説明

二次電池用電極材のロールプレス機

【課題】高速、長時間運転をしても軸受部の機械的摩擦熱により生じるロールの熱変形を防止して、加工精度の高い二次電池用電極材の連続圧縮加工を可能にするロールプレス機を提供する。
【解決手段】ロールプレス機は、一対の加圧ロール11a,11b間に連続シート状の二次電池用電極材を通して連続圧縮加工する。加圧ロールの軸受14を収納保持する軸受箱13に熱媒体を流通させてロール軸受の熱を奪う冷却構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロールプレス機、特に連続シート状の二次電池用電極材の圧縮加工に使用して好適なロールプレス機に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池などの二次電池用電極材は、心材となる金属箔などの集電体シートとその両面に形成した活物質層とからなり、厚さが一様であること及び活物質の密度を高めるために、高精度に圧縮加工が必要とされる。
【0003】
連続シート状の二次電池用電極材の圧縮加工は、通常、ロールプレス機を用いて行われる(例えば特開2000−133251号公報)。このような二次電池用電極材の連続圧縮加工(「ロールプレス」と称されることもある)は、常温状態またはロール加熱状態で行われている。常温状態での加工の場合は、熱間圧延のように連続圧縮加工で生じる圧延材からの熱の移動でロールが熱膨張して生じるサーマルクラウンとは無縁であり、圧延材で見られるようなサーマルクラウン対策のロール温度制御やロール冷却手段は不要と考えられていた。ちなみに、圧延材でのロール冷却手段としては、空冷や水冷によるものが広く知られている(例えば特開平7−32041号公報、特開平8−283869号公報)。また、特開2007−130657号公報では、鋼鈑をドライで圧延する鋼鈑の調質圧延機において、ワークロールのベアリング発熱が原因となるサーマルクラウンを、ワークロールの板道外の表面部分に向けてロール冷却用気体を吹き付ける技術が開示されている。
【0004】
上記のように常温状態で使用される二次電池用電極材のロールプレス機では、圧延機のようなサーマルクラウン対策は不要と考えられていた。しかしながら、今日では、電極材料の生産性を向上させるために、ロールプレス機の高速化が望まれる。高速化を図ると、長時間の連続運転時にロール転がり軸受部の機械摩擦により発生した熱がロールに熱移動することにより、ロールが熱変形するサーマルクラウンが生じ、その改善策が必要になった。
【0005】
転がり軸受の潤滑には一般的に、グリース潤滑方式と油循環潤滑方式がある。グリース潤滑方式は、封入もしくは定期的に追加入れ換えされたグリースで転がり軸受の潤滑を行う。一方、油循環潤滑は、常に循環した油にて転がり軸受けの潤滑を行う。油循環潤滑は、循環した油にて、転がり軸受部で発生した熱を奪う作用もあることから、転がり軸受部からの発熱を防ぐことが可能であると考えられる。しかしながら、二次電池用電極材の圧縮成形分野では、材料へ循環油のミスト等の付着を嫌うこと等からグリース潤滑が主流となっている。このグリース潤滑方式において、上記したロールの回転により生じるロール転がり軸受けの機械摩擦の熱対策を講じる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−133251号公報
【特許文献2】特開平7−32041号公報
【特許文献3】特開平8−283869号公報
【特許文献4】特開2007−130657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高速、長時間運転をしても軸受部の機械的摩擦熱により生じるロールの熱変形を防止して、加工精度の高い二次電池用電極材の連続圧縮加工を可能にするロールプレス機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、上記目的を達成するために、一対の加圧ロール間に連続シート状の二次電池用電極材を通して連続圧縮加工するロールプレス機において、次のような課題解決手段を提案する。
(1)一つは、前記加圧ロールの軸受を収納保持する軸受箱に熱媒体を流通させて前記ロール軸受の熱を奪う冷却構造を有することを特徴とする。
