説明

二次電池用電極組立体及び二次電池並びに車両

【課題】タブを正極シートや負極シートに接続する必要がなく、正極と負極の短絡防止を確保した状態でデッドスペースを低減して体積エネルギ密度の向上を図る。
【解決手段】正極シート11と、負極シート12とがセパレータ13を挟んで複数層に積層されている。正極シート11には一端側に正極切り欠き部11b及び正極用活物質非塗布部11cが形成され、負極シート12には正極用活物質非塗布部11cと重なる位置に負極切り欠き部12bが形成され、かつ正極シート11の正極切り欠き部と重なる位置に負極用活物質非塗布部12cが形成されている。セパレータ13には正極切り欠き部11b及び負極切り欠き部12bと重なる位置にセパレータ切り欠き部13aが形成されている。正極シート11は正極用活物質非塗布部11cが正極端子接続用部材に直接接合可能に構成され、負極シート12は負極用活物質非塗布部12cが負極端子接続用部材に直接接合可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用電極組立体及び二次電池並びに車両に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は再充電が可能であり、繰り返し使用することができるため電源として広く利用されている。近年、化石燃料の使用削減(二酸化炭素排出規制)が求められており、電気自動車やハイブリッド車等の主電源や補助電源に使用される二次電池では、大電流での充電及び放電や二次電池の大容量化が要求されるようになっている。
【0003】
リチウムイオン二次電池では、電極として金属箔製の集電体に活物質を塗布(担持)したものが使用されている。そして、正極用の集電体と負極用の集電体との間に帯状のセパレータを挟んだ積層状態で略長円柱状に巻いて発電要素(電極組立体)が構成され、その発電要素が電解液と共に電池ケースに収容された二次電池がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の二次電池では正極と負極の短絡を防止するため、図8(a)に示すように、発電要素51の上端部に負極集電体52を配置して負極51aの集電を行っていた。負極集電体52は蛇腹状の挟持部52aを有し、図8(b)に示すように、各挟持部52aの隙間に負極51aの端縁部が複数枚ずつまとめて挟み込まれて、かしめ及び溶接で固定されている。負極集電体52は負極端子53を有する。また、発電要素51の下端部に正極集電体(図示せず)が配置され、同様に構成された正極集電体の挟持部の隙間に、正極51bの端縁部が複数枚ずつまとめて挟み込まれて、かしめ及び溶接で固定されている。
【0005】
また、積層厚さが均一で、容量が増加する電極組立体及びこれを有する二次電池が提案されている(特許文献2参照)。図9に示すように、特許文献2に記載の電極組立体60は、正極活物質61aが塗布された正極板61と、負極活物質62aが塗布された負極板62と、正極板61と負極板62の間に介在されたセパレータ63とを含む。正極タブ61bは正極板61の正極活物質61aが塗布されていない部分に付着され、負極タブ62bは負極板62の負極活物質62aが塗布されていない部分に付着されている。正極板61には負極タブ62bと対応する位置に正極切開部61cが形成され、負極板62には正極タブ61bと対応する位置に負極切開部62cが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4099609号公報
【特許文献2】特開2011−77025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の構成では、負極集電体52及び正極集電体の構造が複雑で、隣り合う挟持部52aの間や負極端子53の近傍に利用されない空間(デッドスペース)が存在する状態となり、その分、二次電池のエネルギ密度が低くなる。特許文献2の構成では、特許文献1の構成に比べて二次電池のエネルギ密度は高くなる。しかし、各正極板61及び各負極板62に正極タブ61b及び負極タブ62bを付着する作業が必要になる。そして、実際の二次電池では正極板61及び負極板62の数は数十枚となるため、正極タブ61b及び負極タブ62bの付着に手間が掛かる。
