説明

二組の型締機構を備えた型締装置

【課題】台盤上に可動自在に設置した二組の型締機構の型開閉動作の同調を台盤上面に設置したリンク機構により可能となす。
【解決手段】型締盤と対向位置する一対の型取付板の一方とを他方に挿通したタイバーにより連結する。型締盤に取付けた型締シリンダのプランジャを他方の型取付板に連結した型締機構の二組を、両方の型締盤を外向きにして背合わせに型開スペースをあけて台盤上に可動自在に設置した型締装置である。台盤上面に一対の並行なリンク板を板間の支軸を支点に回動するリンク作動板にカムフォロア嵌合して交互に可動自在に構成したリンク機構を設置する。リンク機構のリンク板に二組の型締機構を連結する。リンク板により二組の型締機構の型開閉動作を同調する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、同一構造の一対の型締機構を機台上に背合わせに設置して備えた射出ブロー成形や延伸ブロー成形などに使用可能な二組の型締機構を備えた型締装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出延伸ブロー成形機のブロー金型装置の型締装置として、同一構造の二組の型締機構を、両方の型締盤を外向きにして機台上に背合わせに可動自在に設置し、その二組の型締機構を同時作動して機台上の二箇所で成形品の成形を行う型締装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平1−18847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記型締装置における型締機構は、対向位置する一対の型取付板の外側型取付板と、型締シリンダを備えた型締盤とを、内側型取付板に挿通したタイバーにより連結し、その内側型取付板にプランジャを連結して構成されており、その型締盤を機台側に固定せずに型取付板と共に可動自在に設置して、型締シリンダによる金型の型閉及び型締は、プランジャの伸長による型締盤と内側型取付板との突っ張り合により、また型開はプランジャの縮小による型締盤と内側型取付板との引き付け合いにより行えるようにしている。
【0005】
この突っ張り合と、引き付け合いとによる型締盤と内側型取付板の相互移動では、両方の作動タイミングの差から一方の移動距離が長くなると、相対的に他方の移動距離が短くなって、型閉では内側型取付板と外側型取付板との間の分割金型の型閉位置が設定位置からずれるようになる。また型開では作動タイミングに差が生ずると、分割金型の成形品からの離れが同時とはならず、成形品が遅れて開く分割金型に張り付いた状態で引っ張られて離型することになるので不良品の発生ともなる。
【0006】
上記従来の課題は、型締盤と内側型取付板の作動タイミングの同調に、ラック・ピニオン機構やリンク機構等を採用し、その同調手段を型締盤と内側型取付板に取り付けることにより解決できる。しかし、上記型締機構の二組を備えた型締装置では、二組の型締機構における成形の同一性から、その両方の型締機構の作動タイミングを同時に制御する同調手段が要求されている。
【0007】
この発明は、上記事情から考えられたものであって、その目的は、台盤上に設置した二組の同一構造の型締機構と、少なくとも一組のリンク機構による同調手段との関連により作動タイミングを同一にして、二組の型締機構の型開閉及び型締動作を常に確実に同時に行い得る新たな二組の型締装置を備えた型締装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的によるこの発明は、対向位置する一対の型取付板の外側型取付板と、型締シリンダを備えた型締盤とを、内側型取付板に挿通したタイバーにより連結し、その内側型取付板にプランジャを連結して構成した型締機構の二組を、両方の型締盤を外向きにして相互の外側型取付板を背合わせに型開スペースをあけて台盤上に可動自在に設置した型締装置において、
上記台盤の上面に、一対の並行なリンク板を板間の支軸を支点に回動するカムフォロアにより連結して交互に可動自在に構成したリンク機構を設置し、そのリンク機構に上記二組の型締機構を、一方の型締機構の型締盤及び外側型取付板と、他方の型締機構の内側型取付板とをリンク機構の片側の同一リンク板に連結し、他方の型締機構の型締盤及び内側型取付板と、一方の型締機構の外側型取付板とを他側の同一リンク板に連結して設け、そのリンク板により二組の型締機構の型開閉動作を同調してなる、というものである。
