交流交流電力変換器の制御装置
【課題】専用の測定器や外部追加装置、複雑なシーケンス処理等を必要とせず、共振周波数や系統電気定数を容易に算出可能とし、系統インピーダンスが大きい場合には運転不許可やアラーム発生により電力変換器やトランスの損傷を未然に防止する。
【解決手段】交流電源電圧を任意の大きさ及び周波数の交流電圧に変換する交流交流電力変換器の制御装置において、マトリクスコンバータ40の少なくとも一相分の入力電流を検出する電流検出手段105と、検出した入力電流の高調波成分を抽出してその周波数を演算すると共に、演算した周波数からマトリクスコンバータ40の入力系統の共振周波数または系統リアクタンス等の電気定数を演算する系統情報演算手段106とを備える。
【解決手段】交流電源電圧を任意の大きさ及び周波数の交流電圧に変換する交流交流電力変換器の制御装置において、マトリクスコンバータ40の少なくとも一相分の入力電流を検出する電流検出手段105と、検出した入力電流の高調波成分を抽出してその周波数を演算すると共に、演算した周波数からマトリクスコンバータ40の入力系統の共振周波数または系統リアクタンス等の電気定数を演算する系統情報演算手段106とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体スイッチング素子を用いて多相の交流電圧を任意の大きさ及び周波数の交流電圧に変換する半導体電力変換器の制御装置に関し、例えば、マトリクスコンバータのように電解コンデンサ等の大形のエネルギーバッファを持たずに交流電圧を直接、交流電圧に変換する直接電力変換器において、系統インピーダンスが存在する場合の入力系統の共振周波数や系統電気定数を演算して電力変換器の制御、保護動作に用いるようにした制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マトリクスコンバータは、長寿命、省スペースであって入力電流を制御できるために電力回生が可能であり、電源高調波を抑制できるという特徴がある。
一方、マトリクスコンバータでは、入力電圧に高調波が含まれる場合に入力電流を正弦波に制御すると、有効電力が脈動する。この有効電力脈動は、大形のエネルギーバッファを有する電力変換器では吸収可能であるが、エネルギーバッファのないマトリクスコンバータでは、入力電圧の歪みが出力電圧を歪ませる原因となる。この出力電圧の歪みは、負荷として電動機が接続されている場合に電動機の脈動や騒音を生じさせるだけでなく、高調波電流により銅損が増加し、効率を低下させるため好ましくない。
【0003】
このため、瞬時有効電力を一定にするような入力電流指令を演算し、入力電圧に高調波が含まれる場合や入力電圧が不平衡である場合にも出力電圧を歪ませないようにした制御装置が、後述する特許文献1に記載されている。
図11はこの従来技術の構成を示しており、10は三相交流電源、20は系統インピーダンス、30はLCフィルタ等からなる入力フィルタ、40は双方向に電流を制御可能な複数の交流スイッチSからなるマトリクスコンバータ、50は交流電動機等の負荷、60はいわゆる仮想AC/DC/AC方式を用いた制御装置である。
【0004】
上記制御装置60において、電圧検出手段61はマトリクスコンバータ40の入力電圧を検出し、入力電流制御手段62は、検出された入力電圧と瞬時有効電力指令p*及び瞬時無効電力指令q*とから、数式1により入力電流指令を演算する。
【0005】
【数1】
【0006】
なお、瞬時有効電力により入力電圧及び入力電流指令を規格化すれば、瞬時有効電力指令p*は“1”となる。また、瞬時無効電力指令q*をゼロとすることにより、入力力率を1に制御することができる。
整流器制御手段63は、得られた入力電流指令から、仮想的な整流器のPWMパルスパターンを演算し、インバータ制御手段64は、出力電圧指令から仮想的なインバータのPWMパルスパターンを演算する。PWMパルス合成手段65は、各制御手段63,64から出力されたPWMパルスパターン(スイッチング関数)を合成し、マトリクスコンバータ40のPWMパルスパターンを生成する。このパルスパターンに従ってマトリクスコンバータ40の交流スイッチのオンオフを制御し、所望の出力電圧を得る。
これにより、入力電圧に高調波が含まれていても常に瞬時有効電力が一定となるように入力電流を制御することができ、原理的に出力電圧の歪みは発生せず、負荷50である電動機に脈動や騒音等を生じさせることなく高効率に運転することが可能である。
【0007】
ここで、図11における系統インピーダンス20は、電源10と受電端との間の配線長やトランスの漏れインダクタンス等によるものであり、瞬時値制御では、この系統インピーダンス20が装置容量に対して無視できない場合に、制御系が不安定になる恐れがある。
図12は、図11の系統インピーダンス20及び入力フィルタ30の構成を詳細に示したものであり、ここでは、系統インピーダンス20がトランスの漏れインダクタンス等のインダクタンス成分であるとして説明する。なお、Lsは系統インダクタンス、Lf,Cfはそれぞれ入力フィルタ30を構成するリアクトルのインダクタンス、コンデンサの容量を示す。
【0008】
図13は、図12に基づいて伝達関数を導出し、安定解析を行った場合の特性方程式の根軌跡であり、上記系統インピーダンス20によるリアクタンス(Xs=ωLs、ただし、ωは入力周波数)をマトリクスコンバータ40の装置容量の0%〜3%まで0.5%刻みで変化させた場合のものである。
この図13から、上記リアクタンス(系統リアクタンスという)が大きくなるにつれて、特性方程式の根が徐々に右側に移動し、その実部が正になっていくことが判る。特性方程式の根の実部が正になると、制御系は振動が減衰せず不安定になることが知られており、図13によれば、系統リアクタンスが装置容量の1%以上では、実部が正になって不安定となる。
【0009】
上記のように制御系が不安定になると、入力電流の歪みが増大し、マトリクスコンバータ40の過熱、損傷のみならず、電源10と受電端との間に接続されたトランスの損傷、破壊を招く恐れがあり、好ましくない。また、制御を安定化させるためにフィルタ等の外部装置を追加することは、装置の体積やコストの増加を招く。
更に、瞬時値制御以外でも、入力電流の歪みや不平衡が存在すると出力電圧も歪み、騒音や効率低下などが問題となる。
【0010】
ここで、系統インピーダンスや入力フィルタの値、マトリクスコンバータの負荷条件等によって制御系が不安定になり、入力電流が振動するという問題を解決するために、マトリクスコンバータの入力電流を補正するようにした従来技術が、非特許文献1に記載されている。
図14は、この従来技術を示すブロック図であり、10は三相交流電源、21は系統インピーダンス、31は入力フィルタ、40はマトリクスコンバータ、51は受動負荷や誘導電動機等の負荷を示している。また、70は制御装置であり、71はマトリクスコンバータ40の入力電圧を検出する電圧検出手段、72は検出した入力電圧を振幅V及び位相角θに分離する三相/二相変換手段、73,74はそれぞれ時定数τ1,τ2を有するローパスフィルタ、75は乗算手段、76は乗算手段75から出力される指令に基づいてマトリクスコンバータ40の交流スイッチに対するPWMパルスを生成するパルス生成手段である。
この従来技術によれば、マトリクスコンバータ40の入力電圧の振幅V及び位相角θに含まれる振動成分をローパスフィルタ73,74により除去することで入力電流指令を補正し、これによってマトリクスコンバータ40の入力電流の振動成分をある程度抑制することが可能である。
【0011】
一方、PWMサイクロコンバータの入力フィルタに起因する共振電流を抑制するために、入力フィルタのリアクトルにダンピング抵抗を並列接続して入力電流の高調波成分をダンピング抵抗により消費させる方法や、上記ダンピング抵抗を用いずに、入力フィルタにPWMコンバータ(アクティブフィルタ)を接続して共振電流を抑制する補正電流を注入することにより、入力電流波形を改善するようにした方法が、特許文献2に開示されている。
【0012】
しかしながら、非特許文献1の従来技術では、入力電流指令の補正分がローパスフィルタ73,74の特性によって決まってしまうという問題がある。図15は、この従来技術による特性方程式の根軌跡であり、系統リアクタンスXsがマトリクスコンバータ40の装置容量の1%までは安定であるが、1.5%以上では不安定になっている。従って、入力電流や出力電圧の歪みの抑制は未だ十分ではない。
【0013】
また、特許文献2に記載された従来技術によれば、ダンピング抵抗による熱損失をなくすことは可能であるが、共振電流抑制用のPWMコンバータやその制御回路が必要になり、装置全体が大形化してコスト高になるといった問題がある。
更に、特許文献1は、もっぱら入力フィルタによる共振電流に起因した入力電流の歪み低減を目的としており、電源と受電端との間の配線インピーダンスやトランスの漏れインダクタンス等により、一般的に系統インピーダンスが大きくなった場合の入力電流歪みの低減技術については開示されていない。
【0014】
【特許文献1】特開2005−73233号公報([0052]〜[0066]、図1等)
【特許文献2】特開2003−244960号公報([0002]〜[0007]、図1,図6等)
【非特許文献1】Furong Liu, Christian Klumpner, Frede Blaabjerg, “Stability Analysis and Experimental Evaluation of a Matrix Converter Drive System”, IEEE, 2003, p.2059-2065
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述した従来技術の問題点に鑑み、系統インピーダンスが大きくなった場合にも、新たに電力変換器等を付加することなく入力電流や出力電圧の歪みを抑制可能とする制御装置として、以下に述べるような改良案が考えられる。
図16は、改良された制御装置を示すブロック図であり、入力電流制御手段62Aの構成を除いて図11と実質的に同一である。
図17は入力電流制御手段62Aの内部構成であり、図16の電圧検出手段61により検出された静止座標上の直交二軸成分の入力電圧検出値vα,vβに基づいて入力電流指令を補正する機能を有する。
【0016】
図17における演算手段62aは、電圧検出値vα,vβから、前述した数式1に基づいて静止座標上の入力電流指令iα*,iβ*を演算する。なお、演算手段62aには、規格化された瞬時有効電力指令p*(=1)が入力されている。
一方、電圧検出値vα,vβをハイパスフィルタ62bに入力して入力電圧の高調波成分vαrip,vβripを抽出し、ゲイン乗算手段62cにより補償ゲインKdを乗じて電流の補償成分iαrip,iβripを得る。そして、加算手段62d,62eにおいて、前記電流指令iα*,iβ*に上記補償成分iαrip,iβripをそれぞれ加えることにより、最終的な入力電流指令iα**,iβ**を求める。すなわち、入力電流指令iα**,iβ**は数式2により与えられる。なお、数式3はハイパスフィルタ62bから出力される高調波成分vαrip,vβripである。
【0017】
【数2】
【0018】
