説明

二軸引張試験装置

【課題】単軸の引張試験機によって直交する二軸に沿った四方向への引っ張り試験が可能となり、かつその引っ張り動作を四方向について互いに同期させて行うことができるとともに、従来のような、4台の油圧シリンダを用いた機構のように二軸の四方向に沿う面倒な軸合わせが不要となる二軸引張試験装置を提供する。
【解決手段】一方の軸に沿うように伸縮自在に設けられ各先端部2Aに駆動手段がそれぞれ連結される駆動パンタグラフ2と、他方の軸に沿うように伸縮自在に設けられた従動パンタグラフ3と、これリンクの間に配置されて駆動リンク部材10の伸縮動作を従動パンタグラフ3に伝達する接続リンク4と、を具備し、駆動パンタグラフ2及び従動パンタグラフ3の各軸線S1・S2に沿う先端部位置2A・3Aに、試験片を保持するための試験片保持手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板材料の二軸引張試験に利用される引張試験装置に関し、一軸引張試験装置を用いて簡易な手段により二軸引張試験を実施することができる二軸引張試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の二軸引張試験装置として、特許文献1及び非特許文献1に示される技術が知られている。これら文献に示される二軸引張試験装置は、十字形の薄板試験片を用いて互いに直交する二軸方向に移動可能なつかみ治具を、二軸の四方向に配置された油圧シリンダの引張試験軸に固定する。そして、この二軸引張試験装置によれば、これら4台の油圧シリンダの駆動によってつかみ治具に保持された薄板試験片を四方向に引っ張り、これによって該薄板試験片の変形特性を試験することができる。
【特許文献1】特開平6‐109609号公報
【非特許文献1】塑性と加工(日本塑性加工学会誌)第40巻第457号(1999−2)145〜149ページ「十字形試験片を用いた2軸引張試験による冷間圧延鋼板の等塑性仕事面の測定と定式」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のような二軸引張試験装置では、直交する二軸に沿った四方向に試験片をそれぞれ引っ張る油圧シリンダを4台用いる装置が必要であり、これら4台の油圧シリンダを四方向に同期させて駆動することや、軸合わせが困難であるという問題があった。
また、非特許文献1に記載された技術では、互いに直交する軸上に配置される油圧シリンダのうち、同一軸上に配置される2台の油圧シリンダは、同一の油圧源から圧油が供給され、しかも、パンタグラフ等の等変位機構によって、同一軸上に配置される2台の油圧シリンダの変位が強制的に等しくなるように設定されている。
しかしながら、この場合にあっても、互いに直交する軸上に配置される油圧シリンダ同士の変位を同期させる調整が必要になっていた。
【0004】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、1台の油圧シリンダ等の駆動手段によって直交する二軸に沿った四方向への引っ張り試験が可能となり、かつその引っ張り動作を四方向について互いに同期させて行うことができるとともに、従来の4台の油圧シリンダを用いた機構のような互いに直交する軸同士間の軸合わせ(油圧シリンダ同士の変位を同期させる調整)が不要となる簡易な構造の二軸引張試験装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明は以下の手段を提案している。すなわち、本発明では、互いに直交する二軸の四方向に沿って試験片を引っ張ることにより該試験片の引張り試験を行う二軸引張試験装置であって、一方の軸に沿うように伸縮自在に設けられ両先端部のうち少なくとも一方に伸び方向の駆動力を与える駆動手段が連結される駆動パンタグラフと、他方の軸に沿うように伸縮自在に設けられた従動パンタグラフと、これら駆動パンタグラフと従動パンタグラフの間に配置されて前記駆動パンタグラフの伸縮動作を前記従動パンタグラフに伝達する接続リンクと、を具備し、前記駆動パンタグラフ及び前記従動パンタグラフの各先端部には、前記試験片を保持するための試験片保持手段が取り付けられることを特徴とする。
【0006】
