二重管用の保持部材
【課題】内管と外管を同心状に保持でき急激な力が配管に加わっても管が破損せず、あるいは、破損による被害を最小限に止めることができる二重管用の保持部材の提供。
【解決手段】保持部材(1)は保持体(2)とシールリング(3)から成る。シールリングは中空にしてもよいし、内部にクッション層(6)を設けたものでもよいし、Oリングでもよい。シールリングの内周に切り欠きを設け、この切り欠きを保持体の外周部に装着させるのが好ましい。保持体に両側を連通させる穴や切り欠きを設ければ内管が破損したときに局部的に圧力が急上昇して、外管が破損することが防止される。保持部材と保持部材の間にドレインを設ければ、内管が破損したときにその区間の外側に内部流体が流出することを防止できる。
【解決手段】保持部材(1)は保持体(2)とシールリング(3)から成る。シールリングは中空にしてもよいし、内部にクッション層(6)を設けたものでもよいし、Oリングでもよい。シールリングの内周に切り欠きを設け、この切り欠きを保持体の外周部に装着させるのが好ましい。保持体に両側を連通させる穴や切り欠きを設ければ内管が破損したときに局部的に圧力が急上昇して、外管が破損することが防止される。保持部材と保持部材の間にドレインを設ければ、内管が破損したときにその区間の外側に内部流体が流出することを防止できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に化学工場において化学溶液や処理廃液などを搬送する二重管を保持するための二重管用の保持部材に関する。
さらに詳しくは、内管と外管を同心状に保持でき、ウォーターハンマーなど急激な力が二重管の配管に加わっても管が破損することなく、内管の破損箇所を容易に特定でき、破損による被害を最小限に止めることができる二重管用の保持部材である。
【背景技術】
【0002】
内管を外管内で保持する方法として従来では図10、図11に示すような搬送配管の構造があった。(例えば、特許文献1参照)。その構成は、実管101と鞘管102の二重構造とし、適宜箇所に中央部の透孔103に実管101が挿着されると共に、鞘管102の内周壁に周端面が当接するセンタリングスペーサ104を配置したものであり、このセンタリングスペーサ104の構成は、最下部となる鞘管102の底部と接する部分に切り欠き105を設けたセンタリングスペーサ104(図10参照)の場合と、複数設けられた垂下空間部106の間に実管101の継手部107を設け、継手部107の前後に鞘管102と実管101の空間を閉鎖して仕切る閉鎖用センタリングスペーサ108(図11参照)の場合があった。その効果は、安全性が高く、液漏れにも万全を期すことができ、保温効果、実管の保護と共に劣化防止等を兼ね備えたものであった。
【0003】
しかしながら、上記従来の搬送配管の構造のセンタリングスペーサ104の、切り欠き105を設けたセンタリングスペーサ104は、配管の適宜箇所に設けることができるが、例えば実管101から鞘管102に流体が流出した場合にセンタリングスペーサ104では流体の流れを堰き止めることはできない。複数の垂下空間部106が設けられたときに、流体はセンタリングスペーサ104を通過して各々の垂下空間部106に流れ込むため、実管101の破損を垂下空間106に流体が流れることで認識することはできても破損した場所を特定することができないという問題があった。また、流出した流体は鞘管102の底部が同じ高さより低い配管内に流れるため配管の構成によっては広範囲に広がり、実管101の流体を停止して破損した実管101の修理や流出した流体の処理を行う際の作業が非常に困難となる恐れがあるという問題があった。
【0004】
また、閉鎖用センタリングスペーサ108は、継手107とその付近の実管101は閉鎖用センタリングスペーサ108によって閉鎖した空間内にあるので実管101の破損などで流出した流体は鞘管102を流れて垂下空間106に流れ込むことができるが、閉鎖用センタリングスペーサ108によって閉鎖した空間に入れない部分、すなわち図11では継手部実管109とその付近の実管101が鞘管102内に配置されておらず、比較的流体漏れが発生し易い継手部実管109からの流体漏れや鞘管102内に配置されていない実管101の破損が発生すると、実管101の流体を停止ないかぎり配管の周辺に流出する流体を止めることができず、流出した流体による二次災害が起こる問題があった。また、閉鎖用センタリングスペーサ108は実管101と鞘管102に溶接によって密封状態に設置されているため、配管接続の作業に手間と時間がかかる問題や、垂下空間106を設けるごとに鞘管102が途切れるので長い距離の配管が困難であるという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開2004−108568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、内管と外管を同心状に保持でき、ウォーターハンマーなど急激な力が二重管の配管に加わっても管が破損することなく、内管の破損箇所を容易に特定でき、破損による被害を最小限に止めることができる二重管用の保持部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明によれば、 内管と外管とからなる二重管の内管と外管の間に配設され、外管を内管に対して略同心状に保持する二重管用の保持部材であって、
内周が前記内管の外径と略同径に形成され、外周が前記外管の内径より小径に形成された保持体と、
保持体の外周と外管の内周面との間に、周方向の全部または一部にわたって、配設されるシール材と、を含んでなる、
ことを特徴とする保持部材が提供される。
請求項2の発明によれば、前記シール材が、弾性を有する材料で形成されたシールリングとされている。
請求項3の発明によれば、前記シールリングが樹脂製の中空リングとされている。
請求項4の発明によれば、前記中空リングの内部にクッション層が設けられている。
請求項5の発明によれば、前記シールリングが、Oリングとされている。
請求項6の発明によれば、シール材は、シート状、または、テープ状にされた弾性を有する材料が保持部材に装着されてなる。
請求項7の発明によれば、シール材は、液状シール剤を保持部材に塗布してなる。
