説明

交通情報収集システム及び車載機

【課題】効率よく旅行時間を演算することが可能な交通情報収集システムを提供する。
【解決手段】車載機3は、走行中に通過地点の位置と時刻を離散的に記録し、これらに基づいてプローブ情報を作成する。プローブ情報処理装置1は複数の車両から送信されるプローブ情報に基づいて各道路リンクの旅行時間を算出する。この場合、車載機3がプローブ情報に含めるサンプル点は、道路リンクの端点付近のサンプル点のみとした。旅行時間を算出するのに好適なサンプル点のみを抽出することで通信負荷やプローブ情報処理装置1の処理負荷を軽減することができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行軌跡に関する情報であるプローブ情報を収集して交通状況を把握するプローブ情報収集システムにおける、車載機のプローブ情報の作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交通情報を収集するために、所定の間隔毎に道路上に車両感知器を設置して車両の通過台数(交通量)や占有時間等を計測するという方法が用いられてきたが、近年は、車両感知器の設置されていない道路の交通情報を取得する等の目的で、車両が自身の走行軌跡に関するプローブ情報を生成して所定の周期毎にセンター側の処理装置に送信し、センター側で複数の車両から送信されるプローブ情報を分析することにより、道路のリンク旅行時間等の交通状況を取得するという方法も用いられるようになってきた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−251698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プローブ情報を生成して送信することが可能な車載機の台数は徐々に増加している。このままプローブ情報対応の車載機の普及台数が増大し続けると、より一層正確な交通状況の把握をすることが可能となるという利点がある一方で、センター側の処理装置として用いられるコンピュータの演算能力を高くしなければ、それらのプローブ情報を全て処理することが困難になるという問題が生じる。
つまり、プローブ情報の増加に伴って通信網の大容量化や処理装置の高速化が必要となり、結果的にシステムの運用にかかるコストが高くなってしまうという問題が起こりうる。
【0005】
本発明は、上記のような点に鑑みてなされたものであり、交通状況の把握の正確性を高めるために多数のプローブ情報を処理の対象としつつ、センター側の処理装置が効率よく処理することが可能な交通情報収集システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の発明にかかる交通情報収集システムは、自車両の走行した地点の位置とその通過時刻とをサンプル点として離散的に記録したプローブ情報を生成しそのプローブ情報を外部に送信する車載機と、複数の車載機から送信されるプローブ情報に基づいて1又は複数の道路リンクの旅行時間を取得するプローブ情報処理装置とを備えており、前記車載機によって外部に送信されるプローブ情報に含まれるサンプル点は、前記道路リンクの端点から所定の範囲内に位置するサンプル点のみであることを特徴とする(請求項1)。
【0007】
本発明によれば、車載機から送信されるプローブ情報は、道路リンクの旅行時間を取得するために必要となる可能性の高い端点付近のサンプル点のみで構成されるため、前記プローブ情報処理装置におけるデータ処理の効率が高くなる。
従来であれば、前記プローブ情報処理装置は受信した各プローブ情報に含まれる多数のサンプル点の中から旅行時間算出に必要なサンプル点のみを選別する処理が必要であったが、本発明であれば、前記プローブ情報処理装置がその処理を行う必要がなくなるため、負荷を低減することが可能になる。
また、車載機が送信するプローブ情報のサイズも小さくできるため、車載機の使用する無線通信の帯域を小さくし、無線通信リソースを効率よく使用することも可能となる。
【0008】
なお、ここにいう所定の範囲とは、リンク端点から所定の距離以内(例えばリンク長の概ね1/5程度の距離)の範囲であり、リンク端点の通過時刻を推定可能な程度に端点に近い端点近傍の範囲をいう。具体的には、例えば端点から50メートル以内の範囲として設定しても良いし、リンク長の1/3〜1/10の範囲内として設定する方法でも良い。
この場合、車載機がGPS等の位置特定手段で特定する自車位置には通常20〜30メートル程度の誤差が存在するため、車両がある地点に位置する場合であっても該位置特定手段で特定される位置は当該地点を中心にした半径20〜30メートル程度の範囲内のどこかになる。そこで、前記所定の範囲は、リンク端点から所定の距離以内の範囲の道路とその周辺の領域であってGPS等の位置誤差を考慮した範囲に設定することが望ましい。
