説明

二重層回転成形方法

【課題】回転成形によって製造された二重層物品。
【解決手段】(a)50〜100重量%のポリエチレン(PE)と50〜0重量%の官能化されたポリオレフィンとから成る組成物で作られた内側層と、(b)ポリエーテルエステル、飽和ポリエステル、ポリカーボネートまたはエチレン-酢酸ビニル(EVA)から選択され材料の外側層とから成り、2層間の接着が上記内側層の組成物によって行なわれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外側層がポリエーテルエステル、飽和ポリエステルまたはポリカーボネートで、内側層がメタロセン-ポリエチレンから成る回転成形(rotomould)を用いて作られた二重層物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
市場で使用される回転成形用使用されるポリマーの80%以上はポリエチレンである。その理由は、ポリエチレンは加工中の熱劣化に対する耐久性に優れ、グラインディングが容易で、流動性および低温衝撃特性に優れているためである。回転成形は単純なものから複雑なものまで中空プラスチック製品の製造に広く使用されている。回転成形で使用可能な材料は種々あり、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート・ポリアミド、ポリ塩化ビニール(PVC)の成形ができる。線形低密度ポリエチレンを用いるのが好ましい。このことは下記文献に記載されている。
【非特許文献1】"Some new results on rotational moulding of metallocene polyethylenes"、D. Annechini, E. Takacs and J. Vlachopoulos in ANTEC, vol. 1 , 2001
【0003】
回転成形では一般にチーグラー‐ナッタ触媒を用いて製造したポリエチレンが使われているが、メタロセン触媒を用いて製造したポリエチレンの方が望ましい。すなわち、メタロセン触媒を用いて製造したポリエチレンは分子分布の幅が狭く、衝撃特性に優れ、加工時のサイクル時間が短くなる。
【0004】
しかし、従来法でメタロセン触媒を用いて製造したポリエチレンは収縮が大きく、まくれ(wrapage)が生じ、ある種の用途ではその本来の状態の色が白色であることが問題になる(下記文献参照)。
【非特許文献2】ANTEC、第1巻、2001
【0005】
例えば、回転成形で使用可能な下記文献に記載のプラストエラストマー(Plastoelastomeric)組成物は混合操作と加硫操作に複雑な加工階段を必要とする。
【特許文献1】米国特許第US-5457159号明細書
【0006】
下記文献には、単一モノマーから「ワンポット」重合プロセスで製造した種々の制御されたミクロ構造鎖を有する半結晶性ポリオレフィン単位を含むポリマーアロイを回転成形に使用する方法が記載されている。
【特許文献2】米国特許第US-6、124,400号明細書
【0007】
しかし、このポリマーアロイの重合には有機金属触媒先駆物質、カチオン形成性共触媒およびクロスオーバー試薬から成る複雑な触媒系を必要とする。
【0008】
完成品の最終特性を改善するために類似した材料または異なる材料の少なくとも2層を有する物品を製造することが望まれる場合がある。例えば、ポリエーテルエステルの優れた耐緩衝性および衝撃特性と、ポリエチレンの食品接触の無害性との組合せ、例えば、低温での耐衝撃と低コストの組合せが望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、互いに異なる材料の層の間の接着性に優れた回転成形物品の製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、耐浸透性に優れた回転成形物品の製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、衝撃吸収特性に優れた回転成形物品の製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、回転成形物品に追加のパーツを簡単に接着することができる回転成形物品を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、ソフトなタッチを有する回転成形物品を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、乾燥時にスリップ防止特性を有する回転成形物品を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、親水性または疎水性の特性を有する回転成形物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、 下記の(a)と(b):
