説明

二軸スクリュ押出機における脱揮成分の分離方法及び装置

【課題】本発明は、混錬部の下流端からベント開口部の上流端迄の距離を所定とすることにより、エントレ現象の発生の防止を目的とする。
【解決手段】本発明による二軸スクリュ押出機における脱揮成分の分離方法及び装置は、混錬部(11)の下流端(11a)とベント開口部(5)の上流端(5a)迄の距離(T)をL/D=2.5D〜4.25Dとし、脱揮で飛散する樹脂片は距離(T)の範囲内で輸送中の樹脂に付着し、エントレ現象の発生を防止する構成と方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸スクリュ押出機における脱揮成分の分離方法及び装置に関し、特に、混錬部の下流端から前記ベント開口部の上流端迄の距離をL/D=2.5D〜4.25Dとすることにより、エントレインメント現象の発生の防止を行うための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていた二軸スクリュ押出機としては、例えば、特許文献1に示される構成であり、その主な構成としては、図3及び図4で示される構成を挙げることができる。
図3において符号1で示されるものは、二軸スクリュ2が内設された長尺のシリンダであり、このシリンダ1の上流側には、原料3を供給するための原料供給口4が設けられている。
【0003】
前記シリンダ1の下流側には、ベント開口部5が形成され、このベント開口部5上には、のぞき窓6を有するベント筒体7が植立して形成されている。
前記シリンダ1内に設けられた前記二軸スクリュ2は、その上流側から輸送部10、混錬部11及び吐出部12で構成されている。
【0004】
前述の二軸スクリュ押出機13において、前記原料供給口4から供給された原料3は、加熱されたシリンダ1内の二軸スクリュ2における輸送部10によって、加熱及び溶融されつつ下流側へ輸送され、混錬部11に送られる。
【0005】
前記混錬部11に送られた溶融状態の原料3は、十分に混錬されて吐出部12に送られ、前記シリンダ1の先端に設けられたダイス1aを経てストランド状に吐出され、図示しない水中カット装置に送られて、ペレット化される。
【0006】
【特許文献1】特開2002−144396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の二軸スクリュ押出機における脱揮成分の分離方法及び装置は、以上のように構成されているため、次のような課題が存在していた。
すなわち、二軸スクリュ押出機において、原料中に含まれる揮発成分が多い樹脂(例えば、PC、ABS等)を溶融混錬して押出しする場合、図3及び図1に示されるように、混錬部11の下流側11aとベント開口部5の上流端5aとの間の距離Tは、周知のL/DでL/D=0.75D(Lは押出機長さ、Dはスクリュ外径、L/Dは軸方向長比)であるため、揮発成分の急激な分離と共に樹脂がちぎれ、小さい樹脂片となって飛散する周知のエントレインメント現象(以下、エントレと称す)が発生し、前記距離Tが比較的短距離であるため、この飛散した樹脂片がベント筒体7に接続された真空吸引配管7a内又はベント筒体7内に堆積して詰まり、真空脱揮が困難となることがあった。
また、飛散した樹脂片がベント筒体7の上部に堆積し、熱によって焼け、シリンダ内に落下して製品樹脂に混入し、製品樹脂の品質低下の原因となることもあった。
また、飛散した樹脂片がベント筒体7の上部ののぞき窓6に付着し(図4で示す)、シリンダ1内の内部状況をのぞくことが困難となることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による二軸スクリュ押出機における脱揮成分の分離方法は、ベント開口部を有するシリンダと、前記シリンダ内に設けられ少なくとも輸送部及び混錬部を形成する一対の二軸スクリュと、からなる二軸スクリュ押出機を用い、前記混錬部の下流端から前記ベント開口部の上流端迄の距離をL/D=2.5D〜4.25Dとし、前記シリンダ内で高流速の揮発成分に乗せられて飛散する樹脂片は、前記距離の範囲内で輸送中の樹脂に付着し、エントレインメント現象の発生を防止する方法であり、また、二軸スクリュ押出機における脱揮成分の分離装置は、ベント開口部を有するシリンダと、前記シリンダ内に設けられ少なくとも輸送部及び混錬部を形成する一対の二軸スクリュと、からなる二軸スクリュ押出機における脱揮成分の分離装置において、前記混錬部の下流端から前記ベント開口部の上流端迄の距離をL/D=2.5D〜4.25Dとした構成である。
【発明の効果】
【0009】
本発明による二軸スクリュ押出機における脱揮成分の分離方法及び装置は、以上のように構成されているため、以下のような効果を得ることができる。
すなわち、ベント開口部を有するシリンダと、シリンダ内に設けられ少なくとも輸送部及び混錬部を形成する一対のスクリュと、からなる二軸スクリュ押出機を用い、前記混錬部の下流端から前記ベント開口部の上流端迄の距離をL/D=2.5D〜4.25Dとしているため、前記シリンダ内で高流速の揮発成分に乗せられて飛散する多量の樹脂片は、前記距離の範囲内で輸送中の樹脂に付着し、エントレインメント現象の発生を防止することができ、真空配管への樹脂片の堆積による詰まりを防止し、堆積した樹脂片の焼け後の落下による製品樹脂への混入を防止し、飛散した樹脂片ののぞき窓への付着を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、混錬部の下流端から前記ベント開口部の上流端迄の距離をL/D=2.5D〜4.25Dとすることにより、エントレ現象の発生の防止を行うようにした二軸スクリュ押出機における脱揮成分の分離方法及び装置を提供することを目的とする。
【実施例】
【0011】
以下、図面と共に本発明による二軸スクリュ押出機における脱揮成分の分離方法及び装置の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を付して説明する。
図1は、従来例との対比を明確化するため、従来構成の二軸スクリュ2と本発明の二軸スクリュ2を用いた場合を模式的に示し、図2は図1の要部を示す拡大平面図である。
図1において符号1で示されるものは、二軸スクリュ2が内設された長尺のシリンダであり、このシリンダ1の上流側には、原料3を供給するための原料供給口4が設けられている。
【0012】
前記シリンダ1の下流側には、ベント開口部5が形成され、このベント開口部5上には、のぞき窓6を有するベント筒体7が植立して形成されている。
前記シリンダ1内に設けられた前記二軸スクリュ2は、その上流側から輸送部10、混錬部11及び吐出部12で構成されている。
【0013】
前記混錬部11の下流端11aとベント開口部5の上流側5aとの間の距離Tは、周知のL/D(Lは押出機長さ、Dはスクリュ外径、L/Dは軸方向長比)に設定されている。
【0014】
前述の本発明による二軸スクリュ押出機13において、前記原料供給口4から供給された原料3は、加熱されたシリンダ1内の二軸スクリュ2における輸送部10によって、加熱及び溶融されつつ下流側へ輸送され、混錬部11に送られる。
【0015】
前記混錬部11に送られた溶融状態の原料3は、十分に混錬されて吐出部12に送られ、前記シリンダ1の先端に設けられたダイス1aを経てストランド状に吐出され、図示しない水中カット装置に送られて、ペレット化される。
【0016】
次に、前述の本発明による二軸混錬押出機13により原料3のペレット化を行う場合、前記混錬部11の下流端11aからベント開口部5の上流端5aまでの距離Tを約L/D=0.75D(従来構成の二軸スクリュ2)と約L/D=1.00〜3.0D(本発明の二軸スクリュ2)で比較実験を行い、前記のぞき窓6への樹脂片の付着状態を判断基準として、従来構成と本発明構成の評価を行った。
その実験結果は次の表1の第1表のとおりである。
【0017】
【表1】