(2)一つは、前記加圧ロールのロール軸の内部にロール軸受の熱を奪う熱媒体を流通させる軸方向流路を設けたことを特徴とする。
(3)一つは、前記加圧ロールのロール軸の内部及び前記ロールの内部に、熱媒体を、外部から導いてロール軸の一部、ロール内部、及びロール軸の残りの部分のルート順に流通させた後に外部に流出させる流路が形成されていることを特徴とする。
(4)一つは、前記加圧ロールのロール軸における各被軸受部とロール胴体の各一端との間の軸部に冷却用の熱媒体を吹き付ける機構を設けたことを特徴とする。
(5)一つは、前記加圧ロールのロール軸における各被軸受部とロール胴体の各一端との間の軸部に放熱用の複数のフィンをロール軸周方向に設けたことを特徴とする。
(6)一つは、前記加圧ロールのロール軸は、その両被軸受部側が軸受部に生じる摩擦熱を吸熱する熱入力部でロール軸中間部側がロール胴体内部に放熱する熱出力部となるヒートパイプ構造を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロール軸の軸受部からの発熱がロール胴体に至るまでに吸熱され或いはロール胴体全体に均一に熱拡散することによりロールの熱変形を抑制し、高精度な連続圧縮加工(ロールプレス)を連続的に行うことを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の適用対象となる常温タイプの二次電池用電極材のロールプレス機の概略構成を一部断面して示す正面図。
【図2】本発明の第1実施例に係るロールプレス機におけるサーマルクラウン防止手段の概略構成を一部断面して示す正面図。
【図3】本発明の第2実施例に係るロールプレス機におけるサーマルクラウン防止手段の概略構成を一部断面して示す正面図。
【図4】本発明の第3実施例に係るロールプレス機におけるサーマルクラウン防止手段の概略構成を一部断面して示す正面図。
【図5】本発明の第4実施例に係るロールプレス機におけるサーマルクラウン防止手段の概略構成を一部断面して示す正面図。
【図6】本発明の第5実施例に係るロールプレス機におけるサーマルクラウン防止手段の概略構成を一部断面して示す正面図。
【図7(a)】本発明の第6実施例に係るロールプレス機におけるサーマルクラウン防止手段の概略構成を一部断面して示す正面図及びそれに用いる放熱フィンの側面図。
【図7(b)】上記第6実施例に用いる放熱フィンの他の変形例を示す側面図。
【図7(c)】上記第6実施例に用いる放熱フィンのさらに他の変形例を示す側面図。
【図8】本発明の第7実施例に係るロールプレス機におけるサーマルクラウン防止手段の概略構成を断面して示す概略構成図。
【図9】本発明の第8実施例に係るロールプレス機におけるサーマルクラウン防止手段の概略構成を一部断面して示す概略構成図。
【図10】二次電池用電極材のロールプレス機における加圧ロールに生じるサーマルクラウンのメカニズムを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の適用対象となる常温タイプの二次電池用電極材のロールプレス機の概略構成図である。
【0012】
ロールプレス機10は、上下に対向配置された一対の加圧ロール11(上ロール11a,下ロール11b)と、それらのロール軸11cを支持する転がり軸受(ロール軸受部)14と、その転がり軸受14を保持する軸受箱13と、軸受箱13を保持するロールハウジングとなるフレーム12とを備える。ロール軸両端に配置された軸受箱13とそれに対応するフレーム12の下部との間には、加圧ロール間の間隙調整と加圧調整を行うための例えば油圧シリンダーなどの加圧機構15が設けられている。
【0013】
転がり軸受の潤滑には、グリース潤滑方式が採用されている。加圧ロール11は、その仕様については任意であり何ら限定するものではないが、例えば鋳鉄系ロールであり、300〜800mmφ、ロール回転数が数十rpmオーダーであり、代表的な一例を挙げればロール直径500mmφでロール回転数38rpm、電極材の搬送速度が約60m/min程度のものが例示される。
【0014】
