説明

二重袋包装体用インフレーションフィルムおよび二重袋包装体

【課題】ユーザーが包装体を手で容易に開封できると共に、内容物の充填時や輸送中の落下などの衝撃に対しても破袋しない二重袋包装体を提供する。
【解決手段】イージーピール性を有する外層、ポリアミド樹脂からなる中間層、および、低密度ポリエチレン樹脂からなる内層を備えて構成される二重袋包装体用インフレーションフィルムにおいて、イージーピール性を有する外層を、凝集力が0.98N/15mm幅〜19.6N/15mm幅のイージーピール強度を有し、厚みが3μm〜15μmの層とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重袋包装体用インフレーションフィルム、および該フィルムにより形成した二重袋包装体に関する。詳細には、例えば、80℃以上に加熱した、たれ、練り餡、チョコクリーム、ジャム、マーガリン、加工油脂等を熱間充填できるイージーピール性(易開封性)を有する二重包装体を形成するための、二重袋包装体用インフレーションフィルム、および該フィルムにより形成した二重袋包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食酢、清酒、醤油、ソース、たれ、スープ、つゆ、各種飲料、マーガリン、調味料、練り餡、チョコレート等の液状物や粘稠体食品を充填する包装容器として、金属缶やガラス瓶等の容器が使用されていた。しかし、最近、環境問題から、包装容器を減容化すること、易廃棄性なものとすることが求められている。これら要求に対応すべく、液状物等の包装容器として、プラスチックフィルムからなる包装体が使用されるようになってきている。
【0003】
プラスチックフィルムは、金属缶やガラス瓶と比べて、軽量であり、流通経費、廃棄コストを削減できる点で優れている。液状物や粘稠体食品を充填する包装容器としては、保管や輸送において内容物が漏れないことが絶対条件である。しかし、プラスチックフィルムは、金属缶やガラス瓶等の容器に比べて厚みが薄く、耐久性に乏しいため、輸送中の振動や衝撃、摩擦によってピンホールが発生したり破袋したりして、内容物が漏れ出す可能性があるという本質的な問題を抱えていた。
【0004】
このような問題を解決するため、プラスチックフィルムからなる包装体としては、一般的にはフィルムを2枚重ねにした二重袋包装体が汎用されていた(例えば、特許文献1〜5)。
【0005】
かかる2枚重ねの二重袋包装体によれば、内部に被収容物を収容している場合にも、2枚のフィルム間に一定の自由度が存在する。従って、輸送中に、二重袋包装体に衝撃が加えられても、被収容物を支えている内部側のフィルムと、パレット、あるいは他の包装体と接して二重袋包装体を支えている外部側のフィルムとの間で、一定の滑りが生じて、該衝撃の吸収を行い、ピンホールの発生や、破袋が生じるのを防止することができる。
【特許文献1】特開2003−305783号公報
【特許文献2】特開2003−335302号公報
【特許文献3】特開2003−26234号公報
【特許文献4】特開2002−234547号公報
【特許文献5】特開2007−15725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示されているように延伸フィルムを有する積層フィルムを使用すると、フィルムが硬いため、二重包装体の開封時に内容物を絞り出しにくく、内容物が残り作業適性が悪化するという問題があった。また、内容物が残ると、廃棄するまでの間に、残存した内容物による腐敗臭が発生したり、菌が繁殖したりするという問題があった。
【0007】
また、二重袋包装体の内層を構成する樹脂材料として、例えば、特許文献3に開示されているように、比較的低密度の低密度ポリエチレン(以下において、「LDPE」という場合がある。)を用いた場合には、製袋時には、ヒートシールが容易であるという優れた一面を有する一方で、二重袋包装体の内部に80℃以上に加温された食品等を直接収容するような場合、内層同士のブロッキングが生じて、輸送中の振動や衝撃、摩擦によって破袋しやすくなってしまうという問題があった。また、充填される内容物の熱とその重さによってフィルムが伸びて連続生産時にピッチ管理しづらいという問題があった。
【0008】
上記ブロッキングの問題を解決するものとして、特許文献5に、二重袋包装体の内層を構成する樹脂材料としてLDPEを使用し、このLDPEのビカット軟化点と密度とを所定の範囲に設定することで二重袋包装体の内部に80℃以上に加温された食品等を直接収容しても、内層同士のブロッキングが生じにくく、耐ピンホール性に優れ、食品等を熱間充填しても伸びにくいフィルムが記載されている。
【0009】
包装体は、内容物を容易に取り出すことができるように、イージーピール性を備えていることが好まれる。しかし、特許文献5に記載のフィルムは、完全シールにより二重袋包装体を形成するものであり、該包装体から内容物を取り出すには、カッターあるいははさみを使用して包装体を開封する必要があった。このため、食品を使用する現場における作業性が悪いという問題があった。また、カッター等を用いて開封するため、開封した切片がゴミとなりゴミが増える、該切片が内容物中に混入する、といった問題もあった。
【0010】
そこで、本発明はこれら問題を解決すべく、ユーザーが包装体を手で容易に開封できると共に、内容物の充填時や輸送中の落下などの衝撃に対しても破袋しない二重袋包装体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、これにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0012】
第1の本発明は、イージーピール性を有する外層、ポリアミド樹脂からなる中間層、および、低密度ポリエチレン樹脂からなる内層を備えて構成される二重袋包装体用インフレーションフィルムであって、イージーピール性を有する外層が、凝集力が0.98N/15mm幅以上19.6N/15mm幅以下のイージーピール強度を有し、厚みが3μm以上15μm以下である、二重袋包装体用インフレーションフィルムである。
【0013】
