交通情報システム、交通管理装置、リンク演算装置、交通情報推定のためのコンピュータプログラム、交通情報処理方法及び情報処理システム
【課題】道路リンクが多く存在していたり各道路リンクの特性が頻繁に変化したりしても、それぞれに応じた処理を実行可能とする。
【解決手段】他の道路リンクの交通情報及び推定用パラメータを用いて推定対象の道路リンクの交通情報を推定する推定システム11、及び、前記推定用パラメータを最適化する学習システム12を有するリンクエージェント1と、リンクエージェント1を管理する管理エージェント10とを備えている。管理エージェント10は、リンクエージェント1が実行する処理の候補となる複数の道路リンク処理を、道路リンクの特性と対応付けて記憶するノウハウ管理データベース22を有しており、道路リンクの特性が取得されると当該特性に基づいて前記データベース22から、当該特性が取得された道路リンクについて処理を実行するために用いられる道路リンク処理を選択する。
【解決手段】他の道路リンクの交通情報及び推定用パラメータを用いて推定対象の道路リンクの交通情報を推定する推定システム11、及び、前記推定用パラメータを最適化する学習システム12を有するリンクエージェント1と、リンクエージェント1を管理する管理エージェント10とを備えている。管理エージェント10は、リンクエージェント1が実行する処理の候補となる複数の道路リンク処理を、道路リンクの特性と対応付けて記憶するノウハウ管理データベース22を有しており、道路リンクの特性が取得されると当該特性に基づいて前記データベース22から、当該特性が取得された道路リンクについて処理を実行するために用いられる道路リンク処理を選択する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通情報を処理する機能を有する交通情報システム、この交通情報システムに用いられるリンク演算装置及びリンク演算装置を管理する交通管理装置、交通情報推定のためのコンピュータプログラム、交通情報処理方法、及び、情報処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路の交通情報をドライバーに提供する技術として、財団法人道路交通情報通信システムセンターによるVICS(Vehicle Information and Communication System:なお、「VICS」は上記財団法人の登録商標)が広く知られている。
このVICSは、各種の路側センサ(車両感知器やループコイル等)から収集した車両台数や車両速度等よりなる定点観測情報に基づいて、各路線での渋滞やリンク旅行時間を含む交通情報を集計し、その交通情報を、ビーコンによる狭域通信やFM放送等の広域通信によってドライバーに提供するものである。
【0003】
また、道路の交通情報をドライバーに提供する他の技術として、プローブカーを利用した交通情報推定システム(以下、プローブシステムという。)も知られている。
このプローブシステムは、例えば特許文献1及び2に示すように、実際に道路を走行する車両(プローブ車両)を移動体センサとして利用するもので、現時点の車両位置や時刻等のプローブ情報を無線通信によって各プローブ車両から収集し、道路の交通情報を生成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−151496号公報
【特許文献2】特開2005−4467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記VICS情報は、路側センサが設置された主要幹線道路等の一部の道路に関してしか得られない。
一方、プローブシステムでは、実際に道路を走行する車両(プローブ車両)を移動体センサとして利用するため、路側センサが設置されていない道路に関しても、交通情報を取得することが可能となる。
【0006】
しかし、現状では、プローブカーの台数は、非常に少なく、VICS及びプローブシステムのいずれからもデータが得られていない道路リンクについては、交通情報を得ることができない。
【0007】
そこで、(VICS及び)プローブシステムからデータが得られていない道路リンクについては、別の道路リンクの交通情報に基づいて、交通情報を推定することが考えられる。例えば、ある道路リンクの交通情報は、当該道路リンクに接続している道路リンク等のような関連のある他の道路リンクにおける交通情報との相関が認められる。このような相関関係を利用すれば、他の道路リンクの交通情報を用いて、推定対象となる道路リンクの交通情報を補完することができる。
このような補完を行おうとすると、他の各道路リンクの交通情報を、推定対象となる道路リンクの交通情報にどのように反映させるか、及び、どの程度、推定対象となる道路リンクの交通情報として反映させるか等を決める推定用パラメータを適切に設定することが必要となる。
【0008】
このために、コンピュータによる学習機能を用いることが考えられる。そして、このシステムにより、所定の入力情報に基づいて処理が行われ、交通情報の補完を行うことができ、また、推定用パラメータを最適化することが可能となる。
しかし、ある道路リンクの交通情報を推定し、また、推定するために用いられる推定用パラメータを最適化することができたとしても、他の道路リンクでは例えば道路特性が大きく異なっていて、当該他の道路リンクでは前記知見やノウハウが相応しくない場合には、処理結果が好ましいものとならないおそれがある。
この例に限られず、処理対象となる要素が多かったり、それら要素の外部環境が頻繁に変化したりする場合、要素間や時間的に共通のアルゴリズムに基づいて学習していると、全体としてその最適化が進まないなど、各要素に関する処理について局所的又は全体的に不都合が生じる可能性がある。
そこで、本発明は、処理対象となる要素(処理対象となる道路リンク)が多く存在していたり、それら要素に頻繁な変化があったりしても、それぞれに応じた処理を実行可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は、複数存在する道路リンクに対し道路リンクに関する処理を実行可能であるリンク演算部と、前記リンク演算部を管理する管理部とを備えた交通情報システムであって、前記管理部は、前記リンク演算部が実行する前記処理の候補となる複数の道路リンク処理を、道路リンクの特性と対応付けて記憶する記憶部と、道路リンクの特性が取得されると当該特性に基づいて前記記憶部から、当該特性が取得された道路リンクについて前記処理を実行するために用いられる前記道路リンク処理を選択する選択部とを有していることを特徴とする交通情報システム。
【0010】
本発明によれば、管理部の記憶部には、リンク演算部が実行する道路リンクに関する処理の候補となる複数の道路リンク処理が、道路リンクの特性と対応付けられて記憶されており、道路リンクの特性が取得されると、選択部によって、その特性に基づいて記憶部から道路リンク処理が選択される。このため、複数存在する道路リンクそれぞれの特性が異なっていたり各道路リンクの特性が時間的に変化したりしても、当該特性に基づいて選択された道路リンク処理をリンク演算部に実行させることが可能となる。
【0011】
(2)また、前記道路リンクに関する処理を、他の道路リンクの交通情報及び推定用パラメータを用いて推定対象の道路リンクの交通情報を推定する推定処理、及び、前記推定用パラメータを最適化する学習処理とすることができる。
【0012】
(3)また、前記選択部で用いられる前記道路リンクの特性を、前記リンク演算部が取得する構成とすることができる。この場合、リンク演算部が道路リンクの特性を取得すると、当該道路リンクの特性を、前記管理部に送信することができ、これにより、管理部の選択部は、当該特性に基づいて道路リンク処理を選択することができる。
【0013】
(4)そして、前記リンク演算部は、前記選択部によって選択された道路リンク処理を実行する構成とすればよい。
この場合、リンク演算部は、道路リンクの特性に基づいて選択された道路リンク処理を実行することが可能となる。
【0014】
(5)前記(4)の場合において、前記管理部は、前記記憶部に記憶されている道路リンク処理が更新されると、更新された道路リンク処理を実行している前記リンク演算部へ、更新された道路リンク処理の更新内容の情報を送信するのが好ましい。
リンク演算部が、所定の道路リンク処理を実行している場合に、例えば記憶部における当該所定の道路リンク処理が更新されると、管理部は、前記リンク演算部へ、更新された道路リンク処理の更新内容の情報を送信することで、当該リンク演算部は、更新内容を知ることができる。なお、前記更新には、変更、削除又は追加が含まれる。
【0015】
(6)また、前記(4)又は(5)の場合において、前記リンク演算部は、自己が処理の担当をしている道路リンクと特性が共通している他の道路リンクを検索し、この検索した他の道路リンクを担当している他のリンク演算部が実行している道路リンク処理についての情報を取得可能であるのが好ましい。
この場合、例えば、リンク演算部と管理部との間が通信不能となり、リンク演算部は、管理部が選択した道路リンク処理についての情報を取得できなくても、他のリンク演算部が実行している道路リンク処理についての情報を取得することができ、当該道路リンク処理を実行することができる。しかも、実行する道路リンク処理は、特性が共通している道路リンクを担当している他のリンク演算部が実行している処理であるため、この道路リンク処理を実行すれば、管理部が選択した道路リンク処理を実行した場合と、同程度の処理を実行することが可能となる。
【0016】
(7)また、前記(2)の場合において、前記リンク演算部は、前記選択部によって選択された道路リンク処理に基づいて最適化した推定用パラメータを用いて前記推定部が推定した、推定結果の精度を判定する精度判定部を有しているのが好ましい。
精度判定部による推定結果の精度が好ましくない場合、例えば、リンク演算部は、管理部にその旨を通知することができ、記憶部の道路リンク処理が見直されたり、管理部は別の道路リンク処理を選択したりすることができる。
【0017】
(8)また、本発明は、コンピュータを、前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の交通情報システムとして機能させるためのコンピュータプログラムである。
【0018】
(9)また、本発明は、複数存在する道路リンクに対し道路リンクに関する処理を実行可能であるリンク演算部を管理する交通管理装置であって、前記リンク演算部が実行する前記処理の候補となる複数の道路リンク処理を、道路リンクの特性と対応付けて記憶する記憶部と、道路リンクの特性が取得されると当該特性に基づいて前記記憶部から前記道路リンク処理を選択する選択部とを有していることを特徴とする。
【0019】
(10)また、本発明は、複数存在する道路リンクに対し道路リンクに関する処理を実行可能である演算部を備えたリンク演算装置であって、前記演算部は、前記処理の候補となる複数の道路リンク処理が道路リンクの特性と対応付けて記憶されている記憶部から、道路リンクの特性に基づいて選択された道路リンク処理を実行することを特徴とする。
【0020】
(11)また、本発明は、複数存在する道路リンクに対し道路リンクに関する処理を実行する交通情報処理方法であって、前記道路リンクに関する処理の候補となる複数の道路リンク処理が、道路リンクの特性と対応付けて記憶部に記憶されており、前記記憶部から、道路リンクの特性に基づいて所定の道路リンク処理が選択され、選択された前記道路リンク処理を実行することを特徴とする。
【0021】
前記(9)(10)(11)それぞれの本発明によれば、前記(1)と同様に、複数存在する道路リンクそれぞれの特性が異なっていても、当該特性に基づいて選択された道路リンク処理を実行することが可能となる。
【0022】
(12)また、本発明は、母集団に含まれる複数の要素に対し、当該要素に関する処理を実行可能である演算部と、前記演算部を管理する管理部とを備えた情報処理システムであって、前記管理部は、前記演算部が実行する前記処理の候補となる複数の要素に関する処理を、要素の特性と対応付けて記憶する記憶部と、要素の特性が取得されると当該特性に基づいて前記記憶部から、当該特性が取得された要素について前記処理を実行するために用いられる前記要素に関する処理を選択する選択部とを有していることを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、管理部の記憶部には、演算部が実行する要素に関する処理の候補となる複数の処理が、要素の特性と対応付けられて記憶されており、要素の特性が取得されると、選択部によって、その特性に基づいて記憶部から要素に関する処理が選択される。このため、複数存在する要素それぞれの特性が異なっていても、当該特性に基づいて選択された要素に関する処理を演算部に実行させることが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、複数存在する道路リンク(要素)それぞれの特性が異なっていたり頻繁に変化したりしても、当該特性に基づいて選択された処理を実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】交通情報システムについての実施の一形態を示す全体構成図である。
【図2】交通情報システムを簡略化した説明図である。
【図3】交通情報システムの構成図である。
【図4】ノウハウ設定処理を示すフローチャートである。
【図5】ノウハウ管理データベースの説明図である。
【図6】対応管理データベースの説明図である。
【図7】交通情報推定処理手順を示すフローチャートである。
【図8】ニューラルネットワークの構成図である。
【図9】道路リンクの例を示す図である。
【図10】推定データベースの初期状態を示す図である。
【図11】重みデータベースの初期状態を示す図である。
【図12】入力情報として取得したVICS情報及びプローブ情報を示す図である。
【図13】1回目の更新後の推定データベースを示す図である。
【図14】2回目の更新後の推定データベースを示す図である。
【図15】3回目の更新後の推定データベースを示す図である。
【図16】スナップショットとして抽出される部分を示す図である。
【図17】学習データベースを示す図である。
【図18】学習処理を示すフローチャートである。
【図19】交通情報システムの機能を説明する説明図である。
【図20】交通情報システムの機能を説明する説明図である。
【図21】精度判定部による処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
[1.全体構成]
図1は、本発明の交通情報システムについての実施の一形態を示す全体構成図である。本実施形態の交通情報システムは、中央側装置7として、道路リンクの交通情報の推定等の、道路リンクに関する処理を行う複数のリンク演算部1、及び、これらリンク演算部1を管理している管理部10を備えている。
さらに、この交通情報システムには、車載装置2を搭載したプローブ車両3、車載装置2と無線通信する路側通信機4、及び路側センサ5等が含まれる。
【0027】
管理部10及びリンク演算部1を含む中央側装置7は、VICS情報及びプローブ情報等の交通情報(観測情報)を取得し、車両に提供するための提供用の交通情報を生成する機能を有している。なお、中央側装置7は、交通情報に基づいて、信号機制御や交通管制等の各種の交通用処理を行ってもよい。
【0028】
管理部10及びリンク演算部1それぞれは、処理装置(CPU)及び記憶装置を有するコンピュータによって構成されており、前記記憶装置には、コンピュータを、管理部10及びリンク演算部1として機能させるためのコンピュータプログラムが記憶されている。このコンピュータプログラムは、前記処理装置によって実行され、前記処理装置が前記記憶装置等に対し入出力を行うことで、管理部10及びリンク演算部1としての機能を実現する。なお、以下に説明する管理部10及びリンク演算部1の機能は、特に断らない限り、前記コンピュータプログラムによって実現されるものである。
【0029】
本実施形態では、図2に示しているように、一つの道路リンクに一つのリンク演算部1(以下、リンクエージェント1という)が対応付けられている。つまり、一つのリンクエージェント1は、一つの道路リンクに関する処理を担当する。なお、リンクエージェント1が処理の担当をする道路リンクを「自道路リンク」という。
そして、管理部10の管理下にある所定のエリアには複数の道路リンクが含まれていることから、管理部10(以下、管理エージェント10という)は、複数のリンクエージェント1を管理している構成となる。
【0030】
なお、本発明では、管理エージェント10及び複数のリンクエージェント1が、コンピュータを有する一つの装置によって構成されていてもよく、又は、管理エージェント10が、コンピュータを有する一つの装置によって構成され、かつ、複数のリンクエージェント1が、管理エージェント10とは別として、コンピュータを有する一つの装置によって構成されていてもよい。
また、複数の道路リンクを一つのグループとし、一つのリンクエージェント1が、一つのグループの処理を担当してもよい。
さらに、リンクエージェント1は、自道路リンクの道路の交差点等に設置されたハードウェア上で動作させてもよいが、管理エージェント10側と共に設置されたハードウェア上で動作させてもよい。
【0031】
図1において、前記車載装置2は、プローブ車両3の観測情報としてプローブ情報を生成し、路側通信機4に送信する。
プローブ情報は、プローブ車両の位置、当該位置の通過時刻及びプローブ車両の車両ID等を含む交通情報である。また、プローブ情報には、プローブ車両の通過速度等その他の情報を含めてもよい。プローブ情報の位置及び時刻の情報に基づいて、道路リンク毎のリンク旅行時間が得られる。なお、プローブ車両の位置は、車載装置2が有するGPS受信機によって受信したGPS信号に基づいて算出される。
【0032】
