説明

二種のポリエーテルアミンと一種のプレポリマーから製造できるポリ尿素

本発明は、
a)
a1)5〜40重量%の少なくとも一種の、少なくとも一種のポリエーテルポリオール1(PEP1)と少なくとも一種のアミン1とから得られるポリエーテルアミン1(PEA1)(ただし、PEP1の等価質量は≦500)と、
a2)30〜90重量%の少なくとも一種の、少なくとも一種のポリエーテルポリオール2(PEP2)と少なくとも一種のアミン2から得られるポリエーテルアミン2(PEA2)(ただし、PEP2の等価質量は>500)と、
a3)5〜30重量%の少なくとも一種のアミン鎖延長剤と、含む成分Aと、
b)
b1)少なくとも一種のポリエーテルポリオール(PEP3)及び
b2)少なくとも一種のイソシアネートと、から得られる、
プレポリマーである成分Bと、
から製造されるポリ尿素に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成分Aを成分Bと反応させて製造されるポリ尿素に関する。
【背景技術】
【0002】
成分Aは二種のポリエーテルアミンと一種のアミン鎖延長剤を含み、成分Bはポリエーテルポリオールとイソシアネートから得られるプレポリマーである。好ましくは、本発明のポリ尿素は噴霧配合物として製造される。
【0003】
DE−A4117679は、A成分とB成分を含む反応混合物を射出成型または反応射出(RIM)成型してポリウレタン/ポリ尿素エラストマーまたはポリ尿素エラストマーを製造する方法に関する。なお、用いるA成分は、ポリイソシアネートまたはイソシアネートで末端停止されたポリウレタンプレポリマーである。用いるB成分は、ポリオールまたはポリアミンと鎖延長剤である。このポリオールは、二金属シアン化物複合触媒(DMC触媒)を用いて製造される。他方、ポリアミンは、ポリオールをアミンでグラフト化して製造される。成分Aとしてポリウレタンプレポリマーが使用される場合、このプレポリマーは、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とジオール、トリオールまたは高分子量ポリオールとの反応により得られるものである。
【0004】
US−B6,797,798には、準プレポリマー混合組成物(成分A)とイソシアネートと反応可能な第二の有機化合物(化合物B)との反応生成物からなる噴霧型ポリ尿素エラストマーが開示されている。なお、化合物Aは、第一のイソシアネート組成物とイソシアネートと反応可能な第一の有機化合物の反応生成物からなる中間体プレポリマーを含む。また、成分A)は第二のイソシアネート組成物を含む。成分A)中に存在する中間体プレポリマーを製造するために、特にポリオールを使用可能で、特に平均分子量が約1000〜10000であるポリエーテルジオールまたはポリエーテルトリオールを使用できる。成分B)として好適なのは、例えば、平均分子量が2000〜5000でアミン末端のポリオキシプロピレンジアミンを含むアミン樹脂(例えば、市販製品のジェファミンD−2000)や、市販製品のエタキュア100などの鎖延長剤である。しかし、US−B6,797,798には、これらのポリオールまたはポリエーテルポリオールの製造に用いられる触媒についての情報は含まれていない。
【0005】
US−A5,962,618には、ジェファミン型のアミン樹脂から製造できる他の噴霧型ポリ尿素エラストマーが開示されている。これらのポリ尿素は、イソシアネートと活性水素含有材料から合成される準プレポリマーと、アミン樹脂、鎖延長剤、水及び機能性アルコキシシランとから形成される反応生成物を含んでいる。
【0006】
US−A5,124,426に記載の噴霧型ポリ尿素エラストマーは、成分Aとしてイソシアネートを、成分Bとしてアミン末端のポリオキシアルキレンポリオールと鎖延長剤を含んでいる。成分Aは、上記のイソシアネートがポリオールと反応した準プレポリマーとして形成されていてもよい。成分AとBの製造に使用されるポリオールは、上述のジェファミン型のアミン樹脂を含んでいてもよい。
【0007】
