説明

交流回転機の制御装置

【課題】複数の電力変換装置および他の付属機器の間で情報を共有して、交流回転機の駆動連係を強化することで、電力変換システム全体の最適化を容易とした交流回転機の制御装置およびその運転方法を提供する。
【解決手段】電力変換システムは、マスター局を構成する上位制御装置10、複数の電力変換装置11〜13、および付属する情報機器(温度センサ14、圧力センサ15などの各種センサ機器)などによって分散構成されている。上位制御装置10は第1の通信回線22によって電力変換装置11,12と接続されている。さらに電力変換装置11,12は、2つ以上の通信機能を搭載し、残りの電力変換装置13、および温度センサ14、圧力センサ15と、第2の通信回線23によって接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流回転機の制御装置に関し、とくに複数の交流回転機を所定速度で駆動する電力変換装置が付属する情報機器との間で通信機能を備えた交流回転機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のインバータ装置(電力変換装置)で複数の交流回転機を運転する電力変換システムは、一般に交流回転機の回転速度などを目標値として指令し、あるいはモニタなどをするために、その上位制御装置となるマスター装置を備えたシステムとして構築することができる。こうした交流回転機を運転するための電力変換システムでは、複数の交流回転機のインバータ装置が光通信などを利用した通信回線により接続された情報連携システムとして構築されれば、交流回転機が異常となる前に、その温度やインバータ装置で検出された電流情報に基づいて適切な制御が可能となる。
【0003】
図6は、従来の電力変換システムの一例を示すシステム構成図である。
この電力変換システムは、複数の交流回転機M1〜M3を上位制御装置10によって同調運転、比率運転、運転・停止制御を実現するものである。ここでは、PLC(プログラマブルロジックコントローラ:Programmable Logic Controller)、あるいはパソコンがマスター局として使用される。また、上位制御装置10には、同一の通信回線21によって、それぞれの交流回転機M1〜M3を駆動するための同じ機能を持つ複数台の電力変換装置11〜13がスレーブ装置として接続される。
【0004】
ここで、通信回線21には例えば光ファイバなどが用いられ、電力変換装置11〜13にはそれぞれ双方向モジュールを介して上位制御装置10と接続されている。また、温度センサ14、圧力センサ15などの付属機器もスレーブ局として接続され、この通信回線21によって上位制御装置10に必要な情報を与えることができる。
【0005】
従来の電力変換システムでは、上位制御装置10が通信回線21を介して各電力変換装置11〜13や温度センサ14などの付属機器からの情報を一元管理し、スレーブ装置である複数の電力変換装置11〜13に対して、個々に状況判断しつつ運転・停止指令や速度指令などの各種指令を与えていた。したがって、上位制御装置10では各電力変換装置11〜13を接続する通信回線21に断線が発生した場合には、その出力を停止するなどの保護動作を行う必要がある。そのため、マスター局とスレーブ局との間を接続している通信回線21の断線や通信制御機器の故障などの理由によりマスター局からの通信が不能となった場合に、自動的に復旧することができず、システムの安定性に欠けていた。
【0006】
また、電力変換装置11〜13に対する運転指令や速度指令が通信回線を介さないで、外部からのデジタルのオンオフ信号による運転指令、あるいは外部からのアナログ電圧(電流)入力指令に基づく速度指令などによって伝達されることもある。そのような場合でも、機械が異常となる前に温度やインバータの電流情報を元に予知保全などに情報共有することが必要である。
【0007】
別の電力変換システムとして、電源部とパワー変換部からなるパワー部、あらかじめ組み込まれた複数の実行コード・ファンクション・ブロックの組み合わせをパラメータで繋ぐことでカスタマイズを可能としたアプリケーション部とモータ制御部からなる実行コード部と該実行コードを実行するCPU(Central Processing Unit)とからなる制御部、および、外部との通信インタフェース部から構成されるインバータにおいて、同じ機能を持つ複数台のインバータ装置の入出力を通信によって接続し、それぞれのインバータ装置をマスター局およびスレーブ局として割り付けたものが提案されている(下記特許文献1参照)。
【0008】