【0008】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、タブを正極シート(正極体)や負極シート(負極体)に接続する必要がなく、正極と負極の短絡防止を確保した状態でデッドスペースを低減して体積エネルギ密度の向上を図ることができる二次電池用電極組立体及び二次電池を提供することにある。また、前記二次電池を搭載した車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、正極用活物質が塗布された正極シートと、負極用活物質が塗布された負極シートと、前記正極シートと前記負極シートの間に介在されるセパレータとからなる層を複数層有する構成の二次電池用電極組立体である。そして、前記正極シートには一端側に正極切り欠き部及び正極用活物質非塗布部が形成されており、前記負極シートには一端側に前記正極シートの前記正極用活物質非塗布部と重なる位置に負極切り欠き部が形成され、かつ前記正極切り欠き部と重なる位置に負極用活物質非塗布部が形成されており、前記セパレータには一端側に前記正極切り欠き部及び前記負極切り欠き部と重なる位置にセパレータ切り欠き部が形成されており、前記正極シートは前記正極用活物質非塗布部が正極端子接続用部材に直接接合可能に構成され、前記負極シートは前記負極用活物質非塗布部が負極端子接続用部材に直接接合可能に構成されている。ここで、「直接接合可能」とは、正極タブを介さずに正極用活物質非塗布部が正極端子接続用部材に接合されるか、複数の正極用活物質非塗布部が重なり合った状態で正極端子接続用部材に接合されることを意味し、負極用活物質非塗布部が負極端子接続用部材に接合される場合も同様である。
【0010】
この発明では、複数層積層された正極シートは従来技術と異なり、正極タブを使用せずに正極用活物質非塗布部同士が接合された状態で正極端子接続用部材に接合され、複数層積層された負極シートは負極タブを使用せずに負極用活物質非塗布部同士が接合された状態で負極端子接続用部材に接合される。複数層の正極シートは間にセパレータ及び負極シートが存在する。しかし、セパレータ及び負極シートに形成された負極切り欠き部及びセパレータ切り欠き部は正極用活物質非塗布部と重なる状態で存在するため、複数の正極用活物質非塗布部を正極シートの積層方向に寄せることにより、正極用活物質非塗布部同士が接合された状態で負極シートと干渉せずに正極端子接続用部材に接合することができる。また、複数層の負極シートは、間にセパレータ及び正極シートが存在する。しかし、セパレータ及び正極シートに形成されたセパレータ切り欠き部及び正極切り欠き部は負極用活物質非塗布部と重なる状態で存在するため、複数の負極用活物質非塗布部を負極シートの積層方向に寄せることにより、負極用活物質非塗布部同士が接合された状態で正極シートと干渉せずに負極端子接続用部材に接合することができる。また、正極用活物質は正極シートの正極用活物質非塗布部が形成された部分と正極切り欠き部が形成された部分との間にも塗布され、負極用活物質は負極シートの負極用活物質非塗布部が形成された部分と負極切り欠き部が形成された部分との間にも塗布されているため、デッドスペースが少なくなる。したがって、正極タブや負極タブを正極シート(正極体)や負極シート(負極体)に接続する必要がなく、二次電池において正極と負極の短絡防止を確保した状態でデッドスペースを低減して体積エネルギ密度の向上を図ることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記正極シート、前記負極シート及び前記セパレータは一定方向に積層されている。二次電池の構成として、帯状の正極シート及び帯状の負極シートを、帯状のセパレータを挟んだ積層状態で巻回して電極組立体が形成されるものや、複数の正極シート及び複数の負極シートを間にセパレータを挟んで積層して電極組立体が形成されるもの等がある。正極シート、負極シート及びセパレータとして帯状の物を使用して巻回する構成では、複数形成される正極用活物質非塗布部の間隔、負極用活物質非塗布部の間隔、各切り欠き部の間隔が巻回部の内側部と外側部とでは異なる状態に形成する必要がある。しかし、この発明では、正極シート、負極シート及びセパレータはそれぞれ複数枚ずつ設けられて一定方向に積層されている。したがって、同じ正極シート、負極シート及びセパレータを積層すればよく、製造が簡単になる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記正極用活物質非塗布部及び前記負極用活物質非塗布部は、それぞれ前記正極シートあるいは前記負極シートの一端側から他端側の方向に切り込まれた第一切り込みと、前記第一切り込みにおける他端側の先端部を通りかつ前記第一切り込みと交差する方向に切り込まれた第二切り込みを有する。