第1の本発明のインフレーションフィルムは、所定の層厚および所定の凝集力を備えたイージーピール性を有する外層を備えている、これにより、本発明のインフレーションフィルムを用いて作製した二重包装体に良好なイージーピール性を付与できる。包装体には、内容物の漏れを防ぐための密封性が必要である。また、本発明においては、さらに包装体の使用における作業性向上のためイージーピール性を付与している。本発明では、所定の層厚および所定の凝集力を備えたイージーピール性を有する外層により、二重袋包装体における密封性とイージーピール性のバランスを図っているのである。なお、本発明におけるイージーピール性とは、凝集破壊によるものであり、二重包装体を開封する際に、イージーピール層自体が破壊されて剥離し、イージーピール層が剥離面の両側に残るものである。
【0014】
また、第1の本発明のインフレーションフィルムは、ポリアミド樹脂からなる中間層を備えていることにより、耐ピンホール性が付与されている。また、低密度ポリエチレン樹脂からなる内層を備えていることにより、包装体作製時のヒートシール性が良好となる。
【0015】
第1の本発明において、イージーピール性を有する外層(以下、「イージーピール層」という場合がある。)は、該外層全体の質量を100質量%として、以下で示される50質量%以上90質量%以下の樹脂組成物Aと10質量%以上50質量%以下の樹脂組成物Bを備えて構成されていることが好ましい。
樹脂組成物A:主成分が、ビカット軟化点90℃以下の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、融点100℃以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、融点100℃以下のエチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、融点100℃以下のエチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、融点100℃以下のエチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、融点100℃以下のエチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、融点100℃以下のエチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)およびこれらのアイオノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種である樹脂組成物、
樹脂組成物B:主成分がポリプロピレン(PP)またはポリブチレン(PB)である樹脂組成物。樹脂組成物Aおよび樹脂組成物Bにおける「主成分」とは、これら樹脂組成物全体の質量を基準(100質量%)として、それぞれ上記列挙した樹脂を好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上含有していることをいい、外層が備えるべき効果を損なわない限り、上記列挙した樹脂以外に各種添加剤や、汎用樹脂成分の混入を許容する趣旨である。
【0016】
このような所定割合で樹脂組成物Aおよび樹脂組成物Bを含むイージーピール層を用いることで、イージーピール層の凝集力を上記した範囲に調整することが容易となり、イージーピール性を良好なものとすることができる。また、従来、二重包装体作製時においてカット長が異なる場合があり、シール工程で複数回にわたりシーラーによるプレスが必要となる場合があり、複数回プレスされる個所と1回のみプレスされる個所でイージーピール強度が異なるということがあったが、上記のイージーピール層を用いることで、複数回のシーラーによるプレスが加わっても安定したイージーピール強度で良好な開封性が得られる。また、このような観点から、樹脂組成物Aの主成分としては、ビカット軟化点90℃以下の直鎖状低密度ポリエチレン(以下、「LLDPE」という場合がある。)を用いることが特に好ましい。
【0017】
第1の本発明において、内層を構成する低密度ポリエチレン樹脂は、ビカット軟化点が110℃以上125℃以下であることが好ましく、密度が0.930g/cmを超え0.940g/cm以下であることが好ましい。ここで、「ビカット軟化点」とは、JIS K7206(1999)[プラスチック−熱可塑性プラスチック−ビカット軟化温度(VST)試験方法]に規定される方法により測定されたビカット軟化点をさす。このような低密度ポリエチレン樹脂からなる内層を用いることで、良好なヒートシール性を確保しつつ、二重袋包装体を形成した状態で80℃〜100℃の被収容物を熱間充填した際における、内層同士のブロッキングを防ぐことができる。そして、ブロッキングを防止することにより、輸送時や在庫保管時等の、商品の流通段階において、ピンホール、破袋の発生しにくい二重袋包装体とすることができる。また、食品等を熱間充填できるので、充填後に改めて殺菌処理することが不要になるという利点がある。
【0018】
また、内層の低密度ポリエチレン樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)であることが好ましい。LLDPEは、引張強度、伸び、耐ピンホール強度、剛性等の物性強度が強いという特徴がある。
【0019】
第1の本発明において、中間層の厚みの範囲は5μm以上30μm以下である。中間層の厚みをこのような範囲とすることで、形成する二重袋包装体に、良好な耐ピンホール性を付与できると共に、良好なスクイズ性(被収容物の絞り出し易さ)を付与できる。
【0020】
第1の本発明において、内層は、スリップ剤および/またはアンチブロッキング剤を含有していることが好ましい。これにより、内層同士のブロッキングをより有効に防止できる。
【0021】
第1の本発明において、中間層と外層および/または内層との間に、少なくとも1層の接着樹脂層を有していてもよい。これにより、各層間の接着強度をより高めることができる。
【0022】
第1の本発明において、中間層と外層および/または内層との間に、少なくとも1層のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物樹脂層(以下、「EVOH層」と省略する場合がある。)を有していてもよい。これにより、インフレーションフィルムにガス(酸素)バリア性を付与できる。
【0023】
第2の本発明は、第1の本発明のインフレーションフィルムにより製袋したイージーピール性を有する二重袋包装体である。本発明の二重袋包装体は、良好なイージーピール性を有しているので、カッターやはさみを使用して包装体を切り裂く必要がなく、手で容易に開封することができる。よって、包装体を切り裂いた際に生じる切り片が、内容物中に混入するといった問題が生じない。また、所定のイージーピール強度を備えたものであるので、内容物を充填した二重袋包装体を落下させる等により、二重袋包装体に衝撃が加わった場合においても、破袋することがない。