いろいろな種類のポリ尿素とその用途についての概要が、B. Eling (「塗料」、ポリウレタンハンドブック; D, Randall, S. Lee (Editors), John Wiley & Sons (2002), pages 363 to 378) に見られる。ポリ尿素製造に使用可能なポリオールまたはポリエーテルポリオールが、例えば、D. Sparrow (「塗料」、ポリウレタンハンドブック; D. Randall, S. Lee (Editors), John Wiley & Sons (2002), pages 89 to 112)に記載されている。噴霧型ポリ尿素の製造方法の概要が、D. J. Primeaux II (Proceedings of the SPI, 32nd Annual Technical/Marketing Conference, San Francisco, California (October 1−4, 1989), pages 126 to 130)に記載されている。
【0008】
したがって先行技術のいずれにも記載されていないのは、ポリ尿素の製造において、使用するポリエーテルポリオールの等価質量が異なるポリエーテルアミンの混合物を、二成分のうちの一つに使用できることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、噴霧配合物を経由して製造できる他のポリ尿素を提供することである。先行技術に記載されているポリ尿素と較べると、この新規ポリ尿素は改善された機械的性質をもち、及び/又は経済的に単純な方法で製造可能(コストダウン可能)である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本目的は、
a)
a1)5〜40重量%の少なくとも一種の、少なくとも一種のポリエーテルポリオール1(PEP1)と少なくとも一種のアミン1とから得られるポリエーテルアミン1(PEA1)(ただし、PEP1の等価質量は≦500)と、
a2)30〜90重量%の少なくとも一種の、少なくとも一種のポリエーテルポリオール2(PEP2)と少なくとも一種のアミン2から得られるポリエーテルアミン2(PEA2)(ただし、PEP2の等価質量は>500)と、
a3)5〜30重量%の少なくとも一種のアミン鎖延長剤とからなる成分Aと
b)
b1)少なくとも一種のポリエーテルポリオール(PEP3)と
b2)少なくとも一種のイソシアネートとから得られるプレポリマーである
成分Bとから製造されるポリ尿素により達成される。
【0011】
本発明のポリ尿素は、A成分が比較的低粘度であり、ポリ尿素、特にポリ尿素スプレーエラストマーが、改善された機械的性質を、例えば改善された摩耗性、引張強度、破断伸度及び/又は継続引裂抵抗などをもつという長所を有している。また、これらは非常に経済的に製造可能である。ポリ尿素スプレーエラストマーの製造中でのA成分とB成分の良好な混合のためには、A成分の粘度はできるだけ低い方がよい。また、用いるA成分とB成分中の反応性成分またはポリエーテルポリオールの公称官能価は、少なくとも2であり、通常は2〜3、多くの場合(約)2である。ポリエーテルポリオールまたはそれから製造されるポリエーテルアミンの公称官能価は、ポリエーテルポリオールの合成に用いられる開始剤分子(開始剤)の官能価により規定または決定される。このようにして、本発明によれば、特に二成分a1)とa2)の官能価と、適当ならb)の官能基が少なくとも2であるときに、好ましくは(約)2である時に、主として線状のポリ尿素ポリマーが製造される。
【0012】
KOH触媒によりポリエーテルポリオールを、例えばポリプロピレングリコールを製造する際に、不飽和化合物(例えば、重合中に副生成物としてアリルアルコールなどの末端不飽和化合物)がさらに形成される。等価質量が500未満でポリプロピレングリコールを製造する場合、この不飽和の量は無視できるほど小さいが、より大きな分子量のポリオールの場合、かなりの量の不飽和化合物が形成される。これらの不飽和は1分子当り一個のヒドロキシル基をもつ(官能価:1)。分子の公称官能価は、用いる開始剤分子により2、3または4となるが、実際の(数平均)官能価は、先行技術のポリマーの場合に重合中に形成される副生成物(不飽和化合物)のため公称官能価より(かなり)小さくなるものの、十分大きい。ポリプロピレングリコールのアミノ化反応において、これらの不飽和化合物もアミノ化される。従って、これらのポリエーテルアミンは、また公称官能価より小さな実際の(現実の)官能価をもつ。これとは対照的に、本発明のポリエーテルポリオールまたはポリエーテルアミン中では、不飽和化合物(重合中の不飽和モノオール副生成物)の含量がかなりの小さい。したがって、本発明ポリエーテルポリオールまたはポリエーテルアミンの場合、実際の官能価は公称官能価に相当する。
