説明

二軸延伸ポリエステルフィルム及びその製造方法

【課題】表面粗度が低く、優れた光学的性質(適度な透明性)を有し、製造・加工特性に優れ、フィルム表面に大きな突起が無く、塗布を行った際に表面欠陥が生じない二軸延伸ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】少なくともベース層Bを有する二軸延伸ポリエステルフィルムであって、ベース層Bが、0.25重量%以上1.0重量%未満の二酸化ケイ素粒子および0.25重量%以上1.0重量%未満の二酸化チタン粒子を含有する二軸延伸ポリエステルフィルム、及び当該二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二軸延伸ポリエステルフィルム及びその製造方法に関し、詳しくは、光学的特性に優れ、工業用仕切り材として好適である二軸延伸ポリエステルフィルム及びその製造方法に関する。本発明は、更に、上記二軸延伸ポリエステルフィルムの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
工業用プラスチックフィルム業界において、ポリプロピレンやポリエステルから成る二軸延伸フィルムに対して、表面性状や光学的特性に関して高度な性能が要求されている。特に、特定の分野においては、均一で中程度の表面粗度を有するフィルムが要求される。
【0003】
例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂から成り、艶消し表面を有し、0.3〜20μmの粒径を有する炭酸カルシウム粒子、二酸化ケイ素粒子などの非圧縮性粒子を1〜25重量%有する二軸延伸フィルム及びその製造方法が知られている(例えば特許文献1参照)。この方法によって製造されたフィルムの表面粗度は、多くの用途において大き過ぎ、不均一である。
【0004】
また、平均粒径2〜5μmの粒子を1〜10重量%含有する艶消性二軸延伸ポリエステルフィルムが知られている(例えば特許文献2参照)。この種のフィルムの平均表面粗度Raは、150〜1000nmである。しかしながら、フィルム表面の突起高さに関する均一性に関しては全く知られていない。
【0005】
さらに、粒径0.01〜0.5μmの二酸化ケイ素粒子および/または二酸化チタン粒子0.01〜1.0重量%と、粒径0.04〜0.48μmの炭酸カルシウム粒子0.02〜0.5重量%とを含有するポリエステルフィルムが知られている(例えば特許文献3参照)。小粒径の粒子を含有するこの種のフィルムの表面粗度は小さいものの、フィルムの透明性に関しての情報が無い。
【0006】
また、二酸化チタン粒子、二酸化ケイ素粒子および光沢剤を含有するフィルムが知られている(例えば特許文献4参照)。この種のフィルムの二酸化チタン粒子の含有量は8〜20重量%であり、フィルムの透明性が低い。
【0007】
さらに、二酸化チタン粒子1〜20重量%と、粒径3〜40μmのマイカ0.1〜6重量%とを含有するポリエステルフィルムが知られている(例えば特許文献5参照)。しかしながら、二酸化チタン粒子を多量に含有するため、フィルムの透明性が極めて低い。
【0008】
また、二酸化チタン粒子5〜25重量%と、粒径1〜5μmのシリカ粒子0.1〜3重量%と、蛍光有機顔料0.02〜1重量%とを含有するポリエステルフィルムが知られている(例えば特許文献6参照)。しかしながら、二酸化チタン粒子を多量に含有するため、フィルムの透明性が極めて低い。例えば、フィルムの厚さが188μmの場合、透明性は2%未満である。
【0009】
【特許文献1】米国特許第3154461号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1197326号明細書
【特許文献3】欧州特許第0152265号明細書
【特許文献4】特開昭第62−241928号公報
【特許文献5】欧州特許出願公開第0723565号明細書
【特許文献6】米国特許第5403879号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の実情に鑑みなされたものであり、その目的は、表面粗度が低く、所定の光学的性質を有する二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することである。上記フィルムは、透明性が30〜90%であり、製造・加工特性に優れ、フィルム表面に大きな突起が無く(最大突起高さ(Rp)<4μm)、塗布を行った際に表面欠陥が生じない。上記の特性は、フィルムの表面形状を基材に転写するような用途や、基材に接着された状態で残る離型層を塗布形成したフィルム用途において必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、二酸化ケイ素粒子および二酸化チタン粒子を特定の含有量で含有する二軸延伸ポリエステルフィルムにより上記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0012】