二次電池用電極材のロールプレス機に関して、高速化、長時間運転により生じるロール転がり軸受14における発熱について述べると、その発熱温度は、5〜40℃程度上昇することもある。その熱が、ロール11に伝達すると、図10に示すようにロール胴部の内部温度分布に斑(温度分布不均一)が生じる。ロール内部温度分布に斑が生じると、ロール熱膨張の斑(サーマルクラウン)により、ロール精度が低下する。
【0015】
二次電池用電極材の圧縮成形に用いられるロールは、円筒度、真円度、振れ精度が重要であり、それぞれ1〜4μm以下の精度が必要である。
【0016】
また、高圧力での圧縮加工を行うことから、高剛性が必要であるため、ロールの構造は、溶接構造ロールではなく、中実ロールを採用することが多い。
【0017】
上記のサーマルクラウン防止対策の実施例について、図2から図9を用いて以下に説明する。なお、図2から図9の実施例においては、上記した図1のロールプレス機における上下一対の加圧ロール11のうち一方の加圧ロールについてサーマルクラウン防止の手段を例示しているが、他方の加圧ロールについても前記一方の加圧ロール同様のサーマルクラウン防止の手段が施されるものである。
【実施例1】
【0018】
図2は本発明の第1実施例に係るサーマルクラウン防止手段を示す概略構成図を示すものである。本実施例では、軸受箱13に冷却用となる熱媒体を流通させて、軸受箱を冷却することにより、転がり軸受14の熱を奪う冷却構造を提案する。すなわち、軸受箱13の内部には、流入口22と流出口23を有する流路14を設け、流入口22には、冷却用の熱媒体(例えば空気、水、熱媒油等)の送入チューブ21aが接続され、流出口23には、熱媒体送出チューブ21bが接続されている。
【0019】
なお、図2においては、流入口22、流出口23、流路24は、それぞれが複数配列(例えば2個)されているものを例示しているが、送入チューブ21a及び送出チューブ21bは、それぞれが上記複数配列流通系に共有のものを透視的に例示している。なお、流入口22、流出口23、流路24は、それぞれが単数のものであってもよい。
【0020】
熱媒体として空気を使用する場合には、送入チューブ21a或いは送出チューブ21bのいずれか一方に、軸受箱内部流路24に空気を流通させるためのブロワ(図示省略)を設ければよい。
【0021】
また、熱媒体として、水、熱媒油などの液体を使用する場合には、送入チューブ21aと送出チューブ21bを循環系流路の要素として、両者間を、外部の放熱機構(図示省略)を介して連結する。すなわち、外部放熱機構−送入チューブ21a−軸受箱内部流路24−送出チューブ21bを介して熱媒体の循環流路を形成することにより、軸受箱13にて転がり軸受14の熱を奪った熱媒体は、外部放熱機構(例えば、熱交換器やラジエータ)で熱を放散して、繰り返し軸受箱13に送入される。
【0022】
本実施例によれば、軸受箱を介して転がり軸受から発生する熱を奪うことにより、転がり軸受からロールへ伝導される熱量を減らし、ロールの熱変形を減らす。これにより、高精度な二次電池用電極材の圧縮加工を、ロールプレス機の高速回転、長時間運転下の下でも可能になる。
【実施例2】
【0023】
図3は本発明の第2実施例に係るサーマルクラウン防止手段を示す概略構成図を示すものである。本実施例では、ロール軸11cの内部にロール軸受(転がり軸受14)の熱を奪う熱媒体を流通させる軸方向流路31及び32aを設けた。かような軸方向流路は、次のようにして形成される。
【0024】
ロール軸11cは、ロール(ロール胴体)11と一体成形されているが、本実施例のロール軸11cは、元々軸方向に貫通した中空部32を有するようにしてある。ロール軸11cの一端からその中空部32に、直線状の管体30が内挿される。内挿管体30は、ロール軸11cの一端にシール部材(図示省略)を介して連結された円筒状管継手33により片持ち支持されている。円筒状管継手33は、ロール軸11cに対して相対的に回転自在となるように、その一端33aがロール軸11cに接続されており、他端33bは、閉ざされている。
【0025】