前記路側通信機4は、車載装置2との間で無線通信によって情報の送受信を行うものである。具体的には、路側通信機4は、車載装置2が送信した観測情報としてのプローブ情報を受信し、リンクエージェント1に転送する。また、路側通信機4は、リンクエージェント1から、車両への提供用の交通情報を取得し、その交通情報を、車載装置2に送信することができる。なお、路側通信機4とリンクエージェント1との間は、通信回線によって接続されている。
又は、車載装置2は、当該車載装置2と接続した携帯電話機50を介して、プローブ情報を送信してもよい。この場合、車載装置2によってプローブ情報が生成されると、当該プローブ情報は、携帯電話機50へ送られ、携帯電話機50が基地局49へプローブ情報を送信する。そして、基地局49は、プローブ情報をリンクエージェント1に転送する。また、携帯電話機50は、リンクエージェント1から基地局49を介して、車両への提供用の交通情報を取得し、その交通情報を、車載装置2に送ることができる。
【0033】
前記路側センサ5は、観測情報としての交通情報を検出するためのものであり、例えば、直下を通行する車両を超音波感知する車両感知器や、インダクタンス変化で車両を感知するループコイル、或いは、カメラの映像を画像処理して交通量や車両速度を計測する画像感知器よりなり、交差点等に流入する車両台数や車両速度を計測する目的で、高速道路や主要な幹線道路等に設置されている。
【0034】
路側センサ5によって検出された観測情報は、通信回線を介して、VICSセンタサーバ6に送信され、このVICSセンタサーバ6では、路側センサ5の観測情報に基づいて、VICS情報を生成する。このVICS情報は、通信回線を介して、管理エージェント10及びリンクエージェント1に送信される。
【0035】
前記VICS情報は、各道路リンクでの渋滞やリンク旅行時間を含む交通情報である。VICS情報は、路側センサ5から5分ごとに観測情報を取得して、更新されるため、時間的に高密度な情報が得られる。しかし、路側センサ5はすべての道路に設置されているわけではなく(主要道路でも20%以下)、エリアカバー率が低い。
一方、前記プローブ情報は、道路を走行するプローブ車両3から取得するため、エリアカバー率を高くすることが可能である。ただし、プローブ車両3となるための車載装置2の普及率がまだ低いため、時間的に低密度のデータしか得られない。
【0036】
つまり、所定エリア内の道路に、道路リンクを設定した場合、VICS情報が得られる道路リンクについては、VICS情報の更新単位時間ごとに常に交通情報(VICS情報)が得られる。一方、VICS情報が得られない道路リンクについては、VICS情報の更新単位時間毎にみると、プローブ情報が交通情報として得られる道路リンクがある一方、プローブ情報も得られない道路リンクが混在することになる。
【0037】
[2.中央側装置について]
[2.1 リンクエージェント及び管理エージェントの構成]
リンクエージェント1それぞれは同じ又は共通の構成を有しており、本実施形態では、各リンクエージェント1は、自道路リンクからVICS情報もプローブ情報も得られない場合に、当該自道路リンクの交通情報を推定して、当該自道路リンクの交通情報を補完することができる。これにより、管理エージェント10が管理しているエリア内の全道路リンクの交通情報が取得される。つまり、本実施形態では、所定エリア内の全道路リンクを母集団とし、全道路リンクのうちの一部の道路リンクについて交通情報を取得すると、残りの道路リンクについての交通情報を推定することができる。
【0038】
このように、VICS情報もプローブ情報も得られない道路リンクの交通情報を補完することで、より精度が高い交通情報を車両(ナビゲーションシステム)に提供したり、精度良く交通管制を行ったりすることが可能となる。
なお、以下では、VICS情報もプローブ情報も得られず交通情報を推定して補完する必要がある道路リンクを、「推定対象道路リンク」という。
【0039】
図3に示すように、各リンクエージェント1は、複数存在する道路リンク毎に道路リンクに関する処理を実行可能である演算部として、推定対象道路リンクの交通情報を推定する推定システム(推定部)11と、この推定対象道路リンクの交通情報を推定するために用いられるパラメータ(推定用パラメータ)を最適化する学習処理を行う学習システム(学習部)12と、を備えている。
【0040】
また、リンクエージェント1は、推定システム11によって推定した交通情報等を蓄積するための推定データベース(交通情報データベース)13、推定データベース13におけるデータのうち、学習システム12における学習に用いるデータを蓄積する学習データベース14、推定用パラメータ(本実施形態では「重み」)を蓄積するための重みデータベース(推定パラメータデータベース)15と、を記憶装置上に備えている。
【0041】
各リンクエージェント1は、当該リンクエージェント1が自道路リンクに関して取得したVICS情報及びプローブ情報(以下、両情報を総称する場合、「入力情報」という)に対する処理を行う入力情報処理部16を備えていて、入力情報から、リンクの「速度情報」を生成する処理を行う。生成した「速度情報」は、推定データベース13に与えられ、推定データベース13の更新に用いられる。
「速度情報」は、道路リンクのリンク長を、当該道路リンクのリンク旅行時間で除することで、リンク旅行速度[km/h]として算出することができる。なお、道路リンクのリンク長は、当該道路リンクのために処理を行うリンクエージェント1を設置する際に、当該リンクエージェント1の記憶装置に格納されている。
【0042】
また、各リンクエージェント1は、通信機能部(送受信装置)17を有しており、リンクエージェント1と管理エージェント10との間は情報の送受信が可能であり、また、リンクエージェント1間においても情報の送受信が可能である。
【0043】
本実施形態に係る管理エージェント10は、各リンクエージェント1と情報の送受信を行うために、通信機能部(送受信装置)27を有している。
また、管理エージェント10は、リンクエージェント1が行う処理(推定処理及び学習処理)の候補となる道路リンク処理を複数種類、記憶することができるノウハウ管理データベース22を、記憶装置上に備えている。なお、図2の例では管理エージェント10を一つしか示していないが、管理エージェントが複数あってもよく、その場合に各管理エージェントが記憶する道路リンク処理は共通であってもよく、相違していてもよい。
前記道路リンク処理は、リンクエージェント1による処理(推定処理及び学習処理)に適用すると好ましいノウハウ処理であり、道路リンクの特性に関する特性情報と対応付けられて、ノウハウ管理データベース22に蓄積されている。以下、道路リンク処理を「知見・ノウハウ処理」と呼んで説明する。
前記特性情報は、道路リンクの特性に関する静的又は動的な情報(環境情報)であり、例えば、当該道路リンクが高速道路であるか又は一般道路であるかについての道路種別についての情報の他に、当該道路リンクに相関のある他の道路リンク(関連道路リンク)の数についての情報、当該道路リンクのリンク長についての情報、及び、当該道路リンクで取得できたプローブ情報の数についての情報等がある。
【0044】
さらに、管理エージェント10は、リンクエージェント1に適用されている知見・ノウハウ処理と当該リンクエージェント1に付されているIDとの対応関係を記憶する対応管理データベース23を、記憶装置上に備えている。
また、管理エージェント10は、コンピュータプログラムによって実現される機能部として、選択部21を有している。選択部21は、道路リンクの特性に関する特性情報に基づいて、前記ノウハウ管理データベース22から知見・ノウハウ処理を選択する機能を有している。なお、前記特性情報は、各リンクエージェント1が取得することができ、当該各リンクエージェント1から、管理エージェント10は当該特性情報を取得することができる。選択部21による機能、前記対応管理データベース23、前記ノウハウ管理データベース22及び知見・ノウハウ処理の具体例については後に説明する。
【0045】
[2.2 リンクエージェント及び管理エージェントによるノウハウ設定処理]
各リンクエージェント1が実質的な処理(推定処理及び学習処理)を開始する前に、リンクエージェント1及び管理エージェント10は、リンクエージェント1それぞれについてノウハウ設定処理を行う。図4は、ノウハウ設定処理の手順を示している。
【0046】
各リンクエージェント1は、自道路リンク、つまり、自己が処理の対象とする道路リンクの特性情報を取得する(ステップS1)。この特性情報は、リンクエージェント1の運用開始時やリセット時(起動時)に、システム管理者によって、当該リンクエージェント1に記憶させることができる。更に、特に動的な情報についてはリンクエージェント1自身が計数したり、センサで入手したり、特定のエージェントから入手するなどして自律的に取得することもできる。リンクエージェント1が特性情報を取得するのは、リンクエージェント1の運用開始時やリセット時の他に、前回の取得時から一定時間が経過した時や、新たな特性情報や特性情報の更新を検出した時などであってもよい。
特性情報は、前記のとおり、道路リンクの特性に関する情報(環境情報)であり、例えば、自道路リンクが高速道路であるのか又は一般道路であるのかについての道路種別についての情報である。各リンクエージェント1が取得する特性情報は共通の内容であってもよく、リンクエージェント1によって相違していてもよい。
【0047】
そして、リンクエージェント1が管理エージェント10と情報の送受信が可能になると、リンクエージェント1は自道路リンクの特性情報i1を送信し(図2参照)、管理エージェント10はこの特性情報i1を取得する(図4のステップS2)。管理エージェントが複数ある場合、リンクエージェント1は、例えば予め設定されたIDが指定する管理エージェント10と通信することができる。
管理エージェント10は、各リンクエージェント1から取得した特性情報に基づいて、前記ノウハウ管理データベース22から、知見・ノウハウ処理を選択する(ステップS3)。この選択される知見・ノウハウ処理は、特性が取得された道路リンクについて推定処理及び学習処理を実行するために用いられる処理である。そして、選択した知見・ノウハウ処理に関する情報をモジュールi2(図2参照)に含ませて当該各リンクエージェント1に送る(ステップS4)。なお、このモジュールi2に含まれる知見・ノウハウ処理に関する情報は、知見・ノウハウ処理のプログラム本体であってもよいが、プログラム本体をリンクエージェント1が有している場合は、選択された知見・ノウハウ処理の種類に関するデータであってもよい。
【0048】
各リンクエージェント1は、例えば管理エージェント10から前記モジュールi2を取得すると、当該各リンクエージェント1は、そのモジュールi2に含まれている知見・ノウハウ処理についての情報を取得することができる。つまり、選択された知見・ノウハウ処理の種類(当該種類についての情報)を取得することができる。これにより、各リンクエージェント1は、選択された知見・ノウハウ処理を把握することができ、当該知見・ノウハウ処理を自己の処理(推定処理及び学習処理)として適用することができる状態となる(ステップS5)。
【0049】
ステップS3の選択処理について具体的に説明する。
図5は、ノウハウ管理データベース22の説明図である。このノウハウ管理データベース22には、「インデックス」「知見・ノウハウ処理」「適用条件」「静的/動的」の項目がある。
管理エージェント10は、各リンクエージェント1から取得した特性情報と、ノウハウ管理データベース22の「適用条件」の項目とを参照して、「知見・ノウハウ処理」の項目から、当該特性情報に適合している知見・ノウハウ処理を抽出する。
【0050】
すなわち、道路リンクが高速道路である場合、この道路リンクを自道路リンクであると認識しているリンクエージェント1は、図4のステップS1において、当該自道路リンクの特性情報として、自道路リンクは高速道路であることを示す特性情報を取得している。
このため、前記リンクエージェント1が有している特性情報(高速道路という特性)を、管理エージェント10が取得することで、ノウハウ管理データベース22(図5)において、「知見・ノウハウ処理」の項目から「知見・ノウハウ処理A」を抽出し、この道路リンクでは、推定処理及び学習処理にこの知見・ノウハウ処理Aを適用することに関する情報として、知見・ノウハウ処理Aを含むモジュールを生成する。そして、管理エージェント10は、このモジュールを前記リンクエージェント1へ送信する(ステップS4)。
【0051】
知見・ノウハウ処理の具体例を説明する。
道路リンクが高速道路である場合、この道路リンクに対応する道路と、その周辺道路との相関関係は、一般道路の場合と比べて簡単であるという知見がある。そこで、このような道路リンクの場合、処理に適用すると好ましいノウハウとして、線形対応アルゴリズムを採用すればよく、例えば、重回帰分析に基づいたアルゴリズムにより学習処理(後の実施形態では重みの最適値の算出)を行うことができる。このように線形対応のアルゴリズムを採用することで、処理精度を確保しつつ処理時間の短縮化が図れる。
そこで、この線形対応アルゴリズムを適用する処理が「知見・ノウハウ処理A」として設定されており、この線形対応アルゴリズムを適用させることに関する情報として「知見・ノウハウ処理A」がノウハウ管理データベース22に蓄積されている。
【0052】
これに対して、道路リンクが一般道路である場合、この道路リンクに対応する道路と、その周辺道路との相関関係は、高速道路の場合と比べて複雑であるという知見がある。そこで、このような道路リンクの場合、処理に適用すると好ましいノウハウとして、非線形対応アルゴリズムを採用すればよく、また、この場合、バックプロパゲーションにより学習処理を行うことができる。これにより、相関関係が複雑であっても、処理精度を確保することができる。
そこで、この非線形対応アルゴリズムを適用する処理が「知見・ノウハウ処理B」として設定されており、この非線形対応アルゴリズムを適用することに関する情報として「知見・ノウハウ処理B」がノウハウ管理データベース22に蓄積されている。
【0053】
図6は管理エージェント10が有している対応管理データベース23の説明図である。対応管理データベース23には、「インデックス」「リンクエージェントID」「知見・ノウハウ適用ID」「状況」の項目がある。
管理エージェント10は、各リンクエージェント1のIDと、各リンクエージェント1での処理に適用させる「知見・ノウハウ処理」の種類とを対応付けた対応情報を、対応管理データベース23に蓄積させることができる。
【0054】
すなわち、あるリンクエージェント1のIDが「2222」であり、当該リンクエージェント1の自道路リンクが高速道路であることから、当該リンクエージェント1では図5の知見・ノウハウ処理Aが選択されている場合、このID「2222」に、図5の知見・ノウハウ処理Aに付されているインデックス番号「0」を対応付けて、対応管理データベース23に蓄積させる。つまり、IDが「2222」に対応する「知見・ノウハウ適用ID」の項目には、図5のインデックス番号「0」が蓄積される。
【0055】
なお、「知見・ノウハウ適用ID」の項目には、適用させている知見・ノウハウ処理の全てが記憶される。例えば図6においてIDが「1111」のリンクエージェント1では、「知見・ノウハウ適用ID」の項目に、「0」「1」が記憶されている。
IDが「2222」のリンクエージェント1が担当する道路リンクに相関のある道路リンク(関連道路リンク)の数が例えば「7」である場合、図5によれば、管理エージェント10は「知見・ノウハウ処理C」を抽出しない。このため、図6において、IDが「2222」に対応する「知見・ノウハウ適用ID」の項目には、インデックス番号「2」は記憶されない。このように、管理エージェント10は、各リンクエージェント1に適用している「知見・ノウハウ処理」を管理している。
【0056】
IDが「2222」の道路リンクでは、処理に「知見・ノウハウ処理A(線形対応アルゴリズム)」を適用するように、管理エージェント10によって選択されていることから、管理エージェント10は、この「知見・ノウハウ処理A(線形対応アルゴリズム)」を適用することに関する情報として、「知見・ノウハウ処理A」を含むモジュールを生成し、このモジュールi2(図2参照)を、IDが「2222」であるリンクエージェント1に送る(図4のステップS4)。
すると、IDが「2222」であるリンクエージェント1は、前記モジュールi2を受け取り、当該モジュールi2に含まれている「知見・ノウハウ処理A」を自己の処理として適用することができる状態となる(ステップS5)。
以上より、図4のノウハウ設定処理が終了する。
【0057】
[2.3 リンクエージェント及び管理エージェントによる処理内容]
[2.3.1 リンクエージェントによる推定処理の概要]
以下の実施形態では、前記ノウハウ設定処理が行われた結果、線形対応アルゴリズムが採用されている場合を主として説明する。
図7は、各リンクエージェント1による交通情報推定方法を示している。
まず、複数のリンクエージェント1それぞれにおいて、推定データベース(交通情報データベース)13及び重みデータベース15に初期値が設定される(ステップS11)。
【0058】
そして、リンクエージェント1が、自道路リンクにおけるVICS情報やプローブ情報を取得すると、これらVICS情報やプローブ情報から道路リンクの速度情報を生成する(ステップS12)。ただし、ステップS12において速度情報を取得できた道路リンク(リンクエージェント1)は、対象エリア内の全道路リンクのうちの一部であり、ステップS12では速度情報が得られない道路リンク(リンクエージェント1)もある。
【0059】
リンクエージェント1間で情報の送受信が行われ、各リンクエージェント1は、ステップS12で得られた速度情報を取得することができ、各リンクエージェント1は、当該速度情報を推定データベース13にセットし、推定データベース13を更新する(ステップS13)。