(a) 30〜99.5重量%のメタロセン触媒を用いて製造したポリエチレンと、70〜0.5重量%の官能化されたポリエチレンとから成る組成物で作られた内側層、
(b) 主成分がポリエーテルエステル、飽和ポリエステル、ポリカーボネートまたはエチレン-酢酸ビニル(EVA)から選択され、マイナー成分が任意成分である外側層、
の層を有し、2層間の接着が上記内側層の組成物によって行なわれる、ことを特徴とする、回転成形によって製造された二重層物品を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
最内側層の組成物はチーグラー−ナッタ触媒またはメタロセン触媒をベースにした触媒系を用いて製造したポリエチレン(PE)から成るのが好ましい。
本発明物品は、従来法を用いて接着される追加の層、例えば結合層を介して接着される追加の層をさらに含むことができる。
【0012】
内側層の組成物は70〜99.5重量%、好ましくは、80〜99重量%のポリエチレンと、0.5〜30重量%、好ましくは1〜20重量%の官能化されたポリエチレンとから成るのが好ましい。官能化されたポリオレフィンはグラフトされたポリエチレン、アイオノマーまたはこれらの混合物から選択するのが好ましい。
【0013】
外側層は主成分として基本的にポリエーテルエステル、飽和ポリエステルまたはポリカーボネートを含み、マイナー成分としてポリエーテル-ブロックコポリアミド、熱可塑性ポリウレタンおよびフルオロポリマーから成る群の中から選択される成分を含むことができる。
「主成分」とは50重量%以上を含むことを意味する。「マイナー成分」とはその成分の比率が50重量%未満であることを意味する。
【0014】
ポリエーテルエステルはポリエステルブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーである。これは一般にポリエーテルジオールの残基である柔らかいポリエーテルブロックと、一般に少なくとも一つの短鎖が伸びたジオール単位を有する少なくとも一つのジカルボン酸との反応で得られるハードセグメント(ポリエステルブロック)とから成る。上記のポリエステルブロックとポリエーテルブロックは一般にポリエーテルジオールのOH官能基と酸の酸官能基との反応で得られるエステル結合によって連結される。上記の短鎖が伸びたジオールはネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールおよび式:HO(CH2)nOHの脂肪族グリコール(ここで、nは2〜10の整数)からなる群の中から選択できる。好ましくはジアシッド(二酸)は8〜14の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸である。このジカルボン酸は8〜14の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸であるのが好ましい。この芳香族ジカルボン酸の最大50モル%までを少なくとも一つの他の2〜12の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸および/または最大で20モル%の脂肪族ジカルボン酸に変えることもできる。
【0015】
芳香族ジカルボン酸の例としてはテレフタル酸、イソフタル酸、ジ安息香酸、ナフタリンジカルボン酸、4,4'-ジフェニレンジカルボン酸、ビス(p-カルボキシフェニル)メタン酸、エチレンビス(p-安息香酸)、1,4-シクロブタンビス(p-オキシ安息香酸)、エチレンビス(パラオキシ安息香酸)、1,3-トリメチレンビス(p-オキシ安息香酸)を挙げることができる。グリコールの例としてエチレングリコール、1,3-トリメチレングリコール、1,4-テトラメチレングリコール、1,6-ヘキサメチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,8-オクタメチレングリコール、1,10-デカメチレングリコールおよび1,4-シクロヘキシレンジメタノールを挙げることができる。ポリエステルブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーの例としてはポリエーテルジオールから誘導されるポリエーテルブロック、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)またはポリテトラメチレングリコール(PTMG)と、ジカルボン酸単位、例えばテレフタル酸と、グリコール(エタンジオール)または1,4-ブタンジオール単位とのコポリマーが挙げられる。ポリエーテルと二酸との連鎖が柔らかいセグメントを形成し、コポリエーテルエステルのグリコールまたはブタンジオールと二酸との連鎖がハードセグメントを形成する。この種のコポリエーテルエステルは例えば下記文献に記載されている。
【特許文献3】欧州特許第EP 402 883号公報
