説明

二軸配向ポリエステルフィルム

【課題】優れた機械的特性と温度や湿度の変化に対する優れた寸法安定性とを兼備し、しかも熱安定性にも優れた、特に高密度磁気記録媒体用として好適な二軸配向ポリエステルフィルムを提供すること。
【解決手段】芳香族ジカルボン酸残基と炭素数2〜4のアルキレングリコール残基とからなり、芳香族ジカルボン酸残基の共重合割合が全ジカルボン酸残基を基準として5モル%以上50モル%未満である共重合ポリエステルからなる二軸配向フィルムであって、該共重合ポリエステル中にはポリエステル重量を基準として、チタン元素(Ti)を0〜1ppm、マンガン、亜鉛、カルシウムまたはマグネシウムから選ばれる少なくとも1種の金属元素を0〜100ppmおよびリン元素を0.2(Ti+M)〜4(Ti+M)+20ppmの割合で含有する二軸配向ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度および湿度に対する寸法安定性に優れ、機械的特性にも優れると共に、熱安定性も良好で回収再利用しても性能の低下が抑制された二軸配向ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレートに代表されるポリエステルは優れた機械的特性、寸法安定性および耐熱性を有することから、フィルムなどに幅広く使用されている。特にポリエチレン−2,6−ナフタレートは、ポリエチレンテレフタレートよりも優れた機械的特性、寸法安定性および耐熱性を有することから、それらの要求の厳しい用途、例えば高密度磁気記録媒体などのベースフィルムなどに使用されている。しかしながら、近年の高密度磁気記録媒体などでの寸法安定性、特に温度や湿度の変化に対する寸法安定性の要求はますます高くなってきており、さらなる特性の向上が求められている。
【0003】
一方、特許文献1〜5には6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸を主とする酸成分と、ジオール成分とのエステル単位からなるポリエステルが提案されている。しかし、これらの文献に開示されたポリエステルは、融点が非常に高く、また結晶性も非常に高く、フィルムなどに成形しようとすると、溶融状態での流動性が乏しく、押出しが不均一化したり、押出した後に延伸しようとしても結晶化が進んで高倍率で延伸すると破断したりするなどの問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開昭60−135428号公報
【特許文献2】特開昭60−221420号公報
【特許文献3】特開昭61−145724号公報
【特許文献4】特開平6−145323号公報
【特許文献5】国際公開第2008/010607号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、かかる問題を解消するために研究を進めた結果、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を特定割合で共重合すれば湿度膨張係数を小さくでき、しかも温度膨張係数は延伸によりヤング率を高めることができるので小さくできることを知見し、先に提案した。
【0006】
しかしながら、本発明者の検討によれば、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を共重合したポリエステルは、上記特許文献で具体的に使用されているチタンテトラブトキシドなどのチタン触媒を用いると、高温で長時間保持した場合に熱劣化しやすく、また色相が黄色く品位の劣ったものになりやすいということが判明した。
【0007】
本発明は、上記を背景になされたもので、その目的は、優れた機械的特性と温度や湿度の変化に対する優れた寸法安定性とを兼備し、しかも熱安定性に優れ高温で長時間保持したり、回収して溶融再製膜しても性能の低下や着色が抑制されたフィルム、例えば高密度磁気記録媒体用として好適な二軸配向ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者の研究によれば、上記目的は、「下記式(I)および(II)で表される芳香族ジカルボン酸残基と炭素数2〜4のアルキレングリコール残基とからなり、下記式(I)で表される芳香族ジカルボン酸残基の共重合割合が全ジカルボン酸残基を基準として5モル%以上50モル%未満である共重合ポリエステルからなる二軸配向フィルムであって、該共重合ポリエステル中にはチタン元素ならびにマンガン、亜鉛、カルシウムまたはマグネシウムから選ばれる少なくとも1種の金属元素、およびリン元素を下記式(1)〜(3)を満足する割合で含有することを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルム」により達成できることが見出された。
−(O)C−R−ORO−R−C(O)− (I)
−(O)C−R−C(O)− (II)
(式(I)中のRは炭素数2〜10のアルキレン基、Rは2,6−ナフタレンジイル基をあらわし、式(II)中のRはフェニレン基またはナフタレンジイル基を表す。)
0≦Ti≦1 (1)
0≦M≦100 (2)
0.2(Ti+M)≦P≦4(Ti+M)+20 (3)
(式中の、Ti、MおよびPは、それぞれ共重合ポリエステルの重量を基準としたときの、Tiはチタン元素量(ppm)、Mはマンガン、亜鉛、カルシウムおよびマグネシウムの合計の金属元素量(ppm)、Pはリン元素量(ppm)である。)
【発明の効果】