自道路リンクでVICS情報やプローブ情報に基づく速度情報が得られていないリンクエージェント1では、ステップS13で更新された推定データベース13の内容に基づいて、速度情報が得られていない道路リンクについての速度情報を推定し、推定した速度情報を、推定データベース13にセットし、推定データベース13を更新する(ステップS14)。また、推定された速度情報は、情報の送受信により他の各リンクエージェント1も取得し、推定データベース13を更新する。
このステップS14により、対象エリア内の全道路リンクについての速度情報(実測値と推測値とが混在したもの)が得られ、このステップS14で得られた全道路リンクについての速度情報は、管理エージェント10に出力される(ステップS15)。
【0060】
また、自道路リンクでVICS情報やプローブ情報が得られたリンクエージェント1では、ステップS14で更新された推定データベース13の内容の一部が、学習データベース14にスナップショットとして蓄積され、学習システム12による学習用データとして用いられる(ステップS16)。
【0061】
以上のステップS12〜ステップS16の処理は、速度情報が生成される度に繰り返し実行される。入力情報処理部16は、例えば、VICS情報の更新周期(例えば5分)に合わせて、VICS情報及びプローブ情報を取得して、速度情報を生成するため、ステップS12〜ステップS16の処理は、VICS情報の更新周期(例えば5分)に合わせて繰り返し実行されることになる。
【0062】
[2.3.2 速度情報推定のためのモデル]
図8は、推定システム11が、推定対象道路リンクの速度情報を推定するためのニューラルネットワークの一例を示している。図示のニューラルネットワークは、0〜1の値をとるN個の入力信号xi(i:1〜N)それぞれに、重みwiを乗じて、出力値yを生成する単純パーセプトロンとして構成されている。
ここで、入力信号xiは、推定対象道路リンク以外の他の道路リンク(本実施形態では、推定対象道路リンクに接続された道路リンク)の速度情報であり、出力値yは推定対象道路リンクの速度情報である。
【0063】
また、重みxiは、推定対象道路リンク以外の複数の道路リンクそれぞれの速度情報を、どの程度の割合で反映させるかという値であり、推定対象道路リンクとの相関の高い道路リンク(例えば、推定対象道路リンクと同じ道路を構成し、推定対象道路リンクに隣接する道路リンク)ほど大きな値に設定されるべきであり、相関が低い道路リンクほど小さな値に設定されるべきものである。
【0064】
ただし、図8のものでは、一般的な単純パーセプトロンとは異なり、入力信号xiに乗じられることなくノードに加算される独立パラメータw0が設けられている。この独立パラメータw0は、推定対象道路リンク以外の道路リンクにおける速度情報以外の要因が、推定対象道路リンクの速度情報に与える要因(例えば、道路リンク間での制限速度の差)を表現することができ、速度情報を精度良く推定することができる。
【0065】
以上のように、推定システム11が、ある推定対象道路リンクの速度情報を求めるには、当該推定対象道路リンクとの相関が多少なりとも認められる他の道路リンクの速度情報と、当該他の道路リンクの速度情報をどの程度ほど推定対象道路リンクの速度情報に反映させるかを示す重みと、が得られればよい。前記他の道路リンクの速度情報は、推定データベース(交通情報データベース)13に蓄積されており、重みは重みデータベース15に蓄積されており、推定システム11は、両データベース13,15から必要な情報を取得する。
【0066】
そして、各リンクエージェント1において、上記のようなニューラルネットが自道路リンクについて設けられており、推定システム11は、自道路リンクに関する速度情報を、他の道路リンクに関する速度情報及びその寄与度を示す推定用パラメータ(重み)を用いて推定可能に構成され、推定した値を推定データベース13に蓄積させることができる。
【0067】
[2.3.3 推定処理の詳細]
ここでは、図9のように接続された道路リンクを想定する。図9において、Vxは、道路リンクの速度情報を示している。また、Vxにおける添え字xは、道路リンクのリンク番号を示しており、1〜24の値をとる。つまり、図9では、リンク番号1〜24までの24個の道路リンクが存在する。また、各リンクの矢印方向は、車両の進行方向を示す。
【0068】
図9において、実線の矢印で示す道路リンク(リンク番号x=1〜10)は、VICS情報が取得可能なリンクであり、例えば、高速道路や主要幹線道路に対応する道路リンクである。また、点線の矢印で示す道路リンク(リンク番号x=11〜24)は、VICS情報が取得できないリンクであり、主に、例えば、高速道路や主要幹線道路以外の一般道路である。点線の矢印で示す道路リンクは、速度情報の推定対象道路リンクとなる可能性がある。つまり、点線の矢印で示す道路リンクについては、プローブ情報が得られた場合には、推定対象道路リンクとはならず、プローブ情報が得られなかった場合には、推定対象道路リンクとなり、速度情報の推定処理が実行される。
なお、VICS情報が取得可能な道路リンクであっても、何らかの事情でVICS情報が取得できない場合には、推定対象道路リンクとして扱われる。
【0069】
以下、図9の道路リンクを前提として速度情報の推定手順について説明する。
まず、推定データベース13及び重みデータベース15には、システム管理者によって、初期値が入力される(図7のステップS11)。
【0070】
図10に示すように、推定データベース13は、「チェック」31、「速度情報」32、「関連道路リンク情報」33、「リンク長」34、「学習?」35のデータ項目を有しており、各道路リンク(リンク番号)についてそれぞれのデータ項目の値を保存可能なものである。また、これらデータ項目に関する情報は、リンクエージェント1間で送受信される。したがって、各リンクエージェント1の推定データベース13には、同じ情報を蓄積させることができる。
【0071】
前記データ項目のうち、「チェック」31は、各道路リンクの速度情報の更新の有無及び更新された順番を示す項目である。「速度情報」32は、各道路リンクの速度情報がセットされる項目である。
「関連道路リンク情報」33は、各道路リンクに相関のある道路リンク(関連道路リンク)を示しており、ここでは、それぞれの道路リンクに接続されている道路リンク(リンク番号)を示している。
【0072】
「関連道路リンク情報」33は、「逆」、「A順」、「A逆」、「B順」、「B逆」の5種類に分けられている。
「逆」は、任意の道路リンクと逆方向の道路リンクのリンク番号を示し、例えばリンク番号1の道路リンクについては、リンク番号8の道路リンクが「逆」の道路リンクとなる。
「A順」は、ある道路リンクの後方で順方向に接続している道路リンクであり、例えば、リンク番号1の道路リンクについては、リンク番号12,7,15の道路リンクが「A順」の道路リンクとなる。
「A逆」は、ある道路リンクの後方で逆方向に接続している道路リンクであり、例えば、リンク番号1の道路リンクについては、リンク番号11,15,13の道路リンクが「A逆」の道路リンクとなる。
【0073】
「B順」は、ある道路リンクの前方で順方向に接続している道路リンクであり、例えば、リンク番号1の道路リンクについては、リンク番号4,9の道路リンクが「B順」の道路リンクとなる。
「B逆」は、ある道路リンクの前方で逆方向に接続している道路リンクであり、例えば、リンク番号1の道路リンクについては、リンク番号3,6の道路リンクが「B逆」の道路リンクとなる。
【0074】
また、前記データ項目のうち「リンク長」34は、各道路リンクのリンク長を示すものである。「学習?」35は、各道路リンクの速度情報等が学習部(学習システム12)による学習のためのデータ(学習用データ)となるものであるか否かを示しており、ここでは0又は1の値をとる。「0」はその道路リンクの速度情報等が学習用データとはならないことを示しており、「1」はその道路リンクの速度情報等が学習用データとなることを示している。
【0075】
ステップS11の初期値入力は、リンクエージェント1の運用開始時やリセット時(起動時)に行われ、推定データベース11については、上記データ項目のうち、「速度情報」32、「関連道路リンク情報」33、「リンク長」34について初期値が設定される。「速度情報」32の初期値としては、例えば、全道路リンクについて0を設定すればよい。「関連道路リンク情報」33及び「リンク長」34の初期値については、対象エリアの道路構成に従って設定される。「関連道路リンク情報」33及び「リンク長」34の初期値は、VICS情報及びプローブ情報からなる交通情報(速度情報)を取得しても更新されることはない。
【0076】
一方、「速度情報」34の値は、VICS情報及びプローブ情報からなる交通情報(速度情報)を取得する度に、全道路リンクについて更新される(ステップS13,S14)。
また、「チェック」31については、交通情報(速度情報)を取得する度に(ステップS12)、0に初期化される。「学習?」35についても、交通情報(速度情報)を取得する度に(ステップS12)、各道路リンクの速度情報等を学習用データとすべきか否かに応じて0又は1に設定される。
【0077】
図11に示すように、重みデータベース15には、道路リンクにおける速度情報の推定値を他の道路リンクの速度情報から求める際に用いる重みwiが、初期値として設定される。なお、各リンクエージェント1の重みデータベース15には、自道路リンクの速度情報を推定するための重みWiが蓄積されていればよいが、図11では、全道路リンクにおける重みWiが蓄積されている場合を示している。重みwiは、各道路リンクについて、「関連道路リンクの数+1」ほど設定される。図11において、w0は独立パラメータであり、w1以降は関連道路リンクの速度情報それぞれに乗じられる重みである。
【0078】
推定用パラメータである重みwiは、学習システム12による学習によって、より適切な値へと自動的に更新されるため、初期値としては、適当な値を設定してもよい。したがって、初期設定が容易である。
【0079】
さて、上記の初期化を行ったのち、図9に示す道路リンクに関し、ある時点において、図12のようなVICS情報及びプローブ情報(交通情報)が得られたものとする。図12では、リンク番号1〜10の道路リンクについてのVICS情報(リンク旅行時間)が得られ、リンク番号20の道路リンクについてのプローブ情報が得られている。他の道路リンクについてはVICS情報もプローブ情報も得られていない。なお、図12では、リンク番号20の道路リンクについてのプローブ情報を、VICS情報と同様に「リンク旅行時間」で示した。
【0080】
また、図12の情報では、プローブ情報が存在する道路リンク(リンク番号20)については、学習対象となることを示す値「1」が設定されており、VICS情報が存在する道路リンク(リンク番号1〜10)については、学習対象ではないことを示す値「0」が設定されている。
【0081】
図12の入力情報が取得された場合、リンク番号20の道路リンクを処理対象としているリンクエージェント1では、この情報における「旅行時間」が、入力情報処理部16によって「速度情報」に変換され(ステップS12)、その速度情報によって、推定データベース13の対応する道路リンクの「速度情報」32が更新される(第1回目の更新;ステップS13)。更新された道路リンクについては、「チェック」31に、第1回目の更新で速度情報が更新されたことを示す「1」が設定される。また、図12の入力情報の「学習対象」が「1」である道路リンク(ここでは、リンク番号20の道路リンク)については、「学習?」35が「1」に設定される。
以上のようにして第1回目の更新(入力情報のセット)が行われた後の推定データベース13の内容を、図13に示す。
なお、「チェック」「速度情報」等のデータ項目に関する情報は、リンクエージェント1間で送受信され、各リンクエージェント1の推定データベース13には、同じ状態の情報が蓄積されていることとなる。
【0082】
続いて、速度情報が未更新の道路リンク(リンク番号11〜19,21〜24)については、速度情報の推定が行われ、当該推定値により推定データベース13の更新を行う(ステップS14)。
具体的には、まず、「チェック」31項目に、前回の更新を示す「1」が設定されている道路リンク(リンク番号1〜10,20)の関連道路リンク(隣接道路リンク)のうち、今回の入力情報(図12)に基づく速度情報の更新が未だなされていない道路リンク(チェック=0)を抽出する。ここでは、リンク番号12,15,11,13,19,18,17,21,24,14,16の11個の道路リンクが抽出される(図14参照)。これら11個の道路リンクが、ここでの推定対象道路リンクとなる。
【0083】
これら推定対象道路リンクを自道路リンクとしているリンクエージェント1それぞれにおいて、推定システム11は、推定対象道路リンクについての関連道路リンク及びその速度情報を、推定データベース13から読み出すとともに、推定対象道路リンクについて設定された重み(推定用パラメータ)を、重みデータベース15から読み出し、これらを用いて、推定対象道路リンクの速度情報の推定値を算出する。算出された、速度情報の推定値は、推定データベース13の「速度情報」にセットされ、速度情報についての第2回目の更新が行われる。なお、更新された道路リンクについては、「チェック」31に、第2回目の更新で速度情報が更新されたことを示す「2」が設定される。
【0084】
上記推定対象道路リンクのうち、例えば、リンク番号12,15,11,13の道路リンクの速度情報の推定値(V12,V15,V11,V13)を求めるための演算式は、下記のとおりである。
V12=w0+w1V11+w2V1+w3V5+w4V13+w5V8+w6V7+w7V15
V15=w0+w1V13+w2V20+w3V16+w4V17+w5V14+w6V1+w7V11
+w8V5+w9V8+w10V12+w11V5
V11=w0+w1V12+w2V8+w3V15+w4V7+w5V1+w6V11+w7V5
V13=w0+w1V15+w2V8+w3V12+w4V7+w5V1+w6V11+w7V5
+w8V14+w9V17+w10V16+w11V20
【0085】
第1回目の更新と同様に、各リンクエージェント1の推定データベース13には、同じ情報が蓄積された状態とする。
そして、「チェック」31項目に、前回の更新を示す「2」が設定されている道路リンク(リンク番号11〜19,21,24)の関連道路リンク(隣接道路リンク)のうち、今回の入力情報(図13)に基づく速度情報の更新が未だなされていない道路リンク(チェック=0)を抽出する。ここでは、リンク番号22,23の2個の道路リンクが抽出される(図15参照)。これら2個の道路リンクが、次の推定対象道路リンクとなる。
【0086】
そして、これら推定対象道路リンクを自道路リンクとしているリンクエージェント1それぞれにおいて、推定システム11は、推定対象道路リンクについての関連道路リンクを、推定データベース13から読み出すとともに、推定対象道路リンクそれぞれについて設定された重み(推定用パラメータ)を、重みデータベース15から読み出し、これらを用いて、推定対象道路リンクの速度情報の推定値を算出する。算出された、速度情報の推定値は、推定データベース13の「速度情報」にセットされ、速度情報についての第3回目の更新が行われる。なお、更新された道路リンクについては、「チェック」31に、第3回目の更新で速度情報が更新されたことを示す「3」が設定される。
【0087】
第1回目及び第2回目の更新と同様に、各リンクエージェント1の推定データベース13には、同じ情報が蓄積された状態とする。
上記のような処理は、全ての道路リンクについての速度情報が推定されるまで繰り返される(ステップS14)。ここでは、3回の更新により全ての速度情報が補完されたため、推定処理を終了する。
【0088】
すると、推定データベースの内容の出力が行われる(ステップS15)。
さらに、今回の入力情報(図12)に基づく、推定処理が終了した推定データベース13の各道路リンクのデータのうち、「学習?」35に「1」が設定されたリンク番号20の道路リンクのスナップショット(図16参照)を、学習データベース14に追加する。本実施形態では、スナップショットを追加するリンクエージェント1は、リンク番号20の道路リンクを自道路リンクとしているリンクエージェント1である。
ここで、スナップショットとは、「学習?」35に「1」が設定された道路リンクの「速度情報」と、この「学習?」35に「1」が設定された道路リンクの速度情報を推定するために用いられる一又は複数の他の道路リンク(関連道路リンク)の速度情報と、の組み合わせを記憶したものである。ここで、「学習?」35に「1」が設定された道路リンクの速度情報は、プローブ情報から得られた値であるから実測値である。また、当該道路リンクの関連道路リンクの「速度情報」には、VICS情報から得た実測値と推測値とが混在している。
【0089】
スナップショットは、入力情報が取得されて、推定データベースの全道路リンクの更新(ステップS13,S14)が行われる度に発生し、学習用データとして蓄積される。このスナップショットは、プローブ情報を取得できた道路リンクについて発生する。
したがって、上記の例では、リンク番号20の道路リンクのみスナップショットが発生したが、推定データベースの全道路リンクの更新(ステップS13,S14)が何度も行われると、他の道路リンク(他のリンクエージェント1)についてもスナップショットが蓄積される。また、入力情報が繰り返し発生するほどの十分な時間が経過すると、一つの道路リンクについて複数のスナップショットが蓄積される。
【0090】
[2.3.4 学習処理の詳細]
図17は、リンク番号20の道路リンクについて、複数のスナップショットが蓄積された学習データベース14の内容を示している。
スナップショットが蓄積されたリンクエージェント1では、このようにして多数のスナップショットが学習用データとして蓄積された学習データベース14に基づいて、学習システム12が、重みデータベース15に記憶されている重み(推定用パラメータ)の学習(最適化)を行って、重みデータベース15の内容を更新する。
【0091】