請求項8の発明によれば、前記シール材の内周に、切り欠き部が設けられ、該切り欠き部に前記保持体の外周部が装着される。
請求項9の発明によれば、前記保持体の外周面または側面に、前記シール材が、溶接、溶着または接着されている。
請求項10の発明によれば、前記保持体が前記内管に溶接、溶着または接着されている。
請求項11の発明によれば、前記保持部材が、保持部材の両側の領域を連通する連通手段を具備する。
請求項12の発明によれば、前記内管と外管が略水平方向に延伸するように配置されていて、前記連通手段が、垂直方向で内管よりも上方に配置されている。
請求項13の発明によれば、隣接する保持部材の間の位置において、保持部材が取り付けられる二重管の外管にドレインが付設されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明は以上のような構造をしており、以下の優れた効果が得られる。
(1)内管と外管を同心状に保持すると共に、ウォーターハンマー等により二重管の配管に力が加わって外管の内周の一方の方向に内管が移動するような力が急激に加わったとしてもシールリングがクッションの役割を果たすので外管と内管の破損を防止できる。
(2)保持部材で区切られた空間内で内管の破損や流体の漏れにより流出した流体を堰き止めることができ、流出した流体の処理や配管の修理作業などが容易に短時間で行うことができる。
(3)ドレインに連通した空間ごとに保持部材でシールした状態で区切ることができ、流体が流れ込んだドレインから内管が破損した大まかな位置を容易に特定することができる。
(4)保持部材に切り欠き部や貫通孔を設けると、内管の破損や流体の漏れにより流出した流体が空間内に貯まって空間内の空気が圧縮されることを防止し、外管の破損を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の第一の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明が本実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0010】
図において、1は保持体2とシールリング3から形成される保持部材である。保持体2はPVC製であり、円盤形状で内周に後記内管10の外径と略同径となる貫通孔4が設けられ、外周は後記外管9の内径より小径となるように設けられている。シールリング3は、軟質PVC製の中空リング5と、中空リング5の内部にロープ状のウレタン製のクッション材を挿入して設けられたクッション層6とから形成されている。シールリング3と保持体2は、中空リング5の内周に切り欠き部7が設けられ、この切り欠き部7を保持体2の外周部に装着させ、当接する中空リング5の切り欠き端部8と保持体2の側面とを溶接することにより固定されている(図1及び図8(a)参照)。
【0011】
9はPVC製の外管であり、10はPVC製の内管である。内管10は外管9の内部に収納されており、保持部材1が内管10の外周に嵌着されて溶接により固定され、シールリング3が外管9内周面の全体にシールされた状態で嵌挿されている。これにより内管10と外管9が同心状になるように保持される。
【0012】
11は外管9に任意の位置に設置されたドレインである。ドレイン11は、内管10外周と外管9内周の間と二つの保持部材1の間に形成された空間14に連通して設けられており(図2参照)、ドレイン11の下流側は配管接続により流体が外部へ流れるようになっている(図示せず)。
【0013】
シールリング3は、図6に示すような樹脂製の中空リング5である構成や、図7、図8に示すような中空リング5の内部にクッション層6を設けた構成や、図9に示すようなOリング13である構成のいずれかであることが望ましい。なお、保持体2の形状は、円盤状、円筒状、板状など、外管9内周面の全体または一部とシールされた状態で外管9に嵌挿でき、保持体2で流体を堰き止めることができるものであれば特に限定されない。
また、本実施形態ではシール材としてシールリング3を用いているが、シール材はシート状でもシールテープなどのテープ状でもよく、シリコーンタイプや溶剤タイプや無溶剤タイプなどの液状シール剤を塗布したものでもよい。
【0014】
シールリング3が樹脂製の中空リング5である場合(図6参照)、内部が空洞であるためにシールリング3の断面形状を大きく変形させることが可能であり、保持部材1を外管9の内周面に嵌挿する際にシールリング3が外管9の内周形状に合わせて変形してシールすることができるので、特に外管9が偏平するなどして真円度があまり良くない大口径の二重管等に対しても確実にシールすることができるので好適である。樹脂製の中空リング5の材質は、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと記す)、ポリビニリデンフルオロライド(以下、PVDFと記す)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(以下、PFAと記す)などのフッ素樹脂や、軟質塩化ビニル樹脂(以下、PVCと記す)などの軟質の樹脂などが好適なものとして挙げられる。なお、樹脂はゴムであっても良い。
【0015】
シールリング3が樹脂製の中空リング5の内部にクッション層6を設けた場合(図7、図8参照)、クッション層6により中空リング5の変形はクッション層6のない場合より抑えられため、必要以上シールリング3が変形しないように調節することができ、保持部材1を外管9の内周面に嵌挿した時にシール部分がクッション層6で押されてより強くシールすることができるので好適である。なお、クッション層6は図7に示すように中空リング5の内部全体に設けても良く、図8に示すように中空リング5とクッション層6の間に隙間17を設けても良い。また、クッション層6は必要に応じてシールリング3の全周に亘って設けても良く、一部に設けても良い。またクッション層6の形成方法も、中空リング5内部にクッション層6が充填されたものでも良く、小さなクッション材を中空リング5内部に詰めたものでも良く、ロープ状のクッション材を中空リング5内部に挿入したものでも良い。クッション層6の材質は、スポンジ、ウレタン、布、綿、発泡スチロール、発泡ポリエチレンなど特に限定されない。
【0016】