【0009】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、所定量の6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分が共重合されているので、温度膨張係数(αt)および湿度膨張係数(αh)が低く、温度や湿度などの環境変化に対して優れた寸法安定性を有し、しかも、チタン元素、マンガン、亜鉛、カルシウムまたはマグネシウムから選ばれる少なくとも1種の金属元素、およびリン元素を所定量含有しているので、高温で長時間保持したり回収して溶融再製膜したりしても性能の低下や着色の少ない優れた熱安定性を有しており、例えば高密度磁気記録媒体のベースフィルム用として極めて好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[共重合ポリエステル]
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを構成する共重合ポリエステルは、以下に述べる芳香族ジカルボン酸残基と炭素数2〜4のアルキレングリコール残基とから構成される。
本発明の共重合ポリエステルの芳香族ジカルボン酸残基は、5モル%以上50モル%未満が前記式(I)で表され、50モル%を超え95モル%以下が前記式(II)で表されるものである。
【0011】
式(I)中、Rは炭素数2〜10のアルキレン基であり、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等が挙げられる。かかる芳香族ジカルボン酸残基としては、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸、6,6’−(トリメチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸および6,6’−(テトラメチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸由来のジカルボン酸残基が好ましく、なかでもRの炭素数が偶数のものが好ましく、特に6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸由来のジカルボン酸残基が、機械的特性を維持しながら湿度膨張係数に優れた二軸配向フィルムを得やすいことから好ましい。
【0012】
かかる式(I)で表される芳香族ジカルボン酸残基の割合は、全芳香族ジカルボン酸残基を基準として、上限は50モル%(50モル%を含まず)、好ましくは45モル%、より好ましくは40モル%、さらに好ましくは35モル%、特に好ましくは30モル%である。一方下限は、5モル%、好ましくは7モル%、より好ましくは10モル%、特に好ましくは15モル%である。したがって、式(I)で表されるジカルボン酸残基の割合は、5モル%以上50モル%未満である必要があり、好ましくは例えば5〜45モル%、より好ましくは7〜40モル%、さらに好ましくは10〜35モル%、特に好ましくは15〜30モル%の範囲である。
【0013】
本発明における共重合ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸残基の5モル%以上50モル%未満の割合が前記式(I)で表される残基であることを特徴とする。式(I)で示される単位の割合が下限未満では、該ジカルボン酸残基を共重合することによる湿度膨張係数(αh)の低減効果が発現し難くなる。一方、上限よりも少なくすることにより、フィルムに成形する際の製膜性に優れ、温度膨張係数(αt)を小さくしやすいという利点がある。式(I)で表される残基による湿度膨張係数(αh)の低減効果は、少量で非常に効率的に発現されるので、本発明の共重合ポリエステルを用いることにより、温度膨張係数(αt)と湿度膨張係数(αh)の両方が共に低い二軸配向フィルムを製造することができる。
【0014】
一方、前記式(II)で表される芳香族ジカルボン酸残基は、式中、Rはフェニレン基またはナフタレンジイル基であり、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸などに由来する芳香族ジカルボン酸残基をあげることができる。なかでも、テレフタル酸または2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する酸残基が好ましく、特に2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する酸残基が好ましい。なお、これらは1種のみであっても、二種以上が組合わされていてもよい。
【0015】
アルキレングリコール残基は、−OC2nO−(nは2〜4の整数)で表され、エチレングリコール、トリメチレングリコールまたはテトラメチレングリコールに由来する残基である。中でもエチレングリコールが、得られるフィルムの機械的特性に優れることから好ましい。
【0016】
上記ジカルボン酸残基とアルキレングリコール残基とからなる共重合ポリエステルは、P−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比40/60)の混合溶媒を用いて35℃で測定した固有粘度が0.4〜3dl/gの範囲が好ましく、さらには0.4〜1.5dl/g、特に0.5〜1.2dl/gの範囲が好ましい。
【0017】
また、DSCで測定した融点は、200〜260℃の範囲が好ましく、さらには210〜255℃、特に220〜253℃の範囲が好ましい。この融点が上限を越えると、溶融押出して成形する際に、流動性を高めるにはより高温にすることが必要になって熱劣化しやすくなり、一方、下限未満になると、製膜性は優れるものの、ポリエステルの持つ機械的特性などが損なわれやすくなる。