図18は、学習システム12による学習処理の手順を示している。
リンク番号20の道路リンクを自道路リンクとしているリンクエージェント1の学習システム12は、学習処理を行うために、誤差判定のための許容誤差等の学習用のパラメータ設定を行う(図18のステップS21)。
学習システム12は、学習データベース14(図17参照)に蓄積されているスナップショットのうち、実測値である速度情報を教師信号とし、教師信号となる速度情報を持つ道路リンクの関連道路リンクについての速度情報から、この教師信号を出力するための適切なニューラルネットワークを再構築する。すなわち、学習システム12は、実測値である速度情報と、当該速度情報を持つ道路リンクの関連道路リンクについての速度情報とからなる学習用データから、重みの最適値を算出する。
【0092】
重みの最適値の算出は、関連道路リンクについての速度情報から算出される速度情報が、教師信号に近づいて、教師信号との誤差が、設定された許容誤差未満になるまで行われる(図18のステップS22、ステップS23)。なお、重みの最適値の算出(学習処理)は、ニューロエンジンに限らず、他の手段によって行われてもよい。
重みが収束して学習処理が終了すると、得られた重みは、重みデータベース15に反映され、重みデータベース15が更新される。
【0093】
重みデータベース15が更新された後に、例えば、リンク番号20の道路リンクにおいて、VICS情報及びプローブ情報からなる入力情報が発生すると、推定システム11による速度情報の推定は、新たな重みを用いて、より精度良く行われる。このように、本実施形態では、運用を続けることで、交通情報(速度情報)の推定精度が自然に向上する。
さらに、本実施形態によれば、例えば高速道路と一般道路とのように、道路リンクそれぞれの特性(特性情報)が異なっていても、この特性に基づいて選択された知見・ノウハウ処理を適用して、各リンクエージェント1に処理を実行させることが可能となる。このため、道路リンク毎で、当該道路リンクの特性に応じた処理が行われ、より好ましい状態へと重みデータベース15が更新される。
【0094】
[2.4 リンクエージェント及び管理エージェントの他の機能]
[2.4.1 ノウハウ管理データベースの蓄積内容が更新された場合の処理]
以上のとおり、ノウハウ設定処理(図4参照)によれば、各リンクエージェント1は、管理エージェント10の選択部21の機能によって選択された知見・ノウハウ処理を、モジュールとして受けることにより、選択された知見・ノウハウ処理を知ることができる。そして、リンクエージェント1は、選択された知見・ノウハウ処理を実行することができる。
【0095】
このようにして本実施形態の交通情報システムが運用されている間において、管理エージェント10のノウハウ管理データベース22の蓄積内容(記憶内容)が更新された場合を説明する。なお、蓄積内容の更新には、変更、削除又は追加があり、例えば、知見・ノウハウ処理の内容が変更された場合、知見・ノウハウ処理が削除された場合、又は、新たな知見・ノウハウ処理が追加された場合がある。この更新は、例えば、システム管理者によって行われる。
【0096】
このように、ノウハウ管理データベース22の知見・ノウハウ処理の内容が更新されると、管理エージェント10は、更新された知見・ノウハウ処理を適用しているリンクエージェント1へ、更新情報を送信する。なお、更新情報とは、更新された知見・ノウハウ処理の更新内容の情報であり、例えば、更新されたプログラム本体についての情報を送信する。
なお、管理エージェント10の対応管理データベース23(図6参照)には、リンクエージェント1(ID)と、各リンクエージェント1に適用されている知見・ノウハウ処理との対応関係が記憶されているので、ノウハウ管理データベース22の知見・ノウハウ処理の情報が更新されると、その更新された内容に関係する知見・ノウハウ処理を適用しているリンクエージェント1を、管理エージェント10は簡単に抽出することができる。
【0097】
例えば、前記実施形態の場合、IDが「2222」のリンクエージェント1では、知見・ノウハウ処理Aが適用されている。
そして、ノウハウ管理データベース22に蓄積されている「知見・ノウハウ処理A」の内容が変更された場合、管理エージェント10は、更新された「知見・ノウハウ処理A」を新たな知見・ノウハウ処理として、その更新情報を含むモジュールi2−a(図19参照)を、IDが「2222」のリンクエージェント1へ送信する。
【0098】
これにより、このリンクエージェント1は、更新された「知見・ノウハウ処理A」を適用することができる。
また、複数のリンクエージェント1が「知見・ノウハウ処理A」を適用している場合(図6によれば、IDが「1111」「2222」のリンクエージェント1)、それぞれにモジュールi2−aを送信する。
【0099】
[2.4.2 リンクエージェント間での協調処理]
図20(a)に示しているように、何らかの原因により、あるリンクエージェント1aが管理エージェント10と通信ができない場合、このリンクエージェント1aは、周囲のリンクエージェント1b〜1gに問い合わせを行う。
すなわち、リンクエージェント1aは、自道路リンクLaと特性情報が共通している道路リンクを検索し、この検索した他の道路リンクを担当している他のリンクエージェントが適用している知見・ノウハウ処理の種類に関する情報を、当該他のリンクエージェントから取得する。これにより、リンクエージェント1aは、他のリンクエージェントが実行している知見・ノウハウ処理の種類を把握することができる。
なお、特性情報が共通しているとは、特性情報が同一である場合の他に、特性情報が似ている場合も含む。
【0100】
例えば図20(b)に示しているように、リンクエージェント1aが担当している道路リンクLaの特性(特性情報)が、他のリンクエージェント1dが担当している道路リンクLdの特性(特性情報)と同じである場合、リンクエージェント1aは、リンクエージェント1dと情報の送受信を行い、当該リンクエージェント1dから、担当している道路リンクLdの特性(特性情報)に関する情報、及び、当該リンクエージェント1dが適用している知見・ノウハウ処理を含むモジュールi2を取得することができる。
このため、リンクエージェント1aが、管理エージェント10から知見・ノウハウ処理が取得できない環境であっても、他のリンクエージェント1dから知見・ノウハウ処理を含むモジュールi2を取得することができ、これに含まれる知見・ノウハウ処理を用いて学習処理を行うことができる。しかも、把握した知見・ノウハウ処理は、自道路リンクL1と特性(特性情報)が共通している道路リンクLdを担当している他のリンクエージェント1dが実行している処理であるため、この知見・ノウハウ処理を実行すれば、管理エージェント10から知見・ノウハウ処理に関する情報を取得した場合と、同程度の処理精度を得ることが可能となる。
【0101】
[2.4.3 推定精度が向上しない場合の処理]
前記のとおり、リンクエージェント1は、道路リンクの特性に適した知見・ノウハウ処理を適用して処理を行い、最適化された重みを用いて速度情報の推定処理が行われる。しかし、このように重みを最適化しているにもかかわらず、何らかの原因によって、推定精度が向上しない場合の処理について説明する。
【0102】
リンクエージェント1の推定システム11は、図3に示しているように、コンピュータプログラムによって実現される機能部として、推定システム11による推定結果の精度を判定する精度判定部28を有している。この精度判定部28は、推定システム11が推定した推定結果の精度を判定することができ、しかも、この推定結果は、管理エージェント10の選択部21によって選択された知見・ノウハウ処理に基づいて学習システム12が学習処理した重みを用いた推定結果である。
【0103】
図21は、精度判定部28を用いた処理を説明するフローチャートである。
所定の知見・ノウハウ処理が適用されて学習システム12によって学習処理された重みを用いて、推定システム11が、例えば前記ニューラルネットワーク(図8)により速度情報の推定値を求めると、精度判定部28は、この速度情報の推定値の精度を求める(ステップS31)。
推定結果の精度は、例えば、推定値のばらつきにより求めることができる。つまり、推定値のばらつきが大きいと、推定結果(推定値)の精度は低いと考えられる。
そこで、精度判定部28は、ある道路リンクの速度情報の推定値が複数回得られると、その推定値の標準偏差を求め、当該標準偏差と、予め精度判定部28に設定されている閾値とを比較することにより、推定結果の精度を判定する(ステップS32)。
【0104】
比較の結果、推定値の標準偏差が閾値よりも大きい場合(ステップS32のYes)、つまり、推定結果の精度が好ましくない場合、リンクエージェント1は、管理エージェント10と情報の送受信を行い、管理エージェント10に、推定精度が向上していない旨を通知する(ステップS33)。
この場合、改善処理(ステップS34)として、例えば、管理エージェント10のノウハウ管理データベース22の知見・ノウハウ処理が、システム管理者によって見直されたり、システム管理者が新たな知見・ノウハウ処理の情報を創出したり、又は、管理エージェント10の選択部21が、特性情報に含まれる別の項目を選択基準として、別の知見・ノウハウ処理を選択したりする。
【0105】
精度判定部28による推定結果の精度の判定は、前記のように標準偏差を用いる手段以外であってもよい。例えば、ある道路リンクについて、プローブ情報(実測値)に基づく速度情報が得られた場合には、精度判定部28は、この実測値による速度情報と、当該道路リンクにおける推定値による速度情報との誤差を、閾値と比較し、推定結果の精度を判定してもよい。
【0106】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0107】
推定対象道路リンクの速度情報を推定するために用いられる他の道路リンク(関連道路リンク)は、推定対象道路リンクに接続されているものに限らず、推定対象道路リンクとは離れているが、速度情報の時間的変化の仕方が似ている道路リンク(例えば、推定対象道路リンクと並行する道路リンク)であってもよい。
また、前記学習システム12に関して、前記実施形態で説明した機能は例示であり、自己が担当する道路リンク(自道路リンク)の交通情報とその周囲の道路リンクの交通情報との相関関係を学習して、自道路リンクの情報補完の際に参照する度合い(割合;本実施形態では重み)を学習するものであればよい。
【0108】
さらに、本実施形態の交通情報推定装置1の推定システム11が推定の対象とする交通情報は、速度情報に限らず、これに加えて/代えて、渋滞情報など他の交通情報とすることもできる。
【0109】
さらに、上述の例では一つの道路リンクに対して一つのリンクエージェントを配置したが、これに限られるものではない。一つの道路リンク(の例えば各車線)に対して複数のエージェントを配置してもよいし、複数の道路リンクに一つのエージェントを配置するようにしてもよい。
【0110】
一定のエリア、例えば学習・推定の処理範囲となるメッシュ内に含まれる複数の道路リンクや、属性の共通する複数の道路リンクから構成される一つのグループに対して一つのエージェント(グループエージェント)を配置することができる。特性が共通・類似する複数の道路リンク(要素)に対して一つのエージェントを配置するようにすることで、システム全体のハードウェアやソフトウェアの構成、保守・管理・運用をより簡単にすることが可能となる。この場合、グループエージェントは、グループに含まれる道路リンクに対し、そのグループに含まれる道路リンクに関する処理を実行する。管理エージェントは、グループ(に含まれる道路リンクに共通)の特性と対応する処理の候補を記憶部に記憶する。グループエージェントとリンクエージェントは混在してもよい。例外的に特性が相違する道路リンク(要素)がエリア内に含まれる場合には、グループエージェントとは別に、その道路リンクについての個別エージェントを配置することができる。
【0111】
さらに、複数のリンクエージェントの一つが、それらリンクエージェントから構成されるグループを一時的に代表して、グループエージェントとして動作するようにしてもよい。すなわち、グループエージェントをリンクエージェントで代用するようにしてもよいし、そのエージェントをグループエージェントとするかリンクエージェントとするかは例えば時間帯や季節、天候などの条件によって時間的に変化させてもよい。この場合、対象エージェントは、リンクエージェント及びグループエージェントの両方としてのIDを保有することができる。例えば対象エージェントがグループエージェントとして動作する場合、当該対象エージェントのリンクエージェントIDを使って管理エージェントと通信し、管理エージェントに、グループエージェントIDとそのグループに含まれる他のリンクエージェントのIDを送信する。これによって対象エージェントは管理エージェントにグループエージェントとして動作することを自律的に通知することができる。しかしながら、管理エージェントからの指示を受けてグループエージェントとして動作するようにしてもよい。その場合、例えば管理エージェントは、対象エージェントが代表するグループに属するリンクエージェントのIDを対象エージェントに通知する。
【0112】
また上述の例では、道路リンクに関する処理として、ニューロエンジンによる学習処理に関し、線形アルゴリズムと非線形アルゴリズムとを適宜利用する場合を説明したが、これに限られるものではない。遺伝的アルゴリズムやその他の学習・推定アルゴリズムも含め、複数のアルゴリズムを道路リンクの環境に応じて選択的に利用するようにしてもよい。さらに、上述のように交通情報を推定するシステム以外の用途の情報処理システムにも本発明を適用することが可能である。
【0113】
また、管理エージェントは、共通の道路リンク処理を行う複数のリンクエージェントがある場合、各リンクエージェントそれぞれに当該道路リンク処理のモジュールを送信する必要は無い。管理エージェントは、一部のリンクエージェントにのみモジュールを送信し、そのモジュールを受信したリンクエージェントが、残りのリンクエージェントに当該モジュールを送信するようにしてもよい。これによって、管理エージェントの負荷を軽減することが可能となる。
【符号の説明】
【0114】
1:リンクエージェント(リンク演算部、リンク演算装置)、 10:管理エージェント(管理部、交通管理装置)、 11:推定システム(推定部)、 12:学習システム(学習部)、 13:推定データベース、 14:学習データベース、 15:重みデータベース、 21:選択部、 22:ノウハウ管理データベース(記憶部)、 23:対応管理データベース、 28:精度判定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通情報を処理する機能を有する交通情報システム、この交通情報システムに用いられるリンク演算装置及びリンク演算装置を管理する交通管理装置、交通情報推定のためのコンピュータプログラム、交通情報処理方法、及び、情報処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路の交通情報をドライバーに提供する技術として、財団法人道路交通情報通信システムセンターによるVICS(Vehicle Information and Communication System:なお、「VICS」は上記財団法人の登録商標)が広く知られている。
このVICSは、各種の路側センサ(車両感知器やループコイル等)から収集した車両台数や車両速度等よりなる定点観測情報に基づいて、各路線での渋滞やリンク旅行時間を含む交通情報を集計し、その交通情報を、ビーコンによる狭域通信やFM放送等の広域通信によってドライバーに提供するものである。
【0003】
また、道路の交通情報をドライバーに提供する他の技術として、プローブカーを利用した交通情報推定システム(以下、プローブシステムという。)も知られている。
このプローブシステムは、例えば特許文献1及び2に示すように、実際に道路を走行する車両(プローブ車両)を移動体センサとして利用するもので、現時点の車両位置や時刻等のプローブ情報を無線通信によって各プローブ車両から収集し、道路の交通情報を生成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−151496号公報
【特許文献2】特開2005−4467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記VICS情報は、路側センサが設置された主要幹線道路等の一部の道路に関してしか得られない。
一方、プローブシステムでは、実際に道路を走行する車両(プローブ車両)を移動体センサとして利用するため、路側センサが設置されていない道路に関しても、交通情報を取得することが可能となる。
【0006】
しかし、現状では、プローブカーの台数は、非常に少なく、VICS及びプローブシステムのいずれからもデータが得られていない道路リンクについては、交通情報を得ることができない。
【0007】
そこで、(VICS及び)プローブシステムからデータが得られていない道路リンクについては、別の道路リンクの交通情報に基づいて、交通情報を推定することが考えられる。例えば、ある道路リンクの交通情報は、当該道路リンクに接続している道路リンク等のような関連のある他の道路リンクにおける交通情報との相関が認められる。このような相関関係を利用すれば、他の道路リンクの交通情報を用いて、推定対象となる道路リンクの交通情報を補完することができる。
このような補完を行おうとすると、他の各道路リンクの交通情報を、推定対象となる道路リンクの交通情報にどのように反映させるか、及び、どの程度、推定対象となる道路リンクの交通情報として反映させるか等を決める推定用パラメータを適切に設定することが必要となる。
【0008】
このために、コンピュータによる学習機能を用いることが考えられる。そして、このシステムにより、所定の入力情報に基づいて処理が行われ、交通情報の補完を行うことができ、また、推定用パラメータを最適化することが可能となる。
