説明

二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物及びそれを用いて得られた粘着フィルム

【課題】 本発明が解決しようとする課題は、透明性、破泡性、粘着性、耐白化性、柔軟性に優れる粘着フィルムが得られる材料を提供することである。
【解決手段】 水添ダイマージオール(a−1)と水酸基末端水添ポリブタジエン(a−2)とを含有するポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)とを含有し、
前記ポリオール(A)中における、水添ダイマージオール(a−1)と水酸基末端水添ポリブタジエン(a−2)との質量割合が、水添ダイマージオール(a−1)/水酸基末端水添ポリブタジエン(a−2)=99.5/0.5〜80/20であることを特徴とする二液熱硬化型ポリウレタン樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性、柔軟性、粘着性、耐白化性、破泡性に優れる二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物及びそれを用いて得られた粘着フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイの需要が拡大の一途をたどるなかで、液晶ディスプレイの高機能化も益々求められている。これに従い、液晶ディスプレイを構成する部材やそれに使用される材料等にも更なる高機能化が求められている。
【0003】
液晶テレビやパソコン、携帯電話等で指による画面タッチ操作が主流となりつつある昨今の状況下において、現在の液晶ディスプレイの構成としては、液晶パネルと、偏光板を保護するために使用される保護基材との間にエアギャップと呼ばれる空気層を設ける構成が主流となっている。
前記エアギャップは、指等による画面への押圧力を緩和するためや、外からの衝撃が液晶パネルに直接伝わることによる液晶パネルの損傷を防止するために設けられている。
しかしながら、前記エアギャップは空気層であるため、屈折率差を生じ、光の散乱による輝度・コントラストの低下を招き、液晶画面の視認性を低下させるとの問題があった。
【0004】
そこで、前記エアギャップ層に樹脂を充填することで、光の散乱を防止し、液晶画面の視認性を向上させる試みがなされている(例えば、特許文献1参照。)。
さらに、最近の新たな試みとしては、OCA(Optical Clear Adhesive)テープ(本発明においては、テープ=粘着フィルムである。)と呼ばれる基材を有さず透明な粘着テープで液晶パネルと、保護基材とを貼合わせる方法が検討されている。
【0005】
前記OCAテープ用材料としては、シリコン樹脂やアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が使用されていることが知られている。
しかしながら、シリコン樹脂は粘着力が低く粘着性に乏しいため、保護基材層に衝撃が与えられた際に、保護基材とシリコン樹脂との間に空気が入り込み、経時的に剥離が生じ、液晶画面の視認性が悪化するとの問題点を有している。
また、アクリル系樹脂を用いた場合には、アクリル系樹脂中に残存したアクリル酸または加水分解によって生じた酸成分によって、液晶パネルの金属を腐食させるという問題がある。また、アクリル系樹脂を硬化させる紫外線照射時に、アクリル系樹脂表層部で反応に必要なフリーラジカルが消費されてしまい、底部が未硬化となるため、厚膜のOCAテープを得るのが困難であるとの問題点を有していた。
【0006】
一方、ポリウレタン系樹脂に関しては、溶剤系一液型ポリウレタン樹脂を使用した場合は、溶剤を揮発させる必要があるため、一定以上の厚みの粘着フィルムを得ることが困難である。また、二液硬化型ポリウレタン樹脂については、ポリオール成分として、ポリエーテルポリオールを使用することで、透明性が高く、厚膜の粘着フィルムを得ることができる。
しかしながら、かかる場合には、湿潤雰囲気下で空気中の水分を取り込み、粘着フィルム自身が白く濁る(白化)現象が発生するとの問題や、シリコン樹脂同様粘着性に乏しいとの問題を有している。
【0007】
これらに代わる材料としては、ポリエステル系の粘着剤による試みが検討されている。具体的には、ジカルボン酸とジオールとをジカルボン酸に含まれるカルボキシル基1.0モルに対しジオールに含まれる水酸基が1.2〜2.0モルとなる割合で縮合重合させて得られる、ガラス転移温度が−70〜−20℃であるポリエステル樹脂と共に、鎖延長剤として分子量が150〜2,000であるジイソシアネートと、架橋剤として3官能以上のポリイソシアネートとを、鎖延長および架橋後のゲル分率が30〜80%となる割合で含有することを特徴とする無溶剤型ポリエステル系粘着剤組成物が開示されている(特許文献2参照。)。
【0008】
しかしながら、ポリエステルポリオールを使用した場合には、十分な粘着性が得られなかったり、また、二液混合時の粘度が高いために、樹脂中で巻き込まれた微細な気泡が樹脂中から外へ抜けず(破泡性に乏しい)、得られる成形物にも微細な気泡が残存するため、結果透明性が不良となる等の問題を有している。また、破泡性を向上させるために、シリコン系消泡剤を添加すると白濁し、透明性が悪化するとの問題点を有していた。