【0018】
さらに、DSCで測定したガラス転移温度(Tg)は、好ましくは80〜125℃、より好ましくは95〜123℃、特に好ましくは110〜120℃の範囲である。Tgがこの範囲にあると、耐熱性および寸法安定性に優れたフィルムなどの成形体を得ることができる。なお、融点およびガラス転移温度は、共重合成分の種類と共重合割合を制御することにより容易に調整できる。
【0019】
なお、本発明にかかる共重合ポリエステルには、本発明の効果を損なわない範囲で、それ自体公知の他の共重合成分を、例えば全酸成分を基準として10モル%以下、特に5モル%以下の範囲でさらに共重合していてもよい。
【0020】
本発明においては、上記の共重合ポリエステルの熱安定性および色相向上のために、チタン元素の含有量が下記(1)式を満足していることが必要であり、
0≦Ti≦1 (1)
(式中、Tiは、共重合ポリエステルの重量を基準としたときのチタン元素量(ppm)を表す)
好ましくは0.5ppm以下、特に好ましくはチタン元素を含有しないことである。かくすることにより、チタン元素による共重合ポリエステルの熱劣化や色相の黄色化などを抑制することができる。したがって、後述する共重合ポリエステルの製造において、エステル化反応によってポリエステル前駆体を製造するか、エステル交換反応によってポリエステル前駆体を製造する場合には、エステル交換反応触媒としてのチタン化合物をできるだけ少なくすることが大切である。また、重縮合反応も、触媒としてチタン化合物を用いず、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物またはアルミニウム化合物などを用いることが好ましい。
【0021】
本発明においては、上記の要件に加えて、マンガン、亜鉛、カルシウムおよびマグネシウムの合計の金属元素量が下記(2)式を満足している必要があり、好ましくは80ppm以下である。この上限を超えると前述のチタン元素の場合と同様に共重合ポリエステルの熱劣化や色相の黄色化などを抑制することが難しくなる。したがって、後述する共重合ポリエステルの製造において、エステル交換反応によってポリエステル前駆体を製造する場合には、エステル交換反応触媒として用いられるマンガン化合物、亜鉛化合物、カルシウム化合物およびマグネシウム化合物の合計の金属元素量が(2)式を満足するようにすることが大切である。
0≦M≦100 (2)
(式中、Mは、共重合ポリエステルの重量を基準としたときの、マンガン、亜鉛、カルシウムおよびマグネシウムの合計の金属元素量(ppm)を表す。)
【0022】
なお、この金属元素量が少なすぎるとエステル交換反応速度が遅くなるので、エステル交換反応速度を維持しつつジエチレングリコールなどの副生物の生成を抑制するためには、合計金属元素量(M)は10ppm以上、特に20ppm以上であることが好ましい。
【0023】
本発明においては、共重合ポリエステルの耐熱性を向上させるために、上記の要件に加えて、リン元素を下記(3)式を満足する割合で含有している必要があり、
0.2(Ti+M)≦P≦4(Ti+M)+20 (3)
(式中、TiおよびMは前述のとおりであり、Pは共重合ポリエステルの重量を基準としたときのリン元素量(ppm)を表す。)
好ましくは、0.2(Ti+M)+5ppm以上、3(Ti+M)+10ppm以下である。リン元素量(P)をこの範囲とすることにより、共重合ポリエステルの熱劣化や色相の黄色化を抑制できる。したがって、後述する共重合ポリエステルの製造において、ポリエステル前駆体を製造する反応が終了した段階で、安定剤としてリン化合物を上記の割合で加えることが好ましく、特にエステル交換反応によってポリエステル前駆体を製造する場合には、用いられたエステル交換反応触媒を該リン化合物で失活させることが大切である。ここで用いられるリン化合物としては、ポリエステル重合の安定剤として公知のものを使用することができ、例えばリン酸、亜リン酸、リン酸トリメチルエステル、トリエチルホスホノアセテートなどを例示することができる。
【0024】
本発明の共重合ポリエステルには、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の熱可塑性ポリマー、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、離型剤、顔料、核剤、充填剤あるいはガラス繊維、炭素繊維、層状ケイ酸塩などを必要に応じて配合してもよく、かくすることにより得られるフィルムにさらなる特性を付与しやすいことから好ましい。なお、他の熱可塑性ポリマーとしては、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、さらには6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸を含まないポリエステル系樹脂などが挙げられる。
【0025】
[共重合ポリエステルの製造方法]
以上に説明した共重合ポリエステルは、従来公知のポリエステル製造方法にしたがって製造することができる。以下、アルキレングリコールがエチレングリコールの場合を例として好ましい方法を説明するが、他のアルキレングリコールでも同様の方法で製造することができる。すなわち、下記式(III)で表される6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸の低級アルキルエステルもしくは対応するジカルボン酸と、下記式(IV)で表される、例えば2,6−ナフタレンジカルボン酸やテレフタル酸の低級アルキルエステルもしくは対応するジカルボン酸と、エチレングリコールとをエステル交換反応もしくはエステル反応させて、まずポリエステル前駆体を製造する。そして、得られたポリエステル前駆体を重縮合反応触媒の存在下で重縮合し、さらに必要に応じて固相重合することにより製造することができる。なかでも、エステル交換法によってポリエステル前駆体を製造する方法で得られる共重合ポリエステルの場合、本発明の効果が大きいのでより好ましい。