【数3】
【0019】
図18は、図17における伝達関数の特性方程式の根軌跡を示しており、図13,図15と同様にマトリクスコンバータ40の装置容量の系統リアクタンスを0%から3%まで0.5%刻みで変化させた場合のものである。
図18から明らかなように、根の全ての実部が負に配置されており、図13,図15と比べて制御系が安定化できている。
すなわち、入力電圧検出値の振動成分をハイパスフィルタ62bにより抽出し、これに補償ゲインKdを乗じて大きさを調節した補正成分iαrip,iβripをもとの電流指令iα*,iβ*に加えて最終的な入力電流指令iα**,iβ**を得ることにより、制御系の不安定要素となる正帰還ループのゲインを抑制し、制御系の交差角周波数を位相余有が確保できるように移動させる結果として、制御系全体の安定化が可能となる。
【0020】
図19は、この改良案によるシミュレーション結果であり、上から受電端の相電圧vin(p.u.)、系統リアクタンスの電流is(p.u.)、ローパスフィルタを挿入した場合のU−V相出力線間電圧Vuv(p.u.)を示している。シミュレーションでは、系統リアクタンスを1%とし、領域Aでは、入力電流指令iα*,iβ*を数式1のみを用いて制御し、領域Bでは、数式2により補正した入力電流指令iα**,iβ**を用いた。
この図19から、領域Aでは、マトリクスコンバータ40の入力電流iinが変動し、これに伴って系統リアクタンスに流れる電流isが変動していると共に、この電流isの変動によって受電端電圧vinが変動している。瞬時値制御では、図11,図12に示したように受電端電圧vinの変動に応じて入力電流iinを演算し制御するため、入力電流iinが更に変動することとなり、結果として正帰還ループに陥って制御が不安定になっている。
一方、図19の領域Bでは、数式2の入力電流指令iα**,iβ**を用いて入力電流の変動成分を抑制することにより、正帰還ループのゲインを抑制することができ、電流isの歪みが小さく抑えられている。また、領域Aでは受電端電圧vinが変動するため、PWM可能範囲外となって出力線間電圧Vuvに歪みが生じているが、領域Bではこの歪みもほとんど発生していない。
【0021】
さて、上述した改良案による入力電流や出力電圧の安定化制御(振動抑制制御)は、系統インピーダンスに応じて、ハイパスフィルタ62bのカットオフ周波数(時定数Tdの逆数)を変化させなければ満足な効果は得られない。図12に示したように、系統インピーダンス20が主に配線やトランスによるインダクタンス成分であるとすると、系統インピーダンス20を含むマトリクスコンバータの入力系統の共振周波数fsは数式4によって表される。この数式4において、前述したごとく、Lsは系統インダクタンス、Lf,Cfは入力フィルタ30を構成するリアクトルのインダクタンス、コンデンサの容量である。
【0022】
【数4】
【0023】
仮に、系統インダクタンスが入力フィルタリアクトルのインダクタンスと等しい場合(Ls=Lf)には、数式4より、共振周波数fsは系統インピーダンス20が存在しない場合に比べて1/√2になる。従って、ハイパスフィルタ62bのカットオフ周波数を固定した場合、系統インピーダンスの大きさによって入力電圧に含まれる高調波成分の振幅や位相が変化するため、安定化制御の特性を悪化させる恐れがある。
これを解決するためには、共振周波数fsに応じてハイパスフィルタ62bのカットオフ周波数を変化させればよいが、系統インピーダンス20は装置の設置環境や配線の長さ、トランスの容量や特性など様々な要因で異なるため、個々の設置場所ごとに作業者が専用の測定器を用いて系統電気定数を測定し、測定された電気定数から共振周波数fsを求める必要が生じる。この場合には、測定器の設置作業や測定作業に多くの時間とコストを要することになる。
【0024】
また、図16,図17等に示した改良案では、制御装置によって限界が存在する。例えば、共振周波数が基本波周波数に接近すると、ハイパスフィルタ62bの設計が困難となり、入力電圧に含まれる高調波成分を精度よく抽出することができなくなる。高調波成分を抽出できなくなると安定化制御の効果が満足されず、マトリクスコンバータ等を含む装置全体の故障や損傷を招く恐れがある。従って、制御限界を超える系統インピーダンスが存在する場合には、装置を安全に使用するため、使用者に警告を発して受電設備や配線環境の改善を促す必要がある。
【0025】
そこで、これらの問題点を解決するために、発明者は、専用の測定器や外部追加装置、煩雑な測定作業を必要とせず、入力系統の共振周波数や系統電気定数を容易に算出可能とし、系統インピーダンスが大きい場合にはアラーム発生や運転不許可等の制御動作、保護動作を講じて電力変換器やトランス等の損傷を未然に防止するようにした交流交流電力変換器の制御装置を、特願2005−314308として既に出願した。
【0026】
図20〜図23は、上記先願発明の主要部を説明するためのものであり、以下、これらの図を参照しつつ先願発明について略述する。
図20は先願発明の構成を示すブロック図である。三相交流電源10には、インダクタンス成分からなる系統インピーダンス20を有する電力系統を介して、マグネットコンタクタやブレーカ等の機械スイッチ101が接続されている。この機械スイッチ101の負荷側には、入力フィルタリアクトル32及び入力フィルタコンデンサ33を介してマトリクスコンバータ40が接続され、その出力側には交流電動機等の負荷50が接続されている。
【0027】
また、104はマトリクスコンバータ制御手段であり、例えば図16に示したように入力電流制御手段62A、整流器制御手段63、インバータ制御手段64、PWMパルスパルス合成手段65等を備え、入力電圧をPWM制御して所定の大きさ及び周波数の出力電圧を負荷50に供給するものである。
【0028】
図20の入力フィルタコンデンサ33の両端の電圧を電圧センサや分圧抵抗により各相ごとに検出して静止座標上の直交二軸成分に変換する電圧検出手段102が接続されており、この電圧検出手段102から出力された二軸成分vα,vβは系統情報演算手段103に入力されている。
系統情報演算手段103は、上記二軸成分vα,vβに基づいて入力系統の共振周波数と系統インダクタンス等の系統電気定数とを演算すると共に、前記機械スイッチ101のオン/オフ信号を生成して出力する機能を備えている。
【0029】
図21は、前記系統情報演算手段103の内部構成図である。
二軸成分vα,vβが入力される電圧ベクトル演算手段103aは、基本波周波数を直流成分にして共振周波数演算精度を向上させるために、数式5に従って入力電圧ベクトルViを演算する。なお、入力電圧基本波位相を用いて座標変換を行っても良い。
【0030】
【数5】
【0031】
数式5により求めた入力電圧ベクトルViを記憶手段103bに一定期間記憶させ、所定の検出サンプリング刻みTSを用いて数値演算手段としての高速フーリエ変換手段103cにより離散フーリエ変換し、入力電圧に含まれる高調波成分の周波数及び振幅を求める。ここで、離散フーリエ変換は、入力信号の周波数を測定するために一定期間サンプリングされたデータをフーリエ級数に展開して入力信号の振幅及び周波数を求める数値演算手法であり、その内容は周知であるため詳細な説明は省略する。
【0032】
高速フーリエ変換手段103cにより得られた振幅及び周波数の情報に基づき、基本波周波数から系統インピーダンス20を含まない状態での入力フィルタ(リアクトル32及びコンデンサ33)の共振周波数(数式4においてLsを省いた共振周波数)までの間で、振幅が最大となる周波数を共振周波数fSとして抽出する。これは、系統インピーダンス20に起因して、共振周波数fSは入力フィルタ自身の共振周波数よりも低く移動するためであり、このように周波数の抽出範囲を限定することで、演算精度を向上させる目的である。
数式4をLsについて解くと、数式6となる。ただし、数式6において、ωs=2πfsである。
【0033】
【数6】
【0034】
高速フーリエ変換手段103cにより抽出された共振周波数fsすなわちωsを数式6に代入すれば、系統インダクタンスLsを求めることができる。図21の電気定数演算手段103dは、ωs=2πfs及び上記の数式6に基づいて系統インダクタンスLsを求める手段である。
なお、数式6におけるCf,Lfは既知であるから、演算量を低減するために、電気定数演算手段103dでは数式6を近似した関数テーブルを用いて求めてもよい。
【0035】
図22は、共振周波数演算のフローチャートを示している。まず、図20の機械スイッチ101をオンし(ステップS1)、それから一定時間が経過するまで(S2NO)、入力電圧の検出、入力電圧ベクトルの演算、記憶手段103bへの保存を繰り返し行う(S6〜S8)る。
一定時間が経過した後に(S2YES)、高速フーリエ変換によって共振周波数を抽出し、前述した数式6を用いて系統インダクタンス等の系統電気定数を演算する(S3〜S5)。
【0036】
なお、入力電圧のサンプリングは、機械スイッチ101をオンした直後に開始する必要があるが、以下にその理由を説明する。
図23は、系統インピーダンスが存在する場合の受電電圧と入力フィルタコンデンサ33の両端電圧のシミュレーション波形を示しており、機械スイッチ101を測定開始時点(0.00秒)から0.02秒後にオンした場合の波形である。この図23によれば、系統インピーダンスの存在により、機械スイッチ101を0.02秒でオンした直後に過渡的な共振が発生して入力フィルタコンデンサ33の電圧が変動し、徐々に共振が減衰しているのがわかる。実際の系統インピーダンスは純粋なインダクタンス成分のみではなく、抵抗成分が存在するため、この抵抗成分によりダンピングがかかり、振動現象は徐々に減衰していく。
従って、定常状態で入力電圧をサンプリングするよりも、機械スイッチ101をオンした直後の過渡現象により振動が継続している状態で入力電圧をサンプリングするほうが、共振周波数fSを精度よく抽出できることとなる。
【0037】
図21の構成の系統情報演算手段103により得られた系統の共振周波数fSや系統インダクタンスLSは、図20に示す如くマトリクスコンバータ制御手段104に送られている。
マトリクスコンバータ制御手段104は、例えば図17に示した内部構成の入力電流制御手段62Aを備えており、この入力電流制御手段62Aは、入力電圧検出値から入力電流指令を演算する演算手段62aと、入力電圧検出値に含まれる任意の周波数成分を抽出する抽出手段としてのハイパスフィルタ62bと、その出力に応じた補正量により入力電流指令を補正する補正手段としてのゲイン乗算手段62c及び加算手段62d,62eを有している。
そこで、図20,図21の系統情報演算手段103から送られた共振周波数fsや系統電気定数に応じてハイパスフィルタ62bのカットオフ周波数を最適値に調整する等の処理を行なえば、図16,図17等を参照しながら述べた原理によって入力電流や出力電圧の振動抑制、安定化制御を行うことができる。
【0038】
さて、上述した先願発明によれば、マトリクスコンバータ40の入力電圧の高調波成分から共振周波数や系統電気定数を演算することが一応可能であるが、入力電圧に含まれる高調波成分は基本波成分の振幅に対して数%程度であるため、演算精度の点で問題がある。
