説明

二液塗料供給装置の供給量設定方法

【課題】 二液混合供給装置の主混合器に供給するプレ混合器へ、交互に供給する主剤と硬化剤の供給量を適切かつ容易に設定する。
【解決手段】 予め所定の比率でプレミックス装置によって主剤中に硬化剤を分散させた多液塗料を主混合器で均一に混合し塗装装置に供給する多液塗料供給装置において、プレミックス装置に、主剤と硬化剤のそれぞれの液を交互に供給するにあたり、プレミックスの混合室内容積に対し、硬化剤に対する主剤の混合割合に応じて、これに比例した量を前記混合室内容積から差し引いた量を1サイクルあたりの主剤と硬化剤の供給量とし、主剤と硬化剤の混合比率に応じて分配した量をそれぞれの供給量として供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多液塗料を混合器で均一に撹拌混合する場合に、予め二液を交互に供給して均一に分散させるプレミックス装置にそれぞれの液を供給する方法に関するものである。

【背景技術】
【0002】
スプレー塗装の分野において、二液ポリウレタン塗装や二液エポキシ塗装は溶剤成分の少ない主剤に対して触媒である硬化剤を混合して吹き付けることにより、反応硬化させて塗膜を形成することから、溶剤の削減が図れ、耐候性・耐薬品性・耐水性等の塗膜性能にも優れていることから古くから使用されてきている。
【0003】
近年の環境汚染問題への対応としても、塗膜形成時における有機溶剤の排出をなくし、乾燥炉の不要化や低温化ができ、エネルギー削減に有効な塗装方法として、その有効的活用が期待されている。
【0004】
しかし、二液ポリウレタン塗料や二液エポキシ塗料のような二液もしくは多液塗料においては、主剤に対して硬化剤を混合する場合に、塗料によって設定された混合比で正確にむらなく混合する必要があり、この混合具合にバラツキが生じると、形成された塗膜が十分な性能を発揮することができないばかりか、部分的な塗膜性能の斑が生じ、塗膜品質、耐久性の低下を引き起こすことになる。したがって塗装においては、塗装機に供給する塗料を正確にかつ均一に混合した状態で送り込む供給装置が重要な役割をもつことになる。
【0005】
安定した混合比で正確に供給する方法は種々提案されてきた中で、それぞれの液を交互に必要とされる量で供給し、予備混合器で合流混合させ、主混合器で十分に撹拌混合した後塗装機に供給する方法が、種々の混合比率に対応して各液の流量を制御しやすく、それぞれの液を同時に供給した場合には条件によって一方の液が逆流し反応による硬化を生じて通路を詰まらせるなどの問題があるのに対し、安定した混合が可能なことが利点とされている。
【0006】
このような装置としては特開平11-347393号公報に、その実施例をみることができる。この場合予備混合器は塗料交換時や洗浄時に無駄になる塗料量を極力少なくするため、必要最小限の大きさとされるが、使用する塗料によって混合する2液の比率がさまざまであり、その比率が大きい場合には一方の液が1回あたり供給される量が少なくなり、正確に流量を制御することが難しくなる。したがって最大混合比率の時に少ない方となる量が制御可能である場合に両液の合計が必要最小限となる。
【0007】
また一方で予備混合器に供給する1回あたりの供給量すなわちa液(一般的には主剤)とb液(一般的には硬化剤)の合計供給量は、予備混合器内に収容できるようにしなければならない。もし多くなってしまった場合には、収まりきらない一方の液が不足した状態で主混合器に送られるため、均一な混合ができなくなる。
【0008】
更にそれぞれの液を供給制御する方法は、流量計によって実流量を検出し、設定値との補正量を制御装置にフィードバックして他方の液の供給量を変更することになるが、混合比率が大きい場合、補正量もその比率に比例して増大する。たとえば20:1の場合、少ない方が生じた変動量の20倍を補正量として供給することが必要となる。この傾向は全体の塗料流量が多くなると、バルブの応答性から更に強くなることになる。
【特許文献1】特開平11−347393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
予備混合器の容量が設定されている場合、混合比によってそれぞれの液の供給量を振り分けるだけでは、実際の流量に誤差が生じた場合、その誤差に応じた補正量を供給すると供給量が余分になり、収まらなくなることがある。特に混合比が大きくなった時には、その可能性が高く、混合が不均一になって塗膜品質にバラツキが生じてしまう。

【課題を解決するための手段】
【0010】
予め所定の比率でプレミックス装置によって主剤中に硬化剤を分散させた多液塗料を主混合器で均一に混合し塗装装置に供給する多液塗料供給装置において、プレミックス装置に、主剤と硬化剤のそれぞれの液を交互に供給するにあたり、プレミックスの混合室内容積に対し、硬化剤に対する主剤の混合倍率に応じて、これに比例した量を前記混合室内容積から差し引いた量を、1サイクルあたりの主剤と硬化剤の供給量とし、主剤と硬化剤の混合比に応じて分配した量をそれぞれの供給量として供給する。

【発明の効果】
【0011】
上記によれば供給する主剤と硬化剤の合計量は、必ずプレミックスの混合室内容積より少ない量が設定され、その設定量は混合比が高いほど少なくなるため、補正により増加する供給量を収容する余裕分が多くなる。したがって変動量に対して混合比と同じ倍率で補正供給量を増加させたとしても、確実に収容して、それぞれの液を設定どおりに均等に分散させることができる。
【0012】
主剤と硬化剤の1回あたりの供給量は、混合比に応じて設定されるため常に問題のない範囲で適切な値が設定されることから、都度考慮することなく、使用する塗料の混合比から自動的に導き出され、制御装置に組み込んで最適な混合を可能にする。