【発明の効果】
【0024】
第1の本発明のインフレーションフィルムは、所定の層厚および所定の凝集力を備えたイージーピール性を有する外層を備えている。これにより、本発明のインフレーションフィルムを用いて作製した二重包装体に良好なイージーピール性を付与できる。包装体には、内容物の漏れを防ぐための密封性が必要である。また、本発明においては、さらに包装体の使用における作業性向上のためイージーピール性を付与している。本発明では、所定の層厚および所定の凝集力を備えたイージーピール性を有する外層により、二重袋包装体における密封性とイージーピール性のバランスを図っているのである。なお、本発明におけるイージーピール性とは、凝集破壊によるものであり、二重包装体を開封する際に、イージーピール層自体が破壊されて剥離し、イージーピール層が剥離面の両側に残るものである。
【0025】
また、第1の本発明のインフレーションフィルムは、ポリアミド樹脂からなる中間層を備えていることにより、耐ピンホール性が付与されている。また、低密度ポリエチレン樹脂からなる内層を備えていることにより、包装体作製時のヒートシール性が良好となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0027】
(インフレーションフィルムの製造方法)
図1に本発明の二重袋包装体用インフレーションフィルムの製造プロセスを示す概略図を示した。図示した例では、まず、3種類以上の樹脂を押出機により所定温度まで加熱溶融させ、昇圧する。そして、円筒形金型11の内部に空気を吹き込み、金型11の隙間から外層、中間層および内層で構成されるチューブ状のフィルム10を吐き出させる。チューブ状フィルム10はロール12、13等で構成される折り畳み手段により平板状フィルム10´に折り畳まれ、その後巻き取り機14によりロール状に巻き取られる。このようにして、本発明のインフレーションフィルムは製造される。ロール上に巻き取られたフィルムは、二重袋包装体を作製する際の原反15となる。
【0028】
図2(A)は、図1におけるIIA−IIA線に沿って切断したチューブ状フィルム10の断面図であり、図2(B)は図1におけるIIB‐IIB線に沿って切断した平板状フィルム10´の断面図である。いずれにおいてもフィルム10、10´は、円筒形状中心側から外側に向けて順に、内層21、中間層22、外層23を備え、それらの内部に空間24が存在する。平板状フィルム10´においては、空間24は押しつぶされて、空気層24となっている。
【0029】
(二重袋包装体の製造方法)
図3および図4に二重袋包装体の製造方法の一例を示した。図3は原反15を巻き出して、所定長にカットする工程を概略的に示す図である。カットされた単葉30a、30b、30c・・・それぞれが以下に説明する、折り畳み、ヒートシール工程を経て、二重袋包装体とされる。なお、図3、および図4では、平板状フィルム10´の内層21、中層22、外層23の3層は一層に省略して表されている。
【0030】
図4は、単葉30a等から二重袋包装体を作製する工程を概略的に示す図である。まず、単葉30aは、(A)に図示される一点鎖線の位置に折り目41〜44が形成された折目つき単葉40aとされる。該折り目つき単葉40aは、まず、左右の両端が折り目41、42により中央側に折り畳まれる。また下端部が折り目43に沿って上方側に折り返される。これらの折り返しにより、単葉40a左右の重複部分45、および下端部が折り返されて重複する部分46がヒートシールされる。図4(B)に表されるこの中間品40bは、上部に開口47を有する容器として観念されるものである。この開口47から、被収容物を中間品40bの内部に収容し、上部開口47を折り目44に沿って下方に折り返し、該折り返しにより生じた重複部48をヒートシールして、収容物入りの二重袋包装体40cが完成し、在庫、流通に供されることが可能な状態となる。
【0031】
図5は、図4のP−P線に沿って、紙面手前側から奥方向に表した断面図である。図5の上方が図4の紙面手前側、図5の下方が図4の紙面奥側にあたる。図5にあるように、被収容物50をはさんで上下にそれぞれ2枚のフィルム30、30が配置されており、それぞれ互いの内層21、21が対向するように配置されている。すなわち貫通方向に沿って、全体で4枚のフィルム(12層)が存在し、これにより二重袋包装体40cが構成されている。なお、二つの内層21、21間に表されている空気層24は図ではその厚さが誇張して表されている。実際の空気層24は、二つの内層21、21が密着しない程度の空隙である。
【0032】
<二重袋包装体用インフレーションフィルム>
本発明の二重袋包装体用インフレーションフィルムは、イージーピール性を有する外層、ポリアミド樹脂からなる中間層、および低密度ポリエチレン樹脂からなる内層を備えて構成されている。なお、ここでの外層、中間層、および内層は、図2のチューブ状フィルムにおける外層23、中間層22、および内層21にそれぞれ相当する。以下、各層について説明する。
【0033】
(内層)
本発明において、内層はLDPEから構成されており、これにより、二重袋包装体を製造する際に、ヒートシールにより接着させることができる。また、内層を構成するLDPEは、所定のビカット軟化点および密度を備えていることが好ましい。LDPEのビカット軟化点は、下限が110℃以上、好ましくは115℃以上、さらに好ましくは120℃以上であり、上限が125℃以下、好ましくは124℃以下である。また、密度は、下限が0.930g/cm超え、好ましくは0.935g/cm以上、さらに好ましくは0.937g/cm以上であり、上限が0.940g/cm以下である。
【0034】
このようなLDPEを使用することにより、良好なヒートシール性を確保しつつ、熱間充填時のチューブフィルムの内層ブロッキングを防ぐことができる。例えば、二重袋を形成した状態で、80℃以上100℃以下の被収容物を熱間充填した際に、該内層同士がブロッキングするのを防ぐことができる。ここで本発明でいうブロッキングとは、内層同士が融着してしまうことをいう。内層同士が融着してしまうと、二重袋の利点である2枚のフィルムの自由度が阻害され、衝撃が吸収できず、ピンホールの発生、破袋が生じてしまう問題が発生する。
【0035】