【0009】
さらに、ポリエステルポリオールは製造時の酸化や熱履歴によって黄色に着色しやすく、前記無溶剤型ポリエステル系粘着剤組成物を用いて得られる粘着フィルムは、黄色みがかるため透明性に乏しく、液晶画面の視認性を向上させることが困難である。また、エステル結合は加水分解によって粘着性低下や硬度低下を引き起こすため、液晶用等の光学用粘着フィルムとして使用に耐えうるものではない。
【0010】
以上のように、産業界からは、透明性、破泡性、粘着性、耐白化性に優れる粘着フィルムが得られる材料が渇望されている。
【0011】
また、上記の性質に加えて、粘着フィルムが特にエアギャップに使用される場合は、液晶モジュールの保護及び液晶モジュールの凹凸に対する追従性が必要となるため、粘着フィルムの柔軟性も非常に重要な特性である。
従って、これら全ての特性を満たす材料が渇望されているが、未だ見出されていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−186963号公報
【特許文献1】特開2010−95672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、透明性、破泡性、粘着性、耐白化性、柔軟性に優れる粘着フィルムが得られる材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、前記課題を解決すべく研究を進める中で、二液硬化型ポリウレタン樹脂に着目し、様々な種類のポリオールやポリイソシアネートとの組み合わせを研究した。
その中で、本発明者等は、特に耐白化性の改善として、疎水性の強い水添ダイマージオールに着目し、検討を進めた。しかしながら、ポリオール成分として水添ダイマージオールを単独で使用した場合には、耐白化性の改善は見られたものの、破泡性に乏しく、得られる粘着フィルムに微細な空気の気泡が残存するため、透明性の向上を両立することが困難であった。
【0015】
そこで、本発明者等は、水添ダイマージオールと他のポリオールとを組合せ使用することを検討した。具体的には、水添ダイマージオールと相溶性のよい疎水性ポリオールとの組合せを検討した。種々ある疎水性ポリオールとの組合せを検討する中で、本発明者等は、破泡性の改良には疎水性ポリオールの表面張力が重要であると考えた。結果、水酸基を末端に有する水添ポリブタジエンを使用した場合に、破泡性の向上を図ることができたが、粘着フィルム自体の透明性が悪化したり、粘着性、柔軟性といった物性の両立を図ることが困難であった。
【0016】
しかしながら、本発明者等は種々検討を進めていくなかで、水添ダイマージオールと水酸基末端水添ポリブタジエンとを特定の質量割合で使用した場合に限り、破泡性に優れ、透明性、粘着性、耐白化性、柔軟性全てを満たす粘着フィルムが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、水添ダイマージオール(a−1)と水酸基末端水添ポリブタジエン(a−2)とを含有するポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)とを含有し、
前記ポリオール(A)中における、水添ダイマージオール(a−1)と水酸基末端水添ポリブタジエン(a−2)との質量割合が、水添ダイマージオール(a−1)/水酸基末端水添ポリブタジエン(a−2)=99.5/0.5〜80/20であることを特徴とする二液熱硬化型ポリウレタン樹脂組成物及びそれを用いて得られた粘着フィルムを提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物は、破泡性に優れるものであり、得られる粘着フィルムに微細な気泡が残存することがない。
また、本発明の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物を用いて得られた粘着フィルムは、透明性、柔軟性、粘着性、耐白化性に優れるものであり、光学用テープとして好適に使用できるものである。特に、OCAテープとして有用であり、液晶パネルと保護基材との間のエアギャップ(空気層)充填用テープとして有用である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
はじめに、本発明で使用する水添ダイマージオール(a−1)について説明する。
【0019】
前記水添ダイマージオール(a−1)は、不飽和脂肪酸の二量体であるダイマー酸を高圧接触水素還元することによって得られるものである。
【0020】
前記不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸を使用することが、原料入手が容易な観点から好ましい。
【0021】
また、前記水添ダイマージオール(a−1)は、天然の植物油脂肪酸から製造できるものであり、通常、その市販品には、水添ダイマージオールの他に、前記不飽和脂肪酸の三量体や、それを還元して得られる水酸基含有化合物等の副生成物が混在しているのが一般的である。
【0022】