【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明を実施する混合装置を含む多液塗料供給装置の構成ブロック図を示している。主剤となるa液が供給装置1aから流量計2aと開閉弁3aを経て予備混合器4へ送られる。一方、硬化剤となるb液は供給装置1bから流量計2bと開閉弁3bを経て予備混合器4へ送られる。主剤と硬化剤は予備混合器4で予め混合された混合液としてスタティックミキサー5に送られ、ここで十分に撹拌混合された状態で塗料減圧弁6等を介し、スプレーガン7等の吐出開閉弁を経由して吐出される。
【0014】
予備混合器4へは主剤と硬化剤が、予め設定された混合比率によって流量が供給制御される手段として制御装置8が設けられ、前記流量計の検出信号、開閉弁の制御信号と関連付けられ、予め入力されもしくは記憶されたプログラムに基づき主剤と硬化剤を交互に供給する等の制御が行われる。
【0015】
予備混合器4は所定の内容積を有する混合室14を形成し、一方の流入口9から主剤が流入して混合室内で硬化剤が混合された後、他方の流出口11からスタティックミキサー5に送り込まれる。混合室の内部には硬化剤を主剤中に分散させる噴出口10が設けられている。混合室14内には前記供給装置から主剤と硬化剤が交互に送り込まれ、それぞれ1回の供給で1サイクルが完了する。
【0016】
混合室14内の容積は通常30mlから50ml程度で、前述の理由から可能な範囲で少量にしている。使用する多液塗料の混合比はさまざまであり、通常1:1から20:1程度がよく使用される範囲である。したがって容量が50mlの場合、1:1の時はそれぞれ25mlを供給制御すればよいが、20:1の場合は主剤47.6mlに対して硬化剤は2.38mlの供給量を制御しなければならない。もし更に高い混合比の場合も適用させる必要があるとすれば、供給量の制御は更に厳密性が要求され、もしくは混合室の容量の拡大を図ることになる。
【0017】
供給量の制御は開閉弁によって制御するが、実際の流量はバルブ作動や管路の流量抵抗等によって変動するため、一般的には流量計によって検出した実流量をフィードバックし、次のサイクルで補正する方法が採られる。このため補正によって増加した場合の供給量も含めて混合室内に収容できるように、初期の設定値として、主剤と硬化剤を加えた量は前記混合室内容量よりも少なく設定される。
【0018】
図2は本発明の実施において、容量を50mlとした場合に、混合比に応じて設定される主剤と硬化剤の供給量の関係を示すグラフを表しており、実線が合計量(混合比により補正された容量)、点線が硬化剤の供給量を示している。
【0019】
合計の供給量は50mlから混合倍率を差し引いた値となっていて、20:1の場合で50-20=30(ml)としている。そして硬化剤の供給量は、30mlを20と1の比で分割し、約1.43mlとなる。実際に、混合比が高いほど少なくなる供給量の制御は難しくなり、実流量との誤差の割合が高くなる可能性がある。更にその誤差に対して次に補正する主剤の供給量は20:1では20倍の量で対応することになり、それだけ余裕を残した供給量に設定されることになる。
【0020】
これによりいくつかの混合比において予備混合器での主剤と硬化剤の分散状態を確認した結果、容器内からあふれることなく、安定した分散状態をつくりだし確実な混合を可能にすることができた。以上の基準に基づけば、混合器の容量と最大混合比のバランスによって差し引く混合倍率に係数を乗じることによって適正な供給を可能にすることができる。上記の実施例では容量が50mlで、最大の混合倍率が20であるため係数は1となっている。
【0021】
例えば供給精度が向上し、混合器の容量を小さくすることができた場合、容量から混合比をそのまま差し引くと供給量が極端に低くなるようであれば1以下の定数を掛けた値を差し引くか、一定の下限制限値を設定し、それ以下にならないようにすれば良い。また大吐出量による塗装に於いて制御が追いつかない時に混合器そのものを大容量で対応する場合は、1以上の係数を乗じて差し引けばよい。通常1サイクルの供給量は、混合器容量の2/3から1/3になるようにすることで種々の混合比に対応することができる。
【0022】
したがって本方法によれば混合比の如何にかかわらず、適正な供給量を容易に設定でき、作業者の負担や煩わしさを取り除くことができる。また制御プログラムとして活用すれば常に安定した供給制御が可能となる。尚、実施例では容量(ml)を基本に述べたが質量(g)に置きかえても同様である。


【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明が適用される混合装置を含む塗料供給装置の全体構成ブロック図。
【図2】本発明により設定される供給量の設定値を示すグラフ図。
【符号の説明】
【0024】
1a、1b、供給装置
2a、2b、流量計
3a、3b、開閉弁
4、予備混合器
5、スタティックミキサー
9、主剤の流入口
10、噴射口
11、混合液の流出口




【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め所定の比率でプレミックス装置によって主剤中に硬化剤を分散させた多液塗料を主混合器で均一に混合し、塗装装置に供給する多液塗料供給装置において、プレミックス装置に、主剤と硬化剤のそれぞれの液を交互に供給するにあたり、プレミックスの混合室内容積に対し、硬化剤に対する主剤の混合倍率に応じて、該混合倍率に比例した量を前記混合室内容積から差し引いた量を1サイクルあたりの主剤と硬化剤の供給量とし、主剤と硬化剤の混合比に応じて分配した量をそれぞれの供給量とした二液塗料供給装置の供給量設定方法。





















【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−254982(P2009−254982A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107685(P2008−107685)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(390028495)アネスト岩田株式会社 (224)
【Fターム(参考)】