ここでは、同じ機能を持つ複数台のインバータ装置のうち、一台がマスター局となって、残りのインバータ装置に対して書込み(Write)データまたは、読出し(Read)データの授受が行われる。したがって、小規模のシステムが高価なPLCや通信制御用のオプションカードを使用することなしに実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−178236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、特許文献1記載のものでは、複数のインバータ装置以外の温度センサなど付属機器を同一の通信回線に接続することができない。そのため、各種の付属機器から得られる複数の情報を、通信回線経由でスレーブ局であるインバータ装置によって運転されている交流回転機の制御などには利用できなかった。
【0011】
また、それぞれに異なった機能(例えば、速度検出、時計など)を持つインバータ装置からの情報を、マスター局を通して同一通信上にある他のインバータ装置へ授受することもできなかった。そのため、他のインバータ装置からの情報を交流回転機の制御などに共通して利用できないという問題があった。
【0012】
さらに、マスター局を構成するインバータ装置が通信回線の断線や制御機器の故障などの理由により通信不能となった場合、自動的に復旧ができず、複数のインバータ装置間での連係が容易でないという問題もあった。
【0013】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、複数の電力変換装置および他の付属機器の間で情報を共有して、交流回転機の駆動連係を強化することで、電力変換システム全体の最適化を容易とした交流回転機の制御装置を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明の別の目的は、通信回線の断線や故障などの理由により通信不能となった場合にも自動的に復旧可能な電力変換システムを構成できる交流回転機の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明では、上記問題を解決するために、交流回転機を所定速度で駆動する複数の電力変換装置と付属する情報機器との間で通信機能を備えた交流回転機の制御装置が提供される。この交流回転機の制御装置は、前記電力変換装置の上位にあって前記電力変換装置あるいは前記情報機器に対して各種指令またはモニタを行う上位制御装置と、前記上位制御装置と特定の電力変換装置との間を接続して前記上位制御装置と前記電力変換装置との間で信号を授受する第1の通信手段と、前記複数の電力変換装置の相互間、およびそれらと前記情報機器との間を相互に接続してそれら相互の連携を保持する第2の通信手段と、から構成される。
【0016】
この交流回転機の制御装置では、前記上位制御装置と接続された前記特定の電力変換装置をマスター局とすることにより、前記全ての電力変換装置および前記情報機器の有する制御状態情報を共有可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の電力変換装置が協働して制御運転される際に、通信機能を通して複数の交流回転機駆動用電力変換装置および他の機器との情報を共有し、連係を強化することができ、システム全体の最適化を推進できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電力変換システムを示すブロック図である。
【図2】マスター装置とスレーブ装置との間の情報伝送のタイミングを示すタイムチャートである。
【図3】本発明の実施の形態2に係る電力変換システムを示すブロック図である。
【図4】マスター装置とスレーブ装置との間の情報伝送のための通信プロトコルを示す図である。
【図5】マスター装置の切替えのための判断手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】従来の電力変換システムの一例を示すシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る電力変換システムを示すブロック図である。
【0020】
この電力変換システムは、上位制御装置10、複数の電力変換装置11〜13、および付属する情報機器などから構成される。上位制御装置10は、電力変換装置11〜13に対して運転・停止指令や速度指令などの各種指令を与え、あるいは電力変換装置11〜13や交流回転機M1〜M3の状態をモニタするなどを行う。電力変換装置11〜13は、交流回転機M1〜M3をそれぞれ速度制御する。ここでは、付属する情報機器とは、交流回転機M1〜M3などによって駆動されるポンプなどの負荷に設けられる温度センサ14、圧力センサ15などの各種センサ機器を想定している。また、電力変換装置11〜13は、それぞれ異なった機能を有しており、例えば電力変換装置12は速度あるいは位置の検出機能などを搭載し、電力変換装置13は時計機能などを搭載している。
【0021】