また、前記水添ダイマージオール(a−1)としては、下記式(1)で表されるものを使用することが好ましく、数平均分子量が300〜1500であることが好ましく、300〜1000であることがより好ましい。なお、前記水添ダイマージオール(a−1)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用い、溶離液としてテトラヒドロフランを使用し、ポリスチレン換算によって求めた値である。
【0023】
【化1】

(上記式中、RとRは同一もしくは異なるアルキル基であり、RとRは同一もし
くは異なるアルキレン基であり、R〜Rの炭素数の合計は24〜32個の範囲である
。)
【0024】
また、前記式(1)中、R〜Rの各官能基の各々の炭素数は4個〜10個であることが好ましく、R〜Rの各官能基の炭素数の合計は、24〜32個であることが好ましい。具体的には、R、Rはブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基であり、R、Rはブチレン基、ペンチレン基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基を挙げることができる。
【0025】
前記水添ダイマージオール(a−1)の好ましいものとしては、「プリポール 2033」(クローダジャパン(株)製)等を市販品として入手することができる。
【0026】
次に、本発明で使用する水酸基末端水添ポリブタジエン(a−2)について説明する。
【0027】
前記水酸基末端水添ポリブタジエン(a−2)は、2つ以上の水酸基末端を含有し、水素化された、直鎖状若しくは分岐状のポリブタジエンである。前記水酸基末端水添ポリブタジエン(a−2)の平均官能基(水酸基)数は、1.3〜3.0であることが好ましく、1.5〜2.5であることがより好ましい。
【0028】
前記水酸基末端水添ポリブタジエン(a−2)の数平均分子量としては、前記水添ダイマージオールとの相溶性等の観点から、500〜10000であることが好ましく、1000〜5000がより好ましく、2000〜4000が更に好ましく、2500〜3500が特に好ましい。なお、前記水酸基末端水添ポリブタジエン(a−2)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用い、溶離液としてテトラヒドロフランを使用し、ポリスチレン換算によって求めた値である。
【0029】
前記水酸基末端水添ポリブタジエン(a−2)の第一級水酸基の含量は、0.1〜2.0mol/kgであることが好ましく、0.2〜1.0mol/kgがより好ましく、0.3〜0.7mol/kgが特に好ましい。
【0030】
前記水酸基末端水添ポリブタジエン(a−2)の水素化の程度は、水素化する前に存在するオレフィン部位中の100%が水素化されていることが好ましいが、本発明においては、若干のオレフィンが残存していても良い。
【0031】
前記水酸基末端水添ポリブタジエン(a−2)の好ましい水酸基末端水添ポリブタジエン(a−2)としては、「KRASOL HLBH−P 3000」(出光興産(株)製)等を市販品として入手することができる。
【0032】
次に、本発明で使用するポリオール(A)について説明する。
【0033】
前記ポリオール(A)は、前記水添ダイマージオール(a−1)と水酸基末端水添ポリブタジエン(a−2)とを含有するものである。
【0034】
本発明においては、前記ポリオール(A)中、水添ダイマージオール(a−1)と水酸基末端水添ポリブタジエン(a−2)との質量割合が、水添ダイマージオール(a−1)/水酸基末端水添ポリブタジエン(a−2)=99.5/0.5〜80/20であることが必須である。前記質量割合がかかる範囲内であれば、破泡性に優れる二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物が得られ、透明性、粘着性、耐白化性、柔軟性に優れる粘着フィルムが得られる。
前記質量割合として、前記水酸基末端水添ポリブタジエン(a−2)の質量割合が0.5を下回る場合には、破泡性、及びそれに付随して透明性が不良となり、また、前記(a−2)の質量割合が20を超える場合には、透明性、粘着性及び柔軟性のバランスを図ることが非常に困難である。
【0035】
また、柔軟性や、二液混合時の相溶性等をより向上できる観点から、前記質量割合としては、水添ダイマージオール(a−1)/水酸基末端水添ポリブタジエン(a−2)=99.5/0.5〜90/10であることがより好ましい。
【0036】
なお、本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲であれば、前記ポリオール(A)中に、前記(a−1)及び(a−2)以外のポリオールを併用してもよい。
【0037】
前記(a−1)及び(a−2)以外のポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリエーテルポリオール等を使用することができる。
【0038】
次に、本発明で使用するポリイソシアネート(B)について説明する。
【0039】
前記ポリイソシアネート(B)としては、特に限定されるものではなく、例えば、
トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸メチルなどの脂肪族ジイソシアネート;2,6−ジイソシアナトヘキサン酸2−イソシアナトエチル、1,6−ジイソシアナト−3−イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタンなどの脂肪族トリイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、
1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−もしくは1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、もしくはその混合物、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタンなどの脂環族トリイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート、
1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω’−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物などの芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼンなどの芳香脂肪族トリイソシアネート等の芳香脂肪族ポリイソシアネート、
m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4’−もしくは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4−もしくは2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエンなどの芳香族トリイソシアネート;4,4’−ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネートなどの芳香族テトライソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート等
を使用することができ、これらは単独又は2種以上を併用してもよい。
【0040】
また、前記ポリイソシアネート(B)としては、前述したポリイソシアネート化合物の他に、前述したポリイソシアネート化合物と、前記(A)に使用できるポリオール、低分子量グリコール及び低分子量モノオールから選ばれる1種以上の水酸基含有化合物と、を反応させた部分ウレタン化反応物を使用することもできる。なかでも、前記水添ダイマージオール(a−1)と前記水酸基末端水添ポリブタジエン(a−2)との相溶性をより向上できる観点から、前記水酸基含有化合物としては、低分子量グリコール及び/又は低分子量モノオールを使用することがより好ましい。なお、前記部分ウレタン化反応物とは、前記水酸基含有化合物の有する水酸基当量に対して、前述したポリイソシアネート化合物の有するイソシアネート基を過剰量反応させて得られるものを示し、具体的には、NCO/OHが1.5以上、より好ましくは、1.5〜5.0でウレタン化反応させて得られるものである。
【0041】
前記低分子量グリコールとしては、脂肪族/脂環族低分子量グリコールを使用することが好ましく、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール等の脂肪族ジオール、あるいは1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ジオール、あるいはグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能以上の水酸基含有化合物などが挙げられる。前記グリコールは、直鎖、分岐、環状の何れの構造を有していてもよい。これらは、単独使用でも2種以上を併用してもよい。
【0042】
また、前記低分子量アルコールとは、好ましくは炭素数1〜9の直鎖又は分岐アルコール、脂環式アルコール、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、n−ノナノール、2−エチルブタノール、2,2−ジメチルヘキサノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、エチルシクロヘキサノールが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0043】
前記低分子量グリコール及び低分子量モノアルコールの低分子量とは、好ましくは30〜500であり、より好ましくは30〜250である。前記低分子量グリコール及び低分子量モノオールの分子量がかかる範囲であれば、低粘度で成型時の作業性に優れる。なお、前記低分子量グリコール及び低分子量アルコールの分子量は、化学式から計算される値を示す。
【0044】
また、前記ポリイソシアネート(B)としては、前述したポリイソシアネート化合物及び前述した部分ウレタン化反応物の他に、これらをイソシアヌレート化触媒の存在下で反応させて得られるイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネートを使用することもできる。
【0045】