すなわち、本発明の第1の要旨は、少なくともベース層Bを有する二軸延伸ポリエステルフィルムであって、ベース層Bが、0.25重量%以上1.0重量%未満の二酸化ケイ素粒子および0.25重量%以上1.0重量%未満の二酸化チタン粒子を含有することを特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルムに存する。
【0013】
本発明の第2の要旨は、1つ以上の押出機内でポリエステルを溶融させる溶融工程と、ベース層B用または外層およびベース層B用の1つ以上の溶融体をダイ又は共押出ダイに導入する工程と、ダイ又は共押出ダイを介して冷却ロール上に溶融体を押出し非晶シートを得る押出工程と、非晶シートを二軸延伸して二軸延伸フィルムを得る二軸延伸工程と、二軸延伸フィルムを熱固定する熱固定工程とから成る二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法であって、ベース層Bが、0.25重量%以上1.0重量%未満の二酸化ケイ素粒子および0.25重量%以上1.0重量%未満の二酸化チタン粒子を含有することを特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法に存する。
【0014】
本発明の第3の要旨は、上記の二軸延伸ポリエステルフィルムから成る離型フィルムに存する。
【0015】
本発明の第4の要旨は、上記の二軸延伸ポリエステルフィルムから成る転写フィルムに存する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、表面粗度が低く、優れた光学的性質、特に適度な透明性を有し、製造・加工特性に優れ、フィルム表面に大きな突起が無く、塗布を行った際に表面欠陥が生じないため、工業用仕切り材として好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、少なくともベース層Bを有する。ベース層Bのみの単層であっても、ベース層Bと1つ以上の外層A及び/又は外層Cから成る2層または3層以上の積層フィルムであってもよく、3層以上の場合は、ABC型またはABA型のいずれであってもよく、更に、中間層を有していてもよい。
【0018】
ベース層Bは、通常70重量%以上の熱可塑性ポリエステルから成る。熱可塑性ポリエステルとしては、エチレングリコールとテレフタル酸から製造されるポリエチレンテレフタレート(PET)、エチレングリコールとナフタレン−2,6−ジカルボン酸から製造されるポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンとテレフタル酸から製造されるポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCDT)、エチレングリコールとナフタレン−2,6−ジカルボン酸とビフェニル−4,4’−ジカルボン酸から製造されるポリ(エチレン2,6−ナフタレートビベンゾエート)(PENBB)等の各単位から構成されるポリエステルが例示される。中でも、エチレングリコールとテレフタル酸から成るエチレンテレフタレート単位および/またはエチレングリコールとナフタレン−2,6−ジカルボン酸から成るエチレン−2,6−ナフタレート単位を含有することが好ましく、これらの単位を90モル%以上、好ましくは95モル%以上含有するポリエステルが好ましい。さらに、熱可塑性ポリエステルの構成単位が、テレフタル酸単位、イソフタル酸単位およびナフタレン−2,6−ジカルボン酸単位から選択される少なくとも1種以上を有することが好ましく、ベース層BがPETのホモポリマーから成ることが特に好ましい。
【0019】
ポリエステルの構成単位としては、他のジオール及び/又はジカルボン酸から誘導された単位を含有させることが出来る。
【0020】
共重合ジオールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、HO−(CH−OHの式で示される脂肪族グリコール(nは3〜6の整数を表す、具体的には、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが挙げられる)、炭素数6までの分岐型脂肪族グリコール、HO−C−X−C−OHで示される芳香族ジオール(式中Xは−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−O−、−S−、−SO−を表す)、式:HO−C−C−OHで表されるビスフェノールが好ましい。
【0021】
共重合ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
【0022】
脂肪族ジカルボン酸の好ましい例としては、ベンゼンジカルボン酸、ナフタレン−1,4−又は−1,6−ジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸などのビフェニル−x,x’−ジカルボン酸、ジフェニルアセチレン−4,4’−ジカルボン酸などのジフェニルアセチレン−x,x−ジカルボン酸、スチルベン−x,x−ジカルボン酸などが挙げられる。