また、上位制御装置10は、マスター局として設定された電力変換装置11、およびマスター局候補として設定された電力変換装置12と第1の通信回線22によって接続され、上位制御装置10と特定の電力変換装置11,12との間で信号授受が行われる。さらに電力変換装置11,12は、2つ以上の通信機能を搭載しており、残りの電力変換装置13、および温度センサ14、圧力センサ15などの各種センサ機器と、上位制御装置10を介在しない第2の通信回線23によって接続され、電力変換装置11〜13の相互間および温度センサ14、圧力センサ15などのセンサ機器との間で信号の授受をしている。
【0022】
すなわち、第1の通信回線22によって上位制御装置10と接続されている2台の電力変換装置11,12だけが、マスター局となり得る。また、この第1の通信回線22とは別の、上位制御装置10が介在しない第2の通信回線23によって、スレーブ局1,2を構成する電力変換装置12,13の相互間と温度センサ14、圧力センサ15との間が接続され、それら相互の連携が保持されている。これにより複数の交流回転機M1〜M3に対する分散制御が可能となり、付属する情報機器、すなわち温度センサ14、圧力センサ15との間でも、上位制御装置10を経由しない効率の良い情報伝送が可能になる。さらに、異なった機能(速度検出機能、時計機能など)を持つ電力変換装置12,13からの速度検出値や時計などの情報を全ての電力変換装置11〜13の間で共有することも可能となる。
【0023】
なお、本実施の形態1では、温度センサ14、圧力センサ15などの情報機器を備えていない電力変換システムであってもよい。例えば、異なる機能を有する電力変換装置11〜13のみを第2の通信回線23で接続するようにして、各電力変換装置11〜13がそれぞれ有している速度検出値や時計などの各情報を、全ての電力変換装置11〜13の間で共有するようにしてもよい。
【0024】
ここで、電力変換装置11,12は、それぞれ第1、第2の通信回線22,23との接続に必要される通信モジュールを備えている。また、電力変換装置12,13は、第2の通信回線23との接続に必要とされる通信モジュールを備えている。なお、第1、第2の通信回線22,23は、いずれも光ケーブルなどによって構成され、故障信号の他、制御信号を含む他の信号を送受信するものとする。
【0025】
なお、図6に示す従来の電力変換システムの構成では、電力変換装置11〜13と上位制御装置10が同一の通信機能を有する1つの回線21だけで接続されている点、および複数の電力変換装置11〜13が全て同じ機能を有している点で、上述した実施の形態1とは異なるものである。
【0026】
上述した実施の形態1のシステム構成においては、交流回転機M1〜M3を駆動する電力変換装置11〜13の外部からデジタル信号を入力または外部へデジタル信号を出力するためのデジタル・インターフェース(DI/DO)あるいは外部からアナログ信号を入力または外部へアナログ信号を出力するためのアナログ・インターフェース(AI/AO)や、時計機能、速度・位置などを含む制御状態情報などの共有化を図ることができ、従来装置と比較して高機能かつ高価な電力変換装置を必要最小限に留めることができる。また、通信オプションカードなどを必要最小限に留めることで、システム全体の最適化ができ、電力変換装置11〜13においては、上位制御装置10との分散化に適合可能な比率運転などの連係運転が容易になる。
【0027】
さらに、マスター局として設定された電力変換装置11が、第1の通信回線22の断線や通信モジュールの故障などの理由により通信不能となった場合に、次のマスター局の候補としてあらかじめ指定された電力変換装置12を新たなマスター局に切替えることができる。したがって、システム全体の連係運転を損なわないで、自動的に復旧が可能となる。
【0028】
図2は、マスター装置とスレーブ装置との間の情報伝送のタイミングを示すタイムチャートである。
同図(A)には、マスター局とスレーブ局の間での情報伝送のタイミング(その1)を示している。通常時には、制御信号CT1,CT2,CT3がマスター局からスレーブ局に周期的指令として供給され、スレーブ局からは信号CT1,CT2,CT3に対応してマスター局への応答信号CR1,CR2,CR3として、必要なデータが送信されている。応答信号CR1,CR2,CR3には、例えば速度データや消費電力データなど、マスター局から常に読出しを必要とするデータが含まれる。ここでは、通信回線24を半二重方式の通信システムとして想定しているが、スレーブ局とマスター局とを全二重通信線で接続してもよい。
【0029】
マスター局である電力変換装置11とスレーブ局である電力変換装置12,13および付属する情報機器(温度センサ14、圧力センサ15)との間では、あらかじめ決められた周期的指令に加え、マスター局である電力変換装置11から、故障検出信号などによる割り込み処理に対応する指令などが、スレーブ局である電力変換装置12,13および温度センサ14、圧力センサ15に単発指令として送られ、そこで割込み信号INTとして処理される。その際に、スレーブ局からはマスター局に対して、運転指令、速度指令、および各機能の読出し/書込み指令に対する応答信号ICRが返される。
【0030】
