説明

交換レンズ、及びそれを有するカメラシステム

【課題】交換レンズとカメラ本体の組み合わせに応じて、適切な像振れ補正を行うことを可能とする。
【解決手段】カメラ本体(101)に着脱可能な交換レンズ(102)であって、補正レンズ(127)を駆動して像振れを補正する像振れ補正手段(132、133)と、前記補正レンズの位置を検出する位置検出手段(134)と、前記補正レンズの移動可能範囲を設定する制御手段(124)と、を有し、前記制御手段は、前記補正レンズの位置情報に応じて撮影画像の周辺光量補正又は収差補正を行う機能を有する第1のカメラ本体が装着された場合は、前記補正レンズの移動可能範囲を第1の移動可能範囲に設定し、前記補正レンズの位置情報に応じて撮影画像の周辺光量補正及び収差補正を行う機能を有さない第2のカメラ本体が装着された場合は、前記補正レンズの移動可能範囲を前記第1の移動可能範囲よりも狭い第2の移動可能範囲に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交換レンズ、及びそれを有するカメラシステムに関し、特に手振れに起因する像振れを補正する像振れ補正に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラ等の撮影装置において、従来から手振れに起因する像振れを補正する像振れ補正装置が提案されている。像振れ補正装置の一例として、カメラの振れを検出し、検出した振れに応じて撮影光学系の一部(例えば、像振れ補正光学系)を変位させて像振れを補正するものが知られている。しかし、像振れ補正光学系を変位させることで、変位量、焦点距離、絞り量によっては、撮影画像に収差や歪み、周辺光量の低下が発生してしまう問題があった。
【0003】
そこで上記不具合を解消するために、例えば、特許文献1では、像振れ補正光学系の変位量に応じて、画像処理により色収差補正を行う技術が開示されている。また、特許文献2では、像振れ補正時の周辺光量の低下が大きくならないように、像振れ補正光学系の変位量に応じて絞り値を制限する、もしくは、絞り値に応じて像振れ補正光学系の変位量を制限する技術が開示されている。また、特許文献3では、像振れ補正光学系の変位量に応じて、周辺光量の低下を補正する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−78292号公報
【特許文献2】特開平6−67255号公報
【特許文献3】特開2005−62242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、レンズ交換式カメラシステムにおいては以下のような問題がある。すなわち、交換レンズ側に像振れ補正光学系を有し、該交換レンズが装着されたカメラ本体側において、像振れ補正光学系の変位量に応じた収差や周辺光量低下の画像処理補正手段を有している場合と有していない場合が考えられる。この場合、装着されたカメラ本体に、上記画像処理補正手段を有していないにもかかわらず、交換レンズ側で像振れ補正を行った時、像振れ補正光学系の変位量によっては、収差や周辺光量低下が発生し、見苦しい撮影画像となってしまう。また、装着されたカメラ本体に、上記画像処理補正手段を有していた場合、像振れ補正光学系の変位量を制限しなくても良いにもかかわらず、制限をかけてしまい、大きい振れの補正に対応できないカメラシステムとなってしまう。
【0006】
そこで、本発明の目的は、交換レンズとカメラ本体の組み合わせに応じて、適切な像振れ補正を行うことを可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としての交換レンズは、カメラ本体に着脱可能な交換レンズであって、補正レンズを駆動して像振れを補正する像振れ補正手段と、前記補正レンズの位置を検出する位置検出手段と、前記補正レンズの移動可能範囲を設定する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記補正レンズの位置情報に応じて撮影画像の周辺光量補正又は収差補正を行う機能を有する第1のカメラ本体が装着された場合は、前記補正レンズの移動可能範囲を第1の移動可能範囲に設定し、前記補正レンズの位置情報に応じて撮影画像の周辺光量補正及び収差補正を行う機能を有さない第2のカメラ本体が装着された場合は、前記補正レンズの移動可能範囲を前記第1の移動可能範囲よりも狭い第2の移動可能範囲に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、交換レンズとカメラ本体の組み合わせに応じて、適切な像振れ補正を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1におけるカメラシステムのブロック図である。