シールリング3がOリング13である場合(図9参照)、保持部材1の製作や二重管への設置作業が容易であり、特に外管9が偏平しにくい小口径の場合等に確実にシールが行えるので好適である。Oリング13の材質はゴムが望ましく、エチレンプロピレンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルフォン化ゴム、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴムなどが好適なものとして挙げられる。
【0017】
以上のようなシールリング3の構成は、外管9の口径や配管の構成に応じて選択して使用することで、確実なシールを行うことができ、内管10から外管9に流出する流体を保持部材1で確実に堰き止めることができる。
【0018】
また、保持体2の外周にシールリング3を固定する方法は、図6の(a)、図7の(a)、図8の(a)、図9の(a)に示すようなシールリング3の内周に切り欠き部7が設けられ、切り欠き部7を保持体2の外周部に装着させた構成でも良く、図6の(b)、図7の(b)、図8の(b)、図9の(b)に示すような保持体2の外周にシールリング3を嵌着した構成でも良く、図6の(c)、図7の(c)、図8の(c)、図9の(c)に示すような保持体2の外周に環状溝12を形成し、環状溝12にシールリング3を嵌合した構成でも良い。また、シールリング3と保持体2とは、保持体2の外周面または側面に溶接、溶着または接着により固定されることが望ましい。特に図6の(a)、図7の(a)、図8の(a)に示す中空リング5に設けられた切り欠き部7を保持体2の外周部に装着させた構成は、シールリング3と保持体2が外れにくく、シールリング3の固定位置を変更することで外管9内周面と適したシールを調整できるようにすることができるので好適である。
【0019】
本発明の保持部材1は保持体2と外管9内周面の全体をシールされた状態でも良いが、一部がシールされた状態でも良い。一部がシールされた状態とは、少なくとも内管10より下方に位置する部分がシールされたものである。この場合、図4(a)のような保持部材1の外周に少なくとも一つの切り欠き部16を設けたり、図4(b)のような側面に少なくとも一つの貫通孔15を設け、切り欠き部16または貫通孔15が内管10より上方に位置させることが望ましい。これは、図5に示すように空間14の上方に空気の流れる孔が形成されるため、内管10の破損や流体の漏れにより流体が空間14に流出する際に、例えば保持部材1で囲まれた空間14が密封されていると、空間14に流体が貯まることで空間14内の空気が圧縮されて外管9が破裂する恐れがあるが、切り欠き部16や貫通孔15で空気の流れる孔が形成されることで空気を逃がすことができ、外管9の破損を防止することができるので好適である。なお、切り欠き部16や貫通孔15は、内管10の上方に位置し空気を逃がす孔が形成されるのであれば形状、大きさ、個数は特に限定されない。
【0020】
また、保持部材1は内管10の外周に溶接、溶着または接着のいずれかの方法で固定されることが望ましい。これは、例えば二重管が流体温度や気温により伸縮した場合でも、保持部材1がずれることがなく確実に内管10と外管9を同心状に保持することができるので好適である。
【0021】
また、本発明の保持体2、内管10、外管9の材質は、PVC、ポリプロピレン、ポリエチレン、PVDF、ポリスチレン、ABS樹脂、PTFE、PFA、ポリクロロトリフルオロエチレンなどの樹脂、鉄、銅、銅合金、真鍮、アルミニウム、ステンレスなどの金属などいずれでも良い。また、透明または半透明の材質で形成されても良い。
【0022】
次に、第一の実施形態の作用を図2に基づいて説明する。
内管10のみに流体として塩酸を流す。内管10が破損したとき、塩酸が外管9すなわち内管10外周と外管9内周の間と二つの保持部材1の間に形成された空間14に流出するが、保持部材1はシールリング3により外管9の外周面とシールされているため、空間14内から塩酸が漏れることなく塩酸を保持部材1で堰き止めることで、流体が二重管の配管周辺や空間14以外の外管9に流出することがないため、二重管の配管の周辺に塩酸が流出して塩酸による二次被害が発生することが防止され、内管10の破損による被害を最小限に食い止めることができる。また空間14内に流出した塩酸はドレイン11から安全に外部へ流出させることができる。なお、本発明の二重管に流す流体は、化学溶液や処理廃液など管と継手の材質の耐薬品性が問題ないものであれば特に限定されない。また内管10と外管9は、保持部材1によって常に同心状に保持され、内管10と外管9が衝突することが防止されると共に、ウォーターハンマー等により内管10に対して外管9内周の一方の方向に急激な力が加わったとしてもシールリング3がクッションの役割を果たすので内管10と外管9の破損を防止できる。
【0023】
次に、本発明の第二の実施の形態の二重管の配管が長い場合について図3に基づいて説明する。第二の実施形態は、第一の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付して示す。
11a、11bは二重管の配管に任意の間隔をあけて複数設けられたドレインである。配管内に保持部材1a、1b、1cが任意の間隔をあけて設置され、ドレイン11aが内管10外周と外管9内周の間と保持部材1aと保持部材1bの間に形成された空間14aに連通し、ドレイン11bが内管10外周と外管9内周の間と保持部材1bと保持部材1cの間に形成された空間14bに連通している。これにより内管10と外管9で形成された空間は保持部材1a、1b、1cによって区切られ、区切られた各々の空間にドレイン11a、11bが設けられた構成となる。第二の実施形態の他の構成は、第一の実施形態と同様なので説明を省略する。
【0024】
次に、第二の実施形態の作用を図3に基づいて説明する。
内管10のみに流体として塩酸を流す。内管10のXの場所が破損した場合、内管10から流出した塩酸は空間14aの外管9底部を流れてドレイン11aに流れ込み、ドレイン11aに塩酸が流れ込んだことで空間14a内で内管10の破損や流体の漏れが発生したことを感知することができる。このときXの場所から流出した塩酸は外管9底部を流れて空間14b側にも流れようとするが、保持部材1bが外管9外周面とシールされているため保持部材1bで塩酸が堰き止められ、空間14a内で内管9から流出した塩酸は全てドレイン11aに流れ込む。また、内管10のYの場所が破損した場合、内管10から流出した塩酸は空間14bの外管9底部を流れてドレイン11bに流れ込み、ドレイン11bに塩酸が流れ込んだことで空間14b内で内管10の破損や流体の漏れが発生したことを感知することができる。このときYの場所から流出した塩酸は外管9底部を流れて空間14a側にも流れようとするが、保持部材1bが外管9外周面とシールされているため保持部材1bで塩酸が堰き止められ、空間14b内で内管10から流出した塩酸は全てドレイン11bに流れ込む。