また、図2(B)は、マスター局とスレーブ局の間での情報伝送のタイミング(その2)を示している。通常時には、制御信号CT1〜CT4がマスター局からスレーブ局に周期的指令として供給され、スレーブ局からは信号CT1〜CT4に対応してマスター局への応答信号CR1〜CR4として、必要なデータが送信されている。応答信号CR1〜CR4には、例えば速度データや消費電力データなど、マスター局から常に読出しを必要とするデータが含まれる。ここでは、図1に示す通信回線23を半二重方式の通信システムとして想定しているが、スレーブ局とマスター局とを全二重通信線で接続してもよい。
【0031】
電力変換装置11と電力変換装置12の間では、あらかじめ決められた周期的指令に加え、マスター局である電力変換装置11からの単発指令として、故障検出信号などに対応する異常指令などが送られ、それがスレーブ局である電力変換装置12で割込み信号INTとして処理される。
【0032】
マスター局である電力変換装置11とスレーブ局である電力変換装置12,13および付属する情報機器(温度センサ14、圧力センサ15)との間では、あらかじめ決められた周期的指令に加え、マスター局である電力変換装置11からは、故障検出信号などによる割り込み処理に対応する指令などがブロードキャスト信号として、スレーブ局である電力変換装置12,13および付属する情報機器(温度センサ14、圧力センサ15)に一斉送信され、そこで割込み信号INTとして処理され、マスター局からの運転指令、速度指令などの同じデータがスレーブ局に書き込まれる。
【0033】
なお、図2(B)は、割込み信号INTをブロードキャスト方式によってマスター局から同じデータを一斉送信して全てのスレーブ局に書き込みするものであるのに対して、図2(A)は、割込み信号INTに基づいてマスター局から各スレーブ局に対してそれぞれデータの書込み/読出しを行うものである。
【0034】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2に係る電力変換システムを示すブロック図である。
この電力変換システムは、交流回転機M1〜M3をそれぞれ速度制御する電力変換装置11〜13、および付属する情報機器などによって構成されている。電力変換装置11〜13は、それぞれ異なった機能を有しており、例えば電力変換装置12は速度あるいは位置の検出機能などを搭載し、電力変換装置13は時計機能などを搭載している。ここでは、付属する情報機器とは、交流回転機M1〜M3などによって駆動されるポンプなどの負荷に設けられる温度センサ14、圧力センサ15などの各種センサ機器を想定している。また、通信回線24は、3台の電力変換装置11〜13の相互間、およびそれらと交流回転機M1〜M3に付属する温度センサ14、圧力センサ15との間を相互に接続して、それら相互の連携が保持されている。
【0035】
電力変換装置11〜13および温度センサ14、圧力センサ15は、通信回線24との接続に必要とされる通信モジュールを備えている。また、電力変換装置11,12は、通信モジュールを備えている。ここでは、電力変換装置11〜13のうち、例えば電力変換装置11をマスター局に指定し、残りの電力変換装置12,13および温度センサ14、圧力センサ15をスレーブ局とする。また、スレーブ局として設定された電力変換装置12,13の中から、次のマスター局候補となる電力変換装置(例えば、電力変換装置12)を予め設定しておく。これにより、全ての電力変換装置と温度センサ14、圧力センサ15の間で、必要な運転制御情報を共有することが可能となる。さらに、異なった機能(速度検出機能、時計機能など)を持つ電力変換装置12,13からの速度検出値や時計などの情報を全ての電力変換装置11〜13の間で共有することも可能となる。
【0036】
なお、本実施の形態2では、温度センサ14、圧力センサ15などの情報機器を備えていないシステムであってもよく、異なる機能を有する電力変換装置11〜13のみを通信回線24で接続するようにして、各電力変換装置11〜13がそれぞれ有している速度検出値や時計などの各情報を、全ての電力変換装置11〜13の間で共有するようにしてもよい。ここでは、通信回線24は、光ケーブルなどによって構成され、故障信号の他、制御信号を含む他の信号を送受信するものとする。
【0037】
上述した実施の形態2のシステム構成においては、交流回転機M1〜M3を駆動する電力変換装置11〜13のデジタル・インターフェース(DI/DO)およびアナログ・インターフェース(AI/AO)や、時計機能、速度・位置などを含む制御状態情報などの共有化を図ることができ、従来装置と比較して高機能かつ高価な電力変換装置を必要最小限に留めることができる。また、通信オプションカードなどを必要最小限に留めることで、システム全体の最適化ができ、電力変換装置11〜13相互間において、分散化に適合可能な比率運転などの連係運転が容易になる。
【0038】