前記イソシアヌレート構造を有するポリイソシアネートとしては、耐黄変性をより向上できる観点から、ヘキサメチレンジイソシアネートを原料とするものを使用することがより好ましく、更に前記水添ダイマージオール(a−1)と前記水酸基末端水添ポリブタジエン(a−2)との相溶性をより向上できる観点から、ヘキサメチレンジイソシアネートと、前記低分子量グリコール及び/又は低分子量モノオールとを、イソシアヌレート化触媒の存在下で反応させて得られるものを使用することが特に好ましい。
【0046】
また、前記イソシアヌレート構造を有するポリイソシアネートの平均官能基数は、2.5〜3.5の範囲であることが粘着性及び柔軟性のバランスを図るために好ましく、2.6〜3.3の範囲であることがより好ましい。なお、前記イソシアヌレート構造を有するポリイソシアネートの平均官能基数とは、前記イソシアヌレート構造を有するポリイソシアネートを、前処理としてメタノールブロックを施し、溶媒として重クロロホルムを使用し、測定モード:シングルパルスで、13C−NMRにより測定した値を示す。
【0047】
なお、前記ヘキサメチレンジイソシアネートから得られるイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネートとしては、例えば、「デュラネート TSA−100」、「デュラネート TSS−100」、「デュラネート TSE−100」、「デュラネート TSR−100」、「デュラネート THA−100」、「デュラネート A201H」(以上、旭化成ケミカルズ(株)製)、「デスモジュールKL−2444」、「スミジュールN3300」(以上、住化バイエルウレタン(株)製)、「コロネート−HX」(日本ポリウレタン(株)製)等を市販品として入手することができる。
【0048】
次に、本発明の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物について説明する。
【0049】
前記二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物は、前記水添ダイマージオール(a−1)と水酸基末端水添ポリブタジエン(a−2)とを含有するポリオール(A)と、前記ポリイソシアネート(B)と、必要に応じて各種添加剤を含有するものである。
【0050】
前記各種添加剤としては、例えば、タッキファイヤー、チキソ付与剤、増感剤、レベリング剤、酸化防止剤、粘着付与剤、ワックス、熱安定剤、耐光安定剤、蛍光増白剤、発泡剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、有機溶剤、導電性付与剤、帯電防止剤、透湿性向上剤、撥水剤、中空発泡体、難燃剤、吸水剤、吸湿剤、消臭剤、整泡剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤、防藻剤、ブロッキング防止剤、加水分解防止剤等を使用することができる。
【0051】
前記タッキファイヤーとしては、ロジン系粘着付与剤、テルペン系粘着付与剤、脂肪族石油炭化水素(C)系粘着付与剤、脂肪族石油炭化水素(C9)系粘着付与剤及び水添化合物等が挙げられる。
【0052】
次に、本発明の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物を用いた粘着フィルムの製造方法について説明する。
【0053】
本発明の二液型熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物を混合させる際は、前記水添ダイマージオール(a−1)と水酸基末端水添ポリブタジエン(a−2)とを含有するポリオール(A)と、前記ポリイソシアネート(B)と、必要に応じて前記各種添加剤とを20秒〜10分混合すればよい。混合方法は、手による攪拌、二液混合注型機等が挙げられるが、混合さえされればよく、特に限定されるものではない。なお、かかる混合時に一部ウレタン化反応が進行しても差し支えない。
【0054】
前記水添ダイマージオール(a−1)と水酸基末端水添ポリブタジエン(a−2)とを含有するポリオール(A)と、前記ポリイソシアネート(B)との反応比率としては、特に限定されるものではないが、粘着性及び柔軟性のバランスをより向上するために、前記ポリイソシアネート(B)の有するイソシアネート基/前記ポリオール(A)の有する水酸基=0.50〜1.00(モル比)で反応させることが好ましく、0.50〜0.70がより好ましく、0.56〜0.69が更に好ましい。
【0055】
また、前記水添ダイマージオール(a−1)と水酸基末端水添ポリブタジエン(a−2)とを含有するポリオール(A)と、前記ポリイソシアネート(B)とを混合させる際には、必要に応じて三級アミン触媒や有機金属系触媒等の公知のウレタン化触媒を使用してもよい。
【0056】
前記混合後は、離型基材表面に該混合物を、例えばカーテンフローコーター法やダイコーター法等のスリットコーター法、ナイフコーター法、ロールコーター法等によって塗工し、その後、加熱しポリウレタン樹脂を硬化させる。加熱は、40〜250℃で、1〜1000秒程度の時間で行うことが好ましい。
【0057】
加熱後は、離型基材と粘着フィルムの積層体が得られるが、該粘着フィルム側に離型基材を更に貼合わせることで、離型基材/粘着フィルム/離型基材との積層体が得られる。本発明の粘着フィルムを使用する際には、該積層体から、両面の離型基材を剥がし、目的の被着体へ貼合わせることができる。