【0025】
以上のことから、複数のドレイン11a、11b間を本発明の保持部材1a、1b、1cで区切ることにより、内管10の破損や流体の漏れが発生した場合、流出した流体は破損や漏れが発生した箇所が該当する空間14a、14bに連通するドレイン11a、11bにのみ流れ込むことで、流体の流れ込んだドレイン11a、11bに連通する空間14a、14b内のどこかで破損や漏れが発生したことを認識できるため、二重管の配管において内管10に破損や漏れが発生した箇所の大まかな位置を容易に特定することができる。また、保持部材1a、1b、1cで区切られた空間14a、14b以外の配管内に内管10から流出した流体が流れることを防止するので、流体が広がる範囲は最小限となり、内管10に破損や漏れが発生した後の流出した流体の処理や配管の修理作業などが容易に且つ短時間で行うことができる。
【0026】
次に、本発明の第三の実施形態について図4(b)、図5に基づいて説明する。第三の実施形態は、第一の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付して示す。
図4(b)において示されるように、保持部材1の保持体2の上部には、保持体2側面を貫通する貫通孔15が設けられている。また、第三の実施形態の保持部材1は図5に示すように設置され、貫通孔15が垂直方向において上方に位置するように設けられている。第三の実施形態の他の構成は、第一の実施形態と同様なので説明を省略する。
【0027】
次に、第三の実施形態の作用を図5に基づいて説明する。
内管10のみに流体として塩酸を流す。内管10の空間14内に位置する場所が破損した場合、内管10から流出した塩酸は空間14の外管9底部を流れてドレインに流れ込む。このとき、内管10から一度に大量の塩酸が流出したりドレイン11内の流体の流れが悪いときなど、ドレイン11からすぐに塩酸を外部へ流出できずに空間14内に貯まることがある。空間14内に塩酸が貯まって水位が上昇するのに伴い、空間14内の空気は貫通孔15から隣の空間に逃げるので、空間14内で空気が圧縮されて外管9が破壊することが防止される。第三の実施形態の他の作用は、第一の実施形態と同様なので説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第一の実施形態の保持部材を示す一部切り抜き斜視図である。
【図2】図1の保持部材を二重管に設置された状態を示す縦断面図である。
【図3】二重管に一定間隔でドレインを設けた状態において内管が破損した場合の本発明の第二の実施形態を示す模式図である。
【図4】本発明の第三の実施形態の保持部材を示す正面図である。
【図5】図4の保持部材を二重管に設置された状態で内管が破損した場合を示すを示す縦断面図である。
【図6】保持部材のシールリングが中空リングである場合のバリエーションを示す要部拡大縦断面図である。
【図7】保持部材のシールリングが中空リングの内部にクッション層を設けた構成である場合のバリエーションを示す要部拡大縦断面図である。
【図8】保持部材のシールリングが中空リングの内部にクッション層を設けた構成である場合の他のバリエーションを示す要部拡大縦断面図である。
【図9】保持部材のシールリングがOリングである場合のバリエーションを示す要部拡大縦断面図である。
【図10】従来の搬送配管を示す縦断面図である。
【図11】従来の搬送配管のセンタリングスペーサの他の実施例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 保持部材
2 保持体
3 シールリング
4 貫通孔
5 中空リング
6 クッション層
7 切り欠き部
8 切り欠き端部
9 外管
10 内管
11 ドレイン
12 環状溝
13 Oリング
14 空間
15 貫通孔
16 切り欠き部
17 隙間
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に化学工場において化学溶液や処理廃液などを搬送する二重管を保持するための二重管用の保持部材に関する。
さらに詳しくは、内管と外管を同心状に保持でき、ウォーターハンマーなど急激な力が二重管の配管に加わっても管が破損することなく、内管の破損箇所を容易に特定でき、破損による被害を最小限に止めることができる二重管用の保持部材である。
【背景技術】
【0002】
内管を外管内で保持する方法として従来では図10、図11に示すような搬送配管の構造があった。(例えば、特許文献1参照)。その構成は、実管101と鞘管102の二重構造とし、適宜箇所に中央部の透孔103に実管101が挿着されると共に、鞘管102の内周壁に周端面が当接するセンタリングスペーサ104を配置したものであり、このセンタリングスペーサ104の構成は、最下部となる鞘管102の底部と接する部分に切り欠き105を設けたセンタリングスペーサ104(図10参照)の場合と、複数設けられた垂下空間部106の間に実管101の継手部107を設け、継手部107の前後に鞘管102と実管101の空間を閉鎖して仕切る閉鎖用センタリングスペーサ108(図11参照)の場合があった。その効果は、安全性が高く、液漏れにも万全を期すことができ、保温効果、実管の保護と共に劣化防止等を兼ね備えたものであった。
【0003】
しかしながら、上記従来の搬送配管の構造のセンタリングスペーサ104の、切り欠き105を設けたセンタリングスペーサ104は、配管の適宜箇所に設けることができるが、例えば実管101から鞘管102に流体が流出した場合にセンタリングスペーサ104では流体の流れを堰き止めることはできない。複数の垂下空間部106が設けられたときに、流体はセンタリングスペーサ104を通過して各々の垂下空間部106に流れ込むため、実管101の破損を垂下空間106に流体が流れることで認識することはできても破損した場所を特定することができないという問題があった。また、流出した流体は鞘管102の底部が同じ高さより低い配管内に流れるため配管の構成によっては広範囲に広がり、実管101の流体を停止して破損した実管101の修理や流出した流体の処理を行う際の作業が非常に困難となる恐れがあるという問題があった。