【0009】
また上記型締機構のそれぞれは複数の型締シリンダを型締盤の盤面に並行に止着して備え、その一方の型締機構の型締シリンダはピストン複動型からなり、他方の型締盤の型締シリンダはピストン単動型からなる、というものである。
【0010】
また上記二組の型締機構は、型締盤及び型取付板の両側面の下端部に外向きの凹所を有し、その凹所を台盤上の両縁に横設したガイドレールに嵌合して型締機構を可動自在に設置してなる、というものである。
【0011】
また上記リンク機構は二組からなり、その両方を台盤上に並設して、上記二組の型締機構の一方の型締機構の型締盤及び外側型取付板と、他方の型締機構の内側型取付板とを両リンク機構の同一側の一対のリンク板に連結し、他方の型締機構の型締盤及び内側型取付板と、一方の型締機構の外側型取付板とを両リンク機構の他側の一対のリンク板に連結して設け、そのリンク板により二組の型締機構の型開閉動作を同調してなる、というものである。
【発明の効果】
【0012】
上記構成では、台盤上に可動自在に設置した二組の型締機構と、台盤の上面に可動自在に設置したリンク機構との連結により、両方の型締機構の型締盤と型取付板の作動タイミングが、リンク機構のカムフォロアによるリンク板の移動制御により同時に行えるので、二組の型締機構のいずれにおいても、型開閉及び型締の作動差による成形サイクルごとの型締位置のずれや、型開タイミングのずれによる成形品の離型不良なども生じ難くなる。
【0013】
また二組の型締機構の作動がリンク機構を介して行い得るので、片側の型締機構が備える型締シリンダを型閉方向にのみ作動するピストン単動型とし、型閉時に他側のピストン複動型の型締シリンダと共同させて強力型締することができるので、二組の型締機構を備える型締装置でも型締シリンダの簡略化と作動回路の簡素化が行えるようになる。
【0014】
また二組の型締機構を、台盤上の両縁のガイドレールに両側面の下端部の凹所を嵌合して可動自在に設置するとともに、台盤上面の上記リンク機構に連結したので、リンク機構に対する型締機構の荷重が軽減され、長期間の使用においても各リンク板の相互移動がスムーズに保たれることから、リンク板の移動抵抗による型開閉の不都合が生ずることがない。またリンク機構は型締機構の下の台盤内に位置するので成形作業の障害とならず、その設置に転がりガイドレールを採用してリンク機構を介しての動力伝達効率の向上を図ることもでき、さらには二組のリンク機構の採用をもって、二組の型締機構に対する動力伝達の均等化を図ることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明に係わる二組の型締機構を備えた型締装置の型開時の斜視図である。
【図2】同上の縦断正面図である。
【図3】同じく縦断側面図である
【図4】型締機構を省略した台盤の斜視図である。
【図5】型締装置の型開時(A)と型閉時(B)とを略示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図中1,2は台盤10上の同一構造の二組の型締機構で、それぞれの対向位置する一対の型取付板の外側型取付板11,21と型締盤12,22を、内側型取付板13,23に挿通したタイバー14,24により連結し、その型締盤12,22の両方に取付けた型締シリンダ15,25のプランジャ15a,25aを内側型取付板13,23に連結してなる。
【0017】
上記型締シリンダ15は型閉方向にのみ作動するピストン単動型、型締シリンダ25は型閉と型開の両方向に作動するピストン複動型で、型締シリンダ15の複数が型締盤12に、型締シリンダ25の複数が型締盤22の盤面に、それぞれ所要間隔をあけて並行に止着してある。この両型締シリンダ15,25の同時作動により二組の型締機構1,2が同時に型閉及び型締作動し、型開時には型締シリンダ25のみが作動して型締シリンダ15は作動しないようにしてある。
【0018】
3,4は台盤10の上面の同一構造の二組のリンク機構で、それぞれの一対の並行なリンク板31a,31b、41a,41bを、各板間の支軸を支点として回動するカムフォロア30,40の面内両側の長孔30′,40′に、板上のガイドピン31a′,31b′、41a′,41b′をそれぞれ嵌合して交互に可動自在に連結してなる。このような構成では各一対のリンク板がカムフォロア30,40により互いに関連付けられて、両板の相対的な移動量が常に同一寸法に規制されている。