また、マスター局として設定された電力変換装置11が、通信回線24の断線や通信モジュールの故障などの理由によりスレーブ局と通信不能となった場合に、マスター局の候補としてあらかじめ特定されている電力変換装置12を新たなマスター局に切替えることができる。したがって、システム全体の連係運転を損なわないで、自動的に復旧が可能となる。
【0039】
さらに、マスターの交流回転機駆動用電力変換装置が、通信線の断線や故障などの理由により通信不能となった場合にも、自動的に復旧可能とする。
なお、マスター装置とスレーブ装置との間の情報伝送のタイミングは、先述の図2(A)(B)と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0040】
図4は、マスター装置とスレーブ装置との間の情報伝送のための通信プロトコルを示す図である。
同図(A)は、マスター局からスレーブ局への情報伝送のための通信プロトコル、同図(B)は、スレーブ局からマスター局への情報伝送のための通信プロトコルである。
【0041】
ここで、アドレス00h(および00H)に格納される局番とは、複数のスレーブ局(すなわち、電力変換装置11〜13や温度センサ14、圧力センサ15)から1つのスレーブ局を特定するための番号である。
【0042】
アドレス01h(および01H)に格納されるFCとは、同一の通信回線22〜24上で各種機能を識別するための機能コードを意味している。これによって、同一機能を有しないスレーブ局が同一通信回線22〜24上に接続されている場合であっても、同一機能を有する装置間だけで、機能の適用を識別できる。
【0043】
アドレス02h,03hの運転指令や、アドレス04h,05hの周波数設定は、マスター局からスレーブ局への運転指令、周波数指令を意味している。
アドレス06hには、ポーリングファンクションデータを格納している番地、すなわちポーリングファンクションアドレスが配置される。ここで、ポーリングファンクションとは、マスター局がスレーブ局から読出す(Read)ことが可能な各種機能のことである。
【0044】
アドレス07hには、セレクティングファンクションデータを格納している番地、すなわちセレクティングファンクションアドレス(08h,09h)が配置される。ここで、セレクティングファンクションとは、マスター局がスレーブ局へ書込む(Write)ことが可能な各種機能のことである。したがって、アドレス08h,09hには、それぞれセレクティングファンクションデータが格納されている。
【0045】
図4(B)のプロトコルでは、アドレス02H,03Hに交流回転機M2の運転状態モニタが格納される。また、アドレス04H,05Hに交流回転機M3の運転状態モニタが格納される。さらに、アドレス06H,07Hには、出力周波数モニタが格納される。これら運転状態モニタや出力周波数モニタなどは、スレーブ局からマスター局へのモニタデータを意味している。
【0046】
アドレス08Hには、切替え(Chg)信号およびエラーコードが格納されている。これらの信号は、スレーブ局からマスター局へ切替え指令として機能する信号である。
アドレス09Hには、アドレス06hに対応して、ポーリングファンクションデータを格納している番地、すなわちポーリングファンクションアドレス(0AH,0BH)が配置される。したがって、アドレス0AH,0BHには、それぞれ実際のポーリングファンクションデータが格納されている。
【0047】
図5は、マスター装置の切替えのための判断手順の一例を示すフローチャートである。
ここでは、図1、図3にそれぞれ示した実施の形態1,2における、次のマスター局としてスタンバイ中のスレーブ局(電力変換装置12)で実行される判断手順を示している。
【0048】
ステップS1では、マスター局との通信状態が正常であるか否かを判断している。すなわち、マスター局(電力変換装置11)から電力変換装置12に対して周期的指令が来ていればマスター局との通信状態が正常であると判断してステップS5に移る。一方、最初のマスター局である電力変換装置11が通信回線の断線や通信モジュールの故障などの理由により通信不能となった場合、マスター局(電力変換装置11)から電力変換装置12に対して周期的指令が来なくなり、次のステップS2に移る。
【0049】
ステップS2では、スレーブ局の監視タイマーでカウントを開始して、次のステップS3に移る。ステップS3では、一定時間内でマスター局からの指令信号の有無が判断される。監視タイマーにより計測される、この一定時間以内にマスター局である電力変換装置11からの指令信号が無ければ異常と判断して、ステップS4に移る。そして、マスター局の切替え処理が実行され、次のマスター局としてスタンバイ中のスレーブ局(電力変換装置12)が新たなマスター局として設定される。
【0050】
ステップS1でマスター局との通信状態が正常であると判断された場合、およびステップS4でマスター局の切替え処理が実行された場合、それぞれステップS5,S6に移り、スレーブ局の監視タイマーがクリアされ、ステップS1に戻る。