しかし、ある道路リンクの交通情報を推定し、また、推定するために用いられる推定用パラメータを最適化することができたとしても、他の道路リンクでは例えば道路特性が大きく異なっていて、当該他の道路リンクでは前記知見やノウハウが相応しくない場合には、処理結果が好ましいものとならないおそれがある。
この例に限られず、処理対象となる要素が多かったり、それら要素の外部環境が頻繁に変化したりする場合、要素間や時間的に共通のアルゴリズムに基づいて学習していると、全体としてその最適化が進まないなど、各要素に関する処理について局所的又は全体的に不都合が生じる可能性がある。
そこで、本発明は、処理対象となる要素(処理対象となる道路リンク)が多く存在していたり、それら要素に頻繁な変化があったりしても、それぞれに応じた処理を実行可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は、複数存在する道路リンクに対し道路リンクに関する処理を実行可能であるリンク演算部と、前記リンク演算部を管理する管理部とを備えた交通情報システムであって、前記管理部は、前記リンク演算部が実行する前記処理の候補となる複数の道路リンク処理を、道路リンクの特性と対応付けて記憶する記憶部と、道路リンクの特性が取得されると当該特性に基づいて前記記憶部から、当該特性が取得された道路リンクについて前記処理を実行するために用いられる前記道路リンク処理を選択する選択部とを有していることを特徴とする交通情報システム。
【0010】
本発明によれば、管理部の記憶部には、リンク演算部が実行する道路リンクに関する処理の候補となる複数の道路リンク処理が、道路リンクの特性と対応付けられて記憶されており、道路リンクの特性が取得されると、選択部によって、その特性に基づいて記憶部から道路リンク処理が選択される。このため、複数存在する道路リンクそれぞれの特性が異なっていたり各道路リンクの特性が時間的に変化したりしても、当該特性に基づいて選択された道路リンク処理をリンク演算部に実行させることが可能となる。
【0011】
(2)また、前記道路リンクに関する処理を、他の道路リンクの交通情報及び推定用パラメータを用いて推定対象の道路リンクの交通情報を推定する推定処理、及び、前記推定用パラメータを最適化する学習処理とすることができる。
【0012】
(3)また、前記選択部で用いられる前記道路リンクの特性を、前記リンク演算部が取得する構成とすることができる。この場合、リンク演算部が道路リンクの特性を取得すると、当該道路リンクの特性を、前記管理部に送信することができ、これにより、管理部の選択部は、当該特性に基づいて道路リンク処理を選択することができる。
【0013】
(4)そして、前記リンク演算部は、前記選択部によって選択された道路リンク処理を実行する構成とすればよい。
この場合、リンク演算部は、道路リンクの特性に基づいて選択された道路リンク処理を実行することが可能となる。
【0014】
(5)前記(4)の場合において、前記管理部は、前記記憶部に記憶されている道路リンク処理が更新されると、更新された道路リンク処理を実行している前記リンク演算部へ、更新された道路リンク処理の更新内容の情報を送信するのが好ましい。
リンク演算部が、所定の道路リンク処理を実行している場合に、例えば記憶部における当該所定の道路リンク処理が更新されると、管理部は、前記リンク演算部へ、更新された道路リンク処理の更新内容の情報を送信することで、当該リンク演算部は、更新内容を知ることができる。なお、前記更新には、変更、削除又は追加が含まれる。
【0015】
(6)また、前記(4)又は(5)の場合において、前記リンク演算部は、自己が処理の担当をしている道路リンクと特性が共通している他の道路リンクを検索し、この検索した他の道路リンクを担当している他のリンク演算部が実行している道路リンク処理についての情報を取得可能であるのが好ましい。
この場合、例えば、リンク演算部と管理部との間が通信不能となり、リンク演算部は、管理部が選択した道路リンク処理についての情報を取得できなくても、他のリンク演算部が実行している道路リンク処理についての情報を取得することができ、当該道路リンク処理を実行することができる。しかも、実行する道路リンク処理は、特性が共通している道路リンクを担当している他のリンク演算部が実行している処理であるため、この道路リンク処理を実行すれば、管理部が選択した道路リンク処理を実行した場合と、同程度の処理を実行することが可能となる。
【0016】
(7)また、前記(2)の場合において、前記リンク演算部は、前記選択部によって選択された道路リンク処理に基づいて最適化した推定用パラメータを用いて前記推定部が推定した、推定結果の精度を判定する精度判定部を有しているのが好ましい。
精度判定部による推定結果の精度が好ましくない場合、例えば、リンク演算部は、管理部にその旨を通知することができ、記憶部の道路リンク処理が見直されたり、管理部は別の道路リンク処理を選択したりすることができる。
【0017】
(8)また、本発明は、コンピュータを、前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の交通情報システムとして機能させるためのコンピュータプログラムである。
【0018】
(9)また、本発明は、複数存在する道路リンクに対し道路リンクに関する処理を実行可能であるリンク演算部を管理する交通管理装置であって、前記リンク演算部が実行する前記処理の候補となる複数の道路リンク処理を、道路リンクの特性と対応付けて記憶する記憶部と、道路リンクの特性が取得されると当該特性に基づいて前記記憶部から前記道路リンク処理を選択する選択部とを有していることを特徴とする。
【0019】
(10)また、本発明は、複数存在する道路リンクに対し道路リンクに関する処理を実行可能である演算部を備えたリンク演算装置であって、前記演算部は、前記処理の候補となる複数の道路リンク処理が道路リンクの特性と対応付けて記憶されている記憶部から、道路リンクの特性に基づいて選択された道路リンク処理を実行することを特徴とする。
【0020】
(11)また、本発明は、複数存在する道路リンクに対し道路リンクに関する処理を実行する交通情報処理方法であって、前記道路リンクに関する処理の候補となる複数の道路リンク処理が、道路リンクの特性と対応付けて記憶部に記憶されており、前記記憶部から、道路リンクの特性に基づいて所定の道路リンク処理が選択され、選択された前記道路リンク処理を実行することを特徴とする。
【0021】
前記(9)(10)(11)それぞれの本発明によれば、前記(1)と同様に、複数存在する道路リンクそれぞれの特性が異なっていても、当該特性に基づいて選択された道路リンク処理を実行することが可能となる。
【0022】
(12)また、本発明は、母集団に含まれる複数の要素に対し、当該要素に関する処理を実行可能である演算部と、前記演算部を管理する管理部とを備えた情報処理システムであって、前記管理部は、前記演算部が実行する前記処理の候補となる複数の要素に関する処理を、要素の特性と対応付けて記憶する記憶部と、要素の特性が取得されると当該特性に基づいて前記記憶部から、当該特性が取得された要素について前記処理を実行するために用いられる前記要素に関する処理を選択する選択部とを有していることを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、管理部の記憶部には、演算部が実行する要素に関する処理の候補となる複数の処理が、要素の特性と対応付けられて記憶されており、要素の特性が取得されると、選択部によって、その特性に基づいて記憶部から要素に関する処理が選択される。このため、複数存在する要素それぞれの特性が異なっていても、当該特性に基づいて選択された要素に関する処理を演算部に実行させることが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、複数存在する道路リンク(要素)それぞれの特性が異なっていたり頻繁に変化したりしても、当該特性に基づいて選択された処理を実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】交通情報システムについての実施の一形態を示す全体構成図である。
【図2】交通情報システムを簡略化した説明図である。
【図3】交通情報システムの構成図である。
【図4】ノウハウ設定処理を示すフローチャートである。
【図5】ノウハウ管理データベースの説明図である。
【図6】対応管理データベースの説明図である。
【図7】交通情報推定処理手順を示すフローチャートである。
【図8】ニューラルネットワークの構成図である。
【図9】道路リンクの例を示す図である。
【図10】推定データベースの初期状態を示す図である。
【図11】重みデータベースの初期状態を示す図である。
【図12】入力情報として取得したVICS情報及びプローブ情報を示す図である。
【図13】1回目の更新後の推定データベースを示す図である。
【図14】2回目の更新後の推定データベースを示す図である。
【図15】3回目の更新後の推定データベースを示す図である。
【図16】スナップショットとして抽出される部分を示す図である。
【図17】学習データベースを示す図である。
【図18】学習処理を示すフローチャートである。
【図19】交通情報システムの機能を説明する説明図である。
【図20】交通情報システムの機能を説明する説明図である。
【図21】精度判定部による処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
[1.全体構成]
図1は、本発明の交通情報システムについての実施の一形態を示す全体構成図である。本実施形態の交通情報システムは、中央側装置7として、道路リンクの交通情報の推定等の、道路リンクに関する処理を行う複数のリンク演算部1、及び、これらリンク演算部1を管理している管理部10を備えている。
さらに、この交通情報システムには、車載装置2を搭載したプローブ車両3、車載装置2と無線通信する路側通信機4、及び路側センサ5等が含まれる。
【0027】
管理部10及びリンク演算部1を含む中央側装置7は、VICS情報及びプローブ情報等の交通情報(観測情報)を取得し、車両に提供するための提供用の交通情報を生成する機能を有している。なお、中央側装置7は、交通情報に基づいて、信号機制御や交通管制等の各種の交通用処理を行ってもよい。
【0028】
管理部10及びリンク演算部1それぞれは、処理装置(CPU)及び記憶装置を有するコンピュータによって構成されており、前記記憶装置には、コンピュータを、管理部10及びリンク演算部1として機能させるためのコンピュータプログラムが記憶されている。このコンピュータプログラムは、前記処理装置によって実行され、前記処理装置が前記記憶装置等に対し入出力を行うことで、管理部10及びリンク演算部1としての機能を実現する。なお、以下に説明する管理部10及びリンク演算部1の機能は、特に断らない限り、前記コンピュータプログラムによって実現されるものである。
【0029】
本実施形態では、図2に示しているように、一つの道路リンクに一つのリンク演算部1(以下、リンクエージェント1という)が対応付けられている。つまり、一つのリンクエージェント1は、一つの道路リンクに関する処理を担当する。なお、リンクエージェント1が処理の担当をする道路リンクを「自道路リンク」という。
そして、管理部10の管理下にある所定のエリアには複数の道路リンクが含まれていることから、管理部10(以下、管理エージェント10という)は、複数のリンクエージェント1を管理している構成となる。
【0030】
なお、本発明では、管理エージェント10及び複数のリンクエージェント1が、コンピュータを有する一つの装置によって構成されていてもよく、又は、管理エージェント10が、コンピュータを有する一つの装置によって構成され、かつ、複数のリンクエージェント1が、管理エージェント10とは別として、コンピュータを有する一つの装置によって構成されていてもよい。
また、複数の道路リンクを一つのグループとし、一つのリンクエージェント1が、一つのグループの処理を担当してもよい。
さらに、リンクエージェント1は、自道路リンクの道路の交差点等に設置されたハードウェア上で動作させてもよいが、管理エージェント10側と共に設置されたハードウェア上で動作させてもよい。
【0031】
図1において、前記車載装置2は、プローブ車両3の観測情報としてプローブ情報を生成し、路側通信機4に送信する。
プローブ情報は、プローブ車両の位置、当該位置の通過時刻及びプローブ車両の車両ID等を含む交通情報である。また、プローブ情報には、プローブ車両の通過速度等その他の情報を含めてもよい。プローブ情報の位置及び時刻の情報に基づいて、道路リンク毎のリンク旅行時間が得られる。なお、プローブ車両の位置は、車載装置2が有するGPS受信機によって受信したGPS信号に基づいて算出される。
【0032】
前記路側通信機4は、車載装置2との間で無線通信によって情報の送受信を行うものである。具体的には、路側通信機4は、車載装置2が送信した観測情報としてのプローブ情報を受信し、リンクエージェント1に転送する。また、路側通信機4は、リンクエージェント1から、車両への提供用の交通情報を取得し、その交通情報を、車載装置2に送信することができる。なお、路側通信機4とリンクエージェント1との間は、通信回線によって接続されている。
又は、車載装置2は、当該車載装置2と接続した携帯電話機50を介して、プローブ情報を送信してもよい。この場合、車載装置2によってプローブ情報が生成されると、当該プローブ情報は、携帯電話機50へ送られ、携帯電話機50が基地局49へプローブ情報を送信する。そして、基地局49は、プローブ情報をリンクエージェント1に転送する。また、携帯電話機50は、リンクエージェント1から基地局49を介して、車両への提供用の交通情報を取得し、その交通情報を、車載装置2に送ることができる。
【0033】
前記路側センサ5は、観測情報としての交通情報を検出するためのものであり、例えば、直下を通行する車両を超音波感知する車両感知器や、インダクタンス変化で車両を感知するループコイル、或いは、カメラの映像を画像処理して交通量や車両速度を計測する画像感知器よりなり、交差点等に流入する車両台数や車両速度を計測する目的で、高速道路や主要な幹線道路等に設置されている。
【0034】
路側センサ5によって検出された観測情報は、通信回線を介して、VICSセンタサーバ6に送信され、このVICSセンタサーバ6では、路側センサ5の観測情報に基づいて、VICS情報を生成する。このVICS情報は、通信回線を介して、管理エージェント10及びリンクエージェント1に送信される。
【0035】
前記VICS情報は、各道路リンクでの渋滞やリンク旅行時間を含む交通情報である。VICS情報は、路側センサ5から5分ごとに観測情報を取得して、更新されるため、時間的に高密度な情報が得られる。しかし、路側センサ5はすべての道路に設置されているわけではなく(主要道路でも20%以下)、エリアカバー率が低い。
一方、前記プローブ情報は、道路を走行するプローブ車両3から取得するため、エリアカバー率を高くすることが可能である。ただし、プローブ車両3となるための車載装置2の普及率がまだ低いため、時間的に低密度のデータしか得られない。
【0036】
つまり、所定エリア内の道路に、道路リンクを設定した場合、VICS情報が得られる道路リンクについては、VICS情報の更新単位時間ごとに常に交通情報(VICS情報)が得られる。一方、VICS情報が得られない道路リンクについては、VICS情報の更新単位時間毎にみると、プローブ情報が交通情報として得られる道路リンクがある一方、プローブ情報も得られない道路リンクが混在することになる。
【0037】
[2.中央側装置について]
[2.1 リンクエージェント及び管理エージェントの構成]
リンクエージェント1それぞれは同じ又は共通の構成を有しており、本実施形態では、各リンクエージェント1は、自道路リンクからVICS情報もプローブ情報も得られない場合に、当該自道路リンクの交通情報を推定して、当該自道路リンクの交通情報を補完することができる。これにより、管理エージェント10が管理しているエリア内の全道路リンクの交通情報が取得される。つまり、本実施形態では、所定エリア内の全道路リンクを母集団とし、全道路リンクのうちの一部の道路リンクについて交通情報を取得すると、残りの道路リンクについての交通情報を推定することができる。
【0038】
このように、VICS情報もプローブ情報も得られない道路リンクの交通情報を補完することで、より精度が高い交通情報を車両(ナビゲーションシステム)に提供したり、精度良く交通管制を行ったりすることが可能となる。
なお、以下では、VICS情報もプローブ情報も得られず交通情報を推定して補完する必要がある道路リンクを、「推定対象道路リンク」という。
【0039】
図3に示すように、各リンクエージェント1は、複数存在する道路リンク毎に道路リンクに関する処理を実行可能である演算部として、推定対象道路リンクの交通情報を推定する推定システム(推定部)11と、この推定対象道路リンクの交通情報を推定するために用いられるパラメータ(推定用パラメータ)を最適化する学習処理を行う学習システム(学習部)12と、を備えている。
【0040】
また、リンクエージェント1は、推定システム11によって推定した交通情報等を蓄積するための推定データベース(交通情報データベース)13、推定データベース13におけるデータのうち、学習システム12における学習に用いるデータを蓄積する学習データベース14、推定用パラメータ(本実施形態では「重み」)を蓄積するための重みデータベース(推定パラメータデータベース)15と、を記憶装置上に備えている。
【0041】
各リンクエージェント1は、当該リンクエージェント1が自道路リンクに関して取得したVICS情報及びプローブ情報(以下、両情報を総称する場合、「入力情報」という)に対する処理を行う入力情報処理部16を備えていて、入力情報から、リンクの「速度情報」を生成する処理を行う。生成した「速度情報」は、推定データベース13に与えられ、推定データベース13の更新に用いられる。