【0004】
また、閉鎖用センタリングスペーサ108は、継手107とその付近の実管101は閉鎖用センタリングスペーサ108によって閉鎖した空間内にあるので実管101の破損などで流出した流体は鞘管102を流れて垂下空間106に流れ込むことができるが、閉鎖用センタリングスペーサ108によって閉鎖した空間に入れない部分、すなわち図11では継手部実管109とその付近の実管101が鞘管102内に配置されておらず、比較的流体漏れが発生し易い継手部実管109からの流体漏れや鞘管102内に配置されていない実管101の破損が発生すると、実管101の流体を停止ないかぎり配管の周辺に流出する流体を止めることができず、流出した流体による二次災害が起こる問題があった。また、閉鎖用センタリングスペーサ108は実管101と鞘管102に溶接によって密封状態に設置されているため、配管接続の作業に手間と時間がかかる問題や、垂下空間106を設けるごとに鞘管102が途切れるので長い距離の配管が困難であるという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開2004−108568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、内管と外管を同心状に保持でき、ウォーターハンマーなど急激な力が二重管の配管に加わっても管が破損することなく、内管の破損箇所を容易に特定でき、破損による被害を最小限に止めることができる二重管用の保持部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明によれば、 内管と外管とからなる二重管の内管と外管の間に配設され、外管を内管に対して略同心状に保持する二重管用の保持部材であって、
内周が前記内管の外径と略同径に形成され、外周が前記外管の内径より小径に形成された保持体と、
保持体の外周と外管の内周面との間に、周方向の全部または一部にわたって、配設されるシール材と、を含んでなる、
ことを特徴とする保持部材が提供される。
請求項2の発明によれば、前記シール材が、弾性を有する材料で形成されたシールリングとされている。
請求項3の発明によれば、前記シールリングが樹脂製の中空リングとされている。
請求項4の発明によれば、前記中空リングの内部にクッション層が設けられている。
請求項5の発明によれば、前記シールリングが、Oリングとされている。
請求項6の発明によれば、シール材は、シート状、または、テープ状にされた弾性を有する材料が保持部材に装着されてなる。
請求項7の発明によれば、シール材は、液状シール剤を保持部材に塗布してなる。
請求項8の発明によれば、前記シール材の内周に、切り欠き部が設けられ、該切り欠き部に前記保持体の外周部が装着される。
請求項9の発明によれば、前記保持体の外周面または側面に、前記シール材が、溶接、溶着または接着されている。
請求項10の発明によれば、前記保持体が前記内管に溶接、溶着または接着されている。
請求項11の発明によれば、前記保持部材が、保持部材の両側の領域を連通する連通手段を具備する。
請求項12の発明によれば、前記内管と外管が略水平方向に延伸するように配置されていて、前記連通手段が、垂直方向で内管よりも上方に配置されている。
請求項13の発明によれば、隣接する保持部材の間の位置において、保持部材が取り付けられる二重管の外管にドレインが付設されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明は以上のような構造をしており、以下の優れた効果が得られる。
(1)内管と外管を同心状に保持すると共に、ウォーターハンマー等により二重管の配管に力が加わって外管の内周の一方の方向に内管が移動するような力が急激に加わったとしてもシールリングがクッションの役割を果たすので外管と内管の破損を防止できる。
(2)保持部材で区切られた空間内で内管の破損や流体の漏れにより流出した流体を堰き止めることができ、流出した流体の処理や配管の修理作業などが容易に短時間で行うことができる。
(3)ドレインに連通した空間ごとに保持部材でシールした状態で区切ることができ、流体が流れ込んだドレインから内管が破損した大まかな位置を容易に特定することができる。
(4)保持部材に切り欠き部や貫通孔を設けると、内管の破損や流体の漏れにより流出した流体が空間内に貯まって空間内の空気が圧縮されることを防止し、外管の破損を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の第一の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明が本実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0010】
図において、1は保持体2とシールリング3から形成される保持部材である。保持体2はPVC製であり、円盤形状で内周に後記内管10の外径と略同径となる貫通孔4が設けられ、外周は後記外管9の内径より小径となるように設けられている。シールリング3は、軟質PVC製の中空リング5と、中空リング5の内部にロープ状のウレタン製のクッション材を挿入して設けられたクッション層6とから形成されている。シールリング3と保持体2は、中空リング5の内周に切り欠き部7が設けられ、この切り欠き部7を保持体2の外周部に装着させ、当接する中空リング5の切り欠き端部8と保持体2の側面とを溶接することにより固定されている(図1及び図8(a)参照)。
【0011】
9はPVC製の外管であり、10はPVC製の内管である。内管10は外管9の内部に収納されており、保持部材1が内管10の外周に嵌着されて溶接により固定され、シールリング3が外管9内周面の全体にシールされた状態で嵌挿されている。これにより内管10と外管9が同心状になるように保持される。
【0012】