【図2】実施例1におけるレンズ制御の動作を示すフローチャートである。
【図3】実施例1におけるカメラレンズ通信の動作を示すフローチャートである。
【図4】実施例1における像振れ補正の動作を示すフローチャートである。
【図5】実施例2におけるカメラレンズ通信の動作を示すフローチャートである。
【図6】実施例2における像振れ補正の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態にかかわるカメラシステムのブロック図である。
【実施例1】
【0011】
以下、図1を参照して、本発明の第1の実施例によるカメラシステムについて説明する。
【0012】
図1は、カメラ本体101と交換レンズ102とからなるカメラシステムの構成を示す。被写体からの撮影光束は交換レンズ102の撮影光学系を通り、撮影準備中は中央部分がハーフミラーとなっているクイックリターン主ミラー103で一部が反射され、ペンタプリズム104において正立像となる。撮影者はこの正立像を光学ファインダ(OVF)105において被写体像として確認することができる。106は測光回路であり、不図示のピント板面上の照度を測定して、その測定結果をカメラシステムMPU107に入力する。カメラシステムMPU107は露光時間、絞りなどの撮影条件を決定する。測光回路106内の測光センサは、複数のエリアに分割されており、エリアごとの測光結果を得ることができる。108はサブミラーであり、クイックリターン主ミラー103の裏面に配置されており、クイックリターン主ミラー103のハーフミラー面を通過した光束を測距手段109に入射させる。測距手段109は入射した光束を光電変換及び信号処理して測距データを作成し、カメラシステムMPU107に入力する。
【0013】
撮影準備中から撮影動作に入ると、クイックリターン主ミラー103及びサブミラー108はペンタプリズム104側へ退避し、フォーカルプレーンシャッター110がシャッター駆動回路111により駆動される。すると、撮影光束は撮影光学画像として撮像部(CCDやCMOS)112面上に結像する。その撮影光学画像は、撮像部112によって光電変換され撮像信号となる。113はタイミングジェネレータであり、撮像部112の蓄積動作、読み出し動作及びリセット動作などを制御する。114は撮像部112の蓄積電荷ノイズを低減するCDS回路(2重相関サンプリング回路)、115は撮像信号を増幅するゲインコントロール回路である。116は増幅された撮像信号をアナログからデジタルの画像データへ変換するA/D変換器である。117は映像信号処理回路であり、A/D変換器116でデジタル化された画像データに、フィルタ処理、色変換処理及びガンマ処理などを行う。映像信号処理回路117で信号処理された画像信号はバッファメモリ118に格納され、LCD119に表示されたり、着脱可能なメモリカード120に記録される。操作部121はカメラメインスイッチや、撮影モードの設定や、記録画像ファイルサイズの設定や、撮影時のレリーズを行うためのスイッチ類である。
【0014】
カメラシステムMPU107は上記動作を制御するほか、カメラ本体101側のインターフェース回路122(通信手段)及び交換レンズ102側のインターフェース回路123(通信手段)を介して、レンズMPU124と相互に通信する。この通信では、交換レンズ102へカメラフォーカス駆動命令を送信したり、デジタルカメラ本体101や交換レンズ102内部の動作状態や光学情報などのデータを送受信したりする。
【0015】