内挿管体30の外径は、ロール軸中空内部32の内径より小さく、また内挿管体30の長さは2つの転がり軸受14、14間にまたがる長さを有し且つロール軸11cの軸方向の全長よりも短くしてある。ロール軸11cの円筒状管継手33と反対側の軸方向一端は、該一端に固着した封止栓11dにより閉ざされている。このようなロール軸内部構造によって、ロール軸11cには、矢印に示すように管体30の内部により熱媒体の往路系流路31が形成される。また、管体30の外周とロール軸11cの内周32との間に熱媒体の復路系流路32aが形成される。
【0026】
一方、円筒状管継手33の内部は次のような二重構造になっている。すなわち、内部には、熱媒体の外部送入チューブ(往路系チューブ)34とロール軸内部の管体30との間を連通する内挿継手部33´が設けられている。内挿継手部33´は、その一端が管体30に対して相対的に回転自在に接続される。内挿継手部33´の他端が、送入チューブ34に接続される。円筒状管継手33や内挿継手部33´は、公知のワンタッチ式の流体カプラーなどの継ぎ手方式を採用することができる。
【0027】
円筒状管継手33の内部は、内挿継手部33´を除く中空部33cが熱媒体の流出側通路の一部となって外部送出チューブ(復路系チューブ)35と接続されている。送入チューブ34と送出チューブ35を循環系流通路の要素として、両者間を、循環ポンプ(図示せず)内蔵の外部放熱機構(例えば、熱交換器やラジエータ)36を介して連結する。このようにして、循環ポンプ付き外部放熱機構36−送入チューブ34−内挿継手部33´−ロール軸内部往路系流路31−ロール軸内部復路系流路32a−円筒状継手中空部33c−送出チューブ35の熱媒体の循環流路が形成されている。
【0028】
上記循環流路に流れる熱媒体は、例えば水や熱媒油である。
【0029】
本実施例によれば、熱媒体がロール軸内部に流れることによって転がり軸受14の熱が奪われ、熱を奪った熱媒体は、外部放熱機構36で熱を放散して繰り返しロール軸内部に送入される。このようにして、転がり軸受14にて発生し、ロール軸部11cに伝達された熱を熱媒体(油または水)にて吸熱し、転がり軸受部14からの熱を奪い、ロールの熱変形を防止する。
【0030】
なお、上記ロール軸内部流路に、循環系流通路に代わって常に新鮮熱媒体油または新鮮水をロール内に入れ、軸受部で発生した熱を奪い、外部に放出することで、軸受部からの熱を奪い、ロールの熱変形を防止することも可能である。本実施例では、ロールの熱変形防止効果に加えて、ロールへの循環路加工が単純で加工しやすいという利点がある。
【実施例3】
【0031】
図4は本発明の第3実施例に係るサーマルクラウン防止手段を示す概略構成図を示すものである。本実施例では、ロール軸11cの内部及びロール(ロール胴体)11の内部に、熱媒体となる熱媒液(水や油)を、外部から導いてロール軸11cの一部32a´、ロール11の内部、ロール軸11cの残りの部分32a”のルート順に流通させた後に外部に出し、外部で熱媒液の熱を放熱した後に再度外部から導く循環流路を形成する。
【0032】
本実施例では、ロール軸11cの一部32a、ロール11の内部、ロール軸11cの残りの部分32a”のルート順に熱媒液を流通させる流路を構成する場合において、前記した第2の実施例同様の中空のロール軸11c、内挿管体30、円筒状管継手33(内挿継手部33´を含む)、送入チューブ34、送出チューブ35を利用するが、さらに次のような要素を加えることにより、上記ルート順の流路を構成する。
【0033】
すなわち、内挿管体30の外周とロール軸11cの内周との間でそれらの軸方向の中間部に環状の仕切部材41を設ける。仕切り部材41はシール機能を有する。このような仕切り部材41が介在することで、ロール軸11cの復路系流路32aが32a´と32a”に分けられる。またロール胴体内部のルートとなる流路42は、できるだけロール胴体内部全体にわたって流路が形成される構造で、その流入口42aがロール軸の一部32a´に通じ、その流出口42bがロール軸の残りの部分32a´に通じる流路構造を有している。すなわち、ロール胴体内流路42は、ロール軸内流路部32a´、32a”間の流路となるよう構成される。図3の循環ポンプ(図示せず)内蔵の外部放熱機構36に代わって、送入チューブ34と送出チューブ35とを循環ポンプ40を介して接続する。
【0034】