【0023】
脂環式ジカルボン酸の好ましい例としては、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸などのシクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸の好ましい例としては、C−C19のアルカンジカルボン酸が挙げられ、当該アルカンは直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0024】
上記のポリエステルは、通常エステル交換反応により製造される。その出発原料は、ジカルボン酸エステルとジオール及び亜鉛塩、カルシウム塩、リチウム塩、マグネシウム、マンガン塩などの公知のエステル交換反応用触媒である。生成した中間体は、更に、三酸化アンチモンやチタニウム塩などの重縮合触媒の存在下で重縮合に供される。また、ポリエステルの製造は、出発原料のジカルボン酸とジオールに重縮合触媒を存在させて直接または連続的にエステル化反応を行う方法であってもよい。
【0025】
外層および中間層を構成する熱可塑性樹脂は、好ましくはベース層Bを構成する上記ポリエステルから成り、そのポリエステルの構成がベース層Bと同じであっても異なっていてもよい。
【0026】
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、二酸化ケイ素粒子および二酸化チタン粒子を所定量含有する。これにより、目的とする表面特性と光学特性の両方を達成することが出来る
【0027】
二酸化ケイ素粒子の平均粒径(d50)は、通常0.5〜3.0μm、好ましくは1〜2.8μm、更に好ましくは1.5〜2.5μmである。二酸化ケイ素粒子の平均粒径が3.0μmを超える場合、フィルム表面の突起が高くなり過ぎ、塗布を行った場合には表面欠陥が生じる様になる。二酸化ケイ素粒子の粒径は、あらゆる空間座標軸方向に対してほぼ同じであることが好ましい。すなわち、長さ、幅および高さ方向の比が(0.9−1.1):(0.9−1.1):1、好ましくは1:1:1である、ほぼ等方性を有することが好ましい。好ましい二酸化ケイ素粒子としては、非晶シリカ粒子が挙げられる。
【0028】
二酸化ケイ素粒子の含有量は、二軸延伸ポリエステルフィルムの総重量を基準として、0.25重量%以上1.0重量%未満、好ましくは0.3〜0.95重量%、更に好ましくは0.35〜0.9重量%である。二軸延伸ポリエステルフィルムが多層構造を有する場合、二酸化ケイ素粒子は少なくとも1つの外層中に含有されていることが好ましい。二酸化ケイ素粒子の含有量が0.25重量%未満の場合、フィルム表面の突起数が少なすぎ、ブロッキング等の問題が生じる。二酸化ケイ素粒子の含有量が1.0重量%以上の場合、フィルム表面下に存在する粒子が表面上に押出され、フィルム表面が不均一となる。
【0029】
二酸化チタン粒子の平均粒径(d50)は、通常0.02〜0.6μm、好ましくは0.05〜0.5μm、更に好ましくは0.1〜0.4μmである。二酸化チタン粒子の平均粒径が0.02μm未満の場合、粒子の凝集が起りやすくなる。二酸化チタン粒子の平均粒径が0.6μmを超える場合、フィルム表面の突起が高くなり過ぎ、塗布を行った場合には表面欠陥が生じる様になる。好ましい二酸化チタン粒子としては、ルチル型二酸化チタン粒子またはアナターゼ型二酸化チタン粒子が挙げられる。
【0030】
二酸化チタン粒子の含有量は、二軸延伸ポリエステルフィルムの総重量を基準として、0.25重量%以上1,0重量%未満、好ましくは0.3〜0.95重量%、更に好ましくは0.35〜0.9重量%である。二酸化チタン粒子の含有量が0.25重量%未満の場合、フィルムの透明度が高すぎ、二酸化チタン粒子の含有量が1.0重量%以上の場合、フィルムの透明度が低すぎる。
【0031】
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、上記の通り、二酸化ケイ素粒子および二酸化チタン粒子を特定量含有しているため、フィルムの表面の最大突起高さ(Rp)は、通常4μm未満、好ましくは3.5μm未満、更に好ましくは3μm未満である。フィルムの表面の最大突起高さ(Rp)が4μm以上の場合、フィルムに塗布を行った際にこの様な高い突起が塗布層から突出るおそれがある。
【0032】
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムの表面の0.1μmを超える突起数は、通常800〜10000個/mm、好ましくは1000〜7500個/mm、更に好ましくは1200〜5000個/mmである。フィルム表面の0.1μmを超える突起数が800個/mm未満の場合、ブロッキング等によりフィルムの製造・加工特性が悪化する。
【0033】
さらに、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、上記の通り、二酸化ケイ素粒子および二酸化チタン粒子を特定量含有しているため、フィルムの透明度が、通常30〜90%、好ましくは40〜80%、更に好ましくは50〜70%である。