このGPS等の位置誤差を考慮した領域の設定方法としては、例えば、リンク端点から50メートル以内のリンク上(あるいはリンク端点からリンク長の概ね1/3〜1/10の範囲内のリンク上)のいずれかの点から30メートル以内の領域(リンク上ではない地点も含む領域)を所定の範囲として設定すれば良い。
なお、この領域の大きさは地点毎に異なっていても構わないし、領域の形状についても簡単のために、円形、矩形、菱形や楕円形等といった単純な図形で定まる領域として設定しても構わない。つまり、GPS等の位置誤差を考慮した領域が含まれるように設定できれば良い。
【0009】
また、第二の発明にかかる交通情報収集システムは、自車両の走行した地点の位置と通過時刻とをサンプル点として離散的に記録したプローブ情報を生成しそのプローブ情報を外部に送信する車載機と、複数の車載機から送信されるプローブ情報に基づいて1又は複数の道路リンクの旅行時間を取得するプローブ情報処理装置とを備えており、前記車載機によって外部に送信されるプローブ情報は、前記道路リンクの端点から所定の範囲内に位置するサンプル点とそれ以外のサンプル点とを簡便に区別可能なデータ構造を有している(請求項2)。
【0010】
本発明によれば、前記プローブ情報処理装置は受信した各プローブ情報に含まれる多数のサンプル点の中から旅行時間算出に必要なサンプル点のみを簡単に選別することができるため、負荷を低減することが可能になる。
この第二の発明では、第一の発明のように車載機から送信されるプローブ情報のサイズ、すなわち、前記プローブ情報処理装置が処理の対象とするプローブ情報のサイズを小さくすることはできないが、車載機の詳細な走行軌跡を再現することが可能なため、旅行時間算出以外の目的にもプローブ情報を活用したい場合には至便である。
【0011】
なお、ここにいう「前記道路リンクの端点から所定の範囲内に位置するサンプル点とそれ以外のサンプル点とを簡便に区別可能なデータ構造」とは、例えば、道路リンクの端点から所定の範囲内に位置するサンプル点が記録されるフィールドとそれ以外のサンプル点が記録されるフィールドを前半と後半に分離した構造や、各サンプル点の先頭や末尾に設けたフラグをオン/オフすることによって区分可能とした構造などである。
つまり、前記プローブ情報処理装置が、受信したプローブ情報に含まれる各サンプル点の位置と各道路リンクの端点の位置とを比較して所定の範囲内かどうかを判断しなくても区別できるような構造であれば良い。
【0012】
また、第三の発明にかかる車載機は、自車両の走行した地点の位置と通過時刻とをサンプル点として離散的に記録したプローブ情報を生成しそのプローブ情報を外部に送信するものであり、自車両が走行する複数の道路リンクの端点の情報を記録した道路リンクデータベースを保持しており、当該道路リンクデータベースに基づいて、下記のいずれかの方法で生成したプローブ情報を外部に送信する(請求項3)。
(1)記録された前記サンプル点の位置が前記道路リンクデータベースに含まれる道路リンクのいずれかの端点から所定の範囲内にあるかどうかを判定し、当該判定の結果、道路リンクのいずれかの端点から所定の範囲内に位置すると判定されたサンプル点のみをプローブ情報に含めるサンプル点とする。
(2)記録された前記サンプル点の位置が前記道路リンクデータベースに含まれる道路リンクのいずれかの端点から所定の範囲内にあるかどうかを判定し、当該判定の結果、道路リンクのいずれかの端点から所定の範囲内に位置するサンプル点とそれ以外のサンプル点とを簡便に区別可能なデータ構造でプローブ情報を生成する。
【0013】
この車載機も第一および第二の交通情報収集システムと同様にプローブ情報を処理して旅行時間を算出する装置の負荷を低減することが可能になり大変有効である。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明の交通情報収集システムや車載機によれば、車載機から送信されるプローブ情報を効率よく処理して旅行時間を算出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る交通情報収集システムの概要を示す模式図である。
【図2】車載機の構成の一例を示す図である。
【図3】プローブ情報処理装置の構成の一例を示す図である。
【図4】車載機から送信されるプローブ情報の説明図である。