【特許文献4】欧州特許第EP 405 227号公報
【0016】
これらのポリエーテルエステルは熱可塑性エラストマであり、可塑剤を含むこともできる。ポリエーテルエステルは例えばデュポン社からハイトレル(Hytrel、登録商標)の名称で入手できる。
【0017】
飽和ポリエステル樹脂はジカルボン酸とジヒドロキシアルコールとの重縮合物である。これは特別な種類のアルキド樹脂で、一般に脂肪酸または乾性油で変性されないか、触媒の用で室温でほとんど圧力を加えずに硬化または固化する能力を有している。好まいし飽和ポリエステルはポリアルキレンテレフタレート、好ましくはポリエチレンテレフタラート(PET)およびポリブチレンテレフタレート(PBT)である。飽和ポリエステルは例えばサイクリック(Cyclics)社からCyclics CBT(登録商標)の名称で入手できる。
【0018】
ポリカーボネート(PC)はジヒドロキシ化合物およびカルボン酸誘導体から得られる熱可塑性樹脂または炭酸エステル・ジエステルである。ポリカーボネートはビスフェノールAおよびホスゲンの縮合物が好ましい。
【0019】
ポリエーテル-ブロックコポリアミドは下記一般式(I)で表される:
HO-[C(O)-PA-C(O)-O-PEth-O]n-H (I)
(ここで、PAはポリアミドセグメントを表し、PEthはポリエーテル・セグメントを表す)
ポリアミドセグメントの例はPA 6、PA 66、PA 11またはPA 12である。ポリエーテルセグメントの例はポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)またはポリテトラメチレングリコール(PTMG)である。ポリアミド単位の分子量Mnは通常300〜15,000であり、ポリエーテル単位の分子量Mnは通常100〜6000である。
この材料は例えばアルケマ(Arkema)社からペバックス(Pebax)(登録商標)の商品名で入手できる。
【0020】
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーは一般に反応性末端基を有するポリエーテルブロックと反応性末端基を有するポリアミドブロックとの重縮合、例えば下記の重縮合で得られる:
1)ジカルボン酸鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロックとジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックとの重縮合;
2)ポリエーテルジオールと呼ばれるジヒトロキシ化された脂肪族α、ω−ポリオキシアルキレンブロックのシアノエチル化と水素化で得られるジアミン鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロックとジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックとの重縮合;
3)ジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックとポリエーテルジオールとの重縮合(この場合に得られる製品をポリエーテルエステルアミドという)。
【0021】
ジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックは例えば、連鎖停止用カルボキシルジアシッドの存在下でのポリアミド先駆物質の縮合で得られる。ジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックは例えば連鎖停止用ジアミンの存在下でのポリアミド先駆物質の縮合で得られる。
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するポリマーはランダムに分布した単位を含むことができる。これらのポリマーはポリエーテルとポリアミドブロックの先駆物質との同時反応で製造できる。例えば、ポリエーテルジオールと、ポリアミド先駆物質と、連鎖停止用ジアシッドとを一緒に反応させることができる。基本的にポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを有する種々の長さのポリマーが得られるが、それに加えて、ランダムに反応したポリマー鎖に沿ってランダムに分布した種々の反応物も得られる。
【0022】
ポリエーテルジアミン、ポリアミド先駆物質および連鎖停止用ジアシッドを一緒に反応させることができる。得られるポリマーは本質的に種々の長さのポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを有するが、ポリマー鎖に沿ってランダムに分布したランダムに反応した種々の反応物も含まれる。ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するこれらのコポリマーのポリエーテルブロックの量はコポリマーの重量の10〜70%、好ましくは35〜60%であるのが好ましい。