11は外管9に任意の位置に設置されたドレインである。ドレイン11は、内管10外周と外管9内周の間と二つの保持部材1の間に形成された空間14に連通して設けられており(図2参照)、ドレイン11の下流側は配管接続により流体が外部へ流れるようになっている(図示せず)。
【0013】
シールリング3は、図6に示すような樹脂製の中空リング5である構成や、図7、図8に示すような中空リング5の内部にクッション層6を設けた構成や、図9に示すようなOリング13である構成のいずれかであることが望ましい。なお、保持体2の形状は、円盤状、円筒状、板状など、外管9内周面の全体または一部とシールされた状態で外管9に嵌挿でき、保持体2で流体を堰き止めることができるものであれば特に限定されない。
また、本実施形態ではシール材としてシールリング3を用いているが、シール材はシート状でもシールテープなどのテープ状でもよく、シリコーンタイプや溶剤タイプや無溶剤タイプなどの液状シール剤を塗布したものでもよい。
【0014】
シールリング3が樹脂製の中空リング5である場合(図6参照)、内部が空洞であるためにシールリング3の断面形状を大きく変形させることが可能であり、保持部材1を外管9の内周面に嵌挿する際にシールリング3が外管9の内周形状に合わせて変形してシールすることができるので、特に外管9が偏平するなどして真円度があまり良くない大口径の二重管等に対しても確実にシールすることができるので好適である。樹脂製の中空リング5の材質は、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと記す)、ポリビニリデンフルオロライド(以下、PVDFと記す)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(以下、PFAと記す)などのフッ素樹脂や、軟質塩化ビニル樹脂(以下、PVCと記す)などの軟質の樹脂などが好適なものとして挙げられる。なお、樹脂はゴムであっても良い。
【0015】
シールリング3が樹脂製の中空リング5の内部にクッション層6を設けた場合(図7、図8参照)、クッション層6により中空リング5の変形はクッション層6のない場合より抑えられため、必要以上シールリング3が変形しないように調節することができ、保持部材1を外管9の内周面に嵌挿した時にシール部分がクッション層6で押されてより強くシールすることができるので好適である。なお、クッション層6は図7に示すように中空リング5の内部全体に設けても良く、図8に示すように中空リング5とクッション層6の間に隙間17を設けても良い。また、クッション層6は必要に応じてシールリング3の全周に亘って設けても良く、一部に設けても良い。またクッション層6の形成方法も、中空リング5内部にクッション層6が充填されたものでも良く、小さなクッション材を中空リング5内部に詰めたものでも良く、ロープ状のクッション材を中空リング5内部に挿入したものでも良い。クッション層6の材質は、スポンジ、ウレタン、布、綿、発泡スチロール、発泡ポリエチレンなど特に限定されない。
【0016】
シールリング3がOリング13である場合(図9参照)、保持部材1の製作や二重管への設置作業が容易であり、特に外管9が偏平しにくい小口径の場合等に確実にシールが行えるので好適である。Oリング13の材質はゴムが望ましく、エチレンプロピレンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルフォン化ゴム、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴムなどが好適なものとして挙げられる。
【0017】
以上のようなシールリング3の構成は、外管9の口径や配管の構成に応じて選択して使用することで、確実なシールを行うことができ、内管10から外管9に流出する流体を保持部材1で確実に堰き止めることができる。
【0018】
また、保持体2の外周にシールリング3を固定する方法は、図6の(a)、図7の(a)、図8の(a)、図9の(a)に示すようなシールリング3の内周に切り欠き部7が設けられ、切り欠き部7を保持体2の外周部に装着させた構成でも良く、図6の(b)、図7の(b)、図8の(b)、図9の(b)に示すような保持体2の外周にシールリング3を嵌着した構成でも良く、図6の(c)、図7の(c)、図8の(c)、図9の(c)に示すような保持体2の外周に環状溝12を形成し、環状溝12にシールリング3を嵌合した構成でも良い。また、シールリング3と保持体2とは、保持体2の外周面または側面に溶接、溶着または接着により固定されることが望ましい。特に図6の(a)、図7の(a)、図8の(a)に示す中空リング5に設けられた切り欠き部7を保持体2の外周部に装着させた構成は、シールリング3と保持体2が外れにくく、シールリング3の固定位置を変更することで外管9内周面と適したシールを調整できるようにすることができるので好適である。
【0019】
本発明の保持部材1は保持体2と外管9内周面の全体をシールされた状態でも良いが、一部がシールされた状態でも良い。一部がシールされた状態とは、少なくとも内管10より下方に位置する部分がシールされたものである。この場合、図4(a)のような保持部材1の外周に少なくとも一つの切り欠き部16を設けたり、図4(b)のような側面に少なくとも一つの貫通孔15を設け、切り欠き部16または貫通孔15が内管10より上方に位置させることが望ましい。これは、図5に示すように空間14の上方に空気の流れる孔が形成されるため、内管10の破損や流体の漏れにより流体が空間14に流出する際に、例えば保持部材1で囲まれた空間14が密封されていると、空間14に流体が貯まることで空間14内の空気が圧縮されて外管9が破裂する恐れがあるが、切り欠き部16や貫通孔15で空気の流れる孔が形成されることで空気を逃がすことができ、外管9の破損を防止することができるので好適である。なお、切り欠き部16や貫通孔15は、内管10の上方に位置し空気を逃がす孔が形成されるのであれば形状、大きさ、個数は特に限定されない。
【0020】
また、保持部材1は内管10の外周に溶接、溶着または接着のいずれかの方法で固定されることが望ましい。これは、例えば二重管が流体温度や気温により伸縮した場合でも、保持部材1がずれることがなく確実に内管10と外管9を同心状に保持することができるので好適である。
【0021】