【0058】
なお、前記積層体を得た後に、更に加熱し、二次硬化させてもよい。この際の加熱は、30〜80℃で、1〜10時間程度の時間で行うことが好ましいが、使用する離型基材に応じて適宜選択される。
【0059】
また、本発明の粘着フィルムを得る他の方法としては、例えば、金属等の基材に、前記混合物を塗工し、該混合物塗工面の上から、金属等の基材を押しあて、圧力をかけた後に、加熱硬化して粘着フィルムを得る方法等が挙げられる。
【0060】
なお、本発明の粘着フィルムの厚みは、50μm〜2mmの中で適宜選択でき、使用される用途に応じて決定される。
【0061】
以上の方法によって得られた本発明の粘着フィルムは、透明性、破泡性、粘着性、耐白化性、柔軟性に優れるものであり、光学用テープとして好適に使用できるものである。特に、OCAテープとして有用であり、液晶パネルと保護基材との間のエアギャップ(空気層)充填用テープとして有用である。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例により、一層具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例のみに限定されるものではない。
また、本発明では、特に断りのない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」である。
【0063】
[実施例1]
水添ダイマージオールとして、「プリポール2033」(クローダジャパン(株)製、数平均分子量534)を90質量部、水酸基末端水添ポリブタジエンとして「KRASOL HLBH−P 3000」(出光興産(株)製、数平均分子量3100)を10質量部、ジオクチル錫バーサテート0.0.2質量部、ポリイソシアネート(B)として、「デュラネート TSE−100」(旭化成工業(株)製、NCO%=17.2%)を100質量部を混合し、離型PET(ポリエチレンテレフタラート)上にナイフコーターにより厚さ200μmとなるように塗工した。その後、更にオーブン中で10分間、90℃で加熱、一次硬化させた。その後、塗工面にカバーフィルムとして離型PETを更に貼り合わせた後、巻き取った。その後、更に50℃で5時間二次硬化させ、離型PET/粘着フィルム/離型PETの積層体を得た。
【0064】
[実施例2]
「プリポール2033」の使用量を80質量部、「KRASOL HLBH−P 3000」の使用量を20質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、離型PET/粘着フィルム/離型PETの積層体を得た。
【0065】
[実施例3]
「プリポール2033」の使用量を99質量部、「KRASOL HLBH−P 3000」の使用量を1質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、離型PET/粘着フィルム/離型PETの積層体を得た。
【0066】
[比較例1]
「KRASOL HLBH−P 3000」を使用せず、「プリポール2033」の使用量を100質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、離型PET/粘着フィルム/離型PETの積層体を得た。
【0067】
[比較例2]
「プリポール2033」の使用量を70質量部、「KRASOL HLBH−P 3000」の使用量を30質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、離型PET/粘着フィルム/離型PETの積層体を得た。
【0068】
[比較例3]
「プリポール2033」を、ダイマー酸と水添ダイマージオールとを反応させて得られたポリエステルポリオールに変更した以外は、比較例1と同様にして、離型PET/粘着フィルム/離型PETの積層体を得た。
なお、前記ポリエステルポリオールの合成条件は、以下のとおりである。
攪拌機、温度計、流出用冷却機を備えた反応系内にダイマー酸(「プリポール1009」、クローダジャパン(株)製、数平均分子量566)75.7質量部、水添ダイマージオール「プリポール2033」100質量部、触媒として、チタンテトライソプロポキシド(和光(株)製)0.53質量部を仕込み、3kPaに減圧し、200℃で4時間縮合重合を行い、前記ポリエステルポリオールを得た。
【0069】
[比較例4]
「プリポール2033」を、「PTMG2000」(三菱化学(株)製、ポリエーテルポリオール、数平均分子量2000)に変更し、「デュラネート TSE−100」を「デュラネート TSA−100」(旭化成工業(株)製、NCO%=20.8%)に変更した以外は、比較例1と同様にして、離型PET/粘着フィルム/離型PETの積層体を得た。
【0070】
[比較例5]
「PTMG2000」を「キョーワポール 2000PA」(協和発酵(株)製、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸とを反応させて得られたポリエステルポリオール、数平均分子量2000)に変更した以外は、比較例4と同様にして、離型PET/粘着フィルム/離型PETの積層体を得た。
【0071】
[数平均分子量の測定方法]