【0034】
フィルムの厚さ、二酸化ケイ素粒子および二酸化チタン粒子の粒径や含有量などを適宜選択することにより、上記の表面粗度および透明度の範囲を達成することが出来る。
【0035】
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、上記の二酸化ケイ素粒子および二酸化チタン粒子以外に、安定剤などの公知の添加剤を含有してもよい。安定剤としては、リン酸、リン酸エステル等のリン化合物が挙げられる。本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、フィルムの表面特性や光学的特性に影響を及ぼす、上記の二酸化ケイ素粒子、二酸化チタン粒子および触媒残渣以外の添加粒子(例えば炭酸カルシウム粒子)を含有しないことが好ましい。
【0036】
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムの厚さは広い範囲をとることが出来、通常10〜350μm、好ましくは15〜300μm、更に好ましくは20〜250μmである。
【0037】
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムの角度60°で測定したグロスは、通常20〜100、好ましくは30〜85、更に好ましくは40〜70である。
【0038】
次に、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法について説明する。本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法は、例えば、「Handbook of Thermoplastic Polyesters」(S.Fakirov校訂、Wiley−VCH社版、2002年)に記載されている公知の製造方法を採用することが出来る。具体的には、1つ以上の押出機内でポリエステルを溶融させる溶融工程と、ベース層B用または外層およびベース層B用の1つ以上の溶融体をダイ又は共押出ダイに導入する工程と、ダイ又は共押出ダイを介して1つ以上の冷却ロール上に溶融体を押出し非晶シートを得る押出工程と、非晶シートを二軸延伸して二軸延伸フィルムを得る二軸延伸工程と、二軸延伸フィルムを熱固定する熱固定工程とから成る。必要に応じ、フィルム表面にコロナ処理および/または火炎処理を行ってもよい。
【0039】
先ず、1つ以上の押出機にポリマー又はポリマー混合物を供給し、押出機内で可塑化・溶融させる。二酸化ケイ素粒子、二酸化チタン粒子などの添加剤は、この段階でポリマー又はポリマー混合物の溶融体中に存在していることが好ましい。溶融体(外層を有する場合は2つ以上の押出機で2つ以上の溶融体を作成)は、フラット−フィルムダイ(スロットダイ)を介して1つ以上の引取りロール上に押出され、冷却固化させて非晶シートを作成する。
【0040】
次いで、得られたシートを二軸延伸する。通常、二軸延伸は連続的に行われる。このため、初めに長手方向(機械方向)に延伸し、次いで横方向に延伸するのが好ましい。これにより分子鎖が配向する。通常、長手方向の延伸は、延伸比に対応する異なる回転速度を有する2つのロールを使用して行われ、横手方向の延伸は、温度を上げ、フィルムの両端部を把持して横方向に引張るテンターフレームを使用して行われる。
【0041】
延伸時の温度は、所望とするポリエステルフィルムの物性によって決定され、広い範囲で選択できる。長手方向の延伸は、通常80〜130℃の温度で2.5〜5、好ましくは3〜4.5の延伸比で行い、横方向の延伸は、通常80〜150℃の温度で3〜5、好ましくは3.5〜4.5の延伸比で行われる。
【0042】
得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、通常150〜250℃で、通常0.1〜10秒間熱固定が行われる。熱固定した延伸フィルムは公知の方法で巻取られる。
【0043】
二軸延伸後に、フィルムの片面または両面にコロナまたは火炎処理を施してもよい。これらの処理は、通常、フィルムの表面張力が45mN/mと成るように行われる。
【0044】
フィルムに他の所望の物性を付与するため、片面または両面に、公知のインラインコーティングにより塗布処理を施してもよい。塗布によって形成される層によって接着力を強めたり、帯電防止性や滑り性の改良したり、親水性や剥離性を持たせることが出来る。インラインコーティングは長手方向と横方向の延伸との間に行われることが好ましい。
【0045】
本発明の製造方法で得られるフィルムは、押出工程に再生原料(例えば、製造工程において発生するフィルム端材)をフィルムの重量に対して通常70重量%以下含有させることが出来る。再生原料の添加によって、本発明のフィルムの特性(特に外観)に影響を及ぼさない。
【0046】
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムの性質について以下の表1に纏める。