また、本発明の保持体2、内管10、外管9の材質は、PVC、ポリプロピレン、ポリエチレン、PVDF、ポリスチレン、ABS樹脂、PTFE、PFA、ポリクロロトリフルオロエチレンなどの樹脂、鉄、銅、銅合金、真鍮、アルミニウム、ステンレスなどの金属などいずれでも良い。また、透明または半透明の材質で形成されても良い。
【0022】
次に、第一の実施形態の作用を図2に基づいて説明する。
内管10のみに流体として塩酸を流す。内管10が破損したとき、塩酸が外管9すなわち内管10外周と外管9内周の間と二つの保持部材1の間に形成された空間14に流出するが、保持部材1はシールリング3により外管9の外周面とシールされているため、空間14内から塩酸が漏れることなく塩酸を保持部材1で堰き止めることで、流体が二重管の配管周辺や空間14以外の外管9に流出することがないため、二重管の配管の周辺に塩酸が流出して塩酸による二次被害が発生することが防止され、内管10の破損による被害を最小限に食い止めることができる。また空間14内に流出した塩酸はドレイン11から安全に外部へ流出させることができる。なお、本発明の二重管に流す流体は、化学溶液や処理廃液など管と継手の材質の耐薬品性が問題ないものであれば特に限定されない。また内管10と外管9は、保持部材1によって常に同心状に保持され、内管10と外管9が衝突することが防止されると共に、ウォーターハンマー等により内管10に対して外管9内周の一方の方向に急激な力が加わったとしてもシールリング3がクッションの役割を果たすので内管10と外管9の破損を防止できる。
【0023】
次に、本発明の第二の実施の形態の二重管の配管が長い場合について図3に基づいて説明する。第二の実施形態は、第一の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付して示す。
11a、11bは二重管の配管に任意の間隔をあけて複数設けられたドレインである。配管内に保持部材1a、1b、1cが任意の間隔をあけて設置され、ドレイン11aが内管10外周と外管9内周の間と保持部材1aと保持部材1bの間に形成された空間14aに連通し、ドレイン11bが内管10外周と外管9内周の間と保持部材1bと保持部材1cの間に形成された空間14bに連通している。これにより内管10と外管9で形成された空間は保持部材1a、1b、1cによって区切られ、区切られた各々の空間にドレイン11a、11bが設けられた構成となる。第二の実施形態の他の構成は、第一の実施形態と同様なので説明を省略する。
【0024】
次に、第二の実施形態の作用を図3に基づいて説明する。
内管10のみに流体として塩酸を流す。内管10のXの場所が破損した場合、内管10から流出した塩酸は空間14aの外管9底部を流れてドレイン11aに流れ込み、ドレイン11aに塩酸が流れ込んだことで空間14a内で内管10の破損や流体の漏れが発生したことを感知することができる。このときXの場所から流出した塩酸は外管9底部を流れて空間14b側にも流れようとするが、保持部材1bが外管9外周面とシールされているため保持部材1bで塩酸が堰き止められ、空間14a内で内管9から流出した塩酸は全てドレイン11aに流れ込む。また、内管10のYの場所が破損した場合、内管10から流出した塩酸は空間14bの外管9底部を流れてドレイン11bに流れ込み、ドレイン11bに塩酸が流れ込んだことで空間14b内で内管10の破損や流体の漏れが発生したことを感知することができる。このときYの場所から流出した塩酸は外管9底部を流れて空間14a側にも流れようとするが、保持部材1bが外管9外周面とシールされているため保持部材1bで塩酸が堰き止められ、空間14b内で内管10から流出した塩酸は全てドレイン11bに流れ込む。
【0025】
以上のことから、複数のドレイン11a、11b間を本発明の保持部材1a、1b、1cで区切ることにより、内管10の破損や流体の漏れが発生した場合、流出した流体は破損や漏れが発生した箇所が該当する空間14a、14bに連通するドレイン11a、11bにのみ流れ込むことで、流体の流れ込んだドレイン11a、11bに連通する空間14a、14b内のどこかで破損や漏れが発生したことを認識できるため、二重管の配管において内管10に破損や漏れが発生した箇所の大まかな位置を容易に特定することができる。また、保持部材1a、1b、1cで区切られた空間14a、14b以外の配管内に内管10から流出した流体が流れることを防止するので、流体が広がる範囲は最小限となり、内管10に破損や漏れが発生した後の流出した流体の処理や配管の修理作業などが容易に且つ短時間で行うことができる。
【0026】
次に、本発明の第三の実施形態について図4(b)、図5に基づいて説明する。第三の実施形態は、第一の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付して示す。
図4(b)において示されるように、保持部材1の保持体2の上部には、保持体2側面を貫通する貫通孔15が設けられている。また、第三の実施形態の保持部材1は図5に示すように設置され、貫通孔15が垂直方向において上方に位置するように設けられている。第三の実施形態の他の構成は、第一の実施形態と同様なので説明を省略する。
【0027】
次に、第三の実施形態の作用を図5に基づいて説明する。
内管10のみに流体として塩酸を流す。内管10の空間14内に位置する場所が破損した場合、内管10から流出した塩酸は空間14の外管9底部を流れてドレインに流れ込む。このとき、内管10から一度に大量の塩酸が流出したりドレイン11内の流体の流れが悪いときなど、ドレイン11からすぐに塩酸を外部へ流出できずに空間14内に貯まることがある。空間14内に塩酸が貯まって水位が上昇するのに伴い、空間14内の空気は貫通孔15から隣の空間に逃げるので、空間14内で空気が圧縮されて外管9が破壊することが防止される。第三の実施形態の他の作用は、第一の実施形態と同様なので説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第一の実施形態の保持部材を示す一部切り抜き斜視図である。
【図2】図1の保持部材を二重管に設置された状態を示す縦断面図である。
【図3】二重管に一定間隔でドレインを設けた状態において内管が破損した場合の本発明の第二の実施形態を示す模式図である。
【図4】本発明の第三の実施形態の保持部材を示す正面図である。
【図5】図4の保持部材を二重管に設置された状態で内管が破損した場合を示すを示す縦断面図である。