【0013】
しかし、線状構造をもつポリ尿素系では、反応基をもつ分子が少量であってもポリマー分子量にかなり大きな減少をもたらす。結果として、このような単官能性化合物が存在すると性能が低下することとなる。
【0014】
しかしながら、比較的大きなポリマー分子量を得るために、先行技術では、通常ポリエーテルアミンを、例えば公称官能価が3であるポリエーテルアミンT5000を使用する。トリアミンを加えることの欠点は、その結果としてA成分の粘度がかなり上昇することである。
【0015】
他方、ポリプロピレングリコールの製造に、DMC触媒を使用することもできる。DMC触媒で製造されるポリプロピレングリコールでは、一般的には不飽和化合物の量が非常に少ない。このため、これらのプロピレングリコールでは、実際の官能価は、実質的に公称官能価と同じである。使用する触媒の量が、製造するポリオールの分子量に依存することが知られている。この高分子量のポリオールの製造においては、二桁のppm範囲の少量の触媒のみが必要であり、等価質量が500未満のポリプロピレングリコールの製造には多量の触媒が必要となり、DMC触媒によるポリオールの製造は経済的に望ましくなくなる。
【0016】
したがって、本発明のポリ尿素は、A成分が低粘度であり、A成分のB成分との反応により高分子量で高性能のポリ尿素が形成されるという長所をもっている。
【0017】
本発明において、以下の定義が用いられる。
【0018】
ヒドロキシル値(OH価):ポリオール(ポリエーテルポリオール)中のヒドロキシル基(OH基)の濃度の指標。1グラムのポリオール中に存在するヒドロキシル基に一致するKOHのmg数で表す。このOH価は、常法のDIN53240により決められる。単位:mg−KOH/g
等価質量:56100をOH価で割った数値に相当する
分子量:公称官能価×等価質量
イソシアネート指数:イソシアネート使用量をイソシアネートの理論量で割り、100倍した値
不飽和数:ポリオール(ポリエーテルポリオール)中の不飽和末端基(例えばアリル)の
濃度の指標。1グラムのポリオール中の不飽和種に一致するミリ等価質量で表す。単位:meq/g
総アセチル化能:反応性基(−OH、−NH−、−NH)の濃度の指標。1グラムのポリエーテルアミン中に存在する反応性基に一致するKOHのmg数で表す。単位:mg−KOH/g
総アミン価(アミン数):アミノ基(第三級と第二級と及び第一級のアミノ基)の濃度の指標。1グラムのポリエーテルアミン中に存在する反応性基と一致するKOHのmg数で表す。単位:mg−KOH/g
アミノ化率:[総アセチル化能/総アミン価]×100%
公称官能価:開始剤分子(開始剤)の官能価に相当
【0019】
以下、成分Aと成分Bから製造される本発明のポリ尿素をより詳細に説明する。好ましくは本発明のポリ尿素は、一成分Aと一成分Bとを反応させて製造される。しかし適当なら、2種以上の異なる成分A及び/又は2種以上の異なる成分Bを使用することもできる。本発明のポリ尿素中では、成分Aの成分Bに対する体積比は、通常は1:1〜1.5であり、好ましくは1:1〜1.2、特に1:1である。適当なら、成分Bを不足として使用できる。
【0020】
この系(ポリ尿素)のイソシアネート指数は80〜150であり、好ましくは90〜130、さらに好ましくは95〜115である。
【0021】
成分Aは、5〜40重量%の成分a1)と、30〜90重量%の成分a2)と5〜30重量%の成分a3)を含む。適当なら、成分A中に他の成分が存在していてもよい。
【0022】
この成分a1)は、少なくとも一種のポリエーテルポリオール1(PEP1)と少なくとも一種のアミン1から得られる、少なくとも一種のポリエーテルアミン1(PEA1)を含み、PEP1の等価質量は<500である。
【0023】