O(O)C−R−ORO−R−C(O)OR (III)
O(O)C−R−C(O)OR (IV)
(式(III)中のRは炭素数2〜10のアルキレン基、Rは2,6−ナフタレンジイル基、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表し、式(IV)中のRはフェニレン基またはナフタレンジイル基、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【0026】
なお、前述の式(I)と(II)で表される芳香族ジカルボン酸残基の割合が異なる2種類のポリエステルを作り、前述の式(I)と(II)の割合が目的となるようにそれらを溶融混練してもよい。この場合、一方のポリエステルは式(I)で表される芳香族ジカルボン酸残基を含有していなくてもよい。
【0027】
上記ポリエステル前駆体を製造する工程では、エチレングリコールを全酸成分のモル数に対して、1.1〜6倍モル、さらに1.5〜5倍モル、特に2〜5倍モル用いることが生産性の点から好ましい。
【0028】
また、ポリエステル前駆体を製造する際の反応温度としては、エチレングリコールの沸点以上で行うことが好ましく、特に190〜250℃の範囲で行なうことが好ましい。190℃よりも低いと反応が十分に進行しにくく、250℃よりも高いと副反応物であるジエチレングリコールが生成しやすい。また、反応を常圧下で行うこともできるが、さらに生産性を高めるために加圧下で行ってもよい。
【0029】
このポリエステル前駆体を製造する工程では、公知のエステル化もしくはエステル交換反応触媒を用いてもよいが、前述のように、チタン元素量、ならびに、マンガン、亜鉛、カルシウムおよびマグネシウムの合計の金属元素量が(1)式および(2)式を満足する割合で用いる必要がある。
【0030】
次に、得られたポリエステル前駆体に、前述の式(3)を満足する割合でリン化合物を添加した後に重縮合反応させる。重縮合反応の温度は270〜300℃の範囲が好ましく、また重縮合反応中の圧力は100Pa以下の減圧下が好ましい。重縮合反応中の圧力が100Paより高いと重縮合反応に要する時間が長くなり且つ重合度の高い共重合芳香族ポリエステルを得ることが困難になる。
【0031】
重縮合反応触媒としては、少なくとも一種の金属元素を含む金属化合物が挙げられる。なお、重縮合反応触媒はエステル化反応やエステル交換反応の触媒として併用してもよい。金属元素としては、チタン、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウムなどが挙げられ、より好ましくは、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウムなどである。
【0032】
これらの触媒は単独でも、あるいは併用してもよい。かかる触媒量は、共重合ポリエステルの全酸成分を基準として、0.001〜0.5モル%、特に0.005〜0.2モル%の範囲が好ましい。なお、チタン化合物は前述のとおり(1)式を満足している必要があり、該チタン化合物単独では重縮合反応速度が遅くなりすぎるので、他の重縮合触媒と併用することが好ましい。
【0033】
なお、共重合ポリエステル製造時のジエチレングリコールの副生を抑制するために、さらにカリウム化合物およびナトリウム化合物の水酸化物、酢酸塩、炭酸塩などを添加してもよい。
【0034】
[二軸配向ポリエステルフィルム]
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、上述の共重合ポリエステルを溶融製膜して、シート状に押し出すことにより得られる。すなわち、本発明の共重合ポリエステルは、溶融時の流動性、その後の結晶性、製膜性に優れ、得られる二軸配向フィルムは、式(II)を含有する共重合ポリエステルの有する、優れた機械的特性をも有する。
【0035】
なお、二軸配向ポリエステルフィルムの面方向とはフィルムの厚みに直交する面の方向であり、フィルムの製膜方向(縦方向)をMachine Direction(MD)、フィルムの幅方向(横方向)とはフィルムの製膜方向(MD)に直交する方向であり、Transverse Direction(TD)方向という。
【0036】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルムの幅方向の温度膨張係数(αt)が、好ましくは14×10−6/℃以下、より好ましくは10×10−6/℃以下、さらに好ましくは7×10−6℃以下、特に好ましくは5×10−6/℃以下の範囲であることが、雰囲気の温度変化による寸法変化に対して優れた寸法安定性を発現できることから好ましい。
【0037】
本発明における二軸配向ポリエステルフィルムの幅方向の温度膨張係数(αt)の下限は、好ましくは−15×10−6/℃、より好ましくは−10×10−6/℃、さらに好ましくは−7×10−6/℃である。フィルムの幅方向の温度膨張係数が上記範囲であることで、磁気テープにしたときの寸法変化を抑制しやすくなる。
【0038】