また、前述した如く、検出精度を高めるために機械スイッチ101をオンした直後の過渡状態において入力電圧の高調波成分を抽出しているが、機械スイッチ101の動作遅れ等を考慮した上で機械スイッチ101の操作と記憶手段103bへの保存動作のタイミング調整を行わなくてはならない等、シーケンス処理に複雑な演算が必要になるおそれがあった。
【0039】
そこで本発明の解決課題は、共振周波数等の演算精度を向上させ、複雑なシーケンス処理を要することなく容易に入力系統の共振周波数や系統電気定数を算出可能とし、系統インピーダンスが大きい場合にはアラーム発生や運転不許可等の制御動作、保護動作を講じて電力変換器やトランス等の損傷を未然に防止するようにした交流交流電力変換器の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0040】
上記課題を解決するため、請求項1に記載した発明は、交流電源電圧を任意の大きさ及び周波数の交流電圧に変換する交流交流電力変換器の制御装置において、
前記電力変換器の少なくとも一相の入力電流を検出する電流検出手段と、
この手段により検出した入力電流の高調波成分を抽出し、その周波数を演算すると共に、演算した周波数から前記電力変換器の入力系統の共振周波数または系統電気定数を演算する系統情報演算手段と、を備えたものである。
【0041】
請求項2に記載した発明は、請求項1において、
前記系統情報演算手段は、入力系統の共振周波数を演算し、この共振周波数を用いて系統電気定数としての系統インダクタンスを演算するものである。
【0042】
請求項3に記載した発明は、請求項1または2において、
前記系統情報演算手段は、
入力電流のサンプリングを任意のタイミングから開始して所定期間のサンプリングデータを記憶する記憶手段と、記憶したデータから入力電流の振幅及び周波数を算出して前記共振周波数を抽出する数値演算手段と、を有するものである。
【0043】
請求項4に記載した発明は、請求項3において、
前記数値演算手段は、高速フーリエ変換手段であることを特徴とする。
【0044】
請求項5に記載した発明は、請求項1〜4の何れか1項において、
前記系統情報演算手段により演算した共振周波数または系統電気定数を前記電力変換器の制御に用いるものである。
【0045】
請求項6に記載した発明は、請求項5において、
前記電力変換器の制御手段は、前記電力変換器の入力電圧検出値から入力電流指令を生成する入力電流制御手段を備え、
この入力電流制御手段は、前記入力電圧検出値に含まれる任意の周波数成分を抽出する抽出手段と、この抽出手段の出力に応じた補正量により前記入力電流指令を補正する補正手段とを有し、
前記系統情報演算手段により演算した共振周波数を用いて前記抽出手段の特性を変化させるものである。
【0046】
請求項7に記載した発明は、請求項6において、
前記共振周波数を用いて変化させる前記抽出手段の特性が、この抽出手段のカットオフ周波数であることを特徴とする。
【0047】
請求項8に記載した発明は、請求項1〜7の何れか1項において、
前記系統情報演算手段により演算した共振周波数及び系統電気定数を用いて、前記電力変換器に係る制動係数を演算する手段を備えたものである。
【0048】
請求項9に記載した発明は、請求項8において、
前記制動係数を前記電力変換器の制御に用いるものである。
【0049】
請求項10に記載した発明は、請求項9において、
前記制動係数が規定値以下である場合に前記電力変換器の運転を不許可とする手段を備えたものである。
【0050】
請求項11に記載した発明は、請求項1〜10の何れか1項において、
前記系統情報演算手段により演算した共振周波数が規定値以下である場合に前記電力変換器の運転を不許可とする手段を備えたものである。
【0051】
請求項12に記載した発明は、請求項10または11において、
前記電力変換器の運転を不許可とする際にアラームを出力する手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0052】
本発明においては、電力変換器の入力電流から高調波成分の周波数を演算して系統インピーダンスを含む入力系統の共振周波数を求め、この共振周波数から系統インダクタンス等の系統電気定数や制動係数を演算する。
これにより、専用の測定器や外部装置の追加、煩雑な測定作業等を要することなく制御や保護動作に有用な系統情報を容易に得ることができると共に、系統インピーダンスが大きい場合には、運転待機やアラーム発生により故障や事故を未然に防止して安全に運転可能な制御装置を提供することが可能である。
また、入力電流を任意のタイミングから所定期間サンプリングして記憶し、共振周波数の演算に用いればよいため、機械スイッチの操作と記憶動作とのタイミング調整を行うための複雑なシーケンス処理も不要になり、演算負荷の軽減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の第1実施形態を示すブロック図であり、図20と同一の構成要素には同一の番号を付して説明を省略し、以下では異なる部分を中心に説明する。
なお、図1におけるマトリクスコンバータ制御手段104は、例えば、図16に示した入力電流制御手段62A、整流器制御手段63、インバータ制御手段64、PWMパルス合成手段65を備えており、図1の電圧検出手段102により検出される入力電圧に応じた入力電流指令と負荷50に応じた出力電圧指令とから、それぞれ整流器制御手段63及びインバータ制御手段64を介してパルスを生成し、これらのパルスをPWMパルス合成手段65により合成してマトリクスコンバータ40の交流スイッチに与えるように構成されている。
【0054】
また、上記入力電流制御手段62Aは、図17に示したように入力電圧検出値から入力電流指令を演算する演算手段62aと、入力電圧検出値に含まれる任意の周波数成分を抽出する抽出手段としてのハイパスフィルタ62bと、その出力に応じた補正量により入力電流指令を補正する補正手段としてのゲイン乗算手段62c及び加算手段62d,62eを有している。
【0055】
さて、図1において、入力フィルタリアクトル32のマトリクスコンバータ40側にはマトリクスコンバータ40の一相分(例えばR相)の入力電流を検出する電流検出手段105が接続されており、この電流検出手段105により検出した入力電流irは系統情報演算手段106に入力されている。
【0056】
図2は、系統情報演算手段106の構成を示している。
前記電流検出手段105により検出した一相分の入力電流irを入力基本波周期のn倍の期間にわたってサンプリングし、このデータiαは記憶手段106aに記憶される。ここで、サンプリングする期間を入力基本波周期のn倍の期間とするのは、検出された入力電流が交流量であるため、後述するフーリエ変換を行う場合の信号の繰り返し雑音ノイズを低減し、周波数成分を精度良く検出するためである。
このようにしてデータを記憶すれば、電流検出手段105を一相分のみで構成することができ、検出器に要するコストを抑制することができる。また、前述したnの値は、大きいほどデータ量が豊富になるため精度向上に役立つ反面、必要な記憶容量が大きくなる。従って、nの値は、使用する記憶装置の容量やコストを考慮して決定すればよい。
【0057】
次に、所定の検出サンプリング刻みTSを用いて高速フーリエ変換手段106bにより離散フーリエ変換を行い、入力信号の周波数及び振幅を演算する。離散フーリエ変換は、入力信号の周波数を測定するために一定期間サンプリングされたデータをフーリエ級数に変換し、入力信号の周波数及び振幅を求める数値演算手法として周知であるため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0058】
高速フーリエ変換手段106bにより得られた振幅及び周波数の情報に基づき、先願発明と同様に共振周波数fSを抽出し、更に、前述した数式6によって系統インダクタンスLsを算出する。図2の電気定数演算手段106cは、ωs=2πfs及び数式6に基づいて系統インダクタンスLsを求める手段である。
なお、数式6におけるCf,Lfは既知であるから、演算量を低減するために、電気定数演算手段106cでは数式6を近似した関数テーブルを用いて求めてもよい。
【0059】
図3は、共振周波数演算のフローチャートを示している。まず、任意のタイミングから基本周波数のn倍の期間が経過するまで入力電流をサンプリングして検出し、記憶手段106aに記憶する(ステップS1NO,S5,S6)。基本周波数のn倍の期間が経過したら(S1YES)、高速フーリエ変換手段106bにより離散フーリエ変換を行って共振周波数を抽出し、前述した数式6を用いて系統インダクタンス等の系統電気定数を演算する(S2〜S4)。
【0060】
ここで、本実施形態では、図22に示したように機械スイッチをオンした直後の過渡状態ではなく、任意のタイミングからサンプリングして記憶手段106aに記憶させても高精度に共振周波数を検出することができる。その理由を以下に説明する。
【0061】
図4は、マトリクスコンバータ40の入力側の回路構成図である。ここで、機械スイッチ107は仮定的に挿入したものである。
本実施形態における共振周波数の演算は、マトリクスコンバータ40の停止中に行うため、負荷50には電流が流れず、電源10から入力側フィルタリアクトル32及び入力側フィルタコンデンサ33を介して循環する電流が流れる。
この循環電流が流れる一相分の回路のインピーダンスは、数式7によって表される。この数式7において、ωは入力の角周波数であり、また、Lf’は循環電流が通過する2個のリアクトルの合成インダクタンスを示すものとする。
【0062】
【数7】
【0063】
図5は、角周波数ωを変化させた場合の数式7のインピーダンスZを示している。
数式7から明らかなように、LC共振回路では入力周波数に応じてインピーダンスZが変化し、図5に示すように共振周波数ωsでインピーダンスZが最小になる特性となる。入力電流は入力電圧をインピーダンスにより除した値であるから、共振周波数ωs近傍の振幅は顕著に表れる。そして、振幅が大きいほど情報量は多くなるので、共振周波数ωsの演算精度を高くすることができるものである。
【0064】
なお、図6は、図4において機械スイッチ107をオンした場合の波形図であり、図6の上から入力電圧、入力フィルタコンデンサ電圧、入力電流を示している。
この図6によれば、フィルタコンデンサ電圧に含まれる共振周波数成分は、入力電圧の基本波に対して微小であるが、入力電流に含まれる共振周波数成分は図5に示したインピーダンスZの特性により顕著に表れている。従って、本実施形態のように入力電流を検出することにより、機械スイッチ107をオンした直後の過渡状態における入力電圧を検出しなくても、高精度に共振周波数を演算することができる。このため、機械スイッチ107のオン操作と記憶手段106aへの記憶動作とのタイミング調整も不要になり、シーケンス処理の容易化が可能になる。
【0065】
系統情報演算手段106により共振周波数fs及び系統電気定数を演算した後は、先願発明と同様に図17のハイパスフィルタ62bのカットオフ周波数を最適値に調整する等の処理を行なうことにより、図16,図17等を参照しながら述べた原理によって入力電流や出力電圧の振動抑制、安定化制御を行うことが可能である。