PEA1は当業界の熟練者には既知の方法で製造され、遷移金属触媒と、適当なら水素の存在下で高温及び/又は高圧で、PEP1とこのアミン1とが反応させられる。この反応は、回分的に行っても連続的に行ってもよい。例えば、銅含有触媒またはニッケル含有触媒を遷移金属触媒として使用することができる。好適なアミン1は、アンモニアも含め、原理的には当業界の熟練者には既知のいずれのアミンであってよく、このアミンは、第一級アミンであっても、適当なら第二級アミンであってもよい。アンモニアをアミン1として使用することが好ましい。成分a1)のポリエーテルアミンは、例えばポリエーテルアミンD400という商品名で、BASF社(ルートヴィヒスハーフェン、ドイツ)より販売されている。ポリエーテルアミンD400の公称官能価は2であり、分子量は400である。PEA1の官能価は、通常2〜4であり、好ましくは2〜3、特に2である。
【0024】
PEP1の等価質量は≦500であり、好ましくは50〜500、特に100〜400である。PEP1は、アルカリ金属水酸化物触媒(MOH触媒)、特に水酸化カリウム触媒(KOH触媒)を用いて製造することが好ましい。PEP1の公称官能価は、通常2〜4であり、好ましくは2〜3、特に2である。しかしながら、PEA2の製造のための他の方法パラメーターは、PEA1製造用の相当する他の方法パラメーターとは無関係に選択できる。
【0025】
PEP1の製造に用いられる出発原料は当業界の熟練者には公知であり、また他の反応条件も同様に公知である。好適な出発原料は、通常アルキレンオキシドまたはアルキレンオキシド混合物である。ここでは、複数のヒドロキシル基をもつ開始剤を一挙にあるいは段階的に添加してアルキレンオキシドを縮合させ、PEP1を得る。好適なアルキレンオキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、アミレンオキシド、あるいはスチレンオキシドなどのアラルキレンオキシドである。好ましくは、用いるアルキレンオキシドが、プロピレンオキシドまたはその最大で20重量%のエチレンオキシドとの混合物であり、特にプロピレンオキシドである。適当なら混合物として使用できる、好適な開始剤(開始剤または開始剤分子)は、グリセロールなどの脂肪族トリオール、プロポキシ化グリセロール付加物、トリチルプロパン、トリエチルプロパン、またはエチレングリコールや1,3−プロピレングリコール、ブチレングリコールなどのジオールである。PEP1はポリオキシプロピレンポリエーテルポリオールであることが好ましい。
【0026】
PEP1の用途はその性質上の長所により決まる。PEP1の添加の結果として、例えば本発明のポリ尿素の硬度と靭性が大きく上昇する。
成分a2)は、少なくとも一種のポリエーテルポリオール2(PEP2)と少なくとも一種のアミン2から製造される、少なくとも一種のポリエーテルアミン2(PEA2)であり、PEP2の等価質量は>500である。
【0027】
PEA2の製造の際に、PEA1の製造の際のものとは異なポリエーテルポリオール(PEP2)が用いられるという点でPEA2は、PEA1と異なる。これ以外のPEA2製造の他の方法パラメーター、例えば使用する触媒またはアミンは、PEA1の製造の際に用いたものと同じである。しかし、PEA2の製造上の他の方法パラメーターは、PEA1製造の他の方法パラメーターとは無関係に選択できる。また、好ましいデータも同様である。従って(例えば)、アミン2の定義はアミン1の定義と同じであり、アミン2はアンモニアであることが好ましい。PEA2の公称官能価は、通常2〜4であり、好ましくは2〜3、特に2である。
【0028】
PEP1とPEP2は、特に等価質量で異なり、PEP2の場合はこれが>500であり、好ましくは550〜10000、特に600〜5000である。PEP2の公称官能価は、通常2〜4であり、好ましくは2〜3、特に2である。PEP2はポリオキシプロピレンポリエーテルポリオールであることが好ましい。
【0029】
PEP2の製造は、当業界の熟練者に既知の方法で行われる。PEP2の製造に使用される出発原料の好ましいデータや他の方法パラメーターは、PEP1製造のものと同じである。しかし、PEP2の製造の他の方法パラメーターは、PEP1製造の相当する他の方法パラメーターとは無関係に選択できる。異なる等価質量のポリエーテルポリオールの製造方法は、原則として当業界の熟練者には公知である。PEP2の製造にもKOH触媒を使用できるが、PEP2の製造に二金属シアン化物複合触媒(DMC触媒)を使用することが好ましい。好適なDMC触媒は当業界の熟練者には公知である。ヘキサシアノ金属酸亜鉛触媒の使用が好ましい。