【0047】
【表1】

【0048】
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは低いグロスと粗度を有するため、種々の基材フィルムとして使用でき、特に薄い層を表面に設けるような基材フィルムとして好適に使用できる。この場合、均一で低い表面粗度の塗布層を設けることが出来る。すなわち、塗布抜けや、凹凸の無い塗布層が得られる。そのため、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、離型フィルム、転写フィルム等の工業用フィルムに好適に応用することが出来る。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。評価方法を以下に示す。
【0050】
(1)標準粘度SV、固有粘度IV:
ポリエステルの標準粘度SV(DCA)はジクロロ酢酸中25℃でDIN 53726に従って測定した。ポリエステルの固有粘度IVは、標準粘度SV値を使用して以下の式より算出した。
【0051】
【数1】

【0052】
(2)グロス値:
グロス値はDIN 67530に準じて測定した。反射率を、フィルム表面の光学的特性として測定した。ASTM−D 523−78及びISO 2813を基準とし、入射角を60°とした。所定の入射角で試料の平坦な表面に光線を照射すると、反射および/または散乱が起こる。光電検知器に当った光が電気的な比率変数として表示される。得られた無次元値は入射角と共に表示される。
【0053】
(3)平均粒径d50
メジアン粒径d50はMalvern Instruments社(英国)製「Malvern Master Sizer」を使用したレーザーによる一般的な方法で測定した(Horiba Europe社(ドイツ)製「Horiba LA 500」又は「Sympathec Helos」装置でも基本的に同一の測定である)。水を入れたセルにサンプルを入れ、試験装置にセットする。試験は自動的に行われ、粒径d50の数学的な計算も一緒に行われる。粒径d50の値は、累積粒径分布曲線(図1参照)から決定する。50%におけるd50の値を求めた。
【0054】
(4)最大突起高さおよび突起数:
最大突起高さおよび突起数は、白色光干渉顕微鏡(Veeco社製「Wyko NT3300」)を使用して測定した。先ず、10cm×10cmのフィルム片を顕微鏡の試料面に置き、直径5cmの金属リングで重しをかけて固定する。0.9mm×1.2mmの範囲内を5.1倍の倍率で測定する。測定箇所の個々の距離は1.65μmとした。フィルムの皺などに起因するデーターは除外した。最大突起高さRpは、算術平均表面(すべての測定点の平均)から最高点との距離であり、DIN EN ISО 4287に類似の方法により求めた。
【0055】
突起数において、突起またはピークの最も近い4箇所(x軸、y軸方向)から0.1μm以上高く(z軸方向に向かって)、且つ、最大突起高さの20%以上の高さの突起を観測対象の突起とした。測定は5箇所において行い、個々のデータの平均値を突起数とした。
【0056】
(5)光透過率(透明度):
光透過率は、BYK Gardner社製「Hazegard Hazemeter XL−211」を使用し、ASTM−D1003−00に準じ、測定した。
【0057】
実施例1:
ポリエチレンテレフタレート(PET)チップを乾燥した後、添加粒子を含有するマスターバッチと共にベース層B用の押出機に供給した。押出し後、得られた非晶シートを長手方向および横方向に逐次延伸し、厚さ100μmの単層二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの組成を以下に示す。
【0058】
【表2】

【0059】
フィルムの製造条件を以下に示す。
【0060】
【表3】

【0061】
得られたフィルムは、均一で低い表面粗度を有し、目的とする透明度を有した。フィルムの特性を表5に示す。
【0062】
実施例2:
実施例1のベース層Bの組成において、PET/マスターバッチの配合量を60/40(重量%)に変更した以外は、実施例1と同様の操作でフィルムを作成した。実施例1のフィルムと比較し、表面粗度が増加し、透明性が減少した。フィルムの特性を表5に示す。
【0063】
実施例3:
実施例1のベース層Bの組成において、シリカ粒子をd50=2.5μmのシリカ粒子に変更した以外は、実施例1と同様の操作でフィルムを作成した。実施例1のフィルムと比較し、表面粗度が増加した。フィルムの特性を表5に示す。
【0064】
比較例1:
欧州特許出願公開第1197326号明細書の実施例1を追試した。この実施例では、二酸化ケイ素粒子の配合量が2〜3重量%であり、本発明のフィルムにおける二酸化ケイ素粒子の配合量の上限(1,0重量%未満)に近い実施例である。フィルムの組成を以下に示す。表面粗度が非常に高かった。フィルムの特性を表5に示す。
【0065】
【表4】