本実施例によれば、循環ポンプ40−送入チューブ34−円筒状継手33の内挿継手部33´−ロール軸内部往路系流路31−ロール軸内部復路系流路32a´−ロール胴体内部流通路42−ロール軸内部復路系流路32a”−円筒状継手33の中空内部33c−送出チューブ35の熱媒体の循環流路が形成されている。
【0035】
このような循環流路構成によれば、ロール軸の転がり軸受にて発生し、ロール軸部に伝達した熱を熱媒液(油または水)にて吸熱すると同時に、熱媒液にて、ロール全体にその熱を拡散させる。このことにより、ロール全体の温度斑を無くす。ロールの温度斑がなくなることにより、ロールの精度悪化を防止する。
【0036】
また、本実施例によれば、ロールの軸部からの熱を吸熱した熱媒液を外部で冷却する機構が不要となる(循環ポンプ40だけで足りる)。
【0037】
ロール胴体内部は、複雑な流路の加工が必要となるが、これはロール胴体外部からドリル加工により流路方向に穴をあけた後、その開口を防ぐことに実現可能になる。
【実施例4】
【0038】
図5は本発明の第4実施例に係るサーマルクラウン防止手段を示す概略構成図を示すものである。本実施例では、加圧ロール11のロール軸11cにおける各被軸受部11c´とロール胴体11の各一端との間の軸部に冷却用の流体を吹き付ける機構50を設けた。
【0039】
本実施例では、例えば、外部から上記軸部の表面に空気を吹き付けて冷却を行い、軸受14からの発熱を放熱させるようにし、それによってロールの熱変形を防止している。
【0040】
なお、空気に代って例えばエタノールような気化溶液をロール軸に吹き付けたり、滴下しても気化潜熱により上記同様の効果を得ることができる。気化した溶媒が材料や人体(作業員)に影響を与えないよう、吸引回収する手段を設置することもある。
【実施例5】
【0041】
図6は本発明の第5実施例に係るサーマルクラウン防止手段を示す概略構成図を示すものである。本実施例はロール軸の被軸受部11c´とロール胴体11の各一端間に吹き付ける熱媒体として第4実施例の空気や気化溶液に代って油や水等の不揮発の溶液(熱媒液)を使用した例である。本実施例では、冷却用の熱媒液を吹き付ける機構60と、吹付け後の熱媒液の滴下位置に熱媒液を回収する槽61を設け、回収された熱媒液を、冷却後再度吹き付け機構60に戻して使用できる構成とした。なお、熱媒液は、吹き付けに代ってロール軸にロール軸上方から滴下することも考えられる。また、熱媒液は再冷却を行わず、新規のもののみを使用することも考えられる。
【実施例6】
【0042】
図7(a)は、本発明の第6実施例に係る二次電池用電極材のロールプレス機におけるサーマルクラウン防止手段の概略構成を一部断面して示す正面図及びそれに用いる放熱フィンの側面図である。本実施例では、加圧ロール11のロール軸11cにおける各被軸受部11c´とロール胴体11の少なくとも一端との間の軸部に、放熱用の複数のフィン71をロール軸の周方向に設けた。ロール軸部に、かような放熱フィン(冷却フィン)71を設けることにより、転がり軸受14から発生、ロール軸部に伝達された熱を、フィン71より放熱し、ロールの熱変形を防止することができる。また、フィン71は、ロール11と共に回転するので、軸部近傍の雰囲気に流れを作り、効率よく放熱を行う。
【0043】
フィン71は、ロール軸に密着状態で取り付けられる環状の伝熱部材72の外周に設けられる。伝熱部材72及びフィン71は、熱伝導率の高い材質(例えば、アルミニウム、銅等)が望ましい。
【0044】
環状の伝熱部材72は、半割りの2つの環状体要素で一部に合わせ部72aを設けて、ネジ73などで結合すればロール軸への着脱が容易である。
【0045】
フィン支持の環状伝熱材72の内周面とロール軸11cの外周面との間には、確実に熱伝達を行うため、隙間を無くすことが望ましい。そのためには、伝導の良い材料をそれらの間にパッキングとして介在することが望ましい。安価で簡易なものとして、アルミ箔を積層し、伝熱部材72とロール軸11cの間に挟むことも良い。
【0046】
本実施例によれば、電極材料が嫌うコンタミを発生させる要因の無い手段であり、かつ、容易で安価に行える手段である。また雰囲気温度をほぼ一定に保ち生産が行われている本設備に好適な手段である。
【0047】