【0013】
複数の正極用活物質非塗布部同士あるいは複数の負極用活物質非塗布部同士を接合させる場合、切り込みが無い状態では正極シートや負極シートが薄く、積層間隔が小さなことが要件となるが、切り込みを設けることにより正極シートや負極シートの厚さや積層間隔の自由度が大きくなる。この発明では、正極用活物質非塗布部及び負極用活物質非塗布部は、それぞれ前記第一の切り込みと前記第二切り込みを有するため、正極シートあるいは負極シートに対して両開きの状態で折り曲げ可能になり、正極用活物質非塗布部あるいは負極用活物質非塗布部は二箇所で正極端子接続用部材あるいは負極端子接続用部材に接合される。したがって、一箇所で接合される構成に比べて強度的に良くなる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記正極用活物質非塗布部及び前記負極用活物質非塗布部は、それぞれ前記正極シートあるいは前記負極シートの一端側から他端側の方向に切り込まれた2つの第一切り込みを有する。
【0015】
正極用活物質非塗布部あるいは負極用活物質非塗布部を正極シートあるいは負極シートに対して接合する場合、接合力を確保するためには接合部として所定以上の面積が必要になる。両開きの状態では接合部が二箇所になるため、片開きの状態に比べて正極用活物質非塗布部あるいは負極用活物質非塗布部の面積を大きくする必要がある。その結果、正極シートあるいは負極シートに塗布される活物質の量が少なくなる。この発明では、正極用活物質非塗布部及び負極用活物質非塗布部は、それぞれ2つの前記第一切り込みを有するため、正極シートあるいは負極シートに対して片開きの状態で折り曲げ可能になり、正極用活物質非塗布部あるいは負極用活物質非塗布部は一箇所で正極端子接続用部材あるいは負極端子接続用部材に接合される。したがって、二箇所で接合される構成に比べて正極用活物質非塗布部あるいは負極用活物質非塗布部の面積を小さくすることができ、二箇所で接合される構成に比べて正極用活物質あるいは負極用活物質の塗布量を多くでき、二次電池のエネルギ密度が大きくなる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の二次電池用電極組立体を備えた二次電池である。この発明の二次電池は正極と負極の短絡防止を確保した状態でデッドスペースを低減して体積エネルギ密度の向上を図ることができ、製造の際にタブを正極シートや負極シートに接続する必要がない。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の二次電池が搭載された車両である。したがって、この発明の車両は請求項5に記載の発明の二次電池の効果が得られる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、タブを正極シートや負極シートに接続する必要がなく、正極と負極の短絡防止を確保した状態でデッドスペースを低減して体積エネルギ密度の向上を図ることができる二次電池用電極組立体及び二次電池を提供することができる。また、前記二次電池を搭載した車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は第1の実施形態の正極シート、負極シート及びセパレータの模式斜視図、(b)は正極シート、負極シート及びセパレータを組み付けた状態の模式平面図。
【図2】正極シート、負極シート及びセパレータの原材料となる帯状体の部分模式図。
【図3】二次電池の模式平面図。
【図4】(a)は正極用活物質非塗布部及び負極用活物質非塗布部に形成された切り込みの形状を示す模式図、(b)は複数の正極シート又は負極シートが端子接続用部材に接続された状態を示す模式図。
【図5】(a)は第2の実施形態の二次電池の模式平面図、(b)は複数の正極シート又は負極シートが端子接続用部材に接続された状態を示す模式図、(c)は切り込みの形状を示す模式図。
【図6】(a)は別の実施形態の切り込みの形状を示す模式図、(b)は複数の正極シートが端子接続用部材に接続された状態を示す模式図、(c)は別の実施形態の端子接続用部材の模式図。
【図7】別の実施形態の正極シート、セパレータ及び負極シートとの関係を示す模式図。