ちなみに、共振周波数fsに応じてハイパスフィルタ62bのカットオフ周波数を決定する場合、共振周波数の減衰量や位相が最適になるように決定することが望ましい。例えば、共振周波数fsが500Hzの場合には、カットオフ周波数を1/2の250Hz程度に設定すると良いことが確認されている。
【0066】
次に、図7は本発明の第2実施形態の構成を示すブロック図である。
この実施形態が第1実施形態と異なる点は、制動係数演算手段108を有する点である。この制動係数演算手段108には系統情報演算手段106から共振周波数及び系統電気定数が入力されており、これらの情報に基づいて得た制動係数がマトリクスコンバータ制御手段104に入力されている。
【0067】
マトリクスコンバータの入力フィルタには、共振を抑制するために抵抗を挿入してダンピングをかける場合がある。一例として、図7に示すように入力フィルタリアクトル32と並列にダンピング抵抗34をそれぞれ接続した場合について説明する。
【0068】
図8は、系統インピーダンス20を入力フィルタリアクトル32(インダクタンスLf)に対して大きくした場合の制動係数を示したものであり、横軸は系統インダクタンスLSのLfに対する比に相当する。ここで、制動係数とは、共振系のダンピングがどれくらいかかりやすいかを示す数値であり、制動係数の数値が大きいほどダンピングが強くかかって振動の減衰、つまり振動の抑制効果が大きくなる。図8によれば、系統インダクタンスが大きくなるにつれて制動係数が小さくなっており、系統インダクタンスと制動係数とは概ね反比例の関係にあるのがわかる。
このように制動係数は系統インダクタンスの大きさに左右されるので、系統情報演算手段106により得た系統インダクタンスに応じてダンピング抵抗34を選択したり、場合によっては運転不許可等の保護手段を講じることができる。
【0069】
すなわち、この実施形態では、第1実施形態と同様に、系統情報演算手段106により入力系統の共振周波数と系統インダクタンスLSを含む系統電気定数とを求めたら、図7の制動係数演算手段108では、図8の関数テーブルを用いて制動係数を演算し、マトリクスコンバータ制御手段104に出力する。系統インダクタンスLSに対応する制動係数が得られれば、振動成分の増幅量や減衰時間等の推定が可能になるので、マトリクスコンバータ制御手段104では、この制動係数を予め設定された規定値(下限値)と比較し、制動係数が前記規定値以下になった場合には振動の抑制が困難と判断してマトリクスコンバータ40の運転を不許可とする(運転待機状態とする)、外部にアラーム出力する等の保護動作を実行することができる。
これにより、マトリクスコンバータ40やトランス等の故障や損傷を防ぐことができる。
【0070】
なお、図7ではダンピング抵抗34が入力フィルタリアクトル32と並列に接続されているが、ダンピング抵抗34の挿入方法は様々であるから、その挿入方法に応じて図8のような関数テーブルを複数用意しておき、系統インダクタンスLSに対応する制動係数を求めればよい。
【0071】
次いで、図9は本発明の第3実施形態の構成を示すブロック図である。
この実施形態では、系統情報演算手段106により得た共振周波数及び系統電気定数が、運転監視手段109を介してマトリクスコンバータ制御手段104に入力されている。運転監視手段109には、共振周波数及び系統電気定数についてそれぞれ予め規定値が設定されており、共振周波数等をこの規定値と比較した結果に応じて外部にアラームを発生させるように構成されている。
【0072】
図10は、この実施形態における運転許可シーケンスを示している。例えば、系統情報演算手段106により得た共振周波数が規定値(下限値)以下、すなわち系統インダクタンスが大きい場合には(ステップS11,S12YES)、アラームを出力させ(S13)、使用者に共振周波数及び系統インダクタンスが制御系の限界を超過していることを知らせて運転待機状態とする(S14,S15)。上記の規定値は制御装置の性能によるが、例えば基本周波数の5倍程度とする。
なお、共振周波数が規定値を超えている場合には、制御可能範囲内と判断してアラームを解除し、運転準備を行う(S16,S17)。
【0073】
共振周波数が規定値以下である場合の対策方法としては、受電設備からマトリクスコンバータ40までの配線長を短くしてインダクタンスを小さくしたり、あるいは受電設備に設置されるトランスとして漏れインダクタンスの小さいものを用いる等が考えられる。
なお、本実施形態における運転監視手段109の機能として、図7に示した制動係数演算手段108の機能を併有させても良い。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1の主要部を示す構成図である。
【図3】第1実施形態における共振周波数演算のフローチャートである。
【図4】第1実施形態におけるマトリクスコンバータの入力側の回路構成図である。
【図5】角周波数ωを変化させた場合の数式7のインピーダンスZを示す図である。
【図6】図4において機械スイッチをオンした場合の電圧、電流の波形図である。
【図7】本発明の第2実施形態を示すブロック図である。
【図8】系統インダクタンスと制動係数との関係を示す図である。
【図9】本発明の第3実施形態を示すブロック図である。
【図10】第3実施形態における運転許可シーケンスを示すフローチャートである。
【図11】特許文献1に係る発明の構成を示すブロック図である。
【図12】図11における主要部の構成図である。
【図13】図12の構成を対象として安定解析を行った場合の根軌跡を示す図である。
【図14】非特許文献1に記載された従来技術を示すブロック図である。
【図15】図14の従来技術を対象として安定解析を行った場合の根軌跡を示す図である。
【図16】改良案に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【図17】図16における主要部の構成図である。
【図18】改良案を対象として安定解析を行った場合の根軌跡を示す図である。
【図19】改良案によるシミュレーション結果を示す図である。
【図20】先願発明の構成を示すブロック図である。
【図21】図20における主要部の構成図である。
【図22】先願発明における共振周波数演算のフローチャートである。
【図23】先願発明における受電電圧及び入力フィルタコンデンサの電圧を示す波形図である。
【符号の説明】
【0075】
10:三相交流電源
20:系統インピーダンス
32:入力フィルタリアクトル
33:入力フィルタコンデンサ
34:入力フィルタダンピング抵抗
40:マトリクスコンバータ
50:負荷
102:電圧検出手段
104:マトリクスコンバータ制御手段
105:電流検出手段
106:系統情報演算手段
106a:記憶手段
106b:高速フーリエ変換手段
106c:電気定数演算手段
107:機械スイッチ
108:制動係数演算手段
109:運転監視手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体スイッチング素子を用いて多相の交流電圧を任意の大きさ及び周波数の交流電圧に変換する半導体電力変換器の制御装置に関し、例えば、マトリクスコンバータのように電解コンデンサ等の大形のエネルギーバッファを持たずに交流電圧を直接、交流電圧に変換する直接電力変換器において、系統インピーダンスが存在する場合の入力系統の共振周波数や系統電気定数を演算して電力変換器の制御、保護動作に用いるようにした制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マトリクスコンバータは、長寿命、省スペースであって入力電流を制御できるために電力回生が可能であり、電源高調波を抑制できるという特徴がある。
一方、マトリクスコンバータでは、入力電圧に高調波が含まれる場合に入力電流を正弦波に制御すると、有効電力が脈動する。この有効電力脈動は、大形のエネルギーバッファを有する電力変換器では吸収可能であるが、エネルギーバッファのないマトリクスコンバータでは、入力電圧の歪みが出力電圧を歪ませる原因となる。この出力電圧の歪みは、負荷として電動機が接続されている場合に電動機の脈動や騒音を生じさせるだけでなく、高調波電流により銅損が増加し、効率を低下させるため好ましくない。
【0003】
このため、瞬時有効電力を一定にするような入力電流指令を演算し、入力電圧に高調波が含まれる場合や入力電圧が不平衡である場合にも出力電圧を歪ませないようにした制御装置が、後述する特許文献1に記載されている。
図11はこの従来技術の構成を示しており、10は三相交流電源、20は系統インピーダンス、30はLCフィルタ等からなる入力フィルタ、40は双方向に電流を制御可能な複数の交流スイッチSからなるマトリクスコンバータ、50は交流電動機等の負荷、60はいわゆる仮想AC/DC/AC方式を用いた制御装置である。
【0004】
上記制御装置60において、電圧検出手段61はマトリクスコンバータ40の入力電圧を検出し、入力電流制御手段62は、検出された入力電圧と瞬時有効電力指令p*及び瞬時無効電力指令q*とから、数式1により入力電流指令を演算する。
【0005】
【数1】
【0006】
なお、瞬時有効電力により入力電圧及び入力電流指令を規格化すれば、瞬時有効電力指令p*は“1”となる。また、瞬時無効電力指令q*をゼロとすることにより、入力力率を1に制御することができる。
整流器制御手段63は、得られた入力電流指令から、仮想的な整流器のPWMパルスパターンを演算し、インバータ制御手段64は、出力電圧指令から仮想的なインバータのPWMパルスパターンを演算する。PWMパルス合成手段65は、各制御手段63,64から出力されたPWMパルスパターン(スイッチング関数)を合成し、マトリクスコンバータ40のPWMパルスパターンを生成する。このパルスパターンに従ってマトリクスコンバータ40の交流スイッチのオンオフを制御し、所望の出力電圧を得る。
これにより、入力電圧に高調波が含まれていても常に瞬時有効電力が一定となるように入力電流を制御することができ、原理的に出力電圧の歪みは発生せず、負荷50である電動機に脈動や騒音等を生じさせることなく高効率に運転することが可能である。
【0007】
ここで、図11における系統インピーダンス20は、電源10と受電端との間の配線長やトランスの漏れインダクタンス等によるものであり、瞬時値制御では、この系統インピーダンス20が装置容量に対して無視できない場合に、制御系が不安定になる恐れがある。
図12は、図11の系統インピーダンス20及び入力フィルタ30の構成を詳細に示したものであり、ここでは、系統インピーダンス20がトランスの漏れインダクタンス等のインダクタンス成分であるとして説明する。なお、Lsは系統インダクタンス、Lf,Cfはそれぞれ入力フィルタ30を構成するリアクトルのインダクタンス、コンデンサの容量を示す。
【0008】
図13は、図12に基づいて伝達関数を導出し、安定解析を行った場合の特性方程式の根軌跡であり、上記系統インピーダンス20によるリアクタンス(Xs=ωLs、ただし、ωは入力周波数)をマトリクスコンバータ40の装置容量の0%〜3%まで0.5%刻みで変化させた場合のものである。