ビカット軟化点が110℃以上のLDPEの場合、ビカット軟化点が上昇すると、密度も次第に上昇する。例えば、ビカット軟化点が120℃以上のLDPEの場合、密度は0.940g/cmに近いものとなるため、二重袋包装体の製袋時において、食品等を熱間充填しても内層同士のブロッキングが発生しにくく、熱によるフィルムの伸びを最小限に抑えることができる。
【0036】
また、内層を構成するLDPEは、LLDPEであることが好ましく、また、LLDPEとしては、エチレンと炭素数6のヘキセン−1または炭素数8のオクテン−1との共重合体が好ましい。LLDPEはLDPEより引張強度、伸び、耐ピンホール強度、剛性等の物性強度が強い。また、上記のように共重合体の炭素数が増えると、物性強度も比例して強くなる。
【0037】
内層の厚みは、下限が10μm以上、好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上であり、上限が50μm以下、好ましくは40μm以下、さらに好ましくは35μm以下である。内層の厚みを10μm以上にすることにより、耐ピンホール性と耐熱性を維持できる。一方、内層の厚みを50μm以下にすることにより、該フィルムにより形成した二重袋包装体に適度なスクイズ性が与えられ、内容物を絞り出す作業が良好となる。
【0038】
(中間層)
本発明において中間層は、ポリアミド樹脂により構成されている。ポリアミド樹脂の種類は特に限定されないが、耐ピンホール性の観点から、ポリアミド系合成繊維系樹脂としては、例えば、6ナイロン、66ナイロン、69ナイロン、6−66ナイロン、12ナイロン、11ナイロン、610ナイロン、612ナイロン、6I−6Tナイロン、MXD6ナイロン等の重合体またはこれら2種以上を重合単位として含む共重合体、さらにはこれら重合体の混合物を用いることが好ましい。これらの中でも6ナイロンや6−66ナイロンを用いることが、インフレーション法において押出し成形性、製膜安定性に優れており、コストが安価で安定入手可能である等の点から特に好ましい。
【0039】
中間層の厚みは、下限が5μm以上、好ましくは7μm以上、さらに好ましくは10μm以上であり、上限が30μm以下、好ましくは25μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。ポリアミド樹脂により形成された中間層の厚みの下限値を5μmとすることにより、良好な耐ピンホール性が得られ、伸びにくいフィルムとなる。また上限値を30μmとすることにより該フィルムにより形成した二重袋包装体に適度なスクイズ性を付与できる。
【0040】
(外層(イージーピール層))
本発明において、外層は、所定の凝集力および層厚を備えたイージーピール性を有する層である。
【0041】
外層の凝集力は、0.98N/15mm幅以上、19.6N/15mm幅以下とする必要がある。凝集力が0.98N/15mm未満ではシール後、輸送などの取扱い時に開封してしまうという問題があり、19.6N/15mmを超えると開封部分に毛羽立ちが発生したり、開封が不完全で膜残りが発生し開封しづらくなるという問題がある。
【0042】
凝集力の測定方法は、上記複合フィルムの最外層同士をヒートシール(シール温度:140℃)し、該ヒートシールした部分を引張速度200mm/分で、180゜剥離したときの剥離強度を測定することにより行った。
【0043】
イ−ジーピール層を構成する樹脂は、所定の温度・圧力・時間でヒートシール可能であり、かつ安定した凝集破壊性を有する樹脂であれば特に限定されない。イージーピール層は、例えば、以下に説明する樹脂組成物Aと樹脂組成物Bとを所定割合で混合して構成することができる。
【0044】
上記樹脂組成物Aとしては、主成分が、ビカット軟化点90℃以下の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、融点100℃以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、融点100℃以下のエチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、融点100℃以下のエチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、融点100℃以下のエチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、融点100℃以下のエチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、融点100℃以下のエチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)およびこれらのアイオノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂組成物を用いることができる。中でも、ビカット軟化点90℃以下の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を好適に用いることができる。
【0045】
また、上記樹脂組成物Bとしては、主成分がポリプロピレン(PP)またはポリブチレン(PB)である樹脂組成物を用いることができる。樹脂組成物Bの主成分を構成するPPは、ランダムコポリマー、ホモポリマー、ブロックコポリマー等のいずれも使用でき、中でもランダムコポリマーを好適に用いることができる。コポリマーの共重合成分としては、エチレン等のプロピレン以外のαオレフィンが挙げられる。
【0046】
樹脂組成物Aの含有率は、シール性および開封性の観点から、イージーピール層全体の質量を基準(100質量%)として、下限が50質量%以上、好ましくは60質量%以上であり、上限が90質量%以下、好ましくは80質量%である。同様の観点から、樹脂組成物Bの含有率は、下限が10質量%以上、好ましくは20質量%以上であり、上限が、50質量%以下、好ましくは40質量%以下である。樹脂組成物Aの含有率を50質量%以上(すなわち、樹脂組成物Bの含有率を50質量%以下)にすることにより、良好なヒートシール性を維持することができる。一方、樹脂組成物Aの含有率を90質量%以下(すなわち、樹脂Bの含有率を10質量%以上)とすることにより、適度なイージーピール強度が得られ、良好な開封性が得られる。樹脂組成物Aの含有率が高くなり過ぎると、イージーピール強度が強くなり過ぎ開封しにくくなる。また、樹脂組成物Aの含有率が低くなり過ぎると、イージーピール強度が弱くなり過ぎ耐破袋性の点で問題となる。