【0023】
ポリエーテルジオールブロックはそのまま使用されるか、カルボキシル末端基を有するポリアミドブロックと共重縮合されるか、アミン化してポリエーテルジアミンに変換し、カルボキシル末端を有するポリアミドブロックと縮合することができる。さらに、ポリアミド先駆物質およびジアシッド連鎖停止剤とブレンドして、ランダムに分布した単位を有するポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するポリマーにすることもできる。
【0024】
第2のタイプのポリアミドブロック以外の場合のポリアミドブロックの数平均モル質量Mnは一般に300〜15,000の間にある。ポリエーテルブロックの質量Mnは一般に100〜6000の間にある。
【0025】
ポリウレタンが存在する場合のポリウレタンは一般に柔らかいポリエーテルブロック(これは一般にポリエーテルジオールの残基である)と、少なくとも一種の短いジオールと少なくとも一種のジイソシアナートとの反応で得られる硬いブロック(ポリウレタン)とから成る。短鎖で延びたジオールは上記のポリエーテルエステルで説明したグリコールから選択できる。ポリウレタンブロックとポリエーテルブロックはイソシアネート官能基とポリエーテルジオールのOH官能基との反応で得られる結合で連結される。
熱可塑性ポリウレタンは例えばElastogran社から市販の商品エラストラン(Elastollan)(登録商標)またはダウケミカル社から市販の商品ペルエタン(Pellethane)(登録商標)である。
【0026】
本発明で加工助剤として適したフルオロポリマーは例えばビニリデンフルオリド(H2C=CF2)のポリマーおよび/またはビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレン(F2C=CF-CF3)とのコポリマーである。
ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマーはエラストマ特性を有しないが、一般に「フッ素エラストマー」とよばれている。
【0027】
フッ素エラストマーのコモノマーのヘキサフルオロプロピレンの含有量は一般に30〜40重量%である。本発明での加工助剤として適したフルオロポリマーの例はDyneon社、DuPont-Dow Elastomers社またはArkema社から市販のダイナマール(Dynamar)(登録商標)、ビトン(Viton)(登録商標)およびキナール(Kynar)(登録商標)である。
【0028】
回転成形ではチーグラー−ナッタ触媒またはメタロセン触媒または最近(late)遷移金属触媒系を用いて製造したポリエチレンが一般に使われる。直鎖低密度ポリエチレンが好ましくは使われることは例えば下記文献に記載されている。
【非特許文献3】D. Annechini、E. Takacs、J. Vlachopoulos、「メタロセン・ポリエチレンの回転成形上の新しい結果」、ANTEC、第1巻、2001
【0029】
本発明で好ましいポリエチレンはシリカ/アルミノキサン担体上のメタロセンから成る触媒を用いて製造したエチレンのホモポリマーまたはコポリマーである。メタロセン成分はエチレン-ビステトラヒドロインデニルジルコニウム二塩化物またはビス(n-ブチル-シクロペンタジエニル)ジルコニウム二塩化物またはジメチルシリレン−ビス (2-メチル-4-フェニル-インデニル)ジルコニウム二塩化物であるのが好ましい。最も好ましいメタロセン成分はエチレン-ビステトラヒドロインデニルジルコニウム二塩化物である。
【0030】
本発明で一般に好ましくは使用されるポリエチレンのメルトインデックスは0.1〜25dg/分、好ましくは0.2〜15dg/分、最も好ましくは0.5〜10dg/分の範囲にある。メルトフローインデックスMI2は温度19O℃、2.16kgの荷重下でASTM D 1283規格のテスト方法で測定される。
本発明において、好ましくは使うことができるエチレンのホモポリマーおよびコポリマーは、0.975グラム/ミリリットルまで、そして、好ましくは、範囲0.915において、0.955グラム/ミリリットルまで範囲0.910の密度を有する。密度は23℃でASTM D 1505規格のテスト方法で測定される。
【0031】
本発明のポリエチレンはビモダル(bi-modal、2峰の)またはマルチモダル(multi-modal、多峰の)分子量分布を有することができる。すなわち、本発明のポリエチレンは異なる分子量分布を有する少なくとも2つのポリオレフィンの混合物でよく、混合は物理的または化学的に行うことができる(すなわち、2つ以上の反応を連続して行うことができる)。
【0032】