【0019】
上記二組のリンク機構3,4は、台盤内上面に敷設した4条のリンク用ガイドレール5,5にリンク板下面の転がりガイド部材5a,5aを載せて可動自在に並設してあり、そのリンク機構3,4に連結して上記二組の型締機構1,2が、外側型取付板11,21を背合わせに型開スペースをあけて台盤10の上に可動自在に設置してある。
【0020】
この型締機構1,2とリンク機構3,4の連結は、図5に示すように、一方の型締機構1の型締盤12及び外側型取付板11と、他方の型締機構2の内側型取付板23を両リンク機構1,2の外側の同一リンク板31a,41aに、また一方の型締機構1の内型取付板13と、他方の型締機構2の型締盤22及び外側型取付板21を内側の同一リンク板31b,41bにそれぞれ連結して行っている。
【0021】
また型締機構1,2と各リンク板31a,31b、41a,41bの連結は、それぞれの連結箇所の板上に、ピン孔を縦に穿設した所要高さの短柱状の受け駒7,7を固設し、そのピン孔に型締機構の各板及び各盤の下端に突設したピンを挿入して、各板及び各盤を受け駒7,7に載置して行われている。また台盤上への設置は、型締盤及び型取付板の両側面の下端部に外向きに形成した凹所を、台盤上の両縁に横設したガイドレール6,6に嵌合して行っており、この凹所とガイドレール6,6との嵌合により、型締機構1,2のリンク機構3,4及び台盤10からの脱離が防止されている。
【0022】
図示の型締装置はブロー成形用で、型締機構1,2ごとに金型8,8が内外の型取付板の対向面に分割して取付けてあり、その金型8,8のパーティングライン上にプリフォーム9,9が昇降自在に位置する。
【0023】
上記構成では、図5(A)に示す型開状態において、両型締機構1,2の型締シリンダ15,25のプランジャ15a,25aを伸長作動すると、両方の型締機構1,2がリンク機構3,4に連結されていても、台盤10に対してはガイドレール5と転がりガイド部材5aにより可動自在に設置されているので、プランジャ15a,25aの伸長にともなって両方の型締盤12,22が外方へ、内側型取付板13,23は内方へそれぞれ突っ張り合って相反する方向に引き離れてゆく。
【0024】
図左側の型締機構1では、型締盤12が両リンク機構3,4の外側のリンク板31a,41aと連結しており、そのリンク板31a,41aには外側型取付板21と、他方の型締機構2の内側型取付板23とが連結されていることから、その両方が同時に型締盤12と同じ方向に移動するようになる。
【0025】
また内側型取付板13は、両リンク機構3,4の内側のリンク板31b,41bと連結しており、そのリンク板31b,41bに他方の型締機構2の外側型取付板21と型締盤22が連結されていることから、その両方が同時に内側型取付板13と同じ方向に移動するようになる。
【0026】
図右側の型締機構2では、型締盤22が両リンク機構3,4の内側のリンク板31b,41bと連結しており、そのリンク板31b,41bには外側型取付板21と、他方の型締機構1の内側型取付板13とが連結されていることから、その両方が同時に型締盤22と同じ方向に移動するようになる。
【0027】
また内側型取付板23は両リンク機構3,4の外側のリンク板31a,41aと連結しており、そのリンク板31a,41aに他方の型締機構1の外側型取付板11と型締盤12が連結されていることから、その両方が同時に内側型取付板23と同じ方向に移動するようになる。
【0028】
これにより両方の型締機構1,2における内外の型取付板相互の移動方向が閉じ方向となって、図5(B)に示すように型閉する。また両型締シリンダ15,25の同時作動によるリンク板相互の移動が、両板にわたるカムフォロア30,40により同調されるので、同時にパーテングライン上にて型閉するようになる。この型閉はプリフォーム9,9を降下して金型間に位置させてから行われ、その後に両型締シリンダ15,25による型締と、プリフォーム内へのエアブローによるブロー成形が行われる。
【0029】