【図5】(a)および(b)はリンク端点近傍に設定する所定の範囲の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
〔システムの全体構成〕
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明に係る交通情報収集システムの概要を示す模式図である。
交通情報収集システムは、光ビーコン等の路上通信装置2(通信アンテナ部2aと通信制御装置2bで構成)、車両C1に搭載された車載機3、プローブ情報処理装置1、ルータ4等で構成される。プローブ情報処理装置1は、路上通信装置2が車載機3から受信したプローブ情報を収集して処理し、道路リンクの旅行時間等を算出する機能を備えており、交通情報センター内に設置されている。なお、プローブ情報処理装置1は、交通情報センター内に設置されていなくても良く、道路上等の別の場所に設置することもできる。
また、プローブ情報処理装置1は、多数の車載機から収集したプローブ情報を処理して算出した旅行時間等の交通情報を路上通信装置2等を通じて車載機3に提供したり、道路上に設けた交通情報板(図示せず)に表示したりすることができる。
【0017】
〔車載機3の基本動作の概要〕
まず、図2を用いて車載機3の基本動作の概要を説明する。
車載制御部301は、1又は複数のマイクロコンピュータから構成されており、内部バス等を介して接続された車載通信制御部303等のハードウエア各部の動作を制御する。
記憶部302には道路地図や道路リンクに関する道路リンクデータベースが記憶されている。この道路リンクデータベースは、各道路を複数の区間に区切った道路リンクによって構成されており、その道路区間の端点の座標や走行方向などの情報を有している。
なお、ここにいう「道路リンク」とは、分岐点や交差点等で区切った道路の区間を指し、通常は方向を有するものである。従って同一の区間でも走行方向によって2本の道路リンクが存在する。
【0018】
また、記憶部302には車両C1の車両IDが予め記憶されており、車載制御部301は、この車両IDを含むアップリンク情報を作成する。そして、車載通信制御部303を介して作成された当該アップリンク情報を路上通信装置2に送信する。
なお、このアップリンク情報には後述する方法で作成された車両C1の走行軌跡を示すプローブ情報が含まれている。
【0019】
GPS受信部304は、車両C1の現在位置と現在時刻を把握するために設けられており、車両C1の通過した地点の位置とその時刻とを対応付けてサンプル点として離散的に記録してプローブ情報を作成することが可能となっている。
なお、この車両C1の位置や時刻については、GPS以外の手段で取得するようにしても良い。
また、車載機3にはセンサー情報取得部305を設けることができ、例えば、車両C1に備えられた各種センサーの情報を取得することが可能である。
この場合のセンサーとは、例えば、車両C1の挙動に関する情報(例えば走行速度や走行方向、ワイパーやエアコン等の各種電気機器の動作状態等)や車両C1の搭乗員に関する情報(例えば乗車人数やシートベルトの着脱状況等)をセンシングして取得するものや、車外の状況に関する情報(例えば車載カメラが撮影した車外の画像、近傍に存在する移動体の挙動や当該移動体との距離、道路設備の状態や当該道路設備との距離に関する情報等)をセンシングして取得するもの等が挙げられる。
これらのセンサー情報は必要に応じて前記プローブ情報に各サンプル点と対応付けて格納することができる。
【0020】
〔プローブ情報処理装置1の基本動作の概要〕
次に、図3を用いてプローブ情報処理装置1の基本動作の概要を説明する。
CPU101は、1又は複数のマイクロコンピュータから構成されており、内部バス等を介して接続されたハードウエアの動作を制御したり、各種演算処理を実行したりする。なお、通常、この各種演算処理は、その演算処理に関する命令が記述されたコンピュータプログラムをハードディスク等から読み出してメモリにコピーしてから実行される。
記憶部102はハードディスクやメモリ等で構成され、路上通信装置2の設置された地点に関する情報や前記道路リンクデータベースなどが記憶されている。
通信制御部103は、路上通信装置2等の他の装置との間で情報をやり取りする機能を備えており、車載機3からのプローブ情報を受け取ったり、CPU101によって演算された旅行時間等を外部に通知したりする。
表示制御部104は、ディスプレイに演算の結果やコンピュータの動作状況などを表示する機能を備えている。
【0021】
CPU101によって行われる演算は種々あるが、プローブ情報処理装置1の基本機能の1つは、車載機3からのプローブ情報を多数収集して、前記道路リンクデータベースの道路リンク毎に旅行時間を演算するものである。