実施例及び比較例で使用したポリオールの数平均分子量は、以下のように測定した。
(測定装置・条件)
東ソー株式会社製 一体型GPC装置
装置:HLC−8220GPC
検出器:RI(示差屈折計)
カラム:TSK−gel G5000HxL(7.8×300mm)×1
G4000HxL(7.8×300mm)×1
G3000HxL(7.8×300mm)×1
G2000HxL(7.8×300mm)×1
移動相:THF(テトラヒドロフラン)
流速:1.0mL/min
設定温度:40℃
注入量:100μL(試料濃度:0.4%)
ポリスチレン(※)換算による数平均分子量を測定。
※ポリスチレン:東ソー株式会社製 TSK標準ポリスチレン
【0072】
[透明性の評価方法]
実施例及び比較例で得られた積層体から、両面の離型PETを剥がし、粘着フィルムを目視で観察し、以下のように評価した。
「○」:粘着フィルムが透明である。
「×」:粘着フィルムが黄色みがかっている、又は、粘着フィルムに微細な気泡が残存する。
【0073】
[柔軟性の評価方法]
柔軟性の評価は、硬度で判断した。
実施例及び比較例で得られた積層体から、両面の離型PETを剥がし、粘着フィルムの硬度をアスカーC硬度計(高分子計器(株)製)にてJIS K 7312に準拠して測定した。
なお、アスカーC硬度が15以下であるものは、柔軟性に優れると判断した。
【0074】
[粘着性の評価方法]
粘着性の評価は、ピール粘着性試験で判断した。
実施例及び比較例で得られた積層体から、両面の離型PETを剥がし、粘着フィルムをガラス板に貼合わせ、JISZ0237に準拠して、180℃ピール、剥離速度300mm/minの粘着力(N/25mm)を測定した。
なお、ピール粘着性評価での粘着力が10(N/25mm)以上であるものは、粘着性に優れると判断した。
【0075】
[耐白化性の評価方法]
実施例及び比較例で得られた積層体から、両面の離型PETを剥がし、粘着フィルムを
85℃、95%RHの条件下で24時間放置後、30分間常温、常圧下で放置し、粘着フィルムの外観を目視で観察し、以下のように判断した。
「○」:粘着フィルムに白化がない。
「×」:粘着フィルムに白化が見られる。
【0076】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水添ダイマージオール(a−1)と水酸基末端水添ポリブタジエン(a−2)とを含有するポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)とを含有し、
前記ポリオール(A)中における、水添ダイマージオール(a−1)と水酸基末端水添ポリブタジエン(a−2)との質量割合が、水添ダイマージオール(a−1)/水酸基末端水添ポリブタジエン(a−2)=99.5/0.5〜80/20であることを特徴とする二液熱硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリオール(A)と、前記ポリイソシアネート(B)とを、[前記ポリイソシアネート(B)の有するイソシアネート基/前記ポリオール(A)の有する水酸基=0.50〜1.00(モル比)]で反応させることを特徴とする、請求項1記載の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記水添ダイマージオール(a−1)が、下記式(1)で表されるものである、請求項1記載の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
【化1】

(上記式中、RとRは同一もしくは異なるアルキル基であり、RとRは同一もし
くは異なるアルキレン基であり、R〜Rの炭素数の合計は24〜32個の範囲である
。)
【請求項4】
前記水酸基末端水添ポリブタジエン(a−2)の数平均分子量が500〜10000である、請求項1記載の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリイソシアネート(B)が、平均官能基数が2.5〜3.5のイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネートである、請求項1記載の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリイソシアネート(B)が、ヘキサメチレンジイソシアネートを原料とするものである、請求項5に記載の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物を用いて得られた粘着フィルム。
【請求項8】
光学用に使用されるものである、請求項7記載の粘着フィルム。
【請求項9】
OCAテープとして使用されるものである、請求項7記載の粘着フィルム。
【請求項10】
液晶パネルと保護基材との間のエアギャップ(空気層)に使用されるものである、請求項7記載の粘着フィルム。

【公開番号】特開2013−18856(P2013−18856A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152773(P2011−152773)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】