【0018】
以上の通り、前記L/Dは2.5D以上とすることで、エントレの発生を防止することができた。
尚、前記L/Dは、2.5D以上であれば本発明の目的は達成されるが、このL/Dが大きくなり過ぎると、長大の押出機を使用して樹脂の加工を行うため、設備投資コストの増加、機械設置面積の拡大、スクリュ交換等のメンテナンス効率の悪化となることもあるため現実的ではない。
【0019】
従って、前記シリンダ1を構成する各シリンダセグメント1Aの前記L/Dが約3.5Dであるため、L/Dの延長を最小限とするためには、このL/Dの上限は、前記シリンダセグメント1AのL/D(3.5D)+〔ベントシリンダ1Bの上流端5aまでのL/D(0.75D)〕の合計値4.25Dが現実的である。
すなわち、本発明における実質的なL/Dの適用範囲としては、2.5D〜4.25Dであることが好適であることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による二軸スクリュ押出機における脱揮成分の分離方法及び装置を示す構成図である。
【図2】図1の要部を示す拡大平面図である。
【図3】従来の二軸スクリュ押出機における脱揮成分の分離方法及び装置を示す構成図である。
【図4】図3ののぞき窓を示す拡大平面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 シリンダ
1a ダイス
1A セグメントシリンダ
1B ベントシリンダ
2 二軸スクリュ
3 原料
4 原料供給口
5 ベント開口部
5a 上流側
6 のぞき窓
7 ベント筒体
10 輸送部
11 混錬部
11a 下流端
12 吐出部
13 二軸混錬押出機
T 距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベント開口部(5)を有するシリンダ(1)と、前記シリンダ(1)内に設けられ少なくとも輸送部(10)及び混錬部(11)を形成する一対の二軸スクリュ(2)と、からなる二軸スクリュ押出機(13)を用い、
前記混錬部(11)の下流端(11a)から前記ベント開口部(5)の上流端(5a)迄の距離(T)をL/D=2.5D〜4.25Dとし、
前記シリンダ(1)内で高流速の揮発成分に乗せられて飛散する樹脂片は、前記距離(T)の範囲内で輸送中の樹脂に付着し、エントレインメント現象の発生を防止することを特徴とする二軸スクリュ押出機における脱揮成分の分離方法。
【請求項2】
ベント開口部(5)を有するシリンダ(1)と、前記シリンダ(1)内に設けられ少なくとも輸送部(10)及び混錬部(11)を形成する一対の二軸スクリュ(2)と、からなる二軸スクリュ押出機(13)における脱揮成分の分離装置において、
前記混錬部(11)の下流端(11a)から前記ベント開口部(5)の上流端(5a)迄の距離(T)をL/D=2.5D〜4.25Dとしたことを特徴とする二軸スクリュ押出機における脱揮成分の分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−184303(P2009−184303A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29059(P2008−29059)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】