なお、特許文献3によれば、ポリアルキレン−6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエートを共重合したポリエステルフィルムの温度膨張係数(αt)は大きくなることが予想される。しかし、本発明によれば、特定の共重合比のポリエステルを採用し、かつ延伸することにより、温度膨張係数(αt)を小さくすることができる。
【0039】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルムの幅方向の湿度膨張係数(αh)が1×10−6〜7×10−6/%RH、さらに1×10−6〜6×10−6/%RHの範囲にあることが好ましい。αhがこの範囲にあると、磁気記録テープにしたときの寸法安定性が良好となる。
【0040】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルムの製膜方向のヤング率が、好ましくは4.5GPa以上、より好ましくは5GPa以上であることが、高温加工時の伸びを抑制する点から好ましい。フィルムの製膜方向のヤング率(Y)の上限は12GPa程度がフィルムの幅方向にも十分なヤング率を具備させやすいことから好ましい。
【0041】
一方、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルムの幅方向のヤング率が、6〜14GPa、より好ましくは7〜12GPaの範囲にあることが、フィルムの幅方向の温度膨張係数や湿度膨張係数を上記範囲内に調整しやすいことから好ましい。
【0042】
[二軸配向フィルムの製造方法]
かかる二軸配向ポリエステルフィルムを製造するには、例えば前記共重合ポリエステルを乾燥後、該共重合ポリエステルの融点(Tm:℃)ないし(Tm+50)℃の温度に加熱された押出機に供給して溶融し、例えばTダイなどのダイよりシート状に押出し、押出されたシート状物を回転している冷却ドラムなどで急冷固化して未延伸フィルムとする。
【0043】
前述のαt、αh、ヤング率などを達成するためには、その後の延伸を進行させやすくすることが好ましく、そのような観点から冷却ドラムによる冷却は非常に速やかに行なうことが好ましい。そのような観点から、特許文献3に記載されるような80℃といった高温ではなく、20〜60℃という低温で行なうことが好ましい。このような低温で行なうことにより、未延伸フィルムの状態での結晶化が抑制され、その後の延伸をよりスムーズに行なうことが可能となる。
【0044】
本発明においては、上記のようにして得られた未延伸フィルムを二軸延伸する。二軸延伸としては、逐次二軸延伸でも同時二軸延伸でもよいが、ここでは、逐次二軸延伸で、縦延伸、横延伸および熱処理をこの順で行なう製造方法を一例として説明する。まず、最初の縦延伸は、共重合ポリエステルのガラス転移温度(Tg:℃)ないし(Tg+40)℃の温度で、3〜10倍、好ましくは4〜8倍に延伸し、次いで横方向に先の縦延伸よりも高温で(Tg+10)〜(Tg+50)℃の温度で3〜11倍、より好ましくは5〜10倍に延伸し、さらに熱処理としてポリマーの融点以下の温度でかつ(Tg+50)〜(Tg+150)℃の温度で1〜20秒間、好ましくは1〜15秒間熱固定処理する。
縦延伸と横延伸とを同時に行なう同時二軸延伸の場合には、上述の逐次二軸延伸の延伸倍率や延伸温度などを参考にすればよい。
【0045】
なお、本発明の共重合ポリエステルは、他のポリマーとの積層フィルムとすることもできる。例えば2種以上の溶融ポリエステルをダイ内で積層してからフィルム状に押出すことができる。また2種以上の溶融ポリエステルをダイから押出した後に積層し、急冷固化して積層未延伸フィルムとすることもできる。押出し温度は、好ましくはそれぞれのポリエステルの融点(Tm:℃)ないし(Tm+70)℃の温度である。
【0046】
ついで上述の単層フィルムの場合と同様な方法で二軸延伸および熱処理を行なえばよい。また、塗布層を設ける場合、未延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムの片面または両面に所望の塗布液を塗布し、後は前述の単層フィルムの場合と同様な方法で二軸延伸および熱処理を行なうことが好ましい。
【実施例】
【0047】
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明では、以下の方法により、その特性を測定および評価し、特に断らない限り、部は重量を基準とした値である。
【0048】
(1)フィルム中のリン元素および金属元素含有量
試料フィルムを、蒸留アセトンで2回以上洗浄乾燥の後、0.200g採取する。硝酸と硫酸の1:1混合液によって湿式分解し、イオン交換蒸留水を20ml加えた後に、高周波プラズマ発光分光分析装置(ジャーレルアッシュ製 Atom Comp Series 800)を用いてリン元素および金属元素含有量を定量する。
【0049】
(2)固有粘度
固有粘度はp−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(40/60重量比)の混合溶媒を用いてポリマーを溶解して35℃で測定して求めた。
【0050】
(3)共重合量
グリコール成分については、試料10mgをp−クロロフェノール:重テトラクロロエタン=3:1(容積比)混合溶液0.5mlに80℃で溶解し、イソプロピルアミンを加えて、十分に混合した後に600MのH−NMR(日立電子製 JEOL A600)にて80℃で測定し、それぞれのグリコール成分量を測定した。
また、芳香族ジカルボン酸成分については、試料50mgをp−クロロフェノール:重