「速度情報」は、道路リンクのリンク長を、当該道路リンクのリンク旅行時間で除することで、リンク旅行速度[km/h]として算出することができる。なお、道路リンクのリンク長は、当該道路リンクのために処理を行うリンクエージェント1を設置する際に、当該リンクエージェント1の記憶装置に格納されている。
【0042】
また、各リンクエージェント1は、通信機能部(送受信装置)17を有しており、リンクエージェント1と管理エージェント10との間は情報の送受信が可能であり、また、リンクエージェント1間においても情報の送受信が可能である。
【0043】
本実施形態に係る管理エージェント10は、各リンクエージェント1と情報の送受信を行うために、通信機能部(送受信装置)27を有している。
また、管理エージェント10は、リンクエージェント1が行う処理(推定処理及び学習処理)の候補となる道路リンク処理を複数種類、記憶することができるノウハウ管理データベース22を、記憶装置上に備えている。なお、図2の例では管理エージェント10を一つしか示していないが、管理エージェントが複数あってもよく、その場合に各管理エージェントが記憶する道路リンク処理は共通であってもよく、相違していてもよい。
前記道路リンク処理は、リンクエージェント1による処理(推定処理及び学習処理)に適用すると好ましいノウハウ処理であり、道路リンクの特性に関する特性情報と対応付けられて、ノウハウ管理データベース22に蓄積されている。以下、道路リンク処理を「知見・ノウハウ処理」と呼んで説明する。
前記特性情報は、道路リンクの特性に関する静的又は動的な情報(環境情報)であり、例えば、当該道路リンクが高速道路であるか又は一般道路であるかについての道路種別についての情報の他に、当該道路リンクに相関のある他の道路リンク(関連道路リンク)の数についての情報、当該道路リンクのリンク長についての情報、及び、当該道路リンクで取得できたプローブ情報の数についての情報等がある。
【0044】
さらに、管理エージェント10は、リンクエージェント1に適用されている知見・ノウハウ処理と当該リンクエージェント1に付されているIDとの対応関係を記憶する対応管理データベース23を、記憶装置上に備えている。
また、管理エージェント10は、コンピュータプログラムによって実現される機能部として、選択部21を有している。選択部21は、道路リンクの特性に関する特性情報に基づいて、前記ノウハウ管理データベース22から知見・ノウハウ処理を選択する機能を有している。なお、前記特性情報は、各リンクエージェント1が取得することができ、当該各リンクエージェント1から、管理エージェント10は当該特性情報を取得することができる。選択部21による機能、前記対応管理データベース23、前記ノウハウ管理データベース22及び知見・ノウハウ処理の具体例については後に説明する。
【0045】
[2.2 リンクエージェント及び管理エージェントによるノウハウ設定処理]
各リンクエージェント1が実質的な処理(推定処理及び学習処理)を開始する前に、リンクエージェント1及び管理エージェント10は、リンクエージェント1それぞれについてノウハウ設定処理を行う。図4は、ノウハウ設定処理の手順を示している。
【0046】
各リンクエージェント1は、自道路リンク、つまり、自己が処理の対象とする道路リンクの特性情報を取得する(ステップS1)。この特性情報は、リンクエージェント1の運用開始時やリセット時(起動時)に、システム管理者によって、当該リンクエージェント1に記憶させることができる。更に、特に動的な情報についてはリンクエージェント1自身が計数したり、センサで入手したり、特定のエージェントから入手するなどして自律的に取得することもできる。リンクエージェント1が特性情報を取得するのは、リンクエージェント1の運用開始時やリセット時の他に、前回の取得時から一定時間が経過した時や、新たな特性情報や特性情報の更新を検出した時などであってもよい。
特性情報は、前記のとおり、道路リンクの特性に関する情報(環境情報)であり、例えば、自道路リンクが高速道路であるのか又は一般道路であるのかについての道路種別についての情報である。各リンクエージェント1が取得する特性情報は共通の内容であってもよく、リンクエージェント1によって相違していてもよい。
【0047】
そして、リンクエージェント1が管理エージェント10と情報の送受信が可能になると、リンクエージェント1は自道路リンクの特性情報i1を送信し(図2参照)、管理エージェント10はこの特性情報i1を取得する(図4のステップS2)。管理エージェントが複数ある場合、リンクエージェント1は、例えば予め設定されたIDが指定する管理エージェント10と通信することができる。
管理エージェント10は、各リンクエージェント1から取得した特性情報に基づいて、前記ノウハウ管理データベース22から、知見・ノウハウ処理を選択する(ステップS3)。この選択される知見・ノウハウ処理は、特性が取得された道路リンクについて推定処理及び学習処理を実行するために用いられる処理である。そして、選択した知見・ノウハウ処理に関する情報をモジュールi2(図2参照)に含ませて当該各リンクエージェント1に送る(ステップS4)。なお、このモジュールi2に含まれる知見・ノウハウ処理に関する情報は、知見・ノウハウ処理のプログラム本体であってもよいが、プログラム本体をリンクエージェント1が有している場合は、選択された知見・ノウハウ処理の種類に関するデータであってもよい。
【0048】
各リンクエージェント1は、例えば管理エージェント10から前記モジュールi2を取得すると、当該各リンクエージェント1は、そのモジュールi2に含まれている知見・ノウハウ処理についての情報を取得することができる。つまり、選択された知見・ノウハウ処理の種類(当該種類についての情報)を取得することができる。これにより、各リンクエージェント1は、選択された知見・ノウハウ処理を把握することができ、当該知見・ノウハウ処理を自己の処理(推定処理及び学習処理)として適用することができる状態となる(ステップS5)。
【0049】
ステップS3の選択処理について具体的に説明する。
図5は、ノウハウ管理データベース22の説明図である。このノウハウ管理データベース22には、「インデックス」「知見・ノウハウ処理」「適用条件」「静的/動的」の項目がある。
管理エージェント10は、各リンクエージェント1から取得した特性情報と、ノウハウ管理データベース22の「適用条件」の項目とを参照して、「知見・ノウハウ処理」の項目から、当該特性情報に適合している知見・ノウハウ処理を抽出する。
【0050】
すなわち、道路リンクが高速道路である場合、この道路リンクを自道路リンクであると認識しているリンクエージェント1は、図4のステップS1において、当該自道路リンクの特性情報として、自道路リンクは高速道路であることを示す特性情報を取得している。
このため、前記リンクエージェント1が有している特性情報(高速道路という特性)を、管理エージェント10が取得することで、ノウハウ管理データベース22(図5)において、「知見・ノウハウ処理」の項目から「知見・ノウハウ処理A」を抽出し、この道路リンクでは、推定処理及び学習処理にこの知見・ノウハウ処理Aを適用することに関する情報として、知見・ノウハウ処理Aを含むモジュールを生成する。そして、管理エージェント10は、このモジュールを前記リンクエージェント1へ送信する(ステップS4)。
【0051】
知見・ノウハウ処理の具体例を説明する。
道路リンクが高速道路である場合、この道路リンクに対応する道路と、その周辺道路との相関関係は、一般道路の場合と比べて簡単であるという知見がある。そこで、このような道路リンクの場合、処理に適用すると好ましいノウハウとして、線形対応アルゴリズムを採用すればよく、例えば、重回帰分析に基づいたアルゴリズムにより学習処理(後の実施形態では重みの最適値の算出)を行うことができる。このように線形対応のアルゴリズムを採用することで、処理精度を確保しつつ処理時間の短縮化が図れる。
そこで、この線形対応アルゴリズムを適用する処理が「知見・ノウハウ処理A」として設定されており、この線形対応アルゴリズムを適用させることに関する情報として「知見・ノウハウ処理A」がノウハウ管理データベース22に蓄積されている。
【0052】
これに対して、道路リンクが一般道路である場合、この道路リンクに対応する道路と、その周辺道路との相関関係は、高速道路の場合と比べて複雑であるという知見がある。そこで、このような道路リンクの場合、処理に適用すると好ましいノウハウとして、非線形対応アルゴリズムを採用すればよく、また、この場合、バックプロパゲーションにより学習処理を行うことができる。これにより、相関関係が複雑であっても、処理精度を確保することができる。
そこで、この非線形対応アルゴリズムを適用する処理が「知見・ノウハウ処理B」として設定されており、この非線形対応アルゴリズムを適用することに関する情報として「知見・ノウハウ処理B」がノウハウ管理データベース22に蓄積されている。
【0053】
図6は管理エージェント10が有している対応管理データベース23の説明図である。対応管理データベース23には、「インデックス」「リンクエージェントID」「知見・ノウハウ適用ID」「状況」の項目がある。
管理エージェント10は、各リンクエージェント1のIDと、各リンクエージェント1での処理に適用させる「知見・ノウハウ処理」の種類とを対応付けた対応情報を、対応管理データベース23に蓄積させることができる。
【0054】
すなわち、あるリンクエージェント1のIDが「2222」であり、当該リンクエージェント1の自道路リンクが高速道路であることから、当該リンクエージェント1では図5の知見・ノウハウ処理Aが選択されている場合、このID「2222」に、図5の知見・ノウハウ処理Aに付されているインデックス番号「0」を対応付けて、対応管理データベース23に蓄積させる。つまり、IDが「2222」に対応する「知見・ノウハウ適用ID」の項目には、図5のインデックス番号「0」が蓄積される。
【0055】
なお、「知見・ノウハウ適用ID」の項目には、適用させている知見・ノウハウ処理の全てが記憶される。例えば図6においてIDが「1111」のリンクエージェント1では、「知見・ノウハウ適用ID」の項目に、「0」「1」が記憶されている。
IDが「2222」のリンクエージェント1が担当する道路リンクに相関のある道路リンク(関連道路リンク)の数が例えば「7」である場合、図5によれば、管理エージェント10は「知見・ノウハウ処理C」を抽出しない。このため、図6において、IDが「2222」に対応する「知見・ノウハウ適用ID」の項目には、インデックス番号「2」は記憶されない。このように、管理エージェント10は、各リンクエージェント1に適用している「知見・ノウハウ処理」を管理している。
【0056】
IDが「2222」の道路リンクでは、処理に「知見・ノウハウ処理A(線形対応アルゴリズム)」を適用するように、管理エージェント10によって選択されていることから、管理エージェント10は、この「知見・ノウハウ処理A(線形対応アルゴリズム)」を適用することに関する情報として、「知見・ノウハウ処理A」を含むモジュールを生成し、このモジュールi2(図2参照)を、IDが「2222」であるリンクエージェント1に送る(図4のステップS4)。
すると、IDが「2222」であるリンクエージェント1は、前記モジュールi2を受け取り、当該モジュールi2に含まれている「知見・ノウハウ処理A」を自己の処理として適用することができる状態となる(ステップS5)。
以上より、図4のノウハウ設定処理が終了する。
【0057】
[2.3 リンクエージェント及び管理エージェントによる処理内容]
[2.3.1 リンクエージェントによる推定処理の概要]
以下の実施形態では、前記ノウハウ設定処理が行われた結果、線形対応アルゴリズムが採用されている場合を主として説明する。
図7は、各リンクエージェント1による交通情報推定方法を示している。
まず、複数のリンクエージェント1それぞれにおいて、推定データベース(交通情報データベース)13及び重みデータベース15に初期値が設定される(ステップS11)。
【0058】
そして、リンクエージェント1が、自道路リンクにおけるVICS情報やプローブ情報を取得すると、これらVICS情報やプローブ情報から道路リンクの速度情報を生成する(ステップS12)。ただし、ステップS12において速度情報を取得できた道路リンク(リンクエージェント1)は、対象エリア内の全道路リンクのうちの一部であり、ステップS12では速度情報が得られない道路リンク(リンクエージェント1)もある。
【0059】
リンクエージェント1間で情報の送受信が行われ、各リンクエージェント1は、ステップS12で得られた速度情報を取得することができ、各リンクエージェント1は、当該速度情報を推定データベース13にセットし、推定データベース13を更新する(ステップS13)。
自道路リンクでVICS情報やプローブ情報に基づく速度情報が得られていないリンクエージェント1では、ステップS13で更新された推定データベース13の内容に基づいて、速度情報が得られていない道路リンクについての速度情報を推定し、推定した速度情報を、推定データベース13にセットし、推定データベース13を更新する(ステップS14)。また、推定された速度情報は、情報の送受信により他の各リンクエージェント1も取得し、推定データベース13を更新する。
このステップS14により、対象エリア内の全道路リンクについての速度情報(実測値と推測値とが混在したもの)が得られ、このステップS14で得られた全道路リンクについての速度情報は、管理エージェント10に出力される(ステップS15)。
【0060】
また、自道路リンクでVICS情報やプローブ情報が得られたリンクエージェント1では、ステップS14で更新された推定データベース13の内容の一部が、学習データベース14にスナップショットとして蓄積され、学習システム12による学習用データとして用いられる(ステップS16)。
【0061】
以上のステップS12〜ステップS16の処理は、速度情報が生成される度に繰り返し実行される。入力情報処理部16は、例えば、VICS情報の更新周期(例えば5分)に合わせて、VICS情報及びプローブ情報を取得して、速度情報を生成するため、ステップS12〜ステップS16の処理は、VICS情報の更新周期(例えば5分)に合わせて繰り返し実行されることになる。
【0062】
[2.3.2 速度情報推定のためのモデル]
図8は、推定システム11が、推定対象道路リンクの速度情報を推定するためのニューラルネットワークの一例を示している。図示のニューラルネットワークは、0〜1の値をとるN個の入力信号xi(i:1〜N)それぞれに、重みwiを乗じて、出力値yを生成する単純パーセプトロンとして構成されている。
ここで、入力信号xiは、推定対象道路リンク以外の他の道路リンク(本実施形態では、推定対象道路リンクに接続された道路リンク)の速度情報であり、出力値yは推定対象道路リンクの速度情報である。
【0063】
また、重みxiは、推定対象道路リンク以外の複数の道路リンクそれぞれの速度情報を、どの程度の割合で反映させるかという値であり、推定対象道路リンクとの相関の高い道路リンク(例えば、推定対象道路リンクと同じ道路を構成し、推定対象道路リンクに隣接する道路リンク)ほど大きな値に設定されるべきであり、相関が低い道路リンクほど小さな値に設定されるべきものである。
【0064】
ただし、図8のものでは、一般的な単純パーセプトロンとは異なり、入力信号xiに乗じられることなくノードに加算される独立パラメータw0が設けられている。この独立パラメータw0は、推定対象道路リンク以外の道路リンクにおける速度情報以外の要因が、推定対象道路リンクの速度情報に与える要因(例えば、道路リンク間での制限速度の差)を表現することができ、速度情報を精度良く推定することができる。
【0065】
以上のように、推定システム11が、ある推定対象道路リンクの速度情報を求めるには、当該推定対象道路リンクとの相関が多少なりとも認められる他の道路リンクの速度情報と、当該他の道路リンクの速度情報をどの程度ほど推定対象道路リンクの速度情報に反映させるかを示す重みと、が得られればよい。前記他の道路リンクの速度情報は、推定データベース(交通情報データベース)13に蓄積されており、重みは重みデータベース15に蓄積されており、推定システム11は、両データベース13,15から必要な情報を取得する。
【0066】
そして、各リンクエージェント1において、上記のようなニューラルネットが自道路リンクについて設けられており、推定システム11は、自道路リンクに関する速度情報を、他の道路リンクに関する速度情報及びその寄与度を示す推定用パラメータ(重み)を用いて推定可能に構成され、推定した値を推定データベース13に蓄積させることができる。
【0067】
[2.3.3 推定処理の詳細]
ここでは、図9のように接続された道路リンクを想定する。図9において、Vxは、道路リンクの速度情報を示している。また、Vxにおける添え字xは、道路リンクのリンク番号を示しており、1〜24の値をとる。つまり、図9では、リンク番号1〜24までの24個の道路リンクが存在する。また、各リンクの矢印方向は、車両の進行方向を示す。
【0068】
図9において、実線の矢印で示す道路リンク(リンク番号x=1〜10)は、VICS情報が取得可能なリンクであり、例えば、高速道路や主要幹線道路に対応する道路リンクである。また、点線の矢印で示す道路リンク(リンク番号x=11〜24)は、VICS情報が取得できないリンクであり、主に、例えば、高速道路や主要幹線道路以外の一般道路である。点線の矢印で示す道路リンクは、速度情報の推定対象道路リンクとなる可能性がある。つまり、点線の矢印で示す道路リンクについては、プローブ情報が得られた場合には、推定対象道路リンクとはならず、プローブ情報が得られなかった場合には、推定対象道路リンクとなり、速度情報の推定処理が実行される。
なお、VICS情報が取得可能な道路リンクであっても、何らかの事情でVICS情報が取得できない場合には、推定対象道路リンクとして扱われる。
【0069】