【図6】保持部材のシールリングが中空リングである場合のバリエーションを示す要部拡大縦断面図である。
【図7】保持部材のシールリングが中空リングの内部にクッション層を設けた構成である場合のバリエーションを示す要部拡大縦断面図である。
【図8】保持部材のシールリングが中空リングの内部にクッション層を設けた構成である場合の他のバリエーションを示す要部拡大縦断面図である。
【図9】保持部材のシールリングがOリングである場合のバリエーションを示す要部拡大縦断面図である。
【図10】従来の搬送配管を示す縦断面図である。
【図11】従来の搬送配管のセンタリングスペーサの他の実施例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 保持部材
2 保持体
3 シールリング
4 貫通孔
5 中空リング
6 クッション層
7 切り欠き部
8 切り欠き端部
9 外管
10 内管
11 ドレイン
12 環状溝
13 Oリング
14 空間
15 貫通孔
16 切り欠き部
17 隙間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内管と外管とからなる二重管の内管と外管の間に配設され、外管を内管に対して略同心状に保持する二重管用の保持部材であって、
内周が前記内管の外径と略同径に形成され、外周が前記外管の内径より小径に形成された保持体と、
保持体の外周と外管の内周面との間に、周方向の全部または一部にわたって、配設されるシール材と、を含んでなる、
ことを特徴とする保持部材。
【請求項2】
前記シール材が、弾性を有する材料で形成されたシールリングである、ことを特徴とする請求項1記載の保持部材。
【請求項3】
前記シールリングが樹脂製の中空リングである、ことを特徴とする請求項2記載の保持部材。
【請求項4】
前記中空リングの内部にクッション層が設けられている、ことを特徴とする請求項3記載の保持部材。
【請求項5】
前記シールリングが、Oリングであることを特徴とする請求項2記載の保持部材。
【請求項6】
シール材は、シート状、または、テープ状にされた弾性を有する材料が保持部材に装着されてなる、ことを特徴とする請求項1に記載の保持部材。
【請求項7】
シール材は、液状シール剤を保持部材に塗布してなる、ことを特徴とする請求項1に記載の保持部材。
【請求項8】
前記シール材の内周に、切り欠き部が設けられ、該切り欠き部に前記保持体の外周部が装着される、ことを特徴とする請求項1に記載の保持部材。
【請求項9】
前記保持体の外周面または側面に、前記シール材が、溶接、溶着または接着されている、ことを特徴とする請求項1に記載の保持部材。
【請求項10】
前記保持体が前記内管に溶接、溶着または接着されている、ことを特徴とする請求項1に記載の保持部材。
【請求項11】
前記保持部材が、保持部材の両側の領域を連通する連通手段を具備する、ことを特徴とする請求項1に記載の保持部材。
【請求項12】
前記内管と外管が略水平方向に延伸するように配置されていて、前記連通手段が、垂直方向で内管よりも上方に配置される、ことを特徴とする請求項9に記載の保持部材。
【請求項13】
隣接する保持部材の間の位置において、保持部材が取り付けられる二重管の外管にドレインが付設されている、ことを特徴とする請求項1に記載の保持部材。
【請求項1】
内管と外管とからなる二重管の内管と外管の間に配設され、外管を内管に対して略同心状に保持する二重管用の保持部材であって、
内周が前記内管の外径と略同径に形成され、外周が前記外管の内径より小径に形成された保持体と、
保持体の外周と外管の内周面との間に、周方向の全部または一部にわたって、配設されるシール材と、を含んでなる、
ことを特徴とする保持部材。
【請求項2】
前記シール材が、弾性を有する材料で形成されたシールリングである、ことを特徴とする請求項1記載の保持部材。
【請求項3】
前記シールリングが樹脂製の中空リングである、ことを特徴とする請求項2記載の保持部材。
【請求項4】
前記中空リングの内部にクッション層が設けられている、ことを特徴とする請求項3記載の保持部材。
【請求項5】
前記シールリングが、Oリングであることを特徴とする請求項2記載の保持部材。
【請求項6】
シール材は、シート状、または、テープ状にされた弾性を有する材料が保持部材に装着されてなる、ことを特徴とする請求項1に記載の保持部材。
【請求項7】
シール材は、液状シール剤を保持部材に塗布してなる、ことを特徴とする請求項1に記載の保持部材。
【請求項8】
前記シール材の内周に、切り欠き部が設けられ、該切り欠き部に前記保持体の外周部が装着される、ことを特徴とする請求項1に記載の保持部材。
【請求項9】
前記保持体の外周面または側面に、前記シール材が、溶接、溶着または接着されている、ことを特徴とする請求項1に記載の保持部材。
【請求項10】
前記保持体が前記内管に溶接、溶着または接着されている、ことを特徴とする請求項1に記載の保持部材。
【請求項11】
前記保持部材が、保持部材の両側の領域を連通する連通手段を具備する、ことを特徴とする請求項1に記載の保持部材。
【請求項12】
前記内管と外管が略水平方向に延伸するように配置されていて、前記連通手段が、垂直方向で内管よりも上方に配置される、ことを特徴とする請求項9に記載の保持部材。
【請求項13】
隣接する保持部材の間の位置において、保持部材が取り付けられる二重管の外管にドレインが付設されている、ことを特徴とする請求項1に記載の保持部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−292239(P2007−292239A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122329(P2006−122329)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(000117102)旭有機材工業株式会社 (235)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(000117102)旭有機材工業株式会社 (235)
【Fターム(参考)】
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