具体的には、所定の時間毎(例えば5分毎)に、当該5分の間に収集されるプローブ情報からある道路リンクを走行したものを選定し、当該道路リンクを端から端まで走行するのに要した時間を推定する。
そして、道路リンク毎に時間帯毎(例えば5分毎)の旅行時間を算出して記憶部102に記憶する。
【0022】
このような演算によって得られた旅行時間についての情報は、例えば、ある地点から別の地点までの最適な走行経路を探索するために用いたり、渋滞している道路区間を車載機3等に対して通知するために通信制御部103を通じて外部に出力したりすることができる。
【0023】
〔車載機3によるプローブ情報作成方法〕
図4を用いて車載機3によるプローブ情報作成方法の詳細を説明する。
車載機3は、車両C1が走行中に、定期的あるいは不定期的に通過地点とその通過時刻をサンプル点として記録する。図4はこのような方法で記録されたサンプル点を模式化して表した図であり、L1〜L3の3本の道路リンクについて、三角形で表したものが車載機3の記録したサンプル点の位置であり、ここでは全部で30個の位置が示されている。
なお、このサンプル点の位置は、GPS受信部で特定した位置でなくてもよく、GPS受信部で特定した位置に基づいてマップマッチング処理を施した後に特定される位置であっても構わない。
ここで、サンプル点を離散的に記録するタイミングであるが、所定の時間毎(例えば数秒毎)でも良いし、所定以上の距離を走行する毎(例えば50m走行する毎)でも良い。また、これらの間隔は時間帯や走行速度などの走行条件等に応じて変更したり切り替えたりしても構わない。
【0024】
車載機3は、このようにして走行中に随時記録したサンプル点について、その全てのサンプル点をプローブ情報に含ませて外部(例えば路上通信装置2宛)に送信することもできるが、全てのサンプル点を送信しようとするとデータ量が大きくなってしまう。
データ量が大きくなると、通信に要する帯域が大きくなってしまい、多数の車両が通信を行うと通信負荷が大きくなってしまうし、データ量に応じて通信料金が加算される場合には通信料金も高くなってしまう、という問題もある。
一方で、データ量を削減するために車載機3がサンプル点を記録する時間や距離の間隔を長くすると、プローブ情報処理装置1による各道路リンクの旅行時間の演算にとって十分な情報が得られなくなる可能性が生じるという問題もある。
【0025】
そこで、本発明の車載機3は、サンプル点を記録する時間や距離の間隔を長くするのではなく、通常通りの間隔でサンプル点を記録しつつ、これらの中から外部に送信する際に必要なサンプル点のみを抽出してプローブ情報を作成するようにする。
具体的には以下のような方法を採用する。
まず、道路リンクデータベースに含まれる全ての道路リンクの両端から所定の距離以内の領域を設定する。例えば、端点から50m以内やリンク長の概ね1/3〜1/10の距離以内といった領域である。この領域の形は図4にあるような円形に限らず、図5(a)のような矩形でも良いし、図5(b)のような略楕円形のような形状でも良いし、それらを組み合わせた多角形のような形状(辺の一部に曲線を含んでも良い)でも良い。
なお、図4や図5(a)のように円形や矩形のような単純な形状にすれば運用時の設定が簡易になって好適であるが、他方で図5(b)のような形状にすれば、リンク端点から例えば50メートルの距離以内のリンク上(端点近傍)に車両が存在すると思われる場合に、GPS受信部で特定される誤差を含んだ位置が含まれうる領域を正確に設定できる点で好適である。領域の設定方法については、システムの運用者がその用途やコスト等に応じて適宜決定すれば良い。
このような端点付近の領域に関するデータを各道路リンクに対応付けてデータベースとして記憶部302に記憶させておく。
図4の領域T1乃至T4がこの端点付近の領域の一例である。
【0026】
次に、車載機3が走行中に記録したサンプル点の絶対座標(緯度・経度)と前記端点付近の領域とを対比し、各サンプル点が前記端点付近の領域内か領域外かを判定する。
そして、領域内であればそのサンプル点をプローブ情報に含め、領域外であればそのサンプル点をプローブ情報には含めないようにする。
図4で、塗りつぶした三角形のサンプル点は前記端点付近の領域に含まれるものであり、白抜きのサンプル点は前記端点付近の領域外のものである。
【0027】
このように端点付近のサンプル点のみを送信することにしたのは、通常のプローブ情報処理装置1が各道路リンクの旅行時間を演算する場合、得られたサンプル点から各道路リンクの端点の通過時刻を推定し、端点から端点までの所要時間を算出する方法を用いることが多いためである。このような算出方法の場合、各道路リンクの中ほどで記録されるサンプル点は旅行時間の算出への活用可能性が低いので、プローブ情報には含めなくても構わない。