この図13から、上記リアクタンス(系統リアクタンスという)が大きくなるにつれて、特性方程式の根が徐々に右側に移動し、その実部が正になっていくことが判る。特性方程式の根の実部が正になると、制御系は振動が減衰せず不安定になることが知られており、図13によれば、系統リアクタンスが装置容量の1%以上では、実部が正になって不安定となる。
【0009】
上記のように制御系が不安定になると、入力電流の歪みが増大し、マトリクスコンバータ40の過熱、損傷のみならず、電源10と受電端との間に接続されたトランスの損傷、破壊を招く恐れがあり、好ましくない。また、制御を安定化させるためにフィルタ等の外部装置を追加することは、装置の体積やコストの増加を招く。
更に、瞬時値制御以外でも、入力電流の歪みや不平衡が存在すると出力電圧も歪み、騒音や効率低下などが問題となる。
【0010】
ここで、系統インピーダンスや入力フィルタの値、マトリクスコンバータの負荷条件等によって制御系が不安定になり、入力電流が振動するという問題を解決するために、マトリクスコンバータの入力電流を補正するようにした従来技術が、非特許文献1に記載されている。
図14は、この従来技術を示すブロック図であり、10は三相交流電源、21は系統インピーダンス、31は入力フィルタ、40はマトリクスコンバータ、51は受動負荷や誘導電動機等の負荷を示している。また、70は制御装置であり、71はマトリクスコンバータ40の入力電圧を検出する電圧検出手段、72は検出した入力電圧を振幅V及び位相角θに分離する三相/二相変換手段、73,74はそれぞれ時定数τ1,τ2を有するローパスフィルタ、75は乗算手段、76は乗算手段75から出力される指令に基づいてマトリクスコンバータ40の交流スイッチに対するPWMパルスを生成するパルス生成手段である。
この従来技術によれば、マトリクスコンバータ40の入力電圧の振幅V及び位相角θに含まれる振動成分をローパスフィルタ73,74により除去することで入力電流指令を補正し、これによってマトリクスコンバータ40の入力電流の振動成分をある程度抑制することが可能である。
【0011】
一方、PWMサイクロコンバータの入力フィルタに起因する共振電流を抑制するために、入力フィルタのリアクトルにダンピング抵抗を並列接続して入力電流の高調波成分をダンピング抵抗により消費させる方法や、上記ダンピング抵抗を用いずに、入力フィルタにPWMコンバータ(アクティブフィルタ)を接続して共振電流を抑制する補正電流を注入することにより、入力電流波形を改善するようにした方法が、特許文献2に開示されている。
【0012】
しかしながら、非特許文献1の従来技術では、入力電流指令の補正分がローパスフィルタ73,74の特性によって決まってしまうという問題がある。図15は、この従来技術による特性方程式の根軌跡であり、系統リアクタンスXsがマトリクスコンバータ40の装置容量の1%までは安定であるが、1.5%以上では不安定になっている。従って、入力電流や出力電圧の歪みの抑制は未だ十分ではない。
【0013】
また、特許文献2に記載された従来技術によれば、ダンピング抵抗による熱損失をなくすことは可能であるが、共振電流抑制用のPWMコンバータやその制御回路が必要になり、装置全体が大形化してコスト高になるといった問題がある。
更に、特許文献1は、もっぱら入力フィルタによる共振電流に起因した入力電流の歪み低減を目的としており、電源と受電端との間の配線インピーダンスやトランスの漏れインダクタンス等により、一般的に系統インピーダンスが大きくなった場合の入力電流歪みの低減技術については開示されていない。
【0014】
【特許文献1】特開2005−73233号公報([0052]〜[0066]、図1等)
【特許文献2】特開2003−244960号公報([0002]〜[0007]、図1,図6等)
【非特許文献1】Furong Liu, Christian Klumpner, Frede Blaabjerg, “Stability Analysis and Experimental Evaluation of a Matrix Converter Drive System”, IEEE, 2003, p.2059-2065
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述した従来技術の問題点に鑑み、系統インピーダンスが大きくなった場合にも、新たに電力変換器等を付加することなく入力電流や出力電圧の歪みを抑制可能とする制御装置として、以下に述べるような改良案が考えられる。
図16は、改良された制御装置を示すブロック図であり、入力電流制御手段62Aの構成を除いて図11と実質的に同一である。
図17は入力電流制御手段62Aの内部構成であり、図16の電圧検出手段61により検出された静止座標上の直交二軸成分の入力電圧検出値vα,vβに基づいて入力電流指令を補正する機能を有する。
【0016】
図17における演算手段62aは、電圧検出値vα,vβから、前述した数式1に基づいて静止座標上の入力電流指令iα*,iβ*を演算する。なお、演算手段62aには、規格化された瞬時有効電力指令p*(=1)が入力されている。
一方、電圧検出値vα,vβをハイパスフィルタ62bに入力して入力電圧の高調波成分vαrip,vβripを抽出し、ゲイン乗算手段62cにより補償ゲインKdを乗じて電流の補償成分iαrip,iβripを得る。そして、加算手段62d,62eにおいて、前記電流指令iα*,iβ*に上記補償成分iαrip,iβripをそれぞれ加えることにより、最終的な入力電流指令iα**,iβ**を求める。すなわち、入力電流指令iα**,iβ**は数式2により与えられる。なお、数式3はハイパスフィルタ62bから出力される高調波成分vαrip,vβripである。
【0017】
【数2】
【0018】
【数3】
【0019】
図18は、図17における伝達関数の特性方程式の根軌跡を示しており、図13,図15と同様にマトリクスコンバータ40の装置容量の系統リアクタンスを0%から3%まで0.5%刻みで変化させた場合のものである。
図18から明らかなように、根の全ての実部が負に配置されており、図13,図15と比べて制御系が安定化できている。
すなわち、入力電圧検出値の振動成分をハイパスフィルタ62bにより抽出し、これに補償ゲインKdを乗じて大きさを調節した補正成分iαrip,iβripをもとの電流指令iα*,iβ*に加えて最終的な入力電流指令iα**,iβ**を得ることにより、制御系の不安定要素となる正帰還ループのゲインを抑制し、制御系の交差角周波数を位相余有が確保できるように移動させる結果として、制御系全体の安定化が可能となる。
【0020】
図19は、この改良案によるシミュレーション結果であり、上から受電端の相電圧vin(p.u.)、系統リアクタンスの電流is(p.u.)、ローパスフィルタを挿入した場合のU−V相出力線間電圧Vuv(p.u.)を示している。シミュレーションでは、系統リアクタンスを1%とし、領域Aでは、入力電流指令iα*,iβ*を数式1のみを用いて制御し、領域Bでは、数式2により補正した入力電流指令iα**,iβ**を用いた。
この図19から、領域Aでは、マトリクスコンバータ40の入力電流iinが変動し、これに伴って系統リアクタンスに流れる電流isが変動していると共に、この電流isの変動によって受電端電圧vinが変動している。瞬時値制御では、図11,図12に示したように受電端電圧vinの変動に応じて入力電流iinを演算し制御するため、入力電流iinが更に変動することとなり、結果として正帰還ループに陥って制御が不安定になっている。
一方、図19の領域Bでは、数式2の入力電流指令iα**,iβ**を用いて入力電流の変動成分を抑制することにより、正帰還ループのゲインを抑制することができ、電流isの歪みが小さく抑えられている。また、領域Aでは受電端電圧vinが変動するため、PWM可能範囲外となって出力線間電圧Vuvに歪みが生じているが、領域Bではこの歪みもほとんど発生していない。
【0021】
さて、上述した改良案による入力電流や出力電圧の安定化制御(振動抑制制御)は、系統インピーダンスに応じて、ハイパスフィルタ62bのカットオフ周波数(時定数Tdの逆数)を変化させなければ満足な効果は得られない。図12に示したように、系統インピーダンス20が主に配線やトランスによるインダクタンス成分であるとすると、系統インピーダンス20を含むマトリクスコンバータの入力系統の共振周波数fsは数式4によって表される。この数式4において、前述したごとく、Lsは系統インダクタンス、Lf,Cfは入力フィルタ30を構成するリアクトルのインダクタンス、コンデンサの容量である。
【0022】
【数4】
【0023】
仮に、系統インダクタンスが入力フィルタリアクトルのインダクタンスと等しい場合(Ls=Lf)には、数式4より、共振周波数fsは系統インピーダンス20が存在しない場合に比べて1/√2になる。従って、ハイパスフィルタ62bのカットオフ周波数を固定した場合、系統インピーダンスの大きさによって入力電圧に含まれる高調波成分の振幅や位相が変化するため、安定化制御の特性を悪化させる恐れがある。
これを解決するためには、共振周波数fsに応じてハイパスフィルタ62bのカットオフ周波数を変化させればよいが、系統インピーダンス20は装置の設置環境や配線の長さ、トランスの容量や特性など様々な要因で異なるため、個々の設置場所ごとに作業者が専用の測定器を用いて系統電気定数を測定し、測定された電気定数から共振周波数fsを求める必要が生じる。この場合には、測定器の設置作業や測定作業に多くの時間とコストを要することになる。
【0024】
また、図16,図17等に示した改良案では、制御装置によって限界が存在する。例えば、共振周波数が基本波周波数に接近すると、ハイパスフィルタ62bの設計が困難となり、入力電圧に含まれる高調波成分を精度よく抽出することができなくなる。高調波成分を抽出できなくなると安定化制御の効果が満足されず、マトリクスコンバータ等を含む装置全体の故障や損傷を招く恐れがある。従って、制御限界を超える系統インピーダンスが存在する場合には、装置を安全に使用するため、使用者に警告を発して受電設備や配線環境の改善を促す必要がある。
【0025】
そこで、これらの問題点を解決するために、発明者は、専用の測定器や外部追加装置、煩雑な測定作業を必要とせず、入力系統の共振周波数や系統電気定数を容易に算出可能とし、系統インピーダンスが大きい場合にはアラーム発生や運転不許可等の制御動作、保護動作を講じて電力変換器やトランス等の損傷を未然に防止するようにした交流交流電力変換器の制御装置を、特願2005−314308として既に出願した。
【0026】
図20〜図23は、上記先願発明の主要部を説明するためのものであり、以下、これらの図を参照しつつ先願発明について略述する。
図20は先願発明の構成を示すブロック図である。三相交流電源10には、インダクタンス成分からなる系統インピーダンス20を有する電力系統を介して、マグネットコンタクタやブレーカ等の機械スイッチ101が接続されている。この機械スイッチ101の負荷側には、入力フィルタリアクトル32及び入力フィルタコンデンサ33を介してマトリクスコンバータ40が接続され、その出力側には交流電動機等の負荷50が接続されている。
【0027】
