説明

二酸化炭素の回収方法および装置

【課題】二酸化炭素を吸収した吸収液から二酸化炭素を追出すのに必要なエネルギーを低減し得る二酸化炭素の回収方法および装置を提供すること。
【解決手段】二酸化炭素を含有するガスと化学吸収液とを接触させて前記ガスから二酸化炭素を除去し、二酸化炭素を吸収したCOリッチな化学吸収液を物理吸収液と直接接触させて二酸化炭素を再生し、前記物理吸収液から二酸化炭素を分離する二酸化炭素の回収方法、および装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素の回収方法および装置に係わり、とくに吸収液方式による二酸化炭素の回収方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の燃焼生成物である二酸化炭素(以下、COとも表記する。)の温室効果による地球温暖化の問題が大きくなっている。気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書において、わが国の温室効果ガス・排出削減目標は、1990年比でマイナス6%を2008〜2012年の間に達成することになっている。
【0003】
このような事情の下、種々の方法が提供されているが、大量の化石燃料を使用する火力発電プラント等を対象にして、燃焼排ガスとアミン系吸収液とを接触させて燃焼ガス中の二酸化炭素を分離回収する方法(アミン法)、および回収された二酸化炭素を大気中へ放出することなく貯蔵する方法の研究が進められている。
【0004】
上記吸収液を用い、燃焼排ガスから二酸化炭素を分離回収する工程としては、
(1) 吸収塔において燃焼ガスと吸収液とを接触させて二酸化炭素を吸収させる工程、
(2) 二酸化炭素を吸収した吸収液を再生塔において加熱し、二酸化炭素を吸収液から追い出すとともに、吸収液を再生して吸収塔に循環させる工程と、
を含む(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004-323339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二酸化炭素を分離回収する工程は、既設の発電設備等に付加して設置されるため、その運転コストをできるだけ低減させる必要がある。これまでの調査結果によると、発電量の20〜30%に相当する熱エネルギーが二酸化炭素の分離回収に必要とされており、このエネルギーを低減することが要望されている。
【0006】
特に、再生工程は、二酸化炭素を吸収した吸収液から二酸化炭素を追出すのに多量の熱エネルギーを必要とすることから、熱エネルギーをいかに最小にするかが重要である。
【0007】
本発明は上述の点を考慮してなされたもので、二酸化炭素を吸収した吸収液から二酸化炭素を分離回収するのに必要な熱エネルギーを低減し得る二酸化炭素の回収方法および回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的達成のため、本願では、下記の方法の発明および装置の発明を提供する。
【0009】
まず方法の発明は、
二酸化炭素を含有するガスと化学吸収液とを接触させて、前記ガスから二酸化炭素を除去し、
二酸化炭素を吸収したCOリッチな前記化学吸収液を物理吸収液と直接接触させることにより前記化学吸収液から二酸化炭素を分離して前記化学吸収液を再生する
二酸化炭素の回収方法、
である。また、装置の発明は、
二酸化炭素を含有するガスと化学吸収液とを接触させて前記ガスから二酸化炭素を除去する吸収塔と、
二酸化炭素を吸収したCOリッチな前記化学吸収液を物理吸収液との直接接触させることにより前記化学吸収液から二酸化炭素を分離して前記化学吸収液を再生する直接接触器と、
前記物理吸収液から二酸化炭素を分離する気液分離器と
をそなえた二酸化炭素の回収装置、
である。
【0010】
本願の発明者らは、再生塔で二酸化炭素を吸収液から追出すことは吸収液中の約50%を占める水の蒸発が生じ、気化熱としての多大の熱エネルギーを必要としていることに着目した。
【0011】
そこで、水を蒸発させることなく吸収液から二酸化炭素を追い出すことができれば、再生のための熱量が少なくて済む。そのために、化学吸収液の外に物理吸収液を介在させることとした。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上述のように、二酸化炭素を吸収したCOリッチな化学吸収液を物理吸収液と直接接触させて二酸化炭素を再生し、前記化学吸収液から二酸化炭素を分離するようにしたため、水の蒸発なく化学吸収液から二酸化炭素を追出すのに必要なエネルギーを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0014】