【0047】
外層の厚みは、下限が3μm以上、好ましくは5μm以上であり、上限が15μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下である。外層の厚みが薄すぎると、イージーピールの安定性が劣り、また製膜しづらいという問題がある。また、外層の厚みが厚すぎると、開封時に毛羽だちが発生したり、膜残りが発生したりして開封しづらいという問題がある。
【0048】
本発明のインフレーションフィルムを用いた、二重袋包装体の製造方法について、図3および図4を用いて説明したが、形成した包装体は、縦シール部および横シール部共に、シール部はすべてイージーピール性を備えている。よって、図4(C)の図面上部側のシール部48のみを開封して内容物を取り出してもよいし、該シール部48と共に、縦シール部45も開封して、開口部を拡大させてもよい。さらには、すべてのシール部分48、45、46を開封してもよく、この場合は、図4(A)に示した元の状態40aとなる。
【0049】
本発明の二重袋包装体は、主に内容物を大量に含む業務用の包装体として使用されることが多い。例えば、業務用のチョコレートクリームを含む包装体の場合、まず、上部シール部48を開封して、ここから大部分のチョコレートクリームをトレイに取り出す。その後、包装体を絞って、残った内容物をできるだけ取り出すが、包装体が大きい分、依然としてある程度の量の内容物が包装体中に残ってしまう。残ったチョコレートクリームは、使用せずに廃棄されてしまった場合、該チョコレートクリームが無駄になるだけなく、生ゴミと資源ごみとの分別の問題、分別しなかった場合は、チョコレートクリームが腐敗して臭いが生じる、細菌が生じる等の衛生上の問題が生じる。
【0050】
本発明の二重袋包装体においては、上記したように、包装体を全面開封して、元のシート状に戻すことができる。よって、残存したチョコクリームをヘラ等により綺麗にふき取って利用することができる。このように、本発明の二重袋包装体においては、内容物を最大限に有効利用することができるだけでなく、ゴミ分別および衛生上の問題をも解決することができる。
【0051】
また、本発明の凝集破壊性のイージーピール層は、開封した際に、シール部分にシールマークが残るようになっている。該シールマークは、製品が確実に密封されていたことを示す証となり、内容物の使用者に安心感を与えることができるという効果がある。
【0052】
(スリップ剤)
内層または/および外層には、滑り性を付与する目的でスリップ剤を添加することができる。スリップ剤としては、滑り性を付与することができれば特に限定されないが、炭化水素系滑剤、脂肪酸系高級アルコール系滑剤、アミド系滑剤、エステル系滑材、金属せっけん系滑剤等が挙げられる。
【0053】
ポリエチレンのスリップ剤として代表的なアミド系滑剤としては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドがある。アミド系滑剤の添加量は各層を構成する樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上0.5質量部以下が一般的であり、この添加量で内層同士のブロッキングを改良、防止することができる。金属せっけん系滑剤としては、ステアリン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。金属せっけん系滑剤の添加量は、各層を構成する樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、かつ10質量部以下、好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。
【0054】
(アンチブロッキング剤)
内層および/または外層には、アンチブロッキング性を付与する目的でアンチブロッキング剤を添加することができる。アンチブロッキング剤としては、アンチブロッキング性を付与することができれば特に限定されないが、無機系のものでは、タルク、ゼオライト等が挙げられる。タルクは潤滑性に富み油脂感のある白色粉末でその表面は親油性・疎水性である。ゼオライトは、アルカリおよびアルカリ土類金属の含水アルミノ珪酸塩であり、粘着性を防止することができる。アンチブロッキング剤は、樹脂層表面に微細な凹凸を形成して、隣接する二層が密着するのを抑制することによりブロッキングを防止する機能を発揮するものと思われる。アンチブロッキング剤の添加量は各層を構成する樹脂100質量部に対して0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、かつ10質量部以下、好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。
【0055】
上記のスリップ剤、アンチブロッキング剤の添加により、インフレーションフィルムにおいて内層同士がブロッキングするのを防ぎ、また、二重袋包装体の作成工程において、外層と包装機との滑りを良くすることができる。
【0056】
(接着樹脂層)
また、中間層と外層および/または内層との間には、少なくとも1層の接着樹脂層を設けることができる。接着樹脂層で使用される接着樹脂は、外層、中間層、および内層を必要な強度に接着することができれば特に限定されないが、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂を好適に用いることができる。不飽和カルボン酸およびその誘導体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸およびその誘導体等が挙げられる。不飽和カルボン酸の誘導体としては、不飽和カルボン酸のエステルや無水物を挙げることができ、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、酢酸ビニル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸ナトリウム等が挙げられる。
【0057】
市販の接着樹脂としては、例えば、三井化学社製、商品名アドマーが挙げられ、本発明において好適に使用することができる。
【0058】
接着樹脂層の厚みは、下限が5μm以上、好ましくは10μm以上であり、上限が20μm以下、好ましくは15μm以下である。接着樹脂層の厚みが薄すぎると、十分な層間接着力を得ることができない。一方、接着樹脂層の厚みが厚すぎると、原料コストがかかり、透明性が悪くなり好ましくない。