また、104はマトリクスコンバータ制御手段であり、例えば図16に示したように入力電流制御手段62A、整流器制御手段63、インバータ制御手段64、PWMパルスパルス合成手段65等を備え、入力電圧をPWM制御して所定の大きさ及び周波数の出力電圧を負荷50に供給するものである。
【0028】
図20の入力フィルタコンデンサ33の両端の電圧を電圧センサや分圧抵抗により各相ごとに検出して静止座標上の直交二軸成分に変換する電圧検出手段102が接続されており、この電圧検出手段102から出力された二軸成分vα,vβは系統情報演算手段103に入力されている。
系統情報演算手段103は、上記二軸成分vα,vβに基づいて入力系統の共振周波数と系統インダクタンス等の系統電気定数とを演算すると共に、前記機械スイッチ101のオン/オフ信号を生成して出力する機能を備えている。
【0029】
図21は、前記系統情報演算手段103の内部構成図である。
二軸成分vα,vβが入力される電圧ベクトル演算手段103aは、基本波周波数を直流成分にして共振周波数演算精度を向上させるために、数式5に従って入力電圧ベクトルViを演算する。なお、入力電圧基本波位相を用いて座標変換を行っても良い。
【0030】
【数5】
【0031】
数式5により求めた入力電圧ベクトルViを記憶手段103bに一定期間記憶させ、所定の検出サンプリング刻みTSを用いて数値演算手段としての高速フーリエ変換手段103cにより離散フーリエ変換し、入力電圧に含まれる高調波成分の周波数及び振幅を求める。ここで、離散フーリエ変換は、入力信号の周波数を測定するために一定期間サンプリングされたデータをフーリエ級数に展開して入力信号の振幅及び周波数を求める数値演算手法であり、その内容は周知であるため詳細な説明は省略する。
【0032】
高速フーリエ変換手段103cにより得られた振幅及び周波数の情報に基づき、基本波周波数から系統インピーダンス20を含まない状態での入力フィルタ(リアクトル32及びコンデンサ33)の共振周波数(数式4においてLsを省いた共振周波数)までの間で、振幅が最大となる周波数を共振周波数fSとして抽出する。これは、系統インピーダンス20に起因して、共振周波数fSは入力フィルタ自身の共振周波数よりも低く移動するためであり、このように周波数の抽出範囲を限定することで、演算精度を向上させる目的である。
数式4をLsについて解くと、数式6となる。ただし、数式6において、ωs=2πfsである。
【0033】
【数6】
【0034】
高速フーリエ変換手段103cにより抽出された共振周波数fsすなわちωsを数式6に代入すれば、系統インダクタンスLsを求めることができる。図21の電気定数演算手段103dは、ωs=2πfs及び上記の数式6に基づいて系統インダクタンスLsを求める手段である。
なお、数式6におけるCf,Lfは既知であるから、演算量を低減するために、電気定数演算手段103dでは数式6を近似した関数テーブルを用いて求めてもよい。
【0035】
図22は、共振周波数演算のフローチャートを示している。まず、図20の機械スイッチ101をオンし(ステップS1)、それから一定時間が経過するまで(S2NO)、入力電圧の検出、入力電圧ベクトルの演算、記憶手段103bへの保存を繰り返し行う(S6〜S8)る。
一定時間が経過した後に(S2YES)、高速フーリエ変換によって共振周波数を抽出し、前述した数式6を用いて系統インダクタンス等の系統電気定数を演算する(S3〜S5)。
【0036】
なお、入力電圧のサンプリングは、機械スイッチ101をオンした直後に開始する必要があるが、以下にその理由を説明する。
図23は、系統インピーダンスが存在する場合の受電電圧と入力フィルタコンデンサ33の両端電圧のシミュレーション波形を示しており、機械スイッチ101を測定開始時点(0.00秒)から0.02秒後にオンした場合の波形である。この図23によれば、系統インピーダンスの存在により、機械スイッチ101を0.02秒でオンした直後に過渡的な共振が発生して入力フィルタコンデンサ33の電圧が変動し、徐々に共振が減衰しているのがわかる。実際の系統インピーダンスは純粋なインダクタンス成分のみではなく、抵抗成分が存在するため、この抵抗成分によりダンピングがかかり、振動現象は徐々に減衰していく。
従って、定常状態で入力電圧をサンプリングするよりも、機械スイッチ101をオンした直後の過渡現象により振動が継続している状態で入力電圧をサンプリングするほうが、共振周波数fSを精度よく抽出できることとなる。
【0037】
図21の構成の系統情報演算手段103により得られた系統の共振周波数fSや系統インダクタンスLSは、図20に示す如くマトリクスコンバータ制御手段104に送られている。
マトリクスコンバータ制御手段104は、例えば図17に示した内部構成の入力電流制御手段62Aを備えており、この入力電流制御手段62Aは、入力電圧検出値から入力電流指令を演算する演算手段62aと、入力電圧検出値に含まれる任意の周波数成分を抽出する抽出手段としてのハイパスフィルタ62bと、その出力に応じた補正量により入力電流指令を補正する補正手段としてのゲイン乗算手段62c及び加算手段62d,62eを有している。
そこで、図20,図21の系統情報演算手段103から送られた共振周波数fsや系統電気定数に応じてハイパスフィルタ62bのカットオフ周波数を最適値に調整する等の処理を行なえば、図16,図17等を参照しながら述べた原理によって入力電流や出力電圧の振動抑制、安定化制御を行うことができる。
【0038】
さて、上述した先願発明によれば、マトリクスコンバータ40の入力電圧の高調波成分から共振周波数や系統電気定数を演算することが一応可能であるが、入力電圧に含まれる高調波成分は基本波成分の振幅に対して数%程度であるため、演算精度の点で問題がある。
また、前述した如く、検出精度を高めるために機械スイッチ101をオンした直後の過渡状態において入力電圧の高調波成分を抽出しているが、機械スイッチ101の動作遅れ等を考慮した上で機械スイッチ101の操作と記憶手段103bへの保存動作のタイミング調整を行わなくてはならない等、シーケンス処理に複雑な演算が必要になるおそれがあった。
【0039】
そこで本発明の解決課題は、共振周波数等の演算精度を向上させ、複雑なシーケンス処理を要することなく容易に入力系統の共振周波数や系統電気定数を算出可能とし、系統インピーダンスが大きい場合にはアラーム発生や運転不許可等の制御動作、保護動作を講じて電力変換器やトランス等の損傷を未然に防止するようにした交流交流電力変換器の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0040】
上記課題を解決するため、請求項1に記載した発明は、交流電源電圧を任意の大きさ及び周波数の交流電圧に変換する交流交流電力変換器の制御装置において、
前記電力変換器の少なくとも一相の入力電流を検出する電流検出手段と、
この手段により検出した入力電流の高調波成分を抽出し、その周波数を演算すると共に、演算した周波数から前記電力変換器の入力系統の共振周波数または系統電気定数を演算する系統情報演算手段と、を備えたものである。
【0041】
請求項2に記載した発明は、請求項1において、
前記系統情報演算手段は、入力系統の共振周波数を演算し、この共振周波数を用いて系統電気定数としての系統インダクタンスを演算するものである。
【0042】
請求項3に記載した発明は、請求項1または2において、
前記系統情報演算手段は、
入力電流のサンプリングを任意のタイミングから開始して所定期間のサンプリングデータを記憶する記憶手段と、記憶したデータから入力電流の振幅及び周波数を算出して前記共振周波数を抽出する数値演算手段と、を有するものである。
【0043】
請求項4に記載した発明は、請求項3において、
前記数値演算手段は、高速フーリエ変換手段であることを特徴とする。
【0044】
請求項5に記載した発明は、請求項1〜4の何れか1項において、
前記系統情報演算手段により演算した共振周波数または系統電気定数を前記電力変換器の制御に用いるものである。
【0045】
請求項6に記載した発明は、請求項5において、
前記電力変換器の制御手段は、前記電力変換器の入力電圧検出値から入力電流指令を生成する入力電流制御手段を備え、
この入力電流制御手段は、前記入力電圧検出値に含まれる任意の周波数成分を抽出する抽出手段と、この抽出手段の出力に応じた補正量により前記入力電流指令を補正する補正手段とを有し、
前記系統情報演算手段により演算した共振周波数を用いて前記抽出手段の特性を変化させるものである。
【0046】
請求項7に記載した発明は、請求項6において、
前記共振周波数を用いて変化させる前記抽出手段の特性が、この抽出手段のカットオフ周波数であることを特徴とする。
【0047】
請求項8に記載した発明は、請求項1〜7の何れか1項において、
前記系統情報演算手段により演算した共振周波数及び系統電気定数を用いて、前記電力変換器に係る制動係数を演算する手段を備えたものである。
【0048】
請求項9に記載した発明は、請求項8において、
前記制動係数を前記電力変換器の制御に用いるものである。
【0049】
請求項10に記載した発明は、請求項9において、
前記制動係数が規定値以下である場合に前記電力変換器の運転を不許可とする手段を備えたものである。
【0050】
請求項11に記載した発明は、請求項1〜10の何れか1項において、
前記系統情報演算手段により演算した共振周波数が規定値以下である場合に前記電力変換器の運転を不許可とする手段を備えたものである。
【0051】
請求項12に記載した発明は、請求項10または11において、
前記電力変換器の運転を不許可とする際にアラームを出力する手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0052】
本発明においては、電力変換器の入力電流から高調波成分の周波数を演算して系統インピーダンスを含む入力系統の共振周波数を求め、この共振周波数から系統インダクタンス等の系統電気定数や制動係数を演算する。
これにより、専用の測定器や外部装置の追加、煩雑な測定作業等を要することなく制御や保護動作に有用な系統情報を容易に得ることができると共に、系統インピーダンスが大きい場合には、運転待機やアラーム発生により故障や事故を未然に防止して安全に運転可能な制御装置を提供することが可能である。
また、入力電流を任意のタイミングから所定期間サンプリングして記憶し、共振周波数の演算に用いればよいため、機械スイッチの操作と記憶動作とのタイミング調整を行うための複雑なシーケンス処理も不要になり、演算負荷の軽減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の第1実施形態を示すブロック図であり、図20と同一の構成要素には同一の番号を付して説明を省略し、以下では異なる部分を中心に説明する。
なお、図1におけるマトリクスコンバータ制御手段104は、例えば、図16に示した入力電流制御手段62A、整流器制御手段63、インバータ制御手段64、PWMパルス合成手段65を備えており、図1の電圧検出手段102により検出される入力電圧に応じた入力電流指令と負荷50に応じた出力電圧指令とから、それぞれ整流器制御手段63及びインバータ制御手段64を介してパルスを生成し、これらのパルスをPWMパルス合成手段65により合成してマトリクスコンバータ40の交流スイッチに与えるように構成されている。