(実施例1)
図1は、本発明の第1の実施例の構成を示す説明図である。この実施例1は、吸収塔1と直接接触器(再生塔)3とを循環している化学吸収液を用いて吸収塔1に与えられた排ガス中のCOを吸収させた後に、物理吸収液への転移を行い、COを吸収した物理吸収液から気液分離によりCOを回収する。
【0015】
そのために、COを吸収した化学吸収液を直接接触器3に送り、COを化学吸収液から物理吸収液に移した上で物理吸収液からCOを分離し、さらに気液分離によりCOを回収するとともに、物理吸収液を直接接触器3に、また化学吸収液を吸収塔1にそれぞれ戻すように構成されている。
【0016】
(構成)
この実施例1は、次の各要素を有する。すなわち、二酸化炭素を含有する排ガスと二酸化炭素の化学吸収液とを接触させて二酸化炭素を除去する吸収塔1と、二酸化炭素を吸収したCOリッチな化学吸収液と二酸化炭素物理吸収液とを直接接触させて化学吸収液から物理吸収液へ二酸化炭素を移動させ、二酸化炭素を排出した化学吸収液と二酸化炭素を含んだ物理吸収液とを分離させる直接接触器3と、二酸化炭素を含有した物理吸収液を減圧後に気液分離する気液分離器8と、分離された物理吸収液の含有気体から物理吸収液を凝縮回収するための冷却器10と、気液分離器11と、をそなえる。そして、化学吸収液または物理吸収液を循環流通させるために、ポンプ2,4,7,9,12が各所に設けられている。
【0017】
(作用)
排ガスはまず吸収塔1に与えられ、吸収塔1で冷却器5から供給されたCOリーンな化学吸収液と接触する。これにより、排ガス中の二酸化炭素が化学吸収液に吸収され、CO除去済みガスとして吸収塔1から外部に排出される。
【0018】
このとき吸収塔1内では、海水を用いた製塩プロセスにおける塩水濃縮工程と同様に、化学吸収液が排ガス中に降雨状に滴下する。そして、化学吸収液の滴表面と接触した排ガス中のCOが、化学吸収液の滴に吸収されて吸収塔1の下部に落下する。
【0019】
吸収塔1で二酸化炭素を吸収したCOリッチな化学吸収液は、ポンプ2で昇圧後、直接接触器3でポンプ9,12から供給されたCOリーンな物理吸収液と直接接触され、COは化学吸収液から物理吸収液に移動する。
【0020】
そして、二酸化炭素が移動した物理吸収液は比重が大となるため直接接触器3の下部に溜まり、二酸化炭素を物理吸収液に渡して比重が小さくなった化学吸収液は直接接触器3の上部に押し上げられる。
【0021】
このように、二酸化炭素を吸収してCOリッチで比重が大きくなった物理吸収液は、二酸化炭素を放出して比重が小さくなった化学吸収液と分離されて直接接触器3の下部に溜まる。そして、この直接接触器3の下部からポンプ7で気液分離器8に供給され、COリーンな物理吸収液と二酸化炭素を含有した物理吸収液の蒸気とに分離される。
【0022】
気液分離器8でCOと分離されたCOリーンな物理吸収液は、ポンプ9で加圧されて直接接触器3に供給される。一方、二酸化炭素を含有する物理吸収液の蒸気は、冷却器10で冷却された後に、気液分離器11に送られてCOとCOリーンな物理吸収液とに分離される。
【0023】
分離されたCOリーンな物理吸収液は、ポンプ12で加圧されて直接接触器3に還流される。直接接触器3は、ヒータ6を用いて加熱することにより、COリッチな化学吸収液が二酸化炭素を放出するためのエネルギーを供給する。ヒータ6としては、火力タービンの蒸気配管を利用してもよい。
【0024】
(効果)
従来のCO吸収システムでは、加熱してCOリッチな化学吸収液から二酸化炭素を放出するため、化学吸収液中の水が蒸発する。これに対し、本発明では、COリーンな物理吸収液に二酸化炭素を吸収させる工程を介在させるため、化学吸収液中の水が蒸発するほど加熱しなくてよい。この結果、COリッチな化学吸収液の再生エネルギーを低減できる。
【0025】
しかもこの実施例1では、直接接触器3は吸収塔1とほぼ同じ温度で運転するため、従来例に比べ化学吸収液に加えられる温度が低く、化学吸収液の熱劣化が少なくなる。
【0026】