このように、従来であればサンプル点30個全てをプローブ情報に含めていたものを、本発明の方法を採用すると半分以下の12個のサンプル点を含めるだけで済ませることが可能になる。
サンプル点の削減によって路上通信装置2に送信するデータの量も半分以下とすることができるようになって通信負荷が軽減されると共に、プローブ情報処理装置1が処理の対象とするサンプル点数も半分以下となるため、処理に要する負荷も軽減されて大変有利である。
【0028】
なお、ここでは道路リンクの端点付近以外のサンプル点をプローブ情報には含めない方法を記載したが、通信の負荷がそれほど問題にならないのであれば、端点付近以外のサンプル点の一部又は全部をプローブ情報に含めても良い。
ただし、この場合には、プローブ情報処理装置1による旅行時間算出処理の負荷に配慮して、プローブ情報に格納する各サンプル点が、端点付近のものであるかどうかを区別可能な構造とすることが望ましい。
例えば、各サンプル点の先頭や末尾に設けた1ビットのフラグをオンすれば端点付近の情報であり、オフすれば端点付近以外の情報である、といったように、プローブ情報を受信した側が端点付近のものであるかどうかを区別可能とする構造である。
図4であれば、端点付近の領域以外の18個のサンプル点の一部又は全部をプローブ情報に含める代わりに、端点付近の領域に含まれる12個のサンプル点の位置情報の直前に設けたフラグはオンにする一方で、それ以外の18個のサンプル点の位置情報の直前に設けたフラグはオフにするようにすれば良い。
なお、フラグのオンとオフは逆にしても構わないし、1ビットでなくても良い。
【0029】
この他にも、プローブ情報の構造を、端点付近のサンプル点を格納する領域とそれ以外のサンプル点を格納する領域とをそれぞれ前半と後半に分離する態様としても良い。
この場合、端点付近以外のサンプル点を格納する領域の先頭に、そのことが分かるような識別記号を格納等しておけば良い。
例えば、図4であれば、前半にはサンプル点1,2,10,11,12,18,19,20,21,28,29,30を格納し、後半にはサンプル点3,4,5,6,7,8,9,13,14,15,16,17,22,23,24,25,26,27を順番に格納し、前半と後半の間に端点付近の領域外のサンプル点であることを示す識別記号(特定の文字列等)を格納すると良い。
なお、この領域の区分では、前半と後半を入れ替えても良いし、異なる識別記号をそれぞれの領域の先頭位置に格納する形式であっても良い。また、識別記号ではなく領域内のサンプル点の数とそれ以外のサンプル点の数をプローブ情報の中に格納しておいて、前半と後半の境目を把握できるようにする方法でも良い。
【0030】
〔プローブ情報処理装置1による旅行時間算出方法の概要〕
このように車載機3から送信されるプローブ情報を受信したプローブ情報処理装置1は、以下のようにして道路リンクの旅行時間を算出することができる。
ここでは、リンクL2の旅行時間の算出方法について説明する。
【0031】
車載機3から送信されたプローブ情報には、12個のサンプル点(図4の1,2,10,11,12,18,19,20,21,28,29,30)が含まれている(又は、プローブ情報の中から12個の端点付近のサンプル点を抽出する)。
プローブ情報処理装置1は、この12個のサンプル点を基にしてマップマッチング処理を行い、処理の対象となるリンクがL1〜L3であることを特定し、記憶部102から特定された道路リンクL1〜L3に対応付けて記憶してある各道路リンクの端点付近の領域に関する情報を読み出す。
そして、これら12個のサンプル点から、例えばリンクL2について、その始点の領域T2と終点の領域T3の領域内に存在するサンプル点をそれぞれ抽出する。この処理によって、領域T2にはサンプル点10乃至12が含まれ、領域T3にはサンプル点18乃至21が含まれることが分かる。
【0032】
次に、始点と終点の通過時刻を推定する。ここでは、始点の領域である領域T2に含まれるサンプル点のうち、中心付近(端点付近)に存在するサンプル点が10と11であることから、この10の通過時刻と11の通過時刻の中間の時刻を始点の通過時刻とする。
同様に、終点においても、中心付近(端点付近)に存在するサンプル点である19と20の通過時刻の中間の時刻を終点の通過時刻とする。
なお、始点や終点の通過時刻の推定方法はこれ以外の方法でも良く、例えば、端点付近の領域内に含まれる全てのサンプル点の通過時刻の平均を取る方法等でも構わない。また、端点付近の領域で記録される複数のサンプル点から端点付近における車両の挙動をきめ細かくシミュレートして端点を通過した時刻を推定する方法でも良い。