【0054】
また、上記入力電流制御手段62Aは、図17に示したように入力電圧検出値から入力電流指令を演算する演算手段62aと、入力電圧検出値に含まれる任意の周波数成分を抽出する抽出手段としてのハイパスフィルタ62bと、その出力に応じた補正量により入力電流指令を補正する補正手段としてのゲイン乗算手段62c及び加算手段62d,62eを有している。
【0055】
さて、図1において、入力フィルタリアクトル32のマトリクスコンバータ40側にはマトリクスコンバータ40の一相分(例えばR相)の入力電流を検出する電流検出手段105が接続されており、この電流検出手段105により検出した入力電流irは系統情報演算手段106に入力されている。
【0056】
図2は、系統情報演算手段106の構成を示している。
前記電流検出手段105により検出した一相分の入力電流irを入力基本波周期のn倍の期間にわたってサンプリングし、このデータiαは記憶手段106aに記憶される。ここで、サンプリングする期間を入力基本波周期のn倍の期間とするのは、検出された入力電流が交流量であるため、後述するフーリエ変換を行う場合の信号の繰り返し雑音ノイズを低減し、周波数成分を精度良く検出するためである。
このようにしてデータを記憶すれば、電流検出手段105を一相分のみで構成することができ、検出器に要するコストを抑制することができる。また、前述したnの値は、大きいほどデータ量が豊富になるため精度向上に役立つ反面、必要な記憶容量が大きくなる。従って、nの値は、使用する記憶装置の容量やコストを考慮して決定すればよい。
【0057】
次に、所定の検出サンプリング刻みTSを用いて高速フーリエ変換手段106bにより離散フーリエ変換を行い、入力信号の周波数及び振幅を演算する。離散フーリエ変換は、入力信号の周波数を測定するために一定期間サンプリングされたデータをフーリエ級数に変換し、入力信号の周波数及び振幅を求める数値演算手法として周知であるため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0058】
高速フーリエ変換手段106bにより得られた振幅及び周波数の情報に基づき、先願発明と同様に共振周波数fSを抽出し、更に、前述した数式6によって系統インダクタンスLsを算出する。図2の電気定数演算手段106cは、ωs=2πfs及び数式6に基づいて系統インダクタンスLsを求める手段である。
なお、数式6におけるCf,Lfは既知であるから、演算量を低減するために、電気定数演算手段106cでは数式6を近似した関数テーブルを用いて求めてもよい。
【0059】
図3は、共振周波数演算のフローチャートを示している。まず、任意のタイミングから基本周波数のn倍の期間が経過するまで入力電流をサンプリングして検出し、記憶手段106aに記憶する(ステップS1NO,S5,S6)。基本周波数のn倍の期間が経過したら(S1YES)、高速フーリエ変換手段106bにより離散フーリエ変換を行って共振周波数を抽出し、前述した数式6を用いて系統インダクタンス等の系統電気定数を演算する(S2〜S4)。
【0060】
ここで、本実施形態では、図22に示したように機械スイッチをオンした直後の過渡状態ではなく、任意のタイミングからサンプリングして記憶手段106aに記憶させても高精度に共振周波数を検出することができる。その理由を以下に説明する。
【0061】
図4は、マトリクスコンバータ40の入力側の回路構成図である。ここで、機械スイッチ107は仮定的に挿入したものである。
本実施形態における共振周波数の演算は、マトリクスコンバータ40の停止中に行うため、負荷50には電流が流れず、電源10から入力側フィルタリアクトル32及び入力側フィルタコンデンサ33を介して循環する電流が流れる。
この循環電流が流れる一相分の回路のインピーダンスは、数式7によって表される。この数式7において、ωは入力の角周波数であり、また、Lf’は循環電流が通過する2個のリアクトルの合成インダクタンスを示すものとする。
【0062】
【数7】
【0063】
図5は、角周波数ωを変化させた場合の数式7のインピーダンスZを示している。
数式7から明らかなように、LC共振回路では入力周波数に応じてインピーダンスZが変化し、図5に示すように共振周波数ωsでインピーダンスZが最小になる特性となる。入力電流は入力電圧をインピーダンスにより除した値であるから、共振周波数ωs近傍の振幅は顕著に表れる。そして、振幅が大きいほど情報量は多くなるので、共振周波数ωsの演算精度を高くすることができるものである。
【0064】
なお、図6は、図4において機械スイッチ107をオンした場合の波形図であり、図6の上から入力電圧、入力フィルタコンデンサ電圧、入力電流を示している。
この図6によれば、フィルタコンデンサ電圧に含まれる共振周波数成分は、入力電圧の基本波に対して微小であるが、入力電流に含まれる共振周波数成分は図5に示したインピーダンスZの特性により顕著に表れている。従って、本実施形態のように入力電流を検出することにより、機械スイッチ107をオンした直後の過渡状態における入力電圧を検出しなくても、高精度に共振周波数を演算することができる。このため、機械スイッチ107のオン操作と記憶手段106aへの記憶動作とのタイミング調整も不要になり、シーケンス処理の容易化が可能になる。
【0065】
系統情報演算手段106により共振周波数fs及び系統電気定数を演算した後は、先願発明と同様に図17のハイパスフィルタ62bのカットオフ周波数を最適値に調整する等の処理を行なうことにより、図16,図17等を参照しながら述べた原理によって入力電流や出力電圧の振動抑制、安定化制御を行うことが可能である。
ちなみに、共振周波数fsに応じてハイパスフィルタ62bのカットオフ周波数を決定する場合、共振周波数の減衰量や位相が最適になるように決定することが望ましい。例えば、共振周波数fsが500Hzの場合には、カットオフ周波数を1/2の250Hz程度に設定すると良いことが確認されている。
【0066】
次に、図7は本発明の第2実施形態の構成を示すブロック図である。
この実施形態が第1実施形態と異なる点は、制動係数演算手段108を有する点である。この制動係数演算手段108には系統情報演算手段106から共振周波数及び系統電気定数が入力されており、これらの情報に基づいて得た制動係数がマトリクスコンバータ制御手段104に入力されている。
【0067】
マトリクスコンバータの入力フィルタには、共振を抑制するために抵抗を挿入してダンピングをかける場合がある。一例として、図7に示すように入力フィルタリアクトル32と並列にダンピング抵抗34をそれぞれ接続した場合について説明する。
【0068】
図8は、系統インピーダンス20を入力フィルタリアクトル32(インダクタンスLf)に対して大きくした場合の制動係数を示したものであり、横軸は系統インダクタンスLSのLfに対する比に相当する。ここで、制動係数とは、共振系のダンピングがどれくらいかかりやすいかを示す数値であり、制動係数の数値が大きいほどダンピングが強くかかって振動の減衰、つまり振動の抑制効果が大きくなる。図8によれば、系統インダクタンスが大きくなるにつれて制動係数が小さくなっており、系統インダクタンスと制動係数とは概ね反比例の関係にあるのがわかる。
このように制動係数は系統インダクタンスの大きさに左右されるので、系統情報演算手段106により得た系統インダクタンスに応じてダンピング抵抗34を選択したり、場合によっては運転不許可等の保護手段を講じることができる。
【0069】
すなわち、この実施形態では、第1実施形態と同様に、系統情報演算手段106により入力系統の共振周波数と系統インダクタンスLSを含む系統電気定数とを求めたら、図7の制動係数演算手段108では、図8の関数テーブルを用いて制動係数を演算し、マトリクスコンバータ制御手段104に出力する。系統インダクタンスLSに対応する制動係数が得られれば、振動成分の増幅量や減衰時間等の推定が可能になるので、マトリクスコンバータ制御手段104では、この制動係数を予め設定された規定値(下限値)と比較し、制動係数が前記規定値以下になった場合には振動の抑制が困難と判断してマトリクスコンバータ40の運転を不許可とする(運転待機状態とする)、外部にアラーム出力する等の保護動作を実行することができる。
これにより、マトリクスコンバータ40やトランス等の故障や損傷を防ぐことができる。
【0070】
なお、図7ではダンピング抵抗34が入力フィルタリアクトル32と並列に接続されているが、ダンピング抵抗34の挿入方法は様々であるから、その挿入方法に応じて図8のような関数テーブルを複数用意しておき、系統インダクタンスLSに対応する制動係数を求めればよい。
【0071】
次いで、図9は本発明の第3実施形態の構成を示すブロック図である。
この実施形態では、系統情報演算手段106により得た共振周波数及び系統電気定数が、運転監視手段109を介してマトリクスコンバータ制御手段104に入力されている。運転監視手段109には、共振周波数及び系統電気定数についてそれぞれ予め規定値が設定されており、共振周波数等をこの規定値と比較した結果に応じて外部にアラームを発生させるように構成されている。
【0072】
図10は、この実施形態における運転許可シーケンスを示している。例えば、系統情報演算手段106により得た共振周波数が規定値(下限値)以下、すなわち系統インダクタンスが大きい場合には(ステップS11,S12YES)、アラームを出力させ(S13)、使用者に共振周波数及び系統インダクタンスが制御系の限界を超過していることを知らせて運転待機状態とする(S14,S15)。上記の規定値は制御装置の性能によるが、例えば基本周波数の5倍程度とする。
なお、共振周波数が規定値を超えている場合には、制御可能範囲内と判断してアラームを解除し、運転準備を行う(S16,S17)。
【0073】
共振周波数が規定値以下である場合の対策方法としては、受電設備からマトリクスコンバータ40までの配線長を短くしてインダクタンスを小さくしたり、あるいは受電設備に設置されるトランスとして漏れインダクタンスの小さいものを用いる等が考えられる。
なお、本実施形態における運転監視手段109の機能として、図7に示した制動係数演算手段108の機能を併有させても良い。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1の主要部を示す構成図である。
【図3】第1実施形態における共振周波数演算のフローチャートである。
【図4】第1実施形態におけるマトリクスコンバータの入力側の回路構成図である。
【図5】角周波数ωを変化させた場合の数式7のインピーダンスZを示す図である。
【図6】図4において機械スイッチをオンした場合の電圧、電流の波形図である。
【図7】本発明の第2実施形態を示すブロック図である。
【図8】系統インダクタンスと制動係数との関係を示す図である。
【図9】本発明の第3実施形態を示すブロック図である。
【図10】第3実施形態における運転許可シーケンスを示すフローチャートである。
【図11】特許文献1に係る発明の構成を示すブロック図である。