交換レンズ102には、撮影光学系の一部として、フォーカスレンズ125、ズームレンズ126、像振れ補正レンズ127、絞り128が配置されている。フォーカスレンズ125は、レンズMPU124からの制御信号によりフォーカス制御回路129及びフォーカスレンズ駆動用モータ130を介して駆動される。フォーカス制御回路129には、フォーカスレンズ駆動回路のほか、フォーカスレンズの移動に応じたゾーンパターン信号やパルス信号を出力するフォーカスエンコーダなども含まれている。被写体距離はこのフォーカスエンコーダにより検知することができる。ズームレンズ126は、撮影者が不図示のズーム操作環を操作することにより移動する。ズームエンコーダ131はズームレンズの移動に応じたゾーンパターン信号を出力する。像振れ補正レンズ127は、像振れ補正制御回路(IS制御回路)132、リニアモータ133を介して駆動される。本実施例では、像振れ補正レンズ127、像振れ補正制御回路132、リニアモータ133とにより像振れ補正手段が構成される。像振れ補正は、次のようにして行われる。すなわち、回転振れを検出する角速度センサ(振れ検出手段)135の振れ信号が信号処理回路136で信号処理されレンズMPU124に入力される。レンズMPU124は、補正レンズ駆動目標信号を算出し、この補正レンズ駆動目標信号と補正レンズエンコーダ(位置検出手段)134から出力される補正レンズの位置信号との差に応じた駆動信号を像振れ補正制御回路132に出力する。像振れ補正は、このように補正レンズエンコーダ134から出力される補正レンズ位置信号(位置情報)を像振れ補正制御回路132にフィードバックすることで行われる。絞り128は、レンズMPU124からの制御信号により絞り制御回路137及びステッピングモータ138を介して駆動される。スイッチ139は像振れ補正ON/OFF選択用スイッチである。
【0016】
前述の通り、カメラシステムMPU107とレンズMPU124は相互にデータの送受信が行われる。その際に、装着されているデジタルカメラ本体101が、補正レンズ位置情報に応じた色収差補正や周辺光量補正の画像処理補正に対応可能であるかを通信データで判断する。デジタルカメラ本体101が上記画像処理補正に対応している(第1のカメラ本体)ならば、交換レンズ102はデジタルカメラ本体101側へ、補正レンズエンコーダ134から出力される補正レンズの位置情報を送信する。そして、デジタルカメラ本体101は、受信した補正レンズ位置情報に応じて映像信号処理回路117で、色収差補正や周辺光量補正を行う。補正方法については、前述の特許文献1や特許文献3で公知であるので、説明は省略する。またこの場合、補正レンズの移動量が大きくなり、周辺光量低下が発生したとしても、画像処理で補正可能であるため、交換レンズ102では、補正レンズの移動可能範囲を拡大し、より大きな振れを補正できるように像振れ補正制御を行う。逆にデジタルカメラ本体101が上記画像処理補正に対応していない(第2のカメラ本体)ならば、補正レンズの移動量が大きくなると画像劣化が発生してしまうので、補正レンズの移動可能範囲を小さく設定し、像振れ補正を行う。
【0017】
次に、図2、図3及び図4に示したフローチャートに従って、交換レンズ102側の動作を説明する。以下では、交換レンズ102を単にレンズと称し、カメラ本体101をカメラと称する。はじめに、レンズをカメラに装着するとカメラからレンズへシリアル通信がなされ、レンズMPU124は、図2のステップ200から以下の動作を開始する。
【0018】
ステップ200では、レンズ制御、像振れ補正制御のための初期設定を行う。次に、ステップ201では、スイッチ類の状態検出、ズーム・フォーカスの位置検出を行う。スイッチ類は例えば、オートフォーカスとマニュアルフォーカスの切り換えスイッチや、像振れ補正ON/OFF選択用スイッチ139などがある。次に、ステップ202では、カメラからフォーカス駆動命令通信があったかどうかを判定する。フォーカス駆動命令が受信されていればステップ203へ、受信されていなければステップ207へ進む。
【0019】
ステップ203では、カメラからのフォーカス駆動命令通信で、フォーカスレンズの目標駆動量(パルス数)も送信されてくるので、フォーカス制御回路129にあるフォーカスエンコーダのパルス数を検出する。そして、目標パルス数駆動するようフォーカス駆動制御を行う。次に、ステップ204では、目標パルス数Pに達したかどうかの判定を行う。目標パルス数Pに達していればステップ205へ、達していなければステップ206へ進む。ステップ205では、目標パルス数に達したので、フォーカスレンズの駆動を停止する。ステップ206では、目標パルス数に達していないので、残り駆動パルス数に応じて、フォーカスレンズ駆動用モータ130の速度設定を行う。残り駆動パルス数が少なくなっていくにしたがって減速していく。
【0020】