【0033】
そして、得られた始点の通過時刻と終点の通過時刻から、始点から終点までの所要時間を旅行時間として求めたり、リンクL2のリンク長をこの所要時間で除算して走行速度を算出したりすることができる。
このようにして、受信されるプローブ情報についてそれぞれ旅行時間を求めていき、定められた単位時間(例えば5分)の間に各プローブ情報に基づいて算出される旅行時間を平均したものをこのリンクL2の平均旅行時間とすることができる。
なお、リンクの途中で何らかの理由で停車したりして通常とは異なる走行を行った車両の情報を除外するために、前記単位時間内に得られた旅行時間のうち、予め設定された所定の範囲を逸脱するものや、最短のものや最長のもの等の極端なデータを一部除外して計算しても構わない。
【0034】
このように、本発明ではプローブ情報に含ませるサンプル点を予め端点付近の領域のサンプル点のみとしてあるため、プローブ情報処理装置1が、旅行時間を算出する際に端点の通過時刻を算出する処理を軽減することが可能となった。
従来であれば、例えば30個のサンプル点全てについて領域T2やT3に含まれるかどうかを判定する必要があったが、本発明であれば、車載機3が最初から12個のサンプル点のみを送信するため、12個についてのみ判定すれば良いことになり、処理の負荷を半分以下に低減することが可能になる。
【0035】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0036】
1 プローブ情報処理装置
2 路上通信装置、 2a 通信アンテナ部、 2b 通信制御装置
3 車載機、 4 ルータ
101 CPU、 102 記憶部、 103 通信制御部、 104 表示制御部
301 車載制御部、 302 記憶部、 303 車載通信制御部、 304 GPS受信部、 305 センサー情報取得部
C1 車両
L1、L2、L3 道路リンク
T1、T2、T3、T4 道路リンクの端点付近の領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の走行した地点の位置とその通過時刻とをサンプル点として離散的に記録したプローブ情報を生成しそのプローブ情報を外部に送信する車載機と、複数の車載機から送信されるプローブ情報に基づいて1又は複数の道路リンクの旅行時間を取得するプローブ情報処理装置とを備える交通情報収集システムであって、
前記車載機によって外部に送信されるプローブ情報に含まれるサンプル点は、前記道路リンクの端点から所定の範囲内に位置するサンプル点のみであること
を特徴とする交通情報収集システム。
【請求項2】
自車両の走行した地点の位置と通過時刻とをサンプル点として離散的に記録したプローブ情報を生成しそのプローブ情報を外部に送信する車載機と、複数の車載機から送信されるプローブ情報に基づいて1又は複数の道路リンクの旅行時間を取得するプローブ情報処理装置とを備える交通情報収集システムであって、
前記車載機によって外部に送信されるプローブ情報は、前記道路リンクの端点から所定の範囲内に位置するサンプル点とそれ以外のサンプル点とを簡便に区別可能なデータ構造を有していること
を特徴とする交通情報収集システム。
【請求項3】
自車両の走行した地点の位置と通過時刻とをサンプル点として離散的に記録したプローブ情報を生成しそのプローブ情報を外部に送信する車載機であって、
自車両が走行する複数の道路リンクの端点の情報を記録した道路リンクデータベースを保持し、当該道路リンクデータベースに基づいて、下記のいずれかの方法で生成したプローブ情報を外部に送信することを特徴とする車載機。
(1)記録された前記サンプル点の位置が前記道路リンクデータベースに含まれる道路リンクのいずれかの端点から所定の範囲内にあるかどうかを判定し、当該判定の結果、道路リンクのいずれかの端点から所定の範囲内に位置すると判定されたサンプル点のみをプローブ情報に含めるサンプル点とする。
(2)記録された前記サンプル点の位置が前記道路リンクデータベースに含まれる道路リンクのいずれかの端点から所定の範囲内にあるかどうかを判定し、当該判定の結果、道路リンクのいずれかの端点から所定の範囲内に位置するサンプル点とそれ以外のサンプル点とを簡便に区別可能なデータ構造でプローブ情報を生成する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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