【0059】
(EVOH層)
中間層と外層および/または内層との間には、酸素バリア性を付与する目的で、少なくとも1層のEVOH層を設けることができる。EVOH層で用いられるEVOHのエチレン含有率は特に限定されるものではないが、製膜安定性の観点から、下限が好ましくは32モル%以上、より好ましくは38モル%以上であり、上限が好ましくは47モル%以下、より好ましくは44モル%以下である。また、EVOHのケン化度は好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上である。EVOHのエチレン含有量およびケン化度を上記範囲に保つことにより、本発明のフィルムの共押出性、フィルムの強度を良好なものとすることができる。
【0060】
EVOH層を設ける場合、EVOH層の厚みは、下限が好ましくは5μm以上、より好ましくは8μm以上、さらに好ましくは10μm以上であり、上限が好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。EVOH層の厚みの下限値を5μmとすることにより十分な酸素バリア性が得られる。また上限値を30μmとすることによりフィルムの共押出性を悪化することもなく、かつ良好なフィルム強度を保持できる。
【0061】
<インフレーションフィルムの層構成>
本発明のインフレーションフィルムの層構成は、最外層としてイージーピール性を有する外層、最内層として低密度ポリエチレン樹脂からなる内層を備え、これらの間にポリアミド樹脂からなる中間層を備えていれば、その他の層の層構成は特に制限されない。
【0062】
例えば、イージーピール性を有する外層(A)、中間層(B)、EVOH層(C)、内層(D)、および接着樹脂層(E)で表した場合、例えば、以下の層構成を形成することができる。
(1)A/E/B/E/D
(2)A/E/C/B/E/D
(3)A/E/B/C/E/D
【0063】
<その他の添加剤>
本発明においては、本発明の効果を阻害しない範囲で、最外層、中間層および最内層のいずれか、またはすべての層に添加剤を含有させることができる。例えば、顔料を添加した場合、遮光効果による被収容物の鮮度保持やフィルム切り片が被収容物に混入したとしても発見しやすいというメリットがある。また、色の異なる顔料を使用することで被充填物の種類を包装体の色で判別できる効果もある。なお、顔料は内容物と接触しない外層側もしくは中間層に添加することが好ましい。
【実施例】
【0064】
<評価用試料フィルムの作製>
実施例1〜5および比較例1〜9として、5層からなる共押出しインフレーションフィルムを製造した。フィルムの総厚みは、各実施例、比較例により、50μm、56μm、60μm、100μmの4種類となっている。
【0065】
(実施例1)
インフレーションフィルムの層構成を以下に示す。なお、内層とは円筒形フィルムの軸芯側の層であり、外層とはその反対側の層である。
第1層(外層(イージーピール層)):直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)+ポリブチレン−1樹脂(PB−1)(6μm)
第2層(接着樹脂層):カルボン酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(7.5μm)
第3層(中間層):6ナイロン(11μm)
第4層(接着樹脂層):カルボン酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(7.5μm)
第5層(内層):直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)(28μm)
総厚み60μm
【0066】
外層には、ビカット軟化点85℃のLLDPE(プライムポリマー社製、モアテック)80質量%と、ポリブチレン−1樹脂(三井化学社製、タフマー)20質量%のブレンド樹脂に、該ブレンド樹脂全体を100質量部として、スリップ剤としてアミド系滑剤を0.3質量部添加した組成物を用いた。
接着性樹脂層を構成する接着性樹脂としては、カルボン酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(三井化学社製、アドマー)を用いた。
中間層を構成するポリアミド樹脂としては、6ナイロン(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ノバミッド6Ny)を用いた。
内層には、密度0.935g/cm、ビカット軟化点120℃のLLDPE(プライムポリマー社製、モアテック)に対して、該LLDPE全体を100質量部として、スリップ剤としてアミド系滑剤を1.8質量部、アンチブロッキング剤として無機系アンチブロッキング剤を1.8質量部添加した組成物を用いた。
【0067】
(実施例2)
外層として、ビカット軟化点95℃のLLDPE(日本ユニカー社製、タフセン)80質量%と、ポリブチレン−1樹脂(三井化学社製、タフマー)20質量%のブレンド樹脂に、実施例1と同様のスリップ剤を添加した組成物を用いた以外は、実施例1と同様にしてインフレーションフィルムを作製した。
【0068】
(実施例3)
各層の層厚を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にしてインフレーションフィルムを作製した。
第1層(外層):5μm
第2層(接着樹脂層):6.25μm
第3層(中間層):9.5μm
第4層(接着樹脂層):6.25μm
第5層(内層):23μm
総厚み50μm
【0069】
(実施例4)
外層および内層に、添加剤(スリップ剤、アンチブロッキング剤)を添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてインフレーションフィルムを作製した。
【0070】
(実施例5)
外層として、ポリプロピレン(日本ポリプロ社製、ノバテック)80質量%と、LDPE(日本ポリエチレン社製、ノバテック)20質量%のブレンド樹脂に、該ブレンド樹脂全体を100質量部として、スリップ剤としてアミド系滑剤を0.3質量部添加した組成物を用いた以外は、実施例1と同様にしてインフレーションフィルムを作製した。
【0071】
(比較例1)