以下、図9の道路リンクを前提として速度情報の推定手順について説明する。
まず、推定データベース13及び重みデータベース15には、システム管理者によって、初期値が入力される(図7のステップS11)。
【0070】
図10に示すように、推定データベース13は、「チェック」31、「速度情報」32、「関連道路リンク情報」33、「リンク長」34、「学習?」35のデータ項目を有しており、各道路リンク(リンク番号)についてそれぞれのデータ項目の値を保存可能なものである。また、これらデータ項目に関する情報は、リンクエージェント1間で送受信される。したがって、各リンクエージェント1の推定データベース13には、同じ情報を蓄積させることができる。
【0071】
前記データ項目のうち、「チェック」31は、各道路リンクの速度情報の更新の有無及び更新された順番を示す項目である。「速度情報」32は、各道路リンクの速度情報がセットされる項目である。
「関連道路リンク情報」33は、各道路リンクに相関のある道路リンク(関連道路リンク)を示しており、ここでは、それぞれの道路リンクに接続されている道路リンク(リンク番号)を示している。
【0072】
「関連道路リンク情報」33は、「逆」、「A順」、「A逆」、「B順」、「B逆」の5種類に分けられている。
「逆」は、任意の道路リンクと逆方向の道路リンクのリンク番号を示し、例えばリンク番号1の道路リンクについては、リンク番号8の道路リンクが「逆」の道路リンクとなる。
「A順」は、ある道路リンクの後方で順方向に接続している道路リンクであり、例えば、リンク番号1の道路リンクについては、リンク番号12,7,15の道路リンクが「A順」の道路リンクとなる。
「A逆」は、ある道路リンクの後方で逆方向に接続している道路リンクであり、例えば、リンク番号1の道路リンクについては、リンク番号11,15,13の道路リンクが「A逆」の道路リンクとなる。
【0073】
「B順」は、ある道路リンクの前方で順方向に接続している道路リンクであり、例えば、リンク番号1の道路リンクについては、リンク番号4,9の道路リンクが「B順」の道路リンクとなる。
「B逆」は、ある道路リンクの前方で逆方向に接続している道路リンクであり、例えば、リンク番号1の道路リンクについては、リンク番号3,6の道路リンクが「B逆」の道路リンクとなる。
【0074】
また、前記データ項目のうち「リンク長」34は、各道路リンクのリンク長を示すものである。「学習?」35は、各道路リンクの速度情報等が学習部(学習システム12)による学習のためのデータ(学習用データ)となるものであるか否かを示しており、ここでは0又は1の値をとる。「0」はその道路リンクの速度情報等が学習用データとはならないことを示しており、「1」はその道路リンクの速度情報等が学習用データとなることを示している。
【0075】
ステップS11の初期値入力は、リンクエージェント1の運用開始時やリセット時(起動時)に行われ、推定データベース11については、上記データ項目のうち、「速度情報」32、「関連道路リンク情報」33、「リンク長」34について初期値が設定される。「速度情報」32の初期値としては、例えば、全道路リンクについて0を設定すればよい。「関連道路リンク情報」33及び「リンク長」34の初期値については、対象エリアの道路構成に従って設定される。「関連道路リンク情報」33及び「リンク長」34の初期値は、VICS情報及びプローブ情報からなる交通情報(速度情報)を取得しても更新されることはない。
【0076】
一方、「速度情報」34の値は、VICS情報及びプローブ情報からなる交通情報(速度情報)を取得する度に、全道路リンクについて更新される(ステップS13,S14)。
また、「チェック」31については、交通情報(速度情報)を取得する度に(ステップS12)、0に初期化される。「学習?」35についても、交通情報(速度情報)を取得する度に(ステップS12)、各道路リンクの速度情報等を学習用データとすべきか否かに応じて0又は1に設定される。
【0077】
図11に示すように、重みデータベース15には、道路リンクにおける速度情報の推定値を他の道路リンクの速度情報から求める際に用いる重みwiが、初期値として設定される。なお、各リンクエージェント1の重みデータベース15には、自道路リンクの速度情報を推定するための重みWiが蓄積されていればよいが、図11では、全道路リンクにおける重みWiが蓄積されている場合を示している。重みwiは、各道路リンクについて、「関連道路リンクの数+1」ほど設定される。図11において、w0は独立パラメータであり、w1以降は関連道路リンクの速度情報それぞれに乗じられる重みである。
【0078】
推定用パラメータである重みwiは、学習システム12による学習によって、より適切な値へと自動的に更新されるため、初期値としては、適当な値を設定してもよい。したがって、初期設定が容易である。
【0079】
さて、上記の初期化を行ったのち、図9に示す道路リンクに関し、ある時点において、図12のようなVICS情報及びプローブ情報(交通情報)が得られたものとする。図12では、リンク番号1〜10の道路リンクについてのVICS情報(リンク旅行時間)が得られ、リンク番号20の道路リンクについてのプローブ情報が得られている。他の道路リンクについてはVICS情報もプローブ情報も得られていない。なお、図12では、リンク番号20の道路リンクについてのプローブ情報を、VICS情報と同様に「リンク旅行時間」で示した。
【0080】
また、図12の情報では、プローブ情報が存在する道路リンク(リンク番号20)については、学習対象となることを示す値「1」が設定されており、VICS情報が存在する道路リンク(リンク番号1〜10)については、学習対象ではないことを示す値「0」が設定されている。
【0081】
図12の入力情報が取得された場合、リンク番号20の道路リンクを処理対象としているリンクエージェント1では、この情報における「旅行時間」が、入力情報処理部16によって「速度情報」に変換され(ステップS12)、その速度情報によって、推定データベース13の対応する道路リンクの「速度情報」32が更新される(第1回目の更新;ステップS13)。更新された道路リンクについては、「チェック」31に、第1回目の更新で速度情報が更新されたことを示す「1」が設定される。また、図12の入力情報の「学習対象」が「1」である道路リンク(ここでは、リンク番号20の道路リンク)については、「学習?」35が「1」に設定される。
以上のようにして第1回目の更新(入力情報のセット)が行われた後の推定データベース13の内容を、図13に示す。
なお、「チェック」「速度情報」等のデータ項目に関する情報は、リンクエージェント1間で送受信され、各リンクエージェント1の推定データベース13には、同じ状態の情報が蓄積されていることとなる。
【0082】
続いて、速度情報が未更新の道路リンク(リンク番号11〜19,21〜24)については、速度情報の推定が行われ、当該推定値により推定データベース13の更新を行う(ステップS14)。
具体的には、まず、「チェック」31項目に、前回の更新を示す「1」が設定されている道路リンク(リンク番号1〜10,20)の関連道路リンク(隣接道路リンク)のうち、今回の入力情報(図12)に基づく速度情報の更新が未だなされていない道路リンク(チェック=0)を抽出する。ここでは、リンク番号12,15,11,13,19,18,17,21,24,14,16の11個の道路リンクが抽出される(図14参照)。これら11個の道路リンクが、ここでの推定対象道路リンクとなる。
【0083】
これら推定対象道路リンクを自道路リンクとしているリンクエージェント1それぞれにおいて、推定システム11は、推定対象道路リンクについての関連道路リンク及びその速度情報を、推定データベース13から読み出すとともに、推定対象道路リンクについて設定された重み(推定用パラメータ)を、重みデータベース15から読み出し、これらを用いて、推定対象道路リンクの速度情報の推定値を算出する。算出された、速度情報の推定値は、推定データベース13の「速度情報」にセットされ、速度情報についての第2回目の更新が行われる。なお、更新された道路リンクについては、「チェック」31に、第2回目の更新で速度情報が更新されたことを示す「2」が設定される。
【0084】
上記推定対象道路リンクのうち、例えば、リンク番号12,15,11,13の道路リンクの速度情報の推定値(V12,V15,V11,V13)を求めるための演算式は、下記のとおりである。
V12=w0+w1V11+w2V1+w3V5+w4V13+w5V8+w6V7+w7V15
V15=w0+w1V13+w2V20+w3V16+w4V17+w5V14+w6V1+w7V11
+w8V5+w9V8+w10V12+w11V5
V11=w0+w1V12+w2V8+w3V15+w4V7+w5V1+w6V11+w7V5
V13=w0+w1V15+w2V8+w3V12+w4V7+w5V1+w6V11+w7V5
+w8V14+w9V17+w10V16+w11V20
【0085】
第1回目の更新と同様に、各リンクエージェント1の推定データベース13には、同じ情報が蓄積された状態とする。
そして、「チェック」31項目に、前回の更新を示す「2」が設定されている道路リンク(リンク番号11〜19,21,24)の関連道路リンク(隣接道路リンク)のうち、今回の入力情報(図13)に基づく速度情報の更新が未だなされていない道路リンク(チェック=0)を抽出する。ここでは、リンク番号22,23の2個の道路リンクが抽出される(図15参照)。これら2個の道路リンクが、次の推定対象道路リンクとなる。
【0086】
そして、これら推定対象道路リンクを自道路リンクとしているリンクエージェント1それぞれにおいて、推定システム11は、推定対象道路リンクについての関連道路リンクを、推定データベース13から読み出すとともに、推定対象道路リンクそれぞれについて設定された重み(推定用パラメータ)を、重みデータベース15から読み出し、これらを用いて、推定対象道路リンクの速度情報の推定値を算出する。算出された、速度情報の推定値は、推定データベース13の「速度情報」にセットされ、速度情報についての第3回目の更新が行われる。なお、更新された道路リンクについては、「チェック」31に、第3回目の更新で速度情報が更新されたことを示す「3」が設定される。
【0087】
第1回目及び第2回目の更新と同様に、各リンクエージェント1の推定データベース13には、同じ情報が蓄積された状態とする。
上記のような処理は、全ての道路リンクについての速度情報が推定されるまで繰り返される(ステップS14)。ここでは、3回の更新により全ての速度情報が補完されたため、推定処理を終了する。
【0088】
すると、推定データベースの内容の出力が行われる(ステップS15)。
さらに、今回の入力情報(図12)に基づく、推定処理が終了した推定データベース13の各道路リンクのデータのうち、「学習?」35に「1」が設定されたリンク番号20の道路リンクのスナップショット(図16参照)を、学習データベース14に追加する。本実施形態では、スナップショットを追加するリンクエージェント1は、リンク番号20の道路リンクを自道路リンクとしているリンクエージェント1である。
ここで、スナップショットとは、「学習?」35に「1」が設定された道路リンクの「速度情報」と、この「学習?」35に「1」が設定された道路リンクの速度情報を推定するために用いられる一又は複数の他の道路リンク(関連道路リンク)の速度情報と、の組み合わせを記憶したものである。ここで、「学習?」35に「1」が設定された道路リンクの速度情報は、プローブ情報から得られた値であるから実測値である。また、当該道路リンクの関連道路リンクの「速度情報」には、VICS情報から得た実測値と推測値とが混在している。
【0089】
スナップショットは、入力情報が取得されて、推定データベースの全道路リンクの更新(ステップS13,S14)が行われる度に発生し、学習用データとして蓄積される。このスナップショットは、プローブ情報を取得できた道路リンクについて発生する。
したがって、上記の例では、リンク番号20の道路リンクのみスナップショットが発生したが、推定データベースの全道路リンクの更新(ステップS13,S14)が何度も行われると、他の道路リンク(他のリンクエージェント1)についてもスナップショットが蓄積される。また、入力情報が繰り返し発生するほどの十分な時間が経過すると、一つの道路リンクについて複数のスナップショットが蓄積される。
【0090】
[2.3.4 学習処理の詳細]
図17は、リンク番号20の道路リンクについて、複数のスナップショットが蓄積された学習データベース14の内容を示している。
スナップショットが蓄積されたリンクエージェント1では、このようにして多数のスナップショットが学習用データとして蓄積された学習データベース14に基づいて、学習システム12が、重みデータベース15に記憶されている重み(推定用パラメータ)の学習(最適化)を行って、重みデータベース15の内容を更新する。
【0091】
図18は、学習システム12による学習処理の手順を示している。
リンク番号20の道路リンクを自道路リンクとしているリンクエージェント1の学習システム12は、学習処理を行うために、誤差判定のための許容誤差等の学習用のパラメータ設定を行う(図18のステップS21)。
学習システム12は、学習データベース14(図17参照)に蓄積されているスナップショットのうち、実測値である速度情報を教師信号とし、教師信号となる速度情報を持つ道路リンクの関連道路リンクについての速度情報から、この教師信号を出力するための適切なニューラルネットワークを再構築する。すなわち、学習システム12は、実測値である速度情報と、当該速度情報を持つ道路リンクの関連道路リンクについての速度情報とからなる学習用データから、重みの最適値を算出する。
【0092】
重みの最適値の算出は、関連道路リンクについての速度情報から算出される速度情報が、教師信号に近づいて、教師信号との誤差が、設定された許容誤差未満になるまで行われる(図18のステップS22、ステップS23)。なお、重みの最適値の算出(学習処理)は、ニューロエンジンに限らず、他の手段によって行われてもよい。
重みが収束して学習処理が終了すると、得られた重みは、重みデータベース15に反映され、重みデータベース15が更新される。
【0093】
重みデータベース15が更新された後に、例えば、リンク番号20の道路リンクにおいて、VICS情報及びプローブ情報からなる入力情報が発生すると、推定システム11による速度情報の推定は、新たな重みを用いて、より精度良く行われる。このように、本実施形態では、運用を続けることで、交通情報(速度情報)の推定精度が自然に向上する。
さらに、本実施形態によれば、例えば高速道路と一般道路とのように、道路リンクそれぞれの特性(特性情報)が異なっていても、この特性に基づいて選択された知見・ノウハウ処理を適用して、各リンクエージェント1に処理を実行させることが可能となる。このため、道路リンク毎で、当該道路リンクの特性に応じた処理が行われ、より好ましい状態へと重みデータベース15が更新される。
【0094】
[2.4 リンクエージェント及び管理エージェントの他の機能]
[2.4.1 ノウハウ管理データベースの蓄積内容が更新された場合の処理]
以上のとおり、ノウハウ設定処理(図4参照)によれば、各リンクエージェント1は、管理エージェント10の選択部21の機能によって選択された知見・ノウハウ処理を、モジュールとして受けることにより、選択された知見・ノウハウ処理を知ることができる。そして、リンクエージェント1は、選択された知見・ノウハウ処理を実行することができる。
【0095】
このようにして本実施形態の交通情報システムが運用されている間において、管理エージェント10のノウハウ管理データベース22の蓄積内容(記憶内容)が更新された場合を説明する。なお、蓄積内容の更新には、変更、削除又は追加があり、例えば、知見・ノウハウ処理の内容が変更された場合、知見・ノウハウ処理が削除された場合、又は、新たな知見・ノウハウ処理が追加された場合がある。この更新は、例えば、システム管理者によって行われる。
【0096】
このように、ノウハウ管理データベース22の知見・ノウハウ処理の内容が更新されると、管理エージェント10は、更新された知見・ノウハウ処理を適用しているリンクエージェント1へ、更新情報を送信する。なお、更新情報とは、更新された知見・ノウハウ処理の更新内容の情報であり、例えば、更新されたプログラム本体についての情報を送信する。
なお、管理エージェント10の対応管理データベース23(図6参照)には、リンクエージェント1(ID)と、各リンクエージェント1に適用されている知見・ノウハウ処理との対応関係が記憶されているので、ノウハウ管理データベース22の知見・ノウハウ処理の情報が更新されると、その更新された内容に関係する知見・ノウハウ処理を適用しているリンクエージェント1を、管理エージェント10は簡単に抽出することができる。
【0097】
例えば、前記実施形態の場合、IDが「2222」のリンクエージェント1では、知見・ノウハウ処理Aが適用されている。
そして、ノウハウ管理データベース22に蓄積されている「知見・ノウハウ処理A」の内容が変更された場合、管理エージェント10は、更新された「知見・ノウハウ処理A」を新たな知見・ノウハウ処理として、その更新情報を含むモジュールi2−a(図19参照)を、IDが「2222」のリンクエージェント1へ送信する。
【0098】
これにより、このリンクエージェント1は、更新された「知見・ノウハウ処理A」を適用することができる。
また、複数のリンクエージェント1が「知見・ノウハウ処理A」を適用している場合(図6によれば、IDが「1111」「2222」のリンクエージェント1)、それぞれにモジュールi2−aを送信する。
【0099】
[2.4.2 リンクエージェント間での協調処理]
図20(a)に示しているように、何らかの原因により、あるリンクエージェント1aが管理エージェント10と通信ができない場合、このリンクエージェント1aは、周囲のリンクエージェント1b〜1gに問い合わせを行う。