【0051】
なお、ステップS3でマスター局からの指令信号が監視タイマーにより計測される一定時間以内に通信されれば、そのまま新たな判断手順のための処理(ステップS1)から開始される。
【0052】
以上、本発明の交流回転機の運転方法では、スタンバイ中のスレーブ局(電力変換装置12)をマスター局に自動的に切替えることができる。その方法としては、次のマスター局(電力変換装置12)で最初のマスター局(電力変換装置11)の状態を常に監視し、ある一定時間マスター局(電力変換装置11)からの指令信号が無ければ、次のマスター局(電力変換装置12)をマスター局として機能させる。その後、最初のマスター局(電力変換装置11)で通信不能状態からの回避が実現された場合は、電力変換装置11がスレーブ局となって、ある一定時間だけマスター局(電力変換装置12)の通信状態を監視し、通信が無ければ新たなマスター局(電力変換装置12)が存在しないと判断して、最初のマスター局(電力変換装置11)が再度マスター局に復帰するものである。
【符号の説明】
【0053】
10 上位制御装置
11〜13 電力変換装置
14 温度センサ(付属機器)
15 圧力センサ(付属機器)
22 第1の通信回線
23 第2の通信回線
24 通信回線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流回転機を所定速度で駆動する複数の電力変換装置と付属する情報機器との間で通信機能を備えた交流回転機の制御装置において、
前記電力変換装置の上位にあって前記電力変換装置あるいは前記情報機器に対して各種指令またはモニタを行う上位制御装置と、
前記上位制御装置と特定の電力変換装置との間を接続して前記上位制御装置と前記電力変換装置との間で信号を授受する第1の通信手段と、
前記複数の電力変換装置の相互間、およびそれらと前記情報機器との間を相互に接続してそれら相互の連携を保持する第2の通信手段と、
を備え、前記上位制御装置と接続された前記特定の電力変換装置をマスター局とすることにより、前記全ての電力変換装置および前記情報機器の有する制御状態情報を共有可能とすることを特徴とする交流回転機の制御装置。
【請求項2】
交流回転機を所定速度で駆動するそれぞれ異なる機能を有する複数の電力変換装置との間で通信機能を備えた交流回転機の制御装置において、
前記電力変換装置の上位にあって前記電力変換装置に対して各種指令またはモニタを行う上位制御装置と、
前記上位制御装置と特定の電力変換装置との間を接続して前記上位制御装置と前記電力変換装置との間で信号を授受する第1の通信手段と、
前記複数の電力変換装置の相互間を接続してそれら相互の連携を保持する第2の通信手段と、
を備え、前記上位制御装置と接続された前記特定の電力変換装置をマスター局とすることにより、前記全ての電力変換装置の有する制御状態情報を共有可能とすることを特徴とする交流回転機の制御装置。
【請求項3】
前記上位制御装置は、前記電力変換装置のうち複数のものを前記マスター局の候補としてあらかじめ指定し、前記特定の電力変換装置と前記上位制御装置との間で前記第1の通信手段による通信が不能になった場合、残りの電力変換装置のいずれかひとつをマスター局に切替えることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の交流回転機の制御装置。
【請求項4】
交流回転機を所定速度で駆動する複数の電力変換装置と付属する情報機器との間で通信機能を備えた交流回転機の制御装置において、
前記複数の電力変換装置の相互間、およびそれらと前記情報機器との間を相互に接続してそれら相互の連携を保持する通信手段、
を備え、前記電力変換装置のうちのいずれかひとつをマスター局に指定することにより、前記全ての電力変換装置および前記情報機器の有する制御状態情報を共有可能とすることを特徴とする交流回転機の制御装置。
【請求項5】
それぞれ異なる機能を有して、交流回転機を所定速度で駆動する複数の電力変換装置の間で通信機能を備えた交流回転機の制御装置において、
前記複数の電力変換装置の相互間を接続してそれら相互の連携を保持する通信手段、
を備え、前記電力変換装置のうちのいずれかひとつをマスター局に指定することにより、前記全ての電力変換装置の有する制御状態情報を共有可能とすることを特徴とする交流回転機の制御装置。
【請求項6】
前記電力変換装置のうち複数のものが前記マスター局の候補としてあらかじめ特定されていて、前記マスター局に指定されていた前記電力変換装置が残りの電力変換装置との間で前記通信手段による通信が不能になった場合、前記残りの電力変換装置のいずれかをマスター装置として切替えることを特徴とする請求項4または5のいずれかに記載の交流回転機の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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