【0066】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】粒径d50の値を求めるための累積粒径分布曲線である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともベース層Bを有する二軸延伸ポリエステルフィルムであって、ベース層Bが、0.25重量%以上1.0重量%未満の二酸化ケイ素粒子および0.25重量%以上1.0重量%未満の二酸化チタン粒子を含有することを特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記二軸延伸ポリエステルフィルムの表面の最大突起高さが4.0μm未満である請求項1に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項3】
二酸化ケイ素粒子の粒径(d50)が0.5〜3.0μmである請求項1又は2に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項4】
二酸化ケイ素粒子が非晶シリカである請求項1〜3の何れかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項5】
二酸化ケイ素粒子があらゆる方向に対してほぼ等方性を有する請求項1〜4の何れかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項6】
二酸化チタン粒子がルチル型二酸化チタン粒子またはアナターゼ型二酸化チタン粒子である請求項1〜5の何れかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項7】
二酸化チタン粒子の粒径(d50)が0.02〜0.6μmである請求項1〜6の何れかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項8】
前記二軸延伸ポリエステルフィルムの透明度が30〜90%である請求項1〜7の何れかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項9】
前記二軸延伸ポリエステルフィルムの表面に存在する0.1μmの高さを超える突起の個数が、1mm当り800〜10000個である請求項1〜8の何れかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項10】
前記二軸延伸ポリエステルフィルムの角度60°で測定したグロスが20〜100である請求項1〜9の何れかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項11】
単層構成を有する請求項1〜10の何れかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項12】
前記二酸化ケイ素粒子、二酸化チタン粒子および触媒残渣以外の添加粒子を含有しない請求項1〜11の何れかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項13】
前記二軸延伸ポリエステルフィルムの厚さが10〜350μmである請求項1〜12の何れかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項14】
1つ以上の押出機内でポリエステルを溶融させる溶融工程と、ベース層B用または外層およびベース層B用の1つ以上の溶融体をダイ又は共押出ダイに導入する工程と、ダイ又は共押出ダイを介して冷却ロール上に溶融体を押出し非晶シートを得る押出工程と、非晶シートを二軸延伸して二軸延伸フィルムを得る二軸延伸工程と、二軸延伸フィルムを熱固定する熱固定工程とから成る二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法であって、ベース層Bが、0.25重量%以上1.0重量%未満の二酸化ケイ素粒子および0.25重量%以上1.0重量%未満の二酸化チタン粒子を含有することを特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項15】
請求項1〜13の何れかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルムから成る離型フィルム。
【請求項16】
請求項1〜13の何れかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルムから成る転写フィルム。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−176773(P2006−176773A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−364821(P2005−364821)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(596099734)ミツビシ ポリエステル フィルム ジーエムビーエイチ (29)
【Fターム(参考)】