【図8】(a)は従来技術の発電要素の斜視図、(b)は負極集電体の挟持部に負極の端部が挟み込まれた状態を示す部分拡大斜視図。
【図9】別の従来技術の電極組立体の模式斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1〜図4にしたがって説明する。
図1(a),(b)に示すように、二次電池用電極組立体10は、正極用活物質11aが塗布された正極シート(正極体)11と、負極用活物質12aが塗布された負極シート(負極体)12と、正極シート11と負極シート12の間に介在されるセパレータ13とからなる層を複数層有する構成である。なお、積層された構成において、層間に図示しない電解液を入れることができる。正極シート11、負極シート12及びセパレータ13はそれぞれ複数枚ずつ設けられて一定方向に積層されている。
【0021】
なお、図1(a),(b)は二次電池用電極組立体10の構成を分かり易くするため模式的に描いたものであり、実際は、正極シート11及び負極シート12の枚数は数十枚であり、各部の寸法の比率も実際のものと異なる。例えば、隣り合うセパレータ13の間隔は100μm〜160μm程度である。
【0022】
図1(b)に示すように、正極用活物質11aは正極シート11の両面に塗布されており、負極用活物質12aは負極シート12の両面に塗布されている。
正極シート11には一端側に正極切り欠き部11b及び正極用活物質非塗布部11cが形成されている。負極シート12には一端側に正極シート11の正極用活物質非塗布部11cと重なる位置に負極切り欠き部12bが形成され、かつ正極シート11の正極切り欠き部11bと重なる位置に負極用活物質非塗布部12cが形成されている。
【0023】
セパレータ13には一端側に正極切り欠き部11b及び負極切り欠き部12bと重なる位置にセパレータ切り欠き部13aが形成されている。セパレータ13は正極シート11と負極シート12との電気的絶縁性を確保するため、正極シート11及び負極シート12より大きく形成されるとともにセパレータ切り欠き部13aが正極切り欠き部11b及び負極切り欠き部12bより小さく形成されている。
【0024】
正極シート11及び負極シート12は、図2に示すように、金属箔製の帯状材料14aに正極用活物質11aあるいは負極用活物質12aの塗布と、正極用活物質非塗布部11cあるいは負極用活物質非塗布部12cの形成と、正極切り欠き部11b及び負極切り欠き部12bの形成が行われた後、それぞれ1枚ずつ所定の大きさに切り離されて形成される。また、セパレータ13は、絶縁材製の帯状材料14bにセパレータ切り欠き部13aが所定間隔で形成された後、それぞれ1枚ずつ所定の大きさに切り離されて形成される。
【0025】
図4(a)に示すように、正極用活物質非塗布部11c及び負極用活物質非塗布部12cには正極用活物質非塗布部11cあるいは負極用活物質非塗布部12cを正極シート11あるいは負極シート12に対して両開きの状態で折り曲げ可能にする切り込みが形成されている。詳述すると、正極用活物質非塗布部11c及び負極用活物質非塗布部12cは、正極シート11あるいは負極シート12の一端側から他端側の方向に切り込まれた第一切り込み15aと、第一切り込み15aにおける他端側の先端部を通りかつ第一切り込み15aと交差する方向に切り込まれた第二切り込み15bを有する。即ち、切り込みは、矩形状の正極用活物質非塗布部11cあるいは負極用活物質非塗布部12cの中央部において短辺に沿って延びる第一切り込み15aと、長辺に沿って延びる第二切り込み15bとで、逆T字状となるように形成されている。
【0026】
そして、図4(b)に示すように、複数枚の互いに隣接する正極シート11は、正極用活物質非塗布部11cが第一切り込み15a及び第二切り込み15bの部分で両開きとなった状態で、両開きとなった部分の先端側の接合部11dが重なり合った状態で正極端子接続用部材16に対して二箇所で接合されている。また、負極シート12は負極用活物質非塗布部12cが第一切り込み15a及び第二切り込み15bの部分で両開きとなった状態で、両開きの先端側の接合部12dが重なり合った状態で負極端子接続用部材17に対して二箇所で接合されている。なお、接合は例えばインダイレクト溶接で行われる。即ち、正極シート11は正極用活物質非塗布部11cが正極端子接続用部材16に他の部材を介さずに直接接合可能に構成され、負極シート12は負極用活物質非塗布部12cが負極端子接続用部材17に他の部材を介さずに直接接合可能に構成されている。