【0030】
PEP2の用途は、その性質上の長所により決まる。PEP2の添加の結果、例えば本発明のポリ尿素の弾性や低温たわみ性が大きく上昇する。
【0031】
成分a3)は、少なくとも一種のアミン鎖延長剤である。このアミン鎖延長剤は芳香族であっても脂肪族であってもよい。市販されている脂肪族アミン鎖延長剤の一つは、例えば、バクソジュールPC136型である。芳香族アミン鎖延長剤としては、例えば、3,5−ジエチル−2,4−トルエンジアミン、3,5−ジエチル−2,6−トルエンジアミン、イソホロンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン、t−ブチルトルエンジアミン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼン、3,5,3’,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンまたはこれらの組み合わせがあげられる。市販されている芳香族アミン鎖延長剤としては、例えば、ロンザキュアDEDTA80、エタキュア100、エタキュア300、またはユニリンク4200などのDEDTA型のもの(ジエチレントルエンジアミン)があげられる。
【0032】
成分Bはプレポリマーであり、成分B1)とb2)から得られる。適当なら、成分Bの製造に他の成分を使用することもできる。成分b1)は、少なくとも一種のポリエーテルポリオール(PEP3)である。成分b2)は、少なくとも一種のイソシアネートである。
【0033】
PEP3はいずれのポリエーテルポリオールであってもよく、例えばPEP3はPEP1またはPEP2と同意地の化合物であってもよい。PEP3の公称官能価は、通常2〜4であり、好ましくは2〜3、特に2である。PEP3が、上記のそれぞれの好ましい意味も含めてPEP2の定義に当てはまることが好ましい。したがって、PEP3が、同様にポリオキシプロピレンポリエーテルポリオールであることが好ましく、あるいはDMC触媒を用いて製造されていることが好ましい。同様に、PEP3の等価質量が>500であることが好ましく、さらに好ましくは550〜10000、特に600〜5000である。
【0034】
イソシアネート(成分b2)として、当業界の熟練者には既知のいずれのイソシアネートを用いてもよい。好適なイソシアネートが、例えばDE−A102004022683に記載されている。このイソシアネートは芳香族であっても脂肪族であってもよい。好適な芳香族イソシアネートは、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(PMDI)、パラフェニレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、液体状カルボジイミド変性MDIまたはトルエンジイソシアネート(TDI)である。このイソシアネートがMDIであることが特に好ましい。好ましい脂肪族イソシアネートは、イソホロンジイソシアネート(IPDI)とテトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)である。2,4’−MDIと4,4’−MDIの混合物の使用が好ましい。2,4’−MDIの比率が2〜70重量%であることが好ましく、特に30〜60重量%であることが好ましい。
【0035】
成分BのNCO値は、通常10〜20である。
【0036】
本発明のある好ましい実施様態は、
a)
a1)5〜40重量%の少なくとも一種の、少なくとも一種のポリエーテルポリオール1(PEP1)と少なくとも一種のアミン1とから得られるポリエーテルアミン1(PEA1)と(ただし、PEP1の等価質量は≦500で、PEP1の製造にアルカリ金属の水酸化物触媒(MOH触媒)が、特に水酸化カリウム触媒(KOH触媒)が用いられる)と
a2)30〜90重量%の少なくとも一種の、少なくとも一種のポリエーテルポリオール2(PEP2)と少なくとも一種のアミン2から得られるポリエーテルアミン2(PEA2)(ただし、PEP2の等価質量は>500で、PEP2の製造に二金属シアン化物複合触媒(DMC触媒)が用いられる)と