図5(A)に示す型開は、型締機構2のピストン複動型の型締シリンダ25をプランジャ縮小方向に作動する。型開力は型締力よりも小さな圧力で行えるので、型締シリンダ15を作動せずに済むみ、省エネルギーともなる。この際、型締シリンダ15のプランジャ15aが内側型取付板13に連結されていても、プランジャ15aは自由状態にあるので内側型取付板13の移動抵抗とはならずにシリンダからスムーズに引き出されてゆく。
【0030】
型締シリンダ25が縮小作動すると、型締盤25と内側型取付板23とが互いに引き付け合って間隔を狭めてゆく、これにより内外一対のリンク板31a,31b及び41a,41bが相反する方向に同時作動し、型締盤15と内側型取付板13の間隔も狭まってゆく、またカムフォロア30,40によりリンク板の移動が同調されるので、型取付板の移動差による分割金型の離型タイミングのずれは起こらず、内外型取付板の型開が同時に行われて成形品の離型となる。この同調により開き遅れた分割金型側に成形品が張り付いて不良成形となることがなく、またヒートセット金型では成形品の張り付きによる成形品の部分収縮が防止されるようになる。
【0031】
なお図示の実施形態では、一方の型締シリンダ15に型開方向にのみ作動するピストン単動型を採用しているが、その型締シリンダは他方の型締シリンダ25と同じピストン複動型であってもよい。
【符号の説明】
【0032】
1,2 型締機構
3,4 リンク機構
5 リンク用ガイドレール
6 台盤上のガイドレール
7 受け駒
8 金型
10 台盤
11,21 外側型取付板
12,22 型締盤
13,23 内側型取付板
14,24 タイバー
15,25 型締シリンダ
15a,25a プランジャ
30,40 カムフォロア
31a,41a 外側のリンク板
31b,41b 内側のリンク板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向位置する一対の型取付板の外側型取付板と、型締シリンダを備えた型締盤とを、内側型取付板に挿通したタイバーにより連結し、その内側型取付板にプランジャを連結して構成した型締機構の二組を、両方の型締盤を外向きにして相互の外側型取付板を背合わせに型開スペースをあけて台盤上に可動自在に設置した型締装置において、
上記台盤の上面に、一対の並行なリンク板を板間の支軸を支点に回動するカムフォロアにより連結して交互に可動自在に構成したリンク機構を設置し、そのリンク機構に上記二組の型締機構を、
一方の型締機構の型締盤及び外側型取付板と、他方の型締機構の内側型取付板とを片側の同一リンク板に連結し、
一方の型締機構の内型取付板と、他方の型締機構の型締盤及び外側型取付板とを他側の同一リンク板に連結して設けて、
二組の型締機構の型開閉動作を同調してなることを特徴とする二組の型締機構を備えた型締装置。
【請求項2】
上記型締機構のそれぞれは複数の型締シリンダを型締盤の盤面に並行に止着して備え、その一方の型締機構の型締シリンダは型開方向に作動するピストン単動型からなり、他方の型締盤の型締シリンダは型開と型閉の両方向に作動するピストン複動型からなることを特徴とする請求項1記載の二組の型締機構を備えた型締装置。
【請求項3】
上記二組の型締機構は、型締盤及び型取付板の両側面の下端部に外向きの凹所を有し、その凹所を機台上の両縁に横設したガイドレールに嵌合して型締機構を可動自在に設置してなることを特徴とする請求項1記載の二組の型締機構を備えた型締装置。
【請求項4】
上記リンク機構の二組を台盤上に並設し、そのリンク機構の両方に上記二組の型締機構を、
一方の型締機構の型締盤及び外側型取付板と、他方の型締機構の内側型取付板とを両リンク機構の同位置の同一リンク板に連結し、
一方の型締機構の内側型取付板と、他方の型締機構の型締盤及び外側型取付板とを両リンク機構の他の位置の同一リンク板に連結して設けて、
二組のリンク機構により二組の型締機構の型開閉動作を同調してなることを特徴とする請求項1記載の二組の型締機構を備えた型締装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−247472(P2010−247472A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101133(P2009−101133)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(390007179)株式会社青木固研究所 (19)
【Fターム(参考)】