【0027】
複数の正極用活物質非塗布部11c同士あるいは複数の負極用活物質非塗布部12c同士を接合させる場合、第一切り込み15a及び第二切り込み15bが無い状態では正極シート11や負極シート12が薄く、積層間隔が小さなことが要件となるが、第一切り込み15a及び第二切り込み15bを設けることにより正極シート11や負極シート12の厚さや積層間隔の自由度が大きくなる。この実施形態では、正極シート11あるいは負極シート12に対して両開きの状態で折り曲げ可能にする第一切り込み15a及び第二切り込み15bが形成され、正極用活物質非塗布部11cあるいは負極用活物質非塗布部12cは二箇所で正極端子接続用部材16あるいは負極端子接続用部材17に接合される。そのため、一箇所で接合される構成に比べて強度的に良くなる。
【0028】
複数層積層された正極シート11は従来技術と異なり、正極タブを使用せずに正極用活物質非塗布部11c同士が接合された状態で正極端子接続用部材16に接合され、複数層積層された負極シート12は負極タブを使用せずに負極用活物質非塗布部12c同士が接合された状態で負極端子接続用部材17に接合される。そして、隣り合う正極シート11の間にセパレータ13及び負極シート12が存在する。しかし、セパレータ13及び負極シート12のセパレータ切り欠き部13a及び負極切り欠き部12bは正極用活物質非塗布部11cと重なる状態で存在する。そのため、隣り合う正極用活物質非塗布部11cを正極シート11の積層方向に寄せることにより、正極用活物質非塗布部11c同士が接合された状態で負極シート12と干渉せずに正極端子接続用部材16に接合することができる。また、隣り合う負極シート12の間にセパレータ13及び正極シート11が存在する。しかし、セパレータ切り欠き部13a及び正極切り欠き部11bは負極用活物質非塗布部12cと重なる状態で存在するため、隣り合う負極用活物質非塗布部12cを負極シート12の積層方向に寄せることにより、負極用活物質非塗布部12c同士が接合された状態で正極シート11と干渉せずに負極端子接続用部材17に接合することができる。
【0029】
また、正極用活物質11aは正極シート11の正極用活物質非塗布部11cが形成された部分と正極切り欠き部11bが形成された部分との間にも塗布され、負極用活物質12aは負極シート12の負極用活物質非塗布部12cが形成された部分と負極切り欠き部12bが形成された部分との間にも塗布されているため、デッドスペースが少なくなる。したがって、正極タブや負極タブを正極シート(正極体)11や負極シート(負極体)12にいちいち接続する必要がなく、二次電池19において正極と負極の短絡防止を確保した状態でデッドスペースを低減して体積エネルギ密度の向上を図ることができる。
【0030】
前記のように構成された二次電池用電極組立体10は、図3に示すように、電池ケース(電槽)18に収容され、図示しない電解液とともに二次電池19が構成される。なお、図3では正極シート11が正極端子接続用部材16に、負極シート12が負極端子接続用部材17に接続される前の状態で示し、正極端子接続用部材16及び負極端子接続用部材17の図示を省略している。また、二次電池19は、例えば、車両に搭載されて使用される。
【0031】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)二次電池用電極組立体10は、正極用活物質11aが塗布された正極シート(正極体)11と、負極用活物質12aが塗布された負極シート(負極体)12と、正極シート11と負極シート12の間に介在されるセパレータ13とからなる層を複数層有する構成である。正極シート11には一端側に正極切り欠き部11b及び正極用活物質非塗布部11cが形成されており、負極シートには一端側に正極シート11の正極用活物質非塗布部11cと重なる位置に負極切り欠き部12bが形成され、かつ正極切り欠き部11bと重なる位置に負極用活物質非塗布部12cが形成されている。セパレータ13には一端側に正極切り欠き部11b及び負極切り欠き部12bと重なる位置にセパレータ切り欠き部13aが形成されている。そして、正極シート11は正極用活物質非塗布部11cが正極端子接続用部材16に直接接合可能に構成され、負極シート12は負極用活物質非塗布部12cが負極端子接続用部材17に直接接合可能に構成されている。したがって、タブを正極シート11や負極シート12に接続する必要がなく、二次電池19において正極と負極の短絡防止を確保した状態でデッドスペースを低減して体積エネルギ密度の向上を図ることができる。