ステップ207では、ステップ201で像振れ補正ON/OFF選択用スイッチ139のOFFが検出されていたら、像振れ補正レンズ127を光軸付近に停止させる。そして、ONが検出されていて、カメラのレリーズスイッチSW1ONをカメラレンズステータス通信により検出したら、像振れ補正動作が動作可能な状態とする。次に、ステップ208では、カメラから全駆動停止(レンズ内のアクチュエータの全駆動を停止する)命令を受信したかどうかの判定を行う。カメラ側で何も操作がなされないと、しばらくしてからカメラからこの全駆動停止命令が送信される。そして、ステップ209では、全駆動停止制御を行う。ここでは全アクチュエータ駆動を停止し、レンズMPU124をスリープ(停止)状態にする。像振れ補正装置への給電も停止する。その後、カメラ側で何か操作が行われると、カメラはレンズに通信を送り、スリープ状態を解除する。この他に、絞り128の制御も行うが説明は省略する。
【0021】
これらの動作の間に、カメラからの通信によるシリアル通信割込み、像振れ補正制御割込みの要求があれば、それらの割込み処理を行う。シリアル通信割込み処理は、通信データのデコードを行いデコード結果に応じて、例えば絞り駆動、フォーカスレンズ駆動などのレンズ処理を行う。そして、通信データのデコードによって、SW1ON、SW2ON、シャッター速度、カメラの機種等も判別できる。また、像振れ補正割込みは一定周期毎に発生するタイマー割り込みであり、ピッチ方向(縦方向)制御とヨー方向(横方向)の像振れ補正制御を行っている。
【0022】
まず、シリアル通信割り込みについて、図3のフローチャートを用いて説明する。カメラからの通信を受信するとレンズMPU124は、ステップ300から以下の動作を開始する。
【0023】
ステップ300では、カメラからの命令(コマンド)解析を行い、各命令に応じた処理へ分岐する。例えば、ステップ301では、ID通信を受信したので、ステップ302でカメラからレンズへカメラ機種や機能に関する情報(カメラのID情報)を送信したり、レンズからカメラへレンズ機種や機能に関する情報(レンズのID情報)などを送信する。このID通信により、カメラが補正レンズの位置情報に応じた周辺光量補正や収差補正の画像処理補正に対応しているか否かが判別できる。また、補正レンズ位置情報通信に対応しているか否かも判別できる。
【0024】
また、ステップ303では、補正レンズ位置情報通信を受信したので、ステップ304で補正レンズ位置情報を送信する。そしてカメラでは、該補正レンズ位置情報に基づいて、周辺光量補正や収差補正の画像処理補正を行う。
【0025】
また、ステップ305では、カメラレンズステータス通信を受信したので、ステップ306で、レンズの焦点距離情報、IS動作状態などをカメラに送信したり、カメラのステータス状態(レリーズスイッチの状態、撮影モード、シャッター速度など)を受信する。ここで、カメラが撮影準備中(SW1ON)となったかを判別し、SW1ONとなれば像振れ補正動作を開始する。
【0026】
また、ステップ307では、その他の命令、例えばフォーカス駆動命令や絞り駆動命令、レンズのフォーカス敏感度データ通信や、レンズ光学データ通信などであり、ステップ308でそれらの処理を行う。
【0027】
像振れ補正動作の制御も、レンズMPU124(制御手段)で行われる。その動作を図4のフローチャートを用いて説明する。レンズのメイン動作中に像振れ補正割り込みが発生すると、レンズMPU124は図4のステップ400から像振れ補正の制御を開始する。
【0028】
ステップ400では、振れ検出手段(角速度センサ135)の振れ信号(角速度信号)をA/D変換する。A/D変換結果は、レンズMPU124内のVAD_DATで設定される不図示のRAM領域に格納する。次に、ステップ401では、像振れ補正ON/OFF選択用スイッチ139がONであるかOFFであるかの判定を行う。ON(ISSWON=1)であればステップ402へ進み、OFF(ISSWON=0)であればステップ403へ進む。
【0029】
ステップ402では、SW1ON=1であるかどうか、つまりカメラのレリーズスイッチが半押しされ撮影準備中であるかどうかの判定を行う。SW1ON=1であればステップ404へ、SW1ON=0であれば(つまり、カメラのレリーズスイッチが半押しされていなければ)ステップ403へ進む。ステップ403では、像振れ補正を行わないので、ハイパスフィルタ、積分演算の初期化を行う。補正レンズ駆動目標データSFTDRVもゼロとなる。
【0030】