すなわち、リンクエージェント1aは、自道路リンクLaと特性情報が共通している道路リンクを検索し、この検索した他の道路リンクを担当している他のリンクエージェントが適用している知見・ノウハウ処理の種類に関する情報を、当該他のリンクエージェントから取得する。これにより、リンクエージェント1aは、他のリンクエージェントが実行している知見・ノウハウ処理の種類を把握することができる。
なお、特性情報が共通しているとは、特性情報が同一である場合の他に、特性情報が似ている場合も含む。
【0100】
例えば図20(b)に示しているように、リンクエージェント1aが担当している道路リンクLaの特性(特性情報)が、他のリンクエージェント1dが担当している道路リンクLdの特性(特性情報)と同じである場合、リンクエージェント1aは、リンクエージェント1dと情報の送受信を行い、当該リンクエージェント1dから、担当している道路リンクLdの特性(特性情報)に関する情報、及び、当該リンクエージェント1dが適用している知見・ノウハウ処理を含むモジュールi2を取得することができる。
このため、リンクエージェント1aが、管理エージェント10から知見・ノウハウ処理が取得できない環境であっても、他のリンクエージェント1dから知見・ノウハウ処理を含むモジュールi2を取得することができ、これに含まれる知見・ノウハウ処理を用いて学習処理を行うことができる。しかも、把握した知見・ノウハウ処理は、自道路リンクL1と特性(特性情報)が共通している道路リンクLdを担当している他のリンクエージェント1dが実行している処理であるため、この知見・ノウハウ処理を実行すれば、管理エージェント10から知見・ノウハウ処理に関する情報を取得した場合と、同程度の処理精度を得ることが可能となる。
【0101】
[2.4.3 推定精度が向上しない場合の処理]
前記のとおり、リンクエージェント1は、道路リンクの特性に適した知見・ノウハウ処理を適用して処理を行い、最適化された重みを用いて速度情報の推定処理が行われる。しかし、このように重みを最適化しているにもかかわらず、何らかの原因によって、推定精度が向上しない場合の処理について説明する。
【0102】
リンクエージェント1の推定システム11は、図3に示しているように、コンピュータプログラムによって実現される機能部として、推定システム11による推定結果の精度を判定する精度判定部28を有している。この精度判定部28は、推定システム11が推定した推定結果の精度を判定することができ、しかも、この推定結果は、管理エージェント10の選択部21によって選択された知見・ノウハウ処理に基づいて学習システム12が学習処理した重みを用いた推定結果である。
【0103】
図21は、精度判定部28を用いた処理を説明するフローチャートである。
所定の知見・ノウハウ処理が適用されて学習システム12によって学習処理された重みを用いて、推定システム11が、例えば前記ニューラルネットワーク(図8)により速度情報の推定値を求めると、精度判定部28は、この速度情報の推定値の精度を求める(ステップS31)。
推定結果の精度は、例えば、推定値のばらつきにより求めることができる。つまり、推定値のばらつきが大きいと、推定結果(推定値)の精度は低いと考えられる。
そこで、精度判定部28は、ある道路リンクの速度情報の推定値が複数回得られると、その推定値の標準偏差を求め、当該標準偏差と、予め精度判定部28に設定されている閾値とを比較することにより、推定結果の精度を判定する(ステップS32)。
【0104】
比較の結果、推定値の標準偏差が閾値よりも大きい場合(ステップS32のYes)、つまり、推定結果の精度が好ましくない場合、リンクエージェント1は、管理エージェント10と情報の送受信を行い、管理エージェント10に、推定精度が向上していない旨を通知する(ステップS33)。
この場合、改善処理(ステップS34)として、例えば、管理エージェント10のノウハウ管理データベース22の知見・ノウハウ処理が、システム管理者によって見直されたり、システム管理者が新たな知見・ノウハウ処理の情報を創出したり、又は、管理エージェント10の選択部21が、特性情報に含まれる別の項目を選択基準として、別の知見・ノウハウ処理を選択したりする。
【0105】
精度判定部28による推定結果の精度の判定は、前記のように標準偏差を用いる手段以外であってもよい。例えば、ある道路リンクについて、プローブ情報(実測値)に基づく速度情報が得られた場合には、精度判定部28は、この実測値による速度情報と、当該道路リンクにおける推定値による速度情報との誤差を、閾値と比較し、推定結果の精度を判定してもよい。
【0106】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0107】
推定対象道路リンクの速度情報を推定するために用いられる他の道路リンク(関連道路リンク)は、推定対象道路リンクに接続されているものに限らず、推定対象道路リンクとは離れているが、速度情報の時間的変化の仕方が似ている道路リンク(例えば、推定対象道路リンクと並行する道路リンク)であってもよい。
また、前記学習システム12に関して、前記実施形態で説明した機能は例示であり、自己が担当する道路リンク(自道路リンク)の交通情報とその周囲の道路リンクの交通情報との相関関係を学習して、自道路リンクの情報補完の際に参照する度合い(割合;本実施形態では重み)を学習するものであればよい。
【0108】
さらに、本実施形態の交通情報推定装置1の推定システム11が推定の対象とする交通情報は、速度情報に限らず、これに加えて/代えて、渋滞情報など他の交通情報とすることもできる。
【0109】
さらに、上述の例では一つの道路リンクに対して一つのリンクエージェントを配置したが、これに限られるものではない。一つの道路リンク(の例えば各車線)に対して複数のエージェントを配置してもよいし、複数の道路リンクに一つのエージェントを配置するようにしてもよい。
【0110】
一定のエリア、例えば学習・推定の処理範囲となるメッシュ内に含まれる複数の道路リンクや、属性の共通する複数の道路リンクから構成される一つのグループに対して一つのエージェント(グループエージェント)を配置することができる。特性が共通・類似する複数の道路リンク(要素)に対して一つのエージェントを配置するようにすることで、システム全体のハードウェアやソフトウェアの構成、保守・管理・運用をより簡単にすることが可能となる。この場合、グループエージェントは、グループに含まれる道路リンクに対し、そのグループに含まれる道路リンクに関する処理を実行する。管理エージェントは、グループ(に含まれる道路リンクに共通)の特性と対応する処理の候補を記憶部に記憶する。グループエージェントとリンクエージェントは混在してもよい。例外的に特性が相違する道路リンク(要素)がエリア内に含まれる場合には、グループエージェントとは別に、その道路リンクについての個別エージェントを配置することができる。
【0111】
さらに、複数のリンクエージェントの一つが、それらリンクエージェントから構成されるグループを一時的に代表して、グループエージェントとして動作するようにしてもよい。すなわち、グループエージェントをリンクエージェントで代用するようにしてもよいし、そのエージェントをグループエージェントとするかリンクエージェントとするかは例えば時間帯や季節、天候などの条件によって時間的に変化させてもよい。この場合、対象エージェントは、リンクエージェント及びグループエージェントの両方としてのIDを保有することができる。例えば対象エージェントがグループエージェントとして動作する場合、当該対象エージェントのリンクエージェントIDを使って管理エージェントと通信し、管理エージェントに、グループエージェントIDとそのグループに含まれる他のリンクエージェントのIDを送信する。これによって対象エージェントは管理エージェントにグループエージェントとして動作することを自律的に通知することができる。しかしながら、管理エージェントからの指示を受けてグループエージェントとして動作するようにしてもよい。その場合、例えば管理エージェントは、対象エージェントが代表するグループに属するリンクエージェントのIDを対象エージェントに通知する。
【0112】
また上述の例では、道路リンクに関する処理として、ニューロエンジンによる学習処理に関し、線形アルゴリズムと非線形アルゴリズムとを適宜利用する場合を説明したが、これに限られるものではない。遺伝的アルゴリズムやその他の学習・推定アルゴリズムも含め、複数のアルゴリズムを道路リンクの環境に応じて選択的に利用するようにしてもよい。さらに、上述のように交通情報を推定するシステム以外の用途の情報処理システムにも本発明を適用することが可能である。
【0113】
また、管理エージェントは、共通の道路リンク処理を行う複数のリンクエージェントがある場合、各リンクエージェントそれぞれに当該道路リンク処理のモジュールを送信する必要は無い。管理エージェントは、一部のリンクエージェントにのみモジュールを送信し、そのモジュールを受信したリンクエージェントが、残りのリンクエージェントに当該モジュールを送信するようにしてもよい。これによって、管理エージェントの負荷を軽減することが可能となる。
【符号の説明】
【0114】
1:リンクエージェント(リンク演算部、リンク演算装置)、 10:管理エージェント(管理部、交通管理装置)、 11:推定システム(推定部)、 12:学習システム(学習部)、 13:推定データベース、 14:学習データベース、 15:重みデータベース、 21:選択部、 22:ノウハウ管理データベース(記憶部)、 23:対応管理データベース、 28:精度判定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数存在する道路リンクに対し道路リンクに関する処理を実行可能であるリンク演算部と、
前記リンク演算部を管理する管理部と、を備えた交通情報システムであって、
前記管理部は、前記リンク演算部が実行する前記処理の候補となる複数の道路リンク処理を、道路リンクの特性と対応付けて記憶する記憶部と、
道路リンクの特性が取得されると当該特性に基づいて前記記憶部から、当該特性が取得された道路リンクについて前記処理を実行するために用いられる前記道路リンク処理を選択する選択部と、を有していることを特徴とする交通情報システム。
【請求項2】
前記道路リンクに関する処理は、他の道路リンクの交通情報及び推定用パラメータを用いて推定対象の道路リンクの交通情報を推定する推定処理、及び、前記推定用パラメータを最適化する学習処理である請求項1に記載の交通情報システム。
【請求項3】
前記選択部で用いられる前記道路リンクの特性を、前記リンク演算部が取得する請求項1又は2に記載の交通情報システム。
【請求項4】
前記リンク演算部は、前記選択部によって選択された道路リンク処理を実行する請求項1〜3のいずれか一項に記載の交通情報システム。
【請求項5】
前記管理部は、前記記憶部に記憶されている道路リンク処理が更新されると、更新された道路リンク処理を実行している前記リンク演算部へ、更新された道路リンク処理の更新内容の情報を送信する請求項4に記載の交通情報システム。
【請求項6】
前記リンク演算部は、自己が処理の担当をしている道路リンクと特性が共通している他の道路リンクを検索し、この検索した他の道路リンクを担当している他のリンク演算部が実行している道路リンク処理についての情報を取得可能である請求項4又は5に記載の交通情報システム。
【請求項7】
前記リンク演算部は、前記選択部によって選択された道路リンク処理に基づいて最適化した推定用パラメータを用いて前記推定部が推定した、推定結果の精度を判定する精度判定部を有している請求項2に記載の交通情報システム。
【請求項8】
コンピュータを、請求項1〜7のいずれか一項に記載の交通情報システムとして機能させるためのコンピュータプログラム。
【請求項9】
複数存在する道路リンクに対し道路リンクに関する処理を実行可能であるリンク演算部を管理する交通管理装置であって、
前記リンク演算部が実行する前記処理の候補となる複数の道路リンク処理を、道路リンクの特性と対応付けて記憶する記憶部と、
道路リンクの特性が取得されると当該特性に基づいて前記記憶部から前記道路リンク処理を選択する選択部と、を有していることを特徴とする交通管理装置。
【請求項10】
複数存在する道路リンクに対し道路リンクに関する処理を実行可能である演算部を備えたリンク演算装置であって、
前記演算部は、前記処理の候補となる複数の道路リンク処理が道路リンクの特性と対応付けて記憶されている記憶部から、道路リンクの特性に基づいて選択された道路リンク処理を実行することを特徴とするリンク演算装置。
【請求項11】
複数存在する道路リンクに対し道路リンクに関する処理を実行する交通情報処理方法であって、
前記道路リンクに関する処理の候補となる複数の道路リンク処理が、道路リンクの特性と対応付けて記憶部に記憶されており、
前記記憶部から、道路リンクの特性に基づいて所定の道路リンク処理が選択され、
選択された前記道路リンク処理を実行することを特徴とする交通情報処理方法。
【請求項12】
母集団に含まれる複数の要素に対し、当該要素に関する処理を実行可能である演算部と、前記演算部を管理する管理部とを備えた情報処理システムであって、
前記管理部は、前記演算部が実行する前記処理の候補となる複数の要素に関する処理を、要素の特性と対応付けて記憶する記憶部と、
要素の特性が取得されると当該特性に基づいて前記記憶部から、当該特性が取得された要素について前記処理を実行するために用いられる前記要素に関する処理を選択する選択部と、を有していることを特徴とする情報処理システム。
【請求項1】
複数存在する道路リンクに対し道路リンクに関する処理を実行可能であるリンク演算部と、
前記リンク演算部を管理する管理部と、を備えた交通情報システムであって、
前記管理部は、前記リンク演算部が実行する前記処理の候補となる複数の道路リンク処理を、道路リンクの特性と対応付けて記憶する記憶部と、
道路リンクの特性が取得されると当該特性に基づいて前記記憶部から、当該特性が取得された道路リンクについて前記処理を実行するために用いられる前記道路リンク処理を選択する選択部と、を有していることを特徴とする交通情報システム。
【請求項2】
前記道路リンクに関する処理は、他の道路リンクの交通情報及び推定用パラメータを用いて推定対象の道路リンクの交通情報を推定する推定処理、及び、前記推定用パラメータを最適化する学習処理である請求項1に記載の交通情報システム。
【請求項3】
前記選択部で用いられる前記道路リンクの特性を、前記リンク演算部が取得する請求項1又は2に記載の交通情報システム。
【請求項4】
前記リンク演算部は、前記選択部によって選択された道路リンク処理を実行する請求項1〜3のいずれか一項に記載の交通情報システム。
【請求項5】
前記管理部は、前記記憶部に記憶されている道路リンク処理が更新されると、更新された道路リンク処理を実行している前記リンク演算部へ、更新された道路リンク処理の更新内容の情報を送信する請求項4に記載の交通情報システム。
【請求項6】
前記リンク演算部は、自己が処理の担当をしている道路リンクと特性が共通している他の道路リンクを検索し、この検索した他の道路リンクを担当している他のリンク演算部が実行している道路リンク処理についての情報を取得可能である請求項4又は5に記載の交通情報システム。
【請求項7】
前記リンク演算部は、前記選択部によって選択された道路リンク処理に基づいて最適化した推定用パラメータを用いて前記推定部が推定した、推定結果の精度を判定する精度判定部を有している請求項2に記載の交通情報システム。
【請求項8】
コンピュータを、請求項1〜7のいずれか一項に記載の交通情報システムとして機能させるためのコンピュータプログラム。
【請求項9】
複数存在する道路リンクに対し道路リンクに関する処理を実行可能であるリンク演算部を管理する交通管理装置であって、
前記リンク演算部が実行する前記処理の候補となる複数の道路リンク処理を、道路リンクの特性と対応付けて記憶する記憶部と、
道路リンクの特性が取得されると当該特性に基づいて前記記憶部から前記道路リンク処理を選択する選択部と、を有していることを特徴とする交通管理装置。
【請求項10】
複数存在する道路リンクに対し道路リンクに関する処理を実行可能である演算部を備えたリンク演算装置であって、
前記演算部は、前記処理の候補となる複数の道路リンク処理が道路リンクの特性と対応付けて記憶されている記憶部から、道路リンクの特性に基づいて選択された道路リンク処理を実行することを特徴とするリンク演算装置。
【請求項11】
複数存在する道路リンクに対し道路リンクに関する処理を実行する交通情報処理方法であって、
前記道路リンクに関する処理の候補となる複数の道路リンク処理が、道路リンクの特性と対応付けて記憶部に記憶されており、
前記記憶部から、道路リンクの特性に基づいて所定の道路リンク処理が選択され、
選択された前記道路リンク処理を実行することを特徴とする交通情報処理方法。
【請求項12】
母集団に含まれる複数の要素に対し、当該要素に関する処理を実行可能である演算部と、前記演算部を管理する管理部とを備えた情報処理システムであって、
前記管理部は、前記演算部が実行する前記処理の候補となる複数の要素に関する処理を、要素の特性と対応付けて記憶する記憶部と、
要素の特性が取得されると当該特性に基づいて前記記憶部から、当該特性が取得された要素について前記処理を実行するために用いられる前記要素に関する処理を選択する選択部と、を有していることを特徴とする情報処理システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2011−134097(P2011−134097A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292913(P2009−292913)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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