【0032】
(2)正極シート11、負極シート12及びセパレータ13はそれぞれ一定方向に積層されている。したがって、同じ正極シート11、負極シート12及びセパレータ13を積層すればよく、帯状の正極シート及び帯状の負極シートを、帯状のセパレータを挟んだ積層状態で巻回した構成のものに比べて製造が簡単になる。なぜならば、正極シート、負極シート及びセパレータとして帯状の物を使用して巻回する構成では、複数形成される正極用活物質非塗布部11cの間隔、負極用活物質非塗布部12cの間隔、正極切り欠き部11b、負極切り欠き部12b、セパレータ切り欠き部13aの間隔が巻回部の内側部と外側部とでは異なる状態に形成する必要があり、製造が複雑になるからである。
【0033】
(3)正極用活物質非塗布部11c及び負極用活物質非塗布部12cは、それぞれ正極シート11あるいは負極シート12の一端側から他端側の方向に切り込まれた第一切り込み15aと、第一切り込み15aにおける他端側の先端部を通りかつ第一切り込み15aと交差する方向に切り込まれた第二切り込み15bを有する。そのため、正極用活物質非塗布部11cあるいは負極用活物質非塗布部12cを正極シート11あるいは負極シート12に対して両開きの状態で折り曲げ可能になる。したがって、一箇所で接合される構成に比べて強度的に良くなる。
【0034】
(4)二次電池19は前記構成の二次電池用電極組立体10を備えているため、(1)〜(3)の効果を奏する。
(5)二次電池19は車両に搭載されて使用される。したがって、車両は二次電池の(4)の効果が得られる。
【0035】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した第2の実施形態を図5(a),(b),(c)にしたがって説明する。この実施形態では、二次電池とした状態で耐振動性と放熱性とを向上させる構成を備えている点が前記第1の実施形態と異なっている。第1の実施形態と同一部分は同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0036】
図5(a)に示すように、二次電池用電極組立体10は、一部の負極シート12の間に、二次電池用電極組立体10が電池ケース18に収容された状態で二次電池用電極組立体10を電池ケース18に固定する板体20を備えている。板体20は両端に幅広部20aが形成され、幅広部20aにおいて電池ケース18の内面に固定されている。板体20は熱伝導性が良い電気的絶縁材、例えば、樹脂で形成されている。
【0037】
図5(b)に示すように、正極シート11の正極用活物質非塗布部11c及び負極シート12の負極用活物質非塗布部12cは、板体20に固定された正極端子接続用部材21あるいは負極端子接続用部材22に、複数枚ずつ接合されている。なお、正極用活物質非塗布部11c及び負極用活物質非塗布部12cは、正極端子接続用部材21あるいは負極端子接続用部材22の両側に接合されるが、図5(b)では片側部分の図示を省略している。この実施形態では切り込みは、図5(c)に示すように、正極シート11あるいは負極シート12の幅方向(図の上下方向)に延びる2本の平行線となっている。即ち、正極用活物質非塗布部11c及び負極用活物質非塗布部12cは、正極シート11あるいは負極シート12の一端側から他端側の方向に切り込まれた2つの第一切り込み15aを有する。
【0038】
なお、図5(a)も図1(b)と同様、二次電池用電極組立体10の構成を分かり易くするため模式的に描いたものであり、実際は、正極シート11及び負極シート12の枚数は数十枚であり、各部の寸法の比率も実際のものと異なる。図5(a)に示す矢印は、正極用活物質非塗布部11cあるいは負極用活物質非塗布部12cを正極端子接続用部材21あるいは負極端子接続用部材22に対して接合する際に、正極用活物質非塗布部11cあるいは負極用活物質非塗布部12cを正極端子接続用部材21あるいは負極端子接続用部材22に近づける方向を示している。
【0039】