ステップ404では、ハイパスフィルタ演算を行う。また、像振れ補正の開始から所定時間は時定数切り換えを行い、立ち上がりの像揺れを緩和することも行う。次に、ステップ405では、ハイパスフィルタ演算結果を入力として、積分演算を行う。その結果をレンズMPU124内のDEG_DATで設定される不図示のRAM領域に格納する。DEG_DATは振れ角変位信号である。次に、ステップ406では、ズーム・フォーカスのポジションによって、振れ角変位DEG_DATを補正するための像振れ補正レンズ127の偏心量(敏感度)が変化するので、その調整を行う。具体的には、ズーム及びフォーカスポジションをそれぞれいくつかのゾーンに分割し、各ゾーンにおける平均的な光学防振敏感度(deg/mm)をテーブルデータから読み出し、補正レンズ駆動データに変換する。その演算結果は、レンズMPU124内のSFTDRVで設定される不図示のRAM領域に格納する。次に、ステップ407では、像振れ補正レンズ127の変位信号をA/D変換し、A/D結果をレンズMPU124内のSFT_ADで設定されるRAM領域に格納する。
【0031】
ステップ408では、カメラが補正レンズ位置情報に応じた画像処理補正に対応しているか否かの判断を行う。これは、図3のID通信により判別される。カメラが上記画像処理補正に対応しているならステップ409へ進み、対応していないならステップ411へ進む。ステップ409では、カメラが補正レンズ位置情報に応じた画像処理補正に対応しているので、補正レンズの移動可能範囲をLIMIT_A(第1の移動可能範囲、例えば1mm)と設定する。そして、補正レンズ駆動目標データSFTDRVがLIMIT_A以上となっていないかどうかを判断する。LIMIT_A以上となっていれば、ステップ410へ進み、LIMIT_A以上となっていなければ、ステップ413へ進む。ステップ410では、補正レンズ駆動目標データSFTDRVがLIMIT_A以上となっているので、SFTDRVをLIMIT_Aに書き換える。こうすることで、補正レンズの移動可能範囲はLIMIT_Aに制限される。
【0032】
一方、ステップ411では、カメラが補正レンズ位置情報に応じた画像処理補正に対応していないので、補正レンズの移動可能範囲をLIMIT_B(第2の移動可能範囲、例えば0.5mm)と設定する。そして、補正レンズ駆動目標データSFTDRVがLIMIT_B以上となっていないかどうかを判断する。LIMIT_B以上となっていれば、ステップ412へ進み、LIMIT_B以上となっていなければ、ステップ413へ進む。ステップ412では、補正レンズ駆動目標データSFTDRVがLIMIT_B以上となっているので、SFTDRVをLIMIT_Bに書き換える。こうすることで、補正レンズの移動可能範囲はLIMIT_Bに制限される。このように、カメラが補正レンズ位置情報に応じた画像処理補正を行う機能を有さない場合は、カメラが補正レンズ位置情報に応じた画像処理補正を行う機能を有する場合よりも、補正レンズの移動可能範囲を狭く設定する。これにより、カメラが補正レンズ位置情報に応じた画像処理補正を行う機能を有する場合は、補正レンズの移動可能範囲が大きく設定されているので、より大きな振れを補正できるように像振れ補正制御を行うことができる。このとき、補正レンズの移動量が大きくなり、周辺光量低下などが発生したとしても画像処理で補正可能である。一方、カメラが補正レンズ位置情報に応じた画像処理補正を行う機能を有さない場合は、補正レンズの移動可能範囲を小さく設定した状態で像振れ補正を行うことで、収差や周辺光量低下が発生し見苦しい撮影画像となってしまうことを防止することができる。
【0033】
ステップ413では、フィードバック演算(SFTDRV−SFTPST)を行う。演算結果はレンズMPU124内のSFT_DTで設定されるRAM領域に格納する。次に、ステップ414では、ループゲインLPG_DTとステップ413の演算結果SFT_DTを乗算する。演算結果はレンズMPU124内のSFT_PWMで設定されるRAM領域に格納する。次に、ステップ415では、安定な制御系にするために位相補償演算(位相進み補償演算)を行う。そして、ステップ416では、ステップ415の演算結果をPWMとしてレンズMPU124のポートに出力し、像振れ補正割込みが終了する。その出力はIS制御回路132内のドライバー回路に入力し、リニアモータ133によって像振れ補正レンズ127が駆動され、像振れが補正が行われる。