図7(b)は上記第6実施例に用いる放熱フィンの他の変形例を示す側面図である。本変形例では、フィン71´は、ロールの回転方向(矢印方向)に対して反回転方向側に鋭角となる傾斜をもつようにして環状の伝熱部材70に一体に形成されている。符号の72a´は、図7(a)の72a同様の伝熱部材合わせ部である。本変形例によれば、外側に向けて強制的に風を流すことが可能になる。
【0048】
図7(c)は上記第6実施例に用いる放熱フィンのさらなる他の変形例を示す側面図である。本変形例では、フィン71”は、ロール回転方向に向いた面71a”が軸受箱側(ロール胴部と反対側)に傾斜を持つことを特徴とする。符号の72”及び72a"は、図7(a)の符号72、72aに対応する要素である。
【0049】
本変形例によれば、ロールの回転時にフィンから軸受箱側(熱の発生源側)に風が流れる。この風の流れは、新鮮空気が、反発熱側のロール胴部端面の外周部側から軸部側に流れる。この流れ方向は、熱伝導の方向と逆方向となり、効率よく放熱することが可能となる。
【実施例7】
【0050】
図8は、本発明の第7実施例に係るロールプレス機におけるサーマルクラウン防止手段の概略構成を断面して示す概略構成図である。
【0051】
本実施例では、加圧ロール11のロール軸11cをヒートパイプ化している。すなわち、中空のロール軸内部に、熱媒流路を設け、その流路をヒートパイプ化し、軸部の発熱をロール全体に拡散し、ロール温度の斑を無くすことで、軸部からの発熱によるサーマルクラウンを防止する。具体的には、加圧ロール11の中空ロール軸11cは、その両被軸受部側が軸受部14に生じる摩擦熱を吸熱する熱入力部81でロール軸中間部側がロール胴体11内部に放熱する熱出力部82となるヒートパイプ構造を有する。ロール胴体11の内部にもヒートパイプの熱媒の流路83が形成されている。ロール軸内部に封入された熱媒(揮発性の作動液)は、熱入力部81(ロール胴部の流路83を含む)で軸受部からの熱を吸熱して蒸発し(潜熱の吸収)、蒸発した作動液は熱出力部82で凝縮し(潜熱の放出)、この熱移動のサイクルを繰り返すことによりロール胴体に熱が均一に拡散する。
【実施例8】
【0052】
図9は、第8実施例に係るロールプレス機におけるサーマルクラウン防止手段の概略構成を一部断面して示す概略構成図である。本実施例は、ロールたわみ補正機構を用い熱によるクラウン量をキャンセルする製造方法である。
【0053】
本実施例においては、主軸受部(転がり軸受)14及の外側にたわみ補正機構を構成する補助転がり軸受14´と軸受箱13´を持ち、そこに、たわみ補正の荷重91を与えることでロールのたわみ形状を瞬時に変更することが出来るたわみ補正機構を用い、ロールの熱変形で出来たクラウンを、材料加圧側がフラットになるよう矯正する。
【0054】
なお、本実施例は、既述した第1〜第7実施例と組み合わせて使用しても良い。
【符号の説明】
【0055】
10…ロールプレス機、11(11a,11b)…加圧ロール、13…軸受箱、14…ロール軸受部(転がり軸受)、24…熱媒体流路(軸受箱冷却構造)、30…内挿管体、31…ロール軸熱媒体流路(往路系流路)、32a…ロール軸熱媒体流路(復路径流路)、41…仕切部材、42…ロール胴体内部の熱媒体流路、50…熱媒体吹付装置、60…熱媒体吹付装置、71…フィン、81…ヒートパイプ熱入力部、82…ヒートパイプ熱出力部、91…ロールたわみ補正機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の加圧ロール間に連続シート状の二次電池用電極材を通して連続圧縮加工するロールプレス機において、
前記加圧ロールの軸受を収納保持する軸受箱に熱媒体を流通させて前記ロール軸受の熱を奪う冷却構造を有することを特徴とする二次電池用電極材のロールプレス機。
【請求項2】
前記冷却構造は、軸受箱に設けられた熱媒体流路と、前記流路の流入口に接続される熱媒体送入チューブと、前記流路の流出口に接続される熱媒体送出チューブとを備え、前記送入チューブ及び送出チューブを介して外部からの熱媒体を軸受箱内部の前記流路に流通させる請求項1記載の二次電池用電極材のロールプレス機。
【請求項3】
一対の加圧ロール間に連続シート状の二次電池用電極材を通して連続圧縮加工するロールプレス機において、