上記のように構成された二軸引張試験装置では、駆動手段によって駆動パンタグラフが駆動された場合に、該駆動パンタグラフの伸縮動作が、接続リンクを介して従動パンタグラフに伝達される。これにより、駆動手段によって駆動パンタグラフの先端部を引っ張れば、接続リンクを介して該駆動パンタグラフの引っ張り動作が従動パンタグラフに伝達され、駆動パンタグラフ及び従動パンタグラフの各先端部位置に設けられた試験片保持手段を、直交する二軸に沿った四方向へ同時に移動させることができ、該試験片保持手段に保持された試験片の四方向への引っ張り試験が可能となる。また、このような二軸の四方向への試験片の引っ張り試験は、汎用の一軸の万能試験機を用いて行うことができるので、安価に装置を製作することができる。また、このような四方向への引っ張り動作は、駆動パンタグラフ及び従動パンタグラフを接続する接続リンクによって互いに同期させて行うことができるので、その結果、4台の駆動装置を用いた従来の機構のように、二軸の四方向に沿う面倒な軸合わせが不要となり、装置構造の簡素化を図ることが可能となる。
【0007】
また、本発明では、前記駆動パンタグラフは、中央部分が回転自在に連結された2本の駆動リンク部材と、該駆動リンク部材の一端側にて各基端部が回動自在に設けられるとともにそれらの先端部が互いに回動自在に連結された2本の一端側駆動リンク片と、前記駆動リンク部材の他端側にて各基端部が回動自在に設けられるとともにそれらの先端部が互いに回動自在に連結された2本の他端側駆動リンク片とを有し、前記従動パンタグラフは、中央部分が回転自在に連結された2本の従動リンク部材と、該従動リンク部材の一端側にて各基端部が回動自在に設けられるとともにそれらの先端部が互いに回動自在に連結された2本の一端側従動リンク片と、前記従動リンク部材の他端側にて各基端部が回動自在に設けられるとともにそれらの先端部が互いに回動自在に連結された2本の他端側従動リンク片とを有し、前記駆動リンク部材を回転可能に連結する支持軸と、前記従動リンク部材を回転可能に連結する支持軸とが互いに共通する支持軸で構成される。また、一方のリンク片の長さを適宜変更し、リンク部材とリンク片の長さの比を変えることで、駆動側の軸と従動側の軸の移動比率を変更して、二軸のひずみ比を変えた試験が可能となる。
【0008】
上記のように構成された二軸引張試験装置では、前記駆動リンク部材を回転可能に連結する支持軸と、前記従動リンク部材を回転可能に連結する支持軸とが互いに共通する支持軸で構成されること、並びに、駆動パンタグラフと従動パンタグラフの間に配置されて前記駆動パンタグラフの伸縮動作を前記従動パンタグラフに伝達する接続リンクを具備することから、駆動パンタグラフの伸縮動作を確実に従動パンタグラフに伝達することができる。
【0009】
また、本発明では、前記接続リンクは、前記一端側駆動リンク片または前記他端側駆動リンク片と前記駆動リンク部材とを回動自在に連結する駆動側連結軸と、前記一端側従動リンク片または前記他端側従動リンク片と前記従動リンク部材とを回動自在に連結する従動側連結軸との間に、それら連結軸に対して回動可能に連結されることが好ましい。
【0010】
上記のように構成された二軸引張試験装置では、駆動パンタグラフの一方側駆動リンク片及び他方側駆動リンク片の先端部が、駆動手段によって一方の軸に沿って伸び方向に駆動されることで、該駆動パンタグラフ全体が伸縮動作する。このとき、駆動パンタグラフの伸縮動作は、接続リンクを介して該駆動パンタグラフの引っ張り動作が従動パンタグラフに伝達され、駆動パンタグラフ及び従動パンタグラフの各先端部位置に設けられた試験片保持手段を、直交する二軸に沿った四方向へ同時に移動させることができ、該試験片保持手段に保持された試験片の四方向への引っ張り試験が可能となる。
【0011】
また、本発明では、前記駆動パンタグラフの一端側及び他端側駆動リンク片の各先端部、並びに前記従動パンタグラフの一端側及び他端側従動リンク片の各先端部には、前記試験片を保持するための前記試験片保持手段が取り付けられる。
【0012】
上記のように構成された二軸引張試験装置では、駆動パンタグラフ及び従動パンタグラフがそれぞれ伸びるように変形するとき、駆動パンタグラフの一端側及び他端側駆動リンク片の先端部、及びに従動パンタグラフの一端側及び他端側従動リンク片の各先端部の変位によって、試験片保持手段が二軸の四方向に沿ってそれぞれ引っ張られる。これにより、試験片への二軸引っ張り試験が可能になる。