したがって、この実施形態の二次電池用電極組立体10を備えた二次電池19は、板体20を介して二次電池用電極組立体10が電池ケース18に固定されているため、二次電池19に振動が加わった場合、二次電池用電極組立体10の振動が抑制される。また、大電流での充・放電を行った場合、発生した熱が、板体20を介して電池ケース18に伝導されて電池ケース18から外部に放出され易くなり、二次電池19の放熱特性が向上する。
【0040】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 図6(a)に示すように、正極用活物質非塗布部11c及び負極用活物質非塗布部12cに、それぞれ正極用活物質非塗布部11cあるいは負極用活物質非塗布部12cを正極シート11あるいは負極シート12に対して片開きの状態で折り曲げ可能にする形状、例えばL字状の切り込み15cを形成してもよい。このような構成では、図6(b)に示すように、複数の正極用活物質非塗布部11cあるいは負極用活物質非塗布部12cは、片開きとなった部分の先端側の接合部11dあるいは接合部12dが重なり合った状態で正極端子接続用部材16あるいは負極端子接続用部材17に対して一箇所で接合される。
【0041】
正極用活物質非塗布部11cを正極シート11に、あるいは負極用活物質非塗布部12cを負極シート12に対して接合する場合、接合力を確保するためには接合部11d,12dとして所定以上の面積が必要になる。両開きの状態では接合部11d,12dが二箇所になるため、片開きの状態に比べて正極用活物質非塗布部11cあるいは負極用活物質非塗布部12cの面積を大きくする必要がある。しかし、正極シート11あるいは負極シート12に対して片開きの状態で折り曲げ可能にする切り込み15cが形成されている場合は、正極用活物質非塗布部11cあるいは負極用活物質非塗布部12cは一箇所で正極端子接続用部材16あるいは負極端子接続用部材17に接合される。したがって、二箇所で接合される構成に比べて正極用活物質非塗布部11cあるいは負極用活物質非塗布部12cの面積を小さくすることができ、二箇所で接合される構成に比べて正極用活物質11aあるいは負極用活物質12aの塗布量を多くでき、二次電池のエネルギ密度が大きくなる。
【0042】
○ 正極端子接続用部材16あるいは負極端子接続用部材17として、図6(c)に示すように、正極用活物質非塗布部11cあるいは負極用活物質非塗布部12cが挿入される挿入溝16aあるいは挿入溝17aが形成されたものを使用してもよい。挿入溝16aあるいは挿入溝17aには複数の正極用活物質非塗布部11cあるいは負極用活物質非塗布部12cが挿入される。
【0043】
○ 正極シート11と負極シート12との電気的絶縁性を確保するため、正極シート11と負極シート12との間に独立したセパレータ13を配置する構成に代えて、図7に示すように、負極シート12を挟むように折り曲げられて配置されるセパレータ13を使用したり、あるいは、正極シート11を挟むように折り曲げられて配置されるセパレータ13を使用したりしてもよい。正極シート11と負極シート12との間に独立したセパレータ13を配置する構成では、正極シート11及び負極シート12が上側にずれた状態や下側にずれた状態で配置されてもセパレータ13による絶縁確保を図るためには、セパレータ13の上下方向の長さに余裕を持たせる必要がある。しかし、図7の構成では、負極シート12がセパレータ13の屈曲部に当接した状態で配置して、上側のずれ量を確保すればよく、正極シート11、負極シート12及びセパレータ13の組み付け配置作業が容易になる。また、セパレータ13の数が半分になる。なお、図7ではセパレータ13の配置を分かり易くするため、セパレータ13と正極シート11及び負極シート12との間隔を大きく図示している。
【0044】
○ 二次電池用電極組立体10は、正極シート11と、負極シート12と、正極シート11と負極シート12の間に介在されるセパレータ13とからなる層を複数層有する構成であればよく、正極シート11及び負極シート12がそれぞれ複数枚ずつあり、それらがセパレータ13を挟んで順次積層された構成に限らない。例えば、帯状の正極シート及び帯状の負極シートがそれぞれ1枚ずつで、両正極シート及び負極シートがセパレータを挟んで複数層に巻回されて長円柱状に形成された構成であってもよい。この場合、正極シートに形成される正極用活物質非塗布部は、複数層に巻回された正極シートの径方向において重なる位置になる箇所に設けられ、負極シートに形成される切り欠き部は複数層に巻回された負極シートの径方向において正極用活物質非塗布部と重なる位置になる箇所に設けられる。また、負極シートに形成される負極用活物質非塗布部は、複数層に巻回された負極シートの径方向において重なる位置になる箇所に設けられ、正極シートに形成される切り欠き部は複数層に巻回された正極シートの径方向において負極用活物質非塗布部と重なる位置になる箇所に設けられる。