【0034】
以上のように、レンズMPU124は図4のステップ408〜ステップ412において、カメラが補正レンズ位置情報に応じた画像処理補正に対応しているか否かによって、補正レンズの移動可能範囲をLIMIT_AもしくはLIMIT_Bに設定している。すなわち、カメラが補正レンズ位置情報に応じた画像処理補正に対応している場合は、補正レンズの移動可能範囲を広くして、大きな振れの補正に対応することができる。補正レンズの移動量が大きくなり、画像劣化が発生したとしても、カメラで補正レンズ位置情報に応じた画像処理補正を行うので、画像劣化は補正され良好な画像となる。また、カメラが補正レンズ位置情報に応じた画像処理補正に対応していない場合は、補正レンズの移動可能範囲を狭くして、小さな振れの補正を行う。そうすることで、収差や周辺光量低下が発生し見苦しい撮影画像となってしまうことを防止することができる。このように、本実施例によれば、交換レンズとカメラ本体の組み合わせに応じて(例えば、カメラが補正レンズ位置情報に応じた画像処理補正に対応しているか否かにかかわらず)、適切な像振れ補正を行うことが可能となる。
【実施例2】
【0035】
以下、図5を参照して、本発明の第2の実施例によるカメラシステムについて説明する。カメラシステムの構成は図1と同じなので、説明は省略する。
【0036】
まず、カメラレンズ通信について、図5のフローチャートを用いて説明する。ステップ300からステップ308に関しては実施例1の図3のフローチャートと同様のため説明を省略する。以下では、ステップ309及びステップ310に関してのみ説明を行う。図示していないが、まずカメラ側において、装着されたレンズが補正レンズ移動可能範囲情報通信に対応しているか否かを判断する。具体的には、装着されたレンズが補正レンズ移動可能範囲情報通信を行うための通信手段(受信手段)を有しているか否かを判断する。カメラシステムMPU107は、装着されたレンズが補正レンズ移動可能範囲情報通信に対応していると判断した場合は、レンズに対して補正レンズ移動可能範囲情報通信を行う。逆に、対応していないと判断した場合は、レンズに対して補正レンズ移動可能範囲情報通信を行わない。本実施例では、装着されたレンズは補正レンズ移動可能範囲情報通信に対応している(すなわち、補正レンズ移動可能範囲情報通信を行うための通信手段を有する)ものとする。次に、レンズ側において、ステップ309では、カメラから補正レンズ移動可能範囲情報通信を受信したので、ステップ310で補正レンズの移動可能範囲を受信したデータに設定する。ここで、装着されたカメラが補正レンズ位置情報に応じた画像処理補正に対応しているカメラであれば、カメラはLIMIT_A(例えば1mm)をレンズに送信し、対応していないカメラであればLIMIT_B(例えば0.5mm)をレンズに送信する。レンズは受信した補正レンズの移動可能範囲データをLIMIT_Cに設定する。
【0037】
次に、像振れ補正動作を図6のフローチャートを用いて説明する。図4と同様の部分の説明は省略し、本実施例での動作であるステップ417からステップ418を説明する。
【0038】
ステップ417では、補正レンズ駆動目標データSFTDRVが、補正レンズの移動可能範囲であるLIMIT_C以上となっていないかどうかを判断する。LIMIT_C以上となっていれば、ステップ418へ進み、LIMIT_C以上となっていなければ、ステップ413へ進む。ステップ418では、補正レンズ駆動目標データSFTDRVがLIMIT_C以上となっているので、SFTDRVをLIMIT_Cに書き換える。こうすることで、補正レンズの移動可能範囲はLIMIT_Cに制限される。ここで、LIMIT_Cに設定されるデータは、図5のステップ309からステップ310で設定されるデータであり、LIMIT_A(第1の移動可能範囲)もしくはLIMIT_B(第2の移動可能範囲)となる。つまり、レンズに装着されたカメラが補正レンズ位置情報に応じた画像処理補正に対応しているカメラであれば、LIMIT_A(第1の移動可能範囲、例えば1mm)がLIMIT_Cに設定される。また、レンズに装着されたカメラが補正レンズ位置情報に応じた画像処理補正に対応していないカメラであれば、LIMIT_B(第2の移動可能範囲、例えば0.5mm)がLIMIT_Cに設定される。
【0039】