【0013】
また、本発明では、前記駆動パンタグラフの一端側及び他端側駆動リンク片の先端部の少なくとも一方に、前記駆動手段が連結されている。
【0014】
上記のように構成された二軸引張試験装置では、駆動手段によって、駆動パンタグラフの一端側及び他端側駆動リンク片の先端部に伸び方向の駆動力を付与することができ、これにより、駆動パンタグラフを伸びるように変形させることができる。
【0015】
また、本発明では、試験片保持手段は、試験片の端部を掴む把持部と、駆動パンタグラフ及び従動パンタグラフに連結される支持部とからなり、これら把持部と支持部との間に、付勢手段を設けることも可能である。
【0016】
上記のように構成された二軸引張試験装置では、把持部と支持部との間に設けた付勢手段の弾性係数(例えばばね定数)を適宜設定することによって、変位を荷重に変換し荷重制御による二軸に沿った四方向への試験片の引っ張り試験が可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の二軸引張試験装置によれば、駆動手段によって駆動パンタグラフを引っ張れば、接続リンクを介して該駆動パンタグラフの引っ張り動作が従動パンタグラフに伝達されるので、例えば、駆動手段である例えば一台の油圧シリンダによって直交する二軸に沿った四方向への引っ張り試験が可能となり、かつその引っ張り動作を四方向について互いに同期させて行うことができる。その結果、従来のような4台の駆動装置を用いた機構のように、二軸の四方向に沿う面倒な軸合わせが不要となり、装置構造の簡素化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の一実施形態を図1〜図4を参照して説明する。図1は、互いに直交する二軸(軸S1、軸S2で示す)の四方向(矢印A、B、C、Dで示す方向)に沿って十字形の試験片1を引っ張ることにより引張り試験を行う二軸引張試験装置100を示す図である。
二軸引張試験装置100は、例えば図に示すように単軸引張試験機200に組みつけられる。
具体的には、二軸引張試験装置100は、上下に延びる一方の軸S1に沿った下側の先端部を単軸引張試験機200の基盤201に連結され、軸S1に沿った上側に先端部を単軸引張試験機200の可動プレート202に連結される。ここで、二軸引張試験装置100の左右の先端部は、それぞれフリーになっている。
可動プレートは、例えばモータで駆動されるボールネジ機構等の駆動手段によって上下に移動可能である。
【0019】
二軸引張試験装置100は、図1及び図2(a)に示すように、一方の軸S1に沿うように伸縮自在に設けられ、下側の先端部が前記基盤201に連結されるとともに、上側の先端部が前記可動プレート202に連結される駆動パンタグラフ2と、他方の軸S2に沿うように伸縮自在に設けられた従動パンタグラフ3と、これら駆動パンタグラフ2及び従動パンタグラフ3の間に配置されて該駆動パンタグラフ2の伸縮動作を従動パンタグラフ3に伝達する接続リンク4と、を有している。また、駆動パンタグラフ2及び従動パンタグラフ3の各軸線S1・S2に沿う先端部位置(符号2A・3Aで示す)には、図1及び図2(b)に示すような、十字形状の試験片1を保持するための試験片保持手段5〜8が取り付けられている。また、軸線S1に沿う試験片保持手段5・7の一つと試験片1との間、軸線S2に沿う試験片保持手段6・8の一つと試験片1との間には荷重測定を行うためのロードセルが設けられているが、図では省略されている。また、十字形の試験片1の四方向には、引っ張り時に該試験片1において、互いに直交する方向の荷重に対して、試験片中央部以外が変形の抵抗とならないようにスリットが形成されている。
【0020】
駆動パンタグラフ2は、図3(a)、(b)に示すように、試験片1が配置される中心位置と同位置にある中心軸Oを軸心としてその中央部分が回転自在に連結された2本の駆動リンク部材10と、該駆動リンク部材10の一端側に設けられた2本の一端側駆動リンク片11と、該駆動リンク部材10の他端側に設けられた2本の他端側駆動リンク片12と、を有するものである。