前記加圧ロールのロール軸の内部にロール軸受の熱を奪う熱媒体を流通させる軸方向流路を設けたことを特徴とする二次電池用電極材のロールプレス機。
【請求項4】
前記ロール軸は中空状のロール軸であり、その内部に前記ロール軸の内径よりも径の小さい外径を有し且つ前記ロール軸の軸受部間にまたがる長さで該ロール軸よりも短くした管体が内挿され、この内挿管体の内部が熱媒体を流通させる前記軸方向流路の往路系流路を形成し、この内挿管体の外周と前記ロール軸の内周との間が前記軸方向流路の復路系流路を形成し、前記ロール軸の一端に該ロール軸と相対的に回転自在な円筒状管継手が接続され、この管継手を介してロール軸内部の前記往路系流路が外部の熱媒体送入チューブと接続され且つ前記復路系流路が外部の熱媒体送出チューブと接続されている請求項3記載のロールプレス機。
【請求項5】
一対の加圧ロール間に連続シート状の二次電池用電極材を通して連続圧縮加工するロールプレス機において、
前記加圧ロールのロール軸の内部及び前記ロールの内部に、熱媒体を、外部から導いてロール軸の一部、ロール内部、及びロール軸の残りの部分のルート順に流通させた後に外部に流出させる流路が形成されていることを特徴とする二次電池用電極材のロールプレス機。
【請求項6】
前記ロール軸の一部、前記ロール内部、前記ロール軸の残りの部分のルート順に熱媒体を流通させる流路構成において、
前記ロール軸の一部及び前記ロール軸の残りの部分のルートとなる流路は、中空状のロール軸の内部に前記ロール軸の内径よりも径の小さい外径を有し且つ前記ロール軸の軸受部間にまたがる長さで該ロール軸よりも短くした管体が内挿され、前記内挿管体の外周と前記ロール軸の内周との間でそれらの軸方向の中間部に仕切部材を介在させることで形成され、
前記ロール内部のルートとなる流路は、前記ロール内部に前記ロール軸の一部及び前記ロール軸の残りの部分のルートとなる流路にそれぞれ連通する流路構造を有している請求項5記載のロールプレス機。
【請求項7】
前記ロール軸の一端に該ロール軸と相対的に回転自在な円筒状管継手が接続され、この管継手を介してロール軸内部の前記内挿管体の入口側が外部の熱媒体送入チューブと接続され且つ前記ロール軸の残りの部分のルートとなる流路の出口側に前記円筒状管継手を介して外部の熱媒体送出チューブと接続されている請求項6記載のロールプレス機。
【請求項8】
一対の加圧ロール間に連続シート状の二次電池用電極材を通して連続圧縮加工するロールプレス機において、
前記加圧ロールのロール軸における各被軸受部とロール胴体の各一端との間の軸部に冷却用の熱媒体を吹き付ける機構を設けたことを特徴とする二次電池用電極材のロールプレス機。
【請求項9】
一対の加圧ロール間に連続シート状の二次電池用電極材を通して連続圧縮加工するロールプレス機において、
前記加圧ロールのロール軸における各被軸受部とロール胴体の各一端との間の軸部に放熱用の複数のフィンをロール軸周方向に設けたことを特徴とする二次電池用電極材のロールプレス機。
【請求項10】
一対の加圧ロール間に連続シート状の二次電池用電極材を通して連続圧縮加工するロールプレス機において、
前記加圧ロールのロール軸は、その両被軸受部側が軸受部に生じる摩擦熱を吸熱する熱入力部でロール軸中間部側がロール胴体内部に放熱する熱出力部となるヒートパイプ構造を有することを特徴とする二次電池用電極材のロールプレス機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7(a)】
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【図7(b)】
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【図7(c)】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−181348(P2011−181348A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44651(P2010−44651)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【Fターム(参考)】