【図12】図11における主要部の構成図である。
【図13】図12の構成を対象として安定解析を行った場合の根軌跡を示す図である。
【図14】非特許文献1に記載された従来技術を示すブロック図である。
【図15】図14の従来技術を対象として安定解析を行った場合の根軌跡を示す図である。
【図16】改良案に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【図17】図16における主要部の構成図である。
【図18】改良案を対象として安定解析を行った場合の根軌跡を示す図である。
【図19】改良案によるシミュレーション結果を示す図である。
【図20】先願発明の構成を示すブロック図である。
【図21】図20における主要部の構成図である。
【図22】先願発明における共振周波数演算のフローチャートである。
【図23】先願発明における受電電圧及び入力フィルタコンデンサの電圧を示す波形図である。
【符号の説明】
【0075】
10:三相交流電源
20:系統インピーダンス
32:入力フィルタリアクトル
33:入力フィルタコンデンサ
34:入力フィルタダンピング抵抗
40:マトリクスコンバータ
50:負荷
102:電圧検出手段
104:マトリクスコンバータ制御手段
105:電流検出手段
106:系統情報演算手段
106a:記憶手段
106b:高速フーリエ変換手段
106c:電気定数演算手段
107:機械スイッチ
108:制動係数演算手段
109:運転監視手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源電圧を任意の大きさ及び周波数の交流電圧に変換する交流交流電力変換器の制御装置において、
前記電力変換器の少なくとも一相の入力電流を検出する電流検出手段と、
この手段により検出した入力電流の高調波成分を抽出し、その周波数を演算すると共に、演算した周波数から前記電力変換器の入力系統の共振周波数または系統電気定数を演算する系統情報演算手段と、
を備えたことを特徴とする交流交流電力変換器の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載した交流交流電力変換器の制御装置において、
前記系統情報演算手段は、
入力系統の共振周波数を演算し、この共振周波数を用いて系統電気定数としての系統インダクタンスを演算することを特徴とする交流交流電力変換器の制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載した交流交流電力変換器の制御装置において、
前記系統情報演算手段は、
入力電流のサンプリングを任意のタイミングから開始して所定期間のサンプリングデータを記憶する記憶手段と、記憶したデータから入力電流の振幅及び周波数を算出して前記共振周波数を抽出する数値演算手段と、を有することを特徴とする交流交流電力変換器の制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載した交流交流電力変換器の制御装置において、
前記数値演算手段は、高速フーリエ変換手段であることを特徴とする交流交流電力変換器の制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載した交流交流電力変換器の制御装置において、
前記系統情報演算手段により演算した共振周波数または系統電気定数を前記電力変換器の制御に用いることを特徴とする交流交流電力変換器の制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載した交流交流電力変換器の制御装置において、
前記電力変換器の制御手段は、前記電力変換器の入力電圧検出値から入力電流指令を生成する入力電流制御手段を備え、
この入力電流制御手段は、前記入力電圧検出値に含まれる任意の周波数成分を抽出する抽出手段と、この抽出手段の出力に応じた補正量により前記入力電流指令を補正する補正手段とを有し、
前記系統情報演算手段により演算した共振周波数を用いて前記抽出手段の特性を変化させることを特徴とする交流交流電力変換器の制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載した交流交流電力変換器の制御装置において、
前記共振周波数を用いて変化させる前記抽出手段の特性が、この抽出手段のカットオフ周波数であることを特徴とする交流交流電力変換器の制御装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載した交流交流電力変換器の制御装置において、
前記系統情報演算手段により演算した共振周波数及び系統電気定数を用いて、前記電力変換器に係る制動係数を演算する手段を備えたことを特徴とする交流交流電力変換器の制御装置。
【請求項9】
請求項8に記載した交流交流電力変換器の制御装置において、
前記制動係数を前記電力変換器の制御に用いることを特徴とする交流交流電力変換器の制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載した交流交流電力変換器の制御装置において、
前記制動係数が規定値以下である場合に前記電力変換器の運転を不許可とする手段を備えたことを特徴とする交流交流電力変換器の制御装置。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか1項に記載した交流交流電力変換器の制御装置において、
前記系統情報演算手段により演算した共振周波数が規定値以下である場合に前記電力変換器の運転を不許可とする手段を備えたことを特徴とする交流交流電力変換器の制御装置。
【請求項12】
請求項10または11に記載した交流交流電力変換器の制御装置において、
前記電力変換器の運転を不許可とする際にアラームを出力する手段を備えたことを特徴とする交流交流電力変換器の制御装置。
【請求項1】
交流電源電圧を任意の大きさ及び周波数の交流電圧に変換する交流交流電力変換器の制御装置において、
前記電力変換器の少なくとも一相の入力電流を検出する電流検出手段と、
この手段により検出した入力電流の高調波成分を抽出し、その周波数を演算すると共に、演算した周波数から前記電力変換器の入力系統の共振周波数または系統電気定数を演算する系統情報演算手段と、
を備えたことを特徴とする交流交流電力変換器の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載した交流交流電力変換器の制御装置において、
前記系統情報演算手段は、
入力系統の共振周波数を演算し、この共振周波数を用いて系統電気定数としての系統インダクタンスを演算することを特徴とする交流交流電力変換器の制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載した交流交流電力変換器の制御装置において、
前記系統情報演算手段は、
入力電流のサンプリングを任意のタイミングから開始して所定期間のサンプリングデータを記憶する記憶手段と、記憶したデータから入力電流の振幅及び周波数を算出して前記共振周波数を抽出する数値演算手段と、を有することを特徴とする交流交流電力変換器の制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載した交流交流電力変換器の制御装置において、
前記数値演算手段は、高速フーリエ変換手段であることを特徴とする交流交流電力変換器の制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載した交流交流電力変換器の制御装置において、
前記系統情報演算手段により演算した共振周波数または系統電気定数を前記電力変換器の制御に用いることを特徴とする交流交流電力変換器の制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載した交流交流電力変換器の制御装置において、
前記電力変換器の制御手段は、前記電力変換器の入力電圧検出値から入力電流指令を生成する入力電流制御手段を備え、
この入力電流制御手段は、前記入力電圧検出値に含まれる任意の周波数成分を抽出する抽出手段と、この抽出手段の出力に応じた補正量により前記入力電流指令を補正する補正手段とを有し、
前記系統情報演算手段により演算した共振周波数を用いて前記抽出手段の特性を変化させることを特徴とする交流交流電力変換器の制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載した交流交流電力変換器の制御装置において、
前記共振周波数を用いて変化させる前記抽出手段の特性が、この抽出手段のカットオフ周波数であることを特徴とする交流交流電力変換器の制御装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載した交流交流電力変換器の制御装置において、
前記系統情報演算手段により演算した共振周波数及び系統電気定数を用いて、前記電力変換器に係る制動係数を演算する手段を備えたことを特徴とする交流交流電力変換器の制御装置。
【請求項9】
請求項8に記載した交流交流電力変換器の制御装置において、
前記制動係数を前記電力変換器の制御に用いることを特徴とする交流交流電力変換器の制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載した交流交流電力変換器の制御装置において、
前記制動係数が規定値以下である場合に前記電力変換器の運転を不許可とする手段を備えたことを特徴とする交流交流電力変換器の制御装置。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか1項に記載した交流交流電力変換器の制御装置において、
前記系統情報演算手段により演算した共振周波数が規定値以下である場合に前記電力変換器の運転を不許可とする手段を備えたことを特徴とする交流交流電力変換器の制御装置。
【請求項12】
請求項10または11に記載した交流交流電力変換器の制御装置において、
前記電力変換器の運転を不許可とする際にアラームを出力する手段を備えたことを特徴とする交流交流電力変換器の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
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【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2007−124827(P2007−124827A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−314665(P2005−314665)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(503361927)富士電機機器制御株式会社 (402)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(503361927)富士電機機器制御株式会社 (402)
【Fターム(参考)】
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