a3)5〜30重量%の少なくとも一種のアミン鎖延長剤とからなる成分Aと、
b)
b1)少なくとも一種のポリエーテルポリオール(PEP3)で(PEP3の等価質量が>500であり、PEP3の製造にDMC触媒が使用されている)と
b2)少なくとも一種のイソシアネート徒から得られるプレポリマーである
成分Bとから製造されるポリ尿素に関する。
【0037】
本発明のポリ尿素は、噴霧配合物の形であることが好ましい。このポリ尿素は、エラストマー及び/又は塗料であってよい。本発明のポリ尿素は、従来の製造方法で、例えば射出成型、反応射出成型法、あるいは噴霧配合方法で製造でき、好ましくは噴霧配合方法で製造される。
【0038】
本発明のポリ尿素の製造中に、上記の成分AとBに加えて、他の成分が存在していてもよい。これらの他の成分は、前もって成分A及び/又は成分Bに混合あるは添加されていてもよい。適当なら、これら他の成分をポリ尿素製造プロセス中に直接導入することもできる。これらの他の成分は、個々の成分であっても、2つ以上の成分の混合物であってもよい。他の成分としては、例えば、水及び/又は易揮発性の有機の物質、例えばペンタンまたはクロロホルム、HCFC−141b、HFC−134a、HFC−245fa、HFC−365mfcまたはジエチルエーテルなどの噴霧剤があげられる。同様に、不活性ガスを噴霧剤として使用してもよい。噴霧剤に加えて、他の添加物を、例えば染料や殺菌剤、可塑剤、離型剤、充填材、反応性及び非反応性シンナー、接着促進剤、充填材または顔料などを使用することができる。プロピレンカーボネートが反応性シンナーとして使用され、エポキシシランが接着促進剤として、炭酸カルシウムが充填材として、二酸化チタンが顔料として使用される。
【0039】
従って、本発明はまた、少なくとも一つの成分Aと少なくとも一つの成分Bと反応させる本発明のポリ尿素の製造方法を提供する。好ましくは、これが噴霧配合方法である。この方法自体は、同業界の熟練者に公知である。
【0040】
以下の例により、本発明のポリ尿素とその製造方法を説明する。特記しない限り、すべての量は重量パーセント(重量%)である。
【実施例】
【0041】
実施例1 ポリエーテルポリオールの合成(ポリオール1〜ポリオール3)
ポリオール1(KOH触媒による):
合成は、洗浄乾燥後の10リットルの攪拌オートクレーブ中で行なう。0.525kgのジプロピレングリコールと0.034kgの47.5%KOH水溶液を、この攪拌反応器に投入する。この反応器の内部を窒素で不活性化させ、減圧下で120℃で合計1時間処理して水分濃度が約0.02%となるまで乾燥させる。次いで、6.167kgのプロピレンオキシドを4時間かけて投入する。投入完了後、混合物を定圧となるまで攪拌し、この反応混合物を105℃、10mbarで脱気させる。得られる生成物のOH価は59mg−KOH/gであり、これを500ppmのイルガノックス1135を酸化防止剤として用いて処理した後、他の用途に使用した。ポリオール1の不飽和数は0.048meq/gであり、その等価質量は950であった。
【0042】
ポリオール2(DMC触媒による):
合成は、洗浄乾燥後の10リットルの攪拌オートクレーブ中で、DE102004047406の実施例1に準じて行なう。1.833kgの出発化合物をこの攪拌反応器に入れ、EP0862947の実施例1に準じて界面活性剤の存在下で、125ppmの酢酸亜鉛とヘキサシアノコバルト酸から合成した多金属シアン化物化合物で処理する。この出発化合物は、KOH触媒で合成し次いで塩基触媒を除いて得た二官能性プロピレングリコールプロポキシラートであり、そのOH価は240mg−KOH/gである。
【0043】
反応器の内部を窒素で不活性化し、減圧下120℃で合計1時間処理する。120℃で、6.167kgのプロピレンオキシドを4時間かけて投入する。投入完了後、この混合物を定圧となるまで混合し、次いでこの反応混合物を105℃、10mbarで脱気させる。得られる生成物のOH価は55mg−KOH/gであり、これを500ppmのイルガノックス1135を酸化防止剤として用いて処理してから、他の用途に用いる。ポリオール2の不飽和数は0.003meq/gであり、その等価質量は1020である。
【0044】
ポリオール3(KOH触媒による):