一端側駆動リンク片11は、駆動リンク部材10の一端側にて連結軸11A・11Bにより各基端部が回動自在に設けられるとともに、その先端部が接触されかつその接触部分が連結軸11Cにより回動自在に連結されている。
他端側駆動リンク片12は、駆動リンク部材10の他端側にて連結軸12A・12Bにより各基端部が回動自在に設けられるとともに、その先端部が接触されかつその接触部分が連結軸12Cにより回動自在に連結されている。
ここで、一端側駆動リンク片11及び他端側駆動リンク片12の長さは、駆動リンク部材10の略1/2である。
【0021】
従動パンタグラフ3は、前記中心軸Oに中央部分が回転自在に連結された2本の従動リンク部材13と、該従動リンク部材13の一端側に設けられた2本の一端側従動リンク片14と、該従動リンク部材13の他端側に設けられた2本の他端側従動リンク片15と、を有するものである。従動リンク部材13の長さは、前記駆動リンク部材10の長さと同一に設定されている。
一端側従動リンク片14は、従動リンク部材13の一端側にて連結軸14A・14Bにより各基端部が回動自在に設けられるとともに、その先端部が接触されかつその接触部分が連結軸14Cにより回動自在に連結されている。
他端側従動リンク片15は、従動リンク部材13の他端側にて連結軸15A・15Bにより各基端部が回動自在に設けられるとともに、その先端部が接触されかつその接触部分が連結軸15Cにより回動自在に連結されている。
ここで、一端側従動リンク片14及び他端側従動リンク片15の長さは、従動リンク部材13の略1/2である。
【0022】
接続リンク4は、駆動リンク部材10と駆動リンク片11・12とを回動自在とする駆動側の連結軸11A・11B・12A・12B、従動リンク部材13と従動リンク片14・15とを回動自在とする従動側の連結軸14A・14B・15A・15Bとの間に合計4本配置される。なお、これら4本の接続リンク4を構成するリンク部材20〜23は、駆動側の各連結軸11A・11B・12A・12Bの一つが、従動パンタグラフ3に沿う軸S2を挟んで反対側にある従動側の連結軸14A・14B・15A・15Bの中の一つに接続される。具体的には、リンク部材20は、駆動側の連結軸11Aが軸S2を挟んで反対側にある従動側にある連結軸14Aに接続され、リンク部材21は、駆動側の連結軸11Bが軸S2を挟んで反対側にある従動側にある連結軸15Bに接続され、リンク部材22は、駆動側の連結軸12Aが軸S2を挟んで反対側にある従動側にある連結軸15Aに接続され、リンク部材23は、駆動側の連結軸12Bが軸S2を挟んで反対側にある従動側にある連結軸14Bに接続される。なお、図3(b)において、符号22及び23で示すリンク部材は、図面を見やすくするために一点鎖線で記している。
【0023】
また、上述した試験片1を保持する試験片保持手段5〜8は、図2(b)に示すように、十字形状の試験片1の端部を掴む把持部5A〜8Aと、駆動パンタグラフ2及び従動パンタグラフ3に連結される支持部5B〜8Bとからなるものであって、これら支持部5B〜8Bは、駆動パンタグラフ2の一端側及び他端側駆動リンク片11・12の各先端位置にある連結軸11C・12C、従動パンタグラフ3の一端側及び他端側従動リンク片14・15の各先端位置にある連結軸14C・15Cにそれぞれ接続されている。
【0024】
そして、上記のように構成された二軸引張試験装置100では、単軸引張試験機200の可動プレート202が駆動手段によって上方へ移動されると、駆動パンタグラフ2及び従動パンタグラフ3の動きを示す図4(a1)〜(a3)、及び試験片保持手段5〜8の動きを示す図4(b1)〜(b3)に示すように、駆動パンタグラフ2の一方側駆動リンク片11の先端部が可動プレート202によって上方へ移動される一方、他方側駆動リンク片12の先端部が単軸引張試験機の基盤201に固定されたままとなり、結果的に駆動パンタグラフ2全体が伸縮動作する。このとき、これら駆動リンク部材10と駆動リンク片11・12との間、従動リンク部材13と従動リンク片14・15との間には、駆動側連結軸11A〜11C、12A〜12C及び従動側連結軸14A〜14C、15A〜15Cを介して接続リンク4(リンク部材20〜23からなる)が接続されているので、該接続リンク4を通じて、駆動パンタグラフ2の伸縮動作が従動パンタグラフ3に伝達されることになる。