以上のように、レンズMPU124は、図5のステップ309〜ステップ310において、カメラから送信される補正レンズ移動可能範囲データに基づいて、補正レンズ移動可能範囲を設定する。カメラは、補正レンズ位置情報に応じた画像処理補正に対応しているカメラであれば、LIMIT_A(第1の移動可能範囲)を送信するので、補正レンズの移動可能範囲が広くなり、大きな振れの補正に対応することができる。補正レンズの移動量が大きくなり、画像劣化が発生したとしても、カメラで補正レンズ位置情報に応じた画像処理補正を行うので、画像劣化は補正され良好な画像となる。また、カメラが補正レンズ位置情報に応じた画像処理補正に対応していない場合は、LIMIT_B(第2の移動可能範囲)を送信するので、補正レンズの移動可能範囲を狭くし、小さな振れの補正を行う。そうすることで、収差や周辺光量低下が発生し見苦しい撮影画像となってしまうことを防止することができる。このように、本実施例によれば、交換レンズとカメラ本体の組み合わせに応じて(例えば、カメラが補正レンズ位置情報に応じた画像処理補正に対応しているか否かにかかわらず)、適切な像振れ補正を行うことが可能となる。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、上記の実施の各形態においては、レンズ交換式の一眼レフカメラについて説明したが、本発明はレンズ交換式のビデオカメラにも適用可能である。また、ズームレンズであれば、所定の焦点距離の範囲に限定して実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のカメラシステムは、レンズ交換式の一眼レフカメラやビデオカメラに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0042】
101:カメラ本体
102:交換レンズ
107:カメラシステムMPU
122:カメラ側インターフェース回路
123:レンズ側インターフェース回路
124:レンズMPU
127:像振れ補正レンズ
132:像振れ補正制御回路
133:像振れ補正レンズ駆動用モータ
134:像振れ補正レンズエンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ本体に着脱可能な交換レンズであって、
補正レンズを駆動して像振れを補正する像振れ補正手段と、
前記補正レンズの位置を検出する位置検出手段と、
前記補正レンズの移動可能範囲を設定する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、
前記補正レンズの位置情報に応じて撮影画像の周辺光量補正又は収差補正を行う機能を有する第1のカメラ本体が装着された場合は、前記補正レンズの移動可能範囲を第1の移動可能範囲に設定し、
前記補正レンズの位置情報に応じて撮影画像の周辺光量補正及び収差補正を行う機能を有さない第2のカメラ本体が装着された場合は、前記補正レンズの移動可能範囲を前記第1の移動可能範囲よりも狭い第2の移動可能範囲に設定することを特徴とする交換レンズ。
【請求項2】
前記交換レンズは、前記カメラ本体のID情報を受信するための通信手段を有し、
前記制御手段は、前記ID情報に基づいて、前記第1のカメラ本体と前記第2のカメラ本体を判別することを特徴とする請求項1に記載の交換レンズ。
【請求項3】
前記交換レンズは、前記カメラ本体から前記補正レンズの移動可能範囲データを受信するための通信手段を有し、
前記制御手段は、前記移動可能範囲データに基づいて、前記補正レンズの移動可能範囲を設定することを特徴とする請求項1に記載の交換レンズ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の交換レンズと、
該交換レンズが装着されるカメラ本体と、を有することを特徴とするカメラシステム。
【請求項5】
前記カメラ本体が前記第1のカメラ本体であった場合に、
前記第1のカメラ本体は、前記補正レンズの位置情報を通信する通信手段を有することを特徴とする請求項4に記載のカメラシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−64772(P2013−64772A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202005(P2011−202005)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】