合成は、洗浄乾燥後の10リットルの攪拌オートクレーブ中で行なう。2.56kgのジプロピレングリコールと0.034kgの47.5%のKOH水溶液を、この攪拌反応器に入れる。反応器の内部を窒素で不活性化し、減圧下120℃で合計1時間処理し、水分濃度が約0.02%となるまで乾燥させる。次いで、5.344kgのプロピレンオキシドを4時間かけて投入する。投入完了後、この混合物を定圧となるまで混合し、この反応混合物を105℃、10mbarで脱気させる。得られる生成物のOH価は278mg−KOH/gであり、これを500ppmのイルガノックス1135を酸化防止剤として用いて処理してから、他の用途に用いる。ポリオール3の不飽和数は0.004meq/gであり、その等価質量は200である。
【0045】
実施例2 ポリエーテルアミン(PPDA1〜PPDA3)の合成
本実施例においては、末端1級アミン基をもつポリオキシプロピレンジアミンを合成する。これらのポリエーテルアミンは、実施例1のポリオキシプロピレンポリエーテルポリオールを、遷移金属触媒の存在下、高温高圧下でアンモニアと水素に曝す方法により合成する。このアミノ化プロセスでは主に1級アミン基が合成されるため、第二級アミンと第三級アミンの含量はアミン含量の1%未満である。
【0046】
EP−A0696529(触媒A)に記載のようにして合成したNi/Co/ZrO触媒500mlを、連続運転型高圧固定床反応器に充填する。相当するポリオールを100g/時で、また液体アンモニアを210g/時で、この反応器に供給する。触媒温度は195℃に調整し、反応器に120barの水素を充填する。減圧後に、アンモニアと水を反応器出口から蒸発させて除去する。
【0047】
公称官能価が2でOH価が59mg−KOH/gであるポリオキシプロピレンポリエーテルポリオール(KOH触媒による実施例1のポリオール1)を、末端に1級アミン基をもつポリオキシプロピレンジアミンに変換する(PPDA1)。蒸発残渣のアミン数は57mg−KOH/gである。アセチル化数は61.5mg−KOH/gである。アミン数とアセチル化数の商であるアミノ化率は92.7%である。
【0048】
公称官能価が2でOH価が55mg−KOH/gであるポリオキシプロピレンポリエーテルポリオール(DMC触媒で造成した実施例1のポリオール2)を、末端の1級アミン基をもつポリオキシプロピレンジアミンに変換する(PPDA2)。蒸発残渣のアミン数は50.7mg−KOH/gである。アセチル化数は54.0mg−KOH/gである。アミン数とアセチル化数の商であるアミノ化率は93.9%である。
【0049】
公称官能価が2でありOH価が278mg−KOH/gであるポリオキシプロピレンポリエーテルポリオール(KOH触媒で合成した実施例1のポリオール3)を、末端に1級アミン基をもつポリオキシプロピレンジアミンに変換する(PPDA3)。蒸発残渣のアミン数は247mg−KOH/gである。
【0050】
実施例3 成分Bのプレポリマーの合成
プレポリマー1を、MDIとポリオキシプロピレンポリエーテルポリオール(実施例1のポリオール1)から合成する。このMDIは、いずれの場合も、最高で50重量%の2,4’−異性体と4,4’−異性体(51.0重量%)を含む。ポリオール1の公称官能価は2であり、OH価は59mg−KOH/gである。このポリマーは、触媒としてKOHの存在下(49重量%)で合成されたものである。ポリオール1の不飽和数は0.048meq/gであり、その等価質量は950である。
【0051】
プレポリマー2は、プレポリマー1と同様に合成する。ただし、ポリオール1に代えて、公称官能価が2で、OH価が240mg−KOH/gであり、DMC触媒を用いて合成された不飽和数が0.003meq/gである上記ポリオール2を使用する。その等価質量は1020である。これらのプレポリマー1と2は、標準的な方法で、バッチ温度が80℃で反応時間が2時間で合成する。
【0052】
実施例4 ポリ尿素の製造
下の例では、用いるA成分が、以下の成分からなる基本配合物である。
【0053】
ポリエーテルアミン2:PPDA1またはPPDA2、最高で63.1重量%
ポリエーテルアミン1:PPDA3、最高で17.05重量%
アミン鎖延長剤:エタキュア100〜19.85重量%
【0054】