具体的には、可動プレート202と基盤201との間で、駆動パンタグラフ2の一方側駆動リンク片11及び他方側駆動リンク片12が引っ張られて、該駆動リンク片11・12が軸線S1に沿って互いに離間する方向に動作した場合には、該駆動リンク片11・12に設けられる駆動側連結軸11A・11B・12A・12Bが、従動パンタグラフ3の軸線S2から離れるように移動する。これによって、接続リンク4(リンク部材20〜23からなる)を経由して、該軸線S2を挟んで反対側に位置する従動側連結軸14A・14B・15A・15Bは、従動パンタグラフ3の軸線S2に近接するように移動し、これよって該従動側連結軸14A・14B・15A・15Bが設けられる従動パンタグラフ3の従動リンク片14・15の先端部が、該従動パンタグラフ3の軸線S2に沿い離間する方向に動作する。
【0025】
以上のような動作から、駆動パンタグラフ2を軸線S1に沿って互いに離間する方向に引っ張れば、接続リンク4を介して従動パンタグラフ3を軸線S2に沿って互いに離間する方向にすることになり、これに伴って、駆動パンタグラフ2の一端側及び他端側駆動リンク片11・12の各先端位置にある連結軸11C・12C、従動パンタグラフ3の一端側及び他端側従動リンク片14・15の各先端位置にある連結軸14C・15Cも互いに離間する方向に同時移動することになる。その結果、これら駆動リンク片11・12及び従動リンク片14・15の連結軸11C・12C・14C・15Cに設けられた試験片保持手段5〜8も同方向に移動することになり、該試験片保持手段5〜8に取り付けられた試験片1の二軸S1・S2に沿う四方向の引っ張り試験が可能となる。なお、連結軸11A、11B、12A、12B、14A、14B、15A、15Bの8点は、試験中、常に同じ円上に存在する。
【0026】
以上詳細に説明した二軸引張試験装置100では、可動プレート202と基盤201との間で駆動パンタグラフ2が駆動された場合に、該駆動リンク部材10の伸縮動作が、接続リンク4を介して従動パンタグラフ3に伝達される。これにより、駆動パンタグラフ2を引っ張れば、接続リンク4を介して該駆動パンタグラフ2の引っ張り動作が従動パンタグラフ3に伝達されて、駆動パンタグラフ2及び従動パンタグラフ3の各先端部位置に設けられた試験片保持手段5〜8を、直交する二軸S1・S2に沿った四方向へ移動させることができ、そして、試験片保持手段5〜8に保持された試験片1の四方向への引っ張り試験が可能となる。これにより、ロードセルに荷重測定並びに予め試験片に貼り付けたひずみゲージによるひずみ測定から、二軸引張時の試験片1の変形特性(応力とひずみの関係)を把握することができる。
また、このような四方向への引っ張り動作は、駆動パンタグラフ2及び従動パンタグラフ3を接続する接続リンク4によって互いに同期させて行うことができるので、その結果、従来のような4台の油圧シリンダを用いた機構のように、二軸S1・S2の四方向に沿う面倒な軸合わせが不要となり、装置構造の簡素化を図ることが可能となる。また、このような二軸S1・S2の四方向への試験片の引っ張り試験は、汎用の一軸の万能試験機を用いて行うことができるので、既存の単軸引張試験機200にリンク機構を組み込むことで安価に装置を製作することができる。また、接続リンク4を構成するリンク部材20〜23はその長さを適宜変更することで、駆動側の軸S1と従動側の軸S2の移動比率を変更して、二軸S1・S2のひずみ比を変えた引っ張り試験が可能となる。また、一方のリンク片の長さを適宜変更し、リンク部材とリンク片の長さの比を変えることで、駆動側の軸と従動側の軸の移動比率を変更して、二軸のひずみ比を変えた試験が可能になる。
【0027】