【0045】
○ 帯状の正極シート及び帯状の負極シートがそれぞれ1枚ずつで、正極シート及び負極シートが1枚の帯状のセパレータを挟んで複数層に巻回される構成の場合、帯状の正極シート、負極シート及びセパレータが長円柱状ではなく、円柱状に巻回された構成としてもよい。
【0046】
○ 正極用活物質11a及び負極用活物質12aの塗布厚さはそれらの種類や正極シート11や負極シート12の材料によっても適切な値が異なり、正極用活物質11aの方が厚い場合、負極用活物質12aの方が厚い場合、両者が同じ場合がある。
【0047】
○ 単位面積当たりの正極用活物質11a及び負極用活物質12aの塗布量を多くして、体積エネルギ密度を上げてもよい。
○ 第2の実施形態において板体20を金属製とし、正極端子接続用部材21及び負極端子接続用部材22を、絶縁材を介して板体20に取り付ける構成としてもよい。
【0048】
○ 正極シート11や負極シート12の積層数は数十枚に限らず、二次電池に要求される大きさや容量によって適宜設定され、数十枚より多くても少なくてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10…二次電池用電極組立体、11…正極シート、11a…正極用活物質、11b…正極切り欠き部、11c…正極用活物質非塗布部、12…負極シート、12a…負極用活物質、12b…負極切り欠き部、12c…負極用活物質非塗布部、13…セパレータ、13a…セパレータ切り欠き部、15a…第一切り込み、15b…第二切り込み、16,21…正極端子接続用部材、17,22…負極端子接続用部材、19…二次電池。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極用活物質が塗布された正極シートと、負極用活物質が塗布された負極シートと、前記正極シートと前記負極シートの間に介在されるセパレータとからなる層を複数層有する構成の二次電池用電極組立体であって、
前記正極シートには一端側に正極切り欠き部及び正極用活物質非塗布部が形成されており、
前記負極シートには一端側に前記正極シートの前記正極用活物質非塗布部と重なる位置に負極切り欠き部が形成され、かつ前記正極切り欠き部と重なる位置に負極用活物質非塗布部が形成されており、
前記セパレータには一端側に前記正極切り欠き部及び前記負極切り欠き部と重なる位置にセパレータ切り欠き部が形成されており、
前記正極シートは前記正極用活物質非塗布部が正極端子接続用部材に直接接合可能に構成され、前記負極シートは前記負極用活物質非塗布部が負極端子接続用部材に直接接合可能に構成されていることを特徴とする二次電池用電極組立体。
【請求項2】
前記正極シート、前記負極シート及び前記セパレータは一定方向に積層されている請求項1に記載の二次電池用電極組立体。
【請求項3】
前記正極用活物質非塗布部及び前記負極用活物質非塗布部は、それぞれ前記正極シートあるいは前記負極シートの一端側から他端側の方向に切り込まれた第一切り込みと、前記第一切り込みにおける他端側の先端部を通りかつ前記第一切り込みと交差する方向に切り込まれた第二切り込みを有する請求項1又は請求項2に記載の二次電池用電極組立体。
【請求項4】
前記正極用活物質非塗布部及び前記負極用活物質非塗布部は、それぞれ前記正極シートあるいは前記負極シートの一端側から他端側の方向に切り込まれた2つの第一切り込みを有する請求項1又は請求項2に記載の二次電池用電極組立体。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の二次電池用電極組立体を備えた二次電池。
【請求項6】
請求項5に記載の二次電池が搭載された車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−62137(P2013−62137A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199748(P2011−199748)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】