外層として、ビカット軟化点85℃のLLDPE(プライムポリマー社製、モアテック)95質量%と、ポリブチレン−1樹脂(三井化学社製、タフマー)5質量%のブレンド樹脂に、該ブレンド樹脂全体を100質量部として、スリップ剤としてアミド系滑剤を0.3質量部添加した組成物を用いた以外は、実施例1と同様にしてインフレーションフィルムを作製した。
【0072】
(比較例2)
外層として、ビカット軟化点85℃のLLDPE(プライムポリマー社製、モアテック)40質量%と、ポリブチレン−1樹脂(三井化学社製、タフマー)60質量%のブレンド樹脂に、該ブレンド樹脂全体を100質量部として、スリップ剤としてアミド系滑剤を0.3質量部添加した組成物を用いた以外は、実施例1と同様にしてインフレーションフィルムを作製した。
【0073】
(比較例3)
各層の層厚を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にしてインフレーションフィルムを作製した。
第1層(外層):11μm
第2層(接着樹脂層):7.5μm
第3層(中間層):11μm
第4層(接着樹脂層):7.5μm
第5層(内層):23μm
総厚み60μm
【0074】
(比較例4)
各層の層厚を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にしてインフレーションフィルムを作製した。
第1層(外層):2μm
第2層(接着樹脂層):7.5μm
第3層(中間層):11μm
第4層(接着樹脂層):7.5μm
第5層(内層):28μm
総厚み56μm
【0075】
(比較例5)
各層の層厚を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にしてインフレーションフィルムを作製した。
第1層(外層):16μm
第2層(接着樹脂層):7.5μm
第3層(中間層):11μm
第4層(接着樹脂層):7.5μm
第5層(内層):18μm
総厚み60μm
【0076】
(参考例1)
内層として、密度0.937g/cm、ビカット軟化点102℃のLLDPE(日本ポリエチレン社製、ノバテック)に対して、該LLDPE全体を100質量部として、スリップ剤としてアミド系滑剤を1.8質量部、アンチブロッキング剤として無機系アンチブロッキング剤を1.8質量部添加した組成物を用いた以外は、実施例1と同様にしてインフレーションフィルムを作製した。
【0077】
(参考例2)
内層として、密度0.929g/cm、ビカット軟化点117℃のLLDPE(日本ポリエチレン社製、ノバテック)に対して、該LLDPE全体を100質量部として、スリップ剤としてアミド系滑剤を1.8質量部、アンチブロッキング剤として無機系アンチブロッキング剤を1.8質量部添加した組成物を用いた以外は、実施例1と同様にしてインフレーションフィルムを作製した。
【0078】
(比較例6)
各層の層厚を以下のように変更し、
第1層(外層):6μm
第2層(接着樹脂層):24μm
第3層(中間層):40μm
第4層(接着樹脂層):24μm
第5層(内層):6μm
総厚み100μm、
内層として、密度0.917g/cm、ビカット軟化点102℃のLLDPE(プライムポリマー社製、モアテック)80質量%と、ポリブチレン−1樹脂(三井化学社製、タフマー)20質量%のブレンド樹脂に、該ブレンド樹脂全体を100質量部として、スリップ剤としてアミド系滑剤を0.3質量部、アンチブロッキング剤として無機系アンチブロッキング剤を0.3質量部添加した組成物を用いた以外は、実施例1と同様にしてインフレーションフィルムを作製した。
そして、得られたチューブ状フィルムを切り開いて、単層フィリムにスリット加工したものを各種評価した。
【0079】
(比較例7)
各層の層厚を以下のように変更し、
第1層(外層):6μm
第2層(接着樹脂層):9μm
第3層(中間層):20μm
第4層(接着樹脂層):9μm
第5層(内層):6μm
総厚み50μm、
内層として、密度0.917g/cm、ビカット軟化点102℃のLLDPE(プライムポリマー社製、モアテック)80質量%と、ポリブチレン−1樹脂(三井化学社製、タフマー)20質量%のブレンド樹脂に、該ブレンド樹脂全体を100質量部として、スリップ剤としてアミド系滑剤を0.3質量部、アンチブロッキング剤として無機系アンチブロッキング剤を0.3質量部添加した組成物を用いた以外は、実施例1と同様にしてインフレーションフィルムを作製した。
そして、得られたチューブ状フィルムを切り開いて、単層フィリムにスリット加工したものを各種評価した。
【0080】
(参考例3)
内層として、密度0.910g/cm、ビカット軟化点85℃のLLDPE(プライムポリマー社製、モアテック)に対して、該LLDPE全体を100質量部として、スリップ剤としてアミド系滑剤を1.8質量部、アンチブロッキング剤として無機系アンチブロッキング剤を1.8質量部添加した組成物を用いた以外は、実施例1と同様にしてインフレーションフィルムを作製した。
【0081】
<評価方法>
上記実施例および比較例において作製した各評価用試料フィルムに関し、下記試験による評価を実施した。
(1)開封性
各インフレーションフィルムを用いて、縦ピロー包装機ONP−5750(オリヒロ社製)にかけ、二重袋包装体を作製した。この二重袋包装体のシール部分を手で開封し、開封し易さを評価した。容易に開封するものを「○」とし、開封しにくいものを「×」とした。
(2)剥離強度(凝集力)
上記シール部分を15mm幅の短冊状に切り取り、引張試験機にて200mm/分の引張速度で引張った時の応力を測定した。
(3)ゲルボフレックステスト
各インフレーションフィルムを用いて、ゲルボフレックステスト(23℃×40%RHで500回屈曲したときのピンホール発生個数の計測)を実施し、耐ピンホール性を評価した。比較例5と6はフラットフィルムにスリット加工したものに対して評価を行った。このときのピンホール発生数が0〜5個未満のものを「◎」、5個以上10個未満のものを「○」、10個以上のものを「×」とした。
(4)熱間充填テスト
各インフレーションフィルムを用いて、縦ピロー包装機ONP2100W(オリヒロ社製)にかけ、袋中に95℃の温水10kgを充填し、二重袋包装体を作製した。そして、インフレーションフィルムの内層同士がブロッキングしているかどうかを確認した。内層同士がブロッキングしていないものを「◎」、一部ブロッキングしたものを「○」、大多数がブロッキングしているものを「×」とした。
(5)モジュラス測定