なお、上記のように構成された二軸引張試験装置100では、上述した試験片1を保持する試験片保持手段5〜8を、十字形状の試験片1の端部を掴む把持部5A〜8Aと、駆動パンタグラフ2及び従動パンタグラフ3に連結される支持部5B〜8Bとを一体に設けたが、これに限定されず、図5に示されるように、各試験片保持手段5〜8において、把持部5A〜8Aと支持部5B〜8Bとを別体にし、これら把持部5A〜8Aと支持部5B〜8Bとの間に、該把持部5A〜8Aを軸線S1・S2に沿う外方に付勢する引張ばね5C〜8Cを設けても良い。そして、このような把持部5A〜8Aと支持部5B〜8Bとの間に設けた引張ばね5C〜8Cのばね定数を適宜変更することによって、駆動側の軸S1、従動側の軸S2への応力比を変えた試験が可能となる。なお、図5(a1)〜(a3)は駆動パンタグラフ2及び従動パンタグラフ3の動きを示す図であり、図5(b1)〜(b3)は、引張ばね5C〜8Cを有する試験片保持手段5〜8の動きを示す図である。
【0028】
また、上記のように構成された二軸引張試験装置100では、駆動側及び従動側のリンク片の長さを、ともに駆動側及び従動側のリンク部材の長さの1/2に設定しているが、これに限られることなく、一方のリンク片の長さを適宜変更し、リンク部材とリンク片の長さの比を変えることで、駆動側の軸と従動側の軸の移動比率を変更してもよい。この場合、二軸のひずみ比を変えた試験が可能となる。
また、上記のように構成された二軸引張試験装置100では、駆動パンタグラフ2の引っ張り動作を従動パンタグラフ3に伝達する接続リンク4のリンク部材20〜23について、一方の軸線S1に沿う駆動パンタグラフ2から、他方の軸線S2に沿う従動パンタグラフ3への力の伝達量を調整するために、リンク部材20〜23の長さを長くしたり、短くしたりと適宜、調整しても良い。
【0029】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、本発明は、この実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、前記した実施形態では、二軸引張試験装置100を単軸引張試験機200に組みつけて、駆動パンタグラフ2の下側の先端部を固定、上側の先端部を移動可能な構成にしたが、本発明の二軸引張試験装置は、必ずしも単軸引張試験機200に組みつけて使用される必要はなく、フレームに取り付けた駆動手段によって、駆動パンタグラフ2の一方の先端部のみあるいは双方の先端部をそれぞれ引っ張る構成にしても良い。また、駆動手段としては、モータとボールネジ機構に限られることなく、例えば油圧シリンダや空圧シリンダを用いてよい。
また、前記した実施形態では、接続リンク4として図3に示すように、左右に2本ずつ合計4本用いたが、これに限られることなく、少なくとも1本あればよい。
また、前記した実施形態では、試験片保持手段5〜8に対しその片側に、駆動パンタグラフ及び従動パンタグラフ等からなるリンク機構を配置した構成になっているが、これに限られることなく、試験片保持手段5〜8の左右両側に、すなわち試験片の両面をはさむように、それぞれ駆動パンタグラフ及び従動パンタグラフ等からなるリンク機構を配置した構成にしてもよい。このような構成にすることで、試験片保持手段5〜8に生じがちなたわみ変形を少なくし、高精度の引張試験が実現できる。また、上述のようなたわみ変形を少なくするために、S1、S2軸に沿ってガイドレールを設け、このガイドレールによって試験片保持手段5〜8を案内するなど、他の手段を用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】二軸引張試験装置を単軸引張試験機に組み付けた状態を示す正面図ある。
【図2】二軸引張試験装置の全体を示す正面図であって、(a)は駆動パンタグラフ2、従動パンタグラフ3、接続リンク4で構成される部分、(b)は試験片保持手段5〜8の部分である。
【図3】(a)は二軸引張試験装置100の駆動パンタグラフ2、従動パンタグラフ3、接続リンク4で構成される部分の詳細を示す正面図、(b)は二軸引張試験装置100のパンタグラフ2・3が油圧シリンダで引っ張られた状態を示す正面図
【図4】(a1)〜(a3)は駆動パンタグラフ2、従動パンタグラフ3、接続リンク4で構成される部分の動作を示す図、(b1)〜(b3)は試験片保持手段5〜8の動作を示す図
【図5】(a1)〜(a3)は駆動パンタグラフ2、従動パンタグラフ3、接続リンク4で構成される部分の動作を示す図、(b1)〜(b3)は引張ばね5C〜8Cを有する試験片保持手段5〜8の動作を示す図
【符号の説明】
【0031】
1 試験片
2 駆動パンタグラフ
3 従動パンタグラフ