本発明に適したポリエチレンの多分散度Dは2〜20の範囲、好ましくは2〜8、より好ましくは5以下、最も好ましくは4以下であり、後者の範囲は一般に好ましいメタロセン触媒を用いて得られたポリエチレンの場合である。多分散性指数Dは数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比Mw/Mnとして定義される。
【0033】
本発明のポリオレフィンは他の添加剤、例えば抗酸化剤、酸スカベンジャ、帯電防止剤、充填剤、スリップ添加剤またはブロッキング防止剤を含むことができる。
【0034】
官能化されたポリオレフィンが存在する場合、それは極性および/または反応性を与える材料をグラフトしたポリオレフィンであり、従って、隣接層の種類に依存する。本発明では無水物がグラフトしたポリオレフィンが好ましく、ポリオレフィンはポリエチレンまたはポリプロピレンが好ましく、ポリエチレンであるのがより好ましい。官能化されたポリオレフィンはアイオノマーであっしてもよい。グラフトされたポリエチレンは優秀な接着特性を与え、アイオノマーは機械特性を改良する。本発明のより好ましい実施例の一つでは、官能化されたポリオレフィンがアイオノマーとグラフトされたポリエチレンとの混合物である。
【0035】
上記の層がポリエーテルエステルで作られた場合には、回転成形された外側層上に追加の部品を接着するのが容易になる。外側層は所望される最終特性、例えば下記のような特性に合わせてポリエーテルエステル、飽和ポリエステルまたはポリカーボネートから選択することができる:
(1)優れた衝撃吸収性、
(2)優れた耐衝撃特性、
(3)ソフトな触覚、
(4)ポリアミドと同様な良好な障壁特性で且つコストを抑える、
(5)乾燥時にスリップを防止し、湿潤時にスリップを容易にする、
(6)加工温度範囲を広くする、
(7)良好な硬度
(8)耐引掻き抵抗性
【0036】
他の層は本発明の層を必要な数だけ繰り返すか、結合層を用いて加えることができる。各層の厚さは最終製品の寸法、所望特性またはコストによって決定される。厚さは1mm〜数cmで変化する。一般に、外側層は全部の壁の厚さの5〜50%である。
【0037】
回転成形物品の寸法は0.1Lから70m3である。本発明で作られた回転成形物品は優れた耐衝撃性とショック吸収特性を有するので、ドラム、バンパーまたは大型コンテナのように大型の物品が作れる。
【0038】
本発明はさらに、各層に必要な材料を連続的に供給してワンシットで2層の物品を回転成形で製造し、ポリエチレン組成物で作られた内側層が内外の層を接着する方法を開示する。多層物品は成形サイクル中にマニュアル(手作業)で材料を導入するか、ドロップボックスを使用して材料を導入するか、ワンショットシステムを用いて製造できる。
【0039】
手作業で材料を添加する場合には、オーブンから金型を取り出し、ガス抜き管またはプラグを取り外して部品に開口を作り、ロートまたはワンドを用いて材料を追加する工程が含まれ、各追加層毎にこの操作を繰り返す。
【0040】
一般に、ドロップボックスは一つの層用の単一材料を収容した容器で、サイクルの適切な時間にその材料が放出されるまでその材料を保持する断熱容器である。一般に、材料の放出信号は装置のアームを通る送気ホースを介して圧力パルスとして送られる。また、ドロップボックス内部の材料が溶けるのを防止するために低温の断熱状態を維持しなければならない。
【0041】
いずれの方法でも下記のファクターは重要である:
(1)次の層を追加する時の温度:これはそれ以前に形成された壁の厚さと、2つの層の接着性を決定する上で重要である。
(2)次の層の材料を追加するまでの経過時間:金型を長時間休止状態にすると、壁に接着している材料がたるむことがある。
(3)各層の結晶化温度:大きく異なってはならない。
【0042】
上記の問題は第1層の溶融指数を下げ、および/または、次の層の注入温度を下げ、および/または、次の層の注入前に金型を少し冷却する、ことによって減らすことができる。
【実施例】
【0043】
以下のようにして複数の物品を回転成形で製造した。
内側層の樹脂はエチレンビステトラヒドロインデニル・ジルコニウム二塩化物をベースにしたメタロセン触媒系を用いて製造した97重量%のポリエチレン樹脂(メルトフローインデックスMI2が4dg/分、密度は0.940g/cm3)と、3重量%のグラフトしたポリエチレンとの混合物にした。
【0044】
全てのテスト成形はROTOSPEED回転成形機械で行った。このROTOSPEED回転成形機械はオフセットアームと、バーナー容量が523kW/hrのLPGバーナーアームと、冷却空気ファンと、1.5mの最大プレート直径とを有する回転木馬(carrousels)型の機械である。
【0045】
テスト成形品の作るのにアルミニウムのボックス金型を用いた。この金型は離型を容易にするためのドラフト角度を備え、二重層物品はドロップボックスを用いて製造した。ドロップボックスには第1層に必要な材料を充填して金型の蓋に取付けた。材料は必要な温度に達するまでドロップボックス中に維持し、空気シリンダーを駆動して材料を流し込んだ。この操作は下記の条件下で各層毎に繰り返した。