テトラクロロエタン=3:1混合溶液0.5mlに140℃で溶解し、400M 13C−NMR(日立電子 JEOL A600)にて140℃で測定し、それぞれの酸成分量を測定した。
【0051】
(4)ヤング率
フィルムを試料巾10mm、長さ15cmで切り取り、チャック間100mm、引張速度10mm/分、チャート速度500mm/分の条件で万能引張試験装置(東洋ボールドウィン製、商品名:テンシロン)にて引っ張る。得られた荷重―伸び曲線の立ち上がり部の接線よりヤング率を計算する。
【0052】
(5)温度膨張係数(αt)
得られたフィルムを、フィルムのTD方向(またはMD方向)が測定方向となるように幅4mmに切り出し、セイコーインスツル株式会社製、商品名TMA/SS6000に測定長20mmでセットし、窒素雰囲気下(0%RH)、80℃で30分前処理し、その後室温まで降温させた。その後30℃から80℃まで2℃/minで昇温して、各温度でのサンプル長を測定し、次式より温度膨張係数(αt)を算出した。なお、測定方向が切り出した試料の長手方向であり、5回測定し、その平均値を用いた。
αt={(L60−L40)}/(L40×△T)}+0.5×10−6
ここで、上記式中のL40は40℃のときのサンプル長(mm)、L60は60℃のときのサンプル長(mm)、△Tは20(=60−40)℃、0.5×10−6(/℃)は石英ガラスの温度膨張係数(αt)である。
【0053】
(6)湿度膨張係数(αh)
得られたフィルムを、フィルムのTD方向(またはMD方向)が測定方向となるように幅5mmに切り出し、ブルカー・エイエックスエス株式会社製、商品名TMA4000SAに測定長15mmでセットし、30℃の窒素雰囲気下で、湿度20%RHと湿度80%RHにおけるそれぞれのサンプルの長さを測定し、次式にて湿度膨張係数(αh)を算出した。なお、測定方向が切り出した試料の長手方向であり、5回測定し、その平均値をαhとした。
αh=(L80−L20)/(L20×△H)
ここで、上記式中のL20は20%RHのときのサンプル長(mm)、L80は80%RHのときのサンプル長(mm)、△H:60(=80−20)%RHである。
【0054】
[実施例1]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル70部、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸ジメチル45.6部およびエチレングリコール62部に、酢酸マンガン四水和物0.029部を加え、内圧を0.2MPaにコントロールしてエステル交換反応を行い、250℃まで昇温した後、トリエチルホスホノアセテート0.048部、三酸化アンチモン0.023部を添加し、引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.66dl/gで、酸成分の73モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の27モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分の97モル%がエチレングリコール成分、3モル%がジエチレングリコール成分である共重合ポリエステルを得た。なお、共重合ポリエステルには、重縮合反応の前に平均粒径0.3μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.15重量%となるように含有させた。
【0055】
得られた共重合ポリエステルを180℃で乾燥後、押し出し機に供給して300℃でダイから溶融状態で回転中の温度50℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が135℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率5.6倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、145℃で横方向(幅方向)に延伸倍率8.5倍で延伸し、その後200℃で10秒間熱固定処理を行い、厚さ5μmの二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムをカット、造粒させ、180℃で乾燥後、再度押し出し機に供給して、上記と同様の方法で厚さ5μmの二軸延伸フィルムを得た。得られた再生二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0056】
[実施例2]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル50部、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸ジメチル47.4部およびエチレングリコール52.7部に、酢酸マンガン四水和物0.023部を加え、内圧を0.2MPaにコントロールしてエステル交換反応を行い、250℃まで昇温した後、トリエチルホスホノアセテート0.076部、三酸化アンチモン0.018部を添加し、引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.77dl/gで、酸成分の65モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の35モル%が6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分の96モル%がエチレングリコール成分、4モル%がジエチレングリコール成分である共重合ポリエステルを得た。なお、共重合ポリエステルには、重縮合反応の前に平均粒径0.3μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.15重量%となるように含有させた。