また、この実施例1では、直接接触器3内にヒータ6を設置しているが、COリッチな化学吸収液、COリーンな物理吸収液を個別に加熱してもよい。また、直接接触器3が気液分離器を兼ねているが、気液分離器を別に設置してもよい。
【0027】
ここで、実施例1に用いた化学吸収液は、アミン、アミノ酸塩の水溶液を用い、また、物理吸収液は、水に対して不溶性である非極性液体(フロリナート、フッ化炭素高分子、シリコンオイル)を用いる。
【0028】
(実施例2)
図2は、本発明の第2の実施例の構成を示している。この実施例は、第1の実施例における基本構成を基に、いくつかの任意付加的要素を備えている。
【0029】
第1に、直接接触器3の化学吸収液の出口と直接接触機3への化学吸収液の入り口との間に熱交換器13を設けた点である。これにより、直接接触器3の出口で化学吸収液に与えられている熱エネルギーを入り口から与えられる化学吸収液に還元して熱エネルギーの利用効率を高めることができる。
【0030】
第2に、直接接触器3の出口に圧力維持弁4を設けた点である。これにより、直接接触器3を含む処理系の動作安定を図ることができる。
【0031】
第3に、直接接触器3の頂部に繋がれた気液分離機15およびこの気液分離機15で分離した化学吸収液を冷却して吸収塔1に戻す冷却器16を設けた点である。これにより、化学吸収液の循環性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例1の構成を示す接続図。
【図2】本発明の実施例2の構成を示す接続図。
【符号の説明】
【0033】
1 吸収塔、2,4,7,9,12 ポンプ、3 直接接触器、5,10 冷却器、
6 ヒータ、8,11 気液分離器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含有するガスと化学吸収液とを接触させて、前記ガスから二酸化炭素を除去し、
二酸化炭素を吸収したCOリッチな前記化学吸収液を物理吸収液と直接接触させることにより前記化学吸収液から二酸化炭素を分離して前記化学吸収液を再生する
二酸化炭素の回収方法。
【請求項2】
二酸化炭素を含有するガスと化学吸収液とを接触させて前記ガスから二酸化炭素を除去する吸収塔と、
二酸化炭素を吸収したCOリッチな前記化学吸収液を物理吸収液との直接接触させることにより前記化学吸収液から二酸化炭素を分離して前記化学吸収液を再生する直接接触器と、
前記物理吸収液から二酸化炭素を分離する気液分離器と
をそなえた二酸化炭素の回収装置。
【請求項3】
前記吸収塔の出口で前記化学吸収液を加圧して前記直接接触器へ供給することを特徴とする請求項2記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項4】
前記物理吸収液を加圧して前記直接接触器へ供給することを特徴とする請求項2または3記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項5】
前記物理吸収液と前記化学吸収液とを比重差により分離することを特徴とする請求項2ないし4の何れかに記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項6】
前記化学吸収液が、アミン、アミノ酸塩水溶液であることを特徴とする請求項2ないし5の何れかに記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項7】
前記物理吸収液が、非極性液体であることを特徴とする請求項2ないし6の何れかに記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項8】
前記非極性液体が、シリコンオイル、フロリナート、フッ化カーボン化合物であることを特徴とする請求項7記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項9】
前記直接接触器に、前記化学吸収液からの二酸化炭素分離用の熱を供給するヒータを有することを特徴とする請求項2ないし8の何れかに記載の二酸化炭素の回収装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−100492(P2010−100492A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274547(P2008−274547)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】