4 接続リンク
5〜8 試験片保持手段
5A〜8A 把持部
5B〜8B 支持部
5C〜8C 引張ばね(付勢手段)
10 駆動リンク部材
11 一端側駆動リンク片
11A〜11C (駆動側)連結軸
12 他端側駆動リンク片
12A〜12C (駆動側)連結軸
13 従動リンク部材
14 一端側従動リンク片
14A〜14C (従動側)連結軸
15 他端側従動リンク片
15A〜15C (従動側)連結軸
100 二軸引張試験装置
200 単軸引張試験機
S1・S2 軸線
O 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する二軸の四方向に沿って試験片を引っ張ることにより該試験片の引張り試験を行う二軸引張試験装置であって、
一方の軸に沿うように伸縮自在に設けられ両先端部のうち少なくとも一方に伸び方向の駆動力を与える駆動手段が連結される駆動パンタグラフと、他方の軸に沿うように伸縮自在に設けられた従動パンタグラフと、これら駆動パンタグラフと従動パンタグラフの間に配置されて前記駆動パンタグラフの伸縮動作を前記従動パンタグラフに伝達する接続リンクと、を具備し、
前記駆動パンタグラフ及び前記従動パンタグラフの各先端部には、前記試験片を保持するための試験片保持手段が取り付けられることを特徴とする二軸引張試験装置。
【請求項2】
前記駆動パンタグラフは、中央部分が回転自在に連結された2本の駆動リンク部材と、該駆動リンク部材の一端側にて各基端部が回動自在に設けられるとともにそれらの先端部が互いに回動自在に連結された2本の一端側駆動リンク片と、前記駆動リンク部材の他端側にて各基端部が回動自在に設けられるとともにそれらの先端部が互いに回動自在に連結された2本の他端側駆動リンク片とを有し、
前記従動パンタグラフは、中央部分が回転自在に連結された2本の従動リンク部材と、該従動リンク部材の一端側にて各基端部が回動自在に設けられるとともにそれらの先端部が互いに回動自在に連結された2本の一端側従動リンク片と、前記従動リンク部材の他端側にて各基端部が回動自在に設けられるとともにそれらの先端部が互いに回動自在に連結された2本の他端側従動リンク片とを有し、
前記駆動リンク部材を回転可能に連結する支持軸と、前記従動リンク部材を回転可能に連結する支持軸とが互いに共通する支持軸で構成されることを特徴とする請求項1に記載の二軸引張試験装置。
【請求項3】
前記接続リンクは、前記一端側駆動リンク片または前記他端側駆動リンク片と前記駆動リンク部材とを回動自在に連結する駆動側連結軸と、前記一端側従動リンク片または前記他端側従動リンク片と前記従動リンク部材とを回動自在に連結する従動側連結軸との間に、それら連結軸に対して回動可能に連結されることを特徴とする請求項2に記載の二軸引張試験装置。
【請求項4】
前記駆動パンタグラフの一端側及び他端側駆動リンク片の各先端部、並びに前記従動パンタグラフの一端側及び他端側従動リンク片の各先端部には、前記試験片を保持するための前記試験片保持手段が取り付けられることを特徴とする請求項2または3に記載の二軸引張試験装置。
【請求項5】
前記駆動パンタグラフの一端側及び他端側駆動リンク片の先端部の少なくとも一方に、前記駆動手段が連結されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の二軸引張試験装置。
【請求項6】
前記試験片保持手段は、前記試験片の端部を掴む把持部と、前記駆動パンタグラフ及び前記従動パンタグラフに連結される支持部とを有し、これら把持部と支持部との間に付勢手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の二軸引張試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−244183(P2009−244183A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92909(P2008−92909)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【出願人】(305060154)ユニバーサル製缶株式会社 (219)
【Fターム(参考)】