【0057】
得られた共重合ポリエステルを180℃で乾燥後、押し出し機に供給して実施例1と同様に厚さ5μmの二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムをカット、造粒させ、180℃で乾燥後、再度押し出し機に供給して、上記と同様の方法で厚さ5μmの二軸延伸フィルムを得た。得られた再生二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0058】
[実施例3]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル90部、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸ジメチル17.6部およびエチレングリコール55.9部に、酢酸マグネシウム四水和物0.06部を加え、内圧0.2MPaコントロールの下エステル交換反応を行い、250℃まで昇温した後、トリメチルフォスフェート0.03部、三酸化アンチモン0.024部を添加し、引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.72dl/gで、酸成分の90モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の10モル%が6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分の97モル%がエチレングリコール成分、3モル%がジエチレングリコール成分である共重合ポリエステルを得た。なお、共重合ポリエステルには、重縮合反応の前に平均粒径0.3μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.15重量%となるように含有させた。
【0059】
得られた共重合ポリエステルを180℃で乾燥後、押し出し機に供給して実施例1と同様に厚さ5μmの二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
また、得られた二軸配向ポリエステルフィルムをカット、造粒させ、180℃で乾燥後、再度押し出し機に供給して、上記と同様の方法で厚さ5μmの二軸延伸フィルムを得た。得られた再生二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0060】
[比較例1]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル70部、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸42.7部およびエチレングリコール61.9部に、チタンテトラブトキシドとトリメリット酸無水物をモル比1:2で175℃、4時間反応させた反応物0.048部を添加した後、内圧0.2MPaコントロール下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、250℃まで昇温した後、トリエチルホスホノアセテート0.042部を添加し、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.66dl/gで、酸成分の73モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の27モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分の95モル%がエチレングリコール成分、5モル%がジエチレングリコール成分である共重合ポリエステルを得た。なお、共重合ポリエステルには、重縮合反応の前に平均粒径0.3μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.15重量%となるように含有させた。
【0061】
得られた共重合ポリエステルを180℃で乾燥後、押し出し機に供給して300℃でダイから溶融状態で回転中の温度50℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が135℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率5.6倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、140℃で横方向(幅方向)に延伸倍率8.3倍で延伸し、その後200℃で10秒間熱固定処理を行い、厚さ5μmの二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムをカット、造粒させ、180℃で乾燥後、再度押し出し機に供給して、上記と同様の方法で厚さ5μmの二軸延伸フィルムを得た。得られた再生二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0062】