【0046】
2層構造は下記の2−ショット法を用いて製造した:
(1)600gの粉末状のペバックス(Pebax)(登録商標)を10リットルの金型中に入れた。
(2)金型を300℃の温度に予熱されたオーブン中に入れた。
(3)金型の内部温度が180℃に達した時にオーブンから取り出す。
(4)金型を開き、600gのポリエチレンブレンドをガス抜き管を介して入れた。
(5)金型を再び予熱されたオーブン中に入れた。
(6)金型の内部温度が220℃に達した時にオーブンから取り出した。
(7)金型を室温で30分間、空気冷却した。
(8)温度が7O℃になった時に回転成形された部品を金型から出した。
【0047】
[図1]に示すように、得られた2重層の回転成形物品は2層間の接着性が優れている点に特徴がある。
衝撃強度はISO 6602-3規格のテスト方法を使用して-20℃の温度でテストした。このテストで使用した器具は[図2]に示してある。質量Mは26.024kで、速度vは4.43m/sで、衝撃エネルギーは255Jである。結果は[図3]に示してある。[図3]から分かるように、曲線上のPで示したピークエネルギーを越えても物品は破損しない。これはピークエネルギーを超えた面積で示される。これは延性(ductile)挙動の特徴である。
【0048】
本発明の2重層回転成形物品は全て充分な延性挙動を示す。全エネルギーに対する伝播エネルギーの比Eprop/Etotで測定した延性指数は50%である。好ましい小手、全エネルギーEtot=Epeak+EpropはピークエネルギーEpeakと伝播エネルギーEpropとの和である。上記の値は純粋なポリエチレンで作った物品を同じ条件下で測定した時の延性指数40〜42%よりはるかに大きい。純粋なポリエチレンの指数は延性-脆性挙動を表している。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】内側層がポリエチレン化合物で作られ、外側層が純粋なペバックス(Pebax)(登録商標)で作られた回転成形物品の中間層領域の鏡検解析図。
【図2】サンプルの衝撃強度を測定するのに使用した装置の図。
【図3】時間(msで表す)を関数とした衝撃強度(ニュートンで表す)の図で、最大エネルギーはPで示してある。このグラフには時間を関数とした物品の変形度も示してある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(a)と(b):
(a) 30〜99.5重量%のメタロセン触媒を用いて製造したポリエチレンと、70〜0.5重量%の官能化されたポリエチレンとから成る組成物で作られた内側層、
(b) 主成分がポリエーテルエステル、飽和ポリエステル、ポリカーボネートまたはエチレン-酢酸ビニル(EVA)から選択され、マイナー成分が任意成分である外側層、
の層を有し、2層間の接着が上記内側層の組成物によって行なわれる、ことを特徴とする、回転成形によって製造された二重層物品。
【請求項2】
官能化されたポリオレフィンがグラフトポリエチレン、アイオノマーまたはこれらの混合物である請求項1に記載の二重層物品。
【請求項3】
メタロセン触媒成分がビス(テトラヒドロインデニル)またはビス(n-ブチル−シクロペンタジエニル)である請求項1または2に記載の二重層物品。
【請求項4】
外側層が、ポリエーテル-ブロックコポリアミド、熱可塑性ポリウレタンおよびフルオロポリマから成る群の中から選択されるマイナー成分を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の二重層物品。
【請求項5】
各層に必要な材料をワンショットで順次供給し、ポリエチレン組成物から成る内側層が内側層と外側層との間の接着を行なう、請求項1〜4のいずれか一項に記載の二重層回転成形物品の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の回転成形物品からなるドラム。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の回転成形物品からなるバンパー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−543600(P2008−543600A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510564(P2008−510564)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【国際出願番号】PCT/EP2006/062150
【国際公開番号】WO2006/120188
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(504469606)トータル・ペトロケミカルズ・リサーチ・フエリユイ (180)
【Fターム(参考)】