにより検出しているが、電源電圧端子の電流値変化の検出方法はこれに限定されない。例えば、電源電圧端子の電流値変化の検出は、電流値の基準値に対する変化率を求めて行なってもよいし、電流値に検出しきい値を予め設定しておくことにより行なってもよい。
【0047】
また、上記実施例は、図7及び図8を参照して説明した二次電池保護用IC9を用いているが、本発明が適用される二次電池保護用ICはこれに限定されるものではなく、過充電検出回路、放電過電流検出回路、充電過電流検出回路、及びそれらの検出遅延時間を設定する遅延回路を備えた二次電池保護用ICに本発明を適用できる。なお、過充電検出回路、放電過電流検出回路、充電過電流検出回路及びそれらの検出遅延時間を設定する遅延回路の回路構成は問わない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、携帯電話やノートパソコン、PDA等の各種電子機器に用いられる電池パックにおける二次電池を過充電や過放電、充電過電流、放電過電流から保護するための二次電池保護用ICの検査に応用される。
【符号の説明】
【0049】
3 二次電池
9 二次電池保護用IC
11 過充電検出回路
15 放電過電流検出回路
17 充電過電流検出回路
25 遅延回路
VDD 電源電圧端子
V− 充電器マイナス電位入力端子
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】
【特許文献1】特開2002−176730号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の過充電を検出するための過充電検出回路と、過充電の検出時間を所定の遅延時間で遅延させるための遅延回路とを備えた二次電池保護用ICについて過充電検出電圧を測定するための二次電池保護用ICの検査方法において、
前記二次電池保護用ICの電源電圧端子の電流値を監視しつつ、連続的に又は前記遅延時間よりも短い時間間隔で段階的に、前記電源電圧端子の電圧を過充電検出電圧の設計値よりも低い電圧から上昇させ、前記電源電圧端子の電流値の変化に基づいて過充電検出電圧を測定することを特徴とする二次電池保護用ICの検査方法。
【請求項2】
二次電池の放電過電流を検出するための放電過電流検出回路と、放電過電流の検出時間を所定の遅延時間で遅延させるための遅延回路とを備えた二次電池保護用ICについて放電過電流検出電圧を測定するための二次電池保護用ICの検査方法において、
前記二次電池保護用ICの電源電圧端子の電流値を監視しつつ、連続的に又は前記遅延時間よりも短い時間間隔で段階的に、前記二次電池保護用ICの充電器マイナス電位入力端子の電圧を放電過電流検出電圧の設計値よりも高い電圧から降下させ、前記電源電圧端子の電流値の変化に基づいて放電過電流検出電圧を測定することを特徴とする二次電池保護用ICの検査方法。
【請求項3】
二次電池の充電過電流を検出するための充電過電流検出回路と、充電過電流の検出時間を所定の遅延時間で遅延させるための遅延回路とを備えた二次電池保護用ICについて充電過電流検出電圧を測定するための二次電池保護用ICの検査方法において、
前記二次電池保護用ICの電源電圧端子の電流値を監視しつつ、連続的に又は前記遅延時間よりも短い時間間隔で段階的に、前記二次電池保護用ICの充電器マイナス電位入力端子の電圧を充電過電流検出電圧の設計値よりも低い電圧から上昇させ、前記電源電圧端子の電流値の変化に基づいて充電過電流検出電圧を測定することを特徴とする二次電池保護用ICの検査方法。
【請求項4】
前記遅延時間よりも短い時間間隔で段階的に前記電源電圧端子の電圧又は前記充電器マイナス電位入力端子の電圧を上昇又は降下させる場合、当該電圧を所定量だけ上昇又は降下させるステップを電圧上昇ステップ又は電圧降下ステップとし、前記電源電圧端子の電流値の変化を検出するための基準値として1回前の電圧上昇ステップ又は電圧降下ステップにおける電流値を用いる請求項1から3のいずれか一項に記載の二次電池保護用ICの検査方法。
【請求項1】
二次電池の過充電を検出するための過充電検出回路と、過充電の検出時間を所定の遅延時間で遅延させるための遅延回路とを備えた二次電池保護用ICについて過充電検出電圧を測定するための二次電池保護用ICの検査方法において、
前記二次電池保護用ICの電源電圧端子の電流値を監視しつつ、連続的に又は前記遅延時間よりも短い時間間隔で段階的に、前記電源電圧端子の電圧を過充電検出電圧の設計値よりも低い電圧から上昇させ、前記電源電圧端子の電流値の変化に基づいて過充電検出電圧を測定することを特徴とする二次電池保護用ICの検査方法。
【請求項2】
二次電池の放電過電流を検出するための放電過電流検出回路と、放電過電流の検出時間を所定の遅延時間で遅延させるための遅延回路とを備えた二次電池保護用ICについて放電過電流検出電圧を測定するための二次電池保護用ICの検査方法において、
前記二次電池保護用ICの電源電圧端子の電流値を監視しつつ、連続的に又は前記遅延時間よりも短い時間間隔で段階的に、前記二次電池保護用ICの充電器マイナス電位入力端子の電圧を放電過電流検出電圧の設計値よりも高い電圧から降下させ、前記電源電圧端子の電流値の変化に基づいて放電過電流検出電圧を測定することを特徴とする二次電池保護用ICの検査方法。
【請求項3】
二次電池の充電過電流を検出するための充電過電流検出回路と、充電過電流の検出時間を所定の遅延時間で遅延させるための遅延回路とを備えた二次電池保護用ICについて充電過電流検出電圧を測定するための二次電池保護用ICの検査方法において、
前記二次電池保護用ICの電源電圧端子の電流値を監視しつつ、連続的に又は前記遅延時間よりも短い時間間隔で段階的に、前記二次電池保護用ICの充電器マイナス電位入力端子の電圧を充電過電流検出電圧の設計値よりも低い電圧から上昇させ、前記電源電圧端子の電流値の変化に基づいて充電過電流検出電圧を測定することを特徴とする二次電池保護用ICの検査方法。
【請求項4】
前記遅延時間よりも短い時間間隔で段階的に前記電源電圧端子の電圧又は前記充電器マイナス電位入力端子の電圧を上昇又は降下させる場合、当該電圧を所定量だけ上昇又は降下させるステップを電圧上昇ステップ又は電圧降下ステップとし、前記電源電圧端子の電流値の変化を検出するための基準値として1回前の電圧上昇ステップ又は電圧降下ステップにおける電流値を用いる請求項1から3のいずれか一項に記載の二次電池保護用ICの検査方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−195992(P2012−195992A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56014(P2011−56014)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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