エタキュア100は、アルベマール社から販売されているアミン鎖延長剤である。これは、3,5−ジエチル−2,4−トルエンジアミンと3,5−ジエチル−2,6−トルエンジアミンの80/20混合物である。
【0055】
A成分(上記の基本配合物を用いる)をB成分(実施例3に記載のプレポリマーの一つ)と反応させてポリ尿素噴霧配合物(エラストマー)とする。A成分とB成分の混合比率は100:109である。なお、計算ではイソシアネート指数の104が達成される。用いる噴霧装置は、グラコ社のもの(グラコ反応器E−XP2−分配装置)であり、この装置はグラコ融合スプレーガンAR2929型を備えている。用いる成分の温度は75℃であり、圧力は160〜170barである。離型剤が塗布されたプラスチックシート(パネル)上に、このようにして合成したポリ尿素を噴霧する。注意しながら皮膜の一端を引張ってこのプラスチックシートからポリ尿素皮膜をはがす。
【0056】
このようにして、以下のポリ尿素皮膜(A−D)が合成される
【0057】
【表1】

【0058】
室温で50%湿度で2週間保存後に、これらのポリ尿素皮膜の機械的性質を測定する(表2参照)。
【0059】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)
a1)5〜40重量%の少なくとも一種の、少なくとも一種のポリエーテルポリオール1(PEP1)と少なくとも一種のアミン1とから得られるポリエーテルアミン1(PEA1)と(ただし、PEP1の等価質量は≦500)
a2)30〜90重量%の少なくとも一種の、少なくとも一種のポリエーテルポリオール2(PEP2)と少なくとも一種のアミン2から得られるポリエーテルアミン2(PEA2)(ただし、PEP2の等価質量は>500)と、
a3)5〜30重量%の少なくとも一種のアミン鎖延長剤と、を含む成分Aと、
b)
b1)少なくとも一種のポリエーテルポリオール(PEP3)及び
b2)少なくとも一種のイソシアネートとから得られる、
プレポリマーである成分Bと、
から製造されるポリ尿素。
【請求項2】
ポリ尿素が噴霧組成物である請求項1に記載のポリ尿素。
【請求項3】
PEP2の製造に二金属シアン化物複合触媒(DMC触媒)が用いられる請求項1または2に記載のポリ尿素。
【請求項4】
PEP3の製造にDMC触媒が用いられる請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリ尿素。
【請求項5】
PEP1の製造に、アルカリ金属の水酸化物触媒(MOH触媒)、特に水酸化カリウム触媒(KOH触媒)が用いられる請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリ尿素。
【請求項6】
アミン1及び/又はアミン2がアンモニアである請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリ尿素。
【請求項7】
PEP1、PEP2及び/又はPEP3がポリオキシプロピレンポリエーテルポリオールである請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリ尿素。
【請求項8】
イソシアネートがジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)である請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリ尿素。
【請求項9】
少なくとも一種の成分Aが少なくとも一種の成分Bと反応させられることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリ尿素の製造方法。
【請求項10】
噴霧配合方法である請求項9に記載の方法。

【公表番号】特表2012−527508(P2012−527508A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511279(P2012−511279)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056880
【国際公開番号】WO2010/133630
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】