[比較例2]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル70部、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸ジメチル45.6部およびエチレングリコール62部に、酢酸マンガン0.029部を加え、内圧0.2MPaコントロールの下エステル交換反応を行い、250℃まで昇温した後、トリエチルホスホノアセテート0.192部、三酸化アンチモン0.023部を添加し、引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.66dl/gで、酸成分の73モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の27モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分の91モル%がエチレングリコール成分、9モル%がジエチレングリコール成分である共重合ポリエステルを得た。なお、共重合ポリエステルには、重縮合反応の前に平均粒径0.3μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.15重量%となるように含有させた。
【0063】
得られた共重合ポリエステルを比較例1と同様の方法で厚さ5μmの二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムをカット、造粒させ、180℃で乾燥後、再度押し出し機に供給して、比較例1と同様の方法で厚さ5μmの二軸延伸フィルムを得た。得られた再生二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0064】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、温度や湿度などの環境変化に対して優れた寸法安定性を有し、しかも、高温で長時間保持したり回収して溶融再製膜したりしても性能の低下や着色の少ない優れた熱安定性を有しており、磁気記録用、工業材料用、包装用、農業用、建材用といった各種用途に用いることができ、特に高密度磁気記録媒体のベースフィルムとして、好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)および(II)で表される芳香族ジカルボン酸残基と炭素数2〜4のアルキレングリコール残基とからなり、下記式(I)で表される芳香族ジカルボン酸残基の共重合割合が全ジカルボン酸残基を基準として5モル%以上50モル%未満である共重合ポリエステルからなる二軸配向フィルムであって、該共重合ポリエステル中にはチタンならびにマンガン、亜鉛、カルシウムまたはマグネシウムから選ばれる少なくとも1種の金属元素、およびリン元素を下記式(1)〜(3)を満足する割合で含有することを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルム。
−(O)C−R−ORO−R−C(O)− (I)
−(O)C−R−C(O)− (II)
(式(I)中のRは炭素数2〜10のアルキレン基、Rは2,6−ナフタレンジイル基をあらわし、式(II)中のRはフェニレン基またはナフタレンジイル基を表す。)
0≦Ti≦1 (1)
0≦M≦100 (2)
0.2(Ti+M)≦P≦4(Ti+M)+20 (3)
(式中の、Ti、MおよびPは、それぞれ共重合ポリエステルの重量を基準としたときの、Tiはチタン元素量(ppm)、Mはマンガン、亜鉛、カルシウムおよびマグネシウムの合計の金属元素量(ppm)、Pはリン元素量(ppm)を表す。)
【請求項2】
共重合ポリエステルが、下記式(III)および(IV)で表される芳香族ジカルボン酸成分であって、下記式(III)で表される芳香族ジカルボン酸成分の割合が全ジカルボン酸成分を基準として5モル%以上50モル%未満である芳香族ジカルボン酸成分と、炭素数2〜4のアルキレングリコールとを、チタン化合物、マンガン化合物、亜鉛化合物、カルシウム化合物またはマグネシウム化合物から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を触媒に用いてエステル交換反応させ、次いでアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物またはアルミニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を触媒に用いて重縮合反応させたものである、請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
O(O)C−R−ORO−R−C(O)OR (III)
O(O)C−R−C(O)OR (IV)
(式(III)中のRは炭素数2〜10のアルキレン基、Rは2,6−ナフタレンジイル基、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表し、式(IV)中のRはフェニレン基またはナフタレンジイル基、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【請求項3】
前記式(II)で表わされる芳香族ジカルボン酸残基が、2,6−ナフタレンジカルボン酸残基である請求項1または2に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項4】
二軸配向ポリエステルフィルムが、磁気記録媒体のベースフィルムに用いられる請求項1〜3のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2010−31173(P2010−31173A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196198(P2008−196198)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】