各インフレーションフィルムを用いて、精密万能材料試験機(インテスコ社製)を用いて、試験片を一定の速度(5mm/分)で引っ張り、ひずみが5%に達したときの応力を測定した。このときの応力値が4.0N以上の伸びにくいものを「◎」、3.5N以上4.0N未満のものを「○」、3.5N未満の伸びやすいものを「×」とした。
【0082】
(評価結果)
【0083】
【表1】

【0084】
実施例1〜5はチューブフィルム状(2枚重ね)であったため、ピンホール発生数は少なかった。また、熱間充填しても内層に高密度のLLDPEを配しているため、ブロッキングしなかった。また、中間層の厚みが9.5μm〜11μmと確保されていることで、耐ピンホール性に優れ、フィルムが伸びにくかった。これらの中で、実施例2はイージーピール層のLLDPEのビカット軟化点が105℃と高めであるので、シール回数によってイージーピール強度が3.53N/15mm幅〜15.1N/15mm幅と振れ安定しなかった。実施例4はアンチブロッキング剤等が添加されていなかったため、耐ブロッキング性の点において、他の実施例に比べわずかに劣る結果を示した。また、実施例5は、イージーピール層を構成する樹脂として、PPとLDを80:20の比率でブレンドした樹脂を使用したものである。この例では、開封性は実用上問題ないレベルであったが、PPはLLDPEより硬いためシール温度を高めにする必要があり、また、耐ピンホール性の点において、他の実施例に比べわずかに劣る結果を示した。
【0085】
一方、比較例1はイージーピール層のLLDPEとPB−1のブレンド比率が95:5とLLDPEの割合が多いため、剥離強度が強くなり開封性に劣っていた。比較例2はイージーピール層のLLDPEとPB−1のブレンド比率が40:60であるため剥離強度が弱くなり耐破袋性の点において劣っていた。比較例3はイージーピール層の厚みが11μmと厚いため、開封すると剥離面が毛羽立ったり、膜残りを起こした。比較例4はイージーピール層の厚みが2μmと薄いため、剥離強度が弱くなり耐破袋性の点において劣っていた。比較例5はイージーピール層の厚みが16μmと厚いため、剥離強度が強く、剥離面が毛羽立ち、開封性の点において劣っていた。参考例1および2は開封性は問題なかったが、それぞれ、内層を構成するLLDPEのビカット軟化点が低い、あるいは密度が低いため、モジュラス測定の結果が劣っていた(伸びやすかった。)。比較例6、7は、開封性は問題なかったが単枚フィルムであったため、耐ピンホール性に劣り、輸送時等の破袋を引き起こす危険があった。参考例3は、開封性は問題なかったが、内層を構成するLLDPEの密度およびビカット軟化点が低いため、内層同士がブロッキングし、伸びの点においても劣る結果を示した。
【0086】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う二重袋包装体用インフレーションフィルムおよび該フィルムを用いた二重袋包装体もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】二重袋包装体を作製するのに使用されるインフレーションフィルムの製造プロセスを概略的に示す図である。
【図2】図2(A)は、図1におけるIIA‐IIA線に沿ったチューブ状フィルムの断面図、図2(B)は図1におけるIIB‐IIB線に沿った平板状フィルムの断面図である。
【図3】原反を巻き出して所定長にカットする工程を概略的に示す図である。
【図4】単葉等から二重袋包装体を作製する工程を概略的に示す図である。
【図5】図4のP−P線に沿って、紙面手前側から奥方向に表した断面図である。
【符号の説明】
【0088】
10 チューブ状フィルム
10´ 平板状フィルム
11 円筒形金型
12、13 ロール
14 巻き取り機
15 原反
21 内層
22 中間層
23 外層
24 空間(空気層)
30a、30b、30c 単葉
40a 単葉(折目つき)
40b 中間品
40c 二重袋包装体
41、42、43、44 折り目
45、46、48 重複部分
47 開口
50 被収容物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イージーピール性を有する外層、ポリアミド樹脂からなる中間層、および、低密度ポリエチレン樹脂からなる内層を備えて構成される二重袋包装体用インフレーションフィルムであって、
前記イージーピール性を有する外層が、凝集力が0.98N/15mm幅以上19.6N/15mm幅以下のイージーピール強度を有し、厚みが3μm以上15μm以下である、二重袋包装体用インフレーションフィルム。
【請求項2】
前記イージーピール性を有する外層が、該外層全体の質量を100質量%として、以下で示される50質量%以上90質量%以下の樹脂組成物Aと10質量%以上50質量%以下の樹脂組成物Bを備えて構成されている、請求項1に記載の二重袋包装体用インフレーションフィルム。
樹脂組成物A:主成分が、ビカット軟化点90℃以下の直鎖状低密度ポリエチレン、融点100℃以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体、融点100℃以下のエチレン−アクリル酸共重合体、融点100℃以下のエチレン−アクリル酸エチル共重合体、融点100℃以下のエチレン−メタクリル酸共重合体、融点100℃以下のエチレン−メタクリル酸メチル共重合体、融点100℃以下のエチレン−アクリル酸メチル共重合体およびこれらのアイオノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種である樹脂組成物、
樹脂組成物B:主成分がポリプロピレンまたはポリブチレンである樹脂組成物。
【請求項3】
前記内層を構成する低密度ポリエチレン樹脂が、ビカット軟化点が110℃以上125℃以下であり、かつ密度が0.930g/cmを超え0.940g/cm以下である、請求項1または2に記載の二重袋包装体用インフレーションフィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のインフレーションフィルムにより製袋したイージーピール性を有する二重袋包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−29434(P2